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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070697
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】双方向タービン及び音響発電装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/28 20060101AFI20240516BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240516BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240516BHJP
   F02C 7/20 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F01D25/28 C
F01D25/00 U
F01D25/24 J
F02C7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181347
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 実
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数で、タービン本体を音響導入管に対し位置調整可能に取り付けることができるようにする。
【解決手段】双方向タービン32は、音響導入管の内部に配置され、音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローター44を備えるタービン本体40と、タービン本体40の外周面に備えられ、音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性シール(Oリング56)と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、
前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、
を有する双方向タービン。
【請求項2】
前記弾性密着材は、前記音響導入管の内周面と前記タービン本体の外周面との間をシールしている請求項1に記載の双方向タービン。
【請求項3】
前記タービン本体は、前記タービンローターの軸方向の両側にそれぞれ設けられ前記タービンローターに前記音響波を導く2つのノズルを有し、
2つの前記ノズルのそれぞれの外周面に、前記弾性密着材が備えられている請求項2に記載の双方向タービン。
【請求項4】
2つの前記ノズルの間に配置されて前記ノズルの軸方向の間隔を前記タービンローターの軸方向の長さよりも長く維持するスペーサ、を有する請求項3に記載の双方向タービン。
【請求項5】
2つの前記ノズルの内側で前記タービンローターの回転軸を回転可能に支持する軸支持部材と、
前記軸支持部材の外周面と前記ノズルの内周面とに弾性的に密着する第二弾性密着材と、
を有する請求項4に記載の双方向タービン。
【請求項6】
前記軸支持部材の一方に対し前記タービンローター側からねじ込まれ、先端が突出して前記ノズルの一方を前記軸方向に押圧することで前記軸支持部材の一方を前記軸方向に移動させる調整ネジ、を有する請求項5に記載の双方向タービン。
【請求項7】
内部を音響波が双方向に伝わる音響導入管と、
前記音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、を有する双方向タービンと、
前記タービンローターの回転力により回転して発電する発電機と、
を有する音響発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向タービン及び音響発電装置エネルギー吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱音響エンジンにおける作動気体の自励振動によって回転するター
【0003】
ビン翼と、タービン翼に連結され分岐配管の管壁を貫通して管内から管外へと延出するように構成されたタービン回転軸と、を含むタービンと、を備えた熱音響発電システムが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、タービン翼の固定翼部がタービンハウジングにボルト及びナットで固定され、さらにタービンハウジングが、配管構成部の分岐配管の管内に連通するようにボルト及びナットで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-217264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構造では、ボルト及びナットでタービンハウジングを配管に固定しているため、部品点数が多い。
