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特開2024-70728動物感情解析システム、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070728
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】動物感情解析システム、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
A01K29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181411
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】505009265
【氏名又は名称】株式会社ネスパ
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】坂井 全弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 好高
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋
(57)【要約】
【課題】動物の情動に影響を与えない動物感情解析装置、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラムを提供する。
【解決手段】対象となる動物の脈波を検出する脈波検出装置と、検出された脈波から、非線形解析を行うことにより、対象となる動物の交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する解析装置と、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を示す提示手段と、対象となる動物の情報を受け付ける入力手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる動物の脈波を検出する脈波検出装置と、
前記検出された脈波から、非線形解析を行うことにより、前記対象となる動物の交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する解析装置と、
抽出された前記交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動を示す提示手段と、
前記対象となる動物の情報を受け付ける入力手段と
を備えることを特徴とする動物感情解析システム。
【請求項2】
前記脈波検出装置は、
前記対象となる動物の前記脈波を検出し、脈波信号として出力する脈波センサと、
前記脈波信号を前記解析装置へ送信する送信部と、
前記脈波センサ及び前記送信部に電力を供給する電源部と
を備え、マイクロチップとともにガラス容器に封入され、前記対象となる動物の体内に埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項3】
前記脈波検出装置は、非接触型脈波検出装置であることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項4】
前記非接触型脈波検出装置は、ミリ波レーダを用いた非接触センサであることを特徴とする請求項3に記載のサービス提供システム。
【請求項5】
前記非接触型脈波検出装置は、ドップラーセンサを用いた非接触型脈波検出装置、又は、周波数変調非接触脈波検出装置であることを特徴とする請求項3に記載の動物感情解析システム。
【請求項6】
前記脈波検出装置は、体動センサにより脈波を検出することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項7】
前記体動センサは、加速度センサ、又は、ジャイロセンサであることを特徴とする請求項6に記載の動物感情解析システム。
【請求項8】
前記非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項9】
前記心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、前記呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであることを特徴とする請求項8に記載の動物感情解析システム。
【請求項10】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、
前記第1のデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、
前記心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出し、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得、
前記心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出することを特徴とすることを特徴とする請求項8に記載の動物感情解析システム。
【請求項11】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、
第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、前記検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとし、
前記第nのデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、
前記心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出し、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得、
前記心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出し、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得、
前記心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出し、

前記呼吸周波数帯域解析データから、前記呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出し(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出し(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、

【数1】
により副交感神経指標Mpnを算出し、

【数2】
により快・不快指標Pを算出し。

【数3】
により覚醒度指標Aを算出することを特徴とする請求項10に記載の動物感情解析システム。
【請求項12】
前記非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項13】
前記非線形解析が、前記検出装置によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、前記ピーク間隔を補間して時間等間隔データを得、前記時間等間隔データのパワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られた前記パワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、前記自律神経の状態及び前記情動の少なくとも一方を抽出することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項14】
前記提示手段は、前記情動を推測するための指標である覚醒度、及び快・不快状態のそれぞれの値をディスプレイに表示することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項15】
前記提示手段は、前記情動を「喜」「怒」「哀」「楽(リラックス)」に分類し、ディスプレイに表示することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項16】
前記提示手段は、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、照明によって光で表現することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項17】
前記提示手段は、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、スピーカーによって音で表現することを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項18】
前記提示手段は、前記対象となる動物の情報をもとに前記対象となる動物をアニメーション化してディスプレイに表示し、前記抽出された情動に合わせて前記ディスプレイに表示された前記対象となる動物の顔の表情を変えることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項19】
前記脈波検出装置は、前記対象となる動物の運動状態を検出する体動センサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項20】
前記脈波検出装置は、前記対象となる動物の体温を検出する温度センサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項21】
前記入力手段は、前記対象となる動物の行動の分析結果に関する情報の入力を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項22】
前記解析装置は、前記抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動を用いて、自然言語処理により、会話を生成する言語生成部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項23】
前記脈波検出装置は、体動センサ、及び/又は温度センサをさらに備え、前記言語生成部は、前記抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動と、体動センサ、及び/又は温度センサから得られた検出結果とから前記会話を生成することを特徴とする請求項20に記載の動物感情解析システム。
【請求項24】
前記対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を検出する人脈波検出装置と、
前記検出された人の脈波から、前記人の、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する、人情動抽出部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の動物感情解析システム。
