(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070749
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ロールベールカッター
(51)【国際特許分類】
A01F 29/02 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
A01F29/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181460
(22)【出願日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】三木 千純
(72)【発明者】
【氏名】横井 和弘
【テーマコード(参考)】
2B097
【Fターム(参考)】
2B097AA04
2B097CA02
2B097CJ08
2B097CN07
2B097DH07
2B097FA53
(57)【要約】
【課題】カッターを駆動させている途中であってもロールベールの回転量を調整することができ、また、リンク要素を手で支えることなくロールベールの回転量を調整できるようにしたロールベールカッターを提供する。
【解決手段】カッター41を揺動させてロールベール2の外周面から作物を切り出す切削部4と、当該切削部4と前記搬送・回転装置3のラチェットギア36との間に跨って設けられたリンク機構6と、当該リンク機構6に設けられ、前記ラチェットギア36に一方向に噛み合う爪66とを備えたロールベールカッター41において、前記ラチェットギア36の爪66をラチェットギア36の噛み合わせ位置と、ラチェットギア36から離間させた位置との間で接離させる扇状の退避部材7を備える。そして、扇状の退避部材7を回転させて、爪66の噛み合わせ開始位置をずらし、ラチェットギア36の回転量に基づいて、ロールベール2の回転量を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットギアを備えた回転部材の回転によってロールベールを回転させる回転装置と、
当該回転装置によって回転するロールベールの外周面から作物を切り出すカッターを備えた切削部と、
当該切削部を駆動させる駆動部と、
当該駆動部によって駆動する切削部と前記回転装置に設けられたラチェットギアとの間に跨って設けられたリンク機構と、
前記ラチェットギアに一方向に噛み合う爪と、
を備えたロールベールカッターにおいて、
前記ラチェットギアの爪部をラチェットギアの噛み合わせ位置と、ラチェットギアから離間させた位置との間で接離させる退避部材と、
当該退避部材の位置を調整する調整部と、
を備えたことを特徴とするロールベールカッター。
【請求項2】
前記退避部材が、ラチェットギアの回転軸に取り付けられ、ラチェットギアの外周面よりも径の大きな扇状部材で構成させるものである請求項1に記載のロールベールカッター。
【請求項3】
前記調整部が、退避部材に取り付けられた操作桿をスライドさせることによって、退避部材の回転量を調整させるようにした請求項1に記載のロールベールカッター。
【請求項4】
前記調整部が、退避部材を回動させる駆動部を備えてなるものである請求項1に記載のロールベールカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールベールの外周面から作物を切り出せるようにしたロールベールカッターに関するものであって、より詳しくは、作物を切り出すカッターを駆動させている途中であっても、簡単に作物の切り出し長さを調整できるようにしたロールベールカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発酵させたサイレージロールや乾燥ロール、稲藁ロール、麦稈ロールなどのロールベールは、外周面から一定の長さで作物が切り出され、家畜などに与えられる。
【0003】
このようなロールベールから作物を切り出すロールベールカッターについて、一般的な構造を、
図7を用いて説明する(非特許文献1)。
【0004】
このロールベールカッターは、載置台に載せられたロールベールを一方向に送り出し、壁面に押し付けた状態でロールベールを回転させる搬送・回転装置91と、この搬送・回転装置91によって回転するロールベールの外周面に刃を揺動回転させて作物を切り出すカッター92などを備えて構成される。
【0005】
そして、このようなロールベールをカッター92で切り出す場合、油圧シリンダー93を用いて切断装置のカッター92を揺動回転させ、ロールベールの外周面から作物を切り出していくとともに、カッター92が戻る際に、そのカッター92の側面に連結されたリンク機構94を変形させて、リンク機構94に取り付けられた爪95を用いてラチェットギア96を一方向に回転させ、そのラチェットギア96を回転させて搬送・回転装置91を駆動させるようにしている。
【0006】