【0007】
また、双方向タービンを音響導入管に取り付ける場合には、音響導入管の内部において、双方向タービンを適切な位置に配置して、効率的にタービンローターを回転させることが望まれる。
【0008】
引用文献1に記載の構造のように、ボルト及びナットでタービンハウジングを配管に固定してしまうと、配管に対するタービンハウジング(タービンローター)の位置変更が難しい。
【0009】
本開示の目的は、少ない部品点数で、タービン本体を音響導入管に対し位置調整を容易に取り付けることである
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一態様は、音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、を有する双方向タービンである。
【0011】
この双方向タービンでは、音響導入管の内部にタービン本体が配置されている。タービン本体に音響導入管の内部の音響波が作用すると、タービンローターが回転する。
【0012】
タービン本体の外周には弾性密着材が備えられている。弾性密着材は、音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する。これにより、タービン本体を音響導入管に対し固定することが可能である。タービン本体を音響導入管に固定するためにボルト及びナットを用いないので、部品点数が少なくて済む。タービン本体は、弾性密着材の密着によって音響導入管の内部に固定されているので、ボルト及びナットを用いて固定した場合と比較して、位置調整が容易である。
【0013】
第二態様は、第一態様において、前記弾性密着材は、前記音響導入管の内周面と前記タービン本体の外周面との間をシールしている。
【0014】
これにより、タービン本体の両側で音響波が伝わることを抑制でき、音響波をタービン本体に効果的に作用させることができる。
【0015】
第三態様は、第二態様において、前記タービン本体は、前記タービンローターの軸方向の両側にそれぞれ設けられ前記タービンローターに前記音響波を導く2つのノズルを有し、2つの前記ノズルのそれぞれの外周面に、前記弾性密着材が備えられている。
【0016】
タービンローターの軸方向の両側にそれぞれ設けられた2つのノズルから、音響波をタービン本体に導くので、タービンローターを効率的に回転させることができる。
【0017】
2つのノズルには、それぞれの外周面に弾性密着材が備えられているので、タービンローターの軸方向の両側でタービン本体を音響導入管の内部に固定できる。
【0018】
第四態様は、第三態様において、2つの前記ノズルの間に配置されて前記ノズルの軸方向の間隔を前記タービンローターの軸方向の長さよりも長く維持するスペーサ、を有する。
【0019】
スペーサにより、2つのノズルの軸方向間隔を、タービンローターの軸方向の長さよりも長く維持できる。これにより、2つのノズルの間で、タービンローターをノズルに接触させることなく回転可能に収容できる構造を実現できる。
【0020】
第五態様は、第三又は第四態様において、2つの前記ノズルの内側で前記タービンローターの回転軸を回転可能に支持する軸支持部材と、前記軸支持部材の外周面と前記ノズルの内周面とに周方向で弾性的に密着する第二弾性密着材と、を有する。
【0021】
タービンローターの回転軸は軸支持部材回転可能に支持される。軸支持部材の外周面とノズルの内周面との間では第二弾性密着材が弾性的に密着しているので、軸支持部材をノズルに対し固定できる。
【0022】
第六態様では、第五態様において、前記軸支持部材の一方に対し前記タービンローター側からねじ込まれ、先端が突出して前記ノズルの一方を前記軸方向に押圧することで前記軸支持部材の一方を前記軸方向に移動させる調整ネジ、を有する。
【0023】
調整ネジが軸支持部材にねじ込まれると、調整ネジの先端はノズルの一方を軸方向に押圧するので、軸支持部材がノズルに対し軸方向に移動する。これにより、軸支持部材を介して、タービンローターの軸方向の位置を調整することができる。
【0024】
第七態様では、内部を音響波が双方向に伝わる音響導入管と、前記音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、を有する双方向タービンと、前記タービンローターの回転力により回転して発電する発電機と、を有する音響発電装置である。
【0025】
この音響発電装置が有する双方向タービンでは、音響導入管の内部に配置されているタービン本体に音響導入管の内部の音響波が作用しタービンローターが回転する。タービンローターの回転力により発電機が回転するので、発電できる。
【0026】
タービン本体の外周には弾性密着材が備えられている。弾性密着材は、音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する。これにより、タービン本体を音響導入管に対し固定することが可能である。タービン本体を音響導入管に固定するためにボルト及びナットを用いないので、部品点数が少なくて済む。
