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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070680
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光学ガラス及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/062 20060101AFI20240516BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C03C3/062
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181311
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】荻野 道子
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA04
4G062DA05
4G062DB01
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DE04
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4G062EA02
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4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062EE04
4G062EE05
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4G062EG04
4G062FA01
4G062FB01
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4G062FB04
4G062FC01
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4G062FJ01
4G062FK01
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4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
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4G062HH05
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4G062HH09
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4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK04
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM02
4G062NN02
(57)【要約】
【課題】
屈折率(n)が1.75000~1.85000の範囲でありながら、軽量であり、かつ透過率が良好な光学ガラス及び光学素子を提供する。
【解決手段】
酸化物基準の質量%で、SiO成分 10.0~40.0%、Nb成分 10.0~50.0%、CaO成分 15.0~35.0%、質量和BaO+Ta+La+Gd+ZnOが15.0%未満であり、屈折率(n)が1.75000~1.85000である光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%で、
SiO成分 10.0~40.0%、
Nb成分 10.0~50.0%、
CaO成分 15.0~35.0%、
質量和BaO+Ta+La+Gd+ZnOが15.0%未満
であり、
屈折率(n)が1.75000~1.85000
である光学ガラス。
【請求項2】
質量比Nb/TiOが0.50~50.00である
請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が0%超10.0%以下である請求項1又は2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
請求項3に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラス、光学素子は、異なる光学領域のレンズを組み合わせてカメラや映像装置などの光学特性を向上させる用途や、光学機器中に搭載し様々な光学設計を実現する用途などに用いることができる。
特に光学ガラス、光学素子を軽量化することは、光学機器本体やモジュール等のコンパクト化や軽量化に繋がる。
【0003】
他方で、屈折率(n)が1.75000~1.85000の領域である光学ガラスとしては、特許文献1や特許文献2に記載のSi-Nb系の光学ガラスが知られている。
Si-Nb系の光学ガラスはNb成分の含有量が多いため、透過率を良好にすることは難しい光学ガラスである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-137571号公報
【特許文献2】特開2019-112292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示された光学ガラスは、BaO成分の含有量が多いため、軽量な光学ガラスであるとは言えない。また、特許文献2に開示された光学ガラスは屈折率ndが1.69~1.87、アッベ数νdが24~36の範囲であり、比較的軽量な光学ガラスが記載されているが、透過率が十分良好であるとはいえない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(n)が1.75000~1.85000の範囲でありながら、軽量であり、かつ透過率が良好な光学ガラスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、SiO成分、Nb成分、CaO成分を含有し、BaO成分、Ta成分、La成分、Gd成分、ZnO成分の含有量を抑えることで、屈折率が所望の範囲でありながら、軽量であり、かつ透過率が良好な光学ガラスを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 酸化物基準の質量%で、
SiO成分 10.0~40.0%、
Nb成分 10.0~50.0%、
CaO成分 15.0~35.0%、
質量和BaO+Ta+La+Gd+ZnOが15.0%未満であり、
屈折率(n)が1.75000~1.85000
である光学ガラス。
【0009】
(2)質量比Nb/TiOが0.50~50.00である(1)に記載の光学ガラス。
【0010】
(3) RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が0%超10.0%以下である(1)又は(2)に記載の光学ガラス。
【0011】
(4) (3)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屈折率(n)が1.75000~1.85000の範囲でありながら、軽量であり、かつ透過率が良好な光学ガラスと、光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所について、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0014】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全物質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0015】
