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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070745
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ガス容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20240516BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20240516BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20240516BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C11/00 C
F17C1/16
C01B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181454
(22)【出願日】2022-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発/水素貯蔵効率向上に向けた水素タンクの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成宏
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB18
3E172CA20
3E172DA29
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA48
3E172EB02
3E172FA01
3E172KA02
3E172KA11
4G140AB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ライナー分体の接合部を容器ライナーの内部から検査可能であり、かつ、貯蔵材の破損を抑制する。
【解決手段】内部空間29を有する樹脂製の容器ライナー2と、内部空間に収容保持され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材5と、2つの前記口金3の各々に接続され、前記内部空間に配置されて前記貯蔵材を保持する2つの保持部材6と、を有し、前記容器ライナーは、筒状をなし前記軸方向に配列した2つのライナー分体20が接合一体化されてなり、各々の前記保持部材は、前記軸方向に延び、中空でありその内部が前記口金の内部に連絡するシャフト部60と、前記貯蔵材と係止することで前記軸方向における前記貯蔵材の位置変化を規制する規制部65と、を有し、2つの前記保持部材は、前記軸方向において互いに離隔し、2つの前記ライナー分体の接合部21は、前記軸方向において前記保持部材同士の間にある、ガス容器。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する樹脂製の容器ライナーと、
前記容器ライナーよりも剛性が高く、前記容器ライナーの軸方向の両端部に各々取り付けられ、前記容器ライナーの外部と前記内部空間とを連絡する2つの口金と、
前記内部空間に収容され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、
2つの前記口金の各々に接続され、前記内部空間に配置されて前記貯蔵材を保持する2つの保持部材と、を有し、
前記容器ライナーは、筒状をなし前記軸方向に配列した2つのライナー分体が接合一体化されてなり、
各々の前記保持部材は、
前記軸方向に延び、中空でありその内部が前記口金の内部に連絡するシャフト部と、
前記シャフト部から前記容器ライナーの径方向に突出し、前記貯蔵材と係止することで前記軸方向における前記貯蔵材の位置変化を規制する規制部と、を有し、
2つの前記保持部材は、前記軸方向において互いに離隔し、
2つの前記ライナー分体の接合部は、前記軸方向において前記保持部材同士の間にある、ガス容器。
【請求項2】
前記規制部は、
前記シャフト部における前記内部空間側の端部に取り付けられ、前記シャフト部よりも大径の板状をなし、
前記口金との間に前記貯蔵材を挟み込む、請求項1に記載のガス容器。
【請求項3】
前記保持部材は、さらに、前記規制部から前記軸方向に突出し、前記貯蔵材と係止することで前記容器ライナーの周方向および/または前記径方向における前記貯蔵材の位置変化を規制する回り止め部を有する、請求項1または請求項2に記載のガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスなどのガスを貯蔵および放出するためのガス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両や各種装置の燃料として、水素ガスや天然ガス等を用いる技術が提案されている。これらのガスを貯蔵および放出するためのガス容器についても盛んに検討がなされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に紹介されているガス容器は、その内部空間に、貯蔵材の一種である多孔質水素吸蔵材料を収容するものである。
