(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007068
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】車両のフード
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B62D25/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108257
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆義
(72)【発明者】
【氏名】高原 健
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA01
3D004AA04
3D004BA02
3D004CA02
3D004CA15
(57)【要約】
【課題】車両のフードの前縁に衝突した物体への衝撃を緩和し、フードを閉める際の力を効率良くストライカに伝達するデントリインホースメントを提供する。
【解決手段】デントリインホースメント18は、アウタパネルとインナパネルの間の空間に配置される。デントリインホースメント18には、ストライカより前方にて車両の左右方向に延びる横ビード30と、横ビード30に交差するように延びる左右2本の縦ビード32が形成されている。2本の縦ビード32は、横ビード30との交点において、車両の幅方向において外側に凸となるように屈曲している。横ビード30より前の縦ビード前部分32aが車両前後方向に対して傾斜していることにより、衝突時の横ビード30を起点とした屈曲を阻害しない。また、縦ビード32を設けたことにより、フードを閉める際の前縁部に加える力が効率良くストライカに伝わる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体外表面の少なくとも一部を形成するアウタパネルと、
前記アウタパネルより車体内側に位置して当該アウタパネルに接合されたインナパネルと、
前記アウタパネルと前記インナパネルの間に形成された空間内に配置され、前記インナパネルに接合されたデントリインホースメントと、
前記デントリインホースメントより車体内側に位置して当該デントリインホースメントに接合されたロックリインホースメントであって、前記インナパネルを貫いて車体内側に延びるストライカが固定されたロックリインホースメントと、
を有し、
前記デントリインホースメントには、前記ストライカより前方にて車両左右方向に延びる横ビードと、前記横ビードと交差するように延びる左右2つの縦ビードと、が形成されており、
前記2つの縦ビードの前記横ビードより前の部分は、当該2つの縦ビードの前端間の距離が後端間の距離より短くなるよう車両前後方向に対して傾斜している、
車両のフード。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のフードであって、前記2つの縦ビードの前記横ビードより後の部分は、当該2つの縦ビードの後端間の距離が、前端間の距離より短くなるよう車両前後方向に対して傾斜している、車両のフード。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両のフードであって、前記デントリインホースメントの、前記2つの縦ビードの間かつ前記横ビードより後の部分には、前記2つの縦ビードを縁とし谷線が車両前後方向に延びる、上方が凹となった凹面部が形成されている、車両のフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントボデーの上面に配置されたフードの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な小形の乗用車は、乗員のための空間の前方に、エンジンなどの原動機を収容するためのフロントボデーを有する。フロントボデーの上面には、原動機などの内部に収容された機器にアクセスするために開閉可能なフードが配置される。
【0003】
下記特許文献1には、上方から衝突した衝突物に対する衝撃を緩和する構造を有するフード(10)が示されている。フード(10)は、外表面を形成するアウタパネル(フードアウタ14)と、アウタパネル(14)の車体内側に組み付けられたインナパネル(フードインナ16)と、アウタパネル(14)とインナパネル(16)の間の配置される補強筒(24)を有する。補強筒(24)の下部には、インナパネル(16)を貫いて下方に延びるストライカ(54)が固定されている。補強筒(24)には、フード(10)の上方から荷重が入力された場合に、容易に変形する構造が設けられている。なお、上記の( )内の部材名および符号は、下記特許文献1で用いられているものであり、本願の実施形態の説明で用いられる部材名および符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フードには、フード先端に衝突した柱状または棒状の衝突物に対する衝撃を緩和することが要求されると共に、フードを閉める際にフードを押す力を効率良くストライカに伝えることが要求される。これら2つの要求は相反するものであり、これらの要求を高い次元でバランスさせることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両のフードは、車体外表面の少なくとも一部を形成するアウタパネルと、アウタパネルより車体内側に位置して当該アウタパネルに接合されたインナパネルと、アウタパネルとインナパネルの間に形成された空間内に配置され、インナパネルに接合されたデントリインホースメントと、デントリインホースメントより車体内側に位置して当該デントリインホースメントに接合されたロックリインホースメントとを有する。ロックリインホースメントには、インナパネルを貫いて車体内側に延びるストライカが固定されている。デントリインホースメントには、ストライカより前方にて車両左右方向に延びる横ビードと、横ビードと交差するように延びる左右2つの縦ビードと、が形成されており、2つの縦ビードの横ビードより前の部分は、当該2つの縦ビードの前端間の距離が後端間の距離より短くなるよう車両前後方向に対して傾斜している。