SiO成分は、含有量を10.0%以上にすることで、安定なガラス形成を促すことができ、さらにガラスの耐失透性を高める成分である。他方で、SiO成分の含有量を40.0%以下にすることで、SiO成分による屈折率の低下が抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下を上限とする。一方、SiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは11.0%以上、さらに好ましくは12.0%以上、さらに好ましくは13.0%以上、さらに好ましくは15.0%以上、さらに好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上、さらに好ましくは22.0%以上を下限とする。
【0016】
Nb成分は、含有量を10.0%以上にすることで、ガラスの屈折率及びアッベ数を高めることができる成分である。他方で、Nb成分の含有量を50.0%以下にすることで、比重を小さくし、透過率を高めることができる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは45.0%以下、さらに好ましくは40.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下を上限とする。他方で、Nb成分の含有量は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは12.0%以上、さらに好ましくは15.0%以上、さらに好ましくは18.0%以上、を下限とする。
【0017】
CaO成分は、含有量を15.0%以上にすることで、ガラスの比重を小さくできる成分である。CaO成分はアルカリ土類金属の中で、比重を小さくしながらガラスの安定性を最も高めることができる成分である。特に、CaO成分の含有量を35.0%以下にすることで、耐失透性を高めることができる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは33.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下、さらに好ましくは28.0%を上限とする。一方、CaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%以上、さらに好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上を下限とする。
【0018】
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの安定性を高め、研磨・研削時の加工性を良好にする成分である。特に、BaO成分の含有量を15.0%未満にすることで、比重を小さくすることができる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは15.0%未満、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0019】
MgO成分は、0%超含有する場合に比重を軽くする成分であるが、含有量が多いと耐失透性が悪化する成分である。MgO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0020】
SrO成分は、0%超含有する場合に耐失透性を高める成分であるが、含有量が多いとガラスの比重を高めてしまう成分である。SrO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0021】
LiO成分、KO成分、NaO成分は、0%超含有する場合にガラスの熔解温度を下げる成分であるが、含有量が多いとリヒートプレス成形性が悪化し、失透しやすくなる成分である。LiO成分、KO成分、NaO成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0022】
LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下を上限とする。一方、LiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上を下限とする。
【0023】
O成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0024】
NaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0025】
ZrO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めつつ安定なガラス形成を促してガラスの耐失透性を高める成分である。一方で、ZrO成分の含有量を15.0%以下にすることで、比重を小さくすることができる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは12.0%以下、さらに好ましくは11.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下を上限とする。他方で、ZrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上とするが、0%であってもよい。
【0026】
TiO成分は、含有量を0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及びアッベ数を高めることができる成分である。一方、TiO成分の含有量を20.0%以下にすることで、過剰な含有による失透や透過率の悪化を抑制することができる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%以下、さらに好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは12.0%以下を上限とする。TiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0027】
WO成分、Bi成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高める成分であるが、含有量が多いとガラスの着色を招き、比重が大きくなってしまう。WO成分、Bi成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0028】
WO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0029】
Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0030】
成分は、0%超含有する場合に、安定なガラスの形成を促すことで耐失透性を高める成分である。特に、B成分の含有量を10.0%以下にすることで、B成分による屈折率の低下が抑えられるため、高屈折率を得易くすることができる。従って、B成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0031】
La成分、Y成分、Gd成分、Yb成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高め、研磨時のガラスの摩耗量を低減し、ガラスの割れや欠けや面精度の悪化を生じにくくする成分であるが、含有量が多いと安定性を損ない比重が大きくなってしまう。La成分、Y成分、Gd成分、Yb成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0032】
La成分の含有量は、好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0033】
成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0034】
Gd成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0035】
Yb成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0036】
