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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070741
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】射出成形の制御機構など
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20240516BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240516BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240516BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20240516BHJP
   B29C 44/60 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B29C45/18
B29C45/76
B29C44/00 D
B29C44/36
B29C44/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181450
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】511087084
【氏名又は名称】株式会社プラステコ
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】林 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 慎司
(72)【発明者】
【氏名】岩城 志保
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AG20
4F206AP06
4F206AR07
4F206JA04
4F206JD01
4F206JF04
4F206JF21
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN01
4F206JN03
4F206JP11
4F206JP17
4F214AB02
4F214AG20
4F214AP06
4F214AR07
4F214UA08
4F214UB01
4F214UC02
4F214UF01
4F214UF21
4F214UL03
(57)【要約】
【課題】金型内でほぼ均一に発泡する樹脂を射出するための射出成形のための制御機構などを提供する。
【解決手段】射出すべき樹脂に混ぜるべき混合材料を供給する射出成形のための制御機構2であって、射出成型機10のスクリュー17cが所定の計量位置19へ後退することによりスクリューの前方に充填される溶融樹脂の所定時間当たりの樹脂量を含む樹脂量情報6aに基づいて、材料の供給速度を含む供給情報7aを取得する制御部3を備えている、射出成形のための制御機構。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構であって、
前記射出成型機の計量動作中に、前記樹脂の充填流量に関連する充填情報に基づいて、前記材料の供給流量に関連する供給情報を取得する制御部を備えている、射出成形の制御機構。
【請求項2】
前記充填情報が予め登録された1つ以上の時間毎に取得され、前記取得された充填情報毎に前記供給情報が取得されている、請求項1記載の射出成型の制御機構。
【請求項3】
前記スクリューが計量のため後退する初期において、予め登録された計量初期時間又は前記スクリューの初期後退量が設定されており、
前記計量初期時間中又は初期後退量の動作中に、前記材料を供給する予め登録された初期供給流量が設定されている、請求項1又は2に記載の射出成形の制御機構。
【請求項4】
前記充填情報が、前記射出成形機のスクリューの位置に関する位置情報に基づいている、請請求項1、2若しくは3のいずれかに記載の射出成形の制御機構。
【請求項5】
前記材料が、不活性ガスで、且つ、超臨界流体である、請求項1、2、3若しくは4のいずれかに記載の射出成形のための制御機構。
【請求項6】
請求項1、2、3、4若しくは5のいずれかに記載の制御機構と、
前記制御機構からの前記供給情報に基づいて、前記材料を供給する混合材料供給機とを備えている、射出成形装置。
【請求項7】
請求項6記載の射出成型装置と、
その射出成型装置により前記材料が供給される射出成形機とを備えている、射出成形システム。
【請求項8】
射出成形機に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構に用いるプログラムであって、
コンピュータに、
計量のため後退する射出成形機のスクリューの位置を含む位置情報を取得させ、
前記位置情報に基づいて前記樹脂の充填流量に関連する充填情報を取得させ、
前記充填情報及び予め定めた条件に基づいて、前記材料の供給流量を含む供給情報を演算させる、プログラム。
【請求項9】
射出成形機の計量動作において、充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給して調整される射出材の調整方法であって、
前記計量動作中の予め登録された時間で、前記樹脂の充填流量に関連する充填情報を取得し、
前記充填情報に対応した供給流量に関連する供給情報に基づいて前記材料を供給する、射出材の調整方法。
【請求項10】
請求項9記載の射出材の調整方法により、前記射出材を調整し、
前記射出材を金型内に射出する、成形体の製造方法。
【請求項11】
射出成形機の計量動作において、充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給して調整される射出材を金型に射出して成形される成形体であって、
前記樹脂の充填速度に関連する充填情報が前記計量動作中の所定の時間間隔で取得されており、
前記充填情報毎に対応する供給速度に関連する供給情報が取得されており、
前記供給情報に基づいて前記材料が供給された射出材が調整されており、
前記調整された射出材が射出されることにより成形されている、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形のための制御機構などに関する。さらには樹脂を発泡させるための不活性ガスを射出成形機に供給するための射出成形のための制御機構などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吹込成形剤を重合系発泡材の加工システム内に導入する吹込成形剤の供給システムが開示されている。その吹込成形剤の供給システムは、例えば、供給源から押出機バレルに又は迂回通路を通して選択的に、吹込成形剤を送る、というものである。
【0003】
特許文献2には、スクリュー回転速度の設定値に拘わらず、溶融材料に注入されて溶解される超臨界流体の量(溶解度)を一定とする射出成形装置が開示されている。その射出成形装置は、スクリュー回転速度設定値と、材料の種類や超臨界流体の種類などに応じた係数を設定する係数設定部により設定された係数とを乗じて超臨界流体の流量設定を決定し、かつ、流量設定手段に再設定する流量再設定部とを備えている、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003-525780号公報
