(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000707
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】多孔質体及び化粧用道具
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20231226BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08J9/26 101
C08J9/26 CER
C08J9/26 CEZ
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099563
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100201710
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】山田 静流
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳典
(72)【発明者】
【氏名】西澤 ▲祐▼一朗
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA20
4F074AB03
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4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】好感触な多孔質体を提供すること。
【解決手段】本技術では、アスカーF硬度が70以下であり、樹脂から気孔形成材を抽出除去してなる、多孔質体を提供する。本技術に係る多孔質体は、前記気孔形成材の平均粒子径が20μm超90μm未満であってもよい。本技術に係る多孔質体は、比重が0.136g/cm3超であってもよい。本技術に係る多孔質体における前記樹脂は、バイオ由来の樹脂を含んでいてもよい。また、本技術では、本技術に係る多孔質体を備える化粧用道具も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスカーF硬度が70以下であり、樹脂から気孔形成材を抽出除去してなる、多孔質体。
【請求項2】
前記気孔形成材の平均粒子径が20μm超90μm未満である、請求項1に記載の多孔質体。
【請求項3】
比重が0.136g/cm3超である、請求項1に記載の多孔質体。
【請求項4】
前記樹脂は、バイオ由来の樹脂を含む、請求項1に記載の多孔質体。
【請求項5】
請求項1に記載の多孔質体を備える化粧用道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、多孔質体及び化粧用道具に関する。より詳しくは、樹脂から気孔形成材を抽出除去してなる多孔質体、及び該多孔質体を備える化粧用道具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂を用いた多孔質体が製造されている。従来における多孔質体の製造方法としては、湿式法又は乾式法で、水に可溶な気孔形成材を混入・分散させた成形体を形成し、その後に気孔形成材を抽出除去することにより、多孔質体を製造するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、オレフィン系樹脂に混練された形孔剤を溶出することによって形成される連続多孔性弾性体であり、平均気孔径が1~100μmであり、保水率が100~500%であることを特徴とする親水性連続多孔性弾性体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り、従来、樹脂を用いた多孔質体に関する技術が開発されてはいるものの、多孔質体に対するニーズが多様化し、感触が良好な多孔質体の開発が求められているという実情がある。
【0006】
そこで、本技術では、好感触な多孔質体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術では、まず、アスカーF硬度が70以下であり、樹脂から気孔形成材を抽出除去してなる、多孔質体を提供する。
本技術に係る多孔質体は、前記気孔形成材の平均粒子径が20μm超90μm未満であってもよい。
本技術に係る多孔質体は、比重が0.136g/cm3超であってもよい。
本技術に係る多孔質体における前記樹脂は、バイオ由来の樹脂を含んでいてもよい。
また、本技術では、本技術に係る多孔質体を備える化粧用道具も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0009】
1.多孔質体