【請求項25】
前記解析装置は、前記対象となる動物と、前記人の、それぞれの、前記抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動を用いて、自然言語処理により、会話を生成する言語生成部をさらに備えることを特徴とする請求項22に記載の動物感情解析システム。
【請求項26】
脈波検出装置と、情動を抽出する解析装置と、提示手段と、入力手段とを備える動物感情解析システムにおいて、
前記入力手段が対象となる動物の情報の入力を受け付ける受付ステップと、
前記脈波検出装置が前記対象となる動物の脈波を脈波信号として検出し、前記脈波信号を前記解析装置に送信する検出ステップと、
前記解析装置が、前記脈波信号に対して、非線形解析を行い、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する抽出ステップと、
前記提示手段が、抽出された前記交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動を提示する結果提示ステップと
を備えることを特徴とする動物感情解析方法。
【請求項27】
前記非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であることを特徴とする請求項26に記載の動物感情解析方法。
【請求項28】
前記心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、前記呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであることを特徴とする請求項27に記載の動物感情解析方法。
【請求項29】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、
前記第1のデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得るステップと、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得るステップと、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出するステップと、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得るステップと、
前記心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項27に記載の動物感情解析方法。
【請求項30】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、
第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、前記検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとするステップと、
前記第nのデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得るステップと、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得るステップと、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出するステップと、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得るステップと、
前記心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出するステップと、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得るステップと、
前記心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出するステップと、
前記呼吸周波数帯域解析データから、前記呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出するステップ(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出するステップ(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
次式
【数4】
により副交感神経指標Mpnを算出するステップと、
次式
【数5】
により快・不快指標Pを算出するステップと、
次式
【数6】
により覚醒度指標Aを算出するステップと
をさらに備えることを特徴とする請求項29に記載の動物感情解析方法。
【請求項31】
前記非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であることを特徴とする請求項26に記載の動物感情解析方法。
【請求項32】
前記非線形解析が、前記脈波検出装置によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、前記ピーク間隔を補間して時間等間隔データを得、前記時間等間隔データのパワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られた前記パワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、前記自律神経の状態及び前記情動の少なくとも一方を抽出することを特徴とする請求項26に記載の動物感情解析方法。
【請求項33】
脈波検出装置と、情動を抽出する解析装置と、提示手段と、入力手段とを備える動物感情解析システムにおいて、コンピュータに、
対象となる動物の情報の入力を受け付ける受付手段と、
前記対象となる動物の脈波を脈波信号として検出し、前記脈波信号を前記解析装置に送信する検出手段と、
前記脈波信号に対して、非線形解析を行い、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する抽出手段と、
抽出された前記交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、前記情動を提示する結果提示手段と
を実現するための動物感情解析プログラム。
【請求項34】
前記非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であることを特徴とする請求項33に記載の動物感情解析プログラム。
【請求項35】
前記心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、前記呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであることを特徴とする請求項33に記載の動物感情解析プログラム。
【請求項36】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、
前記第1のデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得る機能と、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得る機能と、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出する機能と、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得る機能と、
前記心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出する機能と
をさらに備えることを特徴とする請求項34に記載の動物感情解析プログラム。
【請求項37】
前記非線形解析は、前記検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、
第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、前記検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとする機能と、
前記第nのデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得る機能と、
前記心拍周波数帯域データから、前記心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得る機能と、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出する機能と、
前記スケール平均から、前記ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得る機能と、
前記心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出する機能と、
前記心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得る機能と、
前記心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出する機能と、
前記呼吸周波数帯域解析データから、前記呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出する機能(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
前記呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出する機能(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、
次式
【数7】
により副交感神経指標Mpnを算出する機能と、
次式
【数8】
により快・不快指標Pを算出する機能と、
次式
【数9】
により覚醒度指標Aを算出する機能と
をさらに備えることを特徴とする請求項36に記載の動物感情解析プログラム。
【請求項38】
前記非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であることを特徴とする請求項33に記載の動物感情解析プログラム。
【請求項39】