ところで、このようなカッター92による作物の切り出し長さを調整する場合、従来では、揺動回転するカッター92の側壁面に複数の穴部97を設けておくとともに、この穴部97とラチェットギア96をリンク機構94で連結し、カッター92側の穴部97を選択することで、リンク機構94を変形させ、ラチェットギア96の外周面に沿って爪95の位置を移動させ、ラチェットギア96の回転開始位置を変化させて、ロールベールの回転量を調整するようにしていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】https://www.ihi.co.jp/iat/star/pdf/23_frbc.pdf (2022/10/1確認)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような構成では、次のような問題を生ずる。
【0009】
すなわち、カッター92側に設けられた穴部97を選択してリンク機構94を取り付ける構成では、カッター92が駆動している途中、穴部97にリンク機構94を構成するリンク要素を付け替えることができない。このため、リンク要素を穴部97に付け替える場合は、必ず、カッター97の駆動を停止させなければならないといった問題があった。
【0010】
また、リンク機構94の取り付け位置を調整する場合、一旦、穴部97からリンク要素を取り外さなければならないが、このとき、そのリンク要素に連結された他のリンク要素の重量も支えながら穴部97の位置を調整しなければならない。このため、リンク要素の取り付け、大きな力が必要になり、また、穴部97の位置合わせなどに時間がかかってしまうといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、カッターを駆動させている途中であってもロールベールの回転量を調整することができ、また、リンク要素を手で支えることなくロールベールの回転量を調整できるようにしたロールベールカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、ラチェットギアを備えた回転部材の回転によってロールベールを回転させる搬送・回転装置と、当該搬送・回転装置によって回転するロールベールの外周面から作物を切り出すカッターを備えた切削部と、当該切削部を駆動させる駆動部と、当該駆動部によって駆動する切削部と前記搬送・回転装置に設けられたラチェットギアとの間に跨って設けられたリンク機構と、前記ラチェットギアに一方向に噛み合う爪と、を備えたロールベールカッターにおいて、前記ラチェットギアの爪部をラチェットギアの噛み合わせ位置と、ラチェットギアから離間させた位置との間で接離させる退避部材と、当該退避部材の位置を調整する調整部と、を備えるようにしたものである。
【0013】
このように構成すれば、カッターを駆動させている途中であっても、ラチェットギアに噛み合う爪の噛み合わせ開始位置をずらすことで、ラチェットギアの回転量を調整することができ、ロールベールの回転量の変化による作物の切り出し長さを調整することができるようになる。また、リンク機構を構成するリンク要素を穴部から取り外す必要がないため、簡単にラチェットギアの回転量を調整することができるようになる。
【0014】
また、このような発明において、前記退避部材を、ラチェットギアの回転軸に取り付けられ、ラチェットギアの外周面よりも径の大きな扇状部材で構成する。
【0015】
このように構成すれば、爪をラチェットギアから退避させる際、扇状の退避部材を回転させることで、爪の噛み合わせ開始位置を調整することができるようになる。
【0016】
さらに、前記調整部として、退避部材に取り付けられた操作桿をスライドさせることによって、退避部材の回転量を調整することができるようにする。
【0017】
このように構成すれば、ラチェットギアから離れた場所で退避部材の位置を調整することができるため、ラチェットギアなどに手などが挟み込まれるなどの心配がなくなる。
【0018】
あるいは、前記調整部として、退避部材を回動させるモーターや油圧機構などの駆動部で構成することもできる。
【0019】
このように構成すれば、自動で送り込み量を調整することができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カッターを駆動させている途中であっても、ラチェットギアに噛み合う爪の噛み合わせ開始位置をずらすことで、ラチェットギアの回転量を調整することができ、ロールベールの回転量の変化により作物の切り出し長さを調整することができるようになる。また、リンク機構を構成するリンク要素を穴部から取り外す必要がないため、簡単にラチェットギアの回転量を調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるロールベールカッターを示す側面概略図
【
図2】同形態における切削部とリンク機構の動作状態を示す図
【
図3】同形態における切削部とリンク機構の動作状態を示す図
【
図4】同形態における調整部によって退避部材をずらす状態を示す図
【
図5】同形態におけるラチェットギアと退避部材および爪を示す図
【
図6】同形態における退避部材によるラチェットギアの回転量の違いを示す図
【
図7】従来例におけるロールベールカッターを示す側面概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明におけるロールベールカッター1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
