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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070695
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】分析装置および分析方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240516BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/01 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181343
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三井 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】長坂 優志
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XC15
4C117XE16
4C117XE23
4C117XE26
4C117XJ18
4C117XJ52
(57)【要約】
【課題】測定が簡便な体表温度を用いて概日リズムを算出する。
【解決手段】分析装置(10)は、所定の期間ごとに取得した血流量データに基づいて体表温度データを補正して代表値を算出し、所定の期間ごとの当該代表値を用いて概日リズムを算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得部と、
前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出部と、
前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出部とを備える
分析装置。
【請求項2】
前記代表値算出部は、前記血流量データの傾向に基づいて前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データを下方修正することによって前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データの上限値を設定し、該上限値以下の前記体表温度データを抽出することによって前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データを上方修正することによって前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データの下限値を設定し、該下限値以上の前記体表温度データを抽出することによって前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項7】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データを下方修正することによって前記体表温度データを補正するとともに、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データを上方修正することによって前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項8】
前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データの上限値を設定し、該上限値以下の前記体表温度データを抽出するとともに、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データの下限値を設定し、該下限値以上の前記体表温度データを抽出する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
前記代表値算出部は、前記所定の期間における前記血流量の増減の傾向を、前記所定の期間の初期に測定された前記血流量データと前記所定の期間の末期に測定された前記血流量データとを比較して判定する
請求項3から7の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項10】
前記代表値算出部は、前記所定の期間における前記血流量の増減の傾向を、前記所定の期間に測定された前記対象者の血流量データと前記対象者が覚醒状態かつ安静状態である場合の前記対象者の血流量データとを比較して判定する
請求項3から7の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項11】
前記代表値算出部は、前記対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅に基づいて、前記所定の期間における前記体表温度データを補正する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項12】
前記リズム算出部が算出した前記対象者の概日リズムを用いて、前記対象者の推奨起床時刻および推奨就寝時刻の少なくとも一方を算出する推奨時刻算出部
を備える
請求項1に記載の分析装置。
【請求項13】
前記リズム算出部が算出した概日リズムに基づき、前記対象者の望ましい起床時刻および就寝時刻に合わせて、前記対象者が光を浴びるべき時間帯を示す光照射期間および前記対象者が光を回避すべき時間帯である光回避期間を算出する光照射期間算出部、
を備える
請求項1に記載の分析装置。
【請求項14】
繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得ステップと、
前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出ステップと、
前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出ステップとを含む
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は対象者の概日リズムを分析する分析装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報の周期的な変動は生体状態を評価するうえの指標である。特許文献1には、生体の体内時計の指示値(例えば時刻)を実時間的かつ高精度に特定することを目的とした生体解析装置等が提案されている。
【0003】
また、生体情報の周期的な変動である概日リズムは睡眠の質を評価するうえの指標となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-55087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概日リズムは深部体温の変化リズムと相関することが知られている。概日リズムの算出においては、測定が簡便な体表温度を用いた概日リズムの算出が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る分析装置は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得部と、前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出部と、前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出部とを備える。
【0007】
また、上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る分析方法は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得ステップと、前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出ステップと、前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出ステップとを含む。
【0008】
本開示の各態様に係る分析装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記分析装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記分析装置をコンピュータにて実現させる分析装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、体表温度の測定を用いて深部体温のリズムに相関した概日リズムを精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自律神経が緊張状態である対象者の体表温度および血流量の散布図の一例を示す図である。
図2】自律神経が弛緩状態である対象者の体表温度および血流量の散布図の一例を示す図である。
図3】入眠時および起床時における、深部体温の変化および体表温度の変化の一例を示す図である。
図4】本実施形態1に係る分析システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図5】本実施形態1に係る分析装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態1に係る分布範囲幅算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】覚醒状態、かつ、安静状態である対象者の体表温度および血流量の散布図の一例を示す図である。
図8】本実施形態1に係る代表値算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】入眠状態、かつ、安静状態である対象者の体表温度および血流量の散布図の一例を示す図である。
図10】本実施形態1に係る日毎の概日リズムから算出された平均概日リズムの一例を示す図である。
図11】本実施形態1に係る推奨時刻提示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態1に係る推奨時刻算出部により算出される推奨就寝時刻、推奨起床時刻、および睡眠禁止時間の一例を示す図である。
図13】本実施形態2に係る分析システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図14】本実施形態2に係る分析装置における分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態2に係る分析装置における基準血流量決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16】本実施形態3に係る分析システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図17】本実施形態3に係る分析装置における分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18】本実施形態3に係る分析装置における光照射期間および光回避期間の提示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図19】本実施形態3に係る光照射期間算出部が平均概日リズムを補正する場合の光照射期間および光回避期間の一例を示す図である。