【特許文献2】特開2003-154526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、溶融樹脂に添加剤を混ぜた射出材を金型内に射出する射出成形のシステムがある。このシステムでは、射出成型機の計量動作中に、シリンダ内に充填される樹脂に対して、一定の割合で添加剤を混合している。しかし射出成形機のスクリューの回転数や、スクリューの後退速度などの変化により樹脂の充填速度は変動する。このため充填される樹脂において、部分的に、添加剤の割合に濃淡が生じる場合がある。濃淡が生じた射出材を金型に射出すると、成形品中の添加材の分散を不均一にする一因になり得る。
【0006】
例えば、発泡樹脂の場合、射出すべき樹脂において、部分的に、ガスの添加の割合に濃淡があると、射出された樹脂が金型内で不均一に発泡する一因になり得る。このため最も発泡している部位の強度低下を考慮して、射出する樹脂の全体の発泡倍率を下げることが行われている。これは発泡成形された製品の軽量化を阻害する一因となる。
【0007】
そこで本発明は、射出しようとする樹脂に対応した割合で混ぜるべき材料を混ぜるための射出成形の制御機構、射出成型装置、射出成形システム、制御機構に用いるプログラム及び射出材の調整方法、さらに射出しようとする樹脂に対応した割合で混ぜるべき材料を混ぜた成形体の製造混合及び成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の射出成形の制御機構は、射出成形機に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構であって、前記射出成型機の計量動作中に、前記樹脂の充填速度に関連する充填情報に基づいて、前記材料の供給速度に関連する供給情報を取得する制御部を備えていることを特徴としている。
【0009】
「充填情報」とは、射出成形機のシリンダ内に充填される樹脂の充填流量を含み、充填流量に関連する情報であり、所定時間当たりの樹脂の充填量、所定樹脂量の充填に要した時間など充填流量に換算できる量を含む概念である。例えば、ここで流量とは質量流量及び体積流量を含む。
例えば充填情報として、樹脂の充填流量をスクリューの後退速度に基づいて算出する場合には、充填情報は、スクリューの後退速度、さらにはスクリューの後退速度に関連する情報を含み、所定時間経過後のスクリューの移動距離、所定距離移動にかかった時間などスクリューの後退速度に換算できる量を含む概念である。
さらに例えば充填情報として、射出成形機に樹脂を供給する樹脂貯留部のホッパの重量変化速度を用いる場合は、充填情報は、ホッパの重量変化速度、ホッパの重量変化速度に関連する情報を含み、所定時間経過後の重量変化、所定重減少にかかった時間などホッパの重量変化速度に換算できる量を含む概念である。
混ぜるべき材料とは、樹脂に混ぜられる、気体、液体、固体の添加材などの材料である。
【0010】
「供給情報」とは、混ぜるべき材料の供給流量、さらには供給流量に関連する情報を含み、所定時間経過後の供給量変化、所定の供給量を供給するのにかかった時間などの供給流量に換算できる量を含む概念である。
【0011】
(2)このような射出成形の制御機構は、前記充填情報が予め登録された1つ以上の時間毎に取得され、前記取得された充填情報毎に前記供給情報が取得されているのが好ましい。
【0012】
(3)また前記スクリューが計量のため後退する初期において、予め登録された計量初期時間又は前記スクリューの初期後退量が設定されており、
前記計量初期時間中又は初期後退量の動作中に、前記材料を供給する予め登録された初期供給流量が設定されているのが好ましい。
【0013】
(4)また前記充填情報が、前記射出成形機のスクリューの位置に関する位置情報に基づいているのが好ましい。
【0014】
「位置情報」とは、例えば、スクリューの位置に関連する情報であり、スクリューの後退量、スクリューの位置の測定値およびそれに換算できる量を含む概念である。
【0015】
(5)また、前記材料が、不活性ガスで、且つ、超臨界流体であるのが好ましい。
【0016】
(6)本発明の射出成形装置は、上述の制御機構と、前記制御機構からの前記供給情報に基づいて、前記材料を供給する混合材料供給機とを備えていることを特徴としている。
【0017】
(7)本発明の射出成形システムは、上述の射出成型装置と、その射出成型装置により前記材料が供給される射出成形機とを備えていることを特徴としている。
【0018】
(8)本発明のプログラムは、射出成形機に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構に用いるプログラムであって、コンピュータに、計量のため後退する射出成形機のスクリューの位置を含む位置情報を取得させ、前記位置情報に基づいて前記樹脂の充填速度に関連する充填情報を取得させ、前記充填情報及び予め定めた条件に基づいて、前記材料の供給速度を含む供給情報を演算させることを特徴としている。
【0019】
(9)本発明の射出材の調整方法は、射出成形機の計量動作において、充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給して調整される射出材の調整方法であって、前記計量動作中の予め登録された時間で、前記樹脂の充填流量に関連する充填情報を取得し、前記充填情報に対応した供給流量に関連する供給情報に基づいて前記混合を供給することを特徴としている。
【0020】
(10)本発明の成形体の製造方法は、上述の射出材の調整方法により、前記射出材を調整し、前記射出材を金型内に射出することを特徴としている。
【0021】
(11)本発明の成形体は、射出成形機の計量動作において、充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給して調整される射出材を金型に射出して成形される成形体であって、前記樹脂の充填速度に関連する充填情報が前記計量動作中に所定の時間間隔で取得されており、前記充填情報毎に対応する供給速度に関連する供給情報が取得されており、前記供給情報に基づいて前記材料が供給された射出材が調整されており、前記調整された射出材が射出されることにより成形されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の射出成形の制御機構、射出成型装置、射出成形システム、制御機構に用いるプログラム及び射出材の調整方法は、混ぜるべき材料の割合に濃淡が生じにくい射出材を得ることができる。さらに成形体の製造混合及び成形体は、混ぜるべき材料の割合に濃淡が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は計量時間中における樹脂の充填流量及び混ぜるべき材料の供給流量の一例を示すグラフである。
図2図2は射出システムの機能の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は制御部のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図4図4は制御部の処理の流れの一実施形態を示すフローチャートである。
