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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070725
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】粘性調整剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240516BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240516BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240516BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240516BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20240516BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C09K3/00 103H
C09D7/63
C09D201/00
C09D5/00 Z
C09D175/08
C09D171/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181407
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 伸康
(72)【発明者】
【氏名】河井 芳彦
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG001
4J038DF022
4J038DG132
4J038DG262
4J038JA27
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水系塗料に添加することで、温度による粘度の変化を低減することができる粘性調整剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤。

(式中、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基、RO、RO、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、a、b、cは15≦a+b+c≦300の関係を満たす正の数であり、mは0又は1である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤。
【化1】
(式中、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基、RO、RO、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、a、b、cは15≦a+b+c≦300の関係を満たす正の数であり、mは0又は1である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のオキシアルキレン基の総質量に基づいて、炭素数3のオキシアルキレン基及び炭素数4のオキシアルキレン基の合計の割合が70質量%以上である請求項1に記載の粘性調整剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘性調整剤及び増粘剤を含有する水系塗料組成物。
【請求項4】
増粘剤が会合型増粘剤である請求項3に記載の水系塗料組成物。
【請求項5】
会合型増粘剤が疎水変性ポリエーテルウレタン(HEUR)である請求項4に記載の水系塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系塗料などに配合した場合に、温度による粘度の変化を低減することができる粘性調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料において揮発性有機化合物(VOC)抑制のため溶剤系塗料から水系塗料への置き換えが進みつつある。その置き換えに伴い、溶剤系塗料と水系塗料の性質の相違から様々な課題が生じている。例えば、溶剤系塗料では主に塗料に使用される樹脂が溶媒によって均一系になっているのに対し、水系塗料ではエマルションのように不均一な分散系である場合が多く、温度や湿度の変化により粘度が変化し、例えばスプレーで塗着した際にタレなどの問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決する方法として、温度、湿度のコントロールや、塗料の固形分を増量する方法、チクソトロピー性を向上させる増粘剤を添加する方法が挙げられる。しかしながら、日本の外気温においては5℃~35℃など夏と冬では30℃以上の温度差があるところもあり、温度変化に伴い粘度が大きく変化し、コントロールが難しい。特許文献1~3に開示されている疎水変性ポリエーテルウレタン(HEUR)のようなチクソトロピー性を向上させる増粘剤を添加しても粘度の温度依存性に満足できない課題が有り、1年を通して同品質の塗膜を得られる塗料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-063486号公報
【特許文献2】特開2009-280656号公報
【特許文献3】特開2013-122011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載されている増粘剤は、増粘性については満足できるものの、粘度の温度依存性に関しては満足できるものではなかった。本発明は、水系塗料に添加することで、温度による粘度の変化を低減することができる粘性調整剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、水を主溶媒とする水系塗料組成物に3価アルコールのアルキレンオキシド付加物を添加することにより、粘度の温度依存性が小さくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
[1]下記一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤。
【化1】
(式中、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基、RO、RO、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、a、b、cは15≦a+b+c≦300の関係を満たす正の数であり、mは0又は1である。)
[2]前記一般式(1)中のオキシアルキレン基の総質量に基づいて、炭素数3のオキシアルキレン基及び炭素数4のオキシアルキレン基の合計の割合が70質量%以上である[1]に記載の粘性調整剤。
[3][1]又は[2]に記載の粘性調整剤及び増粘剤を含有した水系塗料組成物。
[4]増粘剤が会合型増粘剤である[3]に記載の水系塗料組成物。
