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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070740
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】加力試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/32 20060101AFI20240516BHJP
   G01M 7/06 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N3/32 H
G01M7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181448
(22)【出願日】2022-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名:説明会「実大免震試験施設説明会」、主催者名:一般財団法人免震研究推進機構、開催日:2022年4月11日。 発行者名:一般財団法人免震研究推進機構、刊行物名:パンフレット「免震技術・制振技術の更なる発展のために 実大免震試験施設の設置について」、発行年月日:2022年4月11日。 ウェブサイトの閲覧場所:一般財団法人免震研究推進機構、アドレス:http://jsil.or.jp/、http://jsil.or.jp/facility.html、ウェブサイト掲載日:2022年7月12日。 集会名:セミナー「既存の実大試験機に内在する課題とその解決」、主催者名:一般財団法人免震研究推進機構、開催日:2022年8月20日。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人防災科学技術研究所、「戦略的イノベーション創造プログラム (S I P)/国家レジリエンス(防災・減災)の強化/高精度荷重計測機構を有する動的試験機を活用した解析法の開発/」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522443132
【氏名又は名称】一般財団法人免震研究推進機構
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 洋三
(72)【発明者】
【氏名】和田 章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良和
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉敷 祥一
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA17
2G061AB04
2G061AB08
2G061BA01
2G061CA20
2G061CB20
2G061DA01
2G061EA03
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】試験体に作用する水平力を正確に検出可能であり、簡潔な構造で実現することができる加力試験装置を提供する。
【解決手段】加力試験装置10は、複数の鉛直動的ジャッキ21と、上面に試験体Tが固定される加振テーブル11と、試験体Tの上端を固定する反力梁13と、複数の水平動的ジャッキ22と、一端30aが反力梁13に固定され、他端30bが反力壁3に固定される反力検出器30と、下端15eが反力床2に対して相対移動不能に設けられ、上端15dが反力梁13に接合されて反力梁13を支持するゴム支持材15と、一端17aが反力梁13に固定され、他端17bが反力床2に固定された緊張材17と、を備え、試験体Tに作用する水平力は、反力検出器30で計測される第1の水平力と、ゴム支持材15が変形して伝達される第2の水平力との合算値である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物または当該構造物の構成部材に関する試験体に対して、鉛直方向と水平方向から力を同時に作用させ、前記試験体の応答を計測する加力試験装置であって、
反力床の上方に設けられる複数の鉛直動的ジャッキと、
前記鉛直動的ジャッキの上方に設置され、上面に前記試験体が固定される加振テーブルと、
前記試験体の上端を固定する反力梁と、
一端が反力壁に固定され、他端が前記加振テーブルに固定される複数の水平動的ジャッキと、
一端が前記反力梁に固定され、他端が前記反力壁に固定される反力検出器と、
下端が前記反力床に対して相対移動不能に設けられ、上端が前記反力梁に接合されて前記反力梁を支持するゴム支持材と、
一端が前記反力梁に固定され、他端が前記反力床に固定された緊張材と、
を備え、
前記試験体に作用する水平力は、前記反力検出器で計測される第1の水平力と、前記ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力との合算値であることを特徴とする加力試験装置。
【請求項2】
前記ゴム支持材は、単層のゴム支承、または複数層からなる積層ゴム支承であることを特徴とする請求項1に記載の加力試験装置。
【請求項3】
前記ゴム支持材は複数設置され、前記ゴム支持材の各々は、隣接した位置に設けられた前記緊張材によるプレストレス力で、所定の圧縮応力が作用した状態で拘束されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加力試験装置。
【請求項4】
前記反力検出器は、前記反力梁と前記反力壁の間に複数配置され、当該反力検出器にはロードセルが内蔵され、かつ曲げモーメントを低減させる接合部が両端に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の加力試験装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物または当該構造物の構成部材を模擬した試験体に対して、鉛直力と水平力を同時に作用させ、試験体の応答を計測する加力試験装置であり、免震装置の三方向または二方向の動的加力試験機の水平力測定値に摩擦力・慣性力を混入させない技術の発明である。
【背景技術】
【0002】
建物を建築するに際し、建物の構造部材等の信頼性を実証するために、構造部材等に関する試験体に対して力を作用させ、試験体の応答を計測する実大実験が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、縦用のスイーベルジョイント付加振器と、横用のスイーベルジョイント付加振器と、加振力を伝達し、微少な摩擦でテーブルを縦に案内し回転動を拘束するスライドベアリング、及びスライドベアリング軸支持装置と、を備え、被試験体に縦動単独、横動単独、もしくは縦横同時連成加振力を与える試験装置が開示されている。
また、特許文献2には、可撓性部材の一端を保持する第1保持部を鉛直方向に往復移動可能な第1加力部と、可撓性部材の他端を保持する第2保持部を第1の水平方向に往復移動する第2加力部と、第2保持部を第1の水平方向とは異なる第2の水平方向に往復移動する第3加力部とを備える試験装置が開示されている。
