(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070751
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】棒材切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 47/04 20060101AFI20240516BHJP
B23D 45/04 20060101ALI20240516BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B23D47/04 Z
B23D45/04 A
B23D47/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181464
(22)【出願日】2022-11-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】桝家 克幸
(72)【発明者】
【氏名】大脇 充裕
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040BB12
3C040GG11
3C040HH14
(57)【要約】
【課題】棒材の切断中において、鋸刃で切削された切粉のうちの一部が出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散することを抑制することができる棒材切断機を提供する。
【解決手段】空圧シリンダ88により、棒材14の切断中の出側受部材28は、入側受部材27からの位置が所定の隙間Sよりも大きい第1位置に位置させられ、棒材14の切断完了に際しては、出側受部材28は第1位置よりも入側受部材27に接近した第2位置に位置させられる。これにより、超硬チップ(鋸刃)46で切削される切粉Kのうちの一部が出側受部材28を超えて棒材切断装置10の前方へ飛散する棒材の切断中は、超硬チップ(鋸刃)46で切削される切粉Kのうちの一部が前方へ飛散しても出側受部材28を超え難くなるので、出側受部材28を超えて棒材切断装置10の前方へ飛散することが抑制される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に連なる複数個の鋸刃を外周部に有する円板状の丸鋸を回転させつつ長手状の棒材に切り込ませることにより、該棒材を所定の長さ寸法に切断するに際して、該丸鋸が切り込まれる該棒材の先端部付近を挟持するクランプ装置を備えた棒材切断機であって、
前記クランプ装置は、前記丸鋸の通過を許容するための所定の隙間を前記棒材の長手方向に隔てて前記棒材の長手方向に配設されている入側受部材および出側受部材と、クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材との間で前記棒材を挟持するものであり、
前記出側受部材は、前記棒材の支持面を有するとともに、前記棒材の長手方向に移動可能に設けられ、
前記棒材の切断中は前記出側受部材を前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させ、前記棒材の切断完了に際しては前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させる受部材アクチュエータとを、含む
ことを特徴とする棒材切断機。
【請求項2】
前記出側受部材は、前記入側受部材から離隔するほど前記支持面から低くなる出側傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1の棒材切断機。
【請求項3】
前記出側受部材は、前記第2位置から前記第1位置へ向かうほど前記棒材から離れるように傾斜したガイドレールにより案内されて、前記受部材アクチュエータにより移動させられる移動部材に連結されている
ことを特徴とする請求項1又は2の棒材切断機。
【請求項4】
前記クランプ装置は、前記丸鋸が切り込まれる前記棒材の先端部付近を横方向に挟持する横方向クランプ装置、および、その棒材の先端部付近を縦方向に挟持する縦方向クランプ装置を備え、前記縦方向クランプ装置は、前記クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材により前記棒材を上方から押圧して前記入側受部材との間で挟持するものである