[5]会合型増粘剤が疎水変性ポリエーテルウレタン(HEUR)である[4]に記載の水系塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明に関わる一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤を添加した水系塗料は粘度の温度依存性が小さくなるため、品質の安定した塗料として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる粘性調整剤は、下記の一般式(1)で表される化合物を含有する。
【化1】
(式中、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基、RO、RO、ROは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、a、b、cは15≦a+b+c≦300の関係を満たす正の数であり、mは0又は1である。)
【0010】
一般式(1)で表される化合物は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコールに、水酸化カリウム等の触媒の存在下において、公知の方法にてアルキレンオキシドを付加重合したものであり、付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。付加重合時の副反応としてエポキシド(例えばプロピレンオキシド)の塩基触媒転位が生じ、アリル又はプロペニルアルコールと末端二重結合をもつ単官能性ポリエーテルを生じる場合があるが、これらが含まれても良い。
【0011】
また副反応を考慮するため、アルキレンオキシドの付加モル数は設計よりも多くすることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の水酸基価としては、好ましくは10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは20mgKOH/g以上170mgKOH/g以下である。
【0012】
一般式(1)中、R、R、Rは炭素原子数2~4のアルキレン基を表す。すなわちRO、RO及びROはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基の少なくとも1種を表し、粘度の温度依存性の低減の観点から、オキシアルキレン基の総質量に基づいて、炭素数3のオキシアルキレン基及び炭素数4のオキシアルキレン基の合計の割合は50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
【0013】
一般式(1)中、a、b、cはそれぞれオキシアルキレン基のRO、RO、及びROの平均付加モル数であってその総数は15以上300以下であることが好ましく、温度依存性の影響、水への溶解性、分散性の観点からより好ましくは20以上200以下であり、特に好ましくは30以上100以下である。
【0014】
水系塗料中に含まれる一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤の含有量は、水系塗料の有姿100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.3~8質量部であり、特に好ましくは0.5~3質量部である。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される化合物を含有する粘性調整剤は増粘剤と併用することにより、水系塗料に増粘性を付与することが出来る。
【0016】
増粘剤として例えば、天然系・半合成系として、ジェランガム、カードラン、キサンタンガム、デキストラン、シクロデキストリン、プルラン、ヒアルロン酸、ランザンガム、ウェランガム、ダイユータンガム、アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム、アラビノガラクタン、マルメロ、グァーガム、グァーガム誘導体(カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム等)、スイゼンジノリ由来多糖類、クインスシードガム、サイリウムシードガム、コンニャクマンナン、タラガム、タマリンドガム、デンプン、ローストビーンガム、カラギナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルカリゲネス産生多糖体、寒天、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、コーンスターチ、ファーセレラン、ペクチン、アルブミン、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウム、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、キトサン、スクシノグリカン、微結晶セルロース、発酵セルロース、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HM-HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カチオン化セルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプンリン酸エステル、デンプングリコール酸ナトリウム、大豆タンパク加水分解物、コラーゲン加水分解物、TEMPO酸化により調整したセルロースナノファイバー(CNF)、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体等が挙げられる。
【0017】
無機系・半合成系の増粘剤として、シリカ、フュームドシリカ、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、スチーブンサイト、ヘクトライト、合成スメクタイト、トリメチルステアリルアンモニウムベントナイト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムベントナイト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0018】
また、合成系としてはポリアクリル酸のようなカルボキシビニルポリマー(CVP)、またはそのミクロゲル、またはアルカリとの塩(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸アルカノールアミン等)、架橋型ポリアクリル酸、またそのアルカリ塩、アクリル酸と長鎖アルキルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-エイコセン共重合体、ポリビニルメチルエーテル(PVME)、ポリメチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、アクリル酸アルキル-メタアクリル酸アルキル-メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体、ポリジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアクリルアミド、アクリルアミド-ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド共重合体、疎水化アクリルアミドプロパンスルフォン酸、また、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアリン酸エステル等のポリエーテルエステル型、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、(アクリル酸/アクリル酸パーフルオロヘキシルエチル)クロスポリマー、疎水変性ポリエーテルウレタン(hydrophobically modified ethoxylated urethane、以下HEURと呼ぶ)などが挙げられる。