これらの特許文献1、2の構成では、試験体の応答を正確に計測できない可能性がある。例えば特許文献2の構成において、可撓性部材の他端を保持する第2保持部を水平方向に揺動可能に設けられた継手に、ロードセルを設け、このロードセルによって、可撓性部材に作用する水平力を計測することが考えられる。この場合においては、ロードセルによって計測される水平力には、第2保持部を静止した状態から移動させたり、第2保持部の移動方向を変えたりする際に、第2保持部に作用する慣性力が含まれてしまう。また、第2支持部と、第2支持部を揺動可能に支持する支持台との間に生じる摩擦力も、ロードセルによって計測される水平力に含まれてしまう。
このように、特許文献1、2の構成において、試験体に作用する水平力を計測しようとしても、慣性力や摩擦力が含まれた水平力が計測されてしまう。
【0004】
これに対し、特許文献3には、反力床に固定する下反力梁と、下反力梁上に水平移動可能に配置されて試験体を固定する可動テーブルと、可動テーブルを上部から押える押え格子と、一端を反力壁または反力床に固定し、他端を押え格子に固定する押え格子リンクと、試験体の上端を固定する上反力梁と、一端を反力壁に固定し、他端を上反力梁に固定する上反力梁リンクと、を有した試験装置が開示されている。
上反力梁は、上反力梁リンクにより、水平方向の移動が拘束されている。上反力梁リンクには、ロードセルが取り付けられている。
下反力梁と押え格子を貫通するように、貫通ロッドが設けられている。貫通ロッドは、上反力梁に固定され、上反力梁を支持している。貫通ロッドは、押え格子と押え格子より上部に配置された上ブロックとの間に固定された上ラムシリンダーと、下反力梁と下反力梁より下部に配置された下ブロックとの間に固定された下ラムシリンダーを備えている。可動テーブルには、一端を反力壁に取り付けた水平アクチュエータが取り付けられている。
貫通ロッドは、球面座金を介して、上反力梁に固定されている。この球面座金により、貫通ロッドの曲げやせん断による水平力の発生が抑制され、貫通ロッドから上反力梁に伝達される水平力は無視できるものとなる。
【0005】
上記のような試験装置において、例えばせん断試験を行う際には、水平アクチュエータを起動して、可動テーブルを水平移動させることで、試験体に対して水平力を付与する。上反力梁リンクのロードセルにより、試験体に作用する水平力が計測される。
このように、水平アクチュエータによって水平移動される可動テーブルに作用する水平力ではなく、可動テーブルを挟んで試験体の上端を固定する上反力梁に対して、可動テーブルから試験体を介して作用する水平力が計測される。このようにして計測される水平力には、可動テーブルを動かす際の慣性力や、可動テーブルとこれを支持する他の部材との間に作用する摩擦力が含まれないため、試験体に作用する力を明確に把握することができる。
【0006】
しかし、特許文献3の構成においては、上反力梁を支持するに際し、下反力梁から上反力梁までを挿通するように貫通ロッドを設けている。このような構成では、貫通ロッドの曲げとせん断による水平力の発生を防ぐために、貫通ロッドと上反力梁との接合部に球面座金を設ける等、構造が複雑なものとなっている。したがって、特許文献3の構成を実現するには、コストが嵩む。
また、特許文献3の可動テーブル上に乗せられる試験体には大きな鉛直荷重が作用するが、可動テーブルの上下はラムジャッキと抑え格子で挟まれており、可動テーブルの上下面にも大きな摩擦力が作用する。このため、水平ジャッキの能力を高める必要があった。
更に、球面座金の部分においても、厳密には摩擦が生じているため、これによる摩擦力が、測定される水平力に影響し、水平力を正確に検出できない場合もある。
試験体に作用する水平力を正確かつリアルタイムに検出できる加力試験装置を、簡潔な構成で、実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-178844号公報
【特許文献2】特開2002-333392号公報
【特許文献3】特許第6842721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、試験体に作用する水平力を正確かつリアルタイムに検出可能であり、簡潔な構造で実現することができる加力試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、加力試験装置(例えば、免震装置の三方向または二方向の動的加力試験機)として、加振テーブル上に設置する試験体に作用する水平力測定値に、加振テーブルを動かす際の慣性力、および加振テーブルとこれを支持する部材との間に作用する摩擦力が混入していない反力梁の側で測定することを考え、試験体を固定する反力梁を介し、反力壁と前記反力梁との間に設ける反力検出器で計測される第1の水平力と、前記反力梁に接合されたゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力との合算値として直接測定する、免震装置の三方向または二方向の動的加力試験機の水平力測定値に摩擦力・慣性力を混入させない技術を発明した。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、構造物または当該構造物の構成部材に関する試験体に対して、鉛直方向と水平方向から力を同時に作用させ、前記試験体の応答を計測する(例えば、3軸加力試験装置、または2軸加力試験装置)加力試験装置において、水平力測定値に摩擦力・慣性力を混入させない技術の発明であって、反力床の上方に設けられる複数の鉛直動的ジャッキと、前記鉛直動的ジャッキの上方に設置され、上面に前記試験体が固定される加振テーブルと、前記試験体の上端を固定する反力梁と、一端が反力壁に固定され、他端が前記加振テーブルに固定される複数の水平動的ジャッキと、一端が前記反力梁に固定され、他端が前記反力壁に固定される反力検出器と、下端が前記反力床に対して相対移動不能に設けられ、上端が前記反力梁に接合されて前記反力梁を支持するゴム支持材と、一端が前記反力梁に固定され、他端が前記反力床に固定された緊張材と、を備え、前記試験体に作用する水平力は、前記反力検出器で計測される第1の水平力と、前記ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力との合算値であることを特徴とする、免震装置の三方向または二方向の動的加力試験機の水平力測定値に摩擦力・慣性力を混入させない技術の発明である。
このような構成によれば、試験体は、加振テーブルの上に設置される。試験体の上端は反力梁で固定される。加振テーブルが、鉛直動的ジャッキ、及び水平動的ジャッキにより動かされると、試験体には、鉛直力に加え、水平力が作用する。試験体に作用する水平力は、反力梁を介し、反力壁と反力梁との間に設けられる反力検出器に、圧縮力または引張力として伝達する。ここで、反力梁は、下端が反力床に対して相対移動不能に設けられているゴム支持材によって、下方から支持されており、反力梁は反力床に対して相対移動が可能な状態となっているため、この水平力の伝達は、ゴム支持材によっては阻害されない。このようにして反力検出器に伝達された水平力は、第1の水平力として計測される。