ことを特徴とする請求項1の棒材切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する丸鋸を長手状の棒材を横断する方向に切り込ませることにより、その棒材を所望の長さに切断する棒材切断機に関し、特に、丸鋸の鋸刃に与えるダメージを抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周方向に連なる複数個の鋸刃を外周部に有する円板状の丸鋸を回転させつつ圧延材、引抜材などの長手状の棒材に切り込ませることにより、その棒材を所定の長さ寸法に切断するに際して、その丸鋸が切り込まれる棒材の先端部付近を横方向すなわち水平方向に挟持する横バイスだけでなく、縦方向すなわち垂直方向においても挟持する縦バイスを有するクランプ装置を備えた棒材切断機が知られている。例えば、特許文献1に記載されたものがそれである。
【0003】
上記クランプ装置の縦バイスは、丸鋸の通過を許容するための隙間を棒材の長手方向に隔てて位置固定に設けられた入側受部材および出側受部材と、アクチュエータによって移動させられることにより少なくともその入側受部材との間で棒材を上方から押圧して挟持する押圧部材とを備えて構成されている。それら入側受部材と出側受部材とは、丸鋸からの切断荷重を支持して切断中の棒材の変形を抑制することに寄与関連しており、特に出側受部材は、切断中の丸鋸と干渉しない範囲でその丸鋸に可及的に接近した位置たとえば1~3mmの位置で棒材を支持するように位置させられる。
【0004】
そして、特許文献1の棒材切断装置では、棒材を下方から受ける出側受部材は、その棒材の幅方向寸法よりも小さい予め定められた幅寸法の支持面を用いてその棒材を支持するものであるので、丸鋸による切削によって棒材から発生する切粉は出側受部材の上に堆積することが抑制されるようになっている。これにより、出側受部材上に堆積し且つ相互に絡まった切粉を、切断中の丸鋸の鋸刃がたたくことで発生する、鋸刃のチッピング等の損傷が抑制され、丸鋸の寿命が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような棒材切断装置においては、棒材の切断中において、鋸刃で切削される切粉のうちの一部が棒材切断装置の前方すなわち棒材の送り方向へ飛散するものがある。このような切粉は、出側受部材を超え、切断後の製品とともに製品ボックスに落下するという問題があった。このような場合には、切断後の製品が鍛造行程で加熱後に所定形状に鍛造されると、切粉に起因する局所的な剥がれが発生して製品不良の原因となる。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、棒材の切断中において、鋸刃で切削された切粉のうちの一部が出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散することを抑制することができる棒材切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)周方向に連なる複数個の鋸刃を外周部に有する円板状の丸鋸を回転させつつ長手状の棒材に切り込ませることにより、該棒材を所定の長さ寸法に切断するに際して、該丸鋸が切り込まれる該棒材の先端部付近を挟持するクランプ装置を備えた棒材切断機であって、(b)前記クランプ装置は、前記丸鋸の通過を許容するための所定の隙間を前記棒材の長手方向に隔てて前記棒材の長手方向に配設されている入側受部材および出側受部材と、クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材との間で前記棒材を挟持するものであり、(c)前記出側受部材は、前記棒材の支持面を有するとともに、前記棒材の長手方向に移動可能に設けられ、(d)前記棒材の切断中は前記出側受部材を前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させ、前記棒材の切断完了に際しては前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させる受部材アクチュエータと、を含むことにある。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された棒材切断機によれば、受部材アクチュエータにより、前記棒材の切断中の前記出側受部材は、前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させられ、前記棒材の切断完了に際しては、前記出側受部材は前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させられる。