図20】本実施形態3に係る光照射期間算出部が平均概日リズムを補正する場合の光照射期間および光回避期間の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
〔概要〕
概日リズムに相関する深部体温の変化のリズムを算出するためには、深部体温の測定が必要となる。しかし、深部体温の測定に用いる測定装置を取り扱うためには専門性の高い知識が必要となる。そのため、測定が簡便な体表温度を用いた概日リズムの算出が望まれる。
【0012】
一方で、深部体温が一定な状態であっても、弛緩状態における自律神経による血管の拡張または緊張状態における自律神経による血管の収縮に起因して体表温度は変動する。そのため、体表温度の実測値をそのまま用いて得られる体表温度の変化のリズムは深部体温の変化のリズムと乖離し得る。
【0013】
本開示の分析装置10は、体表温度の測定値を用いて深部体温のリズムに相関した概日リズムを算出するために以下の処理を行う。
【0014】
分析装置10は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する。分析装置10は、所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する。分析装置10は所定の期間ごとの体表温度データの代表値を用いて対象者の概日リズムを算出する。
【0015】
前記の構成によれば、分析装置10は所定の期間において、血流量データに基づいて、体表温度データを補正する。すなわち、体表温度データは血管の拡張または収縮による影響を低減した体表温度データに補正される。そのため、分析装置10は血管の拡張および収縮による影響を低減した補正体表温度データから、体表温度の代表値を算出することができる。したがって、分析装置10は体表温度データを用いて深部体温のリズムに相関した概日リズムを精度よく算出することができる。
【0016】
<弛緩時の自律神経または緊張時の自律神経が体表温度に及ぼす影響>
ここで、緊張状態の自律神経または弛緩状態の自律神経が体表温度に及ぼす影響について、図1および図2を用いて説明する。
【0017】
本明細書においては、自律神経の状態について、交感神経が優位である状態を「緊張状態」と呼称し、副交感神経が優位である状態を「弛緩状態」と呼称する。また、自律神経が中立である状態を「通常状態」と呼称する。
【0018】
図1は自律神経の状態が通常状態に加えて緊張(tension)状態を含む対象者の体表温度および血流量の散布図の一例である。図1に示す散布図の縦軸は体表温度STであり、横軸は血流量Bである。図1の例において、自律神経の状態が通常状態に加えて緊張状態を含む対象者を、「緊張状態である対象者」または「緊張状態の対象者」とも呼称する。図1に示す破線で囲んでいるプロットは自律神経が緊張状態の対象者における体表温度および血流量を示している。また、図1に示す実線で囲んでいるプロットは自律神経が通常(normal)状態の対象者における体表温度および血流量を示している。図1において、緊張状態および通常状態の各対象者の深部体温は一定である。
【0019】
図1において実線で囲みかつ塗りつぶしで示しているプロットは、自律神経が通常状態である対象者の代表値を示している。該プロットが示す体表温度STnormalは通常状態の対象者の体表温度の代表値である。
【0020】
また、図1において破線で囲みかつ塗りつぶしで示しているプロットは、自律神経が緊張状態である対象者の代表値を示している。該プロットが示す体表温度STtensionは緊張状態の対象者の体表温度の代表値である。
【0021】
また、図1に示すΔBnormalは自律神経が通常状態である対象者の血流量Bの最小値から最大値までの血流量の幅を示す。また、図1に示すΔBtensionは自律神経が緊張状態である対象者の血流量Bの最小値から最大値までの血流量の幅を示す。
【0022】
図1に示すように、深部体温が一定であっても通常状態の対象者の体表温度の代表値STnormalと緊張状態である対象者の体表温度の代表値STtensionとは異なっている。詳細には、STtensionはSTnormalよりも低い。また、ΔBnormalが示す血流量の幅に比べてΔBtensionが示す血流量の幅は血流量が少ない方向に広くなっている。すなわち、緊張状態においては血管収縮が生じて血流量が減少する。血流量の減少により体表に伝播する熱量は少なくなる。その結果、体表温度の低下が生じる。そのため、STtensionはSTnormalよりも低くなる。
【0023】
図2は自律神経の状態が通常状態に加えて弛緩(relax)状態を含む対象者の体表温度および血流量の散布図の一例である。図2に示す散布図の縦軸は体表温度STであり、横軸は血流量Bである。図2の例において、自律神経の状態が通常状態に加えて弛緩状態を含む対象者を、「弛緩状態である対象者」または「弛緩状態の対象者」とも呼称する。図2に示す一点鎖線で囲んでいるプロットは自律神経が弛緩状態の対象者における体表温度および血流量を示している。また、図2に示す実線で囲んでいるプロットは自律神経が通常(normal)状態である対象者における体表温度および血流量を示している。図2において、弛緩状態および通常状態の各対象者における深部体温は一定である。
【0024】
図2において実線で囲みかつ塗りつぶしで示しているプロットは、自律神経が通常状態である対象者の体表温度の代表値を示している。該プロットが示す体表温度STnormalは通常状態の対象者の体表温度の代表値である。
【0025】
また、図2において一点鎖線で囲みかつ塗りつぶしで示しているプロットは、自律神経が弛緩状態である対象者の代表値を示している。該プロットが示す体表温度STrelaxは弛緩状態の対象者の体表温度の代表値である。
【0026】
また、図2に示すΔBnormalは自律神経が通常状態である対象者の血流量Bの最小値から最大値までの血流量の幅を示す。また、図2に示すΔBrelaxは自律神経が弛緩状態である対象者の血流量Bの最小値から最大値までの血流量の幅を示す。
【0027】
図2に示すように、深部体温が一定であっても通常状態の対象者の体表温度の代表値STnormalと弛緩状態の対象者の体表温度の代表値STrelaxとは異なっている。詳細には、STrelaxはSTnormalよりも高い。また、ΔBnormalが示す血流量の幅に比べてΔBrelaxが示す血流量の幅は血流量が多い方向に広くなっている。すなわち、弛緩状態においては血管拡張が生じて血流量が増加する。血流量の増加により体表に伝播する熱量は多くなる。その結果、体表温度の上昇が生じる。そのため、STrelaxはSTnormalよりも高くなる。
【0028】
<弛緩状態および緊張状態の自律神経が体表温度の変化に及ぼす影響>
次に、緊張状態の自律神経または弛緩状態の自律神経が体表温度の変化に及ぼす影響について、図3を用いて説明する。
【0029】
図3は、入眠時および起床時における、深部体温の変化および体表温度の変化の一例を示す図である。
【0030】
「入眠」とは覚醒状態から睡眠状態へ移行する状態および、睡眠状態における初期の状態を意味する。また、「起床」とは睡眠状態から覚醒状態へ移行する状態および、睡眠状態における末期の状態を意味する。
【0031】
図3において破線によって示す変化は深部体温の変化である。また、図3では以下の2つの場合の体表温度の変化を示している。
【0032】
(1)図3において実線によって示す変化は、入眠時および起床時に自律神経が通常状態を維持する場合の体表温度の変化である。
【0033】
(2)図3において一点鎖線によって示す変化は、入眠時に自律神経が弛緩状態となり、かつ、起床時に自律神経が緊張状態となる場合の体表温度の変化である。
【0034】
(1)の変化および(2)の変化は、所定の期間において測定される複数の体表温度から所定の期間ごとの代表値を算出し、当該代表値を用いて体表温度の変化を示す。図3に示されている各プロットは体表温度を示している。
【0035】
詳細には、(1)の変化における実線で囲んでいるプロットは自律神経が通常状態である場合の体表温度を示している。
【0036】
また、(2)の変化における一点鎖線により囲んでいるプロットは入眠時において自律神経が弛緩状態である場合の体表温度を示している。また、(2)の変化における破線により囲んでいるプロットは起床時において自律神経が緊張状態である場合の体表温度を示している。
【0037】
また、(1)の変化および(2)の変化において塗りつぶしで示している各プロットは上述の所定の期間ごとの体表温度の代表値を示している。
【0038】
また、本明細書においては、深部体温の変化のリズムにおいて深部体温が最低の値となる時刻を深部体温の最下点と呼称する。また、体表温度の変化のリズムにおいて体表温度が最低の値となる時刻を体表温度の最下点と呼称する。
【0039】
図3に示すTCT minは深部体温の最下点である。また、図3に示すTCT correlation minは(1)の変化における体表温度の最下点である。また、図3に示すTCT correlation min tens & relaxは(2)の変化における体表温度の最下点である。
【0040】
深部体温の変化と(1)の変化とを比較すると、深部体温の変化と体表温度の変化とは概ね相関しており、TCT minとTCT correlation minとは略一致する。
【0041】
一方で、深部体温の変化と、(2)の変化とを比較すると、深部体温の変化と体表温度の変化とは相関しない。また、TCT minとTCT correlation min tens & relaxとは乖離する。この現象は、自律神経の弛緩状態による体表温度の上昇および自律神経の緊張状態による体表温度の低下に起因する。
【0042】
例えば、対象者の概日リズムの調整には深部体温の最下点を利用することができる。そのため、概日リズムの推定においては深部体温の最下点を推定することになる。したがって、体表温度の測定値を用いて概日リズムを算出する場合には、算出した概日リズムが深部体温の変化のリズムに相関していることが求められる。
【0043】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0044】
〔分析システム1〕
図4を参照して、本実施形態に係る分析装置10を備えた分析システム1の概要について説明する。図4は、分析システム1の構成例を示す機能ブロック図である。図4に示すように、分析システム1は、分析装置10および測定装置20を含む。分析システム1は、測定装置20により測定された対象者の体表温度および血流量を分析装置10が分析することによって対象者の概日リズムを算出するシステムである。以下、測定装置20および分析装置10の詳細について説明する。また、本実施形態に係る分析システム1は、推奨就寝時刻、推奨起床時刻、および睡眠禁止時間の提示の指示を受け付けて、推奨就寝時刻、推奨起床時刻、および睡眠禁止時間の算出のために概日リズムを算出する構成を以下に説明する。ただし、この構成には限定されない。例えば、分析システム1の構成を、概日リズム算出の指示を受け付けて概日リズムを算出し、算出した概日リズムを保存しておく構成としてもよい。