前記非線形解析が、前記脈波検出装置によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、前記ピーク間隔を補間して時間等間隔データを得、前記時間等間隔データのパワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られた前記パワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、前記自律神経の状態及び前記情動の少なくとも一方を抽出することを特徴とする請求項33に記載の動物感情解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物感情解析システム、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットの感情を知るための技術が開発されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。特許文献1には、集音器を動物に装着し、集音器から集音された音を心拍信号に変換し、動物の感情を推定する装置が開示されている。特許文献2には、ペットと人との間の距離からペットと人との触れ合い状態を検出する手段と、ペットと人の心拍情報からペットと人のリラックス状態を検出する手段と、検出された触れ合い状態とリラックス状態とからペットと人の友好度を導出する手段とを備える装置が開示されている。特許文献3には、心拍数検出装置において、心拍に起因する周波数を適切に取得する技術に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6833919号公報
【特許文献2】特許第6914597号公報
【特許文献3】特開2021-194128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている装置によれば、動物用のハーネスに集音器等のセンサと制御部が固定される。特許文献2に開示されている装置によれば、動物の首輪等に心拍センサが取り付けられている。しかしながら、例えば、ペットや飼い主によってはハーネスや首輪を散歩時以外は装着しない場合がある等、常時ハーネスや首輪を装着するわけではない動物にとって、センサによる心拍の計測のためにハーネスや首輪を装着することが、ストレスとなる恐れがあり、心拍情報から動物の情動を導出する際の妨げとなりかねない。特許文献3に開示されている心拍数検出装置は、心拍信号を周波数スペクトルに変換し、その基本周波数帯域における基本波スペクトルと、複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルを抽出し、その高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、基本波スペクトルに重ね合わせて合成スペクトルを生成することで心拍数を算出する技術に関して開示されている。しかし、心拍信号より低い周波数領域、例えば、呼吸の周波数に該当する領域を、心拍の周波数に該当する領域とは、別に解析する技術に関しては開示も示唆もされていない。
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、動物の情動に影響を与えない動物感情解析システム、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、動物感情解析システムであって、対象となる動物の脈波を検出する脈波検出装置と、検出された脈波から、非線形解析を行うことにより、対象となる動物の交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する解析装置と、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を示す提示手段と、対象となる動物の情報を受け付ける入力手段とを備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、対象となる動物の脈波を検出し、脈波信号として出力する脈波センサと、脈波信号を解析装置へ送信する送信部と、脈波センサ及び送信部に電力を供給する電源部とを備え、マイクロチップとともにガラス容器に封入され、対象となる動物の体内に埋め込まれてもよい。
【0008】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、非接触型脈波検出装置であってよい。
【0009】
本発明の第1の態様において、非接触型脈波検出装置は、ドップラーセンサを用いた非接触型脈波検出装置、又は、周波数変調非接触脈波検出装置であってよい。
【0010】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、体動センサにより脈波を検出してもよい。
【0011】
本発明の第1の態様において、非接触型脈波検出装置は、ミリ波レーダを用いた非接触センサであってよい。
【0012】
本発明の第1の態様において、体動センサは、加速度センサ、又は、ジャイロセンサであってよい。
【0013】
本発明の第1の態様において、非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であってよい。
【0014】
本発明の第1の態様において、心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであってよい。
【0015】
本発明の第1の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、第1のデータセットに対して心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上前記心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出し、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得、心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出してもよい。
【0016】
本発明の第1の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとし、第nのデータセットに対して心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出し、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得、心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出し、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得、心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出し、記呼吸周波数帯域解析データから、呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出し(ただし、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出し(ただし、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)、式
【0017】
【数1】
【0018】
により副交感神経指標Mpnを算出し、式
【0019】
【数2】
【0020】
により快・不快指標Pを算出し、式
【0021】
【数3】
【0022】
により覚醒度指標Aを算出してもよい。
【0023】
本発明の第1の態様において、非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であってよい。
【0024】
本発明の第1の態様において、非線形解析が、検出装置によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、それを補間して時間等間隔データを得、パワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られたパワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、自律神経の状態及び情動の少なくとも一方を抽出してもよい。
【0025】
本発明の第1の態様において、提示手段は、情動を推測するための指標である覚醒度、及び快・不快状態のそれぞれの値をディスプレイに表示してもよい。
【0026】
本発明の第1の態様において、提示手段は、情動を「喜」「怒」「哀」「楽(リラックス)」に分類し、ディスプレイに表示してもよい。
【0027】
本発明の第1の態様において、提示手段は、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、照明によって光で表現してもよい。
【0028】
本発明の第1の態様において、提示手段は、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、スピーカーによって音で表現してもよい。
【0029】
本発明の第1の態様において、提示手段は、対象となる動物の情報をもとに対象となる動物をアニメーション化してディスプレイに表示し、抽出された情動に合わせてディスプレイに表示された対象となる動物の顔の表情を変えてもよい。
【0030】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、対象となる動物の運動状態を検出する体動センサをさらに備えてもよい。
【0031】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、対象となる動物の体温を検出する温度センサをさらに備えてもよい。
【0032】
本発明の第1の態様において、入力手段は、対象となる動物の行動の分析結果に関する情報の入力を受け付けてもよい。
【0033】
本発明の第1の態様において、解析装置は、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を用いて、自然言語処理により、会話を生成する言語生成部をさらに備えてもよい。
【0034】
本発明の第1の態様において、脈波検出装置は、体動センサ、及び/又は温度センサをさらに備え、言語生成部は、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動と、体動センサ、及び/又は温度センサから得られた検出結果とから会話を生成してもよい。
【0035】
本発明の第1の態様において、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を検出する人脈波検出装置と、検出された人の脈波から、人の、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する、人情動抽出部とをさらに備えてもよい。
【0036】
本発明の第1の態様において、解析装置は、対象となる動物と、人の、それぞれの、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を用いて、自然言語処理により、会話を生成する言語生成部をさらに備えてもよい。
【0037】
本発明の第2の態様は、動物感情解析方法であって、脈波検出装置と、情動を抽出する解析装置と、提示手段と、入力手段とを備える動物感情解析システムにおいて、入力手段が対象となる動物の情報の入力を受け付ける受付ステップと、脈波検出装置が対象となる動物の脈波を脈波信号として検出し、脈波信号を解析装置に送信する検出ステップと、解析装置が、脈波信号に対して、非線形解析を行い、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する抽出ステップと、提示手段が、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を提示する結果提示ステップとを備えることを要旨とする。
