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  • 特開-熱交換器及び給湯器 図1
  • 特開-熱交換器及び給湯器 図2
  • 特開-熱交換器及び給湯器 図3
  • 特開-熱交換器及び給湯器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070687
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】熱交換器及び給湯器
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20240516BHJP
【FI】
F24H9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181331
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 友助
【テーマコード(参考)】
3L036
【Fターム(参考)】
3L036AA06
(57)【要約】
【課題】フィンに延設部を設けてもフィンの過熱防止とドレンの発生量の低減とを達成する。
【解決手段】一次熱交換器10は、厚み方向に所定間隔をおいて並設される複数の板状のフィン11と、各フィン11を直交状に貫通して厚み方向と直交する左右方向へ所定間隔をおいて平行に並設される複数の直管部13を含む蛇行状の給湯側伝熱管12と、を有し、各直管部13の間及び各フィン11の間を上下方向に通過する燃焼排気によって給湯側伝熱管12内を流れる流体を加熱可能である。そして、各フィン11には、直管部13が貫通する貫通孔30を越えて燃焼排気の流れの下流側に延びる延設部17が形成されており、延設部17における左右方向で隣接する各貫通孔30の間の上方位置に、透孔37が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に所定間隔をおいて並設される複数の板状のフィンと、各前記フィンを直交状に貫通して前記厚み方向と直交する水平方向へ所定間隔をおいて平行に並設される複数の直管部を含む蛇行状の伝熱管と、を有し、
各前記直管部の間及び各前記フィンの間を上下方向に通過する燃焼排気によって前記伝熱管内を流れる流体を加熱可能な熱交換器であって、
各前記フィンには、前記直管部が貫通する貫通孔を越えて燃焼排気の流れの下流側に延びる延設部が形成されており、前記延設部における水平方向で隣接する各前記貫通孔の間の上下方向位置に、透孔が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記透孔が水平方向へ複数形成されていると共に、各前記透孔の間で前記貫通孔と上下方向でオーバーラップする位置に、前記透孔の水平方向の幅よりも小さい仕切部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記透孔の水平方向の両端は、水平方向で隣接する各前記貫通孔と上下方向でそれぞれオーバーラップしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
バーナを収容する燃焼室と、前記バーナの燃焼排気が通過する請求項1又は2に記載の熱交換器とを含んでなる給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯器等に使用され、バーナの燃焼排気と湯水を通水させる伝熱管との間で熱交換させるフィンチューブ式の熱交換器と、当該熱交換器を有する給湯器とに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、バーナや熱交換器、ファン等の燃焼装置を筐体に収容してなり、熱交換器は、特許文献1に開示されているように、バーナを収容するケース内に、厚み方向に所定間隔をおいて複数並設されるフィンを収容すると共に、各フィンを直交状に貫通して左右方向に並設される複数の直管部と、ケースの外側で直管部の端部同士を互い違いに接続する曲管部とからなる伝熱管を設けたものが知られている。このようなフィンチューブ式の熱交換器では、下方に配置したバーナの燃焼排気が各フィン間を通過することで、フィンに伝わる熱と伝熱管を流れる湯水との熱交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6256801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の熱交換器においては、直管部から燃焼排気の流れの下流側にフィンを長く延ばして上下幅の大きい延設部を形成すれば、燃焼排気とフィンとの接触面積が大きくなって熱効率が高まる。