【発明の効果】
【0027】
本開示の技術では、少ない部品点数で、タービン本体を音響導入管に対し位置調整可能に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は第一実施形態の音響発電装置を備えた音響発電システムを示す構成図である。
図2図2は第一実施形態の音響発電装置を示す斜視図である。
図3図3は第一実施形態の音響発電装置を示す分解斜視図である。
図4図4は第一実施形態の音響発電装置を示す縦断面図である。
図5図5は第一実施形態の双方向タービンの一方のノズルを示す正面図である。
図6図6は第一実施形態の双方向タービンの他方のノズルを示す正面図である。
図7図7は第一実施形態の双方向タービンを部分的に示す断面図である。
図8図8は第一実施形態の双方向タービンの一方の軸受支持部材を示す正面図である。
図9図9は第一実施形態の双方向タービンの一方のノズル、軸受支持部材及びコーンを一部破断して示す斜視図である。
図10図10は第一実施形態の双方向タービンにおいて軸受支持部材及びタービンローターの位置を調整する状態を示す断面図である。
図11図11は第一実施形態の双方向タービンにおいて軸受支持部材及びタービンローターの位置を調整する状態を示す断面図である
図12図12は比較例の軸受支持部材の製造途中の状態を示す断面図である。
図13図13は第一実施形態の双方向タービンの一方の軸受支持部材を図8の13-13線断面の位置で示す製造途中の図である。
図14図14は第一実施形態の双方向タービンの他方の軸受支持部材を示す製造途中の断面図である。
図15図15は第一実施形態の双方向タービンの一方のノズルを図5の15-15線断面の位置で示す製造途中の図である。
図16図16は第一実施形態の双方向タービンの他方のノズルを図6の16-16線鮮断面の位置で示す製造途中の図である。
図17図17は第一実施形態の双方向タービンのタービンローターを示す製造途中の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して第一実施形態の双方向タービン32及び音響発電装置30について説明する。
【0030】
図1には、音響発電装置30を備えた音響発電システム12が示されている。図2図4には、この音響発電装置30が示されている。音響発電装置30は、双方向タービン32を備えている。
【0031】
音響発電システム12は、音響配管14を有している。音響配管14は、第一ループ部14A、第二ループ部14B及び接続部14Cを含む。音響配管14における第二ループ部14Bは、音響導入管の一例である。
【0032】
第一ループ部14A及び第二ループ部14Bは環状の管である。接続部14Cは、第一ループ部14Aの内部と第二ループ部14Bの内部とを接続する直線状の管である。本実施形態では、第一ループ部14A、第二ループ部14B及び接続部14Cにおいて、管の長手方向と直交する方向の断面はいずれも円形である。ただし管の断面形状は円形に限定されず、たとえば多角形状であってもよい。
【0033】
第一ループ部14Aの内部には、熱音響エンジン16が設けられている。熱音響エンジン16は、蓄熱器18と、この蓄熱器18の両側にそれぞれ配置された高温熱交換器20及び低温熱交換器22を含む。
【0034】
熱音響エンジン16では、高温熱交換器20と低温熱交換器22との温度差によって生じた熱エネルギーが音響エネルギーに変換される。この音響エネルギーにより生じた音響波は、第一ループ部14A内で、矢印F1方向及びその反対方向である矢印F2方向に伝わる。さらに音響波は、接続部14Cを介して第二ループ部14Bに伝わる。
【0035】
第二ループ部14Bには、音響発電装置30が設けられている。図4に示すように、音響発電装置30は、双方向タービン32と、発電機34とを含む。第二ループ部14Bには、第一ループ部14Aから接続部14Cを経由して音響波が作用する。この音響波は、第二ループ部14B内において、矢印F3方向と矢印F4方向とに進行する。
【0036】
双方向タービン32では、第二ループ部14B内においていずれの方向に進行する音響波であっても、後述するタービンローター44(図3及び図4参照)を一定の方向に回転させることができるようになっている。双方向タービン32では、タービンローター44の回転力を発電機34に作用させ、発電機34が発電する。
【0037】
発電機34には、ケーブル38が接続されている。ケーブル38は、後述するコーン42B及び第二ループ部14Bを貫通している。ケーブル38により、発電機34で発電された電力を音響発電装置30の外部に取り出すことができる。
【0038】
ここで、接続部14Cと第二ループ部14Bとの連結位置14Dから音響発電装置30までの距離として、矢印F3方向での距離L1と、矢印F4方向での距離L2を考える。熱音響エンジン16において効果的に音響波を発生させて音響発電装置30に作用させるためには、音響配管14の管路長、特に距離L1及び距離L2を適切に設定する必要がある。
