(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007073
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】発電バランシンググループの組成システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/06 20060101AFI20240111BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240111BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240111BHJP
【FI】
H02J3/06
H02J13/00 311R
H02J3/00 130
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 130
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108266
(22)【出願日】2022-07-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
2.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】312002347
【氏名又は名称】株式会社エナリス
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】納多 哲史
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】楠 玄香
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064CB03
5G064CB12
5G064DA03
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
5G066HB01
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】発電側における供給可能な電力について、発電方式や気候など地域ごとに予想の予測誤差や外れ方の傾向を考慮してバランシンググループを組成して、不要なインバランスが生じるのを低減する。
【解決手段】各発電所が発電した電力量を測定し発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを取得する実績データ取得部76aと、気象情報等の外部情報を情報サービス機関から取得する外部情報取得部76bと、実績データ及び外部情報との相関に基づいて発電所の発電量予測を行う予測部74と、発電所の実際の発電量と発電量予測とを比較し発電量予測の予測誤差を各発電所ごとに算出する予測誤差算出部74cと、各発電所の発電情報及び予測誤差と、外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析部751と、各発電所の乖離傾向情報に基づいて発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定部75とから構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電所からなる発電所群について、各発電所が発電した電力量を測定し、その測定結果と、測定された発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを取得する実績データ取得部と、
少なくとも気象情報、カレンダー情報、時刻情報のいずれか一つを含む外部情報を、情報サービス機関から取得する外部情報取得部と、
前記実績データ及び前記外部情報との相関に基づいて、前記発電所の発電量予測を行う予測部と、
前記発電所の実際の発電量と、前記予測部による発電量予測とを比較し、前記発電量予測の予測誤差を各発電所ごとに算出する予測誤差算出部と、
前記各発電所の発電情報及び予測誤差と、前記外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析部と、
前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定部と
から構成されることを特徴とする発電バランシンググループ組成システム。
【請求項2】
前記バランシンググループ設定部は、前記予測誤差が所定の低位閾値以下の発電所と、所定の高位閾値以上の発電所を組合せてバランシンググループ全体の予測誤差が所定の平準値を超えるように、前記区分を行うことを特徴とする請求項1に記載の発電バランシンググループ組成システム。
【請求項3】
所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部をさらに備え、
前記予測部は、前記発電量予測に係る実績データ及び外部情報を前記学習部が形成した前記ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、前記発電量予測を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電バランシンググループ組成システム。
【請求項4】
発電所の建設候補地域を取得する候補地域取得部と、
ユーザー操作に基づいて発電方式を選定する発電方式選定部と、
前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する乖離傾向予測部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発電バランシンググループ組成システム。
【請求項5】
前記乖離傾向解析部は、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部を有し、
前記乖離傾向予測部は、前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、当該建設候補地域に類似する特徴量を有する位置情報を前記ニューラルネットワークに識別させることによって前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の発電バランシンググループ組成システム。
【請求項6】
複数の発電所からなる発電所群について、各発電所が発電した電力量を測定し、その測定結果と、測定された発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを、実績データ取得部が取得するとともに、外部情報取得部が、少なくとも気象情報、カレンダー情報、時刻情報のいずれか一つを含む外部情報を、情報サービス機関から取得する情報取得ステップと、
予測部が、前記実績データ及び前記外部情報との相関に基づいて、前記発電所の発電量予測を行う予測ステップと、
予測誤差率算出部が、前記発電所の実際の発電量と、前記予測部による発電量予測とを比較し、前記発電量予測の予測誤差を各発電所ごとに算出するとともに、乖離傾向解析部が、前記各発電所の発電情報及び予測誤差と、前記外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析ステップと、