図5図5は設定値のテーブルのデータ構造の一例を示す概略図である。
図6図6は制御部の処理の流れの一実施形態を示すフローチャートである。
図7図7は樹脂がシリンダ内に充填される様子を示す概略図である。
図8図8は樹脂量に応じて混ぜるべき材料が供給される様子を示す概略図である。
図9図9は混合材料供給機のフローを示す概略図である。
図10図10は射出材の調整方法及び成形体の製造方法を示す概略図である。
図11図11は成形体及び従来の成形体のそれぞれの発泡倍率の分布を模式的に表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1.概略説明]
まず図1及び図2を用いて、本発明の射出システムの作用を従来の射出システムと比較しながら概略的に説明する。
図1には、射出成形機10のシリンダ18a(図2参照)の計量時間中(計量時間19)における、充填される樹脂の充填情報(充填流量)6aと、樹脂に混ぜるべき材料体(ガス)の供給情報(供給流量)7aとを示している。図に示すように、樹脂の充填流量6aには、通常、変動がある。この変動は、例えば、ホッパ18bからの樹脂の落下量、射出成形機のスクリュー17cの回転速度の変化等に一因がある傾向にある。
【0025】
図1の上方の図は、例えば、計量時間19中、ガスの供給流量7aを一定に調整した他の射出システムの様子を示す概略図である。
例えば、充填流量6aが小さい部位(図1の符号A参照)では、充填された樹脂量に対して、供給されたガス量が多い。このため部位Aに起因して、気泡が拡大する部分を有する成形品が成形される傾向にある(符号Aの上方の成形体の概略図参照)。一方で、充填流量6aが大きい部位(図1の符号B参照)では、充填された樹脂量に対して、供給されたガス量が少ない。このため部位Bに起因して、破泡する成形品が成形される傾向にある(符号Bの上方の成形体の概略図参照)。
【0026】
また充填流量6aの変動に起因して、予定した樹脂量の充填が早く終了する場合がある。その場合、ガスの供給流量7aは一定であるため、充填された樹脂量に対して、予定した割合のガス供給量が混合できない。このため、樹脂量に対応するガス供給量を早めに全部供給してしまうことが行われている。例えば、大きめのガスの供給流量で、70~90%の樹脂の充填で、予定されたガス供給量を全部供給するように設定される。
【0027】
また樹脂の充填の初期(図中の符号Dの時間)においては、樹脂の充填流量6aが安定しない傾向にある。例えば、樹脂の充填流量6aが速くなったり、遅くなったりして、流量の振れ幅が大きい。振れ幅が大きいので、樹脂の充填流量6aに対応したガスの供給流量7aで混合するのが難しい傾向にある。
【0028】
図1の下方の図は、本発明の射出システムの様子を示す概略図である。図に示しているように、充填流量6aに対応した割合の供給流量7aでガスが供給されている。例えば、充填流量6aが大きい箇所では供給流量7aも大きく、充填流量6aが小さい箇所では供給流量7aも小さい。また樹脂の充填の最後まで、充填速度に対応した供給速度でガスを供給している。
このため、ほぼ均一の気泡径の成形品が成形される傾向にある(グラフの上方の図参照)。以下に、充填流量6aに対応した割合の供給流量7aでガス(混ぜるべき材料)を供給する本発明の射出システムについて詳述する。
【0029】
2.各構成の説明
(射出システム1、射出成形装置48)
図2の機能ブロック図を用いて本発明の一実施形態に係る射出システム(以下システムという)を説明する。図2に示しているシステム1は、射出成形機10と、射出成形機10内で溶融した樹脂に混ぜるべき材料を供給する混合材料給機20と、射出成形のための制御機構2とを備えている。本実施系形態では、混合材料供給機20はガスを供給するガス供給機である。ガス供給機20は、ガスの供給量を調整するための流量調整弁23(図9参照)を備えている。なお図では射出成形機10は金型14と一体であるが、射出成型機10が金型14を備えず別体としてもよい。
また制御機構2と、制御機構2からの供給流量7aに基づいて、混ぜるべき材料を供給するガス供給機(混合材料供給機)20とは、射出成形装置48を構成する。なおガス供給機20については、後で詳述する。
【0030】
(制御機構2)
制御機構2は、射出成形のための機構であり、射出すべき樹脂に混ぜるべきガスを供給する。本実施形態では、混ぜるべきガスとして、超臨界流体状態にされた不活性ガスの窒素ガスが用いられている。
本実施形態では、例えば、制御機構2は、制御部3と、位置取得部4と、記憶部31とを備えている。
【0031】
(制御部3)
制御部3は、例えば主として、位置取得手段5と、充填取得手段6と、演算手段7とからなる。制御部3は、本実施形態では、さらに信号取得手段8と、設定値取得手段9とを備えている。
【0032】
(位置取得部4)
位置取得部4は、本実施系形態では、ロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ4は、スクリュー17cを前進・後退させるモータの回転量を検出している。本実施形態では、モータの回転量を位置情報4aとして取得している。
エンコーダは、従来公知のものである。例えば、機械式・光学式・磁気式・電磁誘導式のものがある。エンコーダは、回転していることを物理的な変化量としてセンサ素子で検知し、回転・角度情報を電気信号として外部に発信する。得られたエンコーダの信号に基づいて、少なくともモータの回転量の情報が得られる。さらには回転速度、回転方向若しくは回転位置の情報を得てもよい。
なお、その他の位置取得部4として、スクリュー17cの位置を、例えば、磁力や電流の変化により検知する従来公知のセンサを用いてもよい。
なおロータリエンコーダ4などの位置情報部は、射出成形機10に内蔵されているものを用いてもよい。
【0033】
(位置取得手段5)
位置取得手段5は、位置取得部4により所定の時間間隔で位置情報4aを取得する。本実施形態では、例えば、0.1~0.5sの所定時間間隔(サンプリング時間間隔)で位置情報4aを取得している。位置取得手段5は、実施形態では工程S1(図6参照)が対応する。
【0034】
(位置情報4aの取得のタイミング)
位置情報4aの取得のタイミングは予め記憶部31(図3参照)に登録されている。本実施形態では、サンプリング時間間隔39e(図5参照)毎に位置情報4aが取得される。例えばサンプリング時間間隔39eは任意に設定できるのがよい。
その他、サンプリングする時間(サンプリング時間)39iを予め記憶部31に記憶し、計量中の任意の時間に位置情報4aを取得してもよい。サンプリング時間39iとしては、計量の始まり時間0を含んでもよい。
【0035】
(充填取得手段6)
充填取得手段6は、スクリュー17cの現在位置を含む位置情報4aに基づいて充填流量6aを取得する。本実施形態では、位置情報4aに加え、シリンダ半径などの設定値からなる条件5a(後述する)に基づいて、充填流量6aを取得する。充填取得手段6は、実施形態では工程S2(図6参照)が対応する。
【0036】
(演算手段7)
演算手段7は、充填流量6a及び予め定めた条件5b(後述する)に基づいて、ガスの供給流量7aを演算し取得する。取得した供給流量7aはガス供給装置20に送られる。演算手段7は、実施形態では工程S3(図6参照)が対応する。
