(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007066
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ブラケット付きボード部材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108255
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柚原 光希
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BD01
3D023BD02
3D023BD11
3D023BD13
3D023BE35
3D023BE36
(57)【要約】
【課題】複数のブラケットをボード部材に対して簡単に取り付け可能で、かつ、位置ずれが生じ難いブラケット付きボード部材を提供する。
【解決手段】複数のブラケット10を備えるブラケット付きボード部材1であって、前記複数のブラケット10は台座部11を備え、各々がボード部材30に対して前記台座部11を介して取り付けられており、隣り合う前記台座部11同士が、伸縮可能な伸縮部21を有する連結部20により連結されている、ブラケット付きボード部材1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラケットを備えるブラケット付きボード部材であって、
前記ブラケットは台座部を備え、各々がボード部材に対して前記台座部を介して取り付けられており、
隣り合う前記台座部同士が、伸縮可能な伸縮部を有する連結部により連結されている、ブラケット付きボード部材。
【請求項2】
前記伸縮部は、前記台座部の前記ボード部材に対する取付面と交差する方向に湾曲する湾曲形状とされている請求項1に記載のブラケット付きボード部材。
【請求項3】
前記伸縮部の厚み寸法は、前記連結部のうち前記伸縮部以外の部分の厚み寸法より小さく設定されている請求項1または請求項2に記載のブラケット付きボード部材。
【請求項4】
前記ブラケットと前記ボード部材とは、異なる材料により形成されている請求項1または請求項2に記載のブラケット付きボード部材。
【請求項5】
前記ボード部材は繊維および熱可塑性樹脂を含む乗物用内装材であり、前記乗物用内装材のうち前記ブラケットが取り付けられる面の反対面は、前記乗物用内装材の意匠面とされている請求項1または請求項2に記載のブラケット付きボード部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ブラケット付きボード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用の内装材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。具体的には、ドアトリムの裏面にクリップ座が設けられており、このクリップ座に取り付けられたクリップを、ドアトリムの車室外側に対向配置されたドアパネルに穿設された取付孔に差し込むことにより、ドアトリムをドアパネルに対して固定する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、ドアトリムと別体に形成された複数のクリップ座をドアトリムに対して個別に固定する構成では、クリップ座毎に向きや位置を合わせる必要があり、クリップ座の数が多い場合には生産性が良くない。このため、複数のクリップ座を予め設定された向きおよび配置となるように連結する連結部を設け、固定作業を容易にすることが考えられる。しかし、連結するクリップ座の数が多くなると、製造公差および取付公差等により、複数のクリップ座を所定の位置に取り付け難くなり、位置ずれが生じる場合がある。このようにクリップ座、ひいてはクリップに位置ずれが生じた状態でドアトリムをドアパネルに対して無理やり取り付けると、取付作業が困難になるだけでなく、ドアパネルに取り付けられたドアトリムに歪みが生じて、意匠面に影響を及ぼす虞がある。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複数のブラケットをボード部材に対して簡単に取り付け可能で、かつ、位置ずれが生じ難いブラケット付きボード部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、複数のブラケットを備えるブラケット付きボード部材であって、前記ブラケットは台座部を備え、各々がボード部材に対して前記台座部を介して取り付けられており、隣り合う前記台座部同士が、伸縮可能な伸縮部を有する連結部により連結されている。
【0007】
上記構成によれば、複数のブラケットは連結部により連結されているから、ブラケット毎に向きや位置を合わせる手間が省け、ボード部材に対する取り付け作業を簡易化することができる。しかも、ボード部材やブラケットが製造公差および取付公差等を有する場合でも、連結部に設けられた伸縮部が伸縮することにより、両者間の位置ずれを吸収することができる。
【0008】
前記伸縮部は、前記台座部の前記ボード部材に対する取付面と交差する方向に湾曲する湾曲形状とされていてもよい。
【0009】
伸縮部が湾曲形状とされることにより、伸縮部が連結部の延び方向に沿って引き延ばされたり両側から押されて接近することが可能となる。つまり、伸縮可能な具体的な一実施形態が実現できる。
【0010】
前記伸縮部の厚み寸法は、前記連結部のうち前記伸縮部以外の部分の厚み寸法より小さく設定されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、伸縮部を柔軟に伸縮可能とする一方、連結部のうち伸縮部以外の部分で複数の台座部の連結姿勢や配置を精度よく保持することが可能となる。
【0012】
前記ブラケットと前記ボード部材とは、異なる材料により形成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、ブラケットおよびボード部材の熱膨張率が異なり、一方が他方と比較して大きい寸法で伸縮した場合でも、伸縮部が伸縮することにより取付部分の位置ずれを吸収することが可能となる。もって、ボード部材の変形を抑制することができる。