【0045】
[測定装置20]
図4に示すように、測定装置20は、体温センサ21、血流量センサ22および通信部23を備える。
【0046】
体温センサ21は対象者の体表温度を検出する。血流量センサ22は対象者の血流量を検出する。例えば、血流量センサ22はレーザードップラー効果を利用して体表面の血流量を検出する装置であってもよい。血流量センサ22により、毛細血管、細動脈などの抹消血管の血流動態を検出することができる。体温センサ21および血流量センサ22は1日の中で繰り返し対象者の体表温度および血流量を同時に検出する。
【0047】
測定装置20は、対象者が常時身に付けることができるウェアラブルデバイスであってもよい。測定装置20は、例えば、対象者の手指に装着可能な指輪形状であってよい。測定装置20を指輪形状とすることにより、対象者は測定装置20を違和感なく常時に身に付けることができるとともに、測定のたびに脱着する必要がなくなる。ここで、測定装置20は、対象者の体表温度および血流量が測定可能であれば、対象者の身体のどこに装着されるものであってもよく、手指に装着するウェアラブルデバイスに限定されない。例えば、測定装置20は、手首に装着可能なリストバンド型であってもよいし、頸部に装着可能な首輪形状であってもよい。また、測定装置20は足趾に装着するウェアラブルデバイスであってもよい。
【0048】
測定装置20は分析装置10を介してユーザによる分析開始の指示を通信部23にて受信することによって、体表温度および血流量の測定を開始してもよい。また、測定装置20が直接ユーザによる分析開始の指示を受け付ける構成としてもよい。また、測定装置20が充電器から外されたことをトリガーとして、測定装置20は体表温度および血流量の測定を開始してもよい。例えば、測定装置20は充電器から送電される電流をモニタする構成としてもよい。また、対象者が測定装置20を装着すると、測定装置20は体表温度および血流量の測定を開始してもよい。例えば、体温センサ21または血流量センサ22が所定の値を検出したことをトリガーとして、測定装置20は体表温度および血流量の測定を開始してもよい。具体的には、対象者が測定装置20を装着している場合と対象者が測定装置20を装着していない場合との検出値に基づいて、体温センサ21および血流量センサ22の少なくとも1つのセンサの検出値に対して閾値が設定されていてもよい。測定装置20は当該閾値に基づいて対象者が測定装置20を装着したことを検出してもよい。測定装置20はユーザによる分析終了の指示通信部23にて受信するまで体表温度および血流量の測定を続けてもよい。また、測定装置20は体表温度および血流量の測定を開始してから任意の期間が終了するまで体表温度および血流量の測定を続けてもよい。前記任意の期間は数日の期間であってもよい。すなわち、数日の期間において、体温センサ21および血流量センサ22は1日の中で繰り返し対象者の体表温度および血流量を同時に検出してもよい。また、数日の期間において、体温センサ21および血流量センサ22は予め設定された周期にて間欠的に対象者の体表温度および血流量を同時に検出してもよい。
【0049】
また、測定装置20は加速度センサを備えてもよい。測定装置20は加速度センサが検出する検出値を用いて、対象者の入眠の判定および対象者の起床の判定を行ってもよい。測定装置20は対象者の入眠から起床までの期間の体表温度および血流量を同時に検出してもよい。
【0050】
また、測定装置20は対象者の数日間の平均睡眠時刻帯などを参照し、当該平均睡眠時刻帯から推定される対象者の入眠時刻から起床時刻までの期間の体表温度および血流量を同時に検出してもよい。
【0051】
通信部23は、分析装置10と無線による通信を行う。通信部23は、特に、体温センサ21および血流量センサ22が検出した対象者の体表温度および血流量を示す体表温度データおよび血流量データを分析装置10に送信する。
【0052】
[分析装置10]
次に、図4を参照して分析装置10について説明する。図4に示すように、分析装置10は、通信部11、入力部12、制御部13、記憶部15および表示部16を備える。
【0053】
<通信部11>
通信部11は測定装置20と無線による通信を行う。通信部11は測定装置20により測定された対象者の体表温度および血流量を示す体表温度データおよび血流量データを測定装置20から受信する。
【0054】
また、通信部11は測定装置20と有線による通信を行ってもよい。また、分析装置10は測定装置20と一体となっている構成であってもよい。
【0055】
<入力部12>
入力部12はユーザの入力操作を受け付ける。例えば、入力部12は表示部16と一体になっていてもよい。表示部16は制御部13が行う処理である推奨起床時刻および推奨就寝時刻の提示処理等の指示を表示してもよい。ユーザがこれらの表示領域を選択することによって、表示領域に対応する処理が実行される構成としてもよい。
【0056】
<制御部13>
制御部13は、分析装置10の各部を統括して制御する。制御部13は、指示受付部131、取得部132、分布範囲幅算出部133、単日概日リズム生成部134、平均概日リズム算出部(リズム算出部)135、推奨時刻算出部136および表示制御部137を含む。
【0057】
≪指示受付部131≫
指示受付部131は、入力部12を介してユーザによる推奨起床時刻および推奨就寝時刻の提示処理の指示を受け付ける。当該提示処理の指示を受け付けると、取得指示受付部131は通信部11を介して測定装置20に対象者の体表温度および血流量の測定の開始を指示する。
【0058】
≪取得部132≫
取得部132は、通信部11を介して、測定装置20から体表温度データおよび血流量データを取得する。例えば、体表温度データは測定日時と測定した体表温度とを示すデータであってもよい。また、血流量データは測定日時と測定した血流量とを示すデータであってもよい。
【0059】
取得部132は、記憶部15に格納されている、測定装置20において測定された体表温度と測定日時とを対応させて示す情報である体表温度情報151を更新する。また、取得部132は、記憶部15に格納されている、測定装置20において測定された血流量と測定日時とを対応させて示す情報である血流量情報152を更新する。取得部132は体表温度情報151および血流量情報152を更新すると、当該更新を示す信号を分布範囲幅算出部133および単日概日リズム生成部134に送信する。
【0060】
例えば、取得部132は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得してもよい。
【0061】
また、取得部132は、1日の中で繰り返し同時に測定された対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得してもよい。
【0062】
≪分布範囲幅算出部133≫
分布範囲幅算出部133は対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅を算出する。例えば、分布範囲幅算出部133は起床時刻および就床時刻を示す日時を、入力部12を介するユーザによる入力により取得してもよい。また、測定装置20は加速度センサを備えており、記憶部15には加速度センサが検出した値を検出した日時と対応付けて示す加速度情報が格納されていてもよい。分布範囲幅算出部133は加速度情報を参照して、対象者の起床時の動作、就寝時の動作を捉えて、対象者の起床時刻、就床時刻および覚醒状態を推定してもよい。記憶部15に格納されている体表温度情報151および血流量情報152が就床時刻に対応する体表温度データおよび血流量データによって更新されると、分布範囲幅算出部133は起床時刻から就床時刻までの体表温度データおよび血流量データを取得する。分布範囲幅算出部133は取得した体表温度データおよび血流量データを用いて対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅を算出する。分布範囲幅算出部133による体表温度の分布範囲の幅の具体的な算出例については後述する。分布範囲幅算出部133は算出した対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅を示す分布範囲幅情報153を記憶部15に格納する。分布範囲幅算出部133は分布範囲幅情報153を記憶部15に格納すると、当該格納を示す信号を単日概日リズム生成部134に送信する。
【0063】
また、分布範囲幅算出部133は、これまでに測定された対象者の体表温度データおよび血流量データから分布範囲幅情報153を算出してもよい。例えば、分布範囲幅算出部133は、データベースなどに格納されている、これまでに測定された対象者の体表温度データおよび血流量データから分布範囲幅情報153を算出してもよい。
【0064】
また、分布範囲幅算出部133は対象者の安静状態における覚醒時の体表温度の分布範囲の幅を算出してもよい。例えば、分析装置10は、上述の分布範囲の幅を算出するための体表温度および血流量を検知する期間は安静にするように対象者に対して表示部16を介して通知してもよい。例えば、当該通知は胸に手を当てるなどの対象者による特定動作を促す通知であってもよい。前記の構成によれば、同条件における血流量の測定を行いやすくなる。また、測定装置20は、測定装置20が備えている加速度センサの検出値に基づいて対象者の安静状態について判定を行ってもよい。測定装置20は、対象者が安静状態である場合に体表温度および血流量を測定してもよい。
【0065】
≪単日概日リズム生成部134≫
単日概日リズム生成部134は対象者の日毎の概日リズムを生成する。単日概日リズム生成部134は代表値算出部1341および概日リズム算出部(リズム算出部)1342を含む。
【0066】
〈代表値算出部1341〉
代表値算出部1341は、記憶部15に格納されている体表温度情報151および血流量情報152から、対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の測定期間ごとに複数組ずつ取得する。例えば、上述の対象者の体表温度データおよび血流量データは、1日の中で繰り返し同時に測定された体表温度データおよび血流量データであってもよい。また、代表値算出部1341は、所定の測定期間における血流量の増減の傾向を判定してもよい。
【0067】
代表値算出部1341は、所定の測定期間における血流量データに基づいて前記所定の測定期間における体表温度データを補正する。例えば、代表値算出部1341は、前記血流量データの傾向に基づいて前記体表温度データを補正してもよい。代表値算出部1341は補正した体表温度データから所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を算出する。
【0068】
例えば、代表値算出部1341は、前記代表値として体表温度データの平均値または中央値を算出してもよい。代表値算出部1341は算出した所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を概日リズム算出部1342に送信する。
【0069】
(血流量が増加傾向の場合に行われる体表温度データの補正)