【0039】
図2図4に詳細に示すように、双方向タービン32は、タービン本体40と、2つのコーン42A、42Bを有している。
【0040】
タービン本体40は、タービンローター44と、2つのノズル46A、46Bと、を有している。タービンローター44は、その中心に回転軸60を有している。タービンローター44は、回転軸60を中心として回転可能である。
【0041】
回転軸60は、軸継手62を介して発電機34と連結されている。これにより、タービンローター44の回転力が発電機34に作用し、発電機34が回転される。以下において、単に「軸方向」というときは、回転軸60の軸方向を言うものとする。
【0042】
2つのノズル46A、46Bは、タービンローター44の軸方向の両側に備えられている。図5及び図6にも示すように、ノズル46A、46Bはいずれも円筒状に形成されている。ノズル46A、46Bにおいて、外周側のシュラウド部48と内周側のハブ部50との間が翼部52である。翼部52は、音響配管14の第二ループ部14B(図1参照)を進行する音響波をタービンローター44に案内し、タービンローター44を音響波によって効率的に回転させる。
【0043】
図7にも示すように、それぞれのノズル46A、46Bにおけるシュラウド部48の外周面は、第二ループ部14Bの管の内周面との間にわずかな隙間を空けている。シュラウド部48の外周面には、周方向に沿って溝54が形成されている。本実施形態では、溝54は、ノズル46A、46Bそれぞれにおいて1本形成されている。
【0044】
溝54には、環状のOリング56が配置されている。Oリング56は、開示の技術の弾性密着材の一例である。Oリング56は、弾性的に径方向外側へ広げられて溝54に収容されており、溝54の外周面に密着している。また、Oリング56の外縁部分はノズル46A、46Bの外周面よりもさらに径方向外側に出っ張っている。Oリング56は、第二ループ部14Bの管の内周面にも密着している。したがって、Oリング56は、ノズル46A又はノズル46Bの外周面と、第二ループ部14Bの内周面との間をシールしている。
【0045】
第二ループ部14Bの内周面に対するOリング56の密着力は、第二ループ部14B内を伝わる音響波の影響でノズル46A、46Bが軸方向にすれることはないが、所定以上の力を双方向タービン32に作用させた場合には、第二ループ部14Bに対し双方向タービン32が軸方向に移動するように設定されている。なお、Oリング56は溝54に収容されているので、ノズル46A、46Bに対し軸方向へずれることはない。
【0046】
2つのノズル46A、46Bのシュラウド部48の間には、環状のスペーサ58が配置されている。スペーサ58によって、ノズル46A、46Bの間隔Bspが一定以上に維持されている。たとえば、後述するように、ノズル46Aをタービンローター36に接近する方向(図10に示す矢印M1方向)に押圧した場合であっても、ノズル46A、46Bの間隔Bspはスペーサ58によって一定以上に維持され、ノズル46Bも同方向(矢印M1方向)に移動する。これにより、双方向タービン32が全体として第二ループ部14Bに対し移動する構造が実現されている。同様に、ノズル46Bを図11に示す矢印M2方向に押圧した場合でも双方向タービン32が全体として第二ループ部14Bに対し移動するようになっている。
【0047】
タービンローター44は、スペーサ58の径方向内側に収容されている。スペーサ58の軸方向長さBspは、タービンローター44の軸方向長さBrtよりも長い。
【0048】
タービンローター44とノズル46Aとの間には軸方向にクリアランスCL1が構成されている。同様に、タービンローター44とノズル46Bとの間には軸方向にクリアランスCL2が構成されている。スペーサ58の軸方向長さBsp、タービンローター44の軸方向長さBrt、クリアランスCL1、CL2の間には、
Bsp=Brt+CL1+CL2 (1)
の関係がある。
【0049】
ノズル46A、46Bのハブ部50の内周側には、円筒状の軸受支持部材64A、64Bが配置されている。軸受支持部材64A、64Bの外周面は、ノズル46A、46Bのハブ部50の内周面との間にわずかな隙間を空けている。ハブ部50の外周面には、周方向に沿って溝66が形成されている。
【0050】
溝66には、環状のOリング68が配置されている。Oリング56は、開示の技術の第二弾性密着材の一例である。Oリング68は、弾性的に径方向外側へ広げられて溝66に収容されており、溝66の外周面に密着している。また、Oリング68の外縁部分は軸受支持部材64A、64Bの外周面よりもさらに径方向外側に出っ張っている。Oリング68は、ノズル46A、46Bのハブ部50の内周面にも密着している。
【0051】
軸受支持部材64A、64Bの中央部分には凹部67が形成されている。軸受支持部材64Bの凹部67は、発電機34が収容される収容部を兼ねている。
【0052】