【0037】
(信号取得手段8、型閉信号11a、計量中信号11a)
信号取得手段8は、射出成形機10からの信号を取得する。信号としては、本実施形態では、例えば、金型14の型閉信号11a及び溶融樹脂が計量中であることを示す計量中信号11bがある。
【0038】
(型閉信号11a)
型閉信号11aは、金型14が閉じていることを示す信号である。例えば、開いている金型14を次の成形品を成型するために金型14を閉じたことを示す信号である。本実施形態では、例えば、金型14が閉じ始めたことを示す信号を用いてる。なお閉じ終えたことを示す信号でもよい。
【0039】
(計量中信号11b)
計量中信号11bは、計量時間であることを示す信号である。本実施形態では、例えば、ロータリエンコーダ4の回転方向がスクリュー17cを後退させる方向であることを示す信号を用いている。なお、スクリュー17cの後退をシリンダ18aの外側からセンサ等で検出して計量中信号11bとしてもよい。
【0040】
(設定値取得手段9)
設定値取得手段9は各種の設定値を取得する。取得した設定値は、後述する記憶部31に記憶される。本実施形態では、設定値取得手段9は、タッチセンサ、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどの入力端末から作業員の手入力により設定値を取得している。
なお、インターネット、イントラネットなどの回線を通じて、他のサーバなどからダウンロードして設定値を取得してもよい。
【0041】
(樹脂41)
樹脂41の材料としては、熱可塑性樹脂材料が挙げられる。熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスルフェンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ABS、ASAおよびポリカーボネイトなどである。
【0042】
(混ぜるべき材料42)
本実施形態では、混ぜるべき材料として超臨界状態の窒素ガスを用いている。二酸化炭素、不活性ガスなどの気体(ガス)を用いることができ、さらにはそれらのガスを超臨界状態にしたものを用いることができる。また混合材料供給機20として、気体、液体、固体を供給することができる。固体としては粉末状にされたものが好ましい。例えば、架橋剤、分岐材、可塑剤、フィラー類、核剤などの物性改良剤を用いることができる。
【0043】
[3.ハードウェア構成]
(制御機構2のハードウェア構成)
次に図3を用いて、制御機構2のハードウェア構成を説明する。
本実施形態の制御機構2は、例えばパソコンを用いている。図3に示すように、パソコンはCPU30を備えたものである。そのCPU30には、メモリ(記憶部)31と、記録デバイス32などを接続/読み込むための接続ポート33と、ネットワークを介して外部と通信するための通信回路34とがバスライン35を介して接続されている。メモリ31には、条件5a、5b、データベース39、さらには本発明のシステムを処理するためのプログラム36a、36b、ブラウザプログラム37、さらにはOS38(オペレーティングシステム)が記録されている。
【0044】
本実施形態では、プログラム36a、36bは、OS38およびブラウザプログラム37の機能を利用して協働して動作する。なおプログラム36a、36bとして、ブラウザプログラム37、OS38を利用せず、単独で動作するようにしてもよい。条件5a、5b、プログラム36a、36b、ブラウザプログラム37およびOS38は、例えばダウンロードにより通信回路34を介して、または接続ポート33を通してデバイス32によりメモリ31にインストールされる。
【0045】
上述したハードウェア構成では、図2に示す機能を、例えば、CPU30とプログラム36a、36bを用いて実現するようにしているが、その一部または全部をマイコンなどの論理回路、あるいは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いてシーケンス制御してもよい。
【0046】
[4.プログラム]
(射出システム1の初期動作のフローチャート)
図4は制御機構2で用いられるプログラムの処理の流れの一実施形態を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、主として、射出成形の準備段階のプログラム36aの処理の流れを示している。例えば、射出が行われた後、再び計量が始まるまでの間の処理の流れである。
【0047】
(R1):制御機構2のCPU30(図3参照)は、型閉信号11a及び計量中信号11bをそれぞれ取得していない場合に、ガス供給装置20の後述する流量調整弁23に流量としてゼロの値を送信する(弁を閉じる)。
このとき射出成形機側の二方弁24及び大気解放側の二方弁24b(図9参照)は閉じている。
なお、金型14が開いている信号及びスクリュー17cが後退してないことを示す信号を取得してもよい。
【0048】
(R2):型閉信号11aを取得し、且つ、計量中信号11bを取得していない場合、ガス供給装置20に起動流量39a(図5参照)を送信する。起動流量39aとは、溶融樹脂にガスを供給する前に流量調整弁23に流す流量である。ガス供給の始めにおいて、流量調整弁23の応答性は低い傾向にある。適切な流量に調整するのに、例えば本実施形態では、1秒程度の遅れが発生する。このため金型14の閉じ始めたことを示す信号11aを取得して、予め所定の流量を流量調整弁23に流しておく。金型14が閉じ始め、金型14が閉じ、油圧などで金型14が締結されると、計量が開始される。計量の開始と共に、適切なガス流量に調整することができる。なお前記応答の遅れは1秒以内の場合もあるし、1秒を超える場合もある。
また本実施形態では、大気解放側の二方弁24b(図9参照)を開けて、樹脂への供給前に流したガスは大気に開放している。起動流量39aは、例えば、記憶部31のデータベース39に記憶されている。
【0049】
(データベース39)
図5は設定値を記憶しているデータベースの概略図である。図5に示しているデータベース39は、予め定められた設定値を記憶している。本実施形態では、データベース39の設定値は、起動流量39a、計量初期流量39b、計量初期時間39c、シリンダ半径39d、サンプリング時間間隔39e、樹脂密度39f、ガス添加率39g、初期後退量39h及びサンプリング時間39iからなる。これらの設定値は関連する事項と併せて順次説明する。
【0050】
図4に戻って、
(R3):型閉信号11aを取得し、計量中信号11bを取得し、計量初期時間39c内である場合、ガス供給装置20に計量初期流量39b(図5参照)を送信する。
計量初期時間39cとは、計量の初期段階、すなわちスクリュー17cの後退初期の予め設定した所定の時間のことである(図1の符号D参照)。スクリュー17cの後退の初期は背圧が安定しない傾向にある。背圧が安定しないと、スクリュー17cの後退量、例えば樹脂の充填量は安定しない傾向にある。計量初期時間39c中はスクリュー17cの後退量に係わらず、流量調整弁23には計量初期流量39bが設定される。計量初期流量39bは、1回の射出分の樹脂量と計量時間19から算出される平均のガス供給流量である。