バランシンググループ設定部が、前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定ステップと
を含むことを特徴とする発電バランシンググループ組成方法。
【請求項7】
バランシンググループ設定ステップにおいて前記バランシンググループ設定部は、前記予測誤差が所定の低位閾値以下の発電所と、所定の高位閾値以上の発電所を組合せてバランシンググループ全体の予測誤差が所定の平準値を超えるように、前記区分を行うことを特徴とする請求項6に記載の発電バランシンググループ組成方法。
【請求項8】
学習部が、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習ステップをさらに含み、
前記予測ステップでは、前記発電量予測に係る実績データ及び外部情報を前記学習部が形成した前記ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、前記発電量予測を行う
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の発電バランシンググループ組成方法。
【請求項9】
候補地域取得部が発電所の建設候補地域を取得するとともに、発電方式選定部がユーザー操作に基づいて発電方式を選定し、前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、乖離傾向予測部が、前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する乖離傾向予測ステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の発電バランシンググループ組成方法。
【請求項10】
学習部が、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習ステップをさらに含み、
前記乖離傾向予測ステップにおいて乖離傾向予測部は、前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、当該建設候補地域に類似する特徴量を有する位置情報を前記ニューラルネットワークに識別させることによって前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する
ことを特徴とする請求項9に記載の発電バランシンググループ組成方法。
【請求項11】
コンピューターを、
複数の発電所からなる発電所群について、各発電所が発電した電力量を測定し、その測定結果と、測定された発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを取得する実績データ取得部と、
少なくとも気象情報、カレンダー情報、時刻情報のいずれか一つを含む外部情報を、情報サービス機関から取得する外部情報取得部と、
前記実績データ及び前記外部情報との相関に基づいて、前記発電所の発電量予測を行う予測部と、
前記発電所の実際の発電量と、前記予測部による発電量予測とを比較し、前記発電量予測の予測誤差を各発電所ごとに算出する予測誤差算出部と、
前記各発電所の発電情報及び予測誤差と、前記外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析部と、
前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定部
として機能させることを特徴とする発電バランシンググループ組成プログラム。
【請求項12】
前記バランシンググループ設定部は、前記予測誤差が所定の低位閾値以下の発電所と、所定の高位閾値以上の発電所を組合せてバランシンググループ全体の予測誤差が所定の平準値を超えるように、前記区分を行うことを特徴とする請求項11に記載の発電バランシンググループ組成プログラム。
【請求項13】
前記コンピューターを、
所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部としてさらに機能させ、
前記予測部は、前記発電量予測に係る実績データ及び外部情報を前記学習部が形成した前記ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、前記発電量予測を行う
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の発電バランシンググループ組成プログラム。
【請求項14】
前記コンピューターを、
発電所の建設候補地域を取得する候補地域取得部と、
ユーザー操作に基づいて発電方式を選定する発電方式選定部と、
前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する乖離傾向予測部
としてさらに機能させることを特徴とする請求項1に記載の発電バランシンググループ組成プログラム。
【請求項15】
前記乖離傾向解析部は、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部を有し、
前記乖離傾向予測部は、前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、当該建設候補地域に類似する特徴量を有する位置情報を前記ニューラルネットワークに識別させることによって前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の発電バランシンググループ組成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電バランシンググループにおける発電所の組合せを最も効果的な組合せとすることで利益向上に貢献し得る発電バランシンググループの組成システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統の運用においては、電力の需要量に対する供給量のバランスが許容範囲からずれると電力の安定供給をできなくなるとともに、電気エネルギーは貯めておくことができないという特性から、電力需要と電力供給のバランスを許容範囲内に維持するいわゆる「同時同量」にする必要がある。
【0003】
また、電力系統において、電力需要量の予測に対する電力供給計画のギャップ(電源脱落による供給追加や需要の上振れ等)から、電力需要と電力供給のバランス(電力需給バランス)の維持が崩れる場合がある。需給バランスがある範囲を超えて崩れると、電力系統の周波数や電圧が変動し、電力需要家の電気設備が正常に動作しないことや、極端なケースでは電力系統が大停電になる場合があるなど、電力系統の電力品質の維持に多大な悪影響を及ぼすことになる。
【0004】
これを解消するために、従来、電力供給バランス調整用の電力を調達する計画を立案する仕組みとして、例えば特許文献1に開示されたシステムが提案されている。この特許文献1に開示されたシステムでは、実需要と供給調整計画との差分に応じてリアルタイム市場で調達する需給調整計画によって、需要と供給を一致させ、同時同量を実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発電側における供給可能な電力については、その発電方式や気候など地域ごとによって、予想の予測誤差や外れ方の傾向が異なる。しかしながら、上記特許文献1に開示されたシステムでは、電力需要量の予測に基づいて電力供給計画を作成するものの、発電方式や気候など地域ごとに、予想の予測誤差や外れ方の傾向について考慮していないことから、不要なインバランスを生じる惧れがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、発電側における供給可能な電力について、発電方式や気候など地域ごとに予測の誤差や外れ方の傾向を考慮してバランシンググループを組成して、不要なインバランスが生じるのを低減できる発電バランシンググループの組成システム、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の発電バランシンググループ組成システムは、