上記の要領で反力検出器が第1の水平力を検出するに際し、反力検出器は、反力検出器に伝達する水平力の影響を受けて、僅かながら圧縮変形または伸長変形し、反力梁は、この圧縮量、伸長量の分だけ、水平方向に移動する。試験体に伝達した水平力のうち、この、反力検出器の変形及び反力梁の移動のために消費される水平力は、反力検出器によって第1の水平力として計測され得ない。ここで、反力検出器の圧縮量、伸長量は、微小なものであり、これに伴う反力梁の移動量、及びゴム支持材の変形量も、微小なものとなる。ゴム支持材の変形量とゴム支持材に作用する水平力の関係は、変形量が微小である初期変形段階においては基本的に比例関係となる。したがって、この関係を予め把握しておけば、ゴム支持材の変形量を基に、反力梁に伝達される水平力のうち、第1の水平力として反力検出器によって計測されない部分を、第2の水平力、すなわちゴム支持材が変形して伝達される成分として把握することができる。
こうして検出された、反力検出器で計測される第1の水平力と、ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力とを合算することにより、試験体に作用する水平力を、正確に検出することができる。
ここで、第1及び第2の水平力は、水平動的ジャッキによって直接動かされる加振テーブルに対して計測されるものではない。したがって、第1及び第2の水平力には、加振テーブルを動かす際の慣性力や、加振テーブルとこれを支持する部材との間に作用する摩擦力が含まれない。
また、反力梁が、反力床に対し、緊張材によって接続されているため、反力梁の鉛直方向の変位は抑制される一方で、水平方向には剛には拘束されていない。このため、ゴム支持材に作用する水平力は、鉛直方向に緊張材を通して伝達されにくい。これにより、水平力の計測精度が向上する。
以上が相乗し、試験体に作用する水平力を正確に検出することができる。
また、上記のような構成においては、反力梁を支持するに際し、基本的にはゴム支持材と緊張材を設ければ良いため、構成が簡潔なものとなる。
更に、上記のような構成においては、摩擦力と慣性力の影響を受けていないため、水平力の検出をリアルタイムで行うことが可能である。
その結果、試験体に作用する水平力を正確かつリアルタイムに検出可能であり、簡潔な構造で実現することができる加力試験装置を提供することが可能となる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記ゴム支持材が、単層のゴム支承、または複数層からなる積層ゴム支承である。
このような構成によれば、単層のゴム支承、または積層ゴム支承であるゴム支持材は、高い鉛直剛性を有しており、鉛直方向の変形が抑えられる。このため、ゴム支持材に水平力が作用した際に、ゴム支持材の鉛直方向の変形が抑えられ、ゴム支持材は、作用した水平力の分だけ、水平方向にスムーズに変形することができる。したがって、第2の水平力を、正確に、把握することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記ゴム支持材は複数設置され、前記ゴム支持材の各々は、隣接した位置に設けられた前記緊張材によるプレストレス力で、所定の圧縮応力が作用した状態で拘束されている。
このような構成によれば、緊張材のプレストレス力により、高い鉛直剛性を有するゴム支持材が、圧縮応力が作用した状態で拘束されることで、ゴム支持材の鉛直方向の変位を抑えつつ、ゴム支持材の面圧依存性を最小化することができる。これにより、ゴム支持材の水平方向の変形による第2の水平力を、安定して計測することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記反力検出器は、前記反力梁と前記反力壁の間に複数配置され、当該反力検出器にはロードセルが内蔵され、かつ曲げモーメントを低減させる接合部が両端に設けられている。
このような構成によれば、軸力を精度よく測定できるロードセルを、反力検出器に内蔵し、さらに、反力検出器の両端に、曲げモーメントを低減させる接合部が設けられることで、反力梁の変位に基づくロードセルへの曲げモーメントの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試験体に作用する水平力を正確かつリアルタイムに検出可能であり、簡潔な構造で実現することができる加力試験装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る加力試験装置の構成を示す斜視図である。
図2図1の加力試験装置の構成を模式的に示した平面図である。
図3図2の加力試験装置の構成を、第2方向から見た図である。
図4図2の加力試験装置の構成を、第1方向から見た図である。
図5図2のI-I矢視断面図である。
図6】加力試験装置の緊張材の上部の定着構造を示す、図3のA矢視部分の断面図である。
図7】上記緊張材の下部の定着構造を示す、図3のB矢視部分の断面図である。
図8】上記加力試験装置において、試験体に水平力が作用した状態を示す図である。
図9】ゴム支持材の変形量と、ゴム支持材の変形により生じる第2の水平力との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、構造物を模擬した試験体に対して、鉛直力と水平力を同時に作用させ、前記試験体の応答を計測する加力試験装置(例えば、3軸加力試験装置、または2軸加力試験装置)である。本発明は、加力試験装置として、免震装置の三方向または二方向の動的加力試験機の水平力測定値に摩擦力・慣性力を混入させない技術を具現化したものである。具体的には、本発明の加力試験装置は、反力床の上方に設ける鉛直動的ジャッキの上部に設置される加振テーブルと、試験体の上端を固定する反力梁と、一端が反力壁に固定され、他端が加振テーブルに固定される水平動的ジャッキと、一端が反力梁に固定され、他端が反力壁に固定される反力検出器と、下端が相対移動不能に設けられ、上端が反力梁に接合されて反力梁を支持するゴム支持材と、を備え、試験体に作用する水平力が、反力検出器で計測される第1の水平力と、ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力との合算値であることを特徴とする。
以下、添付図面を参照して、本発明による加力試験装置を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る加力試験装置の構成を示す斜視図を図1に示す。図2は、図1の加力試験装置の構成を模式的に示した平面図である。図3は、図2の加力試験装置の構成を、第2方向から見た図である。図4は、図2の加力試験装置の構成を、第1方向から見た図である。図5は、図2のI-I矢視断面図である。
図1図5に示される加力試験装置10は、試験体Tに対して、鉛直方向と水平方向から力を同時に作用させ、試験体Tの応答を計測する。ここで、加力試験装置10における試験体Tは、構造物、または構造物の構成部材に関するものである。本実施形態では、試験体Tとして、構造物に組み込まれる免震装置、より具体的には積層ゴム支承を例示する。試験体Tとしては、積層ゴム支承以外の、すべり支承等の、他の種類の免震、制振装置が適用され得る。また、試験体Tとしては、免震装置以外に、例えば、構造物またはその一部を模擬した、柱試験体、壁試験体、縮小した構造物の架構試験体、等が挙げられる。