タービンローター44の軸方向の外側には、軸受70A、70Bが配置されている。軸受70A、70Bはタービンローター44に接触している。軸受70A、70Bは回転軸60を回転可能に支持している。
【0053】
さらに、軸受70A、70Bはそれぞれ、軸受支持部材64A、64Bに支持されている。したがって、回転軸60は、軸受支持部材64A、64Bに対し、軸受70A、70Bを介して回転可能に支持されている。
【0054】
軸受支持部材64Aと軸受70Aとで、回転軸60をノズル46Aの内側で回転可能に支持しており、軸支持部材69Aを構成している。同様に、軸受支持部材64Bと軸受70Bとで、回転軸60をノズル46Bの内側で回転可能に支持しており、軸支持部材69Bを構成している。なお、このように、回転軸60を回転可能に支持できれば、たとえば軸受支持部材64Aと軸受70Aの外輪とが一体化されて軸支持部材69Aが構成されていても良い。同様に、軸受支持部材64Bと軸受70Bの外輪とが一体化されて軸支持部材69Bが構成されていても良い。
【0055】
軸受支持部材64Aにおいて、軸方向の外側(図4における左側)には、コーン42Aが装着されている。軸受支持部材64Bにおいて、軸方向の外側(図4における右側)には、コーン42Aが装着されている。これらのコーン42A、42Bはいずれも、内部が中空の略円錐形状である。コーン42A、42Bはこの形状によって、第二ループ部14Bを進行する音響波をノズル46A、46Bの翼部52に導く作用を奏している。図4における右側のコーン42Bの内側には、軸受支持部材64Bの収容凹部65との間に、発電機34が収容されている。
【0056】
図3図4及び図7における左側の軸受支持部材64Aには、軸方向にこの軸受支持部材64Aを貫通するネジ孔72が、回転軸60と異なる位置に形成されている。本実施形態では、図8に示すように、軸受支持部材64Aにおけるネジ孔72は3つである。3つのネジ孔72は、軸受支持部材64Aの周方向に一定の間隔(中心角120度)の位置で形成されている。ネジ孔72には、調整ネジ74がねじ込まれている。
【0057】
図4及び図7における左側のノズル46Aのハブ部50からは、内周側に向けて側壁76が形成されている。
【0058】
図9にも示すように、調整ネジ74は、タービンローター44側には突出しないが、側壁76側には突出している。そして、調整ネジ74の先端が側壁76を押圧するようになっている。このため、調整ネジ74を回転させて、ネジ孔72への調整ネジ74のねじ込み位置を調整することで、側壁76側への突出長H1(図10及び図11参照)も変化する。ノズル46Aは第二ループ部14Bに固定されているので、調整ネジ74の突出長が長くなると、軸受支持部材64Aが軸方向(図10に示す矢印M1方向)に移動する。
【0059】
次に、本実施形態の音響発電装置30及び双方向タービン32の作用を説明する。
【0060】
図1に示すように、音響発電システム12では、音響配管14の第一ループ部14Aに設けられている熱音響エンジン16によって、熱エネルギーが音響エネルギーに変換され、音響波が発生される。音響波は、矢印F1方向及びその反対方向である矢印F2方向に発生され、接続部14Cを介して第二ループ部14Bに伝わる。そして、第二ループ部14Bに設けられている音響発電装置30に作用する。具体的には、第二ループ部14Bにおいて、矢印F3方向及びその反対方向である矢印F4方向に音響波が進行し、音響発電装置30に作用する。
【0061】
音響発電装置30では、矢印F3方向及び矢印F4方向のいずれの方向の音響波が作用しても、ノズル46A、46Bによって、タービンローター44が一定の方向に回転する。2つのノズル46A、46Bにより、音響波をタービン本体40のタービンローター44に導く。これにより、タービンローター44を効率的に回転させることができる。
【0062】
タービンローター44の回転力は、回転軸60を介して発電機34に作用する。発電機34により発電することで、音響発電装置30では、音響エネルギーが電気エネルギーに変換される。発電機34によって発電された電力は、ケーブル38によって音響発電装置30の外部に供給される。
【0063】
音響発電装置30において、効率的に音響波を受けて発電するためには、図1に示したように、第二ループ部14B内での、連結位置14Dから音響発電装置30までの距離L1及び距離L2を適切に設定する必要がある。
【0064】
本実施形態の音響発電装置30の双方向タービン32は、ノズル46A、46Bの外周面に設けられたOリング56によって第二ループ部14Bの管内に固定されている。このため、たとえば、ボルト及びナットを用いて音響発電装置の双方向タービンを第二ループ部14Bの管内に固定した構造と比較して、第二ループ部14Bの管内をスライドさせ、軸方向の位置を変更することが容易である。これにより、第二ループ部14B内での距離L1及び距離L2を適切に調整することも容易である。そして、第二ループ部14B内で距離L1及び距離L2を適切に調整することで、音響発電装置30に効率的に音響波の音響エネルギーをタービンローター44に作用させることができる。