この実施の形態におけるロールベールカッター1は、フィルムが剥がされたロールベール2に対して、外周面から作物を切り出して給餌できるようにしたものであって、
図1に示すように、載置台31に載置されたロールベール2を壁面部32に押し付けて回転させる搬送・回転装置3と、この壁面部32に押し付けられたロールベール2について、外周面から作物を切り出す切削部4と、搬送・回転装置3に設けられたラチェットギア36と切削部4との間に設けられたリンク機構6と、このリンク機構6に設けられ、ラチェットギア36に一方向にのみ噛み合う爪66(
図2参照)などを備えて構成されるもので、切削部4のカッター41を駆動部5によって揺動回転させることによって、リンク機構6を変形させ、このリンク機構6に設けられた爪66によって、ラチェットギア36を一方向に噛み合わせてラチェットギア36の回転量に応じて搬送・回転装置3を駆動させるようにしたものである。そして、特徴的に、このラチェットギア36と、これに噛み合う爪66との間に、爪66を退避させて、爪66の噛み合わせ開始位置を調整できるようにした退避部材7を設け、この退避部材7によって、ラチェットギア36の回転量を調整できるようにしたものである。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
まず、搬送・回転装置3は、フィルムの剥がされたロールベール2を載置し、傾斜方向の前方に設けられた壁面部32に押し当てながらロールベール2の縦長軸を中心に回転させるようにしたものであって、下方に向かって傾斜する載置台31と、載置台31の傾斜方向の前方上部に設けられた壁面部32と、ロールベール2を搬送させながら回転させるコンベア33などを設けて構成される。このコンベア33は、
図1に示すように、突起部35を載置台31から突出させた状態で周回させるチェーン34を備え、この突起部35を載置台31に設けられた図示しないスリットから突出させて周回させるように構成されている。そして、この突起部35でロールベール2を斜め下方に搬送させ、前方に設けられた壁面部32に押し当てて、ロールベール2を回転させるようにしている。なお、このコンベア33の側方には、ラチェットギア36が設けられており、このラチェットギア36に一方向(図面の右側回転方向)にのみ噛み合う爪66部を周回させることで、ラチェットギア36を回転させて、コンベア33を周回させるようになっている。
【0025】
この搬送・回転装置3の壁面部32の前方には、ロールベール2から作物を切り出す切削部4が設けられる。この切削部4は、ロールベール2の長さと略同じ幅を有するカッター41を備えてなるもので、
図2などに示すように、ロールベール2の縦長軸と平行な回転軸43を中心に揺動回転させるように構成されている。具体的には、この切削部4は、回転軸43に取り付けられた左右一対の扇状の側面部42と、この側面部42の外周縁を覆うカバーの先端に設けられたカッター41とを設けて構成される。そして、回転軸43を中心に、カッター41の刃を壁面部32の下方の開口部37から入り込ませた切削位置と、壁面部32の前方の退避位置との間で揺動回転させるようになっている。
【0026】
駆動部5は、この切削部4を揺動回転させるための駆動力を与えるようにしたものであって、この切削部4の両側の側面部42に取り付けられた油圧シリンダーで構成される。そして、この油圧シリンダーを伸縮させることによって、切削部4を揺動回転させるようになっている。
【0027】
リンク機構6は、
図2や
図3に示すように、切削部4の側面部42と、ラチェットギア36の回転軸38との間に跨って設けられる複数のリンク要素によって構成される。このうち、第一のリンク要素61は、切削部4の側面における回転軸43から離れた位置に連結されるロッド状の部材によって構成され、一方、第二のリンク要素62は、ラチェットギア36の回転軸38に取り付けられるプレート状の部材で構成される。また、この第二のリンク要素62には、ロッド状の第三のリンク要素63が連結され、また、この第三のリンク要素63と第一のリンク要素61との間には、プレート状の第四のリンク要素64が連結される。このプレート状の第四のリンク要素64は、支軸65を中心に回転するようになっており、切削部4の揺動回転に伴って、各リンク要素を変位させ、第二のリンク要素62に設けられた爪66をラチェットギア36に一方向にのみ噛み合わせて、ラチェットギア36を回転させるようになっている。
【0028】
このリンク機構6の動きについて詳述すると、切削部4の刃が切削位置まで揺動回転した場合(
図2(a)や
図3(c)の状態)、第一のリンク要素61が第四のリンク要素64側に近づき、第四のリンク要素64が支軸65を中心に左側に回転する。すると、この回転に伴って、第三のリンク要素63が下降し、この第三のリンク要素63と第二のリンク要素62との連結部分も下降するようになる。これにより、第二リンク要素に設けられた爪66が、ラチェットギア36のギアの上を滑りながら左回りに回転するようになる。
【0029】
一方、切削部4の刃が退避位置まで揺動回転した場合(