しかし、燃焼排気は直管部の間を主に通過するため、フィンの延設部のうち直管部の間に位置する部分が局部的に高温となり、当該部分の変形や劣化が進行しやすい。逆にフィンの延設部のうち直管部の真上に位置する部分は、燃焼排気の通過量が少ないため、低温となってドレンの発生量が増えてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、フィンに延設部を設けてもフィンの過熱防止とドレンの発生量の低減とを達成できる熱交換器及び給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、厚み方向に所定間隔をおいて並設される複数の板状のフィンと、各フィンを直交状に貫通して厚み方向と直交する水平方向へ所定間隔をおいて平行に並設される複数の直管部を含む蛇行状の伝熱管と、を有し、
各直管部の間及び各フィンの間を上下方向に通過する燃焼排気によって伝熱管内を流れる流体を加熱可能な熱交換器であって、
各フィンには、直管部が貫通する貫通孔を越えて燃焼排気の流れの下流側に延びる延設部が形成されており、延設部における水平方向で隣接する各貫通孔の間の上下方向位置に、透孔が形成されていることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、透孔が水平方向へ複数形成されていると共に、各透孔の間で貫通孔と上下方向でオーバーラップする位置に、透孔の水平方向の幅よりも小さい仕切部が形成されていることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、透孔の水平方向の両端は、水平方向で隣接する各貫通孔と上下方向でそれぞれオーバーラップしていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、給湯器であって、バーナを収容する燃焼室と、バーナの燃焼排気が通過する第1の構成の熱交換器とを含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フィンに延設部を設けても、延設部に透孔を形成したことで、延設部の過熱を防止して変形や劣化を抑制できる。また、低温となる部分の面積が少なくなるため、ドレンの発生量を低減することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、水平方向へ複数形成されている各透孔の間で貫通孔と上下方向でオーバーラップする位置に、透孔の水平方向の幅よりも小さい仕切部が形成されているので、延設部において低温となる部分の面積を確実に少なくでき、ドレンの発生量をより効果的に低減可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、透孔の水平方向の両端は、水平方向で隣接する各貫通孔と上下方向でそれぞれオーバーラップしているので、透孔の左右幅を大きく確保して延設部の過熱を効果的に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】給湯器の概略を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】中ケーシングを省略した一次熱交換器の正面図である。
図4】給湯側一次熱交換器のフィンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を概略で示す正面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。
給湯器1は、図示しない筐体内に、内胴2を収容してなる。内胴2は、下から順に、燃焼室3と、一次熱交換器4と、二次熱交換器5とを備えている。内胴2内は、仕切部材6によって左右に仕切られて、器具の左側が給湯回路、右側が風呂回路となっている。
燃焼室3は、下ケーシング7を有する。下ケーシング7内の左側には、給湯側バーナが収容され、右側には風呂側バーナが収容されている(何れも図示略)。
一次熱交換器4は、下ケーシング7に接続される中ケーシング8を有する。中ケーシング8内の左側には、給湯側一次熱交換器10が収容され、右側には、風呂側一次熱交換器20が収容されている。
二次熱交換器5は、中ケーシング8に接続される上ケーシング9を有する。上ケーシング9内の左側には、給湯側二次熱交換器が収容され、右側には、風呂側二次熱交換器が収容されている(何れも図示略)。
【0010】