Al成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を向上しつつ、ガラス熔融時の粘度を高める成分である。特に、Al成分の含有量を5.0%以下にすることで、ガラスの熔融性を高めつつ、ガラスの失透傾向を弱めることができる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0037】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を下げ、かつガラスの耐失透性を高める成分である。特に、ZnO成分の含有量を5.0%以下にすることで、比重を小さくし高屈折率及び低分散を得易くすることができる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0038】
Ta成分は、0%超含有することで、ガラスの屈折率を高められ、かつガラスの耐失透性を高める成分である。一方で、Ta成分の含有量を5.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、かつガラスがより低温で熔解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa成分の過剰な含有によるガラスの失透及び比重を低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0039】
成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0040】
F成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0041】
TeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0042】
GeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0043】
CeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0044】
Er成分、Pr成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは実質的に含有しない。
【0045】
SnO成分の含有量は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0046】
Sb成分は、ガラスを熔融する際に清澄や脱泡を促す成分であり、任意成分である。ここで、Sb成分の含有量を0.20%以下にすることで、特に高屈折率ガラスにおける着色を抑えることが可能となる。また、0.20%以下とすることにより、ガラス熔融時における過度の発泡が生じ難くなるため、Sb成分を熔解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.08%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0047】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0048】
C成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、C成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、C成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0049】
S成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、S成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、S成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0050】
スクロース等の有機物成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、スクロース等の有機物成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、スクロース等の有機物分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0051】
Ln成分(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)は、含有量の和(質量和)を12.0%以下とすることで、過剰な含有による失透を抑え比重を低減できる。従って、好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0052】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和は、10.0%以下とすることで、リヒートプレス成形性の悪化を抑制できる。従って、RnO成分の含有量の和は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは4.0%未満を上限とする。一方で、RnO成分の含有量の和は、熔融性を良好にし、また比重を高めず屈折率を維持することができることから、好ましくは0%超、より好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.8%以上を下限とする。
【0053】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和は、0%超とする場合に、ガラスの安定性を向上させることができる。RO成分の含有量の和は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%以上、さらに好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上とする。一方、RO成分の含有量の和は屈折率の低下を抑えるために、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下を上限とする。
【0054】
BaO成分、Ta成分、La成分、Gd成分、ZnO成分の合計量である質量和BaO+Ta+La+Gd+ZnOは、15.0%未満とすることで比重の上昇を抑えることができる。BaO成分、Ta成分、La成分、Gd成分、ZnO成分の含有量を抑えることで比重の上昇が抑えられ、光学機器の小型化や軽量化につながる。従って、質量和BaO+Ta+La+Gd+ZnOは、好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下を上限とする。
【0055】
TiO成分に対するNb成分の比率である質量比Nb/TiOは、50.0以下とすることで屈折率を高めながら透過率を改善させ、かつ比重を小さくすることができる。質量比Nb/TiOは、好ましくは50.0以下、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下、さらに好ましくは6.0以下を上限とする。他方で、TiO由来の失透を抑え安定性の高いガラスを得る観点から、質量比Nb/TiOは、0.50以上としてもよい。従って、質量比Nb/TiOは、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.10以上、さらに好ましくは1.40以上、最も好ましくは1.70以上を下限とする。
【0056】
TiO成分とNb成分の合計含有量に対するZrO成分の比率である質量比ZrO/(TiO+Nb)は1.20以下とすることでプレス時の耐失透性を高めかつ低比重化するうえで有効である。TiO成分とNb成分の合計含有量に対し、ZrO成分の含有量が多すぎると失透を引き起こす原因となる。質量比ZrO/(TiO+Nb)は、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.00以下、さらに好ましくは0.80以下さらにこのましくは上限を0.60以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.40以下を上限とする。他方で、質量比ZrO/(TiO+Nb)は、0超とすることで、透過率を改善させ色収差における部分分散比を小さくさせることができる。質量比ZrO/(TiO+Nb)は、好ましくは0超、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15上、さらに好ましくは0.20以上を下限としてもよい。