図2(b)や
図3(d)の状態)、第一のリンク要素61が第四のリンク要素64から離れるように移動し、第四のリンク要素64が支軸65を中心に右側に回転する。そして、この回転に伴って、第三のリンク要素63が上昇し、この第三のリンク要素63と第二のリンク要素62との連結部分も上昇するようになる。これにより、第二のリンク要素62に設けられた爪66が、ラチェットギア36のギアに噛み合い、ラチェットギア36を回転させるようになる。
【0030】
そして、このような構成において、本実施の形態では、このラチェットギア36に噛み合う爪66の噛み合わせ開始位置を調整するための退避部材7を設けるようにしている。
【0031】
この退避部材7は、爪66がラチェットギア36に噛み合う方向に移動している途中に、その爪66をラチェットギア36から持ち上げるようにしたものであって、ここでは、ラチェットギア36の回転軸38に取り付けられた扇状の部材で構成されている。この扇状の退避部材7は、
図4に示すように、ラチェットギア36の径よりも若干大きく構成されており、これを、回転軸38を中心に回転させることによって、爪66を扇状の退避部材7の角部71から外周部分に載せ、爪66をラチェットギア36に噛み合わせないようにしている。そして、
図2(a)や
図3(c)に示すように、退避部材7を右側に回転させることによって、爪66の右側回転開始位置から退避部材7の角部71までの間、爪66を退避部材7の上側を滑らせ、ラチェットギア36に噛み合わせることなく、その爪66が角部71を超えた位置から噛み合わせるようにする。そして、
図6に示すように、爪66の噛み合わせの開始位置を回転方向側にずらすことで、ラチェットギア36の回転量を小さくできるようにしている。一方、
図3から
図2に変化させるように、退避部材7を左側に回転させた場合は、ラチェットギア36の噛み合わせ開始位置が左側にずれるため、ラチェットギア36の回転量が相対的に大きくなる。
【0032】
このような退避部材7の角部71の位置は、調整部8を用いて調整できるようになっている。この調整を手動で行う場合、
図5に示すように、退避部材7にロッド81の一端側を取り付け、そのロッド81の他端側を櫛歯状に設けられたプレート82に噛み合わせる。そして、このプレート82の櫛歯部分の位置を選択することで、退避部材7の回転量、すなわち、ラチェットギア36の爪66の噛み合わせ開始位置を調整できるようにしている。
【0033】
一方、この調整部8を、油圧シリンダーやモーターなどを用いて構成することもできる。この調整部8を油圧シリンダーで構成する場合、退避部材7に取り付けられた油圧シリンダーを伸縮させる。一方、モーターを用いる場合は、退避部材7の回転軸38にモーターを取り付けるか、あるいは、複数のギアを介してモーターを取り付けて、退避部材7の回転量を調整する。
【0034】
次に、このように構成されたロールベールカッター1を用いてロールベール2から作物を切り出す際の作用について説明する。
【0035】
まず、ロールベール2から作物を切り出す際、ロールベール2のフィルムを剥がした状態で、ロールベール2を載置台31に載置させる。すると、ロールベール2が、載置台31の傾斜面に沿って転がるように下方に移動し、壁面部32に当たって止まるようになる。
【0036】
そして、その状態で切削部4を構成する油圧シリンダーを縮める方向に駆動させる。すると、切削部4のカッター41の刃が、壁面部32の下方の開口部37の中(すなわち、切削位置)まで揺動回転し(
図2(a)や
図3(c)の状態)、油圧シリンダーを縮めた分だけ、作物を切り出すようになる。このとき、作物の切削される長さは、直前に切削されたロールベール2の外周面に沿った端部からの長さとなる。
【0037】
そして、このようなカッター41による作物の切り出しが終わった後、油圧シリンダーを伸ばす方向に駆動させ、カッター41を壁面部32の前方の退避位置まで戻す(
図2(b)や
図3(d)の状態)。
【0038】
すると、その切削部4の側面部42に連結された第一のリンク要素61が、右側に移動し、これに伴って、第四のリンク要素64を支軸65を中心に右側に回転する。そして、この第四のリンク要素64の回転に伴って、第三のリンク要素63が上側に移動し、ラチェットギア36の回転軸38に取り付けられた第二のリンク要素62を右側に回転するようになる。
【0039】
すると、第二のリンク要素62に取り付けられた爪66が、退避部材7の角部71から滑り落ち、ラチェットギア36に噛み合って、第二のリンク要素62の回転量だけラチェットギア36を回転させるようになる。
【0040】
そして、このラチェットギア36の回転に伴って、コンベア33を構成する回転部材を回転させ、これによって、突起部35を移動させる。
【0041】
このように突起部35を移動させると、その突起部35によってロールベール2の下端部分を掻き取り、斜め下方に搬送させて回転させる。
【0042】
すると、ロールベール2の外周面のうち、直前に切り出された位置が上側に回転し、まだ切り出されていない外周面の位置が開口部37側に位置するようになる。そして、その状態で、再び、切削部4の油圧シリンダーを縮めて作物を切り出していく。
【0043】