図2に示すように、一次熱交換器4は、左側の給湯側一次熱交換器10の方が、右側の風呂側一次熱交換器20よりも左右幅が大きくなっている。給湯側一次熱交換器10は、前後方向に所定間隔をおいて並設される複数の金属板のフィン11,11・・と、各フィン11を平面視で蛇行状に貫通する給湯側伝熱管12とを有している。給湯側伝熱管12は、各フィン11を前後方向に貫通して左右方向に所定間隔をおいて並設される複数の直管部13,13・・と、直管部13,13の前後の端部同士を前後互い違いに接続する複数のU字状の曲管部14,14・・とを有している。給湯側伝熱管12の上流端15は、給湯側二次熱交換器の図示しない吸熱管の下流端と接続されている。給湯側伝熱管12の下流端16は、図示しない出湯管に接続されている。給湯側二次熱交換器の吸熱管の上流端は、図示しない給水管と接続されている。
【0011】
風呂側一次熱交換器20も、前後方向に所定間隔をおいて並設される複数の金属板のフィン21,21・・と、各フィン21を平面視で蛇行状に貫通する風呂側伝熱管22とを有している。風呂側伝熱管22も、各フィン21を前後方向に貫通して上下二段で左右方向に並設される複数の直管部23,23・・・と、直管部23,23の前後の端部同士を前後互い違いに接続する複数のU字状の曲管部24,24・・とを有している。風呂側伝熱管22の上流端25は、風呂側二次熱交換器の図示しない吸熱管の下流端と接続されている。風呂側伝熱管22の下流端26は、図示しない風呂往き管に接続されている。風呂側二次熱交換器の吸熱管の上流端は、図示しない風呂戻り管に接続されている。
【0012】
図3は、中ケーシング8を省略した給湯側一次熱交換器10及び風呂側一次熱交換器20を正面から示している。各一次熱交換器10,20のフィン11,21は、共に左右方向へ延びる正面視横長矩形状であるが、フィン11の方がフィン21よりも左右方向に長く形成されている。また、フィン11には、給湯側伝熱管12の上端よりも上方へ長く(給湯側伝熱管12の上下幅よりも長く)延びる延設部17が形成されている。この延設部17により、フィン11の上下方向の幅は、風呂側一次熱交換器20のフィン21の上下方向の幅よりも大きくなって、延設部17の上端はフィン21の上端よりも上方に位置している。
【0013】
図4は、給湯側一次熱交換器10のフィン11を単体で示す正面図である。フィン11の下部には、各直管部13が貫通する貫通孔30,30・・が左右方向に所定間隔をおいて形成されている。各貫通孔30の内周縁には、前側へ突出するバーリング31が形成されている。
フィン11の下縁で左右に隣接する貫通孔30,30の間には、上側へ向けた逆V字状の切り込み32,32・・が形成されている。各切り込み32の上方には、前側へ切り起こし形成される3つのオフセットフィン33~35が上下方向に所定間隔をおいて配置されている。オフセットフィン33~35は、下段のオフセットフィン33の左右幅が最小で、中段のオフセットフィン34、上段のオフセットフィン35へ向かうに従って左右幅が段階的に大きくなっている。下段の各オフセットフィン33は、各貫通孔30の上端を結ぶ左右方向の直線上に位置している。各中段のオフセットフィン34と各上段のオフセットフィン35とは、それぞれ延設部17に配置されている。延設部17の左右両端には、上下方向に延びるオフセットフィン36,36が形成されている。
【0014】
各上段のオフセットフィン35の上側で延設部17の上端部には、透孔37がそれぞれ形成されている。各透孔37は、上段のオフセットフィン35よりも左右幅及び上下幅が大きい正面視横長矩形状である。各透孔37の左右両端は、下側に位置する左右2つの貫通孔30,30と上下方向でオーバーラップしている。この透孔37の形成により、透孔37,37の間には、各貫通孔30の真上に位置して上下方向に延びる細幅の仕切部38が形成されている。各仕切部38の左右幅は、透孔37の左右幅よりも小さくなっている。
【0015】
以上の如く構成された給湯器1においては、出湯管に接続された外部配管の給湯栓が開栓されて給水管から器具内に通水されると、器具内のコントローラが給湯側バーナを燃焼させる。給水管から供給される水は、給湯側二次熱交換器の吸熱管を通ることで燃焼排気から潜熱を回収する。給湯側二次熱交換器を通過した水は、給湯側一次熱交換器10の給湯側伝熱管12を通ることで燃焼排気から顕熱を回収する。こうして設定温度に加熱された湯が出湯管から出湯される。
また、コントローラに外部で接続された給湯リモコン又は風呂リモコンの自動スイッチを押すと、コントローラは、給湯側バーナを燃焼させると共に、出湯管と風呂戻り管とを接続する落とし込み管を介して、給湯側一次熱交換器10及び給湯側二次熱交換器で熱交換された湯を浴槽に供給して湯張りが行われる。湯張りされた浴槽の湯は、図示しないポンプにより、風呂戻り管から風呂側一次、二次熱交換器に送られて、風呂側バーナの燃焼排気から回収した潜熱及び顕熱によって追い焚きされ、風呂往き管から浴槽に戻される。