【0065】
なお、双方向タービン32の固定にボルト及びナットを用いた場合には、たとえば、双方向タービン32の周方向に一定の間隔を空けて複数のボルト及びナットを使用する必要が生し、固定のための部品数が多くなる。これに対し、本実施形態の音響発電装置30の双方向タービン32では、上記したようにOリング56を用いて第二ループ部14Bの管内に固定しているので、固定のための部品数が少なくて済む。
【0066】
本実施形態の双方向タービン32では、Oリング56は、タービンローター44の軸方向の両側に設けられた2つのノズル46A、46Bの外周面に備えられている。したがって、タービンローター44の軸方向の両側で、タービン本体40を第二ループ部14Bの管内に固定でき、安定した固定状態が得られる。
【0067】
本実施形態の双方向タービン32では、軸受支持部材64A、64Bも、Oリング68によって、ノズル46A、46Bのハブ部50に固定されている。これにより、ノズル46A、46B内で軸受支持部材64A、64Bをスライドさせ、軸受支持部材64A、64Bの軸方向の位置を変更することが容易である。
【0068】
本実施形態の双方向タービン32では、2つのノズル46A、46Bの間にスペーサ58が配置されており、ノズル46A、46Bの間隔Bspが、タービンローター44の軸方向長さBrtよりも長く維持されている。これにより、タービンローター44がノズル46A、46Bに接触することなく回転する構造を実現できる。
【0069】
本実施形態の双方向タービン32は、調整ネジ74を有している。図10に示すように、調整ネジ74が軸受支持部材64Aにねじ込まれて側壁76側へ移動すると、軸受支持部材64Aからの突出長H1が長くなる。調整ネジ74の先端は側壁76に当たっているので、突出長H1が長くなると、軸受支持部材64Aがタービンローター44側へ移動する。これにより、タービンローター44が、他方の軸受支持部材64B側へ(矢印M1方向へ)移動する。そして、タービンローター44とノズル46AとのクリアランスCL1が広がる。また、図11に示すように、調整ネジ74が上記と逆方向に回転されて側壁76から離隔する方向に移動すると、突出長H1が短くなり、軸受支持部材64Aは側壁76側へ移動する。これにより、タービンローター44が、一方の軸受支持部材64A側へ(矢印M2方向へ)移動する。そして、タービンローター44とノズル46AとのクリアランスCL1が狭くなる。
【0070】
スペーサ58の軸方向長さBsp、タービンローター44の軸方向長さBrt、クリアランスCL1、CL2の間には、前記した式(1)の関係がある。スペーサ58の軸方向長さBsp、タービンローター44の軸方向長さBrtは、形状に応じて決まる定数であるのに対し、クリアランスCL1は調整可能である。そして、クリアランスCL2は、式(1)から、
CL2=Bsp-CL1-Brt (2)
である。したがって、調整ネジ74によってクリアランスCL1を調整することで、クリアランスCL2も調整できる。
【0071】
このように、調整ネジ74によって、クリアランスCL1、CL2を調整することで、タービンローター44の軸方向の位置を、所望の位置に調整できる。なお、この調整作業は、たとえば双方向タービン32の組立段階において行うことが可能である。
【0072】
本開示の技術では、双方向タービン32及び音響発電装置30を構成する各部材を、たとえば、いわゆる3Dプリンタによって成形できる。特に、各部材が複雑な形状を有していても、3Dプリンタを用いることで成形が容易である。
【0073】
3Dプリンタとしては、樹脂を溶融して積層し所望の形状の成形品を成形するタイプの3Dプリンタを使用することができる。
【0074】
ここで、図12には、比較例の軸受支持部材90Aが、3Dプリンタによる成形時の状態として断面図にて示されている。この軸受支持部材90Aは、本開示の第一実施形態の軸受支持部材64Aと略同一の形状であるが、中央凹部92及び溝94の形状が、軸受支持部材64Aの中央凹部67及び溝66と異なっている。具体的には、中央凹部92及び溝94は、3Dプリンタの基板104上において、ノズル102から溶融樹脂を射出して成形する場合、鉛直下側に向く水平面94Uとなっている。
【0075】
このような水平面94Uでは、溶融樹脂が硬化前に重力によって垂れ下がり、面粗度が低下することが考えられる。鉛直下側に向く面に、溶融樹脂の垂れ下がりを抑制するサポート材を配置してもよいが、成形後にはサポート材の除去が必要となる。また、本開示の技術では、たとえば溝66は、サポート材を配置するにはスペースが足りないことがある。
【0076】
図13には、本開示の技術の軸受支持部材64Aが3Dプリンタによる成形時の状態として、断面図にて示されている。この図13に示すように、本開示の技術において、たとえば軸受支持部材64Aを3Dプリンタのノズル102から溶融樹脂を射出して成形する場合、成形時における溝66の上側の隅部に、所定の曲率で湾曲したアール部78を設けておく。このアール部78により、溝66を構成している面として、鉛直下側に向く面が無くなる(もしくは少なくなる)ので、溝66の面粗度の低下を抑制できる。
