(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070612
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】警報システムおよび警報システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/10 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
G08B25/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181224
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 康介
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA11
5C087AA37
5C087BB18
5C087CC02
5C087DD07
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087GG35
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、各設置位置における個々の警報器(親機および子機)の通信強度をユーザが容易に把握することが可能な警報システムを提供する。
【解決手段】この警報システム100は、それぞれ無線通信可能な警報器1である、親機2と複数の子機3とを備える。親機2は、複数の子機3の各々と通信を行い、それぞれの子機3からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うように構成されている。複数の子機3の各々は、親機2と通信を行い、親機2からの信号受信に基づいて自機と親機2との間の通信強度を報知する第2報知処理を行うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備え、
前記親機は、前記複数の子機の各々と通信を行い、それぞれの前記子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うように構成され、
前記複数の子機の各々は、前記親機と通信を行い、前記親機からの信号受信に基づいて自機と前記親機との間の前記通信強度を報知する第2報知処理を行うように構成されている、警報システム。
【請求項2】
前記親機は、いずれかの前記子機が前記第2報知処理を実行する場合、その前記子機との間の前記通信強度を報知するように構成されている、請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
前記複数の子機の各々は、前記親機が前記第1報知処理を実行する場合、前記通信強度の報知を行わないように構成されている、請求項2に記載の警報システム。
【請求項4】
前記親機は、前記第1報知処理において、前記複数の子機の各々との間の複数の前記通信強度を取得し、取得した各々の前記子機との間の前記通信強度のうちで強度が最も低い1つの前記子機との間の前記通信強度を報知するように構成されている、請求項3に記載の警報システム。
【請求項5】
前記親機および前記複数の子機は、それぞれ、操作入力を受け付ける操作受付部を備え、
前記親機が操作を受け付けると、前記親機は前記第1報知処理を行い、
前記複数の子機のいずれかが操作を受け付けると、操作を受け付けた前記子機と前記親機との間で前記第2報知処理を行う、請求項4に記載の警報システム。
【請求項6】
前記複数の子機の各々は、前記親機または他の前記子機から信号を受信すると、前記信号を中継送信するように構成され、
いずれか1つの前記子機と前記親機との間の前記通信強度は、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度のうちで、強度が最も高い前記経路通信強度である、請求項1~5のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項7】
前記複数の子機の各々は、受信した信号に、受信強度を含む中継履歴情報を追記して中継送信を行い、
前記親機および前記複数の子機の各々は、受信した信号の前記中継履歴情報に含まれる前記受信強度に基づいて、前記経路通信強度を取得するように構成されている、請求項6に記載の警報システム。
【請求項8】
前記複数の子機の各々は、
前記第2報知処理以外の通常時に、所定の第1時間間隔で前記親機への信号送信を行い、
前記第2報知処理では、前記第1時間間隔よりも短い第2時間間隔で信号送信を行い、前記親機からの応答信号を受信することにより、自機と前記親機との間の前記通信強度を取得するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項9】
それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備えた警報システムの動作方法であって、
前記親機が、前記複数の子機の各々と通信を行うことにより、それぞれの前記子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うステップと、
前記複数の子機の少なくともいずれかが、前記親機と通信を行うことにより、自機と前記親機との間の前記通信強度を報知する第2報知処理を行うステップと、を備える、警報システムの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、警報システムおよび警報システムの動作方法に関し、特に、複数台の警報器で構成された警報システムおよび警報システムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の警報器で構成された警報システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、火災を検知する無線端末と、無線端末からの無線信号を中継する中継装置と、無線端末および/または中継装置からの無線信号を受信する受信装置と、受信装置から伝送線を介して入力された情報に基づき、警報表示や警報音の出力等の処理を実行する受信機と、を備えた通信システムが開示されている。受信装置は、無線端末からの無線信号を直接受信した場合の受信強度情報と、中継装置により中継して受信した場合の受信強度情報とを取得し、取得した各受信強度情報に基づいて無線端末毎の中継の要否を特定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、受信装置が無線端末との間の直接または中継装置を介した受信強度情報を取得して中継の要否を特定するが、受信強度は、各機器の設置環境などに影響され容易に変動する。たとえば室内に新たに設置された設置物が障害となり受信強度が低下することもあるので、いずれかの機器が通信困難になる状況を避けるため、ユーザには機器間の受信強度を把握(点検)したいというニーズがある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、各設置位置における個々の警報器(親機および子機)の通信強度をユーザが容易に把握することが可能な警報システムおよび警報システムの動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による警報システムは、それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備え、親機は、複数の子機の各々と通信を行い、それぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うように構成され、複数の子機の各々は、親機と通信を行い、親機からの信号受信に基づいて自機と親機との間の通信強度を報知する第2報知処理を行うように構成されている。なお、本明細書において、「通信強度」とは、信号の発信元と送信先との間での通信において受信される信号の強さを意味する概念である。通信強度が高いほど通信エラーが少なく安定した通信が可能であり、通信強度が低いほど通信エラーが発生しやすく通信が不安定となる。また、本明細書において、「報知」とは、人が直接感知可能な報知(たとえば光学的(発光)または音響的(鳴動)な報知)と、人が直接感知不可能な報知(電磁波等を用いた無線通信手段によるユーザの端末への情報送信による報知)とを含む広い概念である。
【0008】
この発明の第1の局面による警報システムでは、上記のように、親機は、複数の子機の各々と通信を行い、それぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うように構成され、複数の子機の各々は、親機と通信を行い、親機からの信号受信に基づいて自機と親機との間の通信強度を報知する第2報知処理を行うように構成されている。この第1報知処理および第2報知処理によって、親機と複数の子機の各々との間の通信強度をユーザが把握することができる。たとえば第1報知処理では、親機がそれぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知することで、警報システム全体のうちいずれかの子機において通信強度に問題があるか否かをユーザに把握させることができ、問題がなければユーザは子機を特定する作業を省略できる。いずれかの子機において通信強度に問題があることが判明した場合、ユーザがそれぞれの子機について個別に第2報知処理を実行させることで、第2報知処理を実行させた子機の通信強度を把握できる。その結果、各設置位置における個々の警報器(親機および子機)の通信強度をユーザが容易に把握することができる。
【0009】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、親機は、いずれかの子機が第2報知処理を実行する場合、その子機との間の通信強度を報知するように構成されている。このように構成すれば、第2報知処理を実行した子機と親機との両方が、ペアで通信強度を報知するように動作する。そのため、ユーザは、警報システムを構成する複数の警報器のうち、いずれが親機でいずれが子機であるかを正確に把握していなくても、その子機とペアになっている親機(つまり、子機との通信強度を確保したい警報器)がどれであるか、どこにあるかを容易に把握できる。
【0010】
この場合、好ましくは、複数の子機の各々は、親機が第1報知処理を実行する場合、通信強度の報知を行わないように構成されている。このように構成すれば、親機が第1報知処理を実行する際に、警報システムを構成する各子機が一斉に報知を行うことを回避できる。親機および全ての子機が一斉に報知を行う場合、ユーザはそれらの報知を全部把握するのは煩雑である。そのため、親機が第1報知処理を実行する場合には、子機が報知を行わないことで、ユーザに対する過剰な報知を抑制できる。
【0011】
上記複数の子機の各々が、親機が第1報知処理を実行する場合、通信強度の報知を行わない構成において、好ましくは、親機は、第1報知処理において、複数の子機の各々との間の複数の通信強度を取得し、取得した各々の子機との間の通信強度のうちで強度が最も低い1つの子機との間の通信強度を報知するように構成されている。このように構成すれば、第1報知処理によって、ユーザは、警報システムにおける通信強度の点検の必要性があるか否かを容易に把握できる。すなわち、強度が最も低い1つの子機との間の通信強度だけを報知することにより、容易かつ明確に、警報システムで最も低い通信強度を認識できる。そして、報知された最低強度の通信強度が必要十分に高いレベルであれば、個々の子機についての通信強度の点検を行う必要がないことを、ユーザが把握できる。反対に、報知された最低強度の通信強度が低いレベルであれば、ユーザは、個々の子機に対して第2報知処理を実行させることで、個別の通信強度を点検できる。この結果、第1報知処理と第2報知処理との組み合わせにより、通信強度の点検作業を効率的に行うことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、親機および複数の子機は、それぞれ、操作入力を受け付ける操作受付部を備え、親機が操作を受け付けると、親機は第1報知処理を行い、複数の子機のいずれかが操作を受け付けると、操作を受け付けた子機と親機との間で第2報知処理を行う。このように構成すれば、ユーザは、まず親機の操作受付部への操作により第1報知処理を行い、必要に応じて、各子機の操作受付部に対してそれぞれ操作を行い、第2報知処理を実行させることができる。このため、単純な操作で警報システムの通信強度の点検作業を簡単に行うことができる。
