(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070776
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】プラスチックラップ用ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/181 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
C08G63/181
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023032324
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】111143216
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】翁 梓桓
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029BA05
4J029BD07A
4J029BF30
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029FC03
4J029JB131
4J029JC152
4J029JF321
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的性質を向上させ、さらにプラスチックラップへの適用性を高めることができるプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックラップ用ポリエステルの製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、および脂肪族アルコールが提供され、前記前記芳香族カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸のうちの少なくとも2つを含む。前記芳香族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸、および前記脂肪族アルコールを少なくとも、エステル化反応、予備重合反応、および重合反応を順次に行い、ポリブチレンアジペートテレフタレートを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックラップ用ポリエステルの製造方法であって、
芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、および脂肪族アルコールを提供し、前記芳香族カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸のうちの少なくとも2つを含むことと、
前記芳香族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸、および前記脂肪族アルコールを少なくとも、エステル化反応、予備重合反応、および重合反応を順次に行い、ポリブチレンアジペートテレフタレートを形成することと、を含む、プラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族カルボン酸は、炭素数4~10のジカルボン酸を1つ以上含む、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族アルコールは、炭素数4~12のジオールを1つ以上含む、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記芳香族カルボン酸において、前記フタル酸および前記イソフタル酸の合計モル数と、前記テレフタル酸のモル数との比が、0.01:0.99~0.5:0.5の範囲である、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記芳香族カルボン酸において、前記フタル酸のモル数と、前記イソフタル酸のモル数との比が、0:1~1:0の範囲である、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸のモル数と、前記脂肪族カルボン酸のモル数との比が、0.55:0.45~0.2:0.8の範囲である、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸の合計モル数と、前記脂肪族アルコールのモル数との比が、45:55~55:45の範囲である、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸は総添加量を有し、前記脂肪族カルボン酸の添加量と、前記総添加量との比が45モル%~80モル%の範囲である、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートは、プラスチックラップに適用される、請求項1に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【請求項10】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートが、前記プラスチックラップの95重量%以上を占める、請求項9に記載のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックラップ用ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、過去にプラスチックラップに使用されたポリ塩化ビニル(PVC)またはポリエチレン(PE)などの材料は、非生分解性材料である。環境保護に対する公衆意識が徐々に向上させるにつれ、前記非生分解性材料を置き換えるために、公衆は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの環境に優しい生分解性材料を選択し始めている。しかし、ポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的性質(例えば、伸張性、柔軟性および回復性など)は不十分であり、ポリブチレンアジペートテレフタレートのプラスチックラップへの適用は制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的性質を向上させ、さらにプラスチックラップへの適用性を高めることができるプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法は、少なくとも以下の工程を提供する。芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、および脂肪族アルコールが提供され、前記前記芳香族カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸のうちの少なくとも2つを含む。前記芳香族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸、および前記脂肪族アルコールを少なくとも、エステル化反応、予備重合反応、および重合反応を順次に行い、ポリブチレンアジペートテレフタレートを形成する。