複数の発電所からなる発電所群について、各発電所が発電した電力量を測定し、その測定結果と、測定された発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを取得する実績データ取得部と、
少なくとも気象情報、カレンダー情報、時刻情報のいずれか一つを含む外部情報を、情報サービス機関から取得する外部情報取得部と、
前記実績データ及び前記外部情報との相関に基づいて、前記発電所の発電量予測を行う予測部と、
前記発電所の実際の発電量と、前記予測部による発電量予測とを比較し、前記発電量予測の誤差を各発電所ごとに算出する予測誤差算出部と、
前記各発電所の発電情報及び予測誤差と、前記外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析部と、
前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定部と
から構成される。
【0009】
また、本発明の発電バランシンググループ組成方法は、
複数の発電所からなる発電所群について、各発電所が発電した電力量を測定し、その測定結果と、測定された発電所の位置情報及び発電方式に関する発電情報とを関連づけた実績データを、実績データ取得部が取得するとともに、外部情報取得部が、少なくとも気象情報、カレンダー情報、時刻情報のいずれか一つを含む外部情報を、情報サービス機関から取得する情報取得ステップと、
予測部が、前記実績データ及び前記外部情報との相関に基づいて、前記発電所の発電量予測を行う予測ステップと、
予測誤差算出部が、前記発電所の実際の発電量と、前記予測部による発電量予測とを比較し、前記発電量予測の誤差を各発電所ごとに算出するとともに、乖離傾向解析部が、前記各発電所の発電情報及び予測誤差と、前記外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する乖離傾向解析ステップと、
バランシンググループ設定部が、前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するバランシンググループ設定ステップと
を含む。
【0010】
上記発明において、前記バランシンググループ設定部は、バランシンググループ候補全体の予測誤差の合計を、それらの発電所の予測誤差の絶対値の単純合計で割ったときに比べて所定の値を下回るように、前記区分を行うことが好ましい。
【0011】
上記発明において、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部をさらに備え、
前記予測部は、前記発電量予測に係る実績データ及び外部情報を前記学習部が形成した前記ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、前記発電量予測を行う
ことが好ましい。
【0012】
上記発明では、発電所の建設候補地域を取得する候補地域取得部と、
ユーザー操作に基づいて発電方式を選定する発電方式選定部と、
前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する乖離傾向予測部と
をさらに備えることが好ましい。
【0013】
上記発明において前記乖離傾向解析部は、所定の基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを前記乖離傾向情報として形成する学習部を有し、
前記乖離傾向予測部は、前記発電方式選定部が選定した発電方式と、前記建設候補地域の位置情報とに基づいて、当該建設候補地域に類似する特徴量を有する位置情報を前記ニューラルネットワークに識別させることによって前記乖離傾向情報を参照し、前記建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する
ことが好ましい。
【0014】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。即ち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0015】
また、本発明のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またコンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。具体的にこの記録媒体としては、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発電側における供給可能な電力について、発電方式や気候など地域ごとに予想の予測誤差や外れ方の傾向を考慮してバランシンググループを組成して、不要なインバランスが生じるのを低減できる。これらの結果、発電バランシンググループにおける発電所の組合せを最も効果的な組合せとすることで利益向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る電力システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】実施形態に係る電力システムにおける電力制御に関する概念図である。
【
図3】実施形態に係るユーザーシステムの機器構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る電力制御サーバーの内部構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る発電バランシンググループ組成システムの動作を示すフロー図である。
【
図7】実施形態に係る発電バランシンググループ組成ステップの動作を詳細に示すフロー図である。
【
図8】実施形態に係る発電所について予測誤差の相関解析を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る発電バランシンググループ組成御システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(電力制御システムの概要)
図1及び
図2に、本発明に係る発電バランシンググループ組成御システムを適用した電力制御システムの全体構成を示す。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る電力制御システムは、高圧受電地点5の受変電設備50に接続された電力系統を通じて、各発電所P1~P3から各需要単位へ電力を供給するシステムである。また、本実施形態では、需要単位として住宅用の太陽光発電及び蓄電システムを備えた一般住宅等の需要単位H1及びH2が含まれている。
【0020】