例えば、計量初期時間39cとしては、計量時間19の全体の50%より小さいのが好ましく、好ましくは30~20%以下であるのが好ましい。
なお計量初期時間39cの代わりに、スクリュー17cの初期後退量39h(図5参照)を設定してもよい。例えば初期後退量39hを設定した場合、スクリュー17cが初期後退量39hの動作中は、計量初期流量39bでガスを供給する。
例えば、初期後退量39hとしては、計量位置19aまでの後退量の全体の50%より小さいのが好ましく、好ましくは30~20%以下であるのが好ましい。
【0051】
(R4):型閉信号11aを取得し、計量中信号11bを取得し、計量初期時間39cに到達した、又は、過ぎた場合、樹脂の充填流量(サンプリング時間間隔39eの樹脂の充填量)に基づいて、ガス供給装置20にガスの供給流量を送信し、ガスを供給する処理に移行する(図6参照)。
【0052】
(射出システム1の計量動作のフローチャート)
図6は制御機構2で用いられるプログラムの処理の流れの一実施形態を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、主として、サンプリング時間間隔毎の樹脂の充填量に応じた量のガスを供給するためのプログラム36bの処理の流れを示している。
【0053】
ここから説明を容易にするために図7を加えて説明をする。図7には計量動作中にあるスクリュー17cが記載されている。シリンダ18aの前端(図の左方)には金型14が配置されている。スクリュー17cはシリンダ18a内で後退(図の右方)している。樹脂は、シリンダ18aの前側の壁とスクリュー17cの前端との間の空間に充填される。図中の横軸は、シリンダ18aの前端を起点としたスクリュー17cの後退する距離である。距離Lは計量位置19aに相当する。その下方の横軸は、スクリュー17cが後退を始めてからの時間を示している。スクリュー17cが計量位置19aに到達する時間が計量時間19である。スクリュー17cの後退速度は計量中に変動するので、計量時間19の長さは射出毎に必ずしも同じにはならない。なお同じ場合もある。
図ではスクリュー17cが時間t(n+1)において、距離L(n+1)の位置にある。なお二点鎖線はサンプリング時間間隔前においてスクリュー17cが時間t(n)において、距離L(n)の位置にあることを示している。
【0054】
ここで、添え字nは0から始まる自然数である。例えばt(0)はスクリュー17cの後退が始まる時間である。例えば時間t(n+1)は、n+1番目のサンプリング時間を示している。時間t(n)は、n番目のサンプリング時間を示している。ΔT(n+1)は、時間t(n+1)と時間t(n)との差である。
また距離L(n+1)及びL(n)は、それぞれ時間t(n+1)及び時間(n)におけるスクリュー17cの位置をそれぞれ示している。ΔL(n+1)は、L(n+1)とL(n)との差である。ΔL(n)は、サンプリング時間間隔ΔT(n)におけるスクリュー17cの後退量に相当する。
【0055】
(S1):制御機構2のCPU30(図3参照)は、後退しているスクリュー17cの位置情報4aを取得する。具体的には、時間t(n)及び時間(n+1)におけるスクリュー17cの距離L(n)及びL(n+1)をそれぞれ取得する。
【0056】
(S2):充填流量6aを取得する。充填流量6aは、時間t(n)、t(n+1)秒後の位置情報4a、4aに加え、条件5aに基づいて算出される。条件5aは、データベース39(図5参照)から選択される設定値及び位置情報4aを代入するための数式からなる。
【0057】
(充填流量6aの演算)
本実施形態では、例えば、データベース39(図5参照)からシリンダ半径39d、サンプリング時間間隔39e、樹脂密度39fを取得する。予め登録された数式に基づいてスクリュー17cの後退量L(n)までのシリンダ18aの容積を計算する。算出したシリンダ18aの容積に樹脂密度39fを乗じて、後退量L(n)までにシリンダ18aに計量されている樹脂量m(n)を算出する。
前述したのと同じ算出方法で時間t(n+1)における樹脂量m(n+1)を取得する。
さらに樹脂量m(n+1)から樹脂量m(n)を減じて、樹脂量ΔM(n+1)を算出する。樹脂量ΔM(n+1)は時間t(n)~t(n+1)における樹脂の充填量に相当する。
次いで樹脂量ΔM(n+1)をサンプリング時間間隔39e(ΔT(n+1))で除する。これにより充填流量6aとして、時間t(n)~t(n+1)における充填流量6a(n+1)を取得する(図8参照)。
【0058】
図8はサンプリング時間間隔ΔT毎の充填流量6a及び供給流量7aを示している。横軸は時間tである。左方の縦軸は充填流量6aを、右方の縦軸は供給流量7aである。二点鎖線は充填流量6a、点線は供給流量7aのそれぞれの変動の様子を概略的に示している。図に示しているように、サンプリング時間間隔ΔT毎に充填流量6aが演算される。充填流量6a(n+1)は、サンプリング時間間隔ΔT(n+1)における充填流量を示している。ガスの供給流量7a(n+2)は、サンプリング時間間隔ΔT(n+2)における供給流量を示している。
【0059】
(S3):ガスの供給流量7a(n+1)を演算する。ガスの供給流量7a(n+2)は、充填流量6a(n+1)及び予め定めた条件5bに基づいて演算する。条件5bは、データベース39(図5参照)から選択される設定値及び充填流量6a(n+1)を代入するための数式からなる。本実施形態では、例えば、データベース39から設定値としてガス転嫁率39fを取得する。樹脂の充填流量6a(n+1)にガス転嫁率39f(図6参照)を乗じて、次のサンプルング時間間隔ΔT(n+2)におけるガスの供給流量7a(n+2)を算出する。
【0060】
(S4):取得したガスの供給流量7a(n+2)は、ガス供給装置20に送信される。時間ΔT(n+2)において、ガス供給装置20は取得したガスの供給流量7a(n+2)のガスを供給する。
【0061】
スクリュー17cが計量位置19aまで後退すると、スクリュー17cの後退及び回転が終了する。またガス供給装置20はガスの供給を停止する。本実施形態では、例えば、ガスの供給を停止すべく、二方弁24(図9参照)が閉じられ、大気解放側の二方弁24bが開けられる。
【0062】
(最後のサンプリング時間間隔ΔT(e))
計量時間19に到達する最後のサンプリング時間間隔を符号ΔT(e)で示す。添え字eは最後を意味する。サンプリング時間間隔ΔT(e)は、前のサンプリング時間間隔ΔT(e-1)よりも短い場合がある。本実施形態では、サンプリング時間間隔ΔT毎に樹脂の充填流量6aに基づいてガスを供給流量7aで混合しているので、スクリュー17cが計量位置19aに到達するまで、充填流量6aに対応したガスを供給することができる。
【0063】
(最初のサンプリング時間間隔ΔT(1))
スクリュー17cの後退の初期に、背圧が安定する傾向にあるなら、最初のサンプリング時間間隔ΔT(1)の供給流量7a(1)として、前記平均のガス供給流量(計量初期流量39b)を供給してもよい。そしてサンプリング時間間隔ΔT(2)から充填流量(1)に基づいて供給流量7a(2)を演算し、ガスを供給してもよい。
【0064】
(サンプルング時間間隔39e、サンプリング時間39iのその他)