これにより、鋸刃で切削される切粉のうちの一部が出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散する棒材の切断中は、出側受部材が第1位置に位置させられるので、切粉は出側受部材の上に堆積することがなくなるので、丸鋸の寿命が確保されると同時に、鋸刃で切削される切粉のうちの一部が前方へ飛散しても出側受部材を超え難くなるので、出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散することが抑制される。また、棒材の切断完了に際して出側受部材が前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させられた出側受部材により切断完了後の棒材が受けられるので、薄い製品でも排出でき、切断完了後の製品に引きちぎり痕が生じる恐れがない。
【0010】
ここで、好適には、前記出側受部材は、前記入側受部材から離隔するほど前記支持面から低くなる出側傾斜面を有することを特徴とする。このようにすれば、出側受部材の棒材送り出し側においてその支持面から低くなる出側傾斜面上に落下した切断後の棒材が薄くてもころがり落ちる。
【0011】
また、好適には、前記出側受部材は、前記第2位置から前記第1位置へ向かうほど前記棒材から離れるように傾斜したガイドレールにより案内されて、前記受部材アクチュエータにより移動させられる移動部材に連結されている。これにより、棒材に曲がりや径のばらつきがあっても第1位置の出側受部材との接触が回避され、棒材にすり傷を発生させることが抑制される。
【0012】
また、好適には、前記クランプ装置は、前記丸鋸が切り込まれる前記棒材の先端部付近を横方向に挟持する横方向クランプ装置、および、その棒材の先端部付近を縦方向に挟持する縦方向クランプ装置を備え、前記縦方向クランプ装置は、前記アクチュエータによって移動させられる押圧部材により前記棒材を上方から押圧して前記入側受部材との間で挟持するものである。このようにすれば、クランプ装置が、入側受部材および出側受部材とこれに直角な受け面を有する当て板と、斜め方向の単一の油圧シリンダにより駆動される押圧部材との間に棒材を挟圧する形式のものと比較して、相対的に低い押圧力を用いて棒材の先端部付近が確実に固定される利点がある。また、棒材の先端部の固定に際して、縦方向クランプ装置による棒材の固定を、横方向クランプ装置による棒材の固定前に行うことで、固定位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例のスイング式の棒材切断機を示す正面図である。
【
図2】
図1の棒材切断機で用いられている丸鋸と、その丸鋸による切削中に切削液を丸鋸に向かって噴射するノズルとを示す図である。
【
図3】
図2の丸鋸による被削材の切削によって切粉が発生する過程を説明する図である。
【
図4】
図1の要部、すなわち縦方向クランプ装置の一部の構成を拡大して示す図である。
【
図5】
図4に示される出側受部材を前後方向に移動させる出側受部材アクチュエータとが備えられたベース部材を説明する斜視図である。
【
図7】
図1の縦方向クランプ装置の入側受部材および出側受部材の取付け構造を、それらに載置される被削材の側面から示す図である。
【
図8】
図4の棒材を受ける入側受部材及び出側受部材を説明する側面図である。
【
図9】
図1の棒材切断機の正面から横方向クランプ装置及び縦方向クランプ装置により把持された出側受部材上の棒材を見た模式図である。
【
図10】棒材の切断中において出側受部材が第1位置に位置した状態を説明する模式図である。
【
図11】棒材の切断完了に際して第2位置に位置した状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0015】
図1は、本発明の一実施例のスイング式の棒材切断機10を示す正面図である。
図1において、棒材切断機10は、基台12上において、
図1に示す棒材切断機10の背面側に配置される図示しない給材装置から供給された棒材14を、切断毎に間欠的に予め設定された所定寸法ずつ長手方向へ送る、すなわち棒材14の軸心O1に平行な方向へ移動させる図示しない材料定寸送り装置と、下端部が支持軸17を介して支持台18により回動中心C1まわりの回動可能に設けられた傾動部材19の上端部に、回転中心C2まわりの回転可能に設けられた円板状の丸鋸20と、水性或いは油性のミスト状切削液を丸鋸20に向けて噴射するミスト噴射装置22と、丸鋸20を回転駆動するための丸鋸回転駆動装置24と、丸鋸20を金属製の棒材14にその長手方向に直交する方向に切り込ませるために丸鋸20をその棒材14に向けて移動させる丸鋸移動装置26とを備えている。本実施例の棒材14は丸棒状であり、