【0019】
上記増粘剤の中で、塗料に要求されている耐水性が高く、pHによる粘度変化が少ないことや、十分なチクソ性を有するHEURが好適である。HEURとは、水可溶性のポリエーテルポリオールと分子中に疎水基と活性水素原子を有する化合物とをポリイソシアネート化合物と反応させた疎水変性ポリエーテルウレタンであり、両末端の疎水基を介して樹脂粒子に吸着、また疎水基同士が会合し網目構造を形成することにより効果を発揮する会合型増粘剤である。
【0020】
水可溶性のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドやプロピレンオキシド及びブチレンオキシドを使用して製造され、官能基を2個以上持つ高分子のことをいい、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリセリンエーテル、ポリオキアルキレントリメチロールプロパン、ポリオキシアルキレントリエタノールアミン、ポリオキアルキレンペンタエリスリトール、ポリオキシアルキレンエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンソルビトール、ポリオキシアルキレンスクロース、ポリオキシアルキレンシクロヘキサンジメタノール、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル等が挙げられる。
【0021】
疎水基と活性水素原子を有する化合物としては、1価のノニオン界面活性剤、または高級アルコールが望ましく、直鎖または、分岐鎖または2級の1価アルコールのポリエーテルが好適である。例えば、ポリオキシアルキレン2エチルヘキシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルエーテル、ポリオキシアルキレンイソオクチルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンイソトリデカノール、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテル、ポリオキシアルキレンセチルエーテル、ポリオキシアルキレンステアリルエーテル、ポリオキシアルキレンイソステアリルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンベヘニルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルドデシル(ゲルべ型)エーテル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル等が挙げられる。また、高級アルコールとしてヘキシルアルコール、2エチルヘキサノール、イソトリデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
【0022】
またポリイソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアナート、2-メチルペンタン-1,5-ジイルビスイソシアナート、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ウンデカン-1,11-ジイルジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート等が挙げられる。
【0024】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、モノメリックジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6TDI)、ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、1-メチルシクロヘキサン-2,4-ジイルジイソシアナート(水添TDI)、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
また、これらのポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)で用いられてもよく、また、水またはアミンと反応させてビウレットとして用いてもよい。
【0027】
HEURを製造する方法としては通常のポリエーテルとイソシアネートとの反応と同様にして例えば80~120℃で1~3時間加熱し反応した後に水に分散させることによって得ることができる。
【0028】
増粘剤の配合量は水系塗料組成物の固形分100質量部に対して、通常0.1質量部以上30質量部以下であるが、好ましくは0.2質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは0.3質量部以上10質量部以下である。
【0029】
その他、水系塗料に使用できる材料として基材となる樹脂エマルション、モノマーエマルション、樹脂溶液、造膜助剤、消泡剤、界面活性剤、溶剤、可塑剤、顔料、抗菌・防腐剤などが挙げられる。
【0030】
樹脂エマルションとしては、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルション、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、その共重合体樹脂エマルション、バーサチック酸ビニルエステル樹脂エマルション、スチレン樹脂エマルション、スチレン―ブタジエン樹脂エマルション、スチレン-アクリル樹脂エマルション、スチレン-無水マレイン酸樹脂エマルション、アクリロニトリル―ブタジエン樹脂エマルション、エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン-ビニルアルコール樹脂エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸樹脂エマルション、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル―無水マレイン酸樹脂エマルション、酸化ポリエチレン樹脂エマルション、酸化ポリプロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン-プロピレン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン樹脂エマルション、無水マレイン酸変性ポリブタジエンエマルション、塩素化ポリエチレン樹脂エマルション、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、ウレタンアクリル樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルション、アルキッド樹脂エマルション、アミノアルキド樹脂エマルション、ポリ塩化ビニル樹脂エマルション、ロジンエマルション、ロジンエステルエマルション、石油樹脂エマルション、尿素樹脂(ユリア樹脂)エマルション、メラミン樹脂エマルション、フェノール樹脂エマルション、レゾルシノール樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、テルペン樹脂エマルション、テルペンフェノール樹脂エマルション、ポリ乳酸樹脂エマルション、パラフィンワックスエマルション、マイクロクリスタリンワックスエマルション、FTワックスエマルション、カルナバワックスエマルション、ライスワックスエマルション、モンタンワックスエマルション、キャンデリラワックスエマルション、蜜蝋エマルション、セラックエマルション、アマイドワックスエマルションなどが挙げられる。