代表値算出部1341は、所定の測定期間の体表温度データおよび血流量データについて、血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、体表温度データを下方修正することによって体表温度データを補正してもよい。
【0070】
前記の構成によれば、所定の期間において血流量が増加傾向を示す場合には、血管の拡張による血流量の増加に起因する体表温度の上昇を低減した体表温度データが得られる。
【0071】
例えば、代表値算出部1341は、所定の測定期間の体表温度データおよび血流量データについて、血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、体表温度データの上限値を設定してもよい。代表値算出部1341は、該上限値以下の体表温度データを抽出することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0072】
前記の構成によれば、所定の期間において血流量が増加傾向を示す場合には、設定された上限値より高い体表温度データは除外される。そのため、血管の拡張により生じる体表温度の上昇の影響を低減した体表温度のデータが得られる。
【0073】
(血流量が減少傾向の場合に行われる体表温度データの補正)
代表値算出部1341は、所定の測定期間の体表温度データおよび血流量データについて、血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、体表温度データを上方修正することによって体表温度データを補正してもよい。
【0074】
前記の構成によれば、所定の測定期間において血流量が減少傾向を示す場合には、血管の縮小による血流量の減少に起因する体表温度の低下を低減した体表温度のデータが得られる。
【0075】
例えば、代表値算出部1341は、所定の測定期間の体表温度データおよび血流量データについて、血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、体表温度データの下限値を設定してもよい。代表値算出部1341は、該下限値以上の体表温度データを抽出することによって体表温度データを補正してもよい。
【0076】
前記の構成によれば、所定の期間において血流量が減少傾向を示す場合には、設定された下限値より低い体表温度データは除外される。そのため、血管の縮小により生じる体表温度の低下の影響を低減した体表温度のデータが得られる。
【0077】
代表値算出部1341は、血流量が減少傾向の場合または血流量が増加傾向の場合の何れかの場合に限り上述の体表温度データの補正を行ってもよい。また、代表値算出部1341は、血流量が減少傾向の場合および血流量が増加傾向の場合のどちらの場合においても、上述の体表温度データの補正を行ってもよい。
【0078】
前記の構成によれば、所定の測定期間における血流量の増減傾向に基づいて、血管の縮小および拡張による血流量の増減に起因する体表温度の変化を低減した体表温度のデータが得られる。
【0079】
また、代表値算出部1341は、血流量が安定状態の場合は体表温度データを補正せずに、所定の測定期間の体表温度データの代表値を算出してもよい。
【0080】
(血流量の増減傾向の判定例)
代表値算出部1341は、所定の測定期間における血流量の増減の傾向を、所定の測定期間の初期に測定された血流量データと所定の測定期間の末期に測定された血流量データとを比較して判定してもよい。前記の構成によれば、所定の測定期間の血流量データのみを用いて、所定の測定期間における対象者の血流量の増減の傾向を判定できる。
【0081】
例えば、代表値算出部1341は、以下に示すように血流量の増減傾向の判定を行ってもよい。以下に記載のBmeasurement startは所定の測定期間の初期に測定された血流量データである。また、Bmeasurement endは測定期間の末期に測定された血流量データである。
【0082】
measurement start<Bmeasurement endとなる場合、増加傾向と判定する。
【0083】
measurement start>Bmeasurement endとなる場合、減少傾向と判定する。
【0084】
measurement start=Bmeasurement endとなる場合、安定状態と判定する。
【0085】
また、代表値算出部1341は、Bmeasurement starとBmeasurement endとの差分が所定の範囲内の値であれば安定状態と判定してもよい。例えば、代表値算出部1341は以下の式を満たす場合に安定状態と判定する。ここで、xおよびyはBmeasurement starとBmeasurement endとに有意な差がないことを示す値であればよく、特に限定されない。
【0086】
x<|Bmeasurement start- Bmeasurement end|<y
例えば、Bmeasurement startを測定開始から測定開始のT1秒後までに測定された複数の血流量データの代表値としてもよい。また、Bmeasurement endを測定終了のT2秒前から測定終了までに測定された複数の血流量データの代表値としてもよい。当該代表値としては、平均値、中央値などを例に挙げることができる。また、前記のT1秒およびT2秒は、測定期間の初期および測定期間の末期が反映されるような秒数であればよく特に限定されない。
【0087】
また、代表値算出部1341は、対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅に基づいて、所定の測定期間における体表温度データを補正する。詳細には、代表値算出部1341は記憶部15に格納されている分布範囲幅情報153を参照して所定の期間における体表温度のデータを抽出する。
【0088】
対象者の覚醒時においては、深部体温が一定な状態であっても、体表に伝播する熱量である体表温度は自律神経による血管の拡張または収縮に起因して変動する。血管の拡張または収縮は体表温度の分布範囲の幅に影響を及ぼす要因となる。前記の構成によれば、対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅に応じて、所定の期間における体表温度のデータを補正する。そのため、血管の拡張または収縮による体表温度への影響を受けた体表温度のデータを補正することができる。
【0089】
代表値算出部1341による体表温度データの具体的な補正例については後述する。
【0090】
〈概日リズム算出部1342〉
概日リズム算出部1342は所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を用いて対象者の日毎の概日リズムを算出する。当該概日リズムを示すデータは得られたリズムを多項式フィッティングして算出した数式等であってもよい。
【0091】
また、前後する所定の測定期間の間には一定の時間間隔が設けられていてもよいし、時間間隔を設けなくてもよい。また、所定の測定期間の長さは、所定の測定期間の代表値から概日リズムの算出ができる範囲で設定されればよく、特に限定されない。
【0092】
概日リズム算出部1342は記憶部15に格納されている、概日リズム算出部1342がこれまでに算出した日毎の概日リズムを示す情報である単日概日リズム情報154を更新する。単日概日リズム情報154には、代表値算出部1341が算出した所定の測定期間における体表温度データの代表値が格納されていてもよい。概日リズム算出部1342は単日概日リズム情報154を更新すると、当該更新を示す信号を平均概日リズム算出部135に送信する。例えば、概日リズム算出部1342は平日5日分の日毎の概日リズムを単日概日リズム情報154に更新すると、当該更新を示す信号を平均概日リズム算出部135に送信してもよい。
【0093】
また、概日リズム算出部1342は日毎の概日リズムにおける体表温度が最下点に到達する時刻を算出し、深部体温が底値に到達する時刻である深部体温底値到達時刻とする。単日概日リズム情報154には日毎の概日リズムにおける深部体温底値到達時刻を示すデータが格納されていてもよい。概日リズム算出部1342は単日概日リズム情報154における日毎の深部体温底値到達時刻を示すデータを更新してもよい。
【0094】
≪平均概日リズム算出部135≫
平均概日リズム算出部135は、単日概日リズム情報154を参照し、蓄積された日毎の概日リズムの平均値を算出することによって平均概日リズムを算出する。また、平均概日リズム算出部135は平均概日リズムにおける体表温度が最下点に到達する時刻TimeCTcorr minを算出し、深部体温が底値に到達する時刻である深部体温底値到達時刻とする。また、平均概日リズム算出部135は、深部体温底値到達時刻TimeCTcorr minを単日概日リズム情報154における日毎の深部体温底値到達時刻を示すデータを参照して算出してもよい。例えば、平均概日リズム算出部135は、日毎の深部体温底値到達時刻の分布から深部体温底値到達時刻の代表値を算出することにより深部体温底値到達時刻TimeCTcorr minを算出してもよい。当該代表値の例として、平均値、中央値等を挙げることができる。平均概日リズム算出部135は平均概日リズムおよび深部体温底値到達時刻を示すデータを推奨時刻算出部136に送信する。
【0095】
例えば、平均概日リズムは平日5日分の日毎の概日リズムも平均値であってもよい。平均概日リズムを示すデータは、平均概日リズムを多項式フィッティングして算出した数式等であってもよい。
【0096】
平均概日リズムは、代表値算出部1341によって補正された体表温度データの代表値から算出された日毎の概日リズムを用いて算出される。そのため、平均概日リズムは所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を用いて算出された対象者の概日リズムと表現することができる。
【0097】
≪推奨時刻算出部136≫
推奨時刻算出部136は、平均概日リズム算出部135が算出した対象者の概日リズムを用いて、対象者の推奨起床時刻および推奨就寝時刻の少なくとも一方を算出する。
【0098】
前記の構成によれば、対象者が質の良い睡眠を取るための推奨起床時刻および推奨就寝時刻を、例えば、対象者に提示することができる。
【0099】
推奨時刻算出部136による対象者の推奨起床時刻および推奨就寝時刻の具体的な算出例の詳細については後述する。推奨時刻算出部136は算出した推奨起床時刻を示すデータおよび推奨就寝時刻を示すデータの少なくとも一方を表示制御部137に送信する。
【0100】
また、詳細は後述するが、推奨時刻算出部136は睡眠を禁止する時間帯である睡眠禁止時間を算出してもよい。また、推奨時刻算出部136は深部体温底値到達時刻に基づいて睡眠が必須な時間帯である睡眠必須時間を算出してもよい。
【0101】
≪表示制御部137≫
表示制御部137は、推奨時刻算出部136が算出した推奨起床時刻、推奨就寝時刻、睡眠禁止時間および睡眠必須時間のうち少なくとも1つを表示部16に表示させることによって対象者に提示する。また、表示制御部137は、深部体温底値到達時刻TimeCTcorr minを表示部16に表示させることによって対象者に提示してもよい。図4に示すように、例えば、記憶部15は提示画像を複数含む提示画像情報155を格納している。表示制御部137は、提示画像情報155から適切な提示画像を取得し、当該提示画像を表示部16に表示させてもよい。