図1において紙面に垂直な方向へ長手状を成すように配置されている。そして、上記棒材14は、例えば炭素鋼などの一般鋼、合金鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金などの金属から成り、本実施例では断面が円形の金属製棒材である。
【0016】
上記材料定寸送り装置は、丸鋸20の通過を許容するための所定の隙間Sを棒材14の長手方向すなわち軸心O1の方向に隔てて配置されている入側受部材27および出側受部材28上に、先端部が載置された棒材14の中間部或いは後端部をクランプしてその棒材14を切断サイクルに同期して所定寸法ずつ棒材切断機10前方へ送り出すためにその軸心O1に平行な方向へ往復駆動させられる図示しない可動クランプ装置と、入側受部材27および出側受部材28上の棒材14の先端部の位置を、横方向すなわち水平方向から固定する横方向クランプ装置30、および縦方向すなわち垂直方向から固定する縦方向クランプ装置32と、を備えている。
【0017】
上記横方向クランプ装置30および縦方向クランプ装置32は、切断サイクル内において丸鋸20による棒材14の切断に先立ってその棒材14の先端部を固定し、丸鋸20が棒材14の切断が完了するまではその固定状態を維持する。上記可動クランプ装置は、横方向クランプ装置30および縦方向クランプ装置32により棒材14の先端部が固定されておらず且つ丸鋸20が元位置に戻っている区間において、その棒材14を把持しつつ、軸心O1に平行な方向へ例えば油圧シリンダにより予め設定された所定寸法移動させるための可動式のクランプとそのクランプを駆動する駆動装置とを備えるものである。
【0018】
横方向クランプ装置30は、棒材14の軸心O1に直交し且つ入側受部材27および出側受部材28の上面(ワーク支持面)に平行な水平方向すなわち
図1の矢印a方向へ往復運動可能なピストンを有する油圧シリンダ31と、その油圧シリンダ31のピストンロッドに連結されて上記矢印a方向へ移動可能な移動部材34の先端に固定されたクランプパッド36とを備えている。油圧シリンダ31はクランプアクチュエータとして機能している。この横方向クランプ装置30は、上記油圧シリンダ31によりクランプパッド36を棒材14に向けて前進させることにより、棒材14をクランプパッド36と当て板38との間で挟んで固定する。上記当て板38は、棒材14のクランプパッド36と対向する状態で、基台12上の機枠(フレーム)39に直接或いは間接的に位置固定に設けられた板材である。上記当て板38およびクランプパッド36は、それらの間に挟持されている棒材14を切断する丸鋸20の通過を許容するための所定の間隔を隔てた2部材からそれぞれ構成されている。
【0019】
縦方向クランプ装置32は、棒材14を挟んで、入側受部材27および出側受部材28とは反対側において、棒材14の軸心O1に直交し且つ入側受部材27および出側受部材28の上面(被切断材の載置面)に垂直な方向、すなわち
図1の矢印b方向へ往復運動可能なピストンロッドを有する油圧シリンダ40と、その油圧シリンダ40のピストンロッドの先端に固定されたクランプパッド42とを備えている。油圧シリンダ40はクランプアクチュエータとして機能している。縦方向クランプ装置32は、油圧シリンダ40によりクランプパッド42を棒材14に向けて前進させることにより、棒材14をクランプパッド42と入側受部材27および出側受部材28との間で挟んで固定する。なお、横方向クランプ装置30および縦方向クランプ装置32は、棒材14が前記可動クランプ装置により軸心O1方向に送られるときには、棒材14の固定を解除する。また、好適には、棒材14の固定に際して、縦方向クランプ装置32による棒材14の固定は、横方向クランプ装置30による棒材14の固定前に行われる。
【0020】
図2は、
図1に示す丸鋸20の一部を拡大して示す図である。
図2に示すように、丸鋸20は、円板状の台金44と、その台金44の外周部において周方向に一定間隔を隔てて連ねられ、例えばろう付け等により台金44に固着された複数の鋸刃すなわち超硬チップ46とを備えている。そして、
図1に示すように、台金44が回転軸47に一体的に固定され、その回転軸47を介して傾動部材19により回転中心C2まわりの回動可能に支持されている。なお、
図1では、丸鋸20のカバー部材48が一部切欠かれて示されている。
【0021】
超硬チップ46は、たとえば炭化タングステンを主体とした焼結体から成る超硬合金が用いられたチップであり、本発明の鋸刃に相当するものである。本実施例の超硬チップ46は、
図3に示すように、切刃49と、その切刃49に対して丸鋸20の回転方向前方側に形成されたすくい面58とを備えている。