【0038】
本発明の第2の態様において、非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であってよい。
【0039】
本発明の第2の態様において、心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであってよい。
【0040】
本発明の第2の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、第1のデータセットに対して心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得るステップと、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得るステップと、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出するステップと、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得るステップと、心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出するステップとをさらに備えてもよい。
【0041】
本発明の第2の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとするステップと、第nのデータセットに対して心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得るステップと、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得るステップと、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出するステップと、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得るステップと、心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出するステップと、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得るステップと、心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出するステップと、呼吸周波数帯域解析データから、呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得るステップ(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出するステップ(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出するステップ(ただし、nは1以上、前記心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、次式
【0042】
【数4】
【0043】
により副交感神経指標Mpnを算出するステップと、次式
【0044】
【数5】
【0045】
により快・不快指標Pを算出するステップと、次式
【0046】
【数6】
【0047】
により覚醒度指標Aを算出するステップとをさらに備えてもよい。
【0048】
本発明の第2の態様において、非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であってよい。
【0049】
本発明の第2の態様において、非線形解析が、脈波検出装置によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、それを補間して時間等間隔データを得、パワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られたパワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、自律神経の状態及び情動の少なくとも一方を抽出してもよい。
【0050】
本発明の第3の態様は、動物感情解析プログラムであって、脈波検出装置と、情動を抽出する解析装置と、提示手段と、入力手段とを備える動物感情解析システムにおいて、コンピュータに、対象となる動物の情報の入力を受け付ける受付手段と、対象となる動物の脈波を脈波信号として検出し、脈波信号を解析装置に送信する検出手段と、脈波信号に対して、非線形解析を行い、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する抽出手段と、抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を提示する結果提示手段とを実現してもよい。
【0051】
本発明の第3の態様において、非線形解析が、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域のそれぞれでのウェーブレット変換を行う解析であってよい。
【0052】
本発明の第3の態様において、心拍周波数に該当する周波数帯域は0.5から3Hz、呼吸周波数に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hzであってよい。
【0053】
本発明の第3の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測された第1のデータセットを用い、第1のデータセットに対して前記心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得る機能と、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得る機能と、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、心拍周波数帯域高強度データセットのスケール平均を算出する機能と、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得る機能と、心拍周波数から初期毎分心拍数M0を算出する機能とをさらに備えてもよい。
【0054】
本発明の第3の態様において、非線形解析は、検出された脈波のうち、時刻t+(n-1)Δt+Δtから時刻t+nΔt+Δtの間計測された第nのデータセットを用い、第n-1のデータセットのうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+(n-1)Δt+Δtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、検出された脈波のうち、時刻t+nΔtから時刻t+nΔt+Δtの間計測されたデータセットを合成して第nのデータセットとする機能と、第nのデータセットに対して心拍周波数に該当する周波数帯域にてウェーブレット解析を実施し心拍周波数帯域データを得る機能と、心拍周波数帯域データから、心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wのデータセットを破棄して心拍周波数帯域解析データを得る機能と、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域高強度データセットを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、心拍周波数帯域高強度データセットの強度平均M1nおよびスケール平均を算出する機能と、スケール平均から、ウェーブレット解析に使用したウェーブレット関数のスケールと周波数の関係を使用し心拍周波数を得る機能と、心拍周波数から毎分心拍数Mmnを算出する機能と、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し心拍周波数帯域低強度データセットを得る機能と、心拍周波数帯域低強度データセットの強度平均M2nを算出する機能と、呼吸周波数帯域解析データから、呼吸周波数帯域解析データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから所定のデータ数W、Wを破棄し呼吸周波数帯域解析データを得る機能(ただし、W、及びWはそれぞれ1以上心拍周波数帯域データの時間領域データ数の1/4以下の自然数、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最大からn個のデータを抽出し強度平均M3nを算出する機能(ただし、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、呼吸周波数帯域解析データにおいて、強度最小からn個のデータを抽出し強度平均M4nを算出する機能(ただし、nは1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/2以下の自然数である)と、次式
【0055】
【数7】
【0056】
により副交感神経指標Mpnを算出する機能と、次式
【0057】
【数8】
【0058】
により快・不快指標Pを算出する機能と、次式
【0059】
【数9】
【0060】
により覚醒度指標Aを算出する機能とをさらに備えてもよい。
【0061】
本発明の第3の態様において、非線形解析は、非調和解析、非調和解析及びカオス解析、又は、非調和解析及び再帰定量化分析であってよい。
【0062】
本発明の第3の態様において、非線形解析が、脈波検出装置によって検出された脈波に対して、パワースペクトル密度を高速フーリエ変換により求め、得られたパワースペクトル密度からHF、及びLFを算出することにより、自律神経の状態及び情動の少なくとも一方を抽出してもよい。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、動物の情動に影響を与えない動物感情解析システム、動物感情解析方法及び動物感情解析プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の第1の実施形態に係る動物感情解析システムの概要を説明する図である。
図2】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの解析装置の構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係るウェーブレット解析の一例を示す図であり、図4(a)は取得した脈波信号、図4(b)は心拍周波数領域の解析結果、図4(c)は呼吸周波数領域の解析結果である。
図5】本実施形態に係るウェーブレット解析におけるスケールと周波数の関係を表すグラフである。