【0014】
前記ボード部材は繊維および熱可塑性樹脂を含む乗物用内装材であり、前記乗物用内装材のうち前記ブラケットが取り付けられる面の反対面は、前記乗物用内装材の意匠面とされていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される技術によれば、複数のブラケットをボード部材に対して簡単に取り付け可能で、かつ、位置ずれが生じ難いブラケット付きボード部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のブラケット連結体の一部拡大斜視図
【
図2】クリップブラケット付きドアトリムの一部拡大平面図
【
図5】クリップブラケット付きドアトリムをドアインナパネルに取り付けた状態を示す一部拡大断面図(
図2のIII-III断面に相当する断面図)
【
図6】他の実施形態のクリップブラケット付きドアトリムの一部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態を
図1から
図5を参照しつつ説明する。本実施形態では、ブラケット付きボード部材としてのクリップブラケット付きドアトリム1について例示する。以下、複数の同一部分については一の部分に符号を付し、他の部分については符号を省略する場合がある。
【0018】
本実施形態のクリップブラケット付きドアトリム1は、車両におけるドアトリム(ボード部材の一例)30に対し、クリップ19を保持させるための複数のクリップブラケット(ブラケットの一例)10を取り付けたものである。つまり、ドアトリム30とは別部材として形成された複数のクリップブラケット10を、ドアトリム30に対して取り付けたものである。各クリップブラケット10は、
図1に示すように、長方形の板状の取付台座部(台座部の一例)11と、取付台座部11に一体に形成されたクリップ座15とを備えている。複数のクリップブラケット10は、それぞれ、隣り合うと取付台座部11同士が連結部20により連結されており、これにより複数のクリップブラケット10が連なったブラケット連結体2が構成されている。
【0019】
取付台座部11は略長方形の板状をなしており、長手方向における両端部寄りの位置に、短手方向に延びる細長い貫通孔12がそれぞれ2つずつ(合計4つ)設けられている。取付台座部11の一面側(裏面11B)には、
図4に示すように、一対の長辺に沿って、板面から半球状に突出する複数の突部13が並んで設けられている(本実施形態では4つずつ)。これらの突部13は、取付台座部11のドアトリム30からの離隔距離を所定の寸法に保つためのものである。
【0020】
なお、本実施形態において取付台座部11の板厚は約2.5mm、突部13の突出寸法は約0.5mmとされている。
【0021】
クリップ座15は、取付台座部11の他面側(表面11A)であって、その長手方向における中央部に設けられている。クリップ座15は、取付台座部11の板面から立ち上がる断面円弧状の脚部16と、脚部16の立ち上がり方向における先端側(
図1の上方)において、取付台座部11の板面と略平行に配された半円形の板状の座面17と、を備えている。座面17には、クリップ19を装着可能な保持孔18が設けられ、保持孔18の周縁部の一部を切り欠くことによりクリップ19を保持孔18に進入させる進入路が形成されている。保持孔18に装着されたクリップ19は、座面17の上下両面に係止することによって上下方向(座面17と交差する方向)に保持される(
図5参照)。
【0022】
本実施形態において、上述した複数の取付台座部11は、連結部20により連結されている。連結部20は、取付台座部11の短辺よりも細い幅の細長い帯状をなして、複数の取付台座部11をそれらの長手方向に一体に連結している。
【0023】
連結部20の延び方向における中央部には、伸縮部21が設けられている。伸縮部21は、連結部20の板面から立ち上がる断面U字の湾曲形状をなしており、この伸縮部21が連結部20の延び方向に沿って引き延ばされたり両側から押されて接近することで、隣り合って配された取付台座部11同士が近づいたり、離れたりすることが可能とされている。以下、連結部20のうち伸縮部21以外の部分(伸縮部21の両側の部分)を、連結保持部22と称することとする。
【0024】
本実施形態において、伸縮部21の板厚は連結保持部22の板厚より薄く設定されている。具体的には、連結保持部22の板厚が取付台座部11と同じ約2.5mmとされているのに対し、伸縮部21の板厚は、約2mmとされている。
【0025】
上述したクリップブラケット10を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等の熱可塑性樹脂を採用することができる。
【0026】
一方、クリップブラケット10を取り付けるドアトリム30は、繊維及び熱可塑性樹脂を含むものとされる。ドアトリム30に含まれる繊維としては、例えば、ケナフ繊維が用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。ドアトリム30に用いられる繊維として、木質繊維、熱可塑性樹脂繊維、ガラス繊維や炭素繊維などを用いてもよい。また、ドアトリム30において、繊維は、バインダーとしての熱可塑性樹脂により結着されている。ドアトリム30に用いられるバインダーとしての熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリエステル系樹脂を例示することができる。ドアトリム30に含まれる樹脂は、クリップブラケット10を構成する樹脂と同一の樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよい。
【0027】
なお、本実施形態においてドアトリム30は被覆材を備えておらず(
図3から