加力試験装置10は、試験ピット1内に設置されている。試験ピット1は、反力床2と、一対の反力壁3と、を有している。反力床2は、地盤上に鉛直方向に所定の厚さを有して、例えば建物の基礎上に形成されている。反力床2は、平面視矩形状に形成されている。一対の反力壁3は、反力床2の床面に沿った第1方向D1に間隔をあけて配置されている。一対の反力壁3は、反力床2の第1方向D1の両端部から、それぞれ、鉛直上方に立ち上がって形成されている。一対の反力壁3は、水平面内で第1方向D1に直交する第2方向D2を含む鉛直面内に延在するように設けられている。一対の反力壁3は、反力床2に対して、移動不能に設けられている。反力床2、及び反力壁3は、試験の際に、後述する鉛直動的ジャッキ21、水平動的ジャッキ22、反力検出器30等から入力される反力を受け止められるよう、十分強固に形成されている。
【0016】
加力試験装置10(3軸加力試験装置)は、加振テーブル11と、反力梁13と、ゴム支持材15と、緊張材17と、複数の鉛直動的ジャッキ21と、複数の水平動的ジャッキ22と、反力検出器30と、を備えている。
図3図5に示されるように、加振テーブル11は、反力床2の上方に間隔をあけて配置されている。加振テーブル11は、複数の鉛直動的ジャッキ21の上方に設置されている。加振テーブル11は、複数の鉛直動的ジャッキ21により、下方から支持されている。加振テーブル11は、基台11aと、加振テーブル本体11bと、ベアリング11cと、を備えている。基台11aは、例えば、平面視矩形状で、水平面に沿って形成されたテーブル状をなしている。基台11aは、複数の鉛直動的ジャッキ21上に支持されている。加振テーブル本体11bは、基台11aの上方に間隔をあけて配置されている。加振テーブル本体11bは、基台11aと同様、例えば、平面視矩形状で、水平面に沿って形成されたテーブル状をなしている。ベアリング11cは、基台11aの上面と加振テーブル本体11bの下面との間に配置されている。ベアリング11cは、例えば複数のボールベアリングであり、加振テーブル本体11bを、基台11a上で、水平面内で移動自在に支持している。加振テーブル本体11bの上面には、試験体Tの下端が固定される。
【0017】
反力梁13は、加振テーブル11の上方に間隔をあけて設置されている。図2図5に示されるように、反力梁13は、反力梁本体13aと、第1梁部材13b及び第2梁部材13cと、を一体に有している。反力梁本体13aは、加振テーブル11を、上方から覆うように形成されている。反力梁本体13aの下面には、試験体Tの上端が固定される。
第1梁部材13b、第2梁部材13cは、第2方向D2に間隔をあけて配置されている。第1梁部材13b、第2梁部材13cは、反力梁本体13aの第2方向D2の両端部に接合されている。第1梁部材13b、第2梁部材13cは、それぞれ、平面視で、反力梁本体13aに対し、第1方向D1の両側に突出するように延びている。第1梁部材13bと第2梁部材13c、互いに平行となるように設けられている。
反力梁13は、反力床2、反力壁3、及び次に説明する支持壁14に対し、離間して、水平方向に相対移動可能に設けられている。
【0018】
第1梁部材13b、第2梁部材13cの下方には、それぞれ、支持壁14が設けられている。支持壁14は、平面視で、第1梁部材13b、第2梁部材13cと重なるように形成されている。支持壁14は、下端が反力床2に固定されている。支持壁14は、反力床2から鉛直上方に延びている。支持壁14の上端は、第1梁部材13b、第2梁部材13cの下面と鉛直方向に間隔をあけて形成されている。
支持壁14は、一対の反力壁3と同様に、反力床2に対して、移動不能に固定して設けられている。
本実施形態においては、支持壁14は、反力壁3とは独立して設けられているように図示されているが、これに限られない。例えば、図2において、第2方向D2を含む鉛直面内に延在するように設けられた反力壁3と直交するように、第1方向D1を含む鉛直面内に延在するように他の反力壁3を設け、この上端が、第1梁部材13b、第2梁部材13cの下面と鉛直方向に間隔をあけて位置するように、設けられてもよい。
【0019】
ゴム支持材15は、支持壁14の上端と、第1梁部材13b、第2梁部材13cの下面との間に設けられている。ゴム支持材15は、水平面内で間隔をあけて複数設けられている。本実施形態においては、ゴム支持材15は、第1梁部材13b、第2梁部材13cの各々の下に、第1方向D1に間隔をあけて3箇所に設けられている。
ゴム支持材15は、単層のゴム支承、または複数層からなる積層ゴム支承である。本実施形態において、ゴム支持材15は、上部フランジ15aと、下部フランジ15bとの間に、複数層の積層ゴム層15cと、を備えた積層ゴム支承である。このような積層ゴム支承からなるゴム支持材15は、高い鉛直剛性を有している。
各ゴム支持材15の下端15e、すなわち下部フランジ15bの下面は、支持壁14の上端に固定されている。これにより、各ゴム支持材15の下端は、反力床2に対して相対移動不能に設けられている。各ゴム支持材15の上端15d、すなわち上部フランジ15aの上面は、反力梁13の第1梁部材13b、第2梁部材13cの下面に接合されている。このようにして、複数のゴム支持材15は、反力梁13を下方から支持している。
【0020】
図3図4に示されるように、緊張材17は、一端が反力梁13に固定され、支持壁14を鉛直方向に貫通するように設けられて、他端が反力床2に固定されている。図2に示されるように、緊張材17は、平面視で、各ゴム支持材15の周囲に隣接した位置に、複数本ずつ設けられている。
図6は、加力試験装置の緊張材の上部の定着構造を示す、図3のA矢視部分の断面図である。図7は、上記緊張材の下部の定着構造を示す、図3のB矢視部分の断面図である。
図3図4図6図7に示されるように、緊張材17は、PC鋼より線(或いはPC鋼棒)からなり、第1梁部材13bと第2梁部材13c、及び支持壁14を、貫通して設けられている。
【0021】
図6に示されるように、緊張材17の一端17aは、第1梁部材13b、第2梁部材13cの上面に、上部定着部19を用いて定着されている。上部定着部19は、ベースプレート19aと、チェアー管19bと、アンカープレート19cと、リングナット19dと、アンカーヘッド19eと、を有している。ベースプレート19aは、第1梁部材13b、第2梁部材13cの上面に沿って設けられている。チェアー管19bは、筒状で、ベースプレート19aの上側に設けられている。本実施形態においては、緊張材17としては、複数の鋼線が撚られて形成された、PC鋼より線が用いられている。このPC鋼より線は、一端17aにおいては、複数のPC鋼より線に分離され、これらPC鋼より線の各々が、個別に定着されている。より詳細には、チェアー管19bの内側には、緊張材17を構成する各PC鋼より線が挿通されている。アンカープレート19cは、チェアー管19bの上端を塞ぐように設けられている。リングナット19dは、アンカープレート19cの上面に着座している。アンカーヘッド19eは、リングナット19dの内側に設けられ、リングナット19dの回転にともなって、鉛直方向に変位するよう設けられている。緊張材17の一端17aは、アンカーヘッド19eに、テーパ状の止め具17dにより下方への移動が拘束されている。緊張材17の一端17a、リングナット19d、及びアンカーヘッド19eは、キャップ19fによって覆われている。具体的には、PC鋼より線は、一本に見える鋼線が、さらに細い鋼線を寄って作られている。このより線を束にして、工場から運ばれ、これらは、寄らずに直線的に設置される。