図6】本実施形態に係るサービス提供システムによる、ウェーブレット解析を用いた心拍数、副交感神経指標、及び情動抽出方法を説明するためのフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの情動抽出部によって抽出された覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標を表すグラフである。
図8】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの更なる構成要素を備えた検出装置の構成を示すブロック図である。
図9】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの言語生成部を備えた解析装置の構成を示すブロック図である。
図10】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの言語生成部によって生成された会話の一例を示す図である。
図11】第1の実施形態に係る動物感情解析システムの動作を説明するフローチャートである。
図12】第2の実施形態に係る動物感情解析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図13】第2の実施形態に係る動物感情解析システムの解析装置の構成を示すブロック図である。
図14】第2の実施形態に係る動物感情解析システムの言語生成部によって生成された会話の一例を示す図である。
図15】第3の実施形態に係る動物感情解析システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0066】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成や配置、レイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0067】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る動物感情解析システムを以下に説明する。本実施形態に係る動物感情解析システムは、対象となる動物の情動を推定するシステムである。図1に、本実施形態に係る動物感情解析システム10の概要を示す。図1に、対象となる動物11と、マイクロチップ12と、解析装置13と、ネットワーク14とを示す。対象となる動物11は、一例として、ペットとして飼われている犬であるとする。マイクロチップ12は、対象となる動物11の皮膚に埋め込まれ、動物の個体識別等に使用される。図1において、マイクロチップ12は犬11の体外に示されているが、動物感情解析システム10の使用時には、マイクロチップ12は犬11の体内に埋め込まれているものとする。
【0068】
マイクロチップ12は、図示しないが、記憶装置、送信器等を備えており、記憶装置には、動物の個体を識別するための識別情報が記憶されている。対象となる動物11の体外から、読み取り装置を使用して、マイクロチップ12の記憶装置に記憶されている識別情報を、マイクロチップ12が備える送信機を介して読み取る。読み取り装置による読み取り方法としては、電磁誘導による方法、電磁結合による方法等があり、マイクロチップ12自体は読み取り装置との識別情報のデータのやり取りのための電源を必ずしも必要としない。
【0069】
マイクロチップ12は、ガラス、ポリマー等によってシールされ、動物の体内に埋め込まれる。図1において、マイクロチップ12は拡大されて示されているが、マイクロチップ12は、通常、直径1~2mm、長さ8~12mm程度の円筒形のガラス容器に封入され、専用の挿入器によって皮下に埋め込まれる。図2においては、マイクロチップ12は、ガラス容器16に封入されるとする。
【0070】
ネットワーク14は、インターネット、光ネットワーク等、無線通信であればいかなる通信網であってもよい。解析装置13は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム等、種々の電子計算機(計算リソース)であり、ディスプレイ17、キーボード、マウス等の入力装置18等が接続されている。
【0071】
図1には、解析装置13としてパーソナルコンピュータが示されるが、例えばモバイル端末等であってもよい。また、入力装置18は、対象とする動物の種類等の入力を受け付けてもよい。受け付けた対象とする動物の種類等の情報は、後述する、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を人に示す際、利用される。
【0072】
図2は動物感情解析システム10の構成を示す図である。図2に示すように、動物感情解析システム10は、検出装置15、解析装置13、ネットワーク14から構成される。
【0073】
図2に示す検出装置15は、図1に示すマイクロチップ12とともに、ガラス容器16に封入される。検出装置15は、マイクロチップ12に搭載されてもよく、またはマイクロチップ12に搭載されなくてもよい。
【0074】
検出装置15は、脈波センサ201、プレアンプ202、送信部203、電源部204から構成される。
【0075】
脈波センサ201は、対象となる動物11の脈波を検出し、脈波信号として出力する。脈波センサ201は、例えば、光学式であって良い。また、脈波センサによる脈波の検出方法は、振動解析法によるものであってよい。
【0076】
プレアンプ202は、脈波センサ201によって得られた脈波信号を受信し、増幅させて、送信部203に送信する。
【0077】
送信部203は、脈波センサ201によって得られ、プレアンプ202によって増幅された脈波信号を、ネットワーク14を介して解析装置13に送信する。
【0078】
電源部204は、脈波センサ201、プレアンプ202、及び送信部203に電力を供給する。電源部204は、一次電池であってもよく、又は、非接触充電が可能な二次電池であってもよい。なお、電源部204は、検出装置15が、マイクロチップ12に搭載されている場合には、非接触充電が可能な二次電池であることが好ましい。非接触充電の方式としては、電磁誘導方式が好ましい。
【0079】
図3は解析装置13の構成を示すブロック図である。解析装置13は、各種の演算実行のためのCPU301、処理用のプログラムを記憶するストレージ302、データ等の記憶のためのRAM303、各種のデータ及び演算結果等の記憶のための記憶部304、I/O(インプット・アウトプットインターフェース)305等が備えられる。I/O305は通信(送受信)用のインターフェース、バッファ等である。
【0080】
さらに図3のブロック図はCPU301内の機能部を示す。CPU301の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、CPU301は各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現する。詳細には、ノイズ除去部306、情動抽出部307、出力部308、入力部309等を備える。
【0081】
ノイズ除去部306は、解析装置13がI/O305を介して検出装置15から受信した脈波信号からノイズを除去し、情動抽出部307に送信する。
【0082】
情動抽出部307は、人の脈波から情動を抽出する方法と同様の方法により、動物の脈波から、非線形解析により、受益者の自律神経の状態、及び情動の少なくとも一方を抽出する。本実施形態において、情動抽出部307は、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域の、2つの周波数帯域でのウェーブレット解析により、脈波から心拍数と呼吸数のデータを抽出し、さらに、抽出された心拍数と呼吸数のデータを用いて覚醒度指標A、及び快・不快指標Pを抽出することによって情動を抽出する。これらの情動抽出部307の動作を、図面を参照しながら説明する。なお、例として、動物が大型犬である場合に関して記載する。
【0083】
まず、対象となる動物11の基準毎分心拍数Mを算出する。以下では、受益者が初めて本システムを使用することを想定し、情動抽出部307が新たに基準毎分心拍数Mを求めに行く手順を説明する。しかし、すでに基準毎分心拍数Mが既知の場合には、その値を使用しても構わない。
【0084】
基準毎分心拍数Mを求めるため、情動抽出部307は、脈波センサ201によって時刻tから時刻t+Δtの間に計測された、計測時間の所定時間長さΔtの脈波信号を取得し、脈波データセットDt0とする。所定時間長さΔtは、例えば、32秒とする。図4(a)に、取得した脈波信号の一例を示す。
【0085】
取得した脈波データセットDt0に対して、情動抽出部307は、心拍周波数帯域と呼吸周波数帯域の2つの帯域において、ウェーブレット解析を実施する。使用するウェーブレット関数としては、例えば、モルレ(Morlet)ウェーブレット関数が使用できる。心拍周波数帯域は、例えば、0.5~3Hzとする。これは、毎分心拍数30~180回に相当する。一方の呼吸周波数帯域は、例えば、0.04から0.6Hzとする。これは、毎分呼吸数2.4~36回に相当する。脈波データセットDt0に対して、心拍周波数帯域において、ウェーブレット解析を実施した結果得られたデータを心拍周波数帯域データとし、呼吸周波数帯域において、ウェーブレット解析を実施した結果得られたデータを呼吸周波数帯域データとする。
【0086】
心拍周波数帯域におけるウェーブレット解析の結果得られた心拍周波数帯域データにおいて、心拍周波数帯域データの先頭部および後尾部のそれぞれから、所定の時間領域のデータ数W、Wのデータセットを破棄する。以下、破棄後に残ったデータを心拍周波数帯域解析データと呼ぶ。データ数W、Wは、1以上、心拍周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/4以下の自然数である。
【0087】
次に、心拍周波数帯域データにおいて、強度が最大となるデータから順に所定数のデータを抽出し、心拍周波数帯域高強度データセットとする。所定数は、例えば、10個とする。
【0088】
次に、得られた心拍周波数帯域高強度データセットのスケールと強度の、それぞれの平均値を算出し、スケール平均M、強度平均Mとする。
【0089】
得られたスケール平均Mを、ウェーブレット関数ごとに決まっているスケールと周波数の関係を用いて、心拍周波数平均Mfに変換する。例えば、モルレウェーブレット関数のスケールと周波数の関係は、図5のようになる。心拍周波数平均Mに60秒/分を掛けることで、毎分心拍数Mを得る。初回のMを基準毎分心拍数Mとする。
【0090】
心拍周波数領域データにおいて、強度が最小となるデータから順に所定数のテータを抽出し、心拍周波数帯域低強度データセットとする。所定数は、例えば、10個とする。
【0091】
次に、得られた心拍周波数帯域低強度データセットの強度を平均し、強度平均Mを得る。
【0092】
次に、心拍周波数帯域におけるウェーブレット解析の場合と同様に、呼吸周波数帯域におけるウェーブレット解析の結果得られた呼吸周波数帯域データにおいて、呼吸周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部から、所定の時間領域のデータ数W、Wのデータセットを破棄する。以下、破棄後に残ったデータを呼吸周波数帯域解析データと呼ぶ。データ数W、Wは、1以上、呼吸周波数帯域解析データの時間領域データ数の1/4以下の自然数である。