貯蔵材は、貯蔵の対象となるガス(以下、必要に応じて充填ガスと称する)を物理的または化学的に吸蔵し、および、放出する。これら貯蔵材によると、内部空間に貯蔵可能なガスの量を増大させることができる。
【0004】
一般的な貯蔵材は、充填ガスを吸蔵および放出する際に温度変化を伴う。
その一方で、当該貯蔵材の吸蔵放出能は温度に依存し、特に、低温時には優れた吸蔵能を発揮することが知られている。このため従来のガス容器には、貯蔵材を冷却するための冷却機能を設けるのが一般的である。
【0005】
例えば特許文献1には、ガス容器に冷却管を設けることにより、冷却管とともに内部空間に収容されている貯蔵材を冷却する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-75697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したガス容器の一種として、樹脂製の容器ライナーを有するものが知られている。
【0008】
樹脂製の容器ライナーの製造方法としては、樹脂成形された短筒状のライナー分体を、容器ライナーの軸方向に複数個直列的に配列させ、隣り合うライナー分体を接合し一体化する方法が知られている。当該方法で製造された容器ライナーには、その軸方向の一部に、周方向全周にわたって延びる接合部が認められる。
【0009】
ここで、ガス容器には、充填ガスとして水素等の可燃性ガスを貯蔵するものもある。樹脂製の容器ライナーは剛性の比較的低い部材であるために、この種のガス容器においては、容器ライナーの破損やガス漏れを抑止することが重要である。このため、例えば水素を貯蔵する水素タンクにおいては、その検査項目として、容器ライナーの内部から上記の接合部を検査する項目がある。
【0010】
上記した特許文献1に紹介されている技術のように、内部空間に貯蔵材や冷却管を収容する場合には、上記の接合部が貯蔵材や冷却管によって隠されるために当該接合部の検査が非常に困難になる。
上記の事情から、貯蔵材を冷却可能なガス容器であって、ライナー分体の接合部を容器ライナーの内部から検査可能であるものが望まれている。
【0011】
さらに、貯蔵材のなかには比較的破損し易いものがあり、ガス容器が例えば車載用であれば、走行時等の衝撃で貯蔵材が破損する場合がある。このような貯蔵材の破損を抑制する技術もまた望まれている。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貯蔵材を冷却可能なガス容器であって、ライナー分体の接合部を容器ライナーの内部から検査可能であり、かつ、貯蔵材の破損を抑制し得るものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明のガス容器は、
内部空間を有する樹脂製の容器ライナーと、
前記容器ライナーよりも剛性が高く、前記容器ライナーの軸方向の両端部に各々取り付けられ、前記容器ライナーの外部と前記内部空間とを連絡する2つの口金と、
前記内部空間に収容され充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材と、
2つの前記口金の各々に接続され、前記内部空間に配置されて前記貯蔵材を保持する2つの保持部材と、を有し、
前記容器ライナーは、筒状をなし前記軸方向に配列した2つのライナー分体が接合一体化されてなり、
各々の前記保持部材は、
前記軸方向に延び、中空でありその内部が前記口金の内部に連絡するシャフト部と、
前記シャフト部から前記容器ライナーの径方向に突出し、前記貯蔵材と係止することで前記軸方向における前記貯蔵材の位置変化を規制する規制部と、を有し、
2つの前記保持部材は、前記軸方向において互いに離隔し、
2つの前記ライナー分体の接合部は、前記軸方向において前記保持部材同士の間にある、ガス容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス容器は、貯蔵材を冷却可能なガス容器であって、ライナー分体の接合部を容器ライナーの内部から検査可能であり、かつ、貯蔵材の破損を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例のガス容器を模式的に説明する説明図である
図2】実施例のガス容器を分解した様子を模式的に説明する説明図である。