【0022】
図7に示されるように、緊張材17の他端17bは、反力梁13から所定の距離以上離れた、下方の位置に固定されている。緊張材17の他端17bは、反力床2に、下部定着部18を用いて定着されている。下部定着部18は、ベースプレート18aと、チェアー管18bと、アンカープレート18cと、リングナット18dと、アンカーヘッド18eと、を有している。ベースプレート18aは、反力床2の下面に埋め込まれるように設けられている。チェアー管18bは、筒状で、ベースプレート18aの下側に設けられている。PC鋼より線は、一端17aと同様に、他端17bにおいても、複数のPC鋼より線に分離され、これらPC鋼より線の各々が、個別に定着されている。より詳細には、チェアー管18bの内側には、緊張材17を構成する各PC鋼より線が挿通されている。アンカープレート18cは、チェアー管18bの下端を塞ぐように設けられている。リングナット18dは、アンカープレート18cの下面に着座している。アンカーヘッド18eは、リングナット18dの内側に設けられ、リングナット18dの回転にともなって、鉛直方向に変位するよう設けられている。緊張材17の他端17bは、アンカーヘッド18eに、テーパ状の止め具17cにより上方への移動が拘束されている。緊張材17の他端17b、リングナット18d、及びアンカーヘッド18eは、キャップ18fによって覆われている。
【0023】
支持壁14の、緊張材17が貫通して設けられる部分には、シース管からなる管17pが埋設されて設けられている。緊張材17の一端17aと他端17bとの間は、この管17pに挿通されている。管17pの下端部には、管17pよりも細径の鞘管17qが挿入されている。鞘管17qの外側には、スパイラル筋16が、支持壁14に埋設されて設けられている。
このような緊張材17は、リングナット18d、19dを締め付けることによって、予め設定されたプレストレス力(引張力)が導入されている。ゴム支持材15の各々は、隣接した位置に設けられた緊張材17によるプレストレス力で、所定の圧縮応力が作用した状態で拘束されている。
【0024】
このようにして、反力梁13は、プレストレス力を導入した緊張材17により、ゴム支持材15を介して支持壁14に押圧されることで、支持壁14及び反力床2に対して、鉛直方向には変位不能に設けられている。
ここで、プレストレス力を導入した緊張材17には、導入したプレストレス力を材長さで除した幾何水平剛性が作用する。すなわち、緊張材17に張力がかかることで、緊張材17に直交する水平方向における剛性が、本来であれば、上昇する。ただし、本実施形態においては、後に説明するように、反力梁13が水平方向に変位可能となるように設けたうえで、加振テーブル11を加振し、加振テーブル11から試験体Tを介して反力梁13に作用する水平力を、反力壁3と反力梁13の間に水平方向に設けられた反力検出器30のロードセル35によって計測しようとするものである。このため、緊張材17による、反力梁13の水平方向における拘束を強くすると、反力梁13に作用する水平力を正確に計測できなくなる可能性がある。
このため、反力梁13の水平方向における拘束が強くならないように、緊張材17はできるだけ長くして、幾何水平剛性を低くするのが望ましい。
また、緊張材17が挿通される菅17pの径Dは、反力梁13の水平変位に伴って緊張材17が傾斜変形するに際し、管17pの内壁に接触してこの変形を抑制することがないように、ゴム支持材15を支持する支持壁14内の全高さを通して、十分な大きさとなるように設定するのが望ましい。
【0025】
図3図5に示されるように、複数本の鉛直動的ジャッキ21は、反力床2の上方に設けられ、それぞれ、鉛直方向に延びている。複数本の鉛直動的ジャッキ21は、例えば、加振テーブル11の四隅の下側に設けられている。各鉛直動的ジャッキ21の下端は、反力床2に固定されている。各鉛直動的ジャッキ21の上端は、加振テーブル11の下面に固定されている。各鉛直動的ジャッキ21は、外部から供給される油圧等により、鉛直方向に伸縮駆動される。
図2図5に示されるように、複数本の水平動的ジャッキ22は、加振テーブル11に対し、第1方向D1の両側に配置されている。本実施形態において、水平動的ジャッキ22は、加振テーブル11に対して第1方向D1の両側に、それぞれ、第2方向D2に間隔をあけて2本ずつ設けられている。各水平動的ジャッキ22は、それぞれ、一端22aが反力壁3に固定され、他端22bが加振テーブル11のテーブル本体11bに固定されている。特に図5に示されるように、各水平動的ジャッキ22の両端22a、22bは、反力壁3、加振テーブル11に対し、それぞれ、ジョイント部材22jを介して、水平動的ジャッキ22がジョイント部材22jを中心に回転自在となるように接続されている。
第1方向D1において加振テーブル11の一方の側に位置する2本の水平動的ジャッキ22は、これらの間の距離が、図2に示されるように平面視したときに、加振テーブル11から離れるにつれて、漸次離れるように、第1方向D1に対して、例えば10°程度の角度をつけて設けられている。第1方向D1において加振テーブル11の他方の側に位置する2本の水平動的ジャッキ22についても同様である。
これら複数本の鉛直動的ジャッキ21、及び複数本の水平動的ジャッキ22が作動することにより、加振テーブル11に下端が固定され、反力梁13に上端が固定された試験体Tに対して、鉛直方向と水平方向から力が同時に作用する。このようにして試験体Tに作用した力に対する、試験体Tの応答が、計測される。
【0026】
反力検出器30は、複数本の鉛直動的ジャッキ21、及び複数本の水平動的ジャッキ22により、試験体Tに力を作用させた場合における、試験体Tの応答を計測する。反力検出器30は、一端30aが反力梁13に固定され、他端30bが反力壁3に固定されている。反力検出器30は、ロードセル35を備えており、一端と他端とを結ぶ反力検出器30の検出軸方向における荷重が、ロードセル35により検出される。
図2図5に示されるように、本実施形態においては、反力検出器30として、第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bと、第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dと、が設けられている。
【0027】