【0093】
次に、呼吸周波数帯域データにおいて、強度最大から順に所定数のデータを抽出し、呼吸周波数帯域高強度データセットとする。所定数は、例えば、10個とする。この所定数は、任意である。
【0094】
次に、得られた呼吸周波数帯域高強度データセットの強度の平均値を算出し、強度平均Mとする。
【0095】
呼吸周波数領域解析データにおいて、強度最小から順に所定数のデータを抽出し、呼吸周波数帯域低強度データセットとする。所定数は、例えば、10個とする。この所定数は、任意である。
【0096】
次に、得られた呼吸周波数帯域低強度データセットの強度の平均値を算出し、強度平均Mを得る。
【0097】
副交感神経指標Mを以下の式を用いて算出する。
【0098】
【数10】
【0099】
次に、毎分心拍数Mと基準毎分心拍数Mから、以下の式を用いて情動を抽出するための覚醒度指標Aを得る。ここで、Fは最大変動率であって、0.1<F≦1である。
【0100】
【数11】
【0101】
上式によって得られた覚醒度指標Aについて、最大覚醒度指標Amax、最小覚醒度指標Aminを次のように設定する。毎分心拍数Mが基準毎分心拍数Mから最大変動率Fだけ正に変動した場合の覚醒度指標Aを最大覚醒度指標Amax、最大変動率Fだけ負に変動した場合を最小覚醒度指標Aminとし、覚醒度指標Aが最大覚醒度指標Amaxを超えたときは覚醒度指標Aを最大覚醒度指標Amaxとし、覚醒度指標Aが最小覚醒度指標Aminよりも小さくなったときは覚醒度指標Aを最小覚醒度指標Aminである。
【0102】
例えば、最大変動率Fを0.2とし、毎分心拍数Mが基準毎分心拍数Mから20%以上変動した場合の覚醒度指標Aを最大覚醒度指標Amax、―20%以下に変動した場合を最小覚醒度指標Aminとする場合には、(M-M)/0.2M/2を計算し、これが0.5を超えた場合には0.5に切り落とし、-0.5を下回った場合には-0.5に切り上げる。
【0103】
最後に、副交感神経指標Mから、以下の式を用いて情動を抽出するための快・不快指標Pを得る。
【0104】
【数12】
【0105】
快・不快指標Pは、―0.5≦P≦0.5となるように設定される。例えば、(M-1)/2を計算し、これが0.5を超えた場合には0.5に切り落とし、-0.5を下回った場合には-0.5に切り上げる。
【0106】
次に、基準毎分心拍数Mを求める際に使用した脈波データセットDt0のうち、時刻tから時刻t+Δtの間計測されたデータを破棄して脈波データセットDt0―Δt1とする。さらに、時刻t+Δtから時刻t+Δt+Δtの間に計測された、計測時間の所定時間長さΔtの脈波信号を取得して、脈波データセットDΔt1とする。脈波データセットDt0―Δt1と脈波データセットDΔt1とを合成し、第1脈波データセットDt1を得る。第1脈波データセットDt1は、時刻t+Δtから時刻t+Δt+Δtの間に計測された、計測時間の所定時間長さΔtの脈波信号と同一である。ここで、t+Δt=tであるとする。Δtは、例えば、1秒とする。脈波データセットDt0を使用して覚醒度指標A、及び快・不快指標Pを抽出した手順と同様の手順を脈波データセットDt1を使用して繰り返すことで、時刻t+Δtから時刻t+Δt+Δtの間に計測された脈波による覚醒度指標A、及び快・不快指標Pが得られる。
【0107】
上述の、第1脈波データセットDt1を得る手順と同様の手順を繰り返し行うことで、初回Δt待機した後、Δt間隔で覚醒度指標A、及び快・不快指標Pが得られることになる。第1脈波データセットDt1を得る手順と同様の手順をn-1回繰り返し行い、第n―1脈波データセットDtn-1を得たのち、第n―1脈波データセットDtn-1のうち、時刻t+(n-1)Δtから時刻t+nΔtの間計測されたデータが破棄されたデータセットに、検出された脈波のうち、時刻t+Δt+(n-1)Δtから時刻t+Δt+nΔtの間計測されたデータセットを合成して第n脈波データセットDtnとする。第n脈波データセットの先頭部及び後尾部のそれぞれから、所定の時間領域のデータを破棄した残りのデータセットに対してウェーブレット変換を実施する。ただし、nは自然数である。
【0108】
ここで、脈波データセットDt0に対して得られるスケール平均M、強度平均M、心拍周波数平均Mf、毎分心拍数M、強度平均M、強度平均M、副交感神経指標M、覚醒度指標A、快・不快指標Pは、第n脈波データセットDtnに対しては、スケール平均Msn、強度平均M1n、心拍周波数平均Mfn、毎分心拍数Mmn、強度平均M3n、強度平均M4n、副交感神経指標Mpn、覚醒度指標A、快・不快指標Pとする。
【0109】
入力装置18が情動抽出部307の動作を終了させるための入力を受け付ける等により、情動抽出部307が入力装置18から終了信号を受信するまで、情動抽出部307の動作は繰り返される。
【0110】
情動抽出部307は、覚醒度指標A、及び快・不快指標Pの組み合わせを用いて、図6に示す覚醒度指標A、及び快・不快指標Pの組み合わせと情動の対応関係に基づき、情動を抽出する。
【0111】
なお、本実施の形態では、Δtが32秒、Δtが1秒、心拍に該当する周波数帯域が0.5から3Hz、呼吸に該当する周波数帯域は、0.04から0.6Hz、所定数10個の場合に関して記載した。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、これらの数値は目的、使用状況に合わせて、適宜調整することが望ましい。例えば、これらの値は、大型犬に対しては適切であるが、小型犬、中型犬、猫、その他の動物に対しても、適宜調整する。
【0112】
なお、本実施の形態では、ウェーブレット関数として、モルレ関数(モルレウェーブレット関数)を使用する場合に関して記載した。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、他の関数を使用することもできる。例えば、Mexican Hat(メキシカンハット)、Haar(ハール)、Daubechies(ドブシー)、双直交、Coiflet(コイフレット)、Symlet(シムレット)、Meyer(メイヤー)、ガウス導関数ファミリ、Bスプライン ウェーブレットファミリーなどが使用できる。
【0113】
図6は、本実施の形態に係るウェーブレット解析を用いた心拍数、副交感神経指標、及び情動抽出方法を説明するフローチャートである。図6に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る情動抽出部307の動作を説明する。なお、図6に示すフローチャートにおいては、基準毎分心拍数Mを算出する手順については省略されており、時間tにおける覚醒度指標Aと快・不快指標Pとを抽出する手順についての詳細が示される。
【0114】
ステップS601において、情動抽出部307は、脈波センサ201によって時刻tから時刻t+Δtの間に計測された、計測時間の所定時間長さΔtの脈波信号を取得し、脈波データセットDt0とする。
【0115】
ステップS602において、情動抽出部307は、脈波データセットDt0を使用して対象となる動物の基準毎分心拍数Mを算出する。
【0116】
ステップS602の次にステップS603に移行するが、その際、n=1として、ステップS603の動作が実行される。後述するが、ステップS623において、情動抽出部307が終了信号を受信しているかどうかの判断がなされ、受信していなければ、ステップS603に戻るが、ステップS623からステップS603に移行する際には、移行前のnに1が足され、新たなnとして、ステップS603の動作が実行される。
【0117】
ステップS603において、情動抽出部307は、基準毎分心拍数Mを求める際に使用した脈波データセットDt0のうち、時刻t+(n―1)Δtから時刻t+nΔtの間計測されたデータを破棄して脈波データセットDt0―Δt1とする。
【0118】
ステップS604において、情動抽出部307は、時刻t+nΔt+(n―1)Δtから時刻t+nΔt+nΔtの間に計測された、計測時間の所定時間長さΔtの脈波信号を取得して、脈波データセットDΔt1とする。
【0119】
ステップS605において、情動抽出部307は、脈波データセットDt0―Δt1と脈波データセットDΔt1とを合成し、新しい脈波データセットDtnを得る(n=1)。
【0120】
ステップS606において、情動抽出部307は、取得した脈波データセットDtnに対して、心拍周波数帯域において、ウェーブレット解析を実施し、得られたデータを心拍周波数帯域データとする。心拍周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから、所定の時間領域のデータ数W、Wのデータセットを破棄し、破棄後に残ったデータを心拍周波数帯域解析データとする。
【0121】
ステップS607において、情動抽出部307は、心拍周波数帯域解析データにおいて、強度が最大となるデータから順に所定数のデータを抽出し、心拍周波数帯域高強度データセットとする。
【0122】
ステップS608において、情動抽出部307は、得られた心拍周波数帯域高強度データセットのスケールと強度の、それぞれの平均値を算出し、スケール平均Msn、強度平均M1nとする。
【0123】
ステップS609において、情動抽出部307は、得られたスケール平均Msnを、ウェーブレット関数ごとに決まっているスケールと周波数の関係を用いて、心拍周波数平均Mfnに変換する。
【0124】
ステップS610において、情動抽出部307は、心拍周波数平均Mfnに60秒/分を掛けることで、毎分心拍数Mmnを得る。
【0125】
ステップS611において、情動抽出部307は、毎分心拍数Mmnと基準毎分心拍数Mから、情動を抽出するための覚醒度指標Aを得る。
【0126】
ステップS612において、情動抽出部307は、心拍周波数領域解析対象データにおいて、強度が最小となるデータから順に所定数のテータを抽出し、心拍周波数帯域低強度データセットとする。
【0127】
ステップS613において、情動抽出部307は、ステップS612において得られた心拍周波数帯域低強度データセットの強度を平均し、強度平均M2nを得る。
【0128】
ステップS614において、情動抽出部307は、取得した脈波データセットDt0に対して、呼吸周波数帯域において、ウェーブレット解析を実施し、得られたデータを呼吸周波数帯域データとする。呼吸周波数帯域データの時間領域の先端部及び後尾部のそれぞれから、所定の時間領域のデータ数W、Wのデータセットを破棄し、破棄後に残ったデータを呼吸周波数帯域解析データとする。
【0129】
ステップS615において、情動抽出部307は、呼吸周波数領域解析対象データにおいて、強度が最大となるデータから順に所定数のデータを抽出し、呼吸周波数帯域高強度データセットとする。
【0130】
ステップS616において、情動抽出部307は、ステップS615において得られた呼吸周波数帯域高強度データセットの強度の平均値を算出し、強度平均M3nとする。
【0131】
ステップS617において、情動抽出部307は、呼吸周波数領域解析対象データにおいて、強度最小から順に所定数のデータを抽出し、呼吸周波数帯域低強度データセットとする。
【0132】