図5参照)、その意匠面30Aは、ドアトリム30を構成する繊維含有樹脂材の風合いを生かしたものとされている。
【0028】
上述したクリップブラケット10は、取付台座部11の裏面11Bにホットメルト28を塗布し、取付台座部11をドアトリム30の意匠面30Aの反対側の面(裏面30B)に対して接着することによりドアトリム30に対して取り付けられる(
図4および
図5参照)。取付台座部11およびドアトリム30の間に塗布されたホットメルト28は両者に挟まれて押し潰されるが、取付台座部11の裏面11Bに設けられた複数の突部13がドアトリム30の裏面30Bに当接することにより、両者間の距離は一定に保たれるようになっている(
図4参照)。つまり、取付台座部11のドアトリム30に対する姿勢が安定的に保たれる。なお、余分なホットメルト28は取付台座部11の外周の他、貫通孔12内に逃がすことが可能である。
【0029】
また、このような取り付け状態において、連結部20はドアトリム30に対してフリーの状態とされている。
【0030】
本実施形態のクリップブラケット付きドアトリム1は上述したとおりであって、次に、作用効果について説明する。本実施形態のクリップブラケット付きドアトリム1は、複数のクリップブラケット10を備え、クリップブラケット10は、取付台座部11を備え、各々がドアトリム30に対して取付台座部11を介して取り付けられており、隣り合う取付台座部11同士が、伸縮可能な伸縮部21を有する連結部20により連結されている。
【0031】
上記構成によれば、複数のクリップブラケット10は連結部20により連結されているから、クリップブラケット10毎に向きや位置を合わせる手間が省け、ドアトリム30に対する取り付け作業を簡易化することができる。しかも、ドアトリム30やクリップブラケット10が製造公差および取付公差等を有する場合でも、連結部20に設けられた伸縮部21が伸縮することにより、両者間の位置ずれを吸収することができる。
【0032】
また、伸縮部21は、取付台座部11のドアトリム30に対する取付面と交差する方向に湾曲する湾曲形状とされている。このように伸縮部21が湾曲形状とされることにより、伸縮部21が連結部20の延び方向に沿って引き延ばされたり両側から押されて接近することが可能となる。
【0033】
また、伸縮部21の厚み寸法は、連結保持部22の厚み寸法より小さく設定されている。このような構成によれば、伸縮部21を柔軟に伸縮可能とする一方、連結保持部22で複数の取付台座部11の連結姿勢や配置を精度よく保持することが可能となる。
【0034】
また、クリップブラケット10とドアトリム30とは、異なる材料により形成されている。このような構成によれば、クリップブラケット10およびドアトリム30が熱膨張率の相違により異なる寸法で伸縮した場合でも、伸縮部21が伸縮することにより取付部分の位置ずれを吸収することが可能となる。もって、ドアトリム30(クリップブラケット付きドアトリム1)の変形を抑制することができる。
【0035】
さらに、ドアトリム30は繊維および熱可塑性樹脂を含む材料から構成され、クリップブラケット10が取り付けられる面(裏面30B)の反対面は、ドアトリム30の意匠面30Aとされている。
【0036】
このように、本実施形態のクリップブラケット付きドアトリム1によれば、複数のクリップブラケット10をドアトリム30に対して簡単に取り付け可能で、かつ、位置ずれが生じ難い。
【0037】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態では、伸縮部21を連結部20(連結保持部22)の板面から立ち上がる断面U字の湾曲形状をなす形態を示したが、伸縮部の形態は上記実施形態に限るものでない。例えば
図6に示すように、連結保持部122の板面に沿うS字形状に湾曲する伸縮部121とすることができる。また、台座部が適度な厚みを有する場合には、連結部をボード部材から離れた位置に設け、伸縮部をボード部材側に向けて湾曲させたり、コイルバネ形状やジグザク形状とする等、伸縮可能な任意の形態とすることができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、伸縮部21の板厚を連結保持部22の板厚より薄い構成としたが、伸縮部の板厚は連結保持部の板厚と同等としてもよい。また、連結部全体を台座部の板厚よりも薄い構成としてもよい。
【0040】
(3)連結部は、連結保持部を有さず、全体が伸縮部を構成する形態とすることもできる。
【0041】
(4)上記実施形態では、クリップブラケット10およびドアトリム30が異なる材料で構成されている形態を示したが、同じ材料で構成されている場合も本明細書に記載の技術を適用可能である。
【0042】
(5)上記実施形態では、クリップブラケット10(取付台座部11)をドアトリム30に対してホットメルトで接着する形態を示したが、ホットメルト以外の固定手段で取り付ける形態としてもよい。例えば、締結構造を利用してもよい。
【0043】
(6)上記実施形態では、取付台座部11だけをドアトリム30に対して接着する形態を示したが、取付台座部11と併せて連結保持部22(連結部20のうち伸縮部21以外の部分)もドアトリム30に対して接着する構成とすることもできる。
【0044】
(7)上記実施形態では、複数の取付台座部11を直線状に連結する形態を示したが、ボード部材の形状に合わせて変形可能である。
【0045】
(8)本明細書に開示される技術は、ドアトリム30に対して取り付けられるクリップブラケット10に限るものではなく、種々のボード部材に対して取り付けられるブラケットに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:クリップブラケット付きドアトリム(ブラケット付きボード部材)、2:ブラケット連結体、10:クリップブラケット(ブラケット)、11:取付台座部(台座部)、11B:裏面(取付面)、15:クリップ座、20、120:連結部、21、121:伸縮部、22、122:連結保持部(伸縮部以外の部分)、30:ドアトリム(ボード部材、乗物用内装材)、30A:意匠面