【0005】
本発明の一実施形態において、前記脂肪族カルボン酸は、炭素数4~10のジカルボン酸を1つ以上含む。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記脂肪族アルコールは、炭素数4~12のジオールを1つ以上含む
【0007】
本発明の一実施形態において、前記芳香族カルボン酸において、前記フタル酸および前記イソフタル酸の合計モル数と、前記テレフタル酸のモル数との比が、0.01:0.99~0.5:0.5の範囲である。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記芳香族カルボン酸において、前記フタル酸のモル数と、前記イソフタル酸のモル数との比が、0:1~1:0の範囲である。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸のモル数と、前記脂肪族カルボン酸のモル数との比が、0.55:0.45~0.2:0.8の範囲である。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸の合計モル数と、前記脂肪族アルコールのモル数との比が、45:55~55:45の範囲である。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸は総添加量を有し、前記脂肪族カルボン酸の添加量と、前記総添加量との比が45モル%~80モル%の範囲である。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートは、プラスチックラップに適用される。
【0013】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートが、前記プラスチックラップの95重量%以上を占める。
【発明の効果】
【0014】
以上により、本発明は、ポリエステルの製造方法を向上させる。テレフタル酸の一部をフタル酸および/またはイソフタル酸に置き換える出発原料を設計することにより、曲がる分子形状、より低い配列、より低い結晶性を有するポリブチレンアジペートテレフタレートが得られる。したがって、本発明のポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的特性(自己粘着性および/または回復性など)が向上し、これによりプラスチックラップへの適用性を向上させる。
【0015】
理解されるべき本開示の特徴および利点をより容易にするために、実施形態を添付の図面と共に以下のように詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法の模式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明のために、特定の詳細を明らかにする例示的な実施形態が本発明の様々な原理の十分な理解を提供するために記載される。しかしながら、当業者には、本開示から利益を得て、本発明が本明細書に開示された特定の詳細を逸脱する他の実施形態で実施され得ることが明らかである。さらに、既知の装置、方法及び材料については、本発明の様々な原理の説明を曖昧にしないように、その説明を省略する場合があり得る。
【0018】
範囲はここでは「約」特定の値から別の「約」特定の値までとして表現され得、特定の値及び/又は別の特定の値までとして直接的にも表現され得る。範囲を表現する場合、別の実施形態では、ある特定の値から及び/又は別の特定の値までを含む。同様に、ある値が先行詞「約」を用いて近似値として表現される場合、その特定の値は、別の実施形態を形成することを理解されたい。さらにまた、各範囲の端点は、明らかに別の端点に関連するか、又は独立していることも理解されるべきである。
【0019】
本明細書において、非限定的な用語(可能である、あり得る、例えば、又はその他の同様の用語など)は、必須ではない、又は任意の実装、包含、追加、若しくは存在である。
【0020】
明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、別段の定義がない限り、本発明が属する技術分野において当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。また、用語(一般的に使用される辞書に定義される用語など)は、本明細書で明示的に定義されていない限り、関連する技術的背景における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化された、又は過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことも理解されるべきである。
【0021】
図1は本発明の一実施形態のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法の模式的フローチャートである。
図1を参照して、工程S100において、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、および脂肪族アルコールが提供され、前記前記芳香族カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸のうちの少なくとも2つを含む。次に、工程S200において、前記芳香族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸、および前記脂肪族アルコールを少なくとも、エステル化反応、予備重合反応、および重合反応を順次に行い、ポリブチレンアジペートテレフタレートを形成する。これにより。本実施形態は、ポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的性質を向上させる。