図3は、回転駆動された丸鋸20を棒材14に切り込ませることでその棒材14の外周部を切削している様子を、超硬チップ46の側面側から示す図である。棒材14は、矢印c方向に回転駆動された超硬チップ46が押し付けられることで、その超硬チップ46の切刃49の切削作用により外周部の一部が周方向に沿って取り除かれる。その取り除かれた切粉或いは切粉Kは、切刃49とすくい面58、および凹面60に当たって滑りつつ排出される。上記切粉Kは、凹面60により湾曲形状に変形されて小片に破断されることで、排出が促されるようになっている。
【0022】
本実施例の棒材切断機10は、1刃当たりの切込み量が0.07~0.1mm/刃の、所謂高速切断を実行する。このような高速切断では、切粉Kが棒材切断機10の前方へ飛びやすい傾向にある。
【0023】
図1に戻って、前記丸鋸回転駆動装置24は、丸鋸20を回転中心C2まわりの回転可能に支持する回転軸47と、丸鋸20を回転駆動する動力源としての丸鋸駆動用電動機62と、その丸鋸駆動用電動機62の出力軸の回転を回転軸47に伝達するための例えばプーリおよびベルト等の図示しない伝動部材とを備えている。なお、丸鋸駆動用電動機62は、傾動部材19に固設されている。この丸鋸回転駆動装置24は、丸鋸駆動用電動機62を作動させてその出力軸の回転を上記伝動部材を介して回転軸47に伝達することにより、丸鋸20を矢印c方向に回転駆動する。
【0024】
丸鋸移動装置26は、丸鋸20を棒材14に向かって或いは棒材14とは反対側へ移動させるために、棒材14を載置する入側受部材27および出側受部材28や当て板38が設けられた機枠39と一体の機台64の上面に固定された第1支持部材66と、丸鋸20を支持する傾動部材19の上部に固定された第2支持部材68とを、相互に接近離隔するように駆動する。具体的には、丸鋸移動装置26は、第1支持部材66により回動中心C3まわりの回動可能に支持された中空円筒状の支持部材70と、その支持部材70の軸心と略同心のボールネジ状の回転出力軸を有して、支持部材70の第2支持部材68とは反対側の端部に固設された電気駆動式のサーボモータ72と、一端部が上記ボールネジ回転出力軸の外周側に螺合されつつ支持部材70の内周面により軸心方向の移動可能に且つ軸心まわりの回転不能に支持され、他端部が第2支持部材68により上記回動中心C3に平行な回動中心C4まわりの回動可能に支持された円筒状の軸方向移動部材74とを備えている。この丸鋸移動装置26は、サーボモータ72を作動させて、傾動部材19の上部に第2支持部材68を介して連結された軸方向移動部材74をその軸心方向すなわち
図1の矢印d方向へ移動させることにより、傾動部材19を
図1の矢印e方向へ傾動させる。
【0025】
前記ミスト噴射装置22は、例えば
図1に示す傾動部材19の背面側に配置された図示しないミスト状切削液供給源と、そのミスト状切削液供給源から供給されるミスト状切削液を、
図2に示すように、丸鋸20の回転方向前方であって超硬チップ46のすくい面58に対向する位置からそのすくい面58に向けて矢印f方向すなわち超硬チップ46の回転軌跡Lの接線方向に噴射する第1ノズル76と、棒材14に切り込む直前の超硬チップ46の背面に向かって上記ミスト状切削液を
図2の矢印g方向へ噴射する第2ノズル78とを備えている。
【0026】
図4乃至
図8は、縦方向クランプ装置32の構成をそれぞれ詳しく説明する図である。
図4は、
図1の縦方向クランプ装置32の一部を拡大して示している。
図4において、縦方向クランプ装置32は、厚み方向すなわち軸心O1方向に貫通したU字状或いは矩形の案内溝80と、傾斜板取付面81とを、当て板38に近づく側の長手方向において順に有し、機枠39に直接或いは間接的に手前に突き出すように固定された長手ブロック状のベース部材82を、備えている。
【0027】
図5の斜視図および
図6の平面図に詳しく示すように、ベース部材82の前面には、補強板84を下側に備えた平板状のブラケット86が棒材切断機10の前側へ突設されている。ブラケット86は、ベース部材82から離れるほど僅かに下方へ向かうようにたとえば3~6度程度の傾斜角θで僅かに傾斜させられている。
【0028】
ブラケット86上には、受部材アクチュエータとして機能する空圧シリンダ88と、空圧シリンダ88の出力部材90に連結部材92を介して連結された移動部材94を平面視において棒材14の軸心O1に平行な方向に案内するガイドレール96とが固定されている。移動部材94のうちのベース部材82の矩形の案内溝80を貫通した入側受部材27側の端部には、出側受部材28が固定されている。これにより、棒材14の切断中は空圧シリンダ88の出力部材90が引き込まれて、出側受部材28を入側受部材27からの距離が所定の隙間Sよりも大きい第1位置に位置させられる。また、棒材14の切断完了に際して空圧シリンダ88の出力部材90が突き出されると、出側受部材28は第1位置よりも入側受部材27に接近した第2位置に位置させられる。この第2位置では、出側受部材28と入側受部材27との間に所定の隙間Sが形成され、出側受部材28と丸鋸20との間には、1~3mm程度の隙間が形成される。