図3】実施例のガス容器における保持部材を模式的に説明する説明図である。
図4】実施例のガス容器の軸方向断面を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガス容器は、内部空間を有する樹脂製の容器ライナーを有し、充填ガスを吸蔵および放出する貯蔵材を当該内部空間に収容するものである。
【0017】
本発明のガス容器において、上記の容器ライナーは、2つのライナー分体が接合一体化されてなる。このため本発明のガス容器における容器ライナーには、2つのライナー分体の接合部が存在する。
【0018】
また、本発明のガス容器は2つの口金を有し、当該2つの口金には各々1つずつの保持部材が接続されている。当該保持部材は、容器ライナーの内部空間に配置されて、上記の貯蔵材を保持する。
【0019】
各々の保持部材は、シャフト部および規制部を有する。
このうちシャフト部は容器ライナーの軸方向に延び口金に連絡する。容器ライナーに収容される貯蔵材やガスは、当該容器ライナーの内部空間において当該シャフト部と熱交換でき、シャフト部は口金を介して外界と熱交換できる。したがって、本発明のガス容器は、貯蔵材を冷却可能なガス容器といい得る。
【0020】
規制部は、シャフト部から容器ライナーの径方向に突出する。そして、当該規制部は貯蔵材と係止することで、容器ライナーの軸方向における貯蔵材の位置変化を規制する。これにより、本発明のガス容器によると、貯蔵材を安定的に収容保持することが可能であり、貯蔵材の破損を抑制することが可能である。
【0021】
ところで、上記した2つの口金は、容器ライナーの軸方向の両端部に各々取り付けられ、上記した2つの保持部材は、各口金に1つずつ取り付けられている。本発明のガス容器において、当該2つの保持部材は、容器ライナーの軸方向において互いに離隔している。換言すると、2つの保持部材の間には隙間が形成されている。
【0022】
本発明のガス容器において、2つのライナー分体の接合部は、容器ライナーの軸方向において当該保持部材同士の間にある。つまり本発明のガス容器によると、上記の接合部は少なくとも保持部材によっては隠されない。したがって、本発明のガス容器によると、ライナー分体の接合部を容器ライナーの収容空間側、すなわち容器ライナーの内部から検査可能である。
【0023】
ここで、本発明のガス容器におけるシャフト部は軸方向に延び、中空でありその内部が前記口金の内部に連絡する。このため当該シャフト部の内部は内視鏡に代表される検査機器の通路として機能する。口金からシャフト部の内部に差し込んだ検査機器を、2つの保持部材の間にまで到達させれば、上記したライナー分体の接合部を検査機器によって直接撮像等することができ、当該接合部を直接にかつ非破壊的に検査することが可能である。
【0024】
以上説明したように、本発明のガス容器は、貯蔵材を冷却可能なガス容器であって、ライナー分体の接合部を容器ライナーの内部から検査可能であり、かつ、貯蔵材の破損を抑制し得る。
【0025】
以下、本発明のガス容器をその構成要素毎に説明する。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何れかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
また、以下、特に説明のない場合には、軸方向、径方向、周方向とは容器ライナーの軸方向、径方向、周方向を意味するものとする。
【0026】
本発明のガス容器に収容する充填ガスの種類は特に限定せず、ガス容器内における当該充填ガスの圧力もまた特に限定しないが、本発明のガス容器は、水素ガスや天然ガス等の可燃性ガスを高圧で充填する所謂耐圧容器として具現化するのが特に好適である。
【0027】
本発明のガス容器は、容器ライナー、2つの口金、貯蔵材および2つの保持部材を有する。
【0028】
このうち容器ライナーは、対象となる充填ガスを収容するための内部空間を有するものである。このような容器ライナーは充填ガスと直接接触する部分であるために、当該容器ライナーの材料としては、収容対象である充填ガスを透過し難い、所謂ガスバリア性を有する材料を選択するのが好適である。
【0029】
具体的には、容器ライナーの材料は、充填ガスの種類やガス容器を設置する環境等に応じて適宜適切に選択すれば良い。
【0030】
例えば充填ガスが水素ガスであれば、容器ライナーの材料として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等を用いるのが好適である。容器ライナーの内部を、エチレン・ビニルアルコール高重合体(EVOH)等のガスバリア性に優れる材料でコートするのも好適である。
【0031】