【0102】
<記憶部15>
記憶部15は、上述した、体表温度情報151、血流量情報152、分布範囲幅情報153、単日概日リズム情報154および提示画像情報155を格納している。
【0103】
<表示部16>
表示部16は推奨時刻算出部136が算出した推奨起床時刻、推奨就寝時刻、睡眠禁止時間および睡眠必須時間のうち少なくとも1つを対象者に表示する。表示部16の例としては、ディスプレイ、モニタ等が挙げられる。
【0104】
また、測定装置20が表示部を備えており、測定装置20が備えている表示部が表示部16の機能を備えていてもよい。この構成において、表示制御部137aは、通信部11を介して測定装置20の表示部に各表示を指示してもよい。
【0105】
[分析処理の流れ]
次に、図5を参照して、分析装置10における分析処理の流れを説明する。図5は、分析装置10における分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すように、取得部132は、測定装置20が繰り返し測定した対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する(S1、取得ステップ)。次に、分布範囲幅算出部133は対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅を算出する分布範囲幅算出処理を行う(S2)。続いて、代表値算出部1341は所定の測定期間において、血流量データに基づいて体表温度データを補正し、補正した体表温度データの代表値を算出する代表値算出処理を行う(S3、代表値算出ステップ)。代表値算出部1341は対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅に応じて、前記所定の期間における前記体表温度データを補正してもよい。続いて、概日リズム算出部1342は所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を用いて日毎の概日リズムである単日概日リズムを算出する(S4、リズム算出ステップ)。そして、概日リズム算出部1342は単日概日リズムのデータを蓄積する(S5、リズム算出ステップ)。続いて、概日リズム算出部1342は所定の日数の単日概日リズムを算出したか否かを判定する(S6)。所定の日数の単日概日リズムを算出した場合(S6にてYES)、平均概日リズム算出部135は平均概日リズムを算出する(S7、リズム算出ステップ)。続いて、表示制御部137は、推奨時刻算出部136が算出した対象者の推奨起床時刻および推奨就寝時刻を提示する推奨時刻提示処理を行い(S8)、処理は終了する。また、所定の日数の単日概日リズムを算出していない場合(S6にてNO)、処理はS3に戻る。また、所定の日数の単日概日リズムを算出していない場合(S6にてNO)、かつ、分析装置10が取得した対象者の体表温度データおよび血流量データに不足分がある場合、処理はS1に戻り、その後、処理はS3に続いてもよい。
【0106】
以下、上述の分析処理に含まれる各処理の一例について説明する。
【0107】
<分布範囲幅算出処理の例>
図6を参照して、分布範囲幅算出処理の一例について説明する。図6は分布範囲幅算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すように、分布範囲幅算出部133は起床時刻から就床時刻までの覚醒期間に測定された体表温度データおよび血流量データを取得する(S21)。例えば、分布範囲幅算出部133は覚醒期間の体表温度データおよび血流量データとして、起床X時間後から就床Y時間前の体表温度データおよび血流量データを体表温度情報151および血流量情報152から取得してもよい。また、分布範囲幅算出部133が取得する覚醒期間の体表温度データおよび血流量データは、対象者が安静状態で測定されたデータであってもよい。例えば、測定装置20が加速度センサを備えており、加速度センサの検出値に基づいて対象者の安静状態について判定を行ってもよい。測定装置20は、対象者が安静状態である場合に対象者の体表温度および血流量を測定してもよい。続いて、分布範囲幅算出部133は体表温度データの分布範囲の幅を算出し(S22)、処理は終了する。
【0108】
≪分布範囲の幅の算出例≫
分布範囲幅算出部133による体表温度データの分布範囲の幅の具体的な算出例を以下に説明する。図7は、覚醒状態、かつ、安静状態である対象者の体表温度および血流量の散布図である。図7に示す散布図の縦軸は体表温度STであり、横軸は血流量Bである。当該対象者の深部体温は一定である。対象者が安静状態であっても自律神経の状態は変動する。図7に示すように、自律神経の緊張時には血管は収縮して血流量が減少し、体表温度は低下する。また、自律神経の弛緩時には血管は拡張して血流量が増加し、体表温度は上昇する。
【0109】
〈分布範囲の幅の算出例1〉
図7に示すように、例えば、分布範囲幅算出部133は、取得した覚醒期間に測定された血流量データBwakeから最も血管が収縮している状態の血流量データと推定される最小の血流量データBminを特定する。また、分布範囲幅算出部133は、取得した血流量データBwakeから最も血管が拡張している状態の血流量データと推定される最大の血流量データBmaxを特定する。
【0110】
次に、分布範囲幅算出部133は取得した体表温度データおよび血流量データの散布図から回帰直線Lを算出する。
【0111】
分布範囲幅算出部133は回帰直線Lを用いて血流量データBminに対応する体表温度STB minおよび血流量データBmaxに対応する体表温度STB maxを算出する。分布範囲幅算出部133は体表温度STB maxと体表温度STB minとの差を体表温度の分布範囲の幅ΔSTとして算出する。
【0112】
また、分布範囲幅算出部133は回帰直線Lを算出せずに、Bminと同時に測定された体表温度データをSTminとして特定し、Bmaxと同時に測定された体表温度データをSTmaxとして特定してもよい。
【0113】
また、分布範囲幅算出部133は血流量データBminおよび血流量データBmaxを以下のように特定してもよい。
【0114】
分布範囲幅算出部133は、取得した血流量データBwakeに対して当該データが示す血流量の値の大きさに応じて順序付けを行う。
【0115】
分布範囲幅算出部133は、当該順序における順位を、最大値である血流量データBwakeを100%として百分率に換算する。例えば、分布範囲幅算出部133は、100回分の測定データである血流量データBwakeのうち5番目に低い血流量データBwakeを5%の順位の血流量データBminとする。また、分布範囲幅算出部133は、95番目に低い血流量データBwakeを95%の順位の血流量データBmaxとする。
【0116】
分布範囲幅算出部133は、5%の順位の血流量データBwakeを血流量データBminとして特定する。また、分布範囲幅算出部133は、95%の順位の血流量データBwakeを血流量データBmaxとして特定する。
【0117】
〈分布範囲の幅の算出例2〉
分布範囲の幅の他の算出例について、説明する。分布範囲幅算出部133は取得した覚醒期間に測定された体表温度データSTwakeに対して当該データが示す温度の高さに応じて順序付けを行う。分布範囲幅算出部133は、当該順序における順位を、最高値である体表温度データSTwakeを100%として百分率に換算する。分布範囲幅算出部133は、5%の順位の体表温度データSTwakeおよび95%の順位の体表温度データSTwakeを特定する。分布範囲幅算出部133は、5%の順位の体表温度データSTwakeが示す温度以上、かつ、95%の順位の体表温度データSTwakeが示す温度以下の範囲を体表温度の分布範囲の幅ΔSTとして算出する。また、分布範囲の幅ΔSTの算出に用いられる体表温度データSTwakeの順位については、外気温、水および他者の皮膚等の異物の接触等を原因とするセンサの検出値である外れ値を除外できる順位であればよく、特に限定されない。
【0118】
<代表値算出処理の例>
次に、図8を参照して、代表値算出処理の一例について説明する。図8は代表値算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示すように、代表値算出部1341は、体表温度情報151および血流量情報152から所定の測定期間における複数組の体表温度データおよび血流量データを取得する(S31)。続いて、代表値算出部1341は、血流量の増減傾向の判定を行う(S32)。血流量が増加傾向である場合(S32にて増加)、代表値算出処理部1341は、体表温度データに対して上限値を設定する(S33)。続いて、代表値算出部1341は、該上限値以下の体表温度データを抽出することによって体表温度データを補正する(S34)。続いて、代表値算出部1341は、抽出した体表温度データから所定の測定期間ごとの体表温度データの代表値を算出する(S35)。続いて、代表値算出部1341は、所定の測定日において代表値算出処理が未処理である測定期間があるか否かを判定する(S38)。未処理の測定期間がない場合(S38にてNO)、処理は終了する。
【0119】
また、血流量が減少傾向である場合(S32にて減少)、代表値算出処理部1341は、体表温度データに対して下限値を設定する(S36)。続いて、代表値算出部1341は、該下限値以上の体表温度データを抽出することによって体表温度データを補正する(S37)。そして、処理はS35に続く。
【0120】
また、血流量に変化がない場合(S32にて変化なし)、代表値算出処理部1341は、体表温度データを抽出することによる補正をせずに、処理はS35に続く。
【0121】
≪体表温度データの補正及び代表値算出の例≫
次に、図9を参照して、代表値算出部1341による体表温度データの補正及び代表値の一例を説明する。図9には、入眠状態、かつ、安静状態である対象者の体表温度および血流量の散布図の一例が示されている。図9に示す散布図の縦軸は体表温度STであり、横軸は血流量Bである。対象者は入眠状態であるため対象者の深部体温は低下しつつある。
【0122】
図9に示すように、入眠状態では自律神経が弛緩状態となり血管が拡張し、血流量が増加する。そのため、入眠状態の体表温度は、覚醒状態かつ安静状態の体表温度の代表値STrest wakeよりも上昇する。ここで、ΔSTは覚醒時の体表温度の分布範囲の幅である。図9に示す領域R1内のプロットは弛緩状態の自律神経の影響を大きく受けたと判断できる。
【0123】
一方、入眠状態の深部体温CTは皮膚からの放熱によって、STrest wakeよりもΔCTsleep onset減少する。すなわち、ΔCTsleep onsetは入眠前後の深部体温の変化量である。図9に示す領域R2内のプロットは深部体温の低下の影響を大きく受けたと判断できる。
【0124】
入眠前後の体表温度の変化量であるΔSTsleep onsetは以下の式で表される。
【0125】
ΔSTsleep onset=ΔCTsleep onset+ΔST/2
図9に示す補正前STsleep onsetは、図9に示す全てのプロットから算出された代表値である。すなわち、補正前STsleep onsetは入眠状態において測定されたデータ全てから算出された代表値を示す。