図7において、実線で示されている出側受部材28は第2位置に位置し、1点鎖線で示されている出側受部材28は第1位置に位置している。
【0029】
入側受部材27及び出側受部材28は、棒材14の支持面18aおよび28aを有する部材である。出側受部材28において、支持面28aが一定の高さであれば支持面28aは棒材14の最大幅寸法以上の幅寸法を有するものとなるが、支持面28aが棒材14の直下だけ局所的に突設されたものであれば支持面28aはたとえば棒材14の径の1/3以上の幅寸法を有するものとなる。入側受部材27は機枠39に固定されている。出側受部材28は、棒材14の軸心O1方向においてたとえば1mm程度の極めて小さな幅寸法の長手状の面取り面である支持面28aと、支持面28aに続いて入側受部材27から離隔するほど支持面28aから低くなる出側傾斜面28bとを有し、支持面28aの長手方向が棒材14の軸心O1方向に直交するように移動部材94に取り付けられている。
【0030】
図7に示すように、ベース部材82の傾斜板取付面81には、出側傾斜面28bと同じ角度で傾斜した第1傾斜板98が固定されており、出側傾斜面28bと同じ角度で傾斜した第2傾斜板100が第1傾斜板98に続いてベース部材82に傾斜板支持ブラケット102を介して固定されている。棒材14から切断された製品は、出側傾斜面28b、第1傾斜板98、および第2傾斜板100により滑落し、図示しない製品箱内に収容される。
【0031】
以上のように構成された縦方向クランプ装置32は、棒材14の切断に先立って、油圧シリンダ40によりクランプパッド42を棒材14に向けて上方から下降させることにより、棒材14の先端部をクランプパッド42と入側受部材27および出側受部材28との間で挟んで固定する。棒材14の切断に際しては、棒材14の切断中は空圧シリンダ88の出力部材90が引き込まれて、出側受部材28を入側受部材27からの距離が所定の隙間Sよりも大きい第1位置に位置させられ、棒材14の切断完了に際して空圧シリンダ88の出力部材90が突き出されると、出側受部材28は第1位置よりも入側受部材27に接近した第2位置に位置させられるように、空圧シリンダ88が図示しない電子制御装置により制御される。
【0032】
図8に示すように、ブラケット86は、ベース部材82から離れるほど僅かに下方へ向かうように、たとえば5~6度程度の傾斜角θで傾斜させられているので、ガイドレール96により案内される移動部材94、移動部材94に固定された出側受部材28の移動軌跡は、ベース部材82から離れるほど僅かに下方へ向かう傾斜角θで傾斜させられている。
【0033】
上記のように構成される棒材切断機10においては、先ず、棒材14の端部が、図示しない材料定寸送り装置により図示しない給材装置から入側受部材27および出側受部材28上に供給される。次いで、その棒材14が、バイス取付フレーム16に設けられた横方向クランプ装置30および縦方向クランプ装置32によりクランプされて固定される。次いで、丸鋸回転駆動装置24により回転駆動された丸鋸20が、丸鋸移動装置26により棒材14に向けて移動させられる。そして、ミスト噴射装置22の第1ノズル76および第2ノズル78から丸鋸20に向けてミスト状切削液が噴射されつつ、丸鋸20が予め設定された切込速度(移動速度)に応じて棒材14に切り込まれる。この丸鋸20による切断中には、棒材14からの切粉Kが多量に発生して下方へ落下させられる。この切粉Kはカール状の複雑な形状やばりを有していて僅かな面や隙間に引っ掛かりやすく、高速切断ほど切粉Kが棒材切断機10の前方へ飛びやすい傾向にある。
【0034】
棒材切断機10では、上記のような棒材14の切断サイクルに同期して、出側受部材28が棒材切断機10の前後方向すなわち棒材14の方向にガイドレール96に沿って往復駆動されるようになっている。この出側受部材28の往復作動を、棒材14と出側受部材28との関係を説明する模式図である
図9から
図11を用いて、以下に説明する。
図9は、棒材切断機10の正面から横方向クランプ装置30及び縦方向クランプ装置32により把持された出側受部材28上の棒材14を見た図、
図10は、棒材14の切断中において出側受部材28が第1位置に位置した状態を説明する図、
