(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070676
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】走行車両
(51)【国際特許分類】
B62D 49/00 20060101AFI20240516BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20240516BHJP
B62D 49/06 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B62D49/00 E
B60K17/10 D
B62D49/00 B
B62D49/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181303
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安田 紀史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 智之
(72)【発明者】
【氏名】塚田 鷹介
【テーマコード(参考)】
3D042
【Fターム(参考)】
3D042AA05
3D042AB07
3D042BA02
3D042BB01
(57)【要約】
【課題】標準HSTと高仕様HSTの間での載せ替えが簡単な作業で可能となる走行車両を提供する。
【解決手段】標準HST7と高仕様HST8とを選択的に搭載可能な走行車両は、トランスミッション6を固定するとともにトランスミッション6の後方に標準HST7または高仕様HST8を固定する車体フレーム構造体とを備え、トランスミッション6の後面には、標準HST7の前面に設けられた標準連結部70と高仕様HST8の前面に設けられた高仕様連結部80とのいずれとも連結可能な共通被連結部60が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準HSTと高仕様HSTとを選択的に搭載可能な走行車両であって、
トランスミッションを固定するとともに前記トランスミッションの後方に前記標準HSTまたは前記高仕様HSTを固定する車体フレーム構造体とを備え、
前記トランスミッションの後面には、前記標準HSTの前面に設けられた標準連結部と前記高仕様HSTの前面に設けられた高仕様連結部とのいずれとも連結可能な共通被連結部が設けられている走行車両。
【請求項2】
前記車体フレーム構造体には、前記標準HSTと前記高仕様HSTとのいずれとも連結可能な共通固定フレームが設けられている請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記車体フレーム構造体は、車体前後方向に延びた左右一対の主フレームと、前記主フレームの上方を車体前後方向に延びた左右一対の上フレームとを含み、前記標準HST及び前記高仕様HSTの前記車体フレーム構造体への搭載時のアクセス空間となる請求項1に記載の走行車両。
【請求項4】
前記標準HSTの後方突出部をガードするための後ガード、または前記高仕様HSTの後方突出部をガードするための後ガードは、前記車体フレーム構造体に支持されている共通のガード支持部によって支持される請求項1に記載の走行車両。
【請求項5】
左後輪ユニットと右後輪ユニットとを連結するスタビライザーとして、前記標準HSTの搭載時には、標準スタビライザーが用いられ、前記高仕様HSTの搭載時には、前記標準HSTとは異なる形状を有する高仕様スタビライザーが用いられる請求項1に記載の走行車両。
【請求項6】
前記共通被連結部には、前記標準HST及び前記高仕様HSTのHST入力軸と連結可能な第1伝動軸と、前記標準HST及び前記高仕様HSTのHST出力軸と連結可能な第2伝動軸とが露出している請求項1に記載の走行車両。
【請求項7】
前記標準HSTがシューレスタイプHSTであり、前記高仕様HSTがシュータイプHSTである請求項1から6のいずれか一項に記載の走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準HSTと高仕様HSTとを選択的に搭載可能な走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両などの走行車両では、無段変速装置としてHST(Hydraulic Sttic Transmission)が搭載されている。特に、多目的車両などでは、HSTとして、標準的に用いられるシューレスタイプのHST(標準HSTの一種)とシューレスタイプに比べて高仕様(ハイスペック)であるシューHST(高仕様HSTの一種)が用いられている。
【0003】