【0007】
フードの前縁に衝突物が衝突したとき、横ビードを起点にしてデントリインホースが屈曲する。このとき、縦ビードの横ビードより前の部分が傾斜していることにより、縦ビードがデントリインホースの屈曲を阻害しない。また、フードを閉める際に、閉める力が縦ビードを介してストライカに伝わる。
【0008】
上記の車両のフードにおいて、2つの縦ビードの横ビードより後の部分は、当該2つの縦ビードの後端間の距離が、前端間の距離より短くなるよう車両前後方向に対して傾斜しているものとすることができる。縦ビードの横ビードより後の部分が、ストライカとストライカよりも後方に位置する建て付けゴムとを結ぶ直線に対して直交または直交に近い角度で配置されることにより、フード前縁部に作用するフードを閉める力を効率良く、ストライカに伝えることができる。
【0009】
上記の車両のフードにおいて、デントリインホースメントの、2つの縦ビードの間かつ横ビードより後の部分には、2つの縦ビードを縁とし谷線が車両前後方向に延びる上方が凹となった凹面部が形成されている。フードを閉める際に、凹面部が、ストライカに係合するラッチからの反力に対してアーチを構成し、デントリインホースメントの変形が抑制され、フードを閉める力を効率良くストライカに伝えることができる。
【発明の効果】
【0010】
デントリインホースに横ビードと横ビードの位置で屈曲した縦ビードを設けることにより、フード前縁に物体が衝突したときの横ビードを起点とした屈曲が阻害されず物体への衝撃が緩和され、またフードを閉めるときの力がストライカに効率良く伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両のフードを分解して模式的に示す斜視図である。
【
図2】フードの前縁部の断面を模式的に示す図である。
【
図3】デントリインホースメントを模式的に示す斜視図である。
【
図4】デントリインホースメントの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の相対位置および向きを表す語句は、車両に関する相対位置および向きを表す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方である。
【0013】
図1は、車両のフード10を分解して示す斜視図である。フード10は、車両のフロントボデーの上側外表面の少なくとも一部を形成するアウタパネル12と、アウタパネル12より車体の内側に位置してアウタパネル12に接合されたインナパネル14を有する。フード10の前部において、アウタパネル12とインナパネル14は、これらの間にフード内空間16を形成している。フード内空間16内に、デントリインホースメント18と、ストライカ20が固定されるロックリインホースメント22とが配置されている。アウタパネル12、インナパネル14、デントリインホースメント18およびロックリインホースメント22は、鋼板をプレス成形して作製されてよい。
【0014】
図2は、フード10の前部の断面を模式的に示す図である。デントリインホースメント18は、アウタパネル12の近傍に、アウタパネル12に沿って配置され、前縁はフード10の前縁近傍まで延びている。デントリインホースメント18は、前縁部においてインナパネル14の前縁部に、また後縁部においてインナパネル14の、フード内空間16の縁部に溶接などの手法により接合されている。デントリインホースメント18の下方には、ロックリインホースメント22が配置され、デントリインホースメント18の下面に溶接などの手法により接合され、インナパネル14の、フード内空間16の底面となる部分に向けて延びている。ロックリインホースメント22の底面22aには、ストライカ20が固定されており、ストライカ20は、インナパネル14に形成された開口14aを通ってフード10の下方に突出している。ストライカ20は、フード10が閉められると、車両本体側に設けられたラッチ(不図示)と係合し、これによりフード10が閉状態に維持される。
【0015】
図3は、デントリインホースメント18を示す斜視図である。デントリインホースメント18は、概略的に長方形の板形状であり、前縁に沿って6箇所に設けられた前縁接合部24にてインナパネル14と接合され、また後縁の左右2箇所に設けられた後縁接合部26にてインナパネル14と接合される。左右方向において中央部の前縁寄りの部分には、ロックリインホースメント22が接合されるロックリインホースメント接合部28が設けられている。
【0016】