【0013】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、複数の子機の各々は、親機または他の子機から信号を受信すると、信号を中継送信するように構成され、いずれか1つの子機と親機との間の通信強度は、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度のうちで、強度が最も高い経路通信強度である。本明細書では、通信経路とは、信号の発信元(たとえば子機)から送信先(親機)まで間で、どの警報器を通じて信号が伝送されるかを示す信号の経路を意味する。複数の子機の各々が中継送信する構成の場合、いずれか1つの子機(子機Aとする)と親機との間には、直接通信する通信経路、1つの別の子機(子機Bまたは子機Cとする)を中継する通信経路、複数の別の子機(子機Bおよび子機Cとする)を中継する通信経路、などの複数の通信経路で通信が可能となる可能性がある。この場合、通信経路毎に通信強度も異なりうるため、この通信経路毎の通信強度を、本明細書では「経路通信強度」と呼ぶ。親機と子機との間で複数の通信経路が存在する場合、いずれか1つでも安定して通信が可能な通信経路が存在すればよいため、ユーザがいずれかの子機と親機との通信を点検する際、強度が最も高い経路通信強度が必要十分に高いレベルであるか否かを確認すれば足り、通信経路毎の通信状態を全部把握する必要はない。そのため、強度が最も高い経路通信強度を、子機と親機との間の通信強度として報知することにより、ユーザに対する過剰な報知を抑制できる。
【0014】
この場合、好ましくは、複数の子機の各々は、受信した信号に、受信強度を含む中継履歴情報を追記して中継送信を行い、親機および複数の子機の各々は、受信した信号の中継履歴情報に含まれる受信強度に基づいて、経路通信強度を取得するように構成されている。このように構成すれば、信号の送信先となる親機または子機が、その信号の中継履歴情報から、通信経路の途中で中継送信を行った他の子機における受信強度を把握できる。したがって、通信経路の最初から最後までの各中継地点での受信強度を総合することにより、経路通信強度を容易に把握することができる。異なる通信経路は中継履歴情報も異なるため、複数の通信経路がある場合には、通信経路毎の中継履歴情報から把握される経路通信強度を比較することにより、強度が最も高い経路通信強度を容易に取得および報知できる。
【0015】
上記第1の局面による警報システムにおいて、好ましくは、複数の子機の各々は、第2報知処理以外の通常時に、所定の第1時間間隔で親機への信号送信を行い、第2報知処理では、第1時間間隔よりも短い第2時間間隔で信号送信を行い、親機からの応答信号を受信することにより、自機と親機との間の通信強度を取得するように構成されている。このように構成すれば、通常時よりも短い第2時間間隔での信号送信により、速やかに通信強度を取得することができる。そのため、第2報知処理の開始後、速やかに通信強度の報知を行うことができる。
【0016】
この発明の第2の局面による警報システムの動作方法は、それぞれ無線通信可能な警報器である、親機と複数の子機とを備えた警報システムの動作方法であって、親機が、複数の子機の各々と通信を行うことにより、それぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うステップと、複数の子機の少なくともいずれかが、親機と通信を行うことにより、自機と親機との間の通信強度を報知する第2報知処理を行うステップと、を備える。
【0017】
この発明の第2の局面による警報システムの動作方法では、上記のように、親機が、複数の子機の各々と通信を行うことにより、それぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知する第1報知処理を行うステップと、複数の子機の少なくともいずれかが、親機と通信を行うことにより、自機と親機との間の通信強度を報知する第2報知処理を行うステップと、を備える。この第1報知処理および第2報知処理によって、親機と複数の子機の各々との間の通信強度をユーザが把握することができる。たとえば第1報知処理では、親機がそれぞれの子機からの信号受信に基づいて通信強度を報知することで、警報システム全体のうちいずれかの子機において通信強度に問題があるか否かをユーザに把握させることができ、問題がなければ子機を特定する作業を省略できる。いずれかの子機において通信強度に問題があることが判明した場合、ユーザがそれぞれの子機について個別に第2報知処理を実行させることで、第2報知処理を実行させた子機の通信強度を把握できる。その結果、各設置位置における個々の警報器(親機および子機)の通信強度をユーザが容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、無線通信可能な複数台の警報器で構成された警報システムにおいて、各設置位置における個々の警報器(親機および子機)の通信強度をユーザが容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による警報システムを示した模式図である。
【
図2】警報システムのネットワーク構成の1つ目の例を示した模式図である。
【
図3】警報システムのネットワーク構成の2つ目の例を示した模式図である。
【
図4】警報システムのネットワーク構成の3つ目の例を示した模式図である。
【
図5】警報システムのネットワーク構成の4つ目の例を示した模式図である。
【
図6】親機の構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】子機の構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】子機と親機の間の通信でやりとりされる送信データの構成を説明するための図である。
【
図9】中継送信による通信ステータスの追記を説明するための図である。
【
図10】2つの警報器の間の受信強度の関係の例(A)、通信経路毎の経路通信強度の例(B)および取得される通信強度の例(C)を示す説明図である。
【
図12】第1報知処理の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図14】第2報知処理の動作を説明するためのフロー図(前半)である。
【
図15】第2報知処理の動作を説明するためのフロー図(後半)である。
【
図16】警報システムの動作を示したフロー図である。
【
図17】
図16の中継送信の処理(サブルーチン)を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図16を参照して、一実施形態による警報システム100の構成について説明する。
【0022】
(警報システムの構成)
図1に示すように、警報システム100は、警報システム100の設置環境における異常を検知し、異常を検知した場合に警報を行うシステムである。
【0023】
警報システム100は、3つ以上の警報器1を備えている。3つ以上の警報器1は、親機2と、複数の子機3とにより構成されている。
図1では、1つの親機2と、3つの子機3との、合計4つの警報器1を備えた警報システム100の例を示している。以下では、3つの子機3について、「子機A」、「子機B」、「子機C」と区別する。
【0024】
それぞれの警報器1は、所定の異常を検知し、異常を検知した場合に周囲に対して報知を行う機能を有する。それぞれの警報器1は、たとえば、ガス警報器である。この場合、所定の異常は、検知対象ガスの発生(漏洩を含む)である。
【0025】
それぞれの警報器1は、無線通信機能を有している。個々の警報器1は、通信可能な範囲に存在する他の警報器1と、双方向の無線通信が可能である。複数の子機3の各々は、異常を検知した場合など、予め設定された報知事象が発生すると、所定の報知動作を行うとともに、他の警報器1(親機2および他の子機3)に対して報知事象に対応した信号を送信する。親機2は、複数の子機3のいずれかから報知事象に対応した信号を受信した場合、報知事象に対応した対応動作を実行する。
【0026】
親機2は、対応動作として、報知事象に対応した報知動作を行うことができる。親機2は、他の子機3とは異なる機能として、外部機器200との有線または無線による通信機能を有する。親機2は、対応動作として、報知事象に対応した信号を、外部機器200に対して送信することができる。外部機器200は、警報システム100の外部の機器である。外部機器200は、たとえば警報システム100が設置された施設における、上位コンピュータ、集中管理装置、保安装置、ガスメータまたはガス開閉器などでありうる。
【0027】
親機2およびそれぞれの子機3は、設置場所や周囲に存在する障害物の有無などに起因して、他の全ての警報器1と無線通信可能であるとは限らない。そのため、警報システム100における各警報器1の間で通信可能なネットワークの形態は様々である。
【0028】
図2では、親機2および3つの子機3が、いずれも、相互に通信可能な例を示す。
図3では、3つの子機3のうち子機Aが、親機2とは直接通信できない。この場合、子機Aは、子機Bまたは子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図4では、3つの子機3のうち子機Cのみが、親機2と直接通信可能である。この場合、子機Aおよび子機Bは、少なくとも子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図5では、子機Aと子機B、子機Bと子機C、子機Cと親機2とが直接通信可能であり、他の経路では通信できない。この場合、子機Aは、子機Bおよび子機Cを中継して親機2と通信を行う。
図2~
図5は、警報システム100において成立しうるネットワーク形態の一例であり、警報システム100では、
図2~
図5に示した以外のネットワーク形態もありうる。
【0029】
本実施形態では、親機2、および複数の子機3の各々は、信号送信する場合には他の全ての警報器1(親機2および他の子機3)に対して信号送信を実行するように構成されている。そして、複数の子機3の各々は、他の警報器1(親機2または他の子機3)から信号を受信した場合には、受信した信号を、他の全ての警報器1(親機2および他の子機3)に対して送信する中継送信を行うように構成されている。警報システム100では、複数の子機3の各々が、少なくとも親機2と、直接にまたは他の子機3を中継して、通信することが可能なように構成されている。
【0030】
(親機および子機の構成)
図6は親機2の構成を示すブロック図であり、
図7は子機3の構成を示すブロック図である。本実施形態では、3つの子機3は、いずれも同一構成を有する。
【0031】
〈親機〉
図6に示すように、親機2は、検知部21、報知部22、通信部23、操作受付部24、制御部25、記憶部26、電源部27、および筐体28を主として備える。検知部21、報知部22、通信部23、操作受付部24、制御部25、記憶部26および電源部27は、筐体28内に収容されている。
【0032】
検知部21は、警報対象となる異常を検知するセンサを備える。本実施形態では、センサは、予め決められた検知対象ガスを検知するガスセンサGSである。検知対象ガスは、特に限定されないが、たとえばメタンガス、プロパンガスなどの燃料ガス(可燃性ガス)である。ガスセンサGSは、たとえば半導体式センサまたはMEMSセンサである。ガスセンサGSは、特許請求の範囲の「センサ」の一例である。
【0033】
報知部22は、スピーカ22aおよびランプ22bを含んでいる。報知部22は、自機の周囲に対して、報知を行うように構成されている。スピーカ22aは、ブザー音、音声メッセージなどの報知音声を出力する。ランプ22bは、光出力(発光)によって報知を行う。ランプ22bは、発光色や、点灯、点滅などの発光パターンによって、報知を行う。