ステップS618において、情動抽出部307は、得られた呼吸周波数帯域低強度データセットの強度の平均値を算出し、強度平均M4nを得る。
【0133】
ステップS619において、情動抽出部307は、副交感神経指標Mpnを算出する。
【0134】
ステップS620において、情動抽出部307は、副交感系指標Mpnから、情動を抽出するための快・不快指標Pを得る。
【0135】
ステップS621において、情動抽出部307は、覚醒度指標A、及び快・不快指標Pの組み合わせを用いて、覚醒度指標A、及び快・不快指標Pの組み合わせと情動の対応関係に基づき、情動を抽出する。
【0136】
ステップS622において、情動抽出部307は、副交感系指標Mpnと覚醒度指標Aを出力部308に送信する。
【0137】
ステップS623において、情動抽出部307は、終了信号を受信しているかどうかを判断し、受信していれば、ENDに進み、動作を終了する。受信していなければ、ステップS603に戻る。ステップS603に移行する際、移行前のnに1が足され、新たなnとして、ステップS603の動作が実行される。
【0138】
覚醒度指標Aは、精神状態が高い活動状態(高活動)であるか、低い活動状態(低活動)であるかを示す指標であり、従来、脳波であるα波とβ波との割合等から算出されていたものである。本実施形態において、覚醒度指標Aは、検出装置15によって検出された脈波を用いて抽出される。
【0139】
快・不快指標Pとは、精神状態が快適な状態(快状態)であるか、不快な状態(不快状態)であるかを示す指標であり、副交感神経の活性度、本実施形態においては、副交感系指標Mから得られる。
【0140】
動物の情動は、覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標の組み合わせから推測され得る。例えば、覚醒度が低活動であり、かつ快状態であれば、情動は、「平和な」状態であると言える。覚醒度が高活動であり、かつ快状態であれば、情動は、「幸せな」状態であると言える。又、覚醒度が低活動であり、かつ不快状態であれば、情動は、「不幸せな」状態であり、覚醒度が高活動であり、かつ不快状態であれば、情動は、「怒った」状態であると言える。
【0141】
図7は、情動抽出部307によって抽出された覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標を、グラフで表現したものである。図7上の丸印40は、動物の測定時における覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標の値を示しており、丸印40の位置によって測定時点での動物の情動を把握することができる。図7に示すグラフにおいて、第1象限は「喜」、第2象限は「怒」、第3象限は「哀」、第4象限は「楽(リラックス)」であるとするが、情動を、「喜」「怒」「哀」「楽(リラックス)」からさらに細分化しても構わない。
【0142】
出力部308は、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、ディスプレイ17に表示する。
【0143】
入力部309は、入力装置18において入力された、対象となる動物の種類等の、情報を受け付ける。
【0144】
情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、ディスプレイ17に表示する方法としては、例えば、自律神経の状態を数値、グラフ等にしてディスプレイ17に表示してもよい。又は、覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標のそれぞれを数値として表し、それらの値をディスプレイ17に表示してもよい。又は、覚醒度、及び快・不快状態の2つの指標のそれぞれの値の組み合わせから、情動を「喜」「怒」「哀」「楽(リラックス)」等に分類し、分類された情動をディスプレイ17に表示してもよく、図7に示すグラフをディスプレイ17に表示してもよい。
【0145】
本実施形態において、解析装置13は、さらに、照明、スピーカー等の出力装置を備えてもよい。情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、ディスプレイ17に表示せず、例えば、照明、スピーカー等の出力装置を用いて、光、音等によって表現してもよい。又は、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、プロジェクションマッピング等によって表現してもよい。
【0146】
対象とする動物の種類等を、予め入力装置18が受け付けておき、対象とする動物をアニメーション化してディスプレイ17に表示し、抽出された情動に合わせてディスプレイ17に表示された動物の顔の表情を変えてもよい。対象とする動物をアニメーション化してディスプレイ17に表示する他にも、例えば、対象とする動物を模したロボットや人形の表情や動作を、抽出された情動に合わせて変化させてもよい。
【0147】
図8に示すように、本実施形態に係る検出装置15は、体動センサ51、及び/又は、温度センサ52をさらに備えてもよい。
【0148】
体動センサ51は、対象となる動物の運動状態を検出し、解析装置13に検出結果を送信する。体動センサ51は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ等である。体動センサ51によって、例えば、安静状態、歩いている、走っている、飛び跳ねている、等の、動物の運動状態を知ることができる。
【0149】
体動センサ51によって得られた動物の運動状態を、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動と組み合わせることによって、動物の状態をより詳細に知ることができる。
【0150】
温度センサ52は、対象となる動物の体温を測定し、解析装置13に送信する。温度センサ52によって、例えば、健康状態を知ることができる。
【0151】
本実施形態において、入力部309は、対象となる動物の情報、及び飼い主等の人による対象となる動物の行動の分析結果に関する情報の入力を受け付けてよい。入力装置が受け付ける、対象となる動物の情報としては、動物の種類、性別、年齢、健康状態等である。入力装置が受け付ける、対象となる動物の行動の分析項目としては、例えば、対象となる動物が犬であれば、尻尾の動き、首の高さ、鳴き声、耳の状態、等である。
【0152】
本実施形態において、図9に示すように、解析装置13のCPU301は、さらに、言語生成部61を備えてもよい。言語生成部61は、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を用いて、自然言語処理により、人に対する会話を生成して、ディスプレイ17への表示、スピーカーからの会話の出力等を行ってもよく、又は、ディスプレイ17に表示された動物や動物のロボット、人形等が生成された会話を話すように動作してもよい。
【0153】
CPU301が備える言語生成部61が自然言語処理を行う際、動物の交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動と、さらに、検出装置15が、体動センサ51、温度センサ52等を備え、解析装置13が備える入力装置が動物情報を受け付けた場合は、それらから得られる情報とから推測される動物の状態を説明変数とし、そのときの動物の状態を専門家や飼い主が推測して言語として表現し、それらを教師データとして機械学習モデルを作成し、記憶部304に機械学習の結果得られた会話データを記憶させておく。言語生成部61は、情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を用いて、会話データに基づき、対応する動物の会話を生成する。生成された会話は、出力部308から、ディスプレイ17、スピーカー等に出力される。
【0154】
情動抽出部307によって抽出された交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を、対象とする動物をアニメーション化してディスプレイ17に表示する場合、又は、対象とする動物を模したロボットや人形の表情や動作が変化する場合、CPU301が備える言語生成部61によって生成された会話の内容、入力部309が受け付けた入力内容、体動センサ51によって得られた動物の運動状態、温度センサ52によって得られた対象となる動物の体温等に基づき、ディスプレイ17に表示されたアニメーション化された動物の動作、ロボットや人形の表情や動作が変化してもよい。
【0155】
図10に、対象とする動物の状態と、言語生成部61によって生成された会話の一例を示す。図10に示す例1では、解析装置13が備える入力装置が受け付けた動物情報において、動物が犬であり、動物の情動が「喜」であり、運動状態が「高」であり、体動センサから検出される尻尾、鳴き声、首、耳の動きから、動物が散歩に行きたがっていることが推定され、言語生成部61によって「早く散歩に行こうよ」という会話が生成される。生成された会話は、ディスプレイ17へ表示される、又は、スピーカーから出力される、等により、表現される。例えば、ディスプレイ17に表示されたアニメーション化された犬の顔が動作するとともに会話が音声として出力される、といったように、ディスプレイやスピーカー等を組み合わせて表現されてもよい。また、スピーカーから、動物が散歩に行きたがっていることを知らせるアラームを出力してもよい。
【0156】
図10に示す例2では、動物が犬であり、動物の情動が「哀」であり、運動状態が「低」であり、体温が「高」であり、体動センサからくしゃみをしていることが検出されることから、動物が風邪をひいていることが推測され、言語生成部61によって「ちょっと熱があるみたい」という会話が生成される。また、ディスプレイ等に、動物病院、サプリメント等の情報を表示してもよい。
【0157】
次に、図11を参照しながら、本実施形態に係る動物感情解析システムの動作を説明する。
【0158】
ステップS1101において、入力部309は、入力装置18によって入力された、対象となる動物の種類等の、情報を受け付ける。
【0159】
ステップS1102において、脈波センサ201によって対象となる動物の脈波が脈波信号として検出される。
【0160】
ステップS1103において、検出された脈波信号は、プレアンプ202によって増幅され、送信部203によってネットワーク14を介して解析装置13に送信される。
【0161】
ステップS1104において、解析装置13のノイズ除去部216は、受信した脈波信号からノイズを除去し、情動抽出部217に送信する。
【0162】
ステップS1105において、情動抽出部217は、受信した脈波信号に対して、非線形解析を行い、情動を抽出する。
【0163】
ステップS1106において、出力部218は、抽出した情動をディスプレイ17に表示する。
【0164】
(第2の実施形態)