図11は、棒材14の切断完了に際して第2位置に位置した状態を説明する図である。
【0035】
図10は、空圧シリンダ88により第1位置に位置させられた出側受部材28が、棒材14を直接受けておらず、棒材14に対して1~3mm程度の隙間を隔てている状態を示している。
図11は、空圧シリンダ88により第2位置に位置させられた出側受部材28が、棒材14を直接受けておらず、棒材14に対して0~0.3mm程度の隙間を隔てている状態を示している。
【0036】
上述のように、本実施例の棒材切断機10によれば、空圧シリンダ(受部材アクチュエータ)88により、棒材14の切断中の出側受部材28は、入側受部材27からの位置が所定の隙間Sよりも大きい第1位置に位置させられ、棒材14の切断完了に際しては、出側受部材28は第1位置よりも入側受部材27に接近した第2位置に位置させられる。これにより、超硬チップ(鋸刃)46で切削される切粉Kのうちの一部が出側受部材28を超えて棒材切断装置10の前方へ飛散する棒材の切断中は、出側受部材28が第1位置に位置させられるので、切粉Kは出側受部材28の上に堆積することがなくなり、丸鋸20の寿命が確保されると同時に、超硬チップ(鋸刃)46で切削される切粉Kのうちの一部が前方へ飛散しても出側受部材28を超え難くなるので、出側受部材28を超えて棒材切断装置10の前方へ飛散することが抑制される。また、棒材14の切断完了に際して出側受部材28が前記第1位置よりも入側受部材27に接近した第2位置に位置させられた出側受部材28により切断完了後の棒材14(製品)が受けられるので、薄い製品でも排出でき、切断完了後の製品に引きちぎり痕が生じる恐れがない。
【0037】
また、本実施例の棒材切断機10は、出側受部材28は、入側受部材27から離隔するほど支持面28aから低くなる出側傾斜面28bを有する。これにより、出側受部材28の棒材14の送り出し側においてその支持面28aから低くなる出側傾斜面上に落下した切断後の棒材14が薄くてもころがり落ちる利点がある。
【0038】
また、本実施例の棒材切断機10では、出側受部材28は、第2位置から第1位置へ向かうほど棒材14から離れるように傾斜したガイドレール96により案内されて、空圧シリンダ(受部材アクチュエータ)88により移動させられる移動部材94に連結されている。これにより、棒材14に曲がりや径のばらつきがあっても第1位置の出側受部材28との接触が回避され、棒材14にすり傷を発生させることが抑制される。
【0039】
また、本実施例の棒材切断機10は、丸鋸20が切り込まれる棒材14の先端部付近を横方向に挟持する横方向クランプ装置30、および、棒材14の先端部付近を縦方向に挟持する縦方向クランプ装置32を備え、その縦方向クランプ装置32は、アクチュエータ40によって移動させられる押圧部材42により棒材14を上方から押圧して入側受部材27との間で挟持するものである。このため、クランプ装置が、入側受部材27および出側受部材28とこれらの受け面と直角な受け面を有する当て板38と、斜め方向の単一の油圧シリンダにより駆動される押圧部材との間に棒材を挟圧する形式のものと比較して、相対的に低い押圧力を用いて棒材14の先端部付近が確実に固定される利点がある。また、棒材14の先端部の固定に際して、縦方向クランプ装置32による棒材14の固定を、横方向クランプ装置30による棒材14の固定前に行うことで、固定位置精度を高めることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0041】
たとえば、前述の実施例において、棒材14の切断完了に際して第2位置に位置させられる出側受部材28は、棒材14の切断完了の直前、棒材14の切断完了と同時、棒材14の切断完了の直後に、第2位置へ移動させられてもよい。
【0042】
また、前述の実施例において、出側受部材28を第1位置及び第2位置に選択的に位置させるために空圧シリンダ88が用いられていた。しかし、それに替えて、電磁アクチュエータ、油圧シリンダなどの他の受部材アクチュエータが用いられていてもよい。
【0043】
また、前述の実施例において、棒材14は、丸棒鋼、H型鋼、溝型鋼であったが、これに限らず、円筒状鋼、L字鋼、異型断面材など様々な断面形状の棒材であってもよい。
【0044】
また、前述の実施例において、棒材切断機10は、スイング式のものであったが、これに限らず、例えば、横スライド式、又は縦スライド式のもの等であってもよい。
【0045】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