【0034】
通信部23は、アンテナと、信号の送信回路および信号の受信回路を含んだ無線通信モジュールとを含む。無線通信の通信方式、無線周波数などは特に限定されない。
【0035】
操作受付部24は、ユーザからの操作入力を受け付け、入力に応じた信号を制御部25に出力する。操作受付部24は、1つ以上のスイッチを含む。スイッチは、たとえば押しボタン式のスイッチである。たとえば警報時に操作受付部24が入力(押下)されると、制御部25が警報の停止(一時停止)の処理を行う。たとえば警報を行っていない状態(通常時)に操作受付部24が入力(押下)されると、制御部25が警報器1の点検処理を行う。
【0036】
制御部25は、CPUなどのプロセッサを含んでいる。制御部25は、記憶部26に記憶されたプログラム26aを実行することにより、警報器1を親機2として動作させるための制御を行う。また、制御部25は、時間計測を行う機能を有する。制御部25は、検知部21のガスセンサGSから出力信号を取得し、報知条件を満たしたか否かの判定を行う。報知条件は、たとえば、ガスセンサGSの出力信号が所定の閾値以上となることである。制御部25は、報知条件を満たしたと判定した場合、報知部22により自機の周囲に向けた周囲報知を実行する処理を行う。周囲報知は、スピーカ22aによる報知音の鳴動およびランプ22bの点灯(発光)のいずれかまたは両方によって行われる。
【0037】
制御部25は、親機2の動作として、複数の子機3の各々から信号を取得し、取得した信号に対応した対応動作を実行する制御を行う。制御部25は、対応動作として、報知部22による報知を実行する処理、および、外部機器200(
図1参照)への信号出力を実行する処理、の少なくとも一方を行う。子機3から取得される信号には、所定の報知事象が発生したことを示す報知信号51(
図1参照)、通信強度の点検のために送信される点検信号、警報器1の有効期限切れを示す信号、などがある。また、制御部25は、親機2の動作として、子機3から受信した信号に対応して、応答信号52(
図1参照)を送信する制御を行う。
【0038】
報知事象は、検知対象ガスの検知、すなわちガスセンサGSの出力信号が報知条件を満たしたこと、を含む。報知事象は、子機3の点検動作によって子機3の故障(または故障が疑われる異常)が検出されたことを含む。
【0039】
記憶部26には、制御部25が制御処理を行うためのプログラム26aが記憶されている。記憶部26は、たとえば半導体記憶素子からなる。記憶部26には、報知条件を満たしたか否かの判定閾値が予め記憶されている。記憶部26には、それぞれの子機3から受信した信号に含まれる情報が記憶される。
【0040】
電源部27は、警報器1の各部への電力供給を行う。電源部27は、警報器1の外部の電力供給源に電源ケーブルを介して接続可能である。電力供給源は、たとえば警報システム100が設置されている施設の商用電源である。
【0041】
〈子機〉
図7に示すように、子機3は、ガスセンサGSを備えた検知部31、スピーカ32aおよびランプ32bを含む報知部32、通信部33、操作受付部34、制御部35、記憶部36、電源部37、および筐体38を主として備える。
図6および
図7から分かるように、親機2と各子機3とは、記憶部26に記憶されたプログラム36aを除いて、実質的に同一構成を有するので、子機3の説明を省略する。
【0042】
子機3の制御部35は、記憶部36に記憶されたプログラム36aを実行することにより、警報器1を子機3として動作させるための制御を行う。
【0043】
制御部35は、所定の報知事象が発生した場合に、報知部32により報知事象を自機の周囲へ報知する周囲報知を実行する制御を行う。周囲報知は、スピーカ32aによる報知音の鳴動およびランプ32bの点灯(発光)いずれかまたは両方によって行われる。報知事象は、上記の通り、センサにより異常を検知したこと、自機に故障(または故障が疑われる異常)が検出されたことを含む。
【0044】
制御部35は、所定の報知事象が発生した場合に、親機2に対して報知信号51を送信する制御を行う。複数の子機3の各々は、自機において報知事象が発生した場合、他の警報器1(親機2および他の子機3)への、報知事象に対応する報知信号51の送信を行うように構成されている。
【0045】
また、複数の子機3の各々は、親機2または他の子機3から信号を受信すると、信号を中継送信するように構成されている。すなわち、制御部35は、親機2または他の子機3からの信号を受信した場合、受信した信号を中継送信するように通信部33を制御する。
【0046】
また、制御部35は、時間計測を行う機能を有する。制御部35は、稼働中、所定の第1時間間隔毎に、通信部33により親機2に対して通信(以下、定期通信という)を行う制御を実行する。第1時間間隔は、複数の子機3に対して互いに異なる値が設定されている。そのため、複数の子機3は、互いに異なるタイミングで、親機2に対する定期通信を行う。これにより、各子機3から送信された信号が輻輳することを回避できる。
【0047】
(信号の内容)
次に、親機2とそれぞれの子機3との間の通信により送信される信号の内容について説明する。
図8に示すように、送信される信号は、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43、および通信ステータス44を含む送信データ40によって構成される。
【0048】
通信コマンド41は、その信号の種別と、通信相手との各情報を含む。信号の種別は、子機3から親機2への信号(報知信号51など)か、親機2から子機3への信号(応答信号52)かを示す情報である。通信相手は、信号の発信元または宛先を識別する情報である。信号の種別が子機3から親機2への信号である場合、通信相手は、発信元が子機A、子機B、子機Cのいずれであるかを特定する情報である。信号の種別が親機2から子機3への信号である場合、通信相手は、送信先が子機A、子機B、子機Cのいずれであるかを特定する情報である。
【0049】
状態フラグ42は、その信号の内容を識別する情報である。状態フラグ42は、警報、故障、使用期限、点検、および定期通信のいずれかのフラグを含む。状態フラグ42の内容によって、送信される信号が、警報の報知信号であるか、故障の報知信号であるか、使用期限超過を示す信号であるか、通信強度の点検中を示す信号であるか、上記のいずれにも該当しない定期通信であるか、が識別される。状態フラグ42は、上記の5種のフラグ以外の種類のフラグを含み得る。
【0050】
通信回数43は、各子機3における信号の送信回数の累積値を示す。通信回数43は、子機Aの送信回数、子機Bの送信回数、子機Cの送信回数、の3つの情報を含む、各々の子機3(たとえば子機A)は、信号を送信する際に、通信回数43における該当する項目(子機Aの送信回数)の送信回数を1ずつ加算する。通信回数43により、子機3毎の、時系列の送信履歴を把握できる。
【0051】
通信ステータス44は、その信号の発信元から宛先までの送信履歴を示す情報である。すなわち、通信ステータス44は、その信号を中継した子機3および中継順を識別する識別情報を含む。また、通信ステータス44は、その信号を受信した警報器1(親機2または子機3)における受信強度Eaの情報を含む。通信ステータス44は、特許請求の範囲の「中継履歴情報」の一例である。
【0052】
通信ステータス44に記録される受信強度Eaは、通信部23(33)によって受信した信号の強度を示す情報であり、本実施形態では、受信強度Eaは、「弱」、「中」、「強」の3段階で定義される。受信強度Eaは、数値情報でもよい。通信ステータス44は、送信または中継する警報器1を特定する識別情報と、受信強度Eaの情報とを、送信/中継回数毎に含む。本実施形態では、親機2と子機3との通信には、最初の送信と、最大2回の中継送信とが含まれるため、送信/中継回数は最大3回である。
【0053】
複数の子機3の各々は、他の子機3から信号を受信した場合に、受信した信号における通信ステータス44に情報を追記して中継送信を行うように構成されている。
【0054】
図9を参照して、通信ステータス44の追記を説明する。
図9の左側に、通信経路と、機器間の受信強度の例を示す。
図9の右側は、送信時の通信ステータス44の具体例を示す。
図9では、通信ステータス44のうち、送信または中継の識別情報と、受信強度Eaと、をそれぞれ列で示し、送信/中継回数をそれぞれ行で示した表形式で通信ステータス44を示している。
【0055】
図9の左側に示すように、子機Aから子機C、子機Cから子機B、子機Bから親機2という通信経路で通信が行われる場合、発信元である子機Aが、通信ステータス44の1回目(1行目)の情報エリア(太線枠部参照)に、子機Aを示す識別情報を記録して送信する。
【0056】
子機Aから信号を受信した子機Cは、通信ステータス44の1回目(1行目)の情報エリアに、子機Aからの信号の受信強度Ea(
図9では「強」)を追記するとともに、通信ステータス44の2回目(2行目)の情報エリア(太線枠部参照)に、子機Cを示す識別情報を追記して中継送信する。
【0057】
同様に、子機Cから信号を受信した子機Bは、通信ステータス44の2回目(2行目)の情報エリアに、子機Cからの信号の受信強度Ea(
図9では「中」)を追記するとともに、通信ステータス44の3回目(3行目)の情報エリアに、子機Bを示す識別情報を追記して中継送信する。
【0058】
子機Bから信号を受信した親機2は、通信ステータス44の3回目(3行目)の情報エリアに、子機Bからの信号の受信強度(
図9では「強」)を追記する。
【0059】
この結果、通信ステータス44は、子機Aから子機C、子機Cから子機B、子機Bから親機2という通信経路で通信が行われたこと、子機Aと子機Cとの間の受信強度Eaが「強」、子機Cと子機Bとの間の受信強度Eaが「中」、子機Bと親機2との間の受信強度Eaが「強」、であったことを示す履歴情報を含む。通信ステータス44によって、いずれかの子機3と親機2との間の通信経路と、その通信経路における受信機器毎の各受信強度Eaが把握可能である。
【0060】
(通信強度の取得方法)
次に、親機2といずれかの子機3との間の通信強度の取得方法を説明する。
【0061】
通信強度は、受信した信号に含まれる通信ステータス44に基づいて決定される。通信強度は、信号の発信元(
図9では子機A)から送信先(
図9では親機2)までの通信経路毎の各受信強度Eaを考慮した、信号の発信元(
図9では子機A)と送信先(
図9では親機2)との間での通信における総合的な信号の受信強度を示す。
【0062】
図10(A)に示すように、たとえば子機Aから親機2に信号を送信する場合には、直接通信と中継送信とによって複数の通信経路が構築されるので、それらの通信経路毎に、信号が親機2に受信される。そのため、親機2といずれかの子機3との間で通信を行う場合、通信経路毎に、通信ステータス44の内容が異なる信号がそれぞれ受信される。
【0063】
そこで、本実施形態では、親機2および子機3の各々は、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度Ebを取得する。そして、親機2および子機3の各々は、取得した1つまたは複数の経路通信強度Ebに基づいて、親機2といずれかの子機3との間の通信強度Fを取得するように構成されている。
【0064】
図10(A)は、親機2および各子機3(子機A~子機C)が相互通信可能である場合の、子機Aから親機2への通信経路を構成する機器間の受信強度Eaの例を示している。たとえば子機Aから延びる3つの矢印は信号を表し、受信強度Eaは信号の送信先で検出される受信強度を示す。
【0065】
図10(A)の例の場合、子機Aから親機2への通信経路は、
図10(B)に示すように(1)~(5)の5通りである。
(1)子機Aから親機2(直接通信)
(2)子機Aから子機Bを中継して親機2
(3)子機Aから子機Cを中継して親機2
(4)子機Aから子機B、子機Cの順で中継して親機2
(5)子機Aから子機C、子機Bの順で中継して親機2
【0066】