樹脂溶液としては水溶性フェノール溶液、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、イソブチレン―無水マレイン酸共重合樹脂のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0031】
モノマーエマルションとしては、UVなどで硬化する目的でメタ(アクリル酸)エステルを分散させたエマルションなどが挙げられる。UV硬化用モノマーとしては単官能アクリレートモノマーとして、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2官能アクリレートモノマーとして、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール変性ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、3官能アクリレートモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4官能以上のアクリレートモノマーとしてペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられ、メタクリレートモノマーとしては、イソボルニルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。樹脂エマルション、モノマーエマルション及び樹脂溶液の配合量は水系塗料組成物の固形分100質量部に対して、通常固形分として60質量部以上99質量部以下であるが、好ましくは70質量部以上99質量部以下であり、さらに好ましくは80質量部以上99質量部以下である。
【0032】
造膜助剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ―t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-モノ-2-エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ―3―メチル―1-ブタノール、ヘキシルジグリコール、アセチレングリコール等のグリコールエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート、N-メチル―2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-プロピルピロリドン、N-イソプロピルピロリドン、N-ブチルピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、N-オクチルピロリドン、N-フェニルピロリドン、ビニルピロリドン等のピロリドン系化合物、パーフルオロアルキルスルホン酸(PFOS)やパーフルオロアルキルカルボン酸(PFOA)、パーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHxA)等のパーフルオロアルキル基含有化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系化合物などが挙げられ、造膜助剤の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.1質量部以上10質量部以下であるが、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0033】
消泡剤としては鉱油系、アルコール系、有機化合物系、鉱物油系、シリコーン系などの消泡剤が挙げられ、アルコール系としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、n-ブタノールなどが挙げられ、有機化合物系としては高級アルコール、炭化水素系ワックス、高級アルコールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール、プルロニック(登録商標)型エチレンオキサイド付加物などを混合、分散させたものなどが挙げられる。鉱物油系はパラフィン系、ナフテン系の鉱油を分散剤などで分散させたものなどが挙げられる。シリコーン系はシリコーン油、シリコーン樹脂などを分散剤などで分散させたものなどが挙げられる。また炭酸カルシウム、シリカ粉を使用したコンパウンドも使用してよく、消泡剤の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.001質量部以上10質量部以下であるが、好ましくは0.005質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.01質量部以上1質量部以下である。
【0034】
また、本発明においては顔料等の分散助剤として界面活性剤を使用してもよい。その際使用する界面活性剤としてはノニオン、アニオン、カチオン、両性などの公知公用の界面活性剤を目的に応じて使用することができるが、発明の効果の発現を阻害させない種類と使用量の選択が望ましい。ノニオン活性剤としてポリオキシエチレン2エチル-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシル(ゲルべ型)エーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンβ-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリエチレングリコールモノアルキル脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジアルキル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルなどが挙げられるが、安定な重合物を得る目的でノニオン活性剤の他にアニオン活性剤などを併用しても良い。