本技術に係る多孔質体は、アスカーF硬度が70以下であり、樹脂から気孔形成材を抽出除去してなる。以下、詳細に説明する。
【0010】
(1)アスカーF硬度
本技術に係る多孔質体のアスカーF硬度は、70以下である。アスカーF硬度を70以下とすることで、好感触な多孔質体を提供できる。
【0011】
また、本技術に係る多孔質体のアスカーF硬度は、40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましく、55以上であることがより更に好ましく、60以上であることが特に好ましい。アスカーF硬度を40以上とすることで、摩耗性に優れる多孔質体を提供できる。
【0012】
本技術において、アスカーF硬度は、JIS 6253-3に準拠し、タイプFデュロメータ(高分子計器株式会社)で測定した値とすることができる。
【0013】
(2)樹脂
本技術に用いることができる樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができるが、これらの中でも特に、リサイクル性の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、ポリアミド、ポリイミド、及びポリアセタール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0014】
本技術では、これらの中でも特に、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂である。オレフィン成分単位を主成分とする樹脂とは、オレフィン成分単位が50質量%以上含まれる樹脂である。
【0015】
本技術に用いることができるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、及びオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0016】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0018】
本技術では、これらの中でも特に、α-オレフィン共重合体、ポリエチレン、及びエチレン-オクテン共重合体からなる群より選ばれるいずれか1種以上が好ましい。
【0019】
なお、樹脂には、原料の起源によって、石油由来の樹脂やバイオ由来の樹脂などがあることが知られているが、本技術に用いることができる樹脂は、バイオ由来の樹脂を含むことが好ましい。ここで、バイオ由来の樹脂とは、生物由来の資源であるバイオマスを材料とする樹脂である。具体的には、例えば、放射性炭素測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が40%~100%未満のポリオレフィン樹脂が挙げられる。バイオ由来の樹脂を含むことで、カーボンニュートラルへの貢献や、石油由来の樹脂の使用低減に寄与でき、また、バイオマス度を向上させ、持続可能な社会の形成に貢献することができる。
【0020】
バイオ由来の樹脂を含む場合、多孔質体に対するバイオ由来の樹脂の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。バイオ由来の樹脂を1質量%以上含むことで、カーボンニュートラルへの貢献や、石油由来の樹脂の使用低減に寄与できる。また、本技術に係る多孔質体のバイオマス度(バイオ由来成分量の比率)は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。なお、本明細書でいうバイオマス度とは、下記数式により算出された値とする。
バイオマス度=(バイオ由来の樹脂の配合割合)×(バイオ由来の樹脂のバイオマス度)
【0021】
更に、バイオ由来の樹脂を含む場合、多孔質体に対するバイオ由来の樹脂の含有量は、30質量%未満であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。バイオ由来の樹脂を30質量%未満含むことで、硬度を保ち、感触の良好な多孔質体を提供できる。また、本技術に係る多孔質体のバイオマス度は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
【0022】
(3)気孔形成材
本技術に用いることができる気孔形成材としては、水、アルコール、又はアルコール水溶液(好ましくは、水)に可溶性であって、且つ、前記樹脂が溶融する際にも安定な物質であることが好ましい。具体的には、例えば、NaC1、KCl、CaC1、NH4Cl、NaNO3、及びNaNO2等の無機物;TME(トリメチロールエタン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ショ糖、可溶性澱粉、ソルビトール、グリシン、及び各有機酸(例えば、リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、コハク酸等)のナトリウム塩等の有機物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0023】