つまり、いずれかの子機3(ここでは子機A)から送信された1つの信号は、最大で5通りの通信経路(1)~(5)を経て、親機2によってそれぞれ受信される。通信経路毎の経路通信強度Ebは、その通信経路を構成する機器間の受信強度Eaのうち、最も強度が低い受信強度Eaで決定される。
【0067】
通信経路(1)の場合、中継なしで1回しか通信が行われないため、子機Aからの信号の親機2による受信強度Ea=「弱」が、通信経路(1)の経路通信強度Ebとなる。
【0068】
通信経路(2)の場合、子機Aから子機Bの受信強度Eaが「強」、子機Bから親機2の受信強度Eaが「強」である。受信強度Eaがいずれも「強」であるため、受信強度「強」が、通信経路(2)の経路通信強度Ebとなる。
【0069】
通信経路(3)の場合、子機Aから子機Cの受信強度Eaが「強」、子機Cから親機2の受信強度Eaが「中」である。そのため、最も低強度となる受信強度「中」が、通信経路(3)の経路通信強度Ebとなる。
【0070】
通信経路(4)の場合、子機Aから子機Bの受信強度Eaが「強」、子機Bから子機Cの受信強度Eaが「強」、子機Cから親機2の受信強度Eaが「中」である。そのため、3つのうち最も低強度となる受信強度「中」が、通信経路(4)の経路通信強度Ebとなる。
【0071】
通信経路(5)の場合、子機Aから子機Cの受信強度Eaが「強」、子機Cから子機Bの受信強度Eaが「強」、子機Bから親機2の受信強度Eaが「強」である。いずれも「強」であるため、受信強度「強」が、通信経路(5)の経路通信強度Ebとなる。
【0072】
したがって、
図10の場合、通信経路(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の各経路通信強度Ebは、それぞれ「弱」、「強」、「中」、「中」、「強」である。これらは、いずれも子機Aから親機2へ通信を行う場合の、それぞれの通信経路における通信強度(経路通信強度Eb)である。
【0073】
本実施形態では、いずれか1つの子機3と親機2との間の通信強度Fは、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度Ebのうちで、強度が最も高い経路通信強度Ebである。つまり、
図10(A)のケースにおいて、子機Aから親機2へ通信を行う場合の通信強度Fは、
図10(C)に示すように、それぞれの経路通信強度Ebのうちで最も強度が高い「強」であると判断される。
【0074】
このように、親機2およびそれぞれの子機3は、通信可能な通信経路毎に、信号を受信する。それぞれの信号の通信ステータス44の内容から、通信経路毎に、経路通信強度Ebを取得する。そして、親機2およびそれぞれの子機3は、通信経路毎の経路通信強度Ebから、親機2といずれかの子機3(自機)との間の通信強度Fを取得する。
【0075】
(中継送信の要否判定)
子機3が信号を受信した際に、中継送信が行われない場合がある。それぞれの子機3は、親機2または他の子機3から信号を受信した場合において、下記の条件に基づいて、中継送信の要否判定を行う。それぞれの子機3は、第1から第4の条件が満たされた場合に、中継送信を行う。以下は、中継送信を行うための条件である。
第1の条件は、自機が発信元でないことである。
第2の条件は、受信した信号が自機により中継済みでないことである。
第3の条件は、信号を受信してから予め設定された待機時間が経過したことである。
第4の条件は、受信した信号に対する親機2からの応答信号52を受信していないことである。
【0076】
第1の条件の充足は、受信した信号の通信コマンド41(
図8参照)に基づき判断される。第2の条件の充足は、信号の通信ステータス44(
図9参照)に基づき判断される。第3の条件の充足は、制御部35が信号を受信した時点からの経過時間をカウントし、予め設定された待機時間と経過時間との比較に基づき判断される。待機時間は、複数の子機3の各々について互いに異なる値が設定されている。子機Aの待機時間をT3a、子機Bの待機時間をT3b、子機Cの待機時間をT3cとすると、各待機時間の長さは、T3a<T3b<T3cである。T3a、T3b、T3cは、それぞれ、たとえば32ミリ秒、66ミリ秒、100ミリ秒である。第4の条件の充足は、信号の受信後、待機時間中に、その信号に基づく応答信号52を受信したか否かに基づき判断される。
【0077】
第1の条件により、信号の発信元である子機3自身が、他の子機3によって中継送信されて戻ってきた信号を、自ら中継送信することが回避される。
【0078】
第2の条件により、2つの子機3の間で中継送信を行い合うといった中継送信のループが回避される。このように、複数の子機3の各々は、第2の条件により、受信した信号の通信ステータス44に自機が含まれる場合、中継送信を行わないように構成されている。
【0079】
第3の条件により、複数の子機3の中継送信が同時に実行されることが回避される。第4の条件により、既に親機2に対して信号が正常に到達している場合に、不必要な中継送信を行うことが回避される。このように、複数の子機3の各々は、第3および第4の条件により、他の子機3から信号を受信してから待機時間が経過する前に、信号に基づく応答信号52を受信した場合、信号の中継送信を中止するように構成されている。
【0080】
親機2は、いずれかの子機3から信号を受信した場合、自機が発信元でない場合に、応答信号52の送信を行う。これにより、応答信号52の発信元である親機2自身が、他の子機3によって中継された応答信号52に応じて応答信号52を再送信することが回避される。
【0081】
(通信強度の点検)
次に、警報システム100における通信強度の点検処理について説明する。上記の通り、親機2およびそれぞれの子機3は、
図2~
図5に示したような様々なネットワーク形態で通信する可能性がある。警報システム100がいずれかのネットワーク形態で構築された場合でも、機器間の通信強度は、各機器の設置環境の変化などに影響され、変動する可能性がある。たとえば室内に新たに設置された設置物が障害となりいずれかの警報器1の受信強度Eaが低下したりする。つまり、
図2~
図5に示したネットワーク形態における各通信経路は、一時的または継続的に、通信不能となったり通信強度が不安定化したりすることがありうる。
【0082】
そこで、本実施形態の警報システム100は、警報システム100を構成する親機2と各子機3との間の通信強度Fを取得する通信強度点検処理を行うことが可能に構成されている。本実施形態では、親機2が実行する通信強度点検処理と、各子機3が実行する通信強度点検処理とで、処理内容が異なっている。
【0083】
具体的には、親機2が実行する通信強度点検処理では、親機2は、複数の子機3の各々と通信を行い、それぞれの子機3からの信号受信に基づいて通信強度Fを報知する第1報知処理を行うように構成されている。つまり、第1報知処理では、親機2と複数の子機3との一対多の関係でそれぞれ通信強度Fが取得され、親機2は、それぞれの子機3との間の各通信強度Fを総合した報知を行う。
【0084】
子機3が実行する通信強度点検処理では、複数の子機3の各々は、親機2と通信を行い、親機2からの信号受信に基づいて自機と親機2との間の通信強度Fを報知する第2報知処理を行うように構成されている。つまり、第2報知処理では、1つの子機3と親機2との一対一の関係で通信強度Fが取得され、それぞれの子機3は、自機と親機2との間の通信強度Fを報知する。
【0085】
なお、親機2による第1報知処理、および子機3による第2報知処理のいずれにおいても、通信強度Fの報知方法は、音声による報知または発光による報知である。音声による報知の場合、スピーカ22a(スピーカ32a)により、通信強度Fの内容(「弱」、「中」、「強」のいずれか)を音声メッセージで出力する。発光による報知の場合、通信強度Fの内容(「弱」、「中」、「強」のいずれか)に応じて異なる態様でランプ22b(ランプ32b)を点灯させる。たとえば、通信強度Fに応じて発光色を異ならせる、通信強度Fに応じて点灯するランプの位置および/または数を切り替える(複数のランプを備える場合)、通信強度Fに応じて点灯パターン(点灯、点滅、点滅の場合は複数種類の点滅間隔など)を異ならせる、といった方法の1つまたは複数の組み合わせにより、報知が行われる。
【0086】
〈第1報知処理〉
親機2が実行する第1報知処理について具体的に説明する。親機2は、操作受付部24(
図1参照)に対する操作を受け付けると、第1報知処理を行う。親機2は、第1報知処理において、複数の子機3の各々との間の複数の通信強度Fを取得し、取得した各々の子機3との間の通信強度Fのうちで強度が最も低い1つの子機3との間の通信強度Fを報知するように構成されている。
【0087】
たとえば、
図11に示すように、親機2が、子機Aからの信号受信に基づく通信強度F1、子機Bからの信号受信に基づく通信強度F2、および、子機Cからの信号受信に基づく通信強度F3を、それぞれ取得する。通信強度F1~F3の取得方法は、
図10に示した通りである。
図11では、親機2と子機Aとの通信強度F1が「強」、親機2と子機Bとの通信強度F2が「強」、親機2と子機Cとの通信強度F3が「弱」、であったと仮定する。この場合、親機2は、各通信強度「強」、「強」、「弱」のうちから、強度が最も低い1つの子機Cとの間の通信強度F3である「弱」を報知する。第1報知処理において、親機2は、強度が最も低い子機C以外の、他の子機Aおよび子機Bとの間の各通信強度F1、F2の報知を行わない。これにより、親機2は、警報システム100において最も通信異常が生じやすい(すなわち、最も強度が低い)子機3との通信強度F3を報知する。
【0088】
複数の子機3の各々は、親機2が第1報知処理を実行する場合、通信強度Fの報知を行わないように構成されている。したがって、親機2が第1報知処理を実行する場合、親機2のみが通信強度F(
図11ではF3)の報知を行う。
【0089】
図12は、第1報知処理を実行する際の通信タイミングを示したタイムチャートである。なお、
図12では説明のため、親機2および全ての子機3(子機A~子機C)が相互通信可能な例を示す。
【0090】
親機2は、それぞれの子機3からの定期通信を利用して、各子機3との間の通信強度Fを取得する。親機2は、操作受付部24に対する操作を受け付けると、第1報知処理を開始する。親機2は、それぞれの子機3からの定期通信を待ち受け、定期通信で受信した信号に含まれる通信ステータス44の情報に基づいて、通信強度Fを取得する。
【0091】
上記の通り、複数の子機3の各々には、互いに異なる第1時間間隔の値が設定されているため、複数の子機3の各々の定期通信の通信タイミングは、時間的にずれている。子機Aの第1時間間隔をT1a、子機Bの第1時間間隔をT1b、子機Cの第1時間間隔をT1cとすると、T1a<T1b<T1cである。T1a、T1b、T1cは、それぞれ、たとえば11秒、12秒、13秒である。
【0092】
図12の場合、第1報知処理の開始後、まず子機Aからの定期通信が行われる。子機Bおよび子機Cは、子機Aからの定期通信を受信した場合、中継送信を行う。親機2は、子機Aからの定期通信による信号受信に基づいて、子機Aとの間の通信強度F1(
図11の例では「強」)を取得する。
【0093】
図12の例では、次に、子機Bからの定期通信が行われる。子機Aおよび子機Cは、子機Aからの定期通信を受信した場合、中継送信を行う。親機2は、子機Bからの定期通信による信号受信に基づいて、子機Bとの間の通信強度F2(
図11の例では「強」)を取得する。
【0094】
なお、第1時間間隔T1a、T1b、T1cが互いに異なるため、最後の子機Cからの定期通信の前に、子機Aからの定期通信が実行される場合がある。
【0095】
図12の例では、最後に、子機Cからの定期通信が行われる。第1報知処理の開始タイミング(操作入力の受付)が、子機Cからの定期通信の直後であったためである。定期通信の順序は、第1報知処理の開始タイミングによって変化しうる。子機Aおよび子機Bは、子機Cからの定期通信を受信した場合、中継送信を行う。親機2は、子機Cからの定期通信による信号受信に基づいて、子機Cとの間の通信強度F3(
図11の例では「弱」)を取得する。
【0096】