また、本実施形態では、発電事業者によって運用されている受変電設備50が高圧受電地点5に配置されており、高圧受電地点5では、発電所を運用する電力会社によって、各需要単位H1及びH2に対して、各発電所P1~P3からの電力が供給されている。なお、各発電所又は電力会社には発電制御端末8が備えられており、この発電制御端末8によって各発電事業者による発電が管理されている。
【0021】
そして、本実施形態では各需要単位H1及びH2を統合的に管理するエネルギーマネジメント業務が電力制御サーバー2によって提供されている。この電力制御サーバー2によるエネルギーマネジメント業務によって各需要単位H1及びH2に対する制御計画、需要予測、発電予測及び管理・設定が実行され、気象データ等の外因要素を参照しつつ実績データベースを用いて、将来(例えば翌日)の電力消費量を予測して制御スケジュールを生成する。電力制御サーバー2は生成されたスケジュールの内容に応じて、翌日の発電量を吸収できる分を、各蓄電池を予め放電させて確保するように制御する。
【0022】
電力制御サーバー2には通信ネットワーク3を通じて需要単位H1及びH2の各制御装置(HEMS)40が接続されている。そして、高圧受電地点5から電力系統に各需要単位H1及びH2が接続され、各発電所P1~P3から各需要単位H1及びH2に対して電力が供給される。また、制御に関するデータは、電力制御サーバー2から各需要単位H1及びH2のHEMS40に送信されるとともに、需要単位H1及びH2側のユーザーシステム4からの実績データ(太陽光、蓄電池、電力データ)が電力制御サーバー2に集積されるようになっている。
【0023】
詳述すると、電力制御システム1は、電力制御サーバー2と、電力の需要単位H1及びH2ごとに電力を制御及び管理する複数のユーザーシステム4,4…における発電、放電又は送受電を管理し制御するシステムであり、
図3に示すように、各ユーザーシステム4,4…等に設置された実績データ生成部であるスマートメーター41と、インターネットや電話回線、専用回線等を介してスマートメーター41と接続された電力制御サーバー2とを備えている。
【0024】
電力制御システム1では、各スマートメーター41が、各ユーザーシステム4において各電力使用期間中に発電又は消費した電力量を需要家ごとに測定して実績データD1を生成し、電力制御サーバー2側で実績データD1に基づいてユーザーシステム4,4…内における電力消費を管理する。本実施形態では、各ユーザーシステム4,4…における電力管理実績及び予測結果を電力制御サーバー2側で利用できるようにしている。電力制御システム1では、電力制御サーバー2と、需要単位H1及びH2の電力制御装置であるHEMS40とが通信ネットワーク3で相互に接続されている。各需要家H1及びH2において外部電力系統には各ユーザーシステム4のスマートメーター41が接続されている。
【0025】
HEMS40は、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」と呼ばれる家庭(需要家)で使うエネルギーを管理する電力制御端末であり、需要家内の家電や電気設備とWifi等の通信によって相互に接続され電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」したり、家電機器を「自動制御」したりすることができる。具体的にHEMS40は、例えば、CPUや通信機能を備えた情報処理端末で構成されており、各需要家の他、発電所、PPS、電力プロシューマ、アグリゲーター等の各施設の電力設備を統括的に制御することができるとともに、ユーザーシステム内においてスマートメーター41や分電盤45などにも通信可能に接続されている。このHEMS40が制御する対象設備としては、需要家や電力プロシューマ等の施設内に配備されたユーザーシステム4に含まれるスマートメーター41、蓄電池42、PV(Photovoltaics:太陽光発電)43など、発電や蓄電、電力消費を管理する装置が含まれる。
【0026】
なお、このHEMS40が制御対象とする各種装置は、必要に応じて省略することができる。例えば、ユーザーシステム4,4…ではその電力消費がスマートメーター41により測定されるが、需要家によっては発電設備及び蓄電設備を有するものもあれば、発電設備又は蓄電設備のいずれかの設備を有するもの、或いは発電・蓄電設備のいずれも備えずスマートメーター41だけが設けられ電力消費のみを行うものもある。また、電力プロシューマも電力消費をする立場にあるが、太陽光発電や蓄電池を備えて電力を供給する側にも位置することができる。
【0027】
通信ネットワーク3は、インターネットなど通信プロトコルTCP/IPを用いたIP網であって、種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワーク)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークである。このIP網には、10BASE-Tや100BASE-TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。
【0028】
(各装置の構成)
次いで、各装置の構成について説明する。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0029】
(1)ユーザーシステム4
スマートメーター41は、需要単位H1又はH2内における電力消費の他、必要に応じて発電・蓄電を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要単位H1又はH2内において、電力消費を計測する他、需要単位H1又はH2内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して実績データD1を生成し、電力制御サーバー2に送出する。この実績データD1の送信は、通信ネットワーク3や電話回線、専用回線等を通じて電力制御サーバー2に対して行われる。
【0030】
なお、本実施形態では、実績データ生成部としてスマートメーター41を用いるが、本発明はこれに限定されず、例えば、HEMSや、需要家内に配置された各種家電製品、工場設備、オフィス機器など、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置を備えて自機の状態を実績データとして通信ネットワークに送信する機能を有する電子機器全般が利用可能である。
【0031】
また、本実施形態に係るユーザーシステム4は、
図3に示すように、既にHEMS40によって電力管理が行われている需要家や電力プロシューマが有する電力設備全般であり、電力を消費する単位でもある。ここで需要家とは、電力の供給を受けて使用している電力設備に関する契約単位であり、契約電力が500kW以上の高圧大口需要家、50kW以上500kW未満の高圧小口需要家、一般家庭などの50kW未満の低圧需要家が含まれる。また、ユーザーシステム4は、発電や蓄電の設備を備える場合がある。発電の設備としては、例えば太陽光発電や風力発電等が挙げられる。このユーザーシステム4には、HEMS40と、実績データ生成部としてのスマートメーター41とが含まれる。また、電力を消費する設備としては、各種家電製品や工場設備、オフィス機器のみならず、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置全般が含まれる。