本技術では、これらの中でも特に、無機物を用いることが好ましく、無機物の中でも特に、NaC1を用いることが好ましい。
【0024】
気孔形成材の平均粒子径は、20μm超90μm未満であることが好ましく、30μm以上75μm以下であることがより好ましく、40μm以上60μm以下であることが更に好ましい。気孔形成材の平均粒子径を20μm超とすることで、多孔質体の気孔の大きさを一定超に制御でき、形成性、及び摩耗性に優れた多孔質体を提供できる。一方で、気孔形成材の平均粒子径を90μm未満とすることで、多孔質体の気孔の大きさを一定未満に制御でき、より好感触な多孔質体を提供できる。
【0025】
本技術において、平均粒子径とは、レーザー回折法で測定した粒径分布において、累積度数50%となる粒子径(D-50)である。
【0026】
(4)水溶解性高分子化合物
本技術に係る多孔質体は、その製造において、滑材として作用する水溶解性高分子化合物を用いてもよい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジオレエート、及びポリエチレングリコールジアセテート等のポリエチレングリコール誘導体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0027】
本技術では、これらの中でも特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。ポリエチレングリコールは、メルトフローが高く、かつ水溶解性が高いためである。成形を押出成形方法で行う場合、ポリエチレングリコールの分子量は、2,000~30,000であることが好ましく、5,000~25,000であることがより好ましく、15,000~25,000であることが更に好ましい。
【0028】
本技術に係る多孔質体の製造において、前記樹脂と、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物と、の混合割合は、vol%で10:90~40:60であることが好ましく、12:88~30:70であることがより好ましく、15:85~20:80であることが更に好ましく、16:84~18:82であることが特に好ましい。前記樹脂が10vol%未満の場合には、水溶解性物質の抽出・除去時に成形体自体が分離してしまう。一方で、前記気孔形成材及び水溶解性高分子化合物が85vol%を超える場合には、気孔率が高すぎてシュリンクし、成形性が悪くなってしまう。
【0029】
(5)比重
本技術に係る多孔質体の比重は、0.110g/cm3以上であることが好ましく、0.118g/cm3以上であることがより好ましく、0.127g/cm3以上であることが更に好ましく、0.136g/cm3以上であることがより更に好ましく、0.136g/cm3超であることが特に好ましく、0.140g/cm3以上であることがより特に好ましい。比重を0.110g/cm3以上とすることで、耐久性に優れた多孔質体を提供できる。
【0030】
また、本技術に係る多孔質体の比重は、0.200g/cm3以下であることが好ましく、0.180g/cm3以下であることがより好ましく、0.162g/cm3以下であることが更に好ましく、0.160g/cm3以下であることがより更に好ましく、0.155g/cm3以下であることが特に好ましい。比重を0.200g/cm3以下とすることで、より好感触な多孔質体を提供できる。
【0031】
本技術において、用いられる樹脂が1種類の場合の比重は、以下の数式(1)で算出した値とすることができる。なお、下記数式(1)において、各添加量の単位は「g」であり、各比重の単位は「g/cm3」である。
【0032】
【数1】
A:樹脂1
B:気孔形成材
C:水溶解性高分子化合物
【0033】
また、本技術において、用いられる樹脂が2種類以上の場合の比重は、以下の数式(2)で算出した値とすることができる。なお、下記数式(2)において、各添加量の単位は「g」であり、各比重の単位は「g/cm3」である。また、下記数式(2)において、「・・・」の部分は、2種類目の樹脂(すなわち、D:樹脂2)と同様に、3種類目以降の樹脂の「添加量」、又は「添加量/比重」が必要に応じて代入されるものとする。
【0034】
【数2】
A:樹脂1
B:気孔形成材
C:水溶解性高分子化合物
D:樹脂2
【0035】
更に、本技術に係る多孔質体が後述するその他の任意成分を含む場合は、その他の任意成分の物性等に応じて、当業者により上述した数式を適宜設定して比重を算出することができる。