親機2は、全ての子機3からの各通信強度(F1~F3)を取得した場合、それぞれの子機3からの信号受信に基づいて通信強度F(強度が最も低い子機Cとの通信強度F3)を報知する。
【0097】
〈第2報知処理〉
次に、それぞれの子機3が実行する第2報知処理について具体的に説明する。複数の子機3のいずれかが操作受付部34(
図1参照)に対する操作を受け付けると、操作を受け付けた子機3と親機2との間で第2報知処理が行われる。操作を受け付けていない他の子機3は、第2報知処理を実行しない。
【0098】
図14に示すように、第2報知処理を実行する子機3は、点検信号53を送信する。点検信号53は、直接、または他の子機3による中継送信によって、親機2に受信される。
図15に示すように、点検信号53を受信した親機2は、点検信号53に応じて応答信号52を送信する。応答信号52は、直接、または他の子機3による中継送信によって、点検信号53を送信した子機3に受信される。
【0099】
第2報知処理を実行する子機3は、点検信号53に対する親機2からの応答信号52の信号受信に基づいて、親機2との間の通信強度Fを取得する。第2報知処理を実行する子機3は、取得した通信強度Fを報知する。
【0100】
なお、親機2は、子機3からの点検信号53の信号受信に基づいて、第2報知処理を実行する子機3との間の通信強度Fを取得する。そして、親機2は、いずれかの子機3が第2報知処理を実行する場合、その子機3との間の通信強度Fを報知するように構成されている。
【0101】
たとえば、
図13に示すように、子機Aが第2報知処理を実行する場合、子機Aは、親機2からの応答信号52に基づく通信強度F1a(親機2から子機Aへの通信強度F)を取得する。一方、親機2は、子機Aからの点検信号53に基づく通信強度F1b(子機Aから親機2への通信強度F)を取得する。
図13の例では、親機2から子機Aへの通信強度F1aが「中」、子機Aから親機2への通信強度F1bが「強」であったと仮定する。この場合、子機Aは、第2報知処理として、親機2から子機Aへの通信強度F1aである「中」を報知する。この際、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1bである「強」を報知する。
【0102】
このように、第2報知処理では、いずれか1つの子機3と親機2とのペアで、親機2から子機3への通信強度F(F1a)と、子機3から親機2への通信強度F(F1b)とをそれぞれ報知する。なお、
図13では、説明のため、便宜的に、親機2から子機Aへの通信強度F1a(「中」)と、子機Aから親機2への通信強度F1b(「強」)とを異ならせて示しているが、通常は、通信強度F1aと通信強度F1bとは互いに等しくなると考えられる。通信強度F1aと通信強度F1bとが異なる結果となるケースは、点検信号53の送信タイミングと応答信号52の送信タイミングとの間に何らかの通信環境の変動が生じた場合などである。
【0103】
図14および
図15は、第2報知処理による通信動作を示したフロー図である。定期通信を利用する第1報知処理と異なり、第2報知処理では、子機3は、定期通信とは無関係に、操作入力を受け付けたタイミングで点検信号53の送信を実行する。ここでは、複数の子機3のうち、子機Aが第2報知処理を実行する例を示す。
図14および
図15の例では、なお、
図14および
図15では説明のため、親機2および全ての子機3(子機A~子機C)が相互通信可能な例を示す。なお、以下で説明する子機A~子機Cの動作は、それぞれの子機3の制御部35の制御により実行され、親機2の動作は、親機2の制御部25の制御により実行される。
【0104】
子機Aは、操作受付部34に対する操作を受け付けると、第2報知処理を開始する。子機Aは、ステップS1において、点検信号53を送信する。点検信号53は、子機B、子機Cおよび親機2に受信される。点検信号53を受信した子機Bおよび子機Cは、点検信号53の中継送信のため、経過時間のカウントを開始する。
【0105】
ステップS2において、親機2は、子機Aからの点検信号53の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(子機A-親機2;通信経路(1))を取得する。ステップS3において、親機2は、取得した通信経路(1)の経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断する。経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS15において、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1b(
図13参照)を確定する。通信強度Fがそれぞれの経路通信強度Ebのうちで最も強度が高い経路通信強度Ebで決まるためである。
【0106】
この場合、
図15のステップS16において、親機2は応答信号52を送信する。応答信号52の受信によって、子機Bおよび子機Cは中継送信の処理を終了する。そのため、
図14では、ステップS4~S14を示しているが、ステップS3からステップS15に進んだケースでは、子機B、子機Cの待機時間(T3b、T3c)の経過前にステップS16の応答信号52が子機B、子機Cに受信された場合、応答信号52の受信済み(第4の条件を満たさない)となるため、中継送信(ステップS4、S7、S10およびS13)が行われず、ステップS4~S14は実行されない。
【0107】
ステップS3において経路通信強度Ebが「強」でない場合、親機2は、他の経路通信強度Ebを取得するためステップS5に進む。
【0108】
待機時間T3b(<T3c)の経過後、ステップS4において、子機Bが、点検信号53の中継送信を実行する。子機Bから中継送信された点検信号53は、子機A、子機Cおよび親機2により受信される。子機Bからの点検信号53を受信した子機Aは、その点検信号53の発信元が自機である(第1の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。子機Bからの点検信号53を受信した子機Cは、第3の条件に基づき、経過時間のカウントを開始する。なお、子機Cが子機Aから直接受信した点検信号53(ステップS1)と、子機Cが子機Bから受信した中継による点検信号53(ステップS4)とは、通信ステータス44の内容が異なる。そのため、子機Cは、それぞれの信号に対して、経過時間のカウントを別個に行う。
【0109】
ステップS5において、親機2は、子機Bからの点検信号53の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(子機A-子機B-親機2;通信経路(2))を取得する。ステップS6において、親機2は、取得した通信経路(2)の経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断する。経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS15において、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1b(
図13参照)を確定する。
【0110】
ステップS6からステップS15に進んだケースでは、ステップS16の応答信号52が子機Cの待機時間(T3c)の経過前に子機Cに受信された場合、第4の条件を満たさなくなるため、ステップS7~S14は実行されない。
【0111】
ステップS6において経路通信強度Ebが「強」でない場合、親機2は、他の経路通信強度Ebを取得するためステップS8に進む。
【0112】
待機時間T3cの経過後、ステップS7において、子機Cが、点検信号53の中継送信を実行する。子機Cから中継送信された点検信号53は、子機A、子機Bおよび親機2により受信される。子機Cからの点検信号53を受信した子機Aは、その点検信号53の発信元が自機である(第1の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。子機Cからの点検信号53を受信した子機Bは、第3の条件に基づき、経過時間のカウントを開始する。
【0113】
ステップS8において、親機2は、子機Cからの点検信号53の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(子機A-子機C-親機2;通信経路(3))を取得する。ステップS9において、親機2は、取得した通信経路(3)の経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断する。経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS15において、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1b(
図13参照)を確定する。
【0114】
ステップS9からステップS15に進んだケースでは、ステップS16の応答信号52が子機B、子機Cの待機時間(T3b、T3c)の経過前に子機B、子機Cに受信された場合、第4の条件を満たさなくなるため、ステップS10~S14は実行されない。
【0115】
ステップS9において経路通信強度Ebが「強」でない場合、親機2は、他の経路通信強度Ebを取得するためステップS11に進む。
【0116】
ステップS4からの待機時間T3cの経過後、ステップS10において、子機Cが、点検信号53の中継送信を実行する。子機Cから中継送信された点検信号53は、子機A、子機Bおよび親機2により受信される。子機Cからの点検信号53を受信した子機Aは、その点検信号53の発信元が自機である(第1の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。子機Cからの点検信号53を受信した子機Bは、受信した信号が自機により中継済みである(第2の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。
【0117】
ステップS11において、親機2は、子機Cからの点検信号53の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(子機A-子機B-子機C-親機2;通信経路(4))を取得する。ステップS12において、親機2は、取得した通信経路(4)の経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断する。経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS15において、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1b(
図13参照)を確定する。
【0118】
ステップS12からステップS15に進んだケースでは、ステップS16の応答信号52が子機Bの待機時間(T3c)の経過前に子機Bに受信された場合、第4の条件を満たさなくなるため、ステップS13~S14は実行されない。
【0119】
ステップS12において経路通信強度Ebが「強」でない場合、親機2は、他の経路通信強度Ebを取得するためステップS14に進む。
【0120】
ステップS7から待機時間T3cの経過後、ステップS13において、子機Bが、点検信号53の中継送信を実行する。ここで、各々の子機3(子機A~子機C)は、2回目以降の中継送信については、信号受信から中継送信の実行までの待機時間(T3a、T3b、T3c)を、最も長い待機時間(ここでは、T3c)に統一するように構成されている。そのため、ステップS4では、子機Bが待機時間T3bの経過後に1回目の中継送信を行ったが、このステップS7では、子機Bが待機時間T3cの経過後に2回目の中継送信を実行する。これにより、それぞれの子機3による通信が同一のタイミングで実施されることを回避できる。最も長い待機時間T3cに統一されるため、子機Cについては待機時間の値が変更されることがない。図示しないが、たとえば子機Cが点検信号を送信して、子機Aおよび子機Bが中継送信をするケースの場合、子機Aおよび子機Bの2回目以降の中継送信では、待機時間がそれぞれT3a、T3bからT3cに変更される。
【0121】