【0126】
図9に示す例では、補正前STsleep onsetは、入眠状態において測定されたデータ全てから算出された中央値を示している。
【0127】
入眠状態においては深部体温が低下しているにも関わらず、補正前STsleep onsetが示す体表温度は覚醒状態かつ安静状態の体表温度の代表値STrest wakeよりも高くなっている。
【0128】
そのため、代表値算出処理部1341は、入眠状態に見られるような血流量が増加傾向にある場合、以下のように体表温度データを下方修正することによって体表温度データを補正する。
【0129】
血流量が増加傾向にある場合、代表値算出処理部1341は取得した所定の測定期間における体表温度データから外れ値等を除外したうえで、最高値を示す体表温度データを特定する。図9においては、STsleep onset maxが当該最高値に対応する。
【0130】
次に、代表値算出処理部1341は当該最高値からΔST/2を引いた値を上限値として設定する。図9においては、取得データの補正後最高体表温度ST’sleep onset maxが当該上限値に対応する。図9に示すように、ST’sleep onset maxは以下の式によって算出される。
【0131】
ST’sleep onset max=STsleep onset max-ΔST/2
代表値算出処理部1341は取得した所定の測定期間における最低値を示す体表温度データから上限値である補正後最高体表温度ST’sleep onset max以下の範囲の体表温度データを分析対象として抽出する。すなわち、代表値算出処理部1341は補正後最高体表温度ST’sleep onset maxよりも高い体表温度を示す体表温度データを除外して体表温度データを補正する。
【0132】
代表値算出処理部1341は分析対象として抽出して体表温度データの代表値を算出して、所定の測定期間における体表温度の代表値とする。代表値算出処理部1341は算出した体表温度データの平均値または中央値を算出して当該代表値としてもよい。図9においては、補正後ST’sleep onsetが当該代表値に対応する。また、補正後ST’sleep onsetは上述の補正を反映した代表温度データの代表値である。そのため、補正後ST’sleep onsetは深部体温に相関する体表温度である。よって、本明細書では、補正後ST’sleep onsetを深部体温相関体表温度TCTcorrelationまたは深部体温相関体表温度TCTcorrとも表現する。
【0133】
以上、所定の測定期間において血流量が増加傾向にある場合の体表温度データの補正およびを代表値の算出例について説明した。
【0134】
例えば、代表値算出処理部1341は、覚醒状態に見られるような血流量が減少傾向にある場合、以下のように体表温度データを上方修正することによって体表温度データを補正してもよい。
【0135】
血流量が減少傾向にある場合、代表値算出処理部1341は取得した所定の測定期間における体表温度データから最低値を示す体表温度データを特定する。図9においては、STsleep onset minが当該最低値に対応する。次に、代表値算出処理部1341は当該最低値にΔST/2を加算した値を下限値として設定する。代表値算出処理部1341は取得した所定の測定期間における最高値を示す体表温度データから下限値以上の範囲の体表温度データを分析対象として抽出する。すなわち、代表値算出処理部1341は下限値よりも低い体表温度を示す体表温度データを除外して、体表温度データを補正する。
【0136】
<平均概日リズム算出処理の例>
次に、図10を参照して、平均概日リズム算出処理の一例について説明する。図10は、日毎の概日リズムから算出された平均概日リズムの一例を示す図である。図10に示すグラフの縦軸は深部体温相関体表温度TCTcorrを示している。図10に示すグラフの横軸は時刻を示している。
【0137】
図10に2点鎖線で示す蓄積概日リズムiはある日iの概日リズムを示す。また、図10に点線で示す蓄積概日リズムi+1はある日iの翌日i+1の概日リズムを示す。
【0138】
平均概日リズム算出部135は蓄積された日毎の概日リズムの平均値を算出することによって平均概日リズムを算出する。例えば、図10に示すように、平均概日リズム算出部135は平均概日リズムにおいて深部体温相関体表温度TCTcorrがTCTcorr nとなる時刻TimeCTcorr n aveを以下の平均時刻として算出する。
【0139】
時刻TimeCTcorr n aveは、蓄積概日リズムiにおいてTCTcorrがTCTcorr nとなる時刻TimeCTcorr nと蓄積概日リズムi+1においてTCTcorrがTCTcorr nとなる時刻TimeCTcorr n+iとの平均時刻として算出される。
【0140】
平均概日リズム算出部135は、1日の周期にわたり、平均概日リズムにおける所定の深部体温相関体表温度TCTcorrとなる時刻を繰り返し算出する。平均概日リズム算出部135は所定の深部体温相関体表温度TCTcorrおよび算出した前記時刻からカーブフィッティングなどを用いて平均概日リズムを算出してもよい。
【0141】
前記例では説明の便宜上、ある日iおよびある日iの翌日i+1の2日分の日毎の概日リズムを用いて平均概日リズムを算出する例を示したが、例えば、平均概日リズム算出部135は、平日5日分の日毎の概日リズムを用いて平均概日リズムを算出してもよい。平均概日リズムの算出に用いられる日毎の概日リズムの数は特に限定されない。
【0142】
<推奨時刻提示処理の例>
次に、図11を参照して、推奨時刻提示処理の一例について説明する。図11は推奨時刻提示処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11に示すように、推奨時刻算出部136は、平均概日リズムから推奨起床時刻、推奨就寝時刻および睡眠を禁止する時間帯である睡眠禁止時間を算出する(S81)。続いて、表示制御部137は推奨起床時刻、推奨就寝時刻および睡眠禁止時間を表示部16に表示させることによって提示し(S82)、処理は終了する。
【0143】
≪推奨起床時刻、推奨就寝時刻および睡眠禁止時間の算出例≫
次に、図12を参照して、推奨時刻算出部136による推奨起床時刻、推奨就寝時刻および睡眠禁止時間の算出の一例を説明する。
【0144】
図12には、推奨時刻算出部136により算出される推奨就寝時刻、推奨起床時刻、および睡眠禁止時間の一例が示されている。図12に示すTimerecommend sleepは推奨時刻算出部136により算出される推奨就寝時刻を示している。また、図12に示すTimerecommend wakeは推奨時刻算出部136により算出される推奨起床時刻を示している。また、図12に示すTimeCTcorr minは平均概日リズムにおいて深部体温相関体表温度TCTcorrが最低値となる時刻を示している。
【0145】
〈推奨起床時刻の算出例〉
推奨時刻算出部136は推奨起床時刻Timerecommend wakeとして以下の式を満たす時刻を算出する。
【0146】
TimeCTcorr min+2h<Timerecommend wake<TimeCTcorr min+4h
また、推奨時刻算出部136は推奨起床時刻Timerecommend wakeを特定の時刻ではなく、前記式を満たす時間帯として算出してもよい。
【0147】
〈推奨就寝時刻の算出例〉
推奨時刻算出部136は算出したTimerecommend wakeを用いて、推奨就寝時刻Timerecommend sleepとして以下の式を満たす時刻を算出する。
【0148】
Timerecommend wake+14h<Timerecommend sleep<Timerecommend wake+16h
また、推奨時刻算出部136は推奨就寝時刻Timerecommend sleepを特定の時刻ではなく、前記式を満たす時間帯として算出してもよい。
【0149】
〈睡眠禁止時間の算出例〉
推奨時刻算出部136は、平均概日リズムにおいて傾きが正の時間帯、かつ、Timerecommend wake以降の時刻帯を睡眠禁止時間として算出してもよい。
【0150】
また、平均概日リズムの算出にカーブフィッティングが利用されない構成では、推奨時刻算出部136は以下のように睡眠禁止時間を算出してもよい。推奨時刻算出部136は、平均概日リズムにおいて深部体温相関体表温度TCTcorrが最低値となる時刻TimeCTcorr minから推奨就寝時刻Timerecommend sleepまでを睡眠禁止時間として算出する。
【0151】
〈睡眠必須時間の算出例〉
推奨時刻算出部136は、深部体温底値到達時刻TimeCTcorr minに基づいて睡眠が必須な時間帯である睡眠必須時間を算出してもよい。例えば、推奨時刻算出部136は、睡眠必須時間Period sleepを以下のように算出してもよい。
【0152】
TimeCTcorr min-1h<Period sleep<TimeCTcorr min+1h
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0153】
本実施形態に係る分析装置10aは、血流量の増減傾向の判定について実施形態1にて説明した分析装置10が行う判定方法とは異なる判定方法を行う。詳細には、分析装置10aは予め算出しておいた基準血流量と所定の測定期間において測定された血流量とを比較し、血流量の増減傾向の判定を行う。
【0154】
図13は、本実施形態に係る分析システム1aの構成例を示す機能ブロック図である。ここでは、実施形態1にて説明した分析システム1と異なる構成のみ説明する。
【0155】
図13に示すように、本実施形態に係る分析システム1aは分析装置10aを含む。分析装置10aが備える制御部13aは、指示受付部131a、取得部132a、代表値算出部1341aを含む単日概日リズム生成部134aおよび基準血流量決定部138aを含む。
【0156】
また、分析装置10aは、安静時血流量情報158aおよび基準血流量情報159aを含む記憶部15aを備える。
【0157】
≪指示受付部131a≫
指示受付部131aは実施形態1にて説明した指示受付部131の処理に加えて、以下の処理を行う。
【0158】
指示受付部131aは推奨起床時刻および推奨就寝時刻の提示の指示または深部体温相関体表温度の算出に必要なデータを取得する指示を受け付けると、対象者に対して覚醒状態かつ安静状態であるように示す通知を所定のタイミングで表示するように、表示制御部137aを介して表示部16に指示する。例えば、前記通知には測定装置20の位置を対象者の心臓の位置にするように促す通知が含まれていてもよい。
【0159】
指示受付部131aは、表示部16に前記通知を表示させるタイミングを示す表示タイミングデータまたは深部体温相関体表温度の算出に必要なデータを取得する指示を受け付けたタイミングを示す指示タイミングデータを取得部132aに送信する。
【0160】
≪取得部132a≫