容器ライナーは、2つのライナー分体が接合一体化されてなる。当該ライナー分体は、筒状をなし、軸方向に配列する。2つのライナー分体は、同じ形状でありその接合部を境として対称に配置されても良いし、異なる形状であっても良い。製造コストを考慮すると、2つのライナー分体は、同じ形状であるのが好適である。
【0032】
ライナー分体同士の接合方法は特に限定されず、例えば接着や溶着等の一般的な接合方法のなかから、ガス容器の用途に応じて適宜適切に選択すれば良い。
【0033】
容器ライナーの形状は特に限定しないが、内部空間を形成できる有底または無底の筒状であるのが好適である。また容器ライナーは、その軸方向の両端部に口金が取り付けられる都合上、軸方向の両端側で対称な形状であるのが好適である。さらに容器ライナーは、例えば円筒状や正多角形筒状等の、充填ガスに因る内圧が均一に分散する形状を有するのも好適である。
【0034】
2つの口金は、容器ライナーの両端部に、換言すると、各々のライナー分体の一端部に取り付けられている。
【0035】
ライナー分体は口金に一体成形しても良いし、口金とは別体で形成しても良い。
例えば予め形成した口金をインサートとして、ライナー分体をインサート成形しても良い。または、予め形成したライナー分体に口金を挿入することで、口金をライナー分体に取り付けても良い。
容器ライナー外部への充填ガスの漏出を抑制するため、口金と容器ライナーとの間には、Oリング等のシール部材を介在させるのが好適である。
【0036】
口金の材料もまた特に限定しないが、口金には容器ライナーよりも高い剛性が要求されるため、当該口金用の材料としてはアルミニウム、アルミニウム合金又はステンレススチール等の金属材料を選択するのが特に好適である。
【0037】
口金は、容器ライナーの外部と容器ライナーに設けられた内部空間とを連絡し、充填ガスの出入り口として機能する。
本発明のガス容器において、二つの口金の双方を充填ガスの出入口として用いても良いし、一方の口金に栓をしても良い。
【0038】
本発明のガス容器は補強部を有しても良い。補強部は、ガス容器のうち容器ライナーを外側から覆う部分であり、補強部を有する本発明のガス容器は、耐圧容器として好適に使用される。
補強部は容器ライナーを補強する都合上、当該容器ライナーよりも高剛性であるのが好ましく、補強部の厚さは少なくとも軸方向端部においては容器ライナーの厚さよりも厚いのが好適である。
【0039】
補強部は、一般的な耐圧容器同様に、樹脂を含浸した高強度繊維(所謂FRP)で構成すれば良い。高強度繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等を採用すれば良く、当該高強度繊維に含浸される樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を採用すれば良い。
【0040】
補強部を形成する方法としては一般的な方法を採用すれば良く、例えば、樹脂材料を含浸させた高強度繊維を容器ライナーに対して巻回してヘリカル層やフープ層を形成し、さらに、樹脂材料を加熱硬化させる方法を採用し得る。または、樹脂および高強度繊維を材料とする当該ヘリカル層やフープ層をシート状に形成したものを、容器ライナーに貼り付け、さらに、樹脂材料を加熱硬化させる方法を採用することも可能である。
【0041】
貯蔵材は、収容空間に収容され、後述する保持部材に保持される。貯蔵材は充填ガスを吸蔵および放出すればよく、当該貯蔵材としては本発明のガス容器に貯蔵すべき充填ガスの種類に応じたものを適宜適切に選択すれば良い。
【0042】
例えば充填ガスが水素である場合、貯蔵材としては、気相法炭素繊維(所謂カーボンナノチューブ)や、カーボンブラック、活性炭等の多孔性の炭素材料を用いるのが好適である。
また、例えば特許文献1に紹介されているように、これらの多孔性炭素材料をKOHやNaOH、LiOH等のアルカリ塩とともに不活性ガス雰囲気下で賦活処理したものを、貯蔵材として用いるのも好ましい。
その他、多孔性の金属錯体(所謂MOF)、ゼオライト、水素吸蔵合金、金属水素化物等を貯蔵材として使用するのも好適である。
【0043】
貯蔵材は種々の形状をなし得る。貯蔵材の充填ガス吸蔵放出性能を充分に引き出すためには、充填ガスに対する貯蔵材の接触面積を大きくするのが好ましく、比表面積の大きな一次粒子および/または二次粒子の貯蔵材を使用するのが好適である。なお、当該一次粒子や二次粒子とはその形状を限定するものではなく、貯蔵材は短繊維状や長繊維状であっても良い。
【0044】
貯蔵材ひいては本発明のガス容器の取り扱い性を考慮すると、当該一次粒子および/または二次粒子の貯蔵材を架橋剤により架橋するか、またはバインダにて結着して、ペレット状にするのが好適である。
ペレットの形状としては、当該ペレットを収容する収容空間に沿った形状であるのが好適であり、貯蔵材とともに当該収容空間に収容される保持部材を避けた形状であるのが特に好適である。