子機Bから中継送信された点検信号53は、子機A、子機Cおよび親機2により受信される。子機Bからの点検信号53を受信した子機Aは、その点検信号53の発信元が自機である(第1の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。子機Bからの点検信号53を受信した子機Cは、受信した信号が自機により中継済みである(第2の条件を満たさない)ため、中継不要と判定する。
【0122】
ステップS14において、親機2は、子機Bからの点検信号53の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(子機A-子機C-子機B-親機2;通信経路(5))を取得する。これにより、全ての通信経路の経路通信強度Ebが取得されるため、ステップS15において、親機2は、子機Aから親機2への通信強度F1b(
図13参照)を確定する。
【0123】
図15のステップS16において、親機2は、受信した点検信号53に対応した応答信号52を送信する。応答信号52は、子機A、子機Bおよび子機Cにより受信される。
【0124】
応答信号52を受信した子機Bおよび子機Cは、それぞれ、これまでに受信した点検信号53に対する中継処理(経過時間のカウント)を終了する。そして、応答信号52を受信した子機Bおよび子機Cは、それぞれ、応答信号52の中継送信のため、経過時間のカウントを開始する。
【0125】
応答信号52を受信した子機Aは、点検信号53の送信状態を終了するとともに、応答信号52の信号受信に基づいて、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)の取得を行う。通信強度F1aの取得は、親機2による通信強度F1bの取得と類似した動作となるので、簡略化して説明する。
【0126】
まず、ステップS17では、子機Aは、親機2からの応答信号52の信号受信に基づいて、経路通信強度Eb(親機2-子機A)を取得し、ステップS18において、取得した経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断し、経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS30において、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)を確定する。
【0127】
待機時間T3bの経過後の子機Bからの中継送信(ステップS19)により、子機Aは、ステップS20において、経路通信強度Eb(親機2-子機B-子機A)を取得する。子機Aは、ステップS21において、取得した経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断し、経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS30において、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)を確定する。
【0128】
待機時間T3cの経過後の子機Cからの中継送信(ステップS22)により、子機Aは、ステップS23において、経路通信強度Eb(親機2-子機C-子機A)を取得する。子機Aは、ステップS24において、取得した経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断し、経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS30において、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)を確定する。
【0129】
ステップS19からの待機時間T3cの経過後の子機Cからの中継送信(ステップS25)により、子機Aは、ステップS26において、経路通信強度Eb(親機2-子機B-子機C-子機A)を取得する。子機Aは、ステップS27において、取得した経路通信強度Ebが「強」であるか否かを判断し、経路通信強度Ebが「強」である場合、ステップS30において、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)を確定する。
【0130】
ステップS22からの待機時間T3cの経過後の子機Bからの中継送信(ステップS28)により、子機Aは、ステップS29において、経路通信強度Eb(親機2-子機C-子機B-子機A)を取得する。なお、このステップS28の中継送信は、応答信号52に対する子機Bの2回目の中継送信となるため、待機時間がT3b(ステップS19)からT3c(ステップS28)に切り替えられている。子機Aは、ステップS30において、親機2から子機Aへの通信強度F1a(
図13参照)を確定する。
【0131】
なお、子機Aからは応答信号52が送信されないため、ステップS19、S22、S25およびS28の中継送信は、通信強度F1aが確定済みの場合でもスキップされることなく実行される。ステップS19、S22、S25およびS28で中継送信された応答信号52は、親機2により受信されるが、自機が発信元であるので、応答信号52の送信は行われず、経路通信強度Ebの取得も行われない。
【0132】
ステップS31において、子機Aは、ステップS30で確定した、親機2から子機Aへの通信強度F1aの報知を行う。また、ステップS32において、親機2は、ステップS15で確定した、子機Aから親機2への通信強度F1bの報知を行う。
【0133】
第2報知処理は、以上のように行われる。
【0134】
本実施形態では、複数の子機3の各々は、第2報知処理以外の通常時に、所定の第1時間間隔で親機2への信号送信を行い、第2報知処理では、第1時間間隔よりも短い第2時間間隔で信号送信を行い、親機2からの応答信号52を受信することにより、自機と親機2との間の通信強度Fを取得するように構成されている。つまり、第1報知処理での子機3からの信号の送信間隔(第1時間間隔T1a、T1b、T1c)と比べて、第2報知処理での子機3からの信号の送信間隔(第2時間間隔)が、短縮されている。
【0135】
複数の子機3の各々には、同一の第2時間間隔の値が設定されている。第2時間間隔をT2(図示せず)とすると、T2は、いずれの第1時間間隔T1a、T1b、T1cよりも小さい値である。T2は、たとえば1秒である。
【0136】
具体的には、複数の子機3の各々は、第2報知処理では、第2時間間隔T2毎に点検信号53の送信を行う、点検信号53の送信状態となる。点検信号53の送信状態にある子機3は、点検信号53の送信と、所定時間(第2時間間隔T2)の応答信号52の受信待機とを、所定回数繰り返す。つまり、点検信号53の送信後、応答信号52の受信を所定時間待ち、所定時間内に応答信号52の受信ができなかった場合、報知信号51を再送信する、という送信・受信待機が所定回数繰り返される。点検信号53の送信と、待機後の再送信との間の時間間隔が、第2時間間隔T2である。
【0137】
そして、複数の子機3の各々は、応答信号52の受信を含む送信終了条件が満たされると、報知信号51の送信状態を終了するように構成されている。送信状態終了条件は、応答信号52の受信と、送信・受信待機を繰り返し、所定回数内に応答信号52を受信できなかったこと(待機回数の上限に到達したこと)とを含む。
【0138】
したがって、複数の子機3の各々は、第2報知処理を行う場合、送信した点検信号53に対する応答信号52を受信するか、または応答信号52を受信せずに待機回数の上限に達するまで、第2時間間隔T2での点検信号53の送信状態を継続する。
図14および
図15の例では、ステップS1での1回目の点検信号53の送信から所定時間(第2時間間隔T2)内に、ステップS17の応答信号52の受信ができているため、ステップS17において送信状態が終了した例を示している。そのため、
図14および
図15の例では、第2時間間隔T2の経過後の2回目の点検信号53の送信が行われていない。
【0139】
たとえば
図14および
図15において、ステップS1での1回目の点検信号53の送信から所定時間(第2時間間隔T2)内に、ステップS17の応答信号52の受信ができなかった場合、子機Aから2回目の点検信号53が送信される。この場合、2回目の点検信号53の送信をステップS1として、
図14の処理が再度実行される。何らかの理由で子機Aが応答信号52を受信できず、待機回数の上限に到達した場合、第2報知処理を実行した子機3(
図14、
図15では子機A)は、通信強度を確定せずに、通信が失敗したことを確定して第2報知処理を終了する。待機回数の上限は、特に限定されないが、たとえば10回である。
【0140】
なお、ここでは点検処理である第1報知処理と第2報知処理について説明したが、本実施形態では、複数の子機3の各々は、定期通信による信号送信、および、警報以外の報知事象(故障など)が発生した場合の報知信号51の送信を、第1時間間隔で周期的に行う。一方、複数の子機3の各々は、点検信号53の送信の他に、警報の報知事象が発生した場合の報知信号51の送信を、第2時間間隔で行う。
【0141】
(警報システムの通信動作)
次に、
図16を参照して、本実施形態の警報システム100の通信動作を説明する。親機2の通信動作は、制御部25により制御される。複数の子機3の各々の通信動作は、各々の制御部35により制御される。ここでは、複数の子機3のうち、子機Aが通信を行う場合について説明する。
【0142】
ステップS41において、子機Aの制御部35は、通信タイミングであるか否かを判断する。子機Aの制御部35は、前回の通信処理から、第1時間間隔(定期通信、警報以外の報知)または第2時間間隔(警報、点検)が経過した場合に、通信タイミングであると判断して、ステップS42に処理を進める。また、子機Aの制御部35は、操作受付部34を介して操作入力を受け付けた場合、通信タイミングであると判断して、ステップS42に処理を進める。一方、通信タイミングでない場合、子機Aの制御部35は、ステップS43に処理を進める。
【0143】
ステップS42において、子機Aの制御部35は、通信処理を実行する。具体的には、子機Aの制御部35は、送信データ40を作成し、作成した送信データ40を送信する。
【0144】
送信データ40の通信コマンド41には、信号の種別として子機3から親機2への信号を示す値、通信相手として発信元が子機Aであることを示す値が設定される。通信回数43は、現時点における累計値が設定される。通信ステータス44には、送信元が子機Aである値が設定される。
【0145】
このとき、第2報知処理を実行する場合または実行中の場合、送信データ40の状態フラグ42に点検フラグが設定される。状態フラグ42に点検フラグが設定された信号が、点検信号53である。また、報知事象として警報が発生している場合、送信データ40の状態フラグ42に警報フラグが設定される。これにより、警報を示す報知信号51が送信される。報知事象として故障が発生している場合、送信データ40の状態フラグ42に故障フラグが設定される。これにより、故障を示す報知信号51が送信される。この他、報知事象が発生しておらず、警報器1の使用期限が到達している場合、状態フラグ42に使用期限を示すフラグが設定される。
【0146】
子機Aの制御部35は、信号送信後、ステップS43に進み、警報中か否かを判断する。すなわち、ガスセンサGSの出力信号が警報レベルの閾値以上であるか否かを判断する。警報中である場合、子機Aの制御部35は、ステップS41に処理を戻す。これにより、警報中は、通信タイミングが到来する度に、警報を示す報知信号51が子機Aから送信される。また、警報中の間、通信タイミングが第2時間間隔に設定される(警報の報知信号51の送信状態になる)。
【0147】
ステップS43で警報中でない場合、子機Aの制御部35は、ステップS44に処理を進め、点検中(すなわち、第2報知処理中)か否かを判断する。点検中でない場合、子機Aの制御部35は、ステップS41に処理を戻す。警報中でも点検中でもない場合、通信タイミングが第1時間間隔に設定される。点検中である場合、子機Aの制御部35は、ステップS45に処理を進める。また、点検中(第2報知処理中)の間、通信タイミングが第2時間間隔に設定される。
【0148】