デントリインホースメント18の前縁近くに、前縁に沿って左右方向に延びる横ビード30が形成されている。横ビード30は、デントリインホースメント18の全幅にわたって延びており、上方に凸の稜線として形成される。横ビード30は、ロックリインホースメント接合部28より前方に位置し、特にロックリインホースメント接合部28の前縁に位置してよい。フード10の前縁に柱状または棒状の物体が衝突したとき、横ビード30が起点となってデントリインホースメント18が屈曲して変形することにより、衝突物に与える衝撃が緩和される。ロックリインホースメント22は、横ビード30より後方に接合されているため、ロックリインホースメント22が横ビード30の屈曲を妨げることはない。
【0017】
デントリインホースメント18には、横ビード30と交差するように延びる2本の縦ビード32が形成されている。2本の縦ビード32は、前方はデントリインホースメント18の前縁近傍まで延びており、後方はデントリインホースメント18の後縁まで延びている。縦ビード32も、上方に凸の稜線として形成される。2本の縦ビード32は、左右対称に配置され、形状も互いに左右対称である。2本の縦ビード32の横ビード30との交点は、横ビード30をほぼ三等分している。
【0018】
2本の縦ビード32の、横ビード30より前の部分32a(以下、縦ビード前部分32aと記す。)は、前端の間隔が、後端の間隔より狭くなっており、車両前後方向に対して斜めに配置されている。2本の縦ビード32の、横ビード30より後の部分32b(以下、縦ビード後部分32bと記す。)は、後端の間隔が、前端の間隔よりも狭くなっており、車両前後方向に対して斜めに配置されている。それぞれの縦ビード32は、横ビード30との交点において車幅方向外側に凸の屈曲した形状を有している。
【0019】
2本の縦ビード後部分32bの前端部は、ロックリインホースメント接合部28の左右の端縁に位置している。デントリインホースメント18の2本の縦ビード後部分32bの間、かつ横ビード30より後方、特にロックリインホースメント接合部28より後方の部分は、上方が凹となった凹面に形成されている。この凹面に形成された部分を凹面部34と記す。凹面部34は、デントリインホースメント18を構成する鋼板を湾曲することにより形成されてよい。凹面部34の左右の縁は縦ビード後部分32bであり、谷線は車両の中心線にほぼ一致し車両前後方向に延びている。よって、凹面部34は車両前後方向に長い細長い窪み形状である。デントリインホースメント18の凹面部34を横切る断面が
図4に示されている。
【0020】
フード10の下面の左右の縁には、フード10を閉めたとき車体のフェンダエプロンの上縁に当接する建て付けゴム36が設けられている。
図3に、デントリインホースメント18に対する建て付けゴム36の位置が示されている。縦ビード後部分32bは、ストライカ20と建て付けゴム36を結ぶ直線に略直交する方向に延びている。建て付けゴム36は、ストライカ20より後方に位置しており、このため、縦ビード後部分32bは、後端間隔が狭くなるように車両前後方向に対して傾斜している。
【0021】
フード10の前縁に柱状または棒状の物体が前方(
図2の矢印A)から衝突したとき、前述のように、デントリインホースメント18は、横ビード30を起点として屈曲する。このとき、縦ビード前部分32aは、車両前後方向に対して斜めに配置されているため、横ビード30における屈曲を阻害しない。仮に、縦ビード前部分が車両前後方向に対して傾斜せずに配置されていた場合、衝突の荷重に対して縦ビード前部分が突っ張るように作用して、デントリインホースメント18の前端部分での変形が抑えられ、衝突エネルギを十分に吸収することができない可能性がある。縦ビード前部分32aを斜めに配置することで、前方から衝突荷重に対してデントリインホースメント18の変形が阻害されないようにしている。
【0022】
ユーザがフード10を閉めるときには、フード10の前縁部を、
図2中の矢印Bの方向から押して、ストライカ20をラッチに係合させる。このとき、縦ビード32が概略前後方向に延びているため、デントリインホースメント18は、矢印Bの方向からの力に対して剛となり、フード10を押す力をロックリインホースメント22およびストライカ20に効率よく伝達することができる。
【0023】
また、デントリインホースメント18の凹面部34も、フード10を閉める力をストライカ20に効率良く伝える一助となる。フード10を閉めるとき、ストライカ20がラッチから受ける反力C(
図4参照)に対して、デントリインホースメント18の凹面部34がアーチ状に形成されているため、デントリインホースメント18の変形が抑制される。これにより、フード10を閉める力がストライカ20に効率良く伝えられる。
【0024】
さらに、縦ビード後部分32bが、ストライカ20と建て付けゴム36を結ぶ直線に対して略直交していることも、フード10を閉める力をストライカ20に効率良く伝える一助となる。仮に、縦ビード後部分が、ストライカ20と建て付けゴム36を結ぶ直線に対して斜めに交差していると、縦ビード32を伝わるフード10を閉める力が、ストライカ20と建て付けゴム36を結ぶ直線に直交する方向の分力を生み、この力がストライカ20をラッチに向かう方向に対して交差する方向に動かす。縦ビード後部分32bが、ストライカ20と建て付けゴム36を結ぶ直線に対して直交していることによって、または直交に近い角度で配置されることによって、フード10を閉める力がストライカ20に効率良く伝えられる。
【符号の説明】
【0025】
10 フード、12 アウタパネル、14 インナパネル、18 デントリインホースメント、20 ストライカ、22 ロックリインホースメント、28 ロックリインホースメント接合部、30 横ビード、32 縦ビード、32a 縦ビード前部分、32b 縦ビード後部分、34 凹面部、36 建て付けゴム。