【0016】
そして、給湯回路の使用時、給湯側一次熱交換器10において、下方から上昇する給湯側バーナの燃焼排気Gは、図4に点線矢印で示すように、各直管部13の下面側に当接した後、直管部13の左右に分かれて上昇し、或いは直管部13,13の間をそのまま上昇して各フィン11と接触する。よって、燃焼排気Gの熱が各フィン11に伝わり、給湯側伝熱管12を通過する湯水と熱交換される。
このとき、直管部13,13の間を上昇する燃焼排気Gにより、各オフセットフィン33~35と共に延設部17が加熱されるが、上段のオフセットフィン35の上側には透孔37が形成されているので、直管部13,13の間の上方位置での延設部17の上端の過熱は抑えられる。よって、各延設部17の変形や劣化が抑制される。
一方、各直管部13の真上は燃焼排気Gの回り込みが少ないため熱交換されにくい。よって、オフセットフィン33~35側と比較して低温となるが、各直管部13の真上には細幅の仕切部38が設けられているので、ここが低温となってもドレンの発生量が少なくて済む。
【0017】
このように、上記形態の一次熱交換器10及び給湯器1は、厚み方向に所定間隔をおいて並設される複数の板状のフィン11と、各フィン11を直交状に貫通して厚み方向と直交する左右方向(水平方向の一例)へ所定間隔をおいて平行に並設される複数の直管部13を含む蛇行状の給湯側伝熱管12(伝熱管の一例)と、を有し、各直管部13の間及び各フィン11の間を上下方向に通過する燃焼排気によって給湯側伝熱管12内を流れる流体を加熱可能である。
そして、各フィン11には、直管部13が貫通する貫通孔30を越えて燃焼排気の流れの下流側に延びる延設部17が形成されており、延設部17における左右方向で隣接する各貫通孔30の間の上方位置に、透孔37が形成されている。
この構成によれば、フィン11に延設部17を設けても、延設部17に透孔37を形成したことで、延設部17の過熱を防止して変形や劣化を抑制できる。また、低温となる部分の面積が少なくなるため、ドレンの発生量を低減することができる。
【0018】
透孔37が左右方向へ複数形成されていると共に、各透孔37の間で貫通孔30と上下方向でオーバーラップする位置に、透孔37の左右方向の幅よりも小さい仕切部38が形成されている。
よって、延設部17において低温となる部分の面積を確実に少なくでき、ドレンの発生量をより効果的に低減可能となる。
透孔37の左右方向の両端は、左右方向で隣接する各貫通孔30と上下方向でそれぞれオーバーラップしている。
よって、透孔37の左右幅を大きく確保して延設部17の過熱を効果的に防止可能となる。
【0019】
以下、本開示の変更例を説明する。
フィンに設ける透孔の大きさや形状は、上記形態に限定されない。透孔の左右幅や上下幅の変更が可能であるのは勿論、透孔の形状も、両端が半円となる長円形としたり、楕円形としたり等、適宜変更可能である。透孔の左右両端は貫通孔とオーバーラップしなくてもよい。
仕切部の幅や上下方向の長さも、透孔の大きさや形状に合わせて適宜変更できる。
オフセットフィンの数や形状も上記形態に限定されない。オフセットフィンを省略してもよい。
伝熱管の直管部及び曲管部の数も上記形態に限らず、適宜変更可能である。また、上記形態の給湯側一次熱交換器は、直管部が左右方向に1段並設される構成となっているが、上下に2段以上で直管部が左右方向に並設される熱交換器であっても、本開示は適用可能である。
【0020】
上記形態では、給湯回路に風呂回路を並設した熱交換器を例示しているが、風呂回路に代えて暖房回路等の他の加熱回路を並設したものであってもよい。また、本開示は、このような2缶2水路式に限らない。1つの熱交換器のフィンに給湯回路と他の加熱回路との伝熱管がそれぞれ貫通する1缶2水路式であってもよい。さらに、本開示は、2水路式でなく、給湯回路のみを備える熱交換器であっても適用可能である。
上記形態では、二次熱交換器を有する潜熱回収型の給湯器を例示しているが、二次熱交換器がない給湯器であっても本開示は適用可能である。上側のバーナから燃焼排気が下向きに流れて下側の熱交換器を通過する逆燃焼式であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1・・給湯器、2・・内胴、3・・燃焼室、4・・一次熱交換器、5・・二次熱交換器、10・・給湯側一次熱交換器、11,21・・フィン、12・・給湯側伝熱管、13,23・・直管部、14,24・・曲管部、17・・延設部、30・・貫通孔、37・・透孔、38・・仕切部。
図1
図2
図3
図4