周方向に連なる複数個の鋸刃を外周部に有する円板状の丸鋸を回転させつつ長手状の棒材に切り込ませることにより、該棒材を所定の長さ寸法に切断するに際して、該丸鋸が切り込まれる該棒材の先端部付近を挟持するクランプ装置を備えた棒材切断機であって、
前記クランプ装置は、前記丸鋸の通過を許容するための所定の隙間を前記棒材の長手方向に隔てて前記棒材の長手方向に配設されている入側受部材および出側受部材と、クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材との間で前記棒材を挟持するものであり、
前記出側受部材は、前記棒材の支持面を有するとともに、前記棒材の長手方向に移動可能に設けられ、
前記棒材の切断中は前記出側受部材を前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させ、前記棒材の切断完了に際しては前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させる受部材アクチュエータとを、含み、
前記出側受部材は、前記第2位置から前記第1位置へ向かうほど前記棒材から離れるように傾斜したガイドレールにより案内されて、前記受部材アクチュエータにより移動させられる移動部材に連結されている
ことを特徴とする棒材切断機。
前記クランプ装置は、前記丸鋸が切り込まれる前記棒材の先端部付近を横方向に挟持する横方向クランプ装置、および、その棒材の先端部付近を縦方向に挟持する縦方向クランプ装置を備え、前記縦方向クランプ装置は、前記クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材により前記棒材を上方から押圧して前記入側受部材との間で挟持するものである
ことを特徴とする請求項1の棒材切断機。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)周方向に連なる複数個の鋸刃を外周部に有する円板状の丸鋸を回転させつつ長手状の棒材に切り込ませることにより、該棒材を所定の長さ寸法に切断するに際して、該丸鋸が切り込まれる該棒材の先端部付近を挟持するクランプ装置を備えた棒材切断機であって、(b)前記クランプ装置は、前記丸鋸の通過を許容するための所定の隙間を前記棒材の長手方向に隔てて前記棒材の長手方向に配設されている入側受部材および出側受部材と、クランプアクチュエータによって移動させられる押圧部材との間で前記棒材を挟持するものであり、(c)前記出側受部材は、前記棒材の支持面を有するとともに、前記棒材の長手方向に移動可能に設けられ、(d)前記棒材の切断中は前記出側受部材を前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させ、前記棒材の切断完了に際しては前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させる受部材アクチュエータと、を含み、(e)前記出側受部材は、前記第2位置から前記第1位置へ向かうほど前記棒材から離れるように傾斜したガイドレールにより案内されて、前記受部材アクチュエータにより移動させられる移動部材に連結されていることにある。
このように構成された棒材切断機によれば、受部材アクチュエータにより、前記棒材の切断中の前記出側受部材は、前記入側受部材からの位置が前記所定の隙間よりも大きい第1位置に位置させられ、前記棒材の切断完了に際しては、前記出側受部材は前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させられる。これにより、鋸刃で切削される切粉のうちの一部が出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散する棒材の切断中は、出側受部材が第1位置に位置させられるので、切粉は出側受部材の上に堆積することがなくなるので、丸鋸の寿命が確保されると同時に、鋸刃で切削される切粉のうちの一部が前方へ飛散しても出側受部材を超え難くなるので、出側受部材を超えて棒材切断装置の前方へ飛散することが抑制される。また、棒材の切断完了に際して出側受部材が前記第1位置よりも前記入側受部材に接近した第2位置に位置させられた出側受部材により切断完了後の棒材が受けられるので、薄い製品でも排出でき、切断完了後の製品に引きちぎり痕が生じる恐れがない。
また、前記出側受部材は、前記第2位置から前記第1位置へ向かうほど前記棒材から離れるように傾斜したガイドレールにより案内されて、前記受部材アクチュエータにより移動させられる移動部材に連結されている。これにより、棒材に曲がりや径のばらつきがあっても第1位置の出側受部材との接触が回避され、棒材にすり傷を発生させることが抑制される。