【0077】
図14には、本開示の技術の軸受支持部材64Bが3Dプリンタによる成形時の状態として、断面図にて示されている。この図14に示すように、軸受支持部材64Bの成形時にも、溝66の上側の隅部に、所定の曲率で湾曲したアール部78を設けておく。これにより、溝66を構成している面として、鉛直下側に向く面が無くなる(もしくは少なくなる)ので、溝66の面粗度の低下を抑制できる。なお、図14に示す例では、軸受支持部材64Bの凹部67内に、成形時のサポート材106を設けることで、凹部67の全体的な形状を維持できるようにしている。しかし、このサポート材がない場合であっても、凹部67にもアール部78が設けられているので、凹部68の面粗度の低下を抑制できる。
【0078】
図15には、本開示の技術のノズル46Aが3Dプリンタによる成形時の状態として、断面図にて示されている。この図15に示すように、ノズル46Aの成形時にも、溝54の上側の隅部に、所定の曲率で湾曲したアール部78を設けておく。同様に、図16に示すように、ノズル46Bの成形時にも、溝54の上面の隅部に、所定の曲率で湾曲したアール部78を設けておく。これにより、溝54、66において、鉛直下側を向く面が無くなる(もしくは少なくなる)ので、溝54、66の面粗度の低下を抑制できる。
【0079】
図17には、本開示の技術のタービンローター44が3Dプリンタによる成形時の状態として、断面図にて示されている。この図17に示されるように、タービンローター44には凹部80が形成されることがある。タービンローター44を3Dプリンタにより製造する場合においても、タービンローター44の凹部80の隅部に、所定の曲率で湾曲したアール部78を設けておく。これにより、凹部80の面粗度の低下を抑制できる。
【0080】
さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、
前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、
を有する双方向タービン。
(付記2)
前記弾性密着材は、前記音響導入管の内周面と前記タービン本体の外周面との間をシールしている付記1に記載の双方向タービン。
(付記3)
前記タービン本体は、前記タービンローターの軸方向の両側にそれぞれ設けられ前記タービンローターに前記音響波を導く2つのノズルを有し、
2つの前記ノズルのそれぞれの外周面に、前記弾性密着材が備えられている付記2に記載の双方向タービン。
(付記4)
2つの前記ノズルの間に配置されて前記ノズルの軸方向の間隔を前記タービンローターの軸方向の長さよりも長く維持するスペーサ、を有する付記3に記載の双方向タービン。
(付記5)
2つの前記ノズルの内側で前記タービンローターの回転軸を回転可能に支持する軸支持部材と、
前記軸支持部材の外周面と前記ノズルの内周面とに弾性的に密着する第二弾性密着材と、
を有する付記3又は付記4に記載の双方向タービン。
(付記6)
前記軸支持部材の一方に対し前記タービンローター側からねじ込まれ、先端が突出して前記ノズルの一方を前記軸方向に押圧することで前記軸支持部材の一方を前記軸方向に移動させる調整ネジ、を有する付記5に記載の双方向タービン。
(付記7)
内部を音響波が双方向に伝わる音響導入管と、
前記音響導入管の内部に配置され、前記音響導入管の内部の双方向の音響波により回転するタービンローターを備えるタービン本体と、前記タービン本体の外周面に備えられ、前記音響導入管の内周面に対し弾性的に密着する弾性密着材と、を有する双方向タービンと、
前記タービンローターの回転力により回転して発電する発電機と、
を有する音響発電装置。
【符号の説明】
【0081】
12 音響発電システム
14 音響配管
14A 第一ループ部
14B 第二ループ部(音響導入管の一例)
16 熱音響エンジン
18 蓄熱器
20 高温熱交換器
22 低温熱交換器
30 音響発電装置
32 双方向タービン
34 発電機
38 ケーブル
40 タービン本体
42A、42B コーン
44 タービンローター
46A、46B ノズル
48 シュラウド部
50 ハブ部
52 翼部
54 溝
56 Oリング(第一弾性シールの一例)
58 スペーサ
60 回転軸
62 軸継手
64A、64B 軸受支持部材
65 収容凹部
66 溝
67 中央凹部
67 凹部
68 Oリング(第二弾性シールの一例)
68 凹部
69A、69B 軸支持部材
70A、70B 軸受
72 ネジ孔
74 調整ネジ
76 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
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図17