後述するように、保持部材の規制部と口金との間で貯蔵材を挟み込む場合には、貯蔵材は固体状またはバルク状であるのが好適である。
【0045】
2つの保持部材は、上記したように、2つの口金の各々に1つずつ接続され、内部空間に配置されて貯蔵材を保持する。2つの保持部材は同じ形状であっても良いし異なる形状であっても良い。当該保持部材は、シャフト部および規制部を有する。
【0046】
保持部材のうちシャフト部は、中空であり、口金に接続されて容器ライナーの軸方向に延びる。口金とシャフト部との接続機構は特に限定されず、口金の内部およびシャフト部の内部が検査機器の通路として機能できるよう、互いに連絡すれば良い。口金とシャフト部との接続機構は、例えば、接着、溶着、螺合、ボルト締結に代表される種々の方法を用い得る。
【0047】
シャフト部の材料は特に限定されない。但し、容器ライナーの内部空間に収容されている貯蔵材やガスと熱交換する都合上、当該シャフト部の材料としては熱伝導率の高い材料を用いるのが好ましく、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料を用いるのが特に好適である。口金の材料とシャフト部の材料とは異なっていても良いが、防食性を考慮すると電位差のない材料を選択するのが好適であり、同材を用いるのが特に好ましい。
【0048】
規制部は、シャフト部から容器ライナーの径方向に突出する。したがって、規制部の外径はシャフト部の外径よりも大きいともいい得る。
規制部はシャフト部と一体に形成されていても良いし、シャフト部と別体でありシャフト部に取り付けられても良い。規制部の材料はシャフト部の材料と同じであっても良いし異なっていても良い。シャフト部と規制部とが金属製であれば、シャフト部の材料および規制部の材料として電位差のない材料を選択するのが好適であり、同材を用いるのが特に好ましい。
【0049】
規制部は、シャフト部から容器ライナーの径方向に突出し、貯蔵材と係止することで軸方向における貯蔵材の位置変化を規制し得る形状であれば良い。
【0050】
例えば規制部は、シャフト部の径方向に突出する突起であっても良い。
突起状をなす規制部の突出高さは特に限定されず、貯蔵材と係止することで軸方向における貯蔵材の位置変化を規制できれば良い。
【0051】
規制部が突起状をなす場合、シャフト部の軸方向における規制部の位置は特に限定されず、如何なる位置にあっても良い。例えば規制部は、シャフト部における内部空間側の端部、換言すると、シャフト部のうち他方の保持部材側の端部にあっても良いし、シャフト部における口金側の端部にあっても良いし、これらの間の位置にあっても良い。
【0052】
突起状をなす規制部の数は特に限定されず、1つのみであっても良いし複数であっても良いが、貯蔵材を安定的に保持するためには、突起状の規制部は、シャフト部の周方向に沿った複数箇所にあるのが好適である。
【0053】
また、例えば規制部は、シャフト部の径方向に突出する板状をなしても良い。板状をなす規制部は、例えば、シャフト部における内部空間側の端部に取り付けられ、貯蔵材における軸方向端面、換言すると、保持部材に保持される貯蔵材のうち他の保持部材側の端面と係止するのが好適である。この場合、貯蔵材は、規制部と口金との間に挟み込まれるために、保持部材によってより安定的に保持される。
【0054】
なお規制部は、充填ガスの流路となる孔や開口、溝等を有しても良い。当該孔や開口、溝等は、規制部が板状である場合に設けるのが特に好適であるが、規制部が突起状である場合に設けても良い。
【0055】
保持部材は、さらに、規制部から軸方向に突出し、貯蔵材と係止することで容器ライナーの周方向および/または径方向における貯蔵材の位置変化を規制する回り止め部を有するのが好適である。保持部材が複数の規制部を有する場合、当該回り止め部は複数の規制部の一部にのみ設けられても良いし、すべての規制部に設けられても良い。
【0056】
回り止め部の突出方向は、軸方向であれば良いが、保持部材によって貯蔵材をより安定的に保持するためには、当該保持部材が接続される口金に向けた軸方向に突出するのがより好適である。
【0057】
なお、規制部が板状をなす場合、回り止め部はシャフト部の周方向に沿った複数箇所にあるのが好適である。
【0058】
本発明のガス容器において、2つの保持部材は軸方向において互いに離隔する。換言すると、2つの保持部材は軸方向に配列し、当該軸方向において2つの保持部材の間には隙間がある。この2つの保持部材の軸方向隙間の長さは特に限定しないが、ライナー分体同士の接合部が、軸方向において、当該隙間に収まるだけの長さがあれば良い。
【0059】