【0036】
(6)引張特性
本技術に係る多孔質体の引張破断荷重は、0.02Mpa以上であることが好ましく、0.03MPa以上であることがより好ましく、0.05Mpa以上であることが更に好ましい。また、本技術に係る多孔質体の引張破断荷重は、特に限定されないが、通常は5MPa以下である。
【0037】
本技術に係る多孔質体の引張破断伸びは、130%以上であることが好ましく、165%以上であることがより好ましく、200%以上であることが更に好ましい。また、本技術に係る多孔質体の引張破断伸びは、特に限定されないが、通常は800%以下である。
【0038】
本技術において、上述した引張特性は、JIS K 6251に準拠して測定した値とすることができる。
【0039】
(7)その他
本技術に係る多孔質体は、本技術の目的や作用効果を損なわない範囲で、充填材、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤などの任意の成分を含んでいてもよい。
【0040】
2.多孔質体の製造方法
本技術に係る多孔質体の製造方法は、特に限定されない。例えば、樹脂と、気孔形成材と、滑材として作用する水溶解性高分子化合物と、を加熱状態下で混合した混合物の成形体から、前記気孔形成材及び前記水溶解性高分子化合物を抽出除去することにより製造できる。
【0041】
具体的には、まず、原料となる樹脂、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物を、所定の機器を使用し、所定の混合割合にて混合・混練し、混合物を得る。次いで、得られた混合物を、押出機等を使用して所定形状の成形体に成形する。これにより、得られた成形体を、所定温度の水等に浸漬して、前記気孔形成材及び前記水溶解性高分子化合物を抽出・除去して、微細な気泡を多数備えた多孔質体を得ることができる。
【0042】
なお、上述した樹脂、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物の混合・混練には、ラボプラストミル、1軸式又は2軸式押出機、ニ一ダ、加圧式ニ一ダ、コニーダ、バンバリーミキサ、ヘンシェル型ミキサ、及びロータ型ミキサ等の混練装置を用いることができる。この混練について、特殊な装置は必要なく、混練速度等も特に限定されない。混練時の温度は、用いられる樹脂等の溶融点によって適宜設定される。混練時間は、混合物の物性により左右されるが、該混合物が充分に混合・混練されればよい。混練された原料は、押出、射出、プレス、ローラー、及びブロー等により所望形状に成形が可能である。
【0043】
所望形状に成形された成形体は、前記気孔形成材及び前記水溶解性高分子化合物を、溶媒である水等に所定時間(成形体の形状・厚さ等にもよるが、例えば、24~48時間等)浸漬させることで、抽出・除去される。この際の浸漬は、どのような方法であってもよいが、前記混合物全体を水等に接触させる浸漬による抽出・除去が好ましい。使用される水等の温度については、用いられる樹脂の融点よりも低ければ特に限定されないが、前記水溶解性物質の効率的な除去のために、15~60℃の温水等を利用してもよい。
【0044】
3.多孔質体の用途
本技術に係る多孔質体は、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。具体的には、例えば、フィルタ、濾過膜などの機能性分離膜、保水材、止水材、徐放材、溶剤タイプのインキを使用したスタンプ台、有機溶剤を吸収して保持する部材、滲み出しパッド材、化粧用道具、医療用道具などの用途で使用することができる。
【0045】
本技術に係る多孔質体は、好感触であることから、これらの中でも特に、化粧用道具、又は医療用道具に用いることが好ましい。また、本技術に係る多孔質体を用い、これらの道具における人肌に直接触れる部分を形成することが特に好ましい。
【実施例0046】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0047】
<実験例1>
実験例1では、アスカーF硬度及び気孔形成材の平均粒子径の違いが及ぼす影響について検討した。
【0048】
(1)原料
樹脂1:α-オレフィン共重合体(MFR(190℃)3.6g/min、密度:885kg/m3、融点:66℃)
樹脂2:LDPE(MFR(190℃)7.46g/min、密度:910kg/m3、融点:103.2℃)、バイオマス度:83.2%
気孔形成材:NaCl(平均粒子径:20μm、50μm、又は90μm)
水溶解性高分子化合物:ポリエチレングリコール(分子量:15,000~25,000)
【0049】
(2)多孔質体の製造