アニオン活性剤としては、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム塩、ステアリン酸ナトリウム塩、オレイン酸カリウム塩、ガムロジン系不均化ロジンナトリウム塩、アルケニルコハク酸ジカリウム塩、ドデシル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(C12,C13)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンドデシル硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、カチオン活性剤として、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラミドエチルジメチルアミン、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、両面界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、反応性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、およびその硫酸エステル塩、スルホコハク酸型、アルケニルポリオキシアルキレンリン酸エステル、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(メタ)アクリロイルエーテルなどが挙げられる。さらに、ポリビニルアルコールのような保護コロイドを界面活性剤の代用として使用しても良く、界面活性剤の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.1質量部以上10質量部以下であるが、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0035】
さらに、水系塗料の乾燥時間短縮、塗料安定性の向上を目的として有機溶剤を使用することができる。例えばメチルアルコール、エチルアルコール、変性エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、揮発油、ミネラルスピリット、C9芳香族炭化水素混合物、C10芳香族炭化水素混合物、ナフサ、ケロシン、テレビン油等の炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソペンチル等のエステル系溶剤、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロルベンゼン等の塩素系溶剤、大豆油、ナタネ油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油等の植物油が挙げられ、溶剤の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常0.1質量部以上50質量部以下であるが、好ましくは1質量部以上40質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上30質量部以下である。
【0036】
また、可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、リン酸トリブチル、リン酸トリ2-エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸エステル類、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジn-アルキル、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル類、ペンタジオールのイソブチルエステル誘導体、塩素化パラフィン等を用いることができ、可塑剤の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.1質量部以上10質量部以下であるが、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0037】
顔料としては、無機顔料と有機顔料が挙げられ無機顔料としては、チタン白(二酸化チタン)、炭酸カルシウム、クレー、タルク、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉、ホワイトカーボン、パール系顔料(オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸鉛、酸化チタン被覆雲母等)、金属粉顔料(アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、金粉、鉛粉、錫粉、亜鉛粉、ニッケル粉、ステンレス粉等)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カドミウム系顔料、黄鉛、鉛系顔料、リン酸系顔料、クロメート系顔料、モリブデート系顔料、雲母状酸化鉄、亜鉛末、亜酸化銅、カーボンブラック、酸化鉄(鉄黒)、黄色酸化鉄、べんがら(合成系または天然系)、褐色酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、複合酸化物顔料(チタン・アンチモン・ニッケルの複合酸化物、鉄・亜鉛の複合酸化物、チタン・バリウム・ニッケルの複合酸化物、コバルト・アルミニウム・クロムの複合酸化物等)が挙げられる。
【0038】
有機顔料としては、その化学構造から大きくアゾ顔料と多環顔料に分けられ、アゾ顔料としては溶性アゾ顔料のレーキレッドC、リソールレッドBA、リソールレッドCA、リソールレッドSR、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド2B、ボンレッド、ボルドー10B、ピグメントルビンGが挙げられ、不溶性アゾ顔料としてはパラレッド、ナフトールオレンジ、ブリリアントファストスカーレット、ナフトールレッドFRR、ナフトールレッドM、ファストイエローG、ベンズイミダゾロンイエローH3G、ジスアゾイエローHR、バルカンオレンジ、縮合型アゾ顔料としては、縮合アゾイエロー166、縮合アゾレッドBRなどが挙げられる。多環顔料としてはフタロシアニン顔料として、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー(α型)、高塩素化フタロシアニングリーン、縮合多環系顔料としてアンザンスロンオレンジ、インジゴブルー、ペリノンオレンジ、キノフタロンイエロー、ジオキサジンバイオレット37、無置換キナクリドンレッド(γ型)、キナクリドンマゼンタ、イソインドリノンイエローG、ニッケル錯体オレンジ、イソインドリンイエロー139、ジケトピロロピロールレッド255などが挙げられる。また、その他顔料として蛍光顔料、アニリンブラック、アルカリブルートナー等が挙げられ、顔料の配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.1質量部以上50質量部以下であるが、好ましくは3質量部以上30質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
【0039】