【0032】
各需要家に設置されるHEMS40は、分電盤45に接続されてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の電流、電圧、電力波形、周波数等が取得可能となっているとともに、各電気器、ユーザーシステム4(需要家)内に配置されたPV43や蓄電池42の発電や充放電を実際に制御する装置である。具体的にHEMS40は、通信機能やCPUを備えた情報処理端末であり、OS或いはファームウェア、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、アプリケーションをインストールして実行することによって電力管理部として機能する。この情報処理端末としては、パーソナルコンピューターの他、例えば、スマートフォンや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピューター、携帯電話機が含まれる。
【0033】
スマートメーター41は、需要単位であるユーザーシステム内における発電・蓄電・電力消費を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要家のユーザーシステム4内において、各需要家での電力消費を計測する他、ユーザーシステム内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して実績データD1を生成し、定期的にHEMS40及びゲートウェイ端末46を経由して電力制御サーバー2に送出する。この実績データD1の送信は、通信ネットワーク3や電話回線、専用回線等を通じて電力制御サーバー2に対して行われる。
【0034】
(2)発電制御端末8
各発電所P1~P3に設置される発電制御端末8は、電力の供給単位である発電所内における発電量を管理する装置である。具体的に、発電制御端末8は、
図4に示すように、CPU802と、メモリ803と、入力インターフェース804と、ストレージ801と、出力インターフェース805と、通信インターフェース806とを備えている。なお、本実施形態では、これらの各デバイスは、CPUバス800を介して接続されており、相互にデータの受渡しが可能となっている。
【0035】
メモリ803及びストレージ801は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。特に、本実施形態においてストレージ801は構成要素特定部802dによる推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報D2を記録するデータ記録部としての機能を果たすとともに、需要家内において実際に消費された電力に関する実消費電力情報D5を需要家内側で蓄積する実消費電力蓄積部としての機能も果たしている。
【0036】
入力インターフェース804は、発電所P1~P3の発電設備から制御信号を受信するモジュールであり、受信された制御信号はCPU802に伝えられ、OSや各アプリケーションによって処理される。他方、出力インターフェース805は、発電所P1~P3内の各設備へ制御信号を出力するモジュールである。
【0037】
通信インターフェース806は、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第8世代(8G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。
【0038】
CPU802は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置であり、各種プログラムを実行することにより、CPU11上に仮想的に各種モジュールを構築する。このCPU802上では、OS(Operating System)が起動・実行されており、このOSによって各発電制御端末8の基本的な機能が管理・制御されている。また、このOS上では種々のアプリケーションが実行可能になっており、CPU802でOSプログラムが実行されることによって、種々の機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。
【0039】
本実施形態では、CPU802上でブラウザソフトを実行することによって、このブラウザソフトを通じて、システム上の情報を閲覧したり、情報を入力したりできるようになっている。詳述すると、このブラウザソフトは、Webページを閲覧するためのモジュールであり、通信ネットワーク3を通じて電力制御サーバー2からHTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどをダウンロードし、レイアウトを解析して表示・再生する。このブラウザソフトにより、フォームを使用してユーザーがデータをWebサーバーに送信したり、JavaScriptやFlash、及びJava(登録商標)などで記述されたアプリケーションソフトを動作させたりすることも可能であり、このブラウザソフトを通じて、各ユーザーは、電力制御サーバー2が提供する電力管理サービスを利用することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、実績データ生成部としてスマートメーター41を用いるが、本発明はこれに限定されず、例えば、HEMS40や、需要家内に配置された各種家電製品、工場設備、オフィス機器など、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置を備えて自機の状態を実績データとして通信ネットワークに送信する機能を有する電子機器全般が含まれる。
【0041】
(3)電力制御サーバー7
電力制御サーバー7は、各発電所P1~P3の発電制御端末8、及び各需要単位H1及びH2のHEMS40と連携することで各発電所における発電、及び各需要家における電力消費の管理・制御を行うサーバー装置であり、
図5に示すように、通信インターフェース73と、認証部72と、バランシンググループ設定部75と、各種データベース71a~dと、予測部74と、データ管理部76とを備えている。
【0042】
通信インターフェース73は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、本サービスを提供するために発電制御端末8、各HEMS40及びスマートメーター41、及びインターネット上の外部情報源などに接続されている。
【0043】
認証部72は、電力制御サービスに係るアクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の端末装置からユーザーID及びパスワードを取得し、ユーザーデータベース71bを照合することによって、アクセス者に本サービスを利用する権限があるか否かや、そのアクセス者が契約者であるか否かなどを確認する。
【0044】
バランシンググループ設定部75は、前記各発電所の乖離傾向情報に基づいて、発電所群を複数のバランシンググループに区分するモジュールである。本実施形態で、このバランシンググループ設定部75は、バランシンググループの区分において予測誤差が所定の低位閾値以下の発電所と、所定の高位閾値以上の発電所を組合せてバランシンググループ全体の予測誤差が所定の平準値を超えるように区分する。例えば、バランシンググループ設定部75は、バランシンググループ候補全体の予測誤差の合計を、それら発電所の予測誤差の絶対値の単純合計で割ったときに比べて所定の値を下回るように、発電所群を複数のバランシンググループに区分する。また、本実施形態において、このバランシンググループ設定部75は、乖離傾向解析部751と、発電方式選定部752とを含む。