【0057】
BaO成分とZnO成分の合計量である質量和BaO+ZnOは、20.0%以下とすることで比重を軽くしプレス時の失透性を改善させることができる。従って、質量和BaO+ZnOは、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下を上限とする。
【0058】
Nb成分、TiO成分、WO成分、Bi成分の合計含有量に対するRnO成分の含有量の和の比率である質量比RnO/(Nb+TiO+WO+Bi)は熔融性を高めつつ透過率を良好にすることができる。
質量比RnO/(Nb+TiO+WO+Bi)は、好ましくは0超、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上を下限とする。他方で、質量比RnO/(Nb+TiO+WO+Bi)は、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.50以下、さらに0.18以下、さらに好ましくは0.15未満を上限とする。
【0059】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない
成分について説明する。
【0060】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、Nd、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0061】
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0062】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0063】
[物性]
本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.75000以上、より好ましくは1.76000以上、さらに好ましくは1.77000以上、さらに好ましくは1.78000以上を下限とする。他方で、この屈折率(n)は、好ましくは1.85000以下、より好ましくは1.84000以下、さらに好ましくは1.83000以下を上限とする。本発明のアッベ数(ν)は、好ましくは20.00以上、より好ましくは22.00以上、さらに好ましくは25.00以上、さらに好ましくは28.00以上を下限とする。他方で、このアッベ数(ν)は、好ましくは40.00以下、より好ましくは38.00以下、さらに好ましくは37.00以下、さらに好ましくは36.00以下を上限とする
【0064】
また、本発明のガラスは、着色が少ないことが好ましい。特に、本発明のガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率80%を示す波長(λ80)は、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、さらに好ましくは465nm以下、さらに好ましくは460nm以下、さらに好ましくは455nm以下、さらに好ましくは450nm以下を上限とする。また、分光透過率5%を示す波長(λ)は、好ましくは390nm以下であり、より好ましくは385nm以下であり、さらに好ましくは380nm以下を上限とする。
【0065】
本発明の光学ガラスの比重(d)は、好ましくは3.80以下、より好ましくは3.70以下、さらに好ましくは3.65以下、さらに好ましくは3.60以下を上限とする。
【0066】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1500℃の温度範囲で2~5時間熔解させて攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。熔解は、石英坩堝を用いて熔解したあとに白金坩堝による熔解を行ってもよい。
【0067】
[ガラスの成形]
本発明のガラスは、公知の方法によって、熔解成形することが可能である。なお、ガラス熔融体を成形する手段は限定されない。
【0068】
[光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製することができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0069】
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用である。その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、光学素子の軽量化に加え、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
【実施例0070】
本発明のガラスの実施例及び比較例の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率が5%及び80%を示す波長(λ、λ80)、比重(d)、の値を表1~8に示す。なお、比較例1のガラスは特開2019-112292の実施例10である。
【0071】
本発明の実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、弗化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して、均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1400℃の温度範囲で2~5時間熔解させた後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷して作製した。
【0072】
実施例のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、JIS B 7071-2:2018に規定されるVブロック法に準じて測定した。ここで、屈折率(n)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線に対する屈折率(n)と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。これらの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
【0073】
実施例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS02-2019 光学ガラスの着色度の測定方法)に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~700nmの分光透過率を測定し、λ80(透過率80%時の波長)とλ(透過率5%時の波長)を求めた。
【0074】
実施例のガラス中の比重は、JISZ8807:2012の液中ひょう量法による密度及び比重の測定方法に基づいて行った。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
表に表されるように、本発明の実施例のガラスは、いずれも屈折率(n)が1.75000以上であるとともに、この屈折率(n)は1.85000以下であり、所望の範囲内であった。
【0084】
本発明の実施例のガラスは、いずれも波長(λ80)が480nm以下、より詳細には450nm以下であるとともに、波長(λ)は390nm以下、より詳細には360nm以下であり、所望の範囲内であった。
一方で、特許請求の範囲を満たさない比較例1は透過率が十分な値であるとはいえなかった。
【0085】
本発明の実施例のガラスは、いずれも比重(d)が、3.80以下、より詳細には3.
65以下であり、所望の範囲内であった。
【0086】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(n)が1.75000~1.85000の範囲でありながら、軽量であり、かつ透過率が良好であることが明らかになった。
【0087】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。