特許文献1に示された多目的車両は主変速装置としているシューレスタイプのHST(標準HST)を搭載している。このシューレスタイプのHSTでは、プランジャピストンの先端部が半球面に形成され、この半球面が斜板のベアリングハウジングに直接当接している。エンジン動力は、HSTによって無段変速され、さらに副変速装置を介して変速された動力は前輪と後輪とに供給される。
【0004】
特許文献2に示されたコンバインでは、常時駆動される走行用HSTにシューレスタイプの低圧HST(標準HST)が用いられ、旋回用HSTにシュータイプの高圧HST(高仕様HST)が用いられている。走行用HSTと旋回用HSTとからの変速動力によりクローラ走行装置が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-239978号公報
【特許文献2】特開2002-362176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業車両や多目的車両などの作業車にHSTを搭載する場合、例えば、標準的な負荷で運転される車両には標準HSTが搭載され、高負荷で運転される車両には高仕様HSTが搭載される。しかしながら、ユーザが所望の車両を購入した後、走行目的の変更やHSTの故障などにより、標準HSTを高仕様HSTに載せ替えることや、高仕様HSTを標準HSTに載せ替えることが要望されることがある。従来のHST搭載走行車両では、保守点検等で生じたHSTの載せ替えは、同一のHSTの載せ替えしか考慮されていないので、部分的に形状や構造が異なるHSTの載せ替えには、トランスミッションを含む動力伝達機構の種々の機器の取り外しや、HST支持部材の変更や追加が必要となる。このようなHSTの載せ替えは、非常に手間のかかる作業である。
【0007】
本発明の課題は、上記実情に鑑み、標準HSTと高仕様HSTの間での載せ替えが簡単な作業で可能となる走行車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による走行車両は、標準HSTと高仕様HSTとを選択的に搭載可能であって、左後輪ユニットと、右後輪ユニットと、前記トランスミッションを固定するとともに前記トランスミッションの後方に前記標準HSTまたは前記高仕様HSTを固定する車体フレーム構造体とを備え、前記トランスミッションの後面には、前記標準HSTの前面に設けられた標準連結部と前記高仕様HSTの前面に設けられた高仕様連結部とのいずれとも連結可能な共通被連結部が設けられている。
【0009】
この構成によれば、HSTを載せ替える際には、これまで搭載されていたHSTをトランスミッションの共通被連結部から取り外し、搭載予定のHSTを共通被連結部に連結することが、主作業となる。つまり、前記トランスミッションの後面に設けられた共通被連結部は、標準HSTの前面に設けられた標準連結部、または高仕様HSTの前面に設けられた高仕様連結部と連結されているので、この連結を解除して、トランスミッションから後方に向かって標準HSTまたは高仕様HSTを取り外し、次いで、高仕様HSTまたは標準HSTをトランスミッションの後方からトランスミッションの後面に差し入れ、連結することで、HSTの載せ替えが実現する。トランスミッションを取り外す必要がないので、標準HSTと高仕様HSTの間での載せ替えが簡単な作業となる。
【0010】
HSTは油圧ポンプと油圧モータを備えており、かなりの重量物であり、共通被連結部だけを用いてトランスミッションと連結するだけでは、HSTの支持は、支持構造力学的に十分ではない。このため、HSTは、何らかの固定部材を介して車体フレーム構造体に連結されることが好ましい。本発明では、前記車体フレーム構造体には、前記標準HSTと前記高仕様HSTとのいずれとも連結可能な共通固定フレームが設けられている。標準HST及び高仕様HSTは、共通被連結部を用いてトランスミッションに連結されるだけでなく、共通固定フレームを介して車体フレーム構造体とも連結されるので、HSTの支持は、支持構造力学的に強化される。
【0011】
本発明では、前記車体フレーム構造体は、車体前後方向に延びた左右一対の主フレームと、前記主フレームの上方を車体前後方向に延びた左右一対の上フレームとを含み、前記主フレーム及び前記上フレームの後端によって規定される空間が、前記標準HST及び前記高仕様HSTの前記車体フレーム構造体への搭載時のアクセス空間となる。この構成では、車体後部に位置する、主フレーム及び上フレームの後端によって規定される空間が、標準HST及び高仕様HSTの車体フレーム構造体への搭載時のアクセス空間として利用できるので、HSTの載せ替え時には、取り外したHSTを車体後部から外部に持ち出す作業と、新たに連結するHSTを外部から車体後部を通じてトランスミッションの共通被連結部に持ち込む作業とが容易となる。
【0012】