下記表1に示す各原料を計量後、ラボプラストミル(温度:130℃、時間:10min、回転数:50rpm)にて混錬した。混錬後の混合物を、ハンドプレス機(温度:160℃、時間:5min、圧力:40kN)にて成形した後、水冷して水に浸漬し、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物を一晩溶出(温度:15℃程度)させ、乾燥させることにより、各多孔質体を製造した。
【0050】
(3)評価
製造した各多孔質体について、以下の方法を用いて評価を行った。
【0051】
[アスカーF硬度]
JIS 6253-3に準拠し、タイプFデュロメータ(高分子計器株式会社)で測定した。
【0052】
[官能評価]
滑らかさ、柔らかさ、及びしっとり感について、評価者により満点を5点とした5段階で評価し、合計点が10点以上のものを合格とし、10点未満のものを不合格とした。
【0053】
[形成性]
気孔形成材及び水溶解性高分子化合物の溶出後、シュリンクしていない(厚みが変化していない)ものをA評価とし、シュリンクした(厚みが変化した)ものをB評価とした。
【0054】
[比重]
上述した数式(2)を用いて算出した。
【0055】
[引張破断荷重][引張破断伸び]
引張破断荷重、及び引張破断伸びは、JIS K 6251に準拠して測定した。
【0056】
[摩耗性]
JIS L 0849を元に、試験機:学振系摩耗試験機(別名:摩擦試験機II形)、移動距離:11~12cm、荷重:200g(アーム重さ含む)、相手材:医療用ガーゼとし、多孔質体を摩擦子(アーム)にしっかりと固定し、相手材を試験台に設置した上で、摩耗試験を開始し、往復摩耗回数2回毎に摩耗面を観察した。10回往復摩耗後、摩耗面の変化がないものをA評価とし、表面が削れているものをB評価とした。
【0057】
(4)結果
結果を下記表1に示す。
【0058】
【0059】
(5)考察
上記表1に示す通り、アスカーF硬度が70以下である実施例1~3は、アスカーF硬度が70超である比較例1と比べて、滑らかさ、柔らかさ、及びしっとり感に優れ、好感触であった。
【0060】
また、実施例2及び3は、好感触であり本技術の課題は達成していたものの、気孔形成材の平均粒子径が50μmである実施例1と比べて、形成性及び摩耗性の観点からは劣っていた。したがって、気孔形成材の平均粒子径は、20μm超90μm未満であることが好ましいことが推察された。
【0061】
<実験例2>
実験例2では、アスカーF硬度及び比重の違いが及ぼす影響について検討した。
【0062】
(1)原料
気孔形成材:NaCl(平均粒子径:50μm)
その他の原料は、上述した実験例1と同様の原料を用いた。
【0063】
(2)多孔質体の製造
下記表2に示す各原料を計量後、上述した実験例1と同様の方法により、各多孔質体を製造した。
【0064】
(3)評価
製造した各多孔質体について、上述した実験例1と同様の方法により、評価を行った。
【0065】
(4)結果
結果を下記表2に示す。
【0066】
【0067】
(5)考察
上記表2に示す通り、アスカーF硬度が70以下である実施例1及び4~7は、アスカーF硬度が70超である比較例2及び3と比べて、滑らかさ、柔らかさ、及びしっとり感に優れ、好感触であった。
【0068】
また、実施例5及び6は、好感触であり本技術の課題は達成していたものの、比重が0.136g/cm3超である実施例1及び4と比べて、形成性及び摩耗性の観点からは劣っていた。また、実施例7も、形成性は良好であったが、実施例1及び4と比べて、摩耗性の観点からは劣っていた。したがって、多孔質体の比重は、0.136g/cm3超であることが好ましいことが推察された。
【0069】
<実験例3>
実験例3では、アスカーF硬度及びバイオ由来の樹脂の含有量の違いが及ぼす影響について検討した。
【0070】
(1)原料
樹脂3:エチレン-オクテン共重合体(MFR(190℃)5g/min、密度:870kg/m3、融点:106℃)
その他の原料は、上述した実験例1と同様の原料を用いた。
【0071】
(2)多孔質体の製造
下記表3に示す各原料を計量後、上述した実験例1と同様の方法により、各多孔質体を製造した。
【0072】
(3)評価
製造した各多孔質体について、比重以外は、上述した実験例1と同様の方法により、評価を行った。
【0073】
[比重]
製造した各多孔質体は、軟化材を含むため、上記数式(2)を用いて算出した。
【0074】
(4)結果
結果を下記表3に示す。
【0075】
【0076】
(5)考察
上記表3に示す通り、アスカーF硬度が70以下である実施例8は、アスカーF硬度が70超である比較例4と比べて、滑らかさ、柔らかさ、及びしっとり感に優れ、好感触であった。
【0077】
また、比較例4は、実施例8と比較して、樹脂全体に対するバイオ由来の樹脂の含有量が多いため、アスカーF硬度が上がってしまい、良好な感触が得られなかったことが推察された。