【0045】
乖離傾向解析部751は、各発電所の発電情報及び予測誤差と、外部情報との相関を乖離傾向情報として解析するモジュールである。また、乖離傾向解析部751は、所定基準値以上の予測誤差の発電量予測に対応する実際の発電量及びその発電量予測に関連する外部情報に関する特徴量の分布を抽出してニューラルネットワークを乖離傾向情報として形成する学習機能を有する。
【0046】
発電方式選定部752は、ユーザー操作に基づいて発電方式を選定するモジュールであり、ユーザーが選択した発電所の建設候補地域を取得する候補地域取得部としての機能も備えており、乖離傾向予測部74eは、この発電方式選定部752が選定した発電方式と、建設候補地域の位置情報とに基づいて、乖離傾向情報を参照し、建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する。
【0047】
上記各種データベース71a~dは、コンピューター・システム等の記憶デバイスを有する情報処理端末に電子的に格納された、構造化した情報又はデータの組織的な集合であり、単一のデータベースとしてもよく、複数のデータベースに分割し、相互にリレーションを設定することで各データ同士を紐付けたリレーショナルデータベースとすることができる。具体的に、本実施形態に係る電力制御サーバー7は、予測結果情報データベース71aと、ユーザーデータベース71bと、実績管理データベース71cと、学習情報データベース71dとを備えている。
【0048】
予測結果情報データベース71aは、収集された実績データや外部情報を分析して、必要な情報を抽出し分類するとともに、それらの情報に関連する予測結果を蓄積する記憶装置であり、各予測結果情報に、その基礎となった実績データや、ネットワーク上に分散された外部情報源からの情報と、その種別や時間情報、テキスト等の付加情報とを紐付けて蓄積する。ユーザーデータベース71bは、各需要家のユーザーや、シミュレーション管理者、アグリゲーター等の業者に関する情報を蓄積する記憶装置である。
【0049】
実績管理データベース71cは、発電所や需要家、アグリゲーター等の電力の授受に関係する者による実績データを収集し蓄積して管理する記憶装置である。各スマートメーターから受信した各実績データは、この実績管理データベースに蓄積され、学習部74dにおける機械学習の用に供される。学習情報データベース71dは、各需要家における機械学習の実績を記録する記憶装置である。
【0050】
上述したデータ管理部76は、実績データや外部情報を収集し、蓄積・管理するモジュールであり、各需要家から実績データD1を収集し解析することによって、予測部74における予測処理に必要な情報を提供する。
【0051】
このデータ管理部76による解析結果は、相関抽出部74bが抽出した相関情報とともに、予測部74の学習部74dに入力され、機械学習の用に供される。本実施形態に係るデータ管理部76は、実績データ取得部76aと、外部情報取得部76bとを備えている。
【0052】
予測部74は、実績データ取得部76aが収集した実績データを解析して、各時間帯における単位計測期間ごとの予測発電量及び予測消費電力を予測するモジュールであり、本実施形態では、実績データ及び外部情報との相関に基づいて発電所の発電量予測、及び各需要家の消費電力予測を行う。具体的にこの予測部74は、本実施形態では、外部情報取得部74aと、相関抽出部74bと、予測誤差算出部74cと、学習部74dと、乖離傾向予測部74eとを備えている。
【0053】
外部情報取得部74aは、例えば気象情報、カレンダー情報、時刻情報など、Webや情報サービス機関等で提供されている外部情報を取得するモジュールである。相関抽出部74bは、例えば非線形回帰分析器であり、複数種の予測値の特徴がパターンとして設定され、実績データを解析し、多数の実績データの中から特定の特徴点を検出するモジュールである。予測誤差算出部74cは、発電所の実際の発電量と、予測部74による発電量予測とを比較し、発電量予測の誤差を各発電所ごとに算出するモジュールである。
【0054】
乖離傾向予測部74eは、発電方式選定部752が選定した発電方式と、建設候補地域の位置情報とに基づいて、乖離傾向情報を参照し、建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出するモジュールである。
【0055】
なお、本実施形態では、予測部74における発電量及び消費電力量、並びにこれらの標準偏差値の予測処理では、学習部74dに問合せ、機械学習により算出された候補を取得する。この学習部74dは、人工知能であるディープラーニング認識機能が適正な判定をするように、機械学習を実行するモジュールであり、本実施形態では、データ管理部76によって収集された実績データD1や外部情報から教師データを生成し、この教師データに基づいてディープラーニング認識部を学習させる。
【0056】
また、学習部74dは、ディープラーニング認識に対し、入力された実績データD1や外部情報について、ディープラーニング認識による判定結果である推定履歴と実績データとを対比する比較部としての役割を果たす。
【0057】
また、予測誤差算出部74cは、ディープラーニング認識部に教師データとして入力された同一事象(対象発電所、対象需要家、対象地域、発生時刻等)についての判定結果と、そのとき実際に制御された実績データD1とを対比し、その対比した結果が一致するかどうかを判断し、その一致する度合いを予測誤差として算出する。この予測誤差算出部74cで算出された予測誤差は、乖離傾向解析部751及び乖離傾向予測部74eに送出される。乖離傾向解析部751では、各発電所の発電情報及び予測誤差と、外部情報との相関を乖離傾向情報として解析する。また、予測結果を解析して、実際と異なるとすればどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、予測部74による予測結果の予測誤差率を算出し、実行した際に予測部74が選択した各種選択肢の正当性を帰納法的に検証し、乖離傾向解析部751に対してフィードバックする。
【0058】
なお、乖離傾向解析部751は、いわゆるディープラーニング(深層学習)により、判定を行うモジュールであり、乖離傾向を解析した学習データ(教師データ)として機能検証に利用する。具体的には、ディープラーニング認識部では、所定のディープラーニングのアルゴリズムに従って、各予測情報と実績データD1との相関、及び外部情報及び相関情報を解析し、その解析結果であるディープラーニング認識結果(価格予測AIモデル)を予測結果情報データベース71aに蓄積する。
【0059】
学習部74dに実装されたアルゴリズムとしては、本実施形態では、ニューラルネットワークの多層化、特に3層以上のものを備え、人間の脳のメカニズムを模倣した学習及び認識システムである。この認識システムに画像等のデータを入力すると、第1層から順番にデータが伝搬され、後段の各層で順番に学習が繰り返される。この過程では画像内部の特徴量が自動で計算される。