サンプルング時間間隔39eは一定でなくともよい。例えば、スクリュー17cの背圧が安定している区間では間隔を拡げたり、安定していない区間で狭めたりしてもよい。なおサンプリング時間間隔39eを拡げたり、狭めたりする設定ではなく、サンプリング時間39iを個別に設定し、結果としてサンプリング時間間隔39eを拡げたり、狭めたりしてもよい。
【0065】
(充填流量6aの算出のその他)
充填流量6aの算出に用いる位置情報4aは、2点以上の任意のサンプリング時間39iから取得できる。それらのサンプリング時間39iは隣り合っていなくてもよい。この場合、サンプリング時間間隔39eで取得した全てのサンプリング時間39iにおける位置情報4a等のデータを用いなくてもよい。または演算に用いるサンプリング時間39iを予め記憶部31に登録しておいてもよい。
【0066】
(供給流量7aの演算のその他)
供給流量7aの演算に用いる充填流量6aは、2つ以上の任意の充填流量6aから取得できる。それらの充填流量6aは隣り合っていなくてもよい。
【0067】
[5.射出成形機]
(射出成形機10)
図2戻って、本発明の射出システム1に用いる射出成形機10の一例を説明する。射出成形機10は、メインフレーム10aの長さ方向に型開閉装置11と射出装置12を対向して搭載している。本実施形態の射出成形機10は電動モータ式の機構を用いている。
【0068】
(型開閉装置11)
型開閉装置11は、主として、ホルダ13と、ホルダ13に設けられる金型14と、ホルダ13を閉じる開閉機構15とからなる。ホルダ13は、固定ホルダ13aと、可動ホルダ13bとからなる。可動ホルダ13bは、開閉機構15により可動する。開閉機構15は、固定ホルダ13aに固定された開閉サーボモータ15aと、開閉サーボモータ15aにより回転するボールネジ15bと、可動ホルダ13bに固定されたボールネジナット(図示していない)とからなる。本実施形態では、開閉機構15は上下に2つ設けられている。なお1つ又は3つ以上設けてもよい。3つ以上設ける場合は、等間隔に設けるのがよい。
開閉サーボモータ15aを駆動することにより、ボールネジ15bが回転し、可動ホルダ13bが固定ホルダ13aに近づく又は離れる方向(前後方向)に移動する。本実施形態では、可動ホルダ13bが移動して金型14を閉じた後、図示しない油圧機構等により金型14は締結される。
例えば本実施形態では、開閉サーボモータ15aが金型14を閉じる方向に回転するのを検知した信号を型閉信号11aとしている。
【0069】
(射出装置12)
射出装置12は、ベース12aと、ベース12aに固定されるスクリュー移動機構16と、スクリュー移動機構16により移動するスクリュー機構17と、スクリュー機構17に樹脂材料を供給する材料供給機構18とからなる。
【0070】
(スクリュー移動機構16)
スクリュー移動機構16は、スクリュー機構17のスクリュー17cを金型14に近づく又は離れる方向(前後方向)に移動させる機構である。スクリュー移動機構16は、例えば、ベース12aに設けられる射出用サーボモータ16aと、射出用サーボモータ16aにより回転駆動されるボールネジ16bと、ボールネジ16bに螺合するボールネジナット16cとからなる。
【0071】
(スクリュー機構17)
スクリュー機構17は、ベース12aにガイドされて前後方向に移動自在な移動部17aと、移動部17aに設けられた計量用サーボモータ17bと、計量用サーボモータ17bにより回転するスクリュー17cとからなる。
移動部17aにはボールネジ16bが固定されている。このため射出用サーボモータ16aの回転により移動部17aは前後方向に移動する。また移動部17aには、スクリュー17cに加えられる樹脂圧を検出するロードセルなどの圧力センサ17dが設けられている。
【0072】
(材料供給機構18)
材料供給機構18は、ベース12aに設けられたシリンダ18aと、シリンダ18a内に樹脂材料を供給するホッパ18bとからなる。シリンダ18a内には、スクリュー17cが挿通している。スクリュー17aはシリンダ18a内で回転自在で、且つ、前後方向に移動自在である。スクリュー17cの外周には図示しないヒータが設けられている。
【0073】
(射出成形機10の計量運転)
計量用サーボモータ17bを回転駆動する。スクリュー17cの回転に伴って樹脂材料がホッパ18bからシリンダ18a内に自然落下する。ホッパ18bから供給され、シリンダ18a内に充填された樹脂材料は、スクリュー17cの回転によりスクリュー17cの先端側に移送される。移送の過程で、ヒータの発熱及びスクリュー17cの回転に伴う摩擦熱や剪断熱により、樹脂材料は溶融される。溶融された樹脂は、シリンダ18aの先端部に貯えられる。このとき、スクリュー17cが所定の樹脂圧(背圧)を受けるように、移動部17aの後退速度が射出用サーボモータ16aにより制御される。
【0074】
(射出成形機10の射出運転)
貯えられた溶融樹脂は、スクリュー17cを前進して射出される。このとき、所定の樹脂圧(射出圧及び保圧)になるように、移動部17aの前進速度が射出用サーボモータ16aにより制御される。
【0075】
(シリンダ18a及びスクリュー17cの実施例)
本実施形態で用いたシリンダ18aの直径は110mmである。またスクリュー17cの全長は550mmである。スクリュー17cの全長に対して成形で使用している長さは、60.2~61.3mmである。
【0076】
[6.ガス供給機]
(ガス供給機20)
図9はガス供給機のフローを示す概略図である。図に示しているガス供給機20は、主に、窒素ガスの供給源であるボンベ21と、ボンベ21から供給される窒素ガスに圧力を加えるブースターポンプ22と、ブースターポンプ22から得られる窒素ガスの流量を調整する流量調整弁23と、射出成形機10へ通じる二方弁24とからなる。
【0077】
ボンベ21には逆止弁21aを介して三方弁21bが設けられている。ボンベ21は、三方弁21bを介してブースターポンプ22側の流路に連通している。
ブースターポンプ22の一次側には減圧弁25が設けられ、二次側にはリリーフ弁26が設けられている。またブースターポンプ22の一次側及び二次側でリリーフ弁26、26の下流には、圧力センサ27、27がそれぞれ設けられている。
流量調整弁23の一次側には減圧弁25が設けられ、二次側には背圧調整弁28が設けられている。また流量調整弁23の一次側と、流量調整弁23の二次側の背圧調整弁28の下流とには圧力センサ27、27がそれぞれ設けられている。
また射出成形機10へ通じる二方弁24の二次側には逆止弁24aが設けられてる。また二方弁24の一次側には大気へ解放するための二方弁24bが設けられている。また減圧弁25、25の手前にはフィルタ29、29がそれぞれ設けられている。
ブースターポンプ22、流量調整弁23、二方弁24、減圧弁25、圧力センサ27及び背圧調整弁28などの装置は、制御機構2と電気的に連結されている。制御機構2は、装置から得られる検出値、弁の開閉の情報を取得できる。また制御機構2は前記装置の弁の開閉、開度などを指令することができる。
【0078】
(混合材料供給機20の他の実施形態)
混ぜるべき材料42が液体、固体の場合は、シリンダ18aに連通する供給口(図示せず)を形成し、その供給口から液体又は固体状の材料を供給する。