ステップS45において、子機Aの制御部35は、通信が成功したか、または点検処理がタイムアウトしたかを判断する。すなわち、親機2からの応答信号52を受信した場合、通信が成功したと判断する。子機Aの制御部35は、点検処理が開始してから、予め設定された時間が経過した場合、点検処理がタイムアウトしたと判断する。タイムアウト前であり、かつ通信が成功していない場合、子機Aの制御部35は、ステップS41に処理を戻す。
【0149】
点検による通信が成功したか、または点検処理がタイムアウトした場合、子機Aの制御部35は、ステップS46において点検結果を報知する処理を行う。つまり、第2報知処理中(ステップS44でYes)であり、通信が成功またはタイムアウトした場合(ステップS45でYes)、子機Aの制御部35は、報知部32により、第2報知処理による通信強度F(
図13のF1a)の報知を行う。なお、子機3の点検動作は、通信強度Fの点検以外にも、ガスセンサGSや報知部32などの他の点検箇所の点検動作も含まれる。第2報知処理による通信強度Fの報知は、これらの他の点検箇所の点検結果の報知と合わせて実行される。
【0150】
子機Aは、ステップS41~S46を繰り返すことにより、通信タイミング毎に親機2との間で通信を行う。
【0151】
子機Aが通信を行う場合には、子機Bおよび子機Cは、中継送信を実行することになる。子機Bの制御部35は、ステップS51において、他の子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、子機Bの制御部35は、ステップS51の判断を繰り返す。他の子機3から信号を受信した場合、子機Bの制御部35は、ステップS52に処理を進める。
【0152】
子機Bの制御部35は、ステップS52において、中継送信処理を行う。
図17に示すように、まず、ステップS81において、子機Bの制御部35は、中継要否判定を行い、中継が不要と判定した場合(ステップS81でNo)には中継送信を行わない。子機Bの制御部35は、中継が必要と判定した場合(ステップS81でYes)には、ステップS82において中継送信を行う。
図16の例で子機Aから信号を受信した場合、子機Bの制御部35は、中継が必要と判断して、待機時間T3b(2回目以降はT3c)の経過後にステップS82に処理を進めることになる。なお、待機時間T3b(2回目以降はT3c)の経過前に親機2からの応答信号52を受信した場合には、中継不要と判断される。ステップS82では、子機Bの制御部35は、受信した送信データ40のうち、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43の値はそのままとし、通信ステータス44に、識別情報と受信強度Eaの情報とを追加記録して、中継送信を行う。
【0153】
同様に、子機Cの制御部35は、ステップS61において、他の子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、子機Cの制御部35は、ステップS61の判断を繰り返す。他の子機3から信号を受信した場合、子機Cの制御部35は、ステップS62に処理を進める。
【0154】
子機Cの制御部35は、ステップS62において、中継送信処理を行う。
図17に示すように、子機Cの制御部35は、ステップS81において中継要否判定を行い、中継が不要と判定した場合(ステップS81でNo)には中継送信を行わない。子機Cの制御部35は、中継が必要と判定した場合(ステップS81でYes)には、ステップS82において中継送信を行う。
図16の例で子機Aから信号を受信した場合、子機Cの制御部35は、中継が必要と判断して、待機時間T3cの経過後にステップS82に処理を進めることになる。なお、待機時間T3cの経過前に親機2からの応答信号52を受信した場合には、中継不要と判断される。ステップS82では、子機Cの制御部35は、受信した送信データ40のうち、通信コマンド41、状態フラグ42、通信回数43の値はそのままとし、通信ステータス44に、識別情報と受信強度Eaの情報とを追加記録して、中継送信を行う。
【0155】
親機2の制御部25は、ステップS71において、いずれかの子機3から信号を受信したか否かを判断する。信号を受信していない場合、親機2の制御部25は、ステップS73に処理を進める。
【0156】
ステップS71において、いずれかの子機3から信号を受信した場合、親機2の制御部25は、ステップS72において、応答信号52の送信を行う。なお、受信した信号が第2報知処理の点検信号53であった場合、親機2は、
図14、
図15で示したように、子機3(ここでは子機A)から親機2への通信強度F1bを確定(ステップS15)した後で、応答信号52の送信(ステップS16)を行う。
【0157】
応答信号52の送信の際、親機2の制御部25は、送信データ40を作成し、作成した送信データ40を応答信号52として送信する。
【0158】
親機2の制御部25は、応答信号52の通信コマンド41に、信号の種別として、親機2から子機3への信号(応答信号52)を示す値を設定し、通信相手として、受信した信号の発信元(この例では子機A)を示す値を設定する。また、親機2の制御部25は、応答信号52の状態フラグ42に、受信した信号の状態フラグ42と同じフラグを設定する。そのため、受信した信号が子機Aからの点検信号53であれば、通信相手が子機Aで、状態フラグ42に点検フラグが設定されることにより、子機Aからの点検信号53に対する応答信号52が作成される。通信ステータス44には、送信元が親機2である値が設定される。
【0159】
親機2の制御部25は、信号送信後、ステップS73に進み、親機2自身が警報中であるか否かを判断する。親機2自身が警報中である場合、親機2の制御部25は、ステップS71に処理を戻す。このため、親機2の警報中は、点検結果の報知が行われず、警報に対する対応動作が実行される。
【0160】
ステップS73で警報中でない場合、親機2の制御部25は、ステップS74に処理を進め、受信した信号の状態フラグ42に点検フラグが設定されていたか否かを判断する。すなわち、親機2の制御部25は、受信した信号が第2報知処理によるいずれかの子機3からの点検信号53であるか否かを判断する。状態フラグ42が点検フラグでない場合(点検信号53でない場合)、親機2の制御部25は、ステップS71に処理を戻す。
【0161】
ステップS74で状態フラグ42が点検フラグである場合、親機2の制御部25は、ステップS75に処理を進め、第2報知処理に対応した点検結果を報知する。点検結果の報知は、上記の通り、受信した点検信号53の通信ステータス44の強度情報に基づく通信強度F(
図13のF1b)の報知が含まれる。
【0162】
親機2の制御部25は、点検結果を報知すると、処理をステップS71に戻す。なお、ステップS71~S75の各子機3との通信の処理と並行して、制御部25は、外部出力処理を実行する。外部出力処理では、親機2の制御部25は、外部機器200に対して、現時点の状況を示すデータを含む信号を出力する。信号出力する情報には、各子機3の報知事象に対応した情報(警報中、点検中、故障中、使用期限到達)と、親機2の報知事象に対応した情報(警報中、点検中、故障中、使用期限到達)とが含まれうる。以上のようにして、警報システム100における通信処理が行われる。
【0163】
図16の子機Aにおいて示した信号の送信に関わる処理と、子機Bおよび子機Cにおいて示した信号の受信に対応する処理とは、各々の子機3において、それぞれ並行して実施される。すなわち、子機Aは、自機の信号送信に関してステップS41~S46の処理を実施する一方で、他の子機3からの信号受信に関してステップS51およびS52と同様の処理を実施している。
【0164】
子機Bおよび子機Cも、他の子機3からの信号受信に関してステップS51(S61)およびS52(S62)の処理を実施するとともに、自機の信号送信に関してステップS41~S46と同様の処理を実施している。
【0165】
そのため、親機2が第1報知処理を行う場合は、親機2は、子機AからのステップS42による定期通信、子機BからのステップS42による定期通信、子機CからのステップS42による定期通信、の各信号を待ち受ける。親機2は、子機A~子機Cからの信号を受信すると、ステップS75の点検結果の報知として、
図11に示した通信強度F(
図11の場合はF3)の報知を行う。
【0166】
また、
図16では、通信処理のみを説明しているため、たとえば警報が発生した場合の報知処理については記載していない。子機A~子機Cおよび親機2は、それそれ、自機におけるガスセンサGSの出力信号を監視し、ガスセンサGSの出力信号が閾値以上となった場合には、スピーカ22a(32a)および/またはランプ22b(32b)による報知処理を行う。
【0167】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0168】
本実施形態の警報システム100および警報システム100の動作方法では、上記のように、親機2は、複数の子機3の各々と通信を行い、それぞれの子機3からの信号受信に基づいて通信強度Fを報知する第1報知処理を行うように構成され、複数の子機3の各々は、親機2と通信を行い、親機2からの信号受信に基づいて自機と親機2との間の通信強度Fを報知する第2報知処理を行うように構成されている。この第1報知処理および第2報知処理によって、親機2と複数の子機3の各々との間の通信強度Fをユーザが把握することができる。第1報知処理では、親機2がそれぞれの子機3からの信号受信に基づいて通信強度Fを報知することで、警報システム全体のうちいずれかの子機3において通信強度Fに問題があるか否かをユーザに把握させることができ、問題がなければユーザは子機3を特定する作業を省略できる。いずれかの子機3において通信強度Fに問題があることが判明した場合、ユーザがそれぞれの子機3について個別に第2報知処理を実行させることで、第2報知処理を実行させた子機3の通信強度Fを把握できる。その結果、各設置位置における個々の警報器1(親機2および子機3)の通信強度Fをユーザが容易に把握することができる。
【0169】
また、本実施形態では、上記のように、親機2は、いずれかの子機3が第2報知処理を実行する場合、その子機3との間の通信強度Fを報知するように構成されている。これにより、第2報知処理を実行した子機3と親機2との両方が、ペアで通信強度F(F1aとF1b)を報知するように動作する。そのため、ユーザは、警報システム100を構成する複数の警報器1のうち、いずれが親機2でいずれが子機3であるかを正確に把握していなくても、その子機3とペアになっている親機2(つまり、子機3との通信強度Fを確保したい警報器1)がどれであるか、どこにあるかを容易に把握できる。
【0170】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、親機2が第1報知処理を実行する場合、通信強度Fの報知を行わないように構成されている。これにより、親機2が第1報知処理を実行する際に、警報システム100を構成する各子機3が一斉に報知を行うことを回避できる。親機2および全ての子機3が一斉に報知を行う場合、ユーザはそれらの報知を全部把握するのは煩雑である。そのため、親機2が第1報知処理を実行する場合には、子機3が報知を行わないことで、ユーザに対する過剰な報知を抑制できる。
【0171】
また、本実施形態では、上記のように、親機2は、第1報知処理において、複数の子機3の各々との間の複数の通信強度F1~F3を取得し、取得した各々の子機3との間の通信強度F1~F3のうちで強度が最も低い1つの子機3との間の通信強度F(
図11ではF3)を報知するように構成されている。これにより、第1報知処理によって、ユーザは、警報システム100における通信強度Fの点検の必要性があるか否かを容易に把握できる。すなわち、強度が最も低い1つの子機3との間の通信強度Fだけを報知することにより、容易かつ明確に、警報システム100で最も低い通信強度Fを認識できる。そして、報知された最低強度の通信強度Fが必要十分に高いレベル(たとえば「強」および「中」)であれば、個々の子機3についての通信強度Fの点検を行う必要がないことを、ユーザが把握できる。反対に、報知された最低強度の通信強度Fが低いレベル(たとえば「弱」)であれば、ユーザは、個々の子機3に対して第2報知処理を実行させることで、個別の通信強度Fを点検できる。この結果、第1報知処理と第2報知処理との組み合わせにより、通信強度Fの点検作業を効率的に行うことができる。