高仕様HSTは標準HSTに比べて機能が強化されているので、高仕様HSTは、部分的に標準HSTの外形から突出した部分を有する。そのような突出した部分が車体の内部ではなく、車体の後方に突き出している場合、この部分をガードする必要がある。そのためのガード部材である、高仕様HST後ガードと標準HSTの後ガードは、互いに異なった形状となる。本発明では、前記標準HSTの後方突出部をガードするための後ガード、または前記高仕様HSTの後方突出部をガードするための後ガードは、前記車体フレーム構造体に支持されている共通のガード支持部によって支持される。この構成では、高仕様HSTの後ガードまたは標準HSTのガード支持部を車体フレーム構造体に支持するためのガード支持部が共通であるので、HST載せ替え可能構造のための設計的、コスト的な負担が軽減される。
【0013】
HSTが車体の後部に配置されている場合、左後輪ユニットと右後輪ユニットとを連結するスタビライザーは、HSTとの干渉を回避する形状を有しなければならない。このため、標準HSTの形状と高仕様HSTの形状とがスタビライザー周辺で異なる場合、標準HSTの搭載時に用いられるスタビライザーと、高仕様HSTの搭載時に用いられるスタビライザーとが異なることになる。このことから、本発明では、左後輪ユニットと右後輪ユニットとを連結するスタビライザーとして、前記標準HSTの搭載時には、標準スタビライザーが用いられ、前記高仕様HSTの搭載時には、前記標準HSTとは異なる形状を有する高仕様スタビライザーが用いられる。
【0014】
トランスミッションとHSTとの構造に関して、トランスミッションからの伝動軸とHSTの入力軸(HSTポンプ軸)とが連結され、HSTの出力軸(HSTモータ軸)がトランスミッションの変速入力軸に連結される。HSTの載せ替え時に、トランスミッションとHSTとの間の動力伝達を簡単に実現させるために、本発明では、前記共通被連結部には、前記標準HST及び前記高仕様HSTのHST入力軸と連結可能な第1伝動軸と、前記標準HST及び前記高仕様HSTのHST出力軸と連結可能な第2伝動軸とが露出している。この構成により、標準HST及び高仕様HSTが共通被連結部に連結される際に、HST入力軸と第1伝動軸と、及び、HST出力軸と第2伝動軸とを、カップリング等により連結することにより、トランスミッションとHSTとの間の動力伝達が、容易に実現する。
【0015】
オフロード車両を含む多目的車両では、標準負荷仕様の車両にはシューレスタイプHSTが搭載され、高負荷仕様の車両にはシュータイプHSTが搭載される。しかしながら、シューレスタイプHSTが壊れた場合、シュータイプHSTに載せ替えたいという要望が少なくない。このような要望に応えるために、本願発明では、前記標準HSTがシューレスタイプHSTであり、前記高仕様HSTがシュータイプHSTであり、本願発明の好適な走行車両は多目的車両である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】多目的車両のパワートレーンを示す模式図である。
【
図3】標準HSTと高仕様HSTの間での載せ替えを説明する模式図である。
【
図4】トランスミッションの共通被連結部を示す後面図である。
【
図5】標準HSTの標準連結部を示す前面図である。
【
図6】高仕様HSTの高仕様連結部を示す前面図である。
【
図9】高仕様HSTの後部周辺を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
【0018】
次に、図面を用いて、本発明による走行車両の具体的な実施形態の1つとして、多目的車両を説明する。
【0019】
図1に示すように、多目的車輪は、前輪ユニット10と、後輪ユニット20と、前輪ユニット10と後輪ユニット20との間に配置された運転部3と、運転部3後方で後輪ユニット20の上方に配置された荷台4とを備えている。
【0020】
図2に示すように、前輪ユニット10は、左前輪ユニット10Lと右前輪ユニット10Rとからなる。左前輪ユニット10Lは、操向操作自在な左前輪11を有し、右前輪ユニット10Rは、操向操作自在な右前輪12を有する。左前輪11は、左サスペンション13により車体フレーム構造体9に支持され、右前輪12は、右サスペンション14により車体フレーム構造体9に支持されている。後輪ユニット20は、左後輪ユニット20L及び右後輪ユニット20Rとからなる。左後輪ユニット20Lは左後輪21を有し、右後輪ユニット20Rは右後輪22を有する。左後輪21は、左サスペンション23により車体フレーム構造体9に支持され、右後輪22は、右サスペンション24により車体フレーム構造体9に支持されている。
【0021】
パワートレーンPTは、荷台4の下方で、左後輪ユニット20Lと右後輪ユニット20Rとの間を延びている。この多目的車輪は、パワートレーンPTからの駆動力が前輪ユニット10と後輪ユニット20とに伝達される四輪駆動型である。荷台4は、後端側が車体の後端位置に対して横軸芯周りで揺動可能である。
【0022】