第1の実施の形態においては、情動を抽出する方法として、心拍周波数に該当する周波数帯域と、呼吸周波数に該当する周波数帯域の、2つの周波数帯域でのウェーブレット解析により情動を抽出する方法に関して記載した。本実施の形態では、これに代わり、非調和解析(特開2022-007811号公報及び国際公開第2009/038056号参照)、及び非線形解析(特開2021―037033号公報及び特開2020-074805号公報参照)を行い、情動を抽出する。非線形解析としては、カオス解析、又は、再帰定量化解析(Recurrence Quantification Analysis、RQA)を使用する。
【0165】
非調和解析とは、フィルタリング処理によって、検出装置15によって検出された脈波の変位から、目的とする脈波のm(mは2以上の自然数)倍周波数周辺の、特定高調波帯域の周波数成分とその周波数を検出する解析方法である。
【0166】
カオス解析は、脈波から、心拍数、動物の精神的健康度と関係するリアプノフ指数、副交感神経の影響を受ける心拍変動の高周波成分、交感神経と副交感神経の両方の影響を受ける心拍変動の低周波成分、緊張状態やリラックス状態の度合いを反映する心拍変動の低・高周波成分の比を算出する解析方法である。
【0167】
再帰定量化分析(Recurrence Quantification Analysis、RQA)は、力学系の再帰特性や再帰パターンを定量化する非線形時系列解析手法であり、時系列データを高次元の位相空間に再構築し、その軌道の再帰状態を調べることで系のダイナミクスの特性を定量化する手法である。RQAは心拍変動等のデータに応用される。
情動抽出以降は、第1の実施形態と同様とする。
【0168】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、検出装置15によって検出された脈波に対して、ウェーブレット解析により情動を抽出する方法に関して記載した。第2の実施形態では、検出装置15によって検出された脈波に対して、非調和解析、及び非線形解析を行い、情動を抽出する方法に関して記載した。
【0169】
他の方法として、検出装置15によって検出された脈波に対して、ピーク間隔を求め、ピーク間隔を補間して時間等間隔データを得、時間等間隔データのパワースペクトル密度を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transformation)により求め、得られたパワースペクトル密度からHF(High Frequency)、及びLF(Low Frequency)を算出する。HFとは、呼吸を信号源とする変動波の、呼吸の周波数領域におけるパワースペクトルの合計量であり、LFとは、血圧変化を信号源とする変動波の、血圧変化の周波数領域におけるパワースペクトルの合計量である。交感神経指標は毎分の心拍数から得ることができ、副交感系指標は、HF、及びLFから得ることができる。情動についても同様に、覚醒度は毎分の心拍数から得ることができ、快・不快指数は、HF、及びLFから得ることができる。
【0170】
(第4の実施形態)
第1、第2、及び第3の実施形態に係る動物感情解析システムは、対象となる動物のみの脈波を検出し、情動を推定するシステムである。第4の実施形態に係る動物感情解析システムは、対象となる動物と、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を同時に検出し、情動を推定する。
【0171】
図12は動物感情解析システム90の構成を示すブロック図である。図12に示すように、動物感情解析システム90は、検出装置15、解析装置91、人脈波検出装置92、ネットワーク14から構成される。
【0172】
図12に示す検出装置15、ネットワーク14は、第1の実施形態に係る動物感情解析システムにおいて述べられたものと同様である。
【0173】
人脈波検出装置92は、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を検出して解析装置91に送信する装置である。人脈波検出装置92は、身体に接触させて脈波を測定する接触型脈波検出装置であってもよく、又は、身体に接触させずに脈波を測定する非接触型脈波検出装置であってもよい。
【0174】
図12に示す人脈波検出装置92は、一例として、接触型脈波検出装置であるとし、人脈波検出装置92によって検出された脈波は、ネットワーク14を介して解析装置91に送信されるとしているが、人脈波検出装置92はこれに限定されない。例えば、人脈波検出装置92が、ミリ波レーダを用いた非接触センサ(Yunlong, L. et al., ”Millimeters Wave Radar for Wireless Intelligent Sensing” IEEE Conf. Proc. of 2021 13th Int'l Symp. on Antennas, Propagation and EM Theory, Vol.2021,pp.1-3(2021)参照)、又は、ドップラーセンサ等を用いた非接触型脈波検出装置(特開2022-007811号公報参照)であるとすると、人脈波検出装置92によって検出された脈波はネットワーク14を介して解析装置91に送信されてもよく、又は、人脈波検出装置92が解析装置91と直接接続されることによって、人脈波検出装置92によって検出された脈波はネットワーク14を介さずに解析装置91に送信されてもよい。
【0175】
図13に、解析装置91の構成を示す。解析装置91は、第1の実施形態に係る動物感情解析システムが備える解析装置13と比較すると、人情動抽出部101をさらに備える。
【0176】
人情動抽出部101は、情動抽出部307と同様であるが、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の、交感神経、及び副交感神経の状態、及び/又は、情動を抽出する。
【0177】
本実施形態に係る動物感情解析システムは、検出装置15、及び人脈波検出装置92によって対象となる動物とコミュニケーションをとっている人のそれぞれの脈波を検出したのち、情動抽出部307、及び人情動抽出部101によって対象となる動物とコミュニケーションをとっている人のそれぞれの情動を抽出する。ここで、情動は「喜」「怒」「哀」「楽(リラックス)」のいずれかに分類されるものとする。
【0178】
本実施形態に係る動物感情解析システムは、第1の実施形態に係る動物感情解析システムと同様、言語生成部をさらに備えてもよい。図14に、本実施形態に係る動物感情解析システムが言語生成部を備えていたときの、対象とする動物の情動と、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の情動の組み合わせから、言語生成部によって生成された会話の一例を示す。対象となる動物を犬であるとし、動物の名前を「タロー」、飼い主を「ショウヘイ」とする。対象とする動物の情動が「喜」であり、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の情動が「喜」であるとき、言語生成部によって生成された会話は、「タローは幸せだよ。ショウヘイも幸せで嬉しいよ。」である。又、対象とする動物の情動が「喜」であり、対象となる動物とコミュニケーションをとっている人の情動が「怒」であるとき、言語生成部によって生成された会話は、「タローは幸せだよ。ショウヘイに幸せを分けてあげるよ。」である。
【0179】
(第5の実施形態)
第1の実施形態に係る動物感情解析システムにおいて、検出装置15は、接触型脈波検出装置であり、マイクロチップ12とともに、ガラス容器16に封入され、対象となる動物の体内に埋め込まれる。第4の本実施形態に係る動物感情解析システムにおいて、対象となる動物の脈波を検出する装置は、身体に接触させずに脈波を測定する非接触型脈波検出装置とする。
【0180】
図15は動物感情解析システム120の構成を示すブロック図である。図15に示すように、動物感情解析システム120は、検出装置121、解析装置13、ネットワーク14から構成される。
【0181】
図15に示す解析装置13、ネットワーク14は、第1の実施形態に係る動物感情解析システムにおいて述べられたものと同様である。検出装置121が備える脈波センサ122は、非接触型の脈波センサである。検出装置121は、第4の実施形態における人脈波検出装置92と同様に、例えば、ミリ波レーダを用いた非接触センサ、又は、ドップラーセンサ等を用いた非接触型脈波検出装置であってよく、または、周波数変調非接触脈波検出装置であってもよい。
【0182】
図15に示す検出装置121は、非接触型脈波検出装置であるとし、検出装置121によって検出された脈波は、ネットワーク14を介して解析装置13に送信されるとしているが、検出装置121が解析装置13と直接接続されることによって、検出装置121によって検出された脈波はネットワーク14を介さずに解析装置13に送信されてもよい。
【0183】
本実施形態において、非接触型脈波検出装置である検出装置121は、脈波に加えて、体動を検出してもよい。体動を検出することにより、対象となる動物の運動状態が測定され、解析装置13に送信される。
【0184】
本実施形態において、検出装置121は、さらに、非接触温度センサを備えてもよい。非接触温度センサによって、対象となる動物の体温が測定され、解析装置13に送信される。非接触温度センサによって、例えば、健康状態を知ることができる。
【0185】
第4の実施形態に係る動物感情解析システムと同様、本実施形態に係る実施形態に係る動物感情解析システムは、対象とする動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を、対象とする動物の脈波と同時に検出するための装置を備えてもよい。本実施形態において、対象とする動物とコミュニケーションをとっている人の脈波を検出する装置は、接触型脈波検出装置でも非接触型脈波検出装置でもどちらでも構わない。
【0186】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る動物感情解析システムにおいて、対象となる動物の脈波を検出する装置は、体動センサであるとする。体動センサは加速度センサであってもよく、又は、ジャイロセンサであってもよい。本実施形態に係る動物感情解析システムの、対象となる動物の脈波を検出する装置を除く構成要素は、第1~第3の実施形態に係る動物感情解析システムと同様である。
【0187】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0188】
10、90、120 動物感情解析システム
11 対象となる動物
12 マイクロチップ
13、91 解析装置
14 ネットワーク
15、121 検出装置
16 ガラス容器
17 ディスプレイ
18 入力装置
201、122 脈波センサ
202 プレアンプ
203 送信部
204 電源部
301 CPU
302 ストレージ
303 RAM
304 記憶部
305 I/O(インプット・アウトプットインターフェース)
306 ノイズ除去部
307 情動抽出部
308 出力部
309 入力部
40 丸印
51 体動センサ
52 温度センサ
61 言語生成部
92 人脈波検出装置
101 人情動抽出部
102 交流度抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15