例えば液体の場合は、液体の流路を前記供給口に連通して、液体流量を調節できるポンプなどで液体状の材料42を供給する。
例えば固体の場合、ホッパ(前述のホッパ18b参照)機構を前記供給口に設ける。前記ホッパ機構に材料42の供給速度を制御する機構、例えば、スクリューフィーダなどの供給速度を制御する機構を設ける。
【0079】
[7.射出材の調整方法]
(調整方法40)
本発明の調整方法(図10参照)は、射出成型機10のシリンダ18aに充填される射出材の調整方法である。射出材43は、充填される樹脂41に混ぜるべき材料42を供給して調整される。
図に示している調整方法40は、所定の計量位置19aへ後退する射出成型機のスクリュー17cのスクリューの後退速度(充填流量)6aを予め登録された時間で取得し(U1)、充填流量に対応する供給情報(供給流量)7aを取得し(U2)、射出すべき樹脂41に混ぜるべき材料42を供給する(U3)。そして射出材43が調整される(U4)。
【0080】
(射出材43)
調整方法40で調整された射出材43は、樹脂41の充填の途中で、充填情報(充填流量)6aを取得(チェック)し、その充填速度6aに対応する供給情報(供給流量)7aで材料42を樹脂41に混ぜている。このため、ほぼ均一な割合で材料42が添加されている。とりわけ、スクリュー17cに沿った射出材43の軸方向にほぼ均一な割合で材料42が添加されている。
【0081】
[8.製造方法]
(製造方法44)
本発明の成形体の製造方法(図10参照)は、上述の調整方法40で調整された射出材43を金型14内に射出するものである(U5)。射出後に、例えば冷却・離型して、成形体45を得ることができる(U6)。成形体45は、樹脂41に対し混ぜるべき材料42が所定の割合で混合された射出材43を射出して成形されているから、金型14内において材料42が均一に分散される傾向にある。このため材料42がほぼ均一に分散した成形体45を製造できる。
【0082】
[9.成形体]
(成形体45)
本発明の成形体は、射出成形機10(図2参照)の計量動作において、充填される樹脂41に混ぜるべき材料42を供給して調整される射出材を金型14に射出して成形される。
射出材43の調整において、樹脂41の充填速度に関連する充填流量6aが計量動作中の所定の時間間隔(サンプリング時間間隔39e)で取得されている。また充填流量6a毎に対応する供給速度に関連する供給流量7aが取得されている。さらに供給流量7aに基づいて材料42が供給された射出材43が調整されている。そして材料42がほぼ所定の割合に調整された射出材43が、金型14に射出されて成形体45とされている。
【0083】
例えば、材料42が、不活性ガスで、且つ、超臨界流体である場合の成形体45について説明する。図11には本発明の成形体45、従来の成形体45a、45bのそれぞれの発泡倍率の分布を模式的に表したグラフを示している。図11の上方に示している成形体45、不具合の成形体45a、従来の成形体45bは、例えば、それぞれ発泡した板状の部材である。x軸は成形体のx方向の位置を示す。成形体45、45a、45bは、形状は同じである。成形体45、45aの発泡倍率は同じである。成形体45bは他の成形体45、45aよりも発泡倍率が低い。
【0084】
(不具合の成形体45a)
成形体45、45a、45bのすぐ下方のグラフは、不具合の成形体45aのx位置における断面の平均的な発泡倍率を概略的に示している。直線46は、成形体45、45aに設計上求められている発泡倍率を示している。直線46を超えると、発泡倍率が高くなり、強度が低下する。通常、成形品は直線46を部分的にも超えないように設計される。このため不具合の成形体45aは製品として相応しくない。
【0085】
(従来の成形体45b)
不具合の成形体45aは、発泡倍率の振れ幅が大きく、発泡倍率が最も高い部位が直線46を超えているので、その部分の強度が設計強度を下回る。このような場合、さらに下方の矢印で示すグラフにあるように、発泡倍率が最も高い部位が直線46を下回る様に、全体の発泡倍率が下げられる。このため成形体45bの重量は大きくなる傾向にある。
【0086】
(本発明の成形体45)
本発明の成形体45は、発泡倍率の振れ幅が小さいので、発泡倍率を示すグラフ45が直線46に接近している。このため全体的に均一の強度である。また従来の成形体45bよりも軽量である。このように、成形体45は、ガス42を樹脂41に対しほぼ均一の割合で混ぜられた射出材43で成形されているので、成形体45の発泡倍率をほぼ均一にでき、重量を小さくすることができる。
【0087】
(成形体の実施例)
次いで、自動車部品の成形体の実施例を説明する。自動車のサイドパネルの及び製造するためのパラメータを以下に記載する。
・成形体:サイドパネル
・大きさ:横1500×縦300mm程度
・重量:351.6g
・体積:493.9cm:成形体47(サイドパネル)の体積である。
・樹脂密度:710mg/cm
・シリンダ直径:110mm
・ガス設定値:0.3%、注入するガスの重量のことで、成形体47の樹脂量の0.3%である。
・注入開始位置:1mm、スクリュー17cが1mm後退した後に、ガス42を注入している。スクリュー17cの後退の初期は背圧が安定しないからである。
・計量較正:60.2mm、スクリュー17cの全長に対して成形で使用している長さのことである。
・計量初期流量:200mg/sec
・計量初期時間:3.0sec
・計量時間:約7.0sec
・サンプリング時間間隔:0.3sec
【0088】
[10.その他]
本実施形態の射出成形機10は、射出用サーボモータ16a及び計量用サーボモータ17bを用いているが、両方又は一方を油圧・空圧などの流体を用いた機構としてもよい。
型開閉装置12の開閉機構16として、油圧・空圧などの流体を用いた機構を採用してもよい。
本実施形態においては、横型射出成形機を例にとって説明したが、縦型射出成形機にも適用することができる。
型閉信号11aは金型14が閉じたとき又は金型14が油圧などで締結され、射出の準備が整ったときに発信する信号としてもよい。
工程R1において、ガスの流量をゼロにする際に、二方弁24(図9参照)及び大気解放側の二方弁24bは、閉じていてもよいし、開けていてもよい。
また、大気解放の経路をブースターポンプ22の一次側に連結しガスを戻す経路としてもよい。
起動流量39aを計量初期流量39bと同じ流量にしてもよい。
成形体45としては、自動車の他、日用品、船舶、飛行機、宇宙船などの部材であってもよい。
【0089】
(充填流量のその他)
スクリュー17cの後退速度に基づいて混ぜるべき材料の供給流量7aを取得したが、ホッパ18bの重量変化に基づいて、材料の供給流量7aを取得してもよい。
またスクリュー17cの後退速度を関数とする数式により材料の供給流量を算出してもよい。その際に、樹脂の充填流量を必ずしも経由(算出)しなくてもよい。
【0090】
(供給流量7aの演算のその他)
サンプリング時間間隔ΔT(n)及びΔT(n+1)などの複数の時間間隔の充填流量6aに基づいて、サンプリング時間間隔ΔT(n+2)における供給流量7a(n+2)を算出してもよい。
また充填流量6aの演算の代わりに、充填流量6aと対応する供給流量7aとからなるテーブルを記憶部31(図3参照)に用意しておき、取得した充填流量6aに対応する供給流量7aを前記テーブルから取得してもよい。