運転部3には、運転者が着座する運転座席31と、この運転座席31に隣接する位置に設けられた補助座席32とが備えられている。また、運転座席31の前部位置には前車輪1を操向制御するステアリングホイール33、主変速レバー34等が配置されている。
【0023】
パワートレーンPTは、エンジン5と、トランスミッション6と、HST(Hydraulic Sttic Transmission:静油圧式無段変速装置)としての標準HST7とを備える。具体的には、エンジン5と、トランスミッション6と、標準HST7は、車体前後方向の前から後に、この順序で一体的に連結され、車体フレーム構造体9に防振固定されている。
【0024】
トランスミッション6の内部構造は図面に示していないが、このトランスミッション6は、標準HST7で無段変速された駆動力をさらに複数段に変速するとする副変速装置、前後進の切換を行うギヤ式の前後進変速装置、及び、後輪用差動機構等を備えている。
【0025】
エンジン5は、そのエンジン出力軸(クランク軸:図示せず)の軸芯が車体前後方向を向くように配置されている。エンジン出力軸に連結する第1伝動軸61(
図3参照)は、
図3に示すように、トランスミッション6を車体前後方向に貫通し、標準HST7のHST入力軸71と連結される。これにより、エンジン5の駆動力が標準HST7に伝達される。標準HST7のHST出力軸72は、トランスミッション6の入力軸として機能する第2伝動軸62と連結されている。これにより、標準HST7で無段変速された動力は、トランスミッション6に伝達される。
【0026】
さらに、トランスミッション6は、
図2に示すように、変速動力を、後輪用出力軸63を介して左後輪21と右後輪22とに供給するとともに、前輪用出力軸64及び駆動軸65を介して左前輪11と右前輪12とに供給する。
【0027】
図3に模式的に示されているように、本願発明の走行車両は、標準HST7から高仕様HST8にHSTの載せ替え、あるいは高仕様HST8から標準HST7にHSTの載せ替えが可能である。標準HST7と高仕様HST8とは、容量、許容負荷、変速特性、許容使用圧力などの仕様の少なくとも一部が異なるものであり、その結果、少なくとも一部の外部寸法が異なっているものである。この実施形態では、高仕様HST8は、シュータイプHSTであり、標準HST7は、シューレスタイプHSTである。
【0028】
図3と
図4とに示すように、トランスミッション6の後面には、共通被連結部60が設けられており、共通被連結部60には、第1伝動軸61と第2伝動軸62とが露出している。
図3と
図5とに示すように、標準HST7の前面には、トランスミッション6の後面に設けられている共通被連結部60に連結可能な標準連結部70が設けられている。
図3と
図6とに示すように、高仕様HST8にも、トランスミッション6の後面に設けられている共通被連結部60に連結可能な高仕様連結部80が設けられている。標準連結部70と高仕様連結部80とは、互いに区別するため異なる名称が付与されているが、実質的には同じ構造を有し、少なくとも一部分において、互いに面接触する。標準連結部70には、標準HST7の入力軸としてのHST入力軸71と、標準HST7の出力軸としてのHST出力軸72とが露出している。同様に、高仕様連結部80には、高仕様HST8の入力軸としてのHST入力軸81と、高仕様HST8の出力軸としてのHST出力軸82が露出している。共通被連結部60と標準連結部70との連結時には、標準HST7のHST入力軸71は、第1伝動軸61とカップリング等を用いて連結され、標準HST7のHST出力軸72は、第2伝動軸62とカップリング等を用いて連結される。共通被連結部60と高仕様連結部80との連結時には、高仕様HST8のHST入力軸81は、第1伝動軸61とカップリング等を用いて連結され、高仕様HST8のHST出力軸82は、第2伝動軸62とカップリング等を用いて連結される。つまり、第1伝動軸61と第2伝動軸62、標準HST7のHST入力軸71とHST出力軸72、高仕様HST8のHST入力軸81とHST出力軸82は、それぞれ、車体前後方向の中心軸心に対して、同じ位相関係で配置されている。
【0029】
この多目的車両は、標準HST7と高仕様HST8の間での載せ替え作業が簡単となるように、種々の構造的な特徴を有する。それらの特徴を、
図7から
図9を用いて、説明する。
【0030】
図7に示すように、車体フレーム構造体9は、車体前後方向に延びた左右一対の主フレーム91と、主フレーム91の上方を車体前後方向に延びた左右一対の上フレーム92とを含む。上フレーム92は、主フレーム91の後端より、さらに後方に延びている。この上フレーム92の後延長部92aの下方には、主フレーム91の後部材として機能する後構造体93が設けられている。後構造体93は、主フレーム91と連結して水平に延びている底プレート94と、底プレート94の左右の端辺と上フレーム92の後延長部92aとを接続する縦アーム群95とからなる。後構造体93における前領域にトランスミッション6が支持され、後構造体93における後領域に標準HST7または高仕様HST8が支持される。主フレーム91の後端、つまりこの実施形態では後構造体93の後端と、上フレーム92の後端、つまり後延長部92aの後端とによって規定される空間が、標準HST7及び高仕様HST8の脱着作業(載せ替え作業)のために開放されたアクセス空間ASとなる。