【0060】
この特徴量とは問題の解決に必要な本質的な変数であり、特定の概念を特徴づける変数である。学習部74dにおいても、実績データ、推定履歴、外部情報、及び相関情報が入力されて、これらのデータ中の特徴点を階層的に複数抽出し、抽出された特徴点の階層的な組合せパターンによりパターンを認識する。学習部74dの認識機能モジュールは、多クラス識別器であり、複数の事象が設定され、複数の物体の中から特定の特徴点を含むオブジェクトである特徴ベクトル(ここでは、例えば「特定の時間帯における天気」)を検出する。この認識機能モジュールは、入力ユニット(入力層)、第1重み係数、隠れユニット(隠れ層)、第2重み係数、及び出力ユニット(出力層)を有する。
【0061】
このとき入力ユニットには複数個の特徴ベクトルが入力される。第1重み係数は入力ユニットからの出力に重み付けする。隠れユニットは、入力ユニットからの出力と第1重み係数との線形結合を非線形変換する。第2重み係数は隠れユニットからの出力に重み付けをする。出力ユニットは、各クラス(例えば、使用機器、使用状態等)の識別確率を算出する。ここでは出力ユニットを3つ示すが、これに限定されない。出力ユニットの数は、パターン識別器が検出可能な事象の数と同じである。出力ユニットの数を増加させることによって、認識可能な機器種別等の事象識別器が検出可能な事象が増加する。
【0062】
上述した乖離傾向予測部74eは、発電方式選定部752が選定した発電方式と、建設候補地域の位置情報とに基づいて、当該建設候補地域に類似する特徴量を有する位置情報をニューラルネットワークに識別させることによって乖離傾向情報を参照し、建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する機能を有する。また、乖離傾向予測部74eは、発電方式選定部752が選定した発電方式と、建設候補地域の位置情報とに基づいて、乖離傾向情報を参照し、建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する。
【0063】
(発電バランシンググループ組成システムの動作)
以上説明した発電バランシンググループ組成システムを動作させることによって、本発明の発電バランシンググループ組成方法を実施することができる。
図6及び
図7は電力制御システムの動作を示すフロー図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0064】
同図に示すように、発電所側の発電制御端末8と、需要家側のHEMS40では、常時、システム内で発電、蓄電又は消費されている電力を計測している。この計測された実績データは、電力制御サーバー2へと送出される。電力制御サーバー2では、これと併せて外部情報を収集する(S101)。この電力の計測では、電力波形の時間的変動も計測され、随時記録されている。一方、シミュレーション管理サーバー側では、この需要家の発電制御端末8側での消費電力計測に併せて、外部情報の収集及び分類を常時行っている。
【0065】
次いで、各発電所における発電量を予測するとともに、各需要家について予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する。このとき、各需要家での、個別機器の電源の状態を時系列で記録するようにしてもよい。即ち、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する。この推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。このとき、電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力及びその継続時間を推定する。
【0066】
この予測結果は、実績データとともに予測履歴情報として電力制御サーバー2にて収集され、ストレージ801に蓄積される。ここで収集された実績データと予測履歴情報について、外部情報と照合して、これらの相関関係を抽出して相関情報を生成する(S103)。
【0067】
そして、収集された実績データ、予測履歴情報、相関情報及び外部情報に基づいて、予測誤差を算出し、乖離傾向、即ち外れ傾向を解析する(S104)。なお、実績データ、予測履歴情報、相関情報及び外部情報、並びに乖離傾向は蓄積され、これらについても機械学習が実行され(S105)、その履歴が更新される。この機械学習の結果は教師データに反映される。
【0068】
また、ステップS104で解析された乖離傾向(外れ傾向)に基づいて、発電所のバランシンググループの設定が成されるとともに、この発電所について設定されたバランシンググループと組合せされる需要家側のバランシンググループも設定する(S106)。ここで、このステップS106のバランシンググループ組成処理を
図7に示す。
【0069】
同図に示すように、先ず、発電予測誤差データがあるか否かを判断する(S201)。この発電予測差データとは、各発電所の実際の発電量と、発電量予測とを比較して発電量予測の予測誤差を各発電所ごとに算出したデータであり、本実施形態では、予測誤差算出部74cにより生成され、予測結果情報データベース71aに蓄積される。ステップS201において、予測結果情報データベース71aに発電予測誤差データが存在する場合(ステップS201における「Y」)、その発電予測誤差データがバランシンググループ設定部75によって取得される。
【0070】
一方、ステップS201において、予測結果情報データベース71aに発電予測誤差データが存在しない場合(ステップS201における「N」)、気象予測や気象実績等の外部情報を取得し(S203)、これを擬似的な発電量予測と仮定し、これと実際の発電量と比較して、擬似的な予測誤差を算出してこれを発電予測誤差データへと変換する(S204)。そして、乖離傾向に基づいてマッチングを行い、発電所の組合せを選定し、それぞれの組合せについて発電バランシンググループの予測誤差低減効果を解析する(S205)。この予測誤差低減効果が大きい組合せを最適なバランシンググループとして出力する(S206)。
【0071】
この予測誤差低減効果の解析では、発電所における全てのペアの、発電量予測誤差に係る相関係数を求める。これにより、発電所の各ペア、例えばi 番目とj 番目の発電所について、予測誤差の相関係数ρ
ijが求められる。本実施形態では、この相関係数を予測誤差の外れ傾向と定義する。ここでは、発電所N 拠点から任意のM 拠点を取り出し(N≧M)、M 拠点を組合せてバランシンググループ候補を構成したときの、候補全体の予測誤差の標準偏差σを、統計学における、和の標準偏差の公式
【数1】
より求める。
【0072】
ここでσ
iはi 番目の発電所の予測誤差標準偏差、ρ
ijはi 番目の発電所とj 番目の発電所の予測誤差の相関係数である。これにより、様々な組合せにおいてバランシンググループ候補全体の予測誤差の標準偏差σを計算し、この標準偏差σと、各拠点の誤差標準偏差の単純積み上げ
【数2】
とを求め、この標準偏差σとその単純積み上げ(数2)との比をバランシンググループの性能評価指標とし、最も小さいものを最適な組合せとする。