テレフタル酸の一部をフタル酸および/またはイソフタル酸に置き換える出発原料を設計することにより、得られるポリブチレンアジペートテレフタレートは、曲がる分子形状、より低い配列、より低い結晶性を有する。これにより、本発明のポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的特性(自己粘着性および/または回復性など)が向上され、これによりプラスチックラップへの適用性を向上させる。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートは、プラスチックラップに適用され、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートは、例えば、前記プラスチックラップの95重量%以上を占める。本実施形態のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法により製造されるポリブチレンアジペートテレフタレートは、向上された物理的特性を有し、これにより、プラスチックラップの要件を満たすために他の生分解性ポリマーまたはフィラーなどの添加剤と混練する必要がなく、ここで、混練の添加剤は、延性を向上させるためのアクリレートおよび/または柔軟性および接着を改善するためのグリセリンを含むことができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、前芳香族カルボン酸において、前記フタル酸および前記イソフタル酸の合計モル数と、前記テレフタル酸のモル数との比が、0.01:0.99~0.5:0.5の範囲(例えば、0.01:0.99、0.05:0.95、0.1:0.9、0.2:0.8、0.3:0.7、0.4:0.6、0.5:0.5、または0.01:0.99~0.5:0.5の任意の比率)である。ついくつかの実施形態において、前記芳香族カルボン酸において、前記フタル酸のモル数と、前記イソフタル酸のモル数との比が、0:1~1:0の範囲(例えば、0:1、0.1:0.9、0.3:0.7、0.5:0.5、0.7:0.3、0.9:0.1、1:0、または0:1~1:0の任意の比率)である。すなわち、前記フタル酸および前記イソフタル酸のいずれの一方または両方添加することができる。ただし、本発明はこれに限定されない。前記芳香族カルボン酸は、前記フタル酸、前記イソフタル酸および前記テレフタル酸を少なくとも2つを含むものであれば、前記芳香族カルボン酸における前記フタル酸、前記イソフタル酸および前記テレフタル酸の比率は、実際の設計要件により決定または調整することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記脂肪族カルボン酸は、炭素数4~10のジカルボン酸を1つ以上含む。例えば、前記脂肪族カルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸のうちの1つ以上を含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸のモル数と、前記脂肪族カルボン酸のモル数との比が、0.55:0.45~0.2:0.8の範囲(例えば、0.55:0.45、0.5:0.5、0.4:0.6、0.3:0.7、0.2:0.8、または0.55:0.45~0.2:0.8の任意の比率)であり、ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記脂肪族カルボン酸の添加量を増加すると、ポリブチレンアジペートテレフタレートの柔軟性および自己粘着性(すなわち、物体の表面への材料の付着力)を、さらに向上させることができる。したがって、前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸の総添加量に対する前記脂肪族カルボン酸の添加量は、45モル%~80モル%(例えば、45モル%、55モル%、65モル%、75モル%、 80モル%または45モル%~80モル%の範囲の任意の比率)であり、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記脂肪族アルコールは、炭素数4~12のジオール(直鎖または側鎖を含む)を1つ以上含む。例えば、前記脂肪族アルコールは、1,4-ブタンジオール(14-BG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、2,4:3,5-ジ-O-メチレン-D-グルシトールのうちの1つ以上を含む、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートにおいて、前記芳香族カルボン酸と前記脂肪族カルボン酸の合計モル数と、前記脂肪族アルコールのモル数との比が、45:55~55:45の範囲(例えば、45:55、50:50、55:45、または45:55~55:45の範囲の任意の比率)であり、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0029】
いくつかの実施形態において、炭素数6~12の長鎖脂肪族ジオールを添加すると、ポリブチレンアジペートテレフタレートの柔軟性および自己粘着性(すなわち、物体の表面への材料の付着力)を、さらに向上させることができる。例えば、脂肪族アルコールの総添加量に対して、前記炭素数6~12の長鎖脂肪族ジオールの添加量の比率は、0モル%~50モル%(例えば、5モル%、10モル%、20モル%、30mol%、40mol%、または0mol%~50mol%の範囲の任意の比率)であり、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0030】
図1の工程S200における各反応および他の任意の反応の詳細は、以下でさらに説明する。注意すべきこととしては、当業者であれば、以下の工程のパラメータ、順序、および製造方法を実際の必要に応じて調整できる。以下の工程は、単に例として提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0031】
<エステル化反応>
【0032】