本発明のガス容器においては、ライナー分体同士の接合部が軸方向において当該隙間に配置されることで、当該接合部が保持部材に隠されることがなくなる。したがって、口金から差し込んだ内視鏡等によって、当該接合部を容易に検査することが可能である。
【0060】
接合部の検査をより容易に行うためには、保持部材だけでなく貯蔵材もまた当該隙間を避けた位置にあるのが良い。このことを考慮すると、貯蔵材は保持部材の規制部と口金との間に挟み込まれるのが特に好適である。
【0061】
以下、具体例を挙げて本発明のガス容器を説明する。
【0062】
(実施例)
実施例のガス容器は、車両に搭載され、充填ガスの一種である水素ガスを貯蔵および放出するため耐圧容器である。
実施例のガス容器を模式的に説明する説明図を図1に示す。実施例のガス容器を分解した様子を模式的に説明する説明図を図2に示す。実施例のガス容器における保持部材を模式的に説明する説明図を図3に示す。実施例のガス容器の軸方向断面を模式的に表す説明図を図4に示す。
以下、軸方向、径方向とは各図に示す方向を指すものとする。また、軸方向端部、軸方向中央部とは、図1に示す軸方向端部、軸方向中央部を意味する。
【0063】
図1図4に示すように、実施例のガス容器1は、容器ライナー2、2つの口金3、補強部4、2つの貯蔵材5、および、2つの保持部材6を有する。
【0064】
容器ライナー2は、ポリエチレン樹脂製であり、軸方向の両端部が縮径した略円筒状をなす、所謂樹脂ライナーである。
【0065】
図2に示すように、容器ライナー2は同形状の2つのライナー分体20が溶着されて接合一体化されてなる。2つのライナー分体20は軸方向に配列している。2つのライナー分体20の接合部21は、容器ライナー2における軸方向の略中央部分にあり、容器ライナー2の周方向全周にわたって延びている。
【0066】
図4に示すように、各ライナー分体20は有底の略短筒状をなし、容器ライナー2もまた有底の略筒状をなす。容器ライナー2の内部には、内部空間29が形成されている。
【0067】
各ライナー分体20の軸方向端部はドーム状をなし、その中心部分は開口している。各開口22には、各々、Oリング39を介して、金属製の口金3が装着されている。
【0068】
2つの口金3には、各々、保持部材6が1つずつ接続されている。各保持部材6は口金3と同じ金属製である。
【0069】
図2および図3に示すように、2つの保持部材6は、シャフト部60、規制部65、回り止め部70および締結部75を有し、互いに同形状をなす。
【0070】
このうちシャフト部60は、軸方向に延びる。シャフト部60の一端部である口金側端部61は、シャフト部60の他端部である規制側端部62、および、口金側端部61および規制側端部62を連絡する一般部63よりも大径である。規制側端部62は一般部63よりもやや小径である。シャフト部60は、全体として、中空の直筒状をなす。
【0071】
口金側端部61の外径は、口金3における軸方向中央部分の端部の内径と略同じである。シャフト部60の口金側端部61はそれぞれ対応する口金3に対して図略のボルトにより固定されている。これにより、シャフト部60は口金3に接続され、シャフト部60の内部は口金3の内部に連絡する。
【0072】
シャフト部60および口金3は熱伝導率の高い金属製であるため、これらは容器ライナー2の内部空間29(図4)にある貯蔵材5やガス(図略)と熱交換する熱交換器として機能する。これにより、実施例のガス容器1には冷却機能が付与されている。
【0073】
図2および図3に示すように、規制側端部62は、その周方向の一部に径方向長さの異なる領域を有する異径形状をなす。より具体的には、規制側端部62の径方向断面は略D字状をなす。
図示しないが、規制側端部62の外周面にはネジ山が形成されている。
【0074】
規制部65は略円板状をなす。規制部65には周方向に配列する複数の開口65Oが設けられている。このため規制部65は略車輪状をなすともいえる。
規制部65の中心部には取付開口65mが設けられている。当該取付開口65mの外縁は、規制側端部62の外径と略同形状であり、その径方向断面は略D字状をなす。
【0075】
取付開口65mには規制側端部62が挿通される。取付開口65mと規制側端部62とが互いに対応する異径形状をなすことにより、径方向および周方向におけるシャフト部60と規制部65との相対的な位置変化が規制される。
【0076】
締結部75は略ナット状をなす。締結部75は規制部65のネジ山に対応するネジ溝(図略)を有し、締結部75と規制部65とは螺合する。これにより、規制部65とシャフト部60とが固定され、軸方向における規制部65とシャフト部60との相対的な位置変化が規制される。
【0077】
回り止め部70は規制部65に設けられ、当該規制部65から軸方向に突出している。