第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bは、反力梁13の反力梁本体13aと、反力壁3との間に設けられている。第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bは、反力梁13に対し、第1方向D1の一方側に配置されている。第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bは、平面視したときに、反力梁13の、第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bが設けられていない、第2方向D2に延在する一辺13s(図2参照)の中央部から、反力壁3に向けて所定の角度で広がるように設けられている。第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bの各々は、反力梁13の反力梁本体13aの一辺13sに一端30aが固定され、他端30bが反力壁3に固定されている。特に図5に示されるように、第1反力検出器30A、第2反力検出器30Bの各々の一端30aは、反力梁本体13aに対し、接合部30jを介して、第1反力検出器30A、第2反力検出器30Bの各々が接合部30jを中心に水平軸周りに回転自在となるように接続されている。第1反力検出器30A、第2反力検出器30Bの各々の他端30bは、反力壁3に対し、接合部30kを介して、第1反力検出器30A、第2反力検出器30Bの各々が接合部30kを中心に水平軸周りに回転自在となるように接続されている。これにより、第1反力検出器30A、第2反力検出器30Bに作用する曲げモーメントが低減されている。
また、複数の反力検出器30を反力梁13の中央部から一定の角度をもって放射状に配置することで、反力梁13の変形を介在させず試験体Tの反力を直接計測可能であり、直交方向の反力も同時に計測することができる。さらに、反力梁13を挟んで、複数の反力検出器30を反力梁13の両端に設置することで、反力梁13の平面的な回転挙動を拘束し、かつ偶力を測定することできる。
【0028】
第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dは、反力梁13に対し、第1方向D1の他方側に、すなわち反力梁13の第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bが設けられた側とは反対の側に、配置されている。第3反力検出器30Cは、反力梁13の第1梁部材13bと、反力壁3との間に設けられている。第4反力検出器30Dは、反力梁13の第2梁部材13cと、反力壁3との間に設けられている。第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dは、平面視したときに、互いに平行に延びている。
第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々の一端30aは、第1梁部材13bと第2梁部材13cの、第1方向D1において同じ側の端部に、それぞれ固定されている。特に図5に示されるように、第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々の一端30aは、第1梁部材13b、第2梁部材13cに対し、接合部30mを介して、第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々が接合部30mを中心に水平軸周りに回転自在となるように接続されている。第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々の他端30bは、反力壁3に固定されている。第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々の他端30bは、反力壁3に対し、接合部30nを介して、第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々が接合部30nを中心に水平軸周りに回転自在となるように接続されている。これにより、第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dに作用する曲げモーメントが低減されている。
【0029】
図8は、上記加力試験装置において、試験体に水平力が作用した状態を示す図である。
このような加力試験装置10では、試験体Tは、加振テーブル11の上に設置される。試験体Tの上端は反力梁13で固定される。加振テーブル11には、鉛直動的ジャッキ21、及び水平動的ジャッキ22により、鉛直方向、及び水平方向に同時に力が作用される。例えば、加振テーブル11に対し、試験体Tが支持すべき建物の荷重に相当する力が鉛直動的ジャッキ21により作用される状態としたうえで、水平動的ジャッキ22により加振テーブル11を加振するように、鉛直動的ジャッキ21、及び水平動的ジャッキ22は、操作される。加振テーブル11に力が作用されると、図8に示すように、試験体Tには、水平力Ftが作用する。試験体Tに水平力Ftが作用すると、試験体Tの上端が固定された反力梁13に対し、この水平力Ftが伝達する。
反力梁13は、下端15eが反力床2に対して相対移動不能に設けられているゴム支持材15によって、下方から支持されている。また、反力梁13は、プレストレス力を導入した緊張材17により、支持壁14及び反力床2に対して、鉛直方向には変位不能に設けられている。このため、反力梁13は、反力梁13に伝達した水平力によって、水平方向に移動しようとする。
【0030】
ここで、第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bの各々は、平面視したときに、反力梁13の反力梁本体13aの一辺13sの中央部に一端30aが固定され、反力壁3に向けて所定の角度で広がるように設けられて、他端30bが反力壁3に固定されるように、設けられている。また、第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dは、反力梁13に対し、反力梁13の第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bが設けられた側とは反対の側に、配置されている。第3反力検出器30Cと第4反力検出器30Dの一端30aは、第1梁部材13bと第2梁部材13cの同じ側の端部に、それぞれ固定され、他端30bが反力壁3に固定されている。
このように反力検出器30が設けられることにより、反力梁13の回転や平行移動が抑制される。例えば、反力梁13が回転しようとした際には、第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bのいずれか一方に作用する圧縮力により、あるいは第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dのいずれか一方に作用する圧縮力により、これが抑制される。また、例えば反力梁13が第1方向D1に移動しようとした際には、第1反力検出器30A及び第2反力検出器30B、または第3反力検出器30C及び第4反力検出器30Dのいずれかに作用する圧縮力により、これが抑制される。更に、例えば反力梁13が第2方向D2に移動しようとした際には、第1反力検出器30A及び第2反力検出器30Bのいずれかに作用する圧縮力により、これが抑制される。
このようにして、反力梁13の移動が反力検出器30によって抑制されることで、反力梁13に伝達した水平力は、反力検出器30(第1反力検出器30A、第2反力検出器30B、第3反力検出器30C、第4反力検出器30D)に、圧縮力または引張力として伝達される。反力梁13に伝達した水平力(の大部分)は、反力検出器30に設けられたロードセル35により、第1の水平力F1として検出される。