図8に、発電所A~Cについて予測誤差の相関を解析する場合を例示する。同図に示すように、発電所A及びBの予測誤差時系列が高く相関し、発電所A及びCの予測誤差時系列は低く相関しているとする。予測誤差の相関が高い発電所AとBとを組合せるとインバランス、即ち予測誤差の絶対値は大きくなり、低性能と判断される。一方、予測誤差の相関が低い発電所AとCとを組合せるとインバランス、即ち予測誤差の絶対値は小さくなり、高性能と判断される。
【0073】
なお、簡易的な手法としては、過去の発電予測誤差データがある拠点については、過去の発電予測誤差データを利用して予測誤差相関係数を計算する。予測誤差の相関係数は距離と相関があり、これに対して最小二乗法で近似曲線を引き、近似曲線をもとに新規発電所又は発電所候補地の予測誤差相関係数を予測し、既存、新規全ての予測誤差相関係数をもとに最適なバランシンググループを選定する。
【0074】
例えば、ユースケースの一つとして、バランシンググループの新規組成では、発電所N拠点は実在の発電所又は発電所建設予定地であり、ここから任意のM拠点を取り出し、上式により、標準偏差σを求め、各拠点の誤差標準偏差の上記数2で示した単純積み上げの比を計算し、この比が最も値が小さい場合を最適なバランシンググループとすることができる。
【0075】
また、他のユースケースとしては、既に存在するバランシンググループへ、既存の発電所、或いは候補地選定を含む新規な発電所を追加するような場合がある。例えば、既に、発電所N1拠点からなるバランシンググループが存在するとする。このバランシンググループにN2拠点の発電所或いは発電所候補地を追加し、全部でN1+ N2拠点とするかを検討する。N1拠点は既にバランシンググループを構成しているので、バランシンググループ候補全体の予測誤差の標準偏差σの計算には必ず含められることとなる。また、追加を検討するN2拠点からは、追加の候補となるM 拠点(M≦N2)を抽出し、合計N1+M 拠点でσの計算を行う。
【0076】
なお、σと各拠点の誤差標準偏差の上記単純積み上げの比を計算し、M拠点追加前のその比の値からの差をスコアとする。このスコアは、例えば、バランシンググループに追加するか否かの決定や、発電所候補地であれば建設決定の参考とすることができる。また、このスコアは、バランシンググループ追加時のサービス料金の決定にも活用できる。
【0077】
図6に示すように、上述したステップS105に続き、電力の供給側と需要側の両バランシンググループのマッチングを実行し、マッチングされた電力の需給関係に応じた電力供給計画を策定し(S107)、策定された電力供給計画に従って電力の供給が実行される(S108)。このように実行されて供給された電力についても、発電所側の発電制御端末8と、需要家側のHEMS40とにより、継続して発電、蓄電又は消費が計測され(ステップS109における「N])、この計測された実績データは、電力制御サーバー2で収集され(S101)記録される。
【0078】
なお、各発電所について算出された乖離傾向情報(外れ傾向)は、発電所の建設候補地を選定する際などに利用することができる。具体的には、発電方式選定部752を通じてユーザー操作に基づく発電方式の選定操作を受け付けるとともに、発電所建設候補となっている地域を入力する。これによりユーザーが選定した発電方式と、建設候補地域の位置情報とに基づいて、乖離傾向予測部74eが、乖離傾向情報を参照し、建設候補地域における予測誤差を乖離傾向予測情報として算出する。そして、他の発電所とのバランシングを考慮して、乖離傾向を相殺できるような発電方式と建設候補地域を選定し、発電所の建設計画を支援することができる。
【0079】
(発電バランシンググループ組成プログラム)
上述した実施形態及び変更例に係る発電バランシンググループ組成システム及び方法は、所定の言語で記述された発電バランシンググループ組成プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。即ち、サーバー装置やスマートフォン、タブレットPC、車載端末などの専用装置、又はICチップに給電管理プログラムをインストールし、これらのCPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを容易に構築することができる。このプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またスタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。
【0080】
そして、このようなプログラムは、パーソナルコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録することができる。具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、USBメモリやメモリカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。
【0081】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、発電所における発電、需要家における総消費電力の時間変動や、電力波形(周波数)を計測して分析し、発電量や総消費電力を予測する。そして、収集された実績データ、予測履歴情報、相関情報及び外部情報に基づいて、予測誤差を算出し、乖離傾向、即ち外れ傾向を解析し、解析された乖離傾向(外れ傾向)に基づいて、発電所のバランシンググループが設定される。電力の供給側と需要側の両バランシンググループのマッチングを実行し、マッチングされた電力の需給関係に応じた電力が供給される。
【0082】
本実施形態によれば、発電側における供給可能な電力について、発電方式や気候など地域ごとに予想の予測誤差や外れ方の傾向を考慮してバランシンググループを組成して、不要なインバランスが生じるのを低減できる。これらの結果、発電バランシンググループにおける発電所の組合せを最も効果的な組合せとすることで利益向上に貢献することができる。
【0083】
特に、本実施形態では、外部情報を擬似的な発電予測誤差データへ変換することから、過去データのない新規発電所についても、既存の発電所とのバランシンググループを策定することができ、発電所建設に最適な地域選定ロジックを提供できるとともに、発電所の新規構築時の収益予測が可能となる。
【0084】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0085】
D1…実績データ
H1,H2…需要単位
P1~P3…発電所
1…電力制御システム
2…電力制御サーバー
3…通信ネットワーク
4…ユーザーシステム
5…高圧受電地点
7…電力制御サーバー
8…発電制御端末
40…HEMS
41…スマートメーター
42…蓄電池
43…PV
45…分電盤
46…ゲートウェイ端末
50…受変電設備
71a…予測結果情報データベース
71b…ユーザーデータベース
71c…実績管理データベース
71d…学習情報データベース
72…認証部
73…通信インターフェース
74…予測部
74a…外部情報取得部
74b…相関抽出部
74c…予測誤差算出部
74d…学習部
74e…乖離傾向予測部
75…バランシンググループ設定部
76…データ管理部
76a…実績データ取得部
76b…外部情報取得部
751…乖離傾向解析部
752…発電方式選定部
800…CPUバス
801…ストレージ
802…CPU
803…メモリ
804…入力インターフェース
805…出力インターフェース
806…通信インターフェース