取得部132aは表示タイミングデータまたは指示タイミングデータを受信すると、当該データが示すタイミングに基づく所定の期間において測定装置20から取得した血流量データを、安静時血流量情報158aとして記憶部15aに格納する。上述の当該データが示すタイミングに基づく所定の期間の長さは、覚醒状態かつ安静状態が反映された血流量データを得られる長さであればよく、特に限定されないが、例えば、15分間である。また、当該データが示すタイミングに基づく所定の期間とは、当該タイミングから所定の時間間隔をおいて開始される期間であってもよい。取得部132aは安静時血流量情報158aを記憶部15aに格納すると、基準血流量決定部138aに安静時血流量情報158aの格納完了を示す信号を送信する。
【0161】
≪基準血流量決定部138a≫
基準血流量決定部138aは安静時血流量情報158aの格納完了を示す信号を取得部132aから受信すると、安静時血流量情報158aから基準血流量を算出する。例えば、基準血流量決定部138aは安静時血流量情報158aを参照し、取得した血流量データに対して当該データが示す血流量の値の大きさに応じて順序付けを行う。
【0162】
基準血流量決定部138aは、当該順序における順位を、最大値である血流量データを100%とする百分率に換算する。基準血流量決定部138aは50%の順位の血流量データを血流量データBrest wakeとして特定する。また、基準血流量決定部138aは5%の順位の血流量データを血流量データBrest wake 5%として特定する。また、基準血流量決定部138aは95%の順位の血流量データを血流量データBrest wake 95%として特定する。
【0163】
基準血流量決定部138aは血流量データBrest wake、血流量データBrest wake 5%および血流量データBrest wake 95%を示す基準血流量情報159aを記憶部15aに格納する。
【0164】
また、基準血流量決定部138aは対象者の日常生活から取得される血流量データから対象者の覚醒状態かつ安静状態における血流量を推定し、推定した血流量を基準血流量情報159aとして記憶部15aに格納してもよい。
【0165】
≪代表値算出部1341a≫
単日概日リズム生成部134aが備えている代表値算出部1341aが行う血流量の増減傾向の判定の一例を以下に示す。代表値算出部1341aは血流量の増減傾向の判定以外は、実施形態1に記載の代表値算出部1341と同様の処理を行う。
【0166】
(代表値算出部1341aによる血流量の増減傾向の判定例)
代表値算出部1341aは、所定の測定期間における血流量の増減の傾向を、所定の測定期間に測定された対象者の血流量データと対象者が覚醒状態かつ安静状態である場合に測定された血流量データとを比較して判定する。
【0167】
前記の構成によれば、所定の測定期間において測定された血流量データ同士の比較では血流量の増減を判定できない場合においても、血流量の増減の傾向を判定できる。
【0168】
代表値算出部1341aは、記憶部15aに格納されている基準血流量情報159aを参照し、以下に示すように血流量の増減傾向の判定を行ってもよい。下記のBcurrentは所定の測定期間に測定された血流量を示す血流量データである。
【0169】
rest wake<Bcurrentとなる場合、増加傾向と判定する。
【0170】
rest wake>Bcurrentとなる場合、減少傾向と判定する。
【0171】
rest wake=Bcurrentとなる場合、安定状態と判定する。
【0172】
また、Brest wakeを特定の値とせずに、下記に示すように血流量の範囲としてもよい。
【0173】
rest wake 5%<Brest wake<Brest wake 95%
また、代表値算出部1341は、所定の測定期間における体表温度データの代表値の算出に用いる体表温度データを、基準血流量情報159aを用いて選別してもよい。
【0174】
例えば、所定の測定期間に取得した血流量データBcurrentが以下の条件を満たす場合は、代表値算出部1341は血流量データBcurrentと同時に取得した体表温度データを所定の測定期間における体表温度データの代表値の算出に用いない。
【0175】
current>Brest wake 95%
または、
current<Brest wake 5%
[分析処理の流れ]
次に、図14を参照して、分析装置10aにおける分析処理の流れの一例を説明する。図14は、分析装置10aにおける分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、実施形態1にて説明した分析装置10における分析処理とは異なる分析装置10aにおける処理のみ説明する。
【0176】
図14に示すように、分布範囲幅算出処理(S2)に続いて、基準血流量決定部138aは基準血流量決定処理を行う(S9a)。本例においては、分布範囲幅算出処理の後に基準血流量決定処理を行う処理の流れの例について説明するが、分析装置10aは基準血流量決定処理の後に分布範囲幅算出処理を行う構成としてもよい。
【0177】
基準血流量決定処理(S9a)に続いて、分析装置10aは安静時血流量情報158aを用いた血流量の増加傾向の判定を含む代表値算出処理を行う(S3)。その後、処理はS4に続く。
【0178】
以下、上述の分析処理に含まれる基準血流量決定処理の流れの一例について説明する。
【0179】
<基準血流量決定処理の流れ>
図15を参照して、分析装置10aにおける基準血流量決定処理の流れの一例を説明する。図15は、分析装置10aにおける基準血流量決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図15に示すように、表示制御部137aは対象者に対して安静状態であるように示す通知の指示を受信する(S91a)。続いて、表示部16は表示制御部137aの指示に従い、対象者に対して覚醒状態かつ安静状態であるように示す通知を表示する(S92a)。続いて、取得部132aは測定装置20から取得した血流量データを安静時血流量情報158aとして記憶部15aに格納することによって、安静時血流量データを蓄積する。(S93a)。続いて、基準血流量決定部138aは安静時血流量情報158aから基準血流量を算出し、基準血流量を決定する(S94a)。そして、処理は終了する。
【0180】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0181】
対象者の睡眠-覚醒リズムは対象者の生活環境に応じた就寝時刻および起床時刻により決まる。そのため、睡眠の質を改善するために対象者の生活環境を変更することは容易ではない。
【0182】
一方で、対象者が光を浴びる期間を管理することによって、対象者の概日リズムの位相を補正することは比較的容易である。
【0183】
本実施形態に係る分析装置10bは光照射期間算出部140bを備えている。光照射期間算出部140bは、平均概日リズム算出部135が算出した概日リズムに基づき、対象者が光を浴びるべき時間帯を示す光照射期間および対象者が光を回避すべき時間帯である光回避期間を算出する。光照射期間算出部140bは、上述の光照射期間および光回避期間を、対象者が要望する起床時刻および就寝時刻に合わせて算出する。
【0184】
前記の構成によれば、対象者の概日リズムの位相を対象者に要望の概日リズムの位相に補正するように、光照射期間および光回避期間を、例えば対象者に提示することができる。
【0185】
図16は、本実施形態に係る分析システム1bの構成例を示す機能ブロック図である。ここでは、実施形態1にて説明した分析システム1と異なる構成のみ説明する。
【0186】
図16に示すように、本実施形態に係る分析システム1bは分析装置10bを含む。分析装置10bが備える制御部13bは、指示受付部131bおよび実施形態1にて説明した推奨時刻算出部136の代わりに光照射期間算出部140bを含む。
【0187】
≪指示受付部131b≫
指示受付部131bは、実施形態1にて説明した指示受付部131の処理に加えて、以下の処理を行う。
【0188】
指示受付部131bは光照射期間および光回避期間の提示の指示を受け付ける。指示受付部131bは対象者が要望する起床時刻および対象者が要望する就寝時刻も受け付ける。例えば、指示受付部131bが、対象者が要望する起床時刻および対象者が要望する就寝時刻を受け付けると、分析装置10bにおける分析処理が開始される構成としてもよい。
【0189】
指示受付部131bは対象者が要望する起床時刻および対象者が要望する就寝時刻を示すデータを光照射期間算出部140bに送信する。
【0190】
≪光照射期間算出部140b≫
光照射期間算出部140bは、平均概日リズムを示すデータを平均概日リズム算出部135から受信する。また、光照射期間算出部140bは対象者が要望する起床時刻および対象者が要望する就寝時刻を示すデータを指示受付部131bから受信する。
【0191】
光照射期間算出部140bは、平均概日リズム算出部135が算出した概日リズムに基づき、光照射期間および光回避期間を算出する。光照射期間算出部140bは、光照射期間および光回避期間を、対象者が要望する起床時刻および就寝時刻に合わせて算出する。
【0192】
光照射期間算出部140bは、算出した光照射期間および光回避期間を表示制御部137に送信する。
【0193】
≪表示制御部137≫
表示制御部137は、光照射期間算出部140bが算出した光照射期間および光回避期間を表示部16に表示させることによって対象者に提示する。例えば、表示制御部137は、提示画像情報155から適切な提示画像を取得し、当該提示画像を表示部16に表示させてもよい。
【0194】
また、本実施形態に係る分析装置10bについては、実施形態1にて説明した推奨時刻算出部136の代わりに光照射期間算出部140bを備えている構成を例示する。一方で、分析装置10bは推奨時刻算出部136および光照射期間算出部140bの両方を備える構成としてもよい。
【0195】
[分析処理の流れ]
次に、図17を参照して、分析装置10bにおける分析処理の流れの一例を説明する。図17は、分析装置10bにおける分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、実施形態1にて説明した分析装置10における分析処理とは異なる分析装置10bにおける処理のみ説明する。
【0196】
図17に示すように、平均概日リズムの算出処理(S7)に続いて、分析装置10bは光照射期間および光回避期間の提示処理を行う(S10b)。そして、処理は終了する。
【0197】
以下、上述の光照射期間および光回避期間の提示処理の流れの一例について説明する。
【0198】
<光照射期間および光回避期間の提示処理の流れ>
図18を参照して、分析装置10bにおける光照射期間および光回避期間の提示処理の流れの一例を説明する。図18は、分析装置10bにおける光照射期間および光回避期間の提示処理の流れの一例を示すフローチャートである。図18に示すように、指示受付部131bは対象者が要望する起床時刻および対象者が要望する就寝時刻を取得する(S101b)。続いて、光照射期間算出部140bは平均概日リズムの補正方向を算出する(S102b)。また、光照射期間算出部140bは、S102bにて補正幅を算出してもよい。続いて、光照射期間算出部140bは光照射期間および光回避期間を算出する(S103b)。続いて、表示制御部137は光照射期間および光回避期間を表示部16に表示させることによって提示し(S104b)、処理は終了する。
【0199】
≪平均概日リズムの補正方向および補正幅の算出例≫