実際には、第1の水平力F1は、第1反力検出器30A、第2反力検出器30B、第3反力検出器30C、第4反力検出器30Dの各々のロードセル35によって検出された値を基に、演算により検出される。
【0031】
このようにして反力検出器30が第1の水平力Ftを検出するに際し、反力検出器30はこれに作用する力によって、僅かながら圧縮変形または伸長変形し、反力梁13は、この圧縮量、伸長量の分だけ、水平方向に移動する。試験体Tに伝達した水平力のうち、この、反力検出器30の変形及び反力梁13の移動のために消費された水平力は、反力検出器30によっては検出され得ないものである。すなわち、反力検出器30によって検出された第1の水平力F1は、試験体Tに作用し、反力梁13に伝達した水平力とは、完全には一致しない。
ここで、反力梁13はゴム支持材15により、下方から支持されている。ゴム支持材15の下端15eは、支持壁14及び反力床2に対して相対移動不能に設けられているため、反力梁13の水平移動に伴い、ゴム支持材15は、水平方向に変形する。上記のような、反力検出器30の圧縮量、伸長量は、数mm程度の微小なものであるため、反力梁13が水平方向に移動しようとしたとしても、その移動量も、微小なものとなる。加力試験装置10では、このようなゴム支持材15の微小な変形量を、例えばゴム支持材15の近傍に設けられたレーザ変位計(図示無し)で検出することにより、ゴム支持材15が変形することで伝達される第2の水平力F2を取得する。
【0032】
図9は、ゴム支持材の変形量と、ゴム支持材の変形により生じる第2の水平力との関係の一例を示す図である。
ここで、図9に示されるように、ゴム支持材15の変形量と、第2の水平力F2の関係は、ゴム支持材15の変形量が微小であれば、基本的に比例関係となる。このため、水平力を作用させた場合の、ゴム支持材15の上部フランジ15aと下部フランジ15bとの水平方向の相対変形量を、事前の部材実験等により図9のようなゴム支持材15の変形量と、第2の水平力F2の関係との関係を予め把握しておく。そして、実際に加振テーブル11から試験体Tに水平力Ftを作用させたときには、ゴム支持材15に生じる変形量を、レーザ変位計で検出し、検出された変形量を基に、ゴム支持材15によって負担される第2の水平力F2を取得する。
このようにして、試験体Tに伝達した水平力のうち、第1の水平力F1として計測されなかった分が、第2の水平力F2として取得される。
加力試験装置10では、上記のようにして得られた第1の水平力F1と、第2の水平力F2とを合算し、その合算値を、試験体Tに作用する水平力Ftとする。
【0033】
上述したような加力試験装置10は、構造物または当該構造物の構成部材に関する試験体Tに対して、鉛直方向と水平方向から力を同時に作用させ、試験体Tの応答を計測する加力試験装置10であって、反力床2の上方に設けられる複数の鉛直動的ジャッキ21と、鉛直動的ジャッキ21の上方に設置され、上面に試験体Tが固定される加振テーブル11と、試験体Tの上端を固定する反力梁13と、一端22aが反力壁3に固定され、他端22bが加振テーブル11に固定される複数の水平動的ジャッキ22と、一端30aが反力梁13に固定され、他端30bが反力壁3に固定される反力検出器30と、下端15eが反力床2に対して相対移動不能に設けられ、上端15dが反力梁13に接合されて反力梁13を支持するゴム支持材15と、一端17aが反力梁13に固定され、他端17bが反力床2に固定された緊張材17と、を備え、試験体Tに作用する水平力Ftは、反力検出器30で計測される第1の水平力F1と、ゴム支持材15が変形して伝達される第2の水平力F2との合算値である。
このような構成によれば、試験体Tは、加振テーブル11の上に設置される。試験体Tの上端は反力梁13で固定される。加振テーブル11が、鉛直動的ジャッキ21、及び水平動的ジャッキ22により動かされると、試験体Tには、鉛直力に加え、水平力が作用する。試験体Tに作用する水平力Ftは、反力梁13を介し、反力壁3と反力梁13との間に設けられる反力検出器30に、圧縮力または引張力として伝達する。ここで、反力梁13は、下端15eが反力床2に対して相対移動不能に設けられているゴム支持材15によって、下方から支持されており、反力梁13は反力床2に対して相対移動が可能な状態となっているため、この水平力の伝達は、ゴム支持材15によっては阻害されない。このようにして反力検出器30に伝達された水平力は、第1の水平力F1として計測される。
上記の要領で反力検出器30が第1の水平力F1を検出するに際し、反力検出器30は、反力検出器30に伝達する水平力の影響を受けて、僅かながら圧縮変形または伸長変形し、反力梁13は、この圧縮量、伸長量の分だけ、水平方向に移動する。試験体Tに伝達した水平力のうち、この、反力検出器30の変形及び反力梁13の移動のために消費される水平力は、反力検出器30によって第1の水平力F1として計測され得ない。ここで、反力検出器30の圧縮量、伸長量は、微小なものであり、これに伴う反力梁13の移動量、及びゴム支持材15の変形量も、微小なものとなる。ゴム支持材15の変形量とゴム支持材15に作用する水平力の関係は、変形量が微小である初期変形段階においては基本的に比例関係となる。したがって、この関係を予め把握しておけば、ゴム支持材15の変形量を基に、反力梁13に伝達される水平力Ftのうち、第1の水平力F1として反力検出器30によって計測されない部分を、第2の水平力F2、すなわちゴム支持材15が変形して伝達される成分として把握することができる。
こうして検出された、反力検出器30で計測される第1の水平力F1と、ゴム支持材15が変形して伝達される第2の水平力F2とを合算することにより、試験体Tに作用する水平力Ftを、正確に検出することができる。
ここで、第1及び第2の水平力F1、F2は、水平動的ジャッキ22によって直接動かされる加振テーブル11に対して計測されるものではない。したがって、第1及び第2の水平力F1、F2には、加振テーブル11を動かす際の慣性力や、加振テーブル11とこれを支持する部材(基台11aやベアリング11c)との間に作用する摩擦力が含まれない。
また、反力梁13が、反力床2に対し、緊張材17によって接続されているため、反力梁13の鉛直方向の変位は抑制される一方で、水平方向には剛には拘束されていない。このため、ゴム支持材15に作用する水平力は、鉛直方向に緊張材17を通して伝達されにくい。これにより、水平力の計測精度が向上する。
以上が相乗し、試験体Tに作用する水平力を正確に検出することができる。
また、上記のような構成においては、反力梁13を支持するに際し、基本的にはゴム支持材15と緊張材17を設ければ良いため、構成が簡潔なものとなる。
更に、上記のような構成においては、摩擦力と慣性力の影響を受けていないため、水平力の検出をリアルタイムで行うことが可能である。
その結果、試験体Tに作用する水平力Ftを正確かつリアルタイムに検出可能であり、簡潔な構造で実現することができる加力試験装置10を提供することが可能となる。
【0034】
また、ゴム支持材15は、単層のゴム支承、または複数層からなる積層ゴム支承である。