詳しくは、実施例1のガス容器1は複数の回り止め部70を有する。当該複数の回り止め部70は、規制部65の径方向外側部分において規制部65およびシャフト部60の周方向に沿って配列し、互いに離隔している。各回り止め部70はシャフト部60の口金側端部61に向けて、換言すると、口金3側に向けて、軸方向に突出している。
【0078】
図2に示すように、2つの貯蔵材5は略同形状のペレット状である。
具体的には、各貯蔵材5の外形は、容器ライナー2の内部空間29に沿った形状である。
各貯蔵材5は、各々対応するシャフト部60の外形に沿った形状の中空部51を有する。このため各貯蔵材5は略筒状をなす。
各貯蔵材5は、口金3と規制部65との間に挟み込まれている。各貯蔵材5のうち軸方向中央部側にある軸方向端面には、回り止め部70に対応する位置に、凹部52が設けられている。回り止め部70は当該凹部52に入り込み、貯蔵材5と係止する。これにより、径方向および周方向における貯蔵材5の位置変化が規制される。
【0079】
上記の貯蔵材5および保持部材6は容器ライナー2の内部空間29に収容されている。口金3の一部もまた容器ライナー2の内部空間29に収容されている。
容器ライナー2は、FPR製の補強部4によって外側から覆われている。
【0080】
以下、実施例のガス容器1を製造する方法を説明する。
【0081】
先ず、容器ライナー2を構成する2つのライナー分体20を各々射出成形し、2つのライナー分体20の開口22に、各々、Oリング39とともに口金3を装着した。口金3には保持部材6のシャフト部60を接続した。
【0082】
各ライナー分体20の内部に貯蔵材5を挿入した。このとき貯蔵材5の中空部51にはシャフト部60を挿通した。シャフト部60の規制側端部62に規制部65を挿通した。このとき規制部65の回り止め部70を貯蔵材5の凹部52に挿入した。さらに、シャフト部60の規制側端部62に締結部75を取付けることで、ライナー分体20、口金3、貯蔵材5および保持部材6の一体品が2つ得られた。
【0083】
上記した2つの一体品を、互いに対称となるように、軸方向に配列した。そして2つのライナー分体20のうち軸方向中央部側の端部を溶着した。これにより2つのライナー分体20が接合された容器ライナー2が得られた。容器ライナー2における軸方向の略中央部分には、周方向全周にわたって延びる接合部21が形成された。
【0084】
上記のようにして得られた容器ライナー2の表面に、FRP製の補強部4を形成し、実施例のガス容器1を得た。
【0085】
実施例のガス容器1において、容器ライナー2の内部空間29には、貯蔵材5および保持部材6が収容されている。
図4に示すように、2つの保持部材6は軸方向において互いに離隔し、軸方向において、容器ライナー2におけるライナー分体20同士の接合部21は当該保持部材6同士の間にある。
【0086】
さらに、実施例のガス容器1においては、各々の保持部材6に保持され口金3と規制部65とによって挟み込まれた貯蔵材5もまた軸方向において互いに離隔している。したがって容器ライナー2の内部空間29には、その軸方向中央部に、保持部材6も貯蔵材5もない領域が形成されている。容器ライナー2における接合部21は、当該領域に配置されている。
つまり接合部21は、保持部材6や貯蔵材5によって隠されることなく、容器ライナー2の内部空間29に露出している。
【0087】
保持部材6におけるシャフト部60の内部は、口金3の内部と連絡しているため、口金3から差し込んだ検査機器はシャフト部60の内部を通り、シャフト部60の軸方向端部を通過して、2つの保持部材6同士の間に出る。2つの保持部材6同士の間には、接合部21が露出しているため、検査機器によって当該接合部21を容易に撮像することができ、接合部21の状態を容易に検査することが可能である。
【0088】
以上により、実施例のガス容器1によると、シャフト部60および口金3によって貯蔵材5を冷却可能であるために、ガス容器1としての充填ガスの貯蔵放出性能が向上する。
また、実施例のガス容器1によると、ライナー分体20の接合部21を容器ライナー2の内部から容易に検査可能であるために、ガス容器1の製造効率が向上する。
さらに、実施例のガス容器1によると、規制部65および回り止め部70によって貯蔵材5の軸方向、径方向および周方向の位置変化を規制することで、当該貯蔵材5を容器ライナー2の内部空間29に安定的に収容保持できる。これにより、貯蔵材5の破損を抑制することが可能である。
【0089】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0090】
1:ガス容器
2:容器ライナー
20:ライナー分体
21:接合部
29:内部空間
3:口金
4:補強部
5:貯蔵材
6:保持部材
60:シャフト部
65:規制部
70:回り止め部
図1
図2
図3
図4