【0172】
また、本実施形態では、上記のように、親機2および複数の子機3は、それぞれ、操作入力を受け付ける操作受付部(24、34)を備え、親機2が操作を受け付けると、親機2は第1報知処理を行い、複数の子機3のいずれかが操作を受け付けると、操作を受け付けた子機3と親機2との間で第2報知処理を行う。これにより、ユーザは、まず親機2の操作受付部24への操作により第1報知処理を行い、必要に応じて(第1報知処理で報知された最低強度の通信強度Fが「弱」であった場合)、各子機3の操作受付部34に対してそれぞれ操作を行い、第2報知処理を実行させることができる。このため、単純な操作で警報システム100の通信強度Fの点検作業を簡単に行うことができる。
【0173】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、親機2または他の子機3から信号を受信すると、信号を中継送信するように構成され、いずれか1つの子機3と親機2との間の通信強度Fは、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度Ebのうちで、強度が最も高い経路通信強度Ebである。ここで、親機2と子機3との間で複数の通信経路(
図10の通信経路(1)~(5)参照)が存在する場合、いずれか1つでも安定して通信が可能な通信経路が存在すればよいため、ユーザがいずれかの子機3と親機2との通信を点検する際、強度が最も高い経路通信強度Ebが必要十分に高いレベル(たとえば「強」または「中」)であるか否かを確認すれば足り、通信経路毎の通信状態を全部把握する必要はない。そのため、強度が最も高い経路通信強度Ebを、子機3と親機2との間の通信強度Fとして報知することにより、ユーザが個々の通信経路を1つずつ確認(報知)する必要がないため、ユーザに対する過剰な報知を抑制できる。
【0174】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、受信した信号に、受信強度Eaを含む通信ステータス44を追記して中継送信を行い、親機2および複数の子機3の各々は、受信した信号の通信ステータス44に含まれる受信強度Eaに基づいて、経路通信強度Ebを取得するように構成されている。これにより、信号の送信先となる親機2または子機3が、その信号の通信ステータス44から、通信経路の途中で中継送信を行った他の子機3における受信強度Eaを把握できる。したがって、通信経路の最初から最後までの各中継地点での受信強度Eaを総合することにより、経路通信強度Ebを容易に把握することができる。異なる通信経路は通信ステータス44も異なるため、複数の通信経路がある場合には、通信経路毎の通信ステータス44から把握される経路通信強度Ebを比較することにより、強度が最も高い経路通信強度Ebを容易に取得および報知できる。
【0175】
また、本実施形態では、上記のように、複数の子機3の各々は、第2報知処理以外の通常時に、所定の第1時間間隔(T1a、T1b、T1c)で親機2への信号送信を行い、第2報知処理では、第1時間間隔(T1a、T1b、T1c)よりも短い第2時間間隔T2で信号送信を行い、親機2からの応答信号52を受信することにより、自機と親機2との間の通信強度Fを取得するように構成されている。これにより、通常時よりも短い第2時間間隔T2での信号送信により、速やかに通信強度Fを取得することができる。そのため、第2報知処理の開始後、速やかに通信強度Fの報知を行うことができる。
【0176】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0177】
たとえば、上記実施形態では、警報器1が、ガス警報器である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器1が、ガス警報器以外の他の警報器であってもよい。たとえば、警報器1は、火災警報器(火災報知器)でもよい。この場合、火災を検知するためのセンサは、煙センサや熱センサでありうる。
【0178】
また、上記実施形態では、警報器1(親機2、子機3)が、単一の筐体(28、38)内に検知部(21、31)などの各部を収容した構成となっている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば警報器1を、報知部、制御部、通信部を収容する本体と、本体とは別個に設けられ、本体と接続された検知部(検知部筐体)とから構成してもよい。
【0179】
また、上記実施形態では、親機2が受信した信号に対応する応答信号52を送信する例を示したが、本発明はこれに限られない。親機2は応答信号52を送信しなくてもよい。この場合、子機3はタイムアウトまたは所定回数の信号送信によって信号の送信状態を終了すればよい。
【0180】
また、上記実施形態では、第2報知処理において、まず子機3から点検信号53を送信し、点検信号53に対する親機2からの応答信号52を受信することによって、子機3が親機2から子機3への通信強度Fを取得および報知する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、子機3から親機2への定期通信と同様に、親機2から各子機3へ定期通信を行うように構成し、第2報知処理において、各子機3は、親機2からの定期通信の信号受信に基づいて、自機と親機2との間の通信強度Fを報知してもよい。
【0181】
また、上記実施形態では、第1報知処理では、子機3から第1時間間隔(T1a、T1b、T1c)で送信される定期通信の信号受信に基づいて通信強度Fが取得され、第2報知処理では、第2時間間隔T2で送信される点検信号53の信号受信(および点検信号53に対応する応答信号52の信号受信)に基づいて通信強度Fが取得される例を示したが、本発明はこれに限られない。第1報知処理および第2報知処理の両方について、第1時間間隔で行われる定期通信によって通信強度Fが取得されてもよい。反対に、第1報知処理および第2報知処理の両方について、第2時間間隔で行われる通信によって通信強度Fが取得されてもよい。
【0182】
また、上記実施形態では、いずれかの子機3が第2報知処理を実行する場合、親機2が、その子機3との間の通信強度Fを報知する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2報知処理において親機2が通信強度Fを報知しなくてもよい。つまり、第2報知処理を実行した子機3だけが通信強度Fを報知してもよい。
【0183】
また、上記実施形態では、親機2が第1報知処理を実行する場合、複数の子機3の各々が通信強度Fの報知を行わない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、親機2が第1報知処理を実行する場合、複数の子機3の各々が、定期通信の信号に対応した応答信号52の信号受信に基づく通信強度Fの報知を行ってもよい。
【0184】
また、上記実施形態では、親機2が、第1報知処理において、複数の子機3の各々との間の複数の通信強度Fを取得し、取得した各々の子機3との間の通信強度Fのうちで強度が最も低い1つの子機3との間の通信強度Fを報知する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取得した各々の子機3との間の通信強度Fを1つずつ報知してもよい。
【0185】
また、上記実施形態では、親機2および複数の子機3は、それぞれ、操作入力を受け付けるスイッチである操作受付部(24、34)を備え、操作の受付に応じて第1報知処理または第2報知処理を実行する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、無線信号による操作を受け付けて第1報知処理または第2報知処理を実行してもよい。
【0186】
また、上記実施形態では、複数の子機3の各々が、親機2または他の子機3から信号を受信すると、信号を中継送信する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の子機3の各々は、中継送信を行わなくてもよい。警報システム100は、親機2と複数の子機3との他に、信号の中継送信を行うための専用の中継装置を備えていてもよい。
【0187】
また、上記実施形態では、いずれか1つの子機3と親機2との間の通信強度Fが、直接通信および中継を含む通信経路毎の経路通信強度Ebのうちで、強度が最も高い経路通信強度Ebである例を示したが、本発明はこれに限られない。子機3と親機2との間の通信強度Fを、通信経路毎の経路通信強度Ebの最低値、平均値、または中間値などに相当する強度としてもよい。
【0188】
また、上記実施形態では、複数の子機3の各々は、受信した信号に、受信強度を含む通信ステータス44を追記して中継送信を行い、受信した信号の通信ステータス44に含まれる受信強度に基づいて、経路通信強度Ebを取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、通信時に送受信される信号に通信ステータス44を含めなくてもよい。親機2および複数の子機3の各々は、通信経路の差異を考慮することなく、単純に、自機が受信した時の信号の受信強度のみに基づいて、通信強度Fを取得してもよい。たとえば子機A、子機B、子機C、親機2の順で信号が中継される通信経路において、親機2が、子機Cから受信した信号の受信強度のみに基づいて通信強度Fを判断してもよい。
【0189】
また、上記実施形態では、複数の子機3の各々が、第2報知処理を実行する場合に、第2時間間隔T2での点検信号53の送信状態となり、点検信号53の送信状態を終了する送信状態終了条件として、応答信号52を受信した場合、または、応答信号52を受信せずに待機回数の上限に達した場合の2つが設定された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記以外の送信状態終了条件が設定されてもよい。たとえば、送信状態終了条件は、初回の点検信号53の送信時点から、予め設定された時間が経過することであってもよい。また、点検信号53の送信回数が所定回数に達したことを送信状態終了条件とし、応答信号52を受信したか否かにかかわらず、第2時間間隔T2で所定回数だけ点検信号53を送信してもよい。
【0190】
また、上記実施形態では、親機2は、いずれかの子機3から信号を受信した場合、自機が発信元でない場合に、応答信号52の送信を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、親機2は、信号の受信強度に応じて、応答信号52の送信を行うように構成されていてもよい。
【0191】
また、上記実施形態では、複数の子機3の各々が、第2報知処理を行う場合と、自機において警報の報知事象が発生した場合とで、信号(点検信号53または警報の報知信号51)の送信状態となり、応答信号52の受信を含む送信状態終了条件が満たされると、信号の送信状態を終了する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の子機3の各々は、第2報知処理を行う場合にのみ、信号(点検信号53)の送信状態となり、報知事象が発生した場合には定期通信による信号送信を行ってもよい。また、たとえば、第2報知処理を行う場合と、警報の報知事象が発生した場合とに加えて、警報以外の報知事象が発生した場合においても、信号の送信状態となってもよい。
【0192】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0193】
1 警報器
2 親機
3 子機
24、34 操作受付部
44 通信ステータス(中継履歴情報)
52 応答信号
53 点検信号
100 警報システム
Ea 受信強度
Eb 経路通信強度
F(F1、F1a、F1b、F2、F3) 通信強度
T1a、T1b、T1c 第1時間間隔
T2 第2時間間隔