このような構成によれば、単層のゴム支承、または積層ゴム支承であるゴム支持材15は、高い鉛直剛性を有しており、鉛直方向の変形が抑えられる。このため、ゴム支持材に水平力が作用した際に、ゴム支持材15の鉛直方向の変形が抑えられ、ゴム支持材15は、作用した水平力の分だけ、水平方向にスムーズに変形することができる。したがって、第2の水平力F2を、正確に、把握することができる。
【0035】
また、ゴム支持材15は、複数設置され、ゴム支持材15の各々は、隣接した位置に設けられた緊張材17によるプレストレス力で、所定の圧縮応力が作用した状態で拘束されている。
このような構成によれば、緊張材17のプレストレス力により、高い鉛直剛性を有するゴム支持材15が、圧縮応力が作用した状態で拘束されることで、ゴム支持材15の鉛直方向の変位を抑えつつ、ゴム支持材15の面圧依存性を最小化することができる。これにより、ゴム支持材15の水平方向の変形による第2の水平力F2を、安定して計測することができる。
具体的に加力試験装置では、上下方向は、ゴム支持材による高い鉛直剛性とPC鋼より線を用いた高プレストレス力で拘束し、水平方向は低弾性剛性(例えば、鉛直剛性の1/3000程度)を利用して数mm以下の変形を許容することで、ほとんどの水平反力を反力検出器に負担させることができ、ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力はゴム支持材の総剛性にこの部分に生じる微小変形を乗じて算出される。その結果、試験体に作用する水平荷重は、ゴム支持材に生じる第2の水平力と、反力検出器の第1の水平力とを合算値として、正確に、かつ即時に測定することができる。
【0036】
また、反力検出器30は、反力梁13と反力壁3の間に複数配置され、当該反力検出器30にはロードセル35が内蔵され、かつ曲げモーメントを低減させる接合部30j、30k、30m、30nが両端に設けられている。
このような構成によれば、軸力を精度よく測定できるロードセル35を、反力検出器30に内蔵し、さらに、反力検出器30の両端に、曲げモーメントを低減させる接合部30j、30k、30m、30nが設けられることで、反力梁13の変位に基づくロードセル35への曲げモーメントの発生を抑えることができる。
【0037】
また、緊張材17の他端17bは、反力梁13から所定の距離以上離れた下方の位置に固定され、緊張材17の一端17aと他端17bとの間は管17pに挿通されており、管17pの内径Dは、反力梁13の水平変形に伴う緊張材17の水平移動を許容する大きさとなっている。
このような構成によれば、緊張材17に作用する幾何水平剛性が低くなるようにして、反力梁13を水平方向に移動可能としつつ、この移動に伴う緊張材17の変位を許容可能な構成を実現することができる。
【0038】
また、反力検出器30は、第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bを備え、第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bの各々は、平面視したときに、反力梁13の一辺13sの中央部に一端30aが固定され、反力壁3に向けて所定の角度で広がるように設けられて、他端30bが反力壁3に固定されるように、設けられている。
このような構成によれば、第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bを反力梁13の一辺13sの中央部から反力壁3に向けて所定の角度で拡がるように配置することで、反力梁13の変形を介在させず試験体Tの反力を直接計測できることができ、直交方向の反力も同時に計測できる。
【0039】
また、反力梁13は、互いに平行に設けられる第1梁部材13bと第2梁部材13cを備え、反力検出器30は、第3反力検出器30Cと第4反力検出器30Dを備え、第3反力検出器30Cと第4反力検出器30Dは、反力梁13に対し、反力梁13の第1反力検出器30Aと第2反力検出器30Bが設けられた側とは反対の側に、配置され、第3反力検出器30Cと第4反力検出器30Dの一端30aは、第1梁部材13bと第2梁部材13cの同じ側の端部に、それぞれ固定されている。
このような構成によれば、第3反力検出器30Cと第4反力検出器30Dを、第1梁部材13bと第2梁部材13cの同じ側の端部に設置することで、反力梁13の平面的な回転挙動を拘束し、かつ偶力を測定することが可能となる。
【0040】
また、本発明の加力試験装置では、試験体に作用する水平力を、反力検出器で計測される第1の水平力と、ゴム支持材が変形して伝達される第2の水平力との合算値として直接測定する加力試験システムを構築される。このことにより、摩擦力、慣性力が混入しない精度の高い反力時刻歴をリアルタイムで取得する事が可能となる。この加力試験システムを用いることで、試験体に対して加力と同時に応答値が得られるために、その応答値を瞬時に取り込んで構造物の応答を高い精度で推定することができる。
また、本発明の加力試験装置は、下記の特徴を備える。
加力試験装置にあっては、緊張材は反力梁に対する他端を、反力壁のできるだけ離れた位置(鉛直下方)に固定し、その間はゴム支持材の水平変形に伴う緊張材の水平移動を許容し、その緊張材は内径の管で囲まれていることを特徴とする。
加力試験装置にあっては、反力検出器またはその一部は、試験体の設置される反力梁中央に一端を、他端を一定の角度で広げて反力壁に固定した2本の反力検出器を有することを特徴とする。
加力試験装置にあっては、反力検出器またはその一部は、試験体の設置される反力梁両端に一端を、他端を反力壁に固定した2本の反力検出器を有することを特徴とする。
【0041】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の加力試験装置は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、加力試験装置10は、第1方向D1に沿う水平方向に加振テーブル11を加振する水平動的ジャッキ22と、鉛直方向の力を加振テーブル11に作用させる水平動的ジャッキ22と、を備えるようにしたが、これに限られない。これに加え、加力試験装置を、第2方向D2に沿う水平方向に加振テーブル11を加振する、他の水平動的ジャッキを更に設けるように構成して、鉛直方向に力を作用させつつ、第1方向D1、及び第2方向D2の水平2方向に加振テーブル11を加振するように、3軸に同時に力を作用させる構成として実現するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 反力床 22a 一端
3 反力壁 22b 他端
10 加力試験装置(3軸加力試験装置、または2軸加力試験装置)
11 加振テーブル 30 反力検出器
13 反力梁 30a 一端
15 ゴム支持材 30b 他端
15d 上端 30j、30k、30m、30n 接合部ジョイント部材
15e 下端 35 ロードセル
17 緊張材 D 内径
17a 一端 F1 第1の水平力
17b 他端 F2 第2の水平力
21 鉛直動的ジャッキ Ft 水平力
22 水平動的ジャッキ T 試験体
図1
図2
図3
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図9