【0031】
後構造体93の縦アーム群95の前側の縦アームは、トランスミッション6の連結固定のために用いられる。後構造体93の縦アーム群95の後側の縦アームは、標準HST7または高仕様HST8の連結固定のために用いられる。つまり、縦アーム群95は、標準HST7と高仕様HST8とのいずれとも連結可能な共通固定フレームとして機能する。
【0032】
標準HST7と高仕様HST8との形状の違い(例えば、シュータイプHSTの全長はシューレスの全長より長い)ので、ここでは、標準HST7が搭載された多目的車両と高仕様HST8が搭載された多目的車両とでは、HSTの後ガード構造が異なっている。
図8には、標準HST7の後方突出部をガードするための標準HST用後ガード96Sが示され、
図9には、高仕様HST8の後方突出部をガードするための高仕様HST用後ガード96Hが示されている。標準HST用後ガード96S及び高仕様HST用後ガード96Hは、それぞれに共通のガード支持部97によって支持されている。この実施形態では、共通のガード支持部97は、後構造体93の縦アーム群95の最後部のアームである。標準HST7が搭載されている場合には、標準HST用後ガード96Sがガード支持部97に連結され、高仕様HST8が搭載されている場合には、高仕様HST用後ガード96Hがガード支持部97に連結される。なお、
図9に示されているように、高仕様HST8が搭載された多目的車両には、牽引作業のために用いられるヒッチ体98が車体フレーム構造体9の後端に連結される。
【0033】
標準HST7と高仕様HST8との形状の違いから、標準HST7で用いられるHST操作リンク(標準HST操作ロッド73)と、高仕様HST8で用いられるHST操作リンク(高仕様HST操作ロッド83)とは、その形状が異なっている。
図8には、標準HST操作ロッド73の一部が示されており、
図9には、高仕様HST操作ロッド83の一部が示されている。標準HST操作ロッド73と高仕様HST操作ロッド83とは、ほとんどの部材は共通化可能である。
【0034】
標準HST7と高仕様HST8との形状の違いから、標準HST7搭載された多目的車両で用いられるスタビライザー(標準スタビライザー25S)と、高仕様HST8が搭載された多目的車両で用いられるスタビライザー(高仕様スタビライザー25H)とは、その形状が異なっている。
図8には、標準スタビライザー25Sが示されており、
図9には、高仕様スタビライザー25Hが示されている。標準スタビライザー25S及び高仕様スタビライザー25Hを固定するスタビライザー固定具26は共通化可能である。
【0035】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、標準HST7としてシューレスタイプHSTが用いられ、高仕様HST8としてシュータイプHSTが用いられたが、標準HST7と高仕様HST8として、仕様の異なるシューレスタイプHSTから選択されてもよいし、仕様の異なるシュータイプHSTから選択されてもよい。標準HST7と高仕様HST8として、仕様が異なる種々のHSTが選択可能である。
【0036】
(2)上述した実施形態では、動力ユニット2には、動力源として、エンジン5が用いられたが、電動モータやハイブリッドタイプが用いられてもよい。
【0037】
(3)上述した実施形態では、四輪駆動車であったが前輪駆動車や後輪駆動車であってもよい。また、三輪タイプで構成してもよい。
【0038】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、HSTを備えた走行車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
6 :トランスミッション
9 :車体フレーム構造体
10 :前輪ユニット
20 :後輪ユニット
23 :左サスペンション
24 :右サスペンション
25H :高仕様スタビライザー
25S :標準スタビライザー
26 :スタビライザー固定具
60 :共通被連結部
61 :第1伝動軸
62 :第2伝動軸
70 :標準連結部
71 :HST入力軸
72 :HST出力軸
73 :標準HST操作ロッド
80 :高仕様連結部
81 :HST入力軸
82 :HST出力軸
83 :高仕様HST操作ロッド
91 :主フレーム
92 :上フレーム
92a :後延長部
93 :後構造体
94 :底プレート
95 :縦アーム群
96H :高仕様HST用後ガード
96S :標準HST用後ガード
97 :ガード支持部
AS :アクセス空間
PT :パワートレーン