次に、光照射期間算出部140bによる平均概日リズムの補正方向および補正幅の算出の一例を説明する。
【0200】
光照射期間算出部140bは、補正後の平均概日リズムにおける深部体温相関体表温度が最低値となる時刻Time adjusted CTcorr minが、以下の式を満たすように平均概日リズムの補正方向を決定する。
【0201】
Timedesired sleep<Time adjusted CTcorr min<Timedesired wake
ここで、Timedesired sleepは対象者が要望する就寝時刻である。また、Timedesired wakeは対象者が要望する起床時刻である。
【0202】
また、光照射期間算出部140bは、補正後の平均概日リズムが前記の式を満たすように平均概日リズムの補正幅を算出してもよい。
【0203】
≪光照射期間および光回避期間の算出例≫
〈平均概日リズムを前進させて補正する場合の算出例〉
次に、図19を参照して、平均概日リズムを前進させて補正する場合における光照射期間および光回避期間の算出の一例を説明する。図19は平均概日リズムを前進させて補正する場合の光照射期間および光回避期間の一例を示す図である。
【0204】
図19に示すように、平均概日リズムを前進させることによって補正する場合には、光照射期間算出部140bは光照射期間Timelight exposureを以下のように算出してもよい。光照射期間Timelight exposureは平均概日リズムにおける深部体温相関体表温度が最低値となる時刻Time CTcorr minから、Time CTcorr minの8時間後の時刻までの期間とする。すなわち、Timelight exposureは以下の式で表せる。
【0205】
Time CTcorr min<Timelight exposure<Time CTcorr min+8h
また、図19に示すように、平均概日リズムを前進させることによって補正する場合には、光照射期間算出部140bは光回避期間Timelight prohibitedを以下のように算出してもよい。光回避期間Timelight prohibitedは平均概日リズムにおける深部体温相関体表温度が最低値となる時刻Time CTcorr minの10時間前からTime CTcorr minまでの期間とする。すなわち、Timelight prohibitedは以下の式で表せる。
【0206】
Time CTcorr min-10h<Timelight prohibited<Time CTcorr min
〈平均概日リズムを後退させて補正する場合の算出例〉
次に、図20を参照して、平均概日リズムを後退させて補正する場合における光照射期間および光回避期間の算出の一例を説明する。図20は平均概日リズムを後退させて補正する場合の光照射期間および光回避期間の一例を示す図である。
【0207】
図20に示すように、平均概日リズムを後退させることによって補正する場合には、光照射期間算出部140bは光照射期間Timelight exposureを以下のように算出してもよい。光照射期間Timelight exposureは平均概日リズムにおける深部体温相関体表温度が最低値となる時刻Time CTcorr minの10時間前からTime CTcorr minまでの期間とする。すなわち、Timelight exposureは以下の式で表せる。
【0208】
Time CTcorr min-10h<Timelight exposure<Time CTcorr min
また、図20に示すように、平均概日リズムを後退させることによって補正する場合には、光照射期間算出部140bは光回避期間Timelight prohibitedを以下のように算出してもよい。光回避期間Timelight prohibitedは平均概日リズムにおける深部体温相関体表温度が最低値となる時刻Time CTcorr minから、Time CTcorr minの8時間後の時刻までの期間とする。すなわち、Timelight prohibitedは以下の式で表せる。
【0209】
Time CTcorr min<Timelight prohibited<Time CTcorr min+8h
〔ソフトウェアによる実現例〕
分析装置10、10aおよび10b(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部13、13aおよび13bに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0210】
この場合、前記装置は、前記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前記プログラムを実行することにより、前記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0211】
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前記装置に供給されてもよい。
【0212】
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0213】
また、前記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは前記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0214】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0215】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る分析装置は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得部と、前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出部と、前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出部とを備える。
【0216】
本開示の態様2に係る分析装置は、前記態様1において、前記代表値算出部は、前記血流量データの傾向に基づいて前記体表温度データを補正してもよい。
【0217】
本開示の態様3に係る分析装置は、前記態様1または2において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データを下方修正することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0218】
本開示の態様4に係る分析装置は、前記態様1から3において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データの上限値を設定し、該上限値以下の前記体表温度データを抽出することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0219】
本開示の態様5に係る分析装置は、前記態様1または2において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データを上方修正することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0220】
本開示の態様6に係る分析装置は、前記態様1、2または5において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データの下限値を設定し、該下限値以上の前記体表温度データを抽出することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0221】
本開示の態様7に係る分析装置は、前記態様1から4において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データを下方修正することによって前記体表温度データを補正するとともに、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データを上方修正することによって前記体表温度データを補正してもよい。
【0222】
本開示の態様8に係る分析装置は、前記態様1、2または7において、前記代表値算出部は、前記所定の期間の前記体表温度データおよび前記血流量データについて、前記血流量データが血流量の増加傾向を示す場合に、前記体表温度データの上限値を設定し、該上限値以下の前記体表温度データを抽出するとともに、前記血流量データが血流量の減少傾向を示す場合に、前記体表温度データの下限値を設定し、該下限値以上の前記体表温度データを抽出してもよい。
【0223】
本開示の態様9に係る分析装置は、前記態様3から8の何れかにおいて、前記代表値算出部は、前記所定の期間における前記血流量の増減の傾向を、前記所定の期間の初期に測定された前記血流量データと前記所定の期間の末期に測定された前記血流量データとを比較して判定してもよい。
【0224】
本開示の態様10に係る分析装置は、前記態様3から8の何れかにおいて、前記代表値算出部は、前記所定の期間における前記血流量の増減の傾向を、前記所定の期間に測定された前記対象者の血流量データと前記対象者が覚醒状態かつ安静状態である場合の前記対象者の血流量データとを比較して判定してもよい。
【0225】
本開示の態様11に係る分析装置は、前記態様1から10の何れかにおいて、前記代表値算出部は、前記対象者の覚醒時における体表温度の分布範囲の幅に基づいて、前記所定の期間における前記体表温度データを補正してもよい。
【0226】
本開示の態様12に係る分析装置は、前記態様1から11の何れかにおいて、前記リズム算出部が算出した前記対象者の概日リズムを用いて、前記対象者の推奨起床時刻および推奨就寝時刻の少なくとも一方を算出する推奨時刻算出部を備えていてもよい。
【0227】
本開示の態様13に係る分析装置は、前記態様1から12の何れかにおいて、前記リズム算出部が算出した概日リズムに基づき、前記対象者の望ましい起床時刻および就寝時刻に合わせて、前記対象者が光を浴びるべき時間帯を示す光照射期間および前記対象者が光を回避すべき時間帯である光回避期間を算出する光照射期間算出部、を備えてもよい。
【0228】
本開示の態様14に係る分析方法は、繰り返し対象者の体表温度データおよび血流量データを、所定の期間ごとに複数組ずつ取得する取得ステップと、前記所定の期間において、前記血流量データに基づいて前記体表温度データを補正し、前記体表温度データの代表値を算出する代表値算出ステップと、前記所定の期間ごとの体表温度データの前記代表値を用いて前記対象者の概日リズムを算出するリズム算出ステップとを含む。
【符号の説明】
【0229】
10、10a、10b 分析装置
132、132a 取得部
1341、1341a 代表値算出部
1342 概日リズム算出部(リズム算出部)
135 平均概日リズム算出部(リズム算出部)
136 推奨時刻算出部
140b 光照射期間算出部
S1 取得ステップ
S3 代表値算出ステップ
S4、S5、S7 リズム算出ステップ
図1
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