抗菌・防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン(ヒドロキシ安息香酸エステル)類、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の1,2-アルカンジオール類、サリチル酸、安息香酸ナトリウム、メチルイソチアゾリノン(MIT)、クロロメチルイソチアゾリノン(CMIT)、オクチルイソチアゾリノン(OIT)、ジクロロオクチルイソチアゾリノン(DCOIT)、ベンズイソチアゾリノン(BIT)等のイソチアゾリンノン誘導体、デヒドロ酢酸及びその塩、トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、塩化セチルビリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ブロノポール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン、ヘキサクロロフェン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール(チモール)、クレゾール、パラクロロフェノール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム等のその他フェノール類、抗菌性ゼオライト、銀イオンなどが挙げられ、配合量は水系塗料組成物の有姿100質量部に対して、通常として0.01質量部以上0.3質量部以下であるが、好ましくは0.02質量部以上0.2質量部以下であり、さらに好ましくは0.05質量部以上0.1質量部以下である。
【0040】
水系塗料組成物は、上記原料を用いて、公知の装置を使用し、公知の方法で混合することにより作製できる。撹拌機としてはマグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ディスパー、超音波分散器、ビーズミル、ボールミル、3本ロールミル、マイルダー、ポンプによる循環、遠心撹拌などが挙げられ、樹脂エマルション、モノマーエマルション、樹脂溶液、粘性調整剤、造膜助剤、消泡剤、界面活性剤、水、溶剤、可塑剤、顔料、抗菌・防腐剤等を仕込み、撹拌、循環等することなどにより得られる。
【実施例0041】
次に本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、部とは質量部を表す。
【0042】
(合成例1:増粘剤の合成)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を備えた容量1リットルの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、製品名:PEG-10000、数平均分子量11,000)を264.7部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド12モル付加物)(東邦化学工業社製、製品名:ペグノール(登録商標)L-12S)を27.8部仕込み、10mmHg以下の減圧下で120℃、4時間脱水し、系の水分を100ppmとした。次いで120℃に維持したまま、ジブチル錫ラウレート(東京ファインケミカル社製、製品名:EMBILIZER(登録商標) L-101)を0.0015部、その後、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、製品名 HDI)を7.4部加え、1時間半攪拌しながら反応を行った。その後、FT-IRにてHDI由来のイソシアネート基のピークが消失するのを確認した後、イオン交換水700部を徐々に添加した。その後80℃にて1時間熟成し、30℃まで冷却を行い、防腐剤(昌栄化学株式会社製:レバナックス BX-150)を0.5部添加し10分間攪拌し、増粘剤A-1を得た。
【0043】
(合成例2:粘性調整剤の合成)
2本の滴下導入管及びガス出入り口を備えた5Lのステンレス鋼製の撹拌翼付き耐圧反応槽を乾燥した窒素ガスで充分置換した後、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物(水酸基価:205mgKOH/g)を220部、フレーク状KOHを8部仕込み攪拌しながら反応槽の温度を130℃まで昇温した。130℃を保持しながらプロピレンオキサイド2200部を8時間かけて連続的に滴下導入管から圧入し、プロピレンオキサイドを付加反応させた。引き続き130℃を保持しながらエチレンオキサイド395部を2時間かけて連続的に滴下導入管から圧入し、エチレンオキサイドを付加反応させた。反応終了後100℃に降温し、中和、精製処理を行い、透明粘調な粘性調整剤B-1を得た。
【0044】
(実施例1:水系塗料組成物の調製)
ディスポカップ500ml用にアクリル樹脂エマルション(ジャパンコーティングレジン株式会社製、製品名 モビニール(登録商標)727、不揮発分50%)100部、イオン交換水30部、造膜助剤(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート)3部、増粘剤A-1を2.1部、粘性調整剤B-1を0.5部添加し、ホモディスパーを用い1500rpmで5分間攪拌した後、できた水系塗料組成物を密封できるプラスチックボトルに移し替え、泡が消えるまで1日程度常温にて保管し水系塗料組成物を得た。
【0045】
(実施例2~5、比較例1~5及び8)
粘性調整剤B-1を表1に記載した化合物に変更し、実施例5及び比較例8で樹脂エマルションをボンコート(登録商標) SA-6340(DIC株式会社製、アクリルシリコンエマルション、不揮発分50%)に変更した以外は実施例1と同様にして、水系塗料組成物を得た。
【0046】
(比較例6及び7)
比較例6及び7で粘性調整剤B-1を添加せずに増粘剤A-1の量を変更した以外は実施例1と同様にして、水系塗料組成物を得た。
【0047】
【表1】
【0048】
[性能評価]
上記実施例1~5及び比較例1~8で得た水系塗料組成物を以下の(1)及び(2)の性能評価試験に供した。結果を表2に示す。
【0049】
(1)KU(クレブス)値測定
JIS K5600-2-2:1999 塗料一般試験方法に基づき、英弘精機株式会社製デジタルストーマー粘度計KU3を使用して、水系塗料組成物の10℃、25℃、35℃でのKU値を測定し、10℃/25℃、10℃/35℃でのKU値比を求めた。なお、KU値とは、回転翼を一定荷重下で回転させ、100回転するのに要した時間と荷重の関係からの粘度を表した値であり、KU値比が1に近いほど温度依存性が小さくなる。
(2)TI(チキソトロピーインデックス)値測定
東機産業株式会社製、B型粘度計にて25℃、6rpmと60rpmの回転数で測定し、6rpmで測定した粘度を60rpmで測定した粘度で割り、TI値を求めた。なおTI値とは粘度計の回転数を10倍にし、粘度低下する塗料の粘度値の比であり、TI値が1に近いほどニュートン流動になり、TI値が大きくなるほど構造粘性がある塗料となる。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、実施例1~5の水系塗料組成物は、TI値を減少させることなくKU値比を1に近づけることができ、水系塗料組成物に必要なタレ抑制をしながら10℃~35℃におけるKU値の変化が少ないことにより、塗料性能を維持しながら温度依存性の小さい水系塗料組成物が得られていることがわかる。