このような作物の切り出しを行っている途中において、作物の切り出し長さを調整する場合、退避部材7の回転位置を調整し、爪66の噛み合わせ開始位置をずらす。
【0044】
この爪66の噛み合わせ位置をずらす場合において、退避部材7に連結されたロッド81の一端を、櫛歯状の調整部8の右側に移動させると、ロッド81を介して退避部材7が、ラチェットギア36の回転軸38を中心に時計方向に回転し、角部71が時計方向に回転するようになる。このとき、退避部材7は、リンク機構6の動きとは独立しているため、切削部4が駆動している途中においても、退避部材7の角部71の位置を自由に調整することができる。
【0045】
このように退避部材7の角部71を時計方向に回転させると、爪66のラチェットギア36に対する噛み合わせ開始位置が、時計方向にずれる。このとき、爪66の回転終端位置はリンク機構6の長さによって決まっているため、噛み合わせ開始位置が回転方向に向けて移動し、ラチェットギア36の回転量が小さくなる。
【0046】
一方、これとは逆に、調整部8における櫛歯状に噛み合う位置を反時計方向に移動させると、退避部材7の角部71が、ラチェットギア36の回転軸38を中心に反時計方向に移動する。
【0047】
すると、この退避部材7の回転に伴って、爪66のラチェットギア36に対する噛み合わせ開始位置が、爪66の回転方向に対して逆側に移動する。これによって、爪66の噛み合わせによる距離が長くなり、ラチェットギア36の回転量が多くなる。
【0048】
そして、このようにラチェットギア36による回転量に応じて搬送・回転装置3によるロールベール2の回転量を変化させ、小さく回転させることによって、直前に切り出されたロールベール2の位置からの作物の切り出し長さを短くし、また、大きく回転させることによって、作物の切り出し長さを長くする。
【0049】
このように上記実施の形態によれば、ラチェットギア36を備えた回転部材の回転によって、ロールベール2を回転させる搬送・回転装置3と、当該搬送・回転装置3によって回転するロールベール2の外周面から作物を切り出すカッター41を備えた切削部4と、当該切削部4を駆動させる駆動部5と、当該駆動部5によって駆動する切削部4と前記搬送・回転装置3に設けられたラチェットギア36との間に跨って設けられたリンク機構6と、当該リンク機構6に設けられ、前記ラチェットギア36に一方向に噛み合う爪66と、を備えたロールベールカッター41において、前記ラチェットギア36の爪66部をラチェットギア36の噛み合わせ位置と、ラチェットギア36から離間させた位置との間で接離させる退避部材7と、当該退避部材7の位置を調整する調整部8と、を備えるようにしたので、カッター41を駆動させている途中であっても、ラチェットギア36に噛み合う爪66の噛み合わせ開始位置をずらすことで、搬送・回転装置3の送り込み量を調整することができるようになり、作物の切り出し長さを調整することができる。また、リンク機構6を取り外して調整する必要がないため、簡単に送り込み量を調整することができるようになる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0051】
例えば、上記実施の形態では、ラチェットギア36の回転量に基づくコンベア33の搬送量を調整するようにしたが、円筒状のローラーの上にロールベール2を載せて回転させるようにしておき、このローラーの端部にラチェットギア36を設けるようにしておいてもよい。そして、このラチェットギア36に一方向にのみ噛み合うような爪66を設け、リンク機構6の変形によって、爪66の位置を移動させ、その爪66に噛み合う分だけローラーを回転させるようにしてもよい。そして、同様の退避部材7を設けておき、ラチェットギア36に対する爪66の噛み合わせ開始位置を左右にずらせるように構成してもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、リンク機構6として、第一のリンク要素61から第四のリンク要素64を用いて構成するようにしたが、リンク機構6を構成する要素の数や形状などについては、これに限定されるものではない。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、ラチェットギア36に噛み合う爪66をリンク機構6に設けるようにしたが、リンク機構6に取り付けることなく、リンク機構6の変形に伴って回転させるような他の部材に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・ロールベールカッター
2・・・ロールベール
3・・・搬送・回転装置
31・・・載置台
32・・・壁面部
33・・・コンベア
34・・・チェーン
35・・・突起部
36・・・ラチェットギア
37・・・開口部
38・・・回転軸
4・・・切削部
41・・・カッター
42・・・側面部
43・・・回転軸
5・・・駆動部
6・・・リンク機構
61・・・第一のリンク要素
62・・・第二のリンク要素
63・・・第三のリンク要素
64・・・第四のリンク要素
65・・・支軸
66・・・爪
7・・・退避部材
71・・・角部
8・・・調整部
81・・・ロッド
82・・・プレート