【0091】
[11.まとめ]
(1)本発明の射出成形の制御機構2は、射出成形機10に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構であって、射出成型機の計量動作中の樹脂の充填速度に関連する充填情報6aに基づいて、材料の供給速度に関連する供給情報7aを取得する制御部3を備えていることを特徴としている。
計量時間19の途中で、充填流量6aをチェックして、充填流量6aに対応する供給流量7aにすることができる。
【0092】
(2)このような射出成形の制御機構2は、充填情報6aが予め登録された1つ以上の時間毎に取得され、取得された充填情報6a毎に供給情報7aが取得されているので、充填情報6aをサンプリングする数が多いほど、計量動作の途中で、材料42の供給流量を一層適切な量に変更又は修正できる。
【0093】
(3)またスクリュー17cが計量のため後退する初期において、予め登録された計量初期時間39c又は前記スクリューの初期後退量39hが設定されており、計量初期時間39c中又は初期後退量39hの動作中に、材料42を供給する予め登録された計量初期流量39bが設定されているので、充填の初期に適切な材料42の供給ができる。
【0094】
(4)また充填情報6aが、射出成形機10のスクリュー17cの位置に関する位置情報4aに基づいているので、充填情報6aを容易に把握することができる。このため供給流量7aの制御が容易である。
【0095】
(5)また材料42が、不活性ガスで、且つ、超臨界流体であるので、射出材43にほぼ均一にガス42を添加することができる。このため金型14内でほぼ均一に発泡させる傾向にある。
【0096】
(6)本発明の射出成形装置48は、上述の制御機構2と、制御機構からの供給情報7aに基づいて、材料42を供給する混合材料供給機20とを備えていることを特徴としている。
射出成形機10に充填される樹脂41の充填流量6aに対応した供給流量7aで材料42を供給することができる。
【0097】
(7)本発明の射出成形システム1は、上述の射出成型装置48と、その射出成型装置48により材料42が供給される射出成形機10とを備えていることを特徴としている。
射出材43において、樹脂41に対する材料42の割合に濃淡が生じるのを防止することができる。射出材43の樹脂41にほぼ均一な割合で材料43を混ぜることができる。
【0098】
(8)本発明のプログラム36は、射出成形機10に充填される樹脂に混ぜるべき材料を供給する制御機構に用いるプログラムであって、コンピュータに、計量のため後退する射出成形機のスクリュー17cの位置を含む位置情報4aを取得させ、位置情報4aに基づいて樹脂の充填流量に関連する充填情報6aを取得させ、充填情報及び予め定めた条件5bに基づいて、材料の供給流量を含む供給情報7aを演算させることを特徴としている。
計量時間19の途中で、充填流量6aをチェックして、充填流量6aに対応する供給流量7aに変更又は修正することができる。
【0099】
(9)本発明の射出材の調整方法40は、射出成形機10の計量動作において、充填される樹脂41に混ぜるべき材料42を供給して調整される射出材43の調整方法であって、計量動作中の予め登録された時間で、樹脂41の充填流量に関連する充填情報6aを取得し、充填情報6aに対応した供給流量に関連する供給情報7aに基づいて材料42を供給することを特徴としている。
計量動作中の予め登録された時間で充填された樹脂量に基づいて、材料42の供給流量を変更又は修正することができる。射出材43において、樹脂41に対する材料42の量に濃淡が生じるのを防止することができる。とりわけ射出材43の軸方向に材料42の添加率の濃淡が生じにくい。射出材43の樹脂41にほぼ均一な割合で材料42を混ぜることができる。
【0100】
(10)本発明の成形体の製造方法44は、上述の射出材43の調整方法40により、射出材43を調整し、射出材43を金型14内に射出することを特徴としている。
樹脂41に対し材料42をほぼ均一に添加した射出材43を、金型14内に射出するので、金型14内で材料42がほぼ均一に分散されやすい。
【0101】
(11)本発明の成形体45は、射出成形機10の計量動作において、充填される樹脂41に混ぜるべき材料42を供給して調整される射出材43を金型14に射出して成形される成形体であって、樹脂41の充填速度に関連する充填情報6aが前記計量動作中の所定の時間間隔39eで取得されており、充填情報6a毎に対応する供給速度に関連する供給情報7aが取得されており、供給情報7aに基づいて材料42が供給された射出材43が調整されており、射出材43が射出されることにより成形されていることを特徴としている。
樹脂41に対してほぼ均一な割合で材料42が添加された射出材43を、金型14内に射出するので、金型14内にほぼ均一に材料42が分散されやすい。このため材料42がほぼ均一に分散した成形体45となる傾向にある。材料42が、不活性ガスで、且つ、超臨界流体であると、成形体45をほぼ均一に発泡でき軽量化できる。また材料42が他の添加材であると、均一な成分の成形体45となるので、強度などの機械的な性質をほぼ均一にすることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 射出システム
2 制御機構
3 制御部
4 位置取得部
4a 位置情報
5 位置取得手段
5a 条件
5b 条件
6 充填取得手段
6a 充填情報(充填流量)
7 演算手段
7a 供給情報(供給流量)
8 信号取得手段
9 設定値取得手段
10 射出成形機
11 型開閉装置
11a 型閉信号
11b 計量中信号
12 射出装置
12a ベース
13 ホルダ
13a 固定ホルダ
13b 可動ホルダ
14 金型
15 開閉機構
15a 開閉サーボモータ
15b ボールネジ
16 スクリュー移動機構
16a 射出用サーボモータ
16b ボールネジ
16c ボールネジナット
17 スクリュー機構
17a 移動部
17b 計量用サーボモータ
17c スクリュー
17d 圧力センサ
18 材料供給機構
18a シリンダ
18b ホッパ
19 計量時間
19a 計量位置
20 混合材料供給機(ガス供給装置)
21 ボンベ
21a 逆止弁
21b 三方弁
22 ブースターポンプ
23 流量調整弁
24 二方弁(射出成形機側)
24a 逆止弁
24b 二方弁(大気解放側)
25 減圧弁
26 リリーフ弁
27 圧力センサ
28 背圧調整弁
29 フィルタ
30 CPU
31 メモリ
32 記録デバイス
33 接続ポート
34 通信回路
35 バスライン
36a プログラム
36b プログラム
37 ブラウザプログラム
38 OS
39 データベース
39a 起動流量
39b 計量初期流量
39c 計量初期時間
39d シリンダ半径
39e サンプリング時間間隔
39f 樹脂密度
39g ガス添加率
39h 初期後退量
39i サンプリング時間
40 調整方法
41 樹脂
42 混ぜるべき材料
43 射出材
44 製造方法
45 成形体
46 設計上の発泡倍率
47 成形体
48 射出成形装置
図1
図2
図3
図4
図5
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