いくつかの実施形態において、エステル化反応の反応温度は、160℃~220℃の範囲であってよく、且つ圧力は、常圧(約760Torr)でよい。例えば、エステル化反応は、以下の工程により行うことができる。工程(1)において、2Lの反応瓶(4口)を用意し、反応瓶の上方の口からメカニカルスターラーを挿入し、残りの3口をそれぞれ窒素ガス導入口、温度制御用熱電対挿入口、およびディーンスターク(Dean-stark)デバイスとする。工程(2)において、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、脂肪族アルコールを順次秤量し、反応瓶に投入する。工程(3)において、反応瓶を加熱袋に入れ、窒素ガスの流量を40ml/分に設定し、温度を190℃に設定する。そして、温度が100℃に上昇すると、スターラーを始動して速度を100rpmに設定し、温度が140℃に上昇すると、スターラーの速度を200rpmに設定し、190℃まで昇温すると、1時間反応させて酸価を測定し、エステル化率を計算し、これによりエステル化率が70%以上であることを確認する。工程(4)において、温度を220℃まで昇温し、1.5時間反応を継続する。そして、サンプルを取り、その酸価を測定し、エステル化率を算出し、これによりエステル化率が90%以上であることを確認する。
【0033】
<予備重合反応>
【0034】
いくつかの実施形態において、予備重合反応の反応温度は、160℃~220℃の範囲であってよく、且つ圧力は、100Torr以下でよい。例えば、予備重合反応は、以下の工程により行うことができる。工程(1)において、温度を180℃に制御し、チタン触媒(例えば、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、またはチタン(IV)2-エチルヘキシルオキシド)を秤量し、反応に加える。工程(2)において、真空ポンプを用いて100Torr以下に排気し、圧力が安定した後、190℃まで昇温し、1時間反応させる。工程(3)において、蒸気が蒸発しない後、温度を220℃および/または230℃に上昇し、30分間反応させる。工程(4)において、温度を200℃に下げ、真空ポンプを停止して窒素ガスにより真空を破り、スターラーと温度制御装置を取り外し、後での使用のためにPBATプレポリマーを注ぎ出し冷却する。
【0035】
<重合反応>
【0036】
いくつかの実施形態において、重合反応の反応温度は、230℃~250℃の範囲であってよく、且つ圧力は、1Torr以下でよい。例えば、重合反応は、以下の工程により行うことができる。工程(1)において、予備重合反応で得られるPBATプレポリマーを2Lの重合槽に入れる。工程(2)において、PBATプレポリマーの供給が終了後、供給口を閉め、窒素ガスを流してタンク内の空気を置換する(10分間)。工程(3)において、温度を200℃に設定し、回転速度を徐々に60rpmまで調整する。工程(4)において、温度および回転速度が目標値に到達すると、真空ポンプのスイッチを入れ、圧力を1Torr未満に下げる。工程(5)において、真空値が目標値に到達する時点で、温度を245℃~250℃に設定し、反応トルク(torque)値の変化を観察する。工程(6)において、トルク値が所定の目標値に到達すると、真空ポンプを止め、窒素ガスを導入して反応系統を常圧に戻す。工程(7)において、後に他の反応が行わない場合、反応槽の底弁を開いて材料を排出し、PBAT生成物を得る。ここで、重合反応は、必要に応じて、反応を補助する適切な触媒を添加して行うこともできるが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記重合反応の工程(7)の後に、必要に応じて鎖延長反応を行うことができる。また、鎖延長反応の反応温度は150℃~200℃の範囲でよく、圧力は常圧(約760Torr)でよい。例えば、鎖延長反応は以下の工程で行うことができる。反応槽の温度を200℃に下げ、窒素ガスを連続的に導入し、攪拌軸の回転数を60rpmに保ち、鎖延長剤を反応槽に投入し、5分~20分反応させる。鎖延長剤として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4‘-ジイソシアナート等のイソシアネート、及び/又はDR4468、ADR4368、ADR4370等のADR系が挙げられる。反応槽の底弁を開いて材料を排出し、PBAT生成物が得られる。
【0038】
以下の表1は、上記本発明のポリエステルの製造方法を理解するために、ポリエステルの組成および対応する性能データ(表1に示される材料の数値単位は「wt%」である)を提供する。しかし、これらのデータは例示であり、本発明はこれらの例に限定されない。比較例は、#1および#4(テレフタル酸のみ使用)である。ここで、表1における「自己粘着性(接着)」の試験は、対応するPBTA材料により作製したプラスチックラップ(厚さは、7μm~15μmであってよい)を3cm×10cmに切断し、2枚のプラスチックラップを取り、1Kgのローラー(常温)で貼り付け、その後、引張試験機により、材料の剥離強度を分析する。数値が高いと、自己粘着性が良く、フィルムとフィルムとの付着性が良い。ここで、表1における「回復性」は、回転式レオメーターを用いて評価した。評価方法は、回転式レオメータによる引張試験を行うことを含む。1cm(幅)×10cm(長さ)のサイズの試料を、回転レオメーター(25℃)により、10%の変形量(例えば、10cmを11cmに伸ばす)に変形し、この変形量を維持するための必要な力(F1)を計測する。この変形量を120秒後まで維持し、この変形量を維持するための必要な力(F2)を計測する。F2/F1*100%がここで定義する回復性である。説明するべきことは、回復性が高いであることは、伸ばすと元の状態に戻りやすいであり、それにより対象物に付着にくいという問題がある。
【0039】
【0040】
以上をまとめ、本発明はポリエステルの製造方法を向上させる。テレフタル酸の一部をフタル酸および/またはイソフタル酸に置き換える出発原料を設計することにより、曲がる分子形状、より低い配列、より低い結晶性を有するポリブチレンアジペートテレフタレートが得られる。したがって、本発明のポリブチレンアジペートテレフタレートの物理的特性(自己粘着性および/または回復性など)が向上され、これによりプラスチックラップへの適用性を向上させる。
【0041】
本発明を実施例で以上の通り開示したが、それは本発明を限定することを目的としたものではなく、凡そ当業者であれば、本発明の精神及び範囲から脱離しない範囲で、いくらかの変更及び修飾を行うことができるから、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とするべきである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のプラスチックラップ用ポリエステルの製造方法は、自己粘着性および/または回復性が向上したプラスチックラップ用ポリエステルの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
S100、S200:工程
【外国語明細書】