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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070788
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077142
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】111143159
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517367504
【氏名又は名称】聯亜光電工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LandMark Optoelectronics Corporation
【住所又は居所原語表記】No.12, Nanke 9th Rd., Shanhua Dist., Tainan Science-Based Industrial Park, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】黄泓文
(72)【発明者】
【氏名】陳勇超
(72)【発明者】
【氏名】王奕翔
(72)【発明者】
【氏名】林蔚
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA01
5F149AB07
5F149BA05
5F149BA13
5F149CB03
5F149DA26
5F149DA29
5F149DA30
5F149GA06
5F149LA01
5F149XB18
5F149XB34
(57)【要約】
【課題】製造品質を上げて暗電流が高すぎる欠陥品になることを避けることができる光検出器を提供する。
【解決手段】格子定数が基本値である基板2と基板2に重なるように設置されている緩衝層3と、緩衝層3に形成されているものであって、格子定数が基本値より大きく且つ基板2から離れる方向に沿って格子定数が徐々に増加する順で配列されている複数のサブ層部41を含む漸増層4と、漸増層4に形成されており、且つ、格子定数が複数のサブ層部41の格子定数以上の設定値であるバリヤー層5と、バリヤー層5に形成されている吸収層6と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子定数が基本値である基板と
前記基板に重なるように設置されている緩衝層と、
前記緩衝層に形成されているものであって、格子定数が前記基本値より大きく且つ前記基板から離れる方向に沿って格子定数が徐々に増加する順で配列されている複数のサブ層部を含む漸増層と、
前記漸増層に形成されており、且つ、格子定数の設定値が前記基本値より大きく且つ前記複数のサブ層部のそれぞれの格子定数以上であるバリヤー層と、
前記バリヤー層に形成されている吸収層と、を備えることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
前記基板は、第13族元素である第1の元素を含み、
前記バリヤー層は、前記第1の元素と、前記第1の元素と異なり且つ第13族元素である第2の元素と、を含み、
前記漸増層の前記複数のサブ層部のそれぞれは、前記第1の元素及び前記第2の元素を含み、
前記複数のサブ層部は、前記基板から前記バリヤー層へ向かう方向に沿って、前記サブ層部が含む第13族元素における前記第1の元素の割合の前記第2の元素の割合に対する比の値が徐々に減少する順で配列されていることを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記基板は、ヒ化ガリウムにより構成されており、前記第1の元素は、ガリウムであり、
前記バリヤー層は、ヒ化インジウムガリウムにより構成されており、前記第2の元素は、インジウムであることを特徴とする請求項2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記漸増層は、ヒ化インジウムガリウムにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の光検出器。
【請求項5】
前記漸増層の前記複数のサブ層部においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比は、(1-X):Xであり、式中Xは0.03~0.24であることを特徴とする請求項3に記載の光検出器。
【請求項6】
前記基板は、ヒ化ガリウムにより構成されており、前記第1の元素は、ガリウムであり、
前記バリヤー層は、リン化インジウムガリウムにより構成されており、前記第2の元素は、インジウムであることを特徴とする請求項2に記載の光検出器。
【請求項7】
前記漸増層は、リン化インジウムガリウムにより構成されていることを特徴とする請求項6に記載の光検出器。
【請求項8】
前記漸増層の前記複数のサブ層部においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比は、(1-X):Xであり、式中Xは0.48~0.72であることを特徴とする請求項6に記載の光検出器。
【請求項9】
前記バリヤー層に直接に接する前記サブ層部においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比の値は、前記バリヤー層においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比の値と同じであることを特徴とする請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の光検出器。
【請求項10】
前記吸収層は、ヒ化インジウムガリウムにより構成されていることを特徴とする請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の光検出器。
【請求項11】
前記漸増層、前記バリヤー層及び前記吸収層は、前記緩衝層から、前記基板と略直交する基準線と結晶成長角度になる方向に沿って結晶成長されたものであり、
前記結晶成長角度は、6度~14度であることを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項12】
前記吸収層に形成されており、且つ、少なくとも1つの入光口が画成されているウィンドウ層を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項13】
前記ウィンドウ層は、リン化インジウムガリウムにより構成されていることを特徴とする請求項12に記載の光検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体検出器に関し、特に光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示されるように、現有の光検出器1は、分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy)のプロセスにより、一層一層で構成され、且つ、基板11と、基板11に形成されている緩衝層12と、緩衝層12に形成されており且つ光エネルギーを阻んで電気信号を生成する量子井戸層13と、量子井戸層13に形成されており且つ光エネルギーを吸収する吸収層14と、吸収層14に形成されており且つ入光範囲を制限するウィンドウ層15とを順に含む。
【0003】
光検出器1の動作時には、光がウィンドウ層15により限定された入光範囲で吸収層14に照射され、吸収層14が吸収した光エネルギーを量子井戸層13に伝送し、量子井戸層13における各種の材料により形成されたバンドギャップパラメーター(bandgap parameter)に合わせて、量子井戸層13が光エネルギーを吸収してエネルギー準位シフト(energy shift)が生じることで、吸収した光エネルギーに対応する電気信号が生成される。
【0004】
生成された電気信号により、特定の式を用いて計算することで、光エネルギーを検出する目的を達成することができる。
【0005】
基板11と量子井戸層13との間に形成された緩衝層12は、主に基板11と類似する材料を採用する。具体的には、基板11にN+型ドープヒ化ガリウム(GaAs)を採用する場合、緩衝層12としてN型ドープヒ化ガリウムが使用でき、量子井戸層13の成分と基板11の成分との差異が大きい場合において、緩衝層12は、基板11と量子井戸層13との間でエピタキシー成長時の緩衝とすることができる。
【0006】
しかし、光検出器1の各層構造の格子定数の差異が大きすぎるので、緩衝層12を配置しても、格子定数がマッチできない状況が多く、一層ごとにエピタキシー成長する過程において応力が持続的に累積する。累積した応力が大きすぎると、各層構造に欠陥が生じる可能性がある。該欠陥は、光検出器1が動作する際に検出結果に影響する暗電流を生成する。該暗電流が標準値を超えると、検出の精確性に影響するだけではなく、光検出器1が使用不能の欠陥品になる恐れがある。
【0007】
このような従来の光検出器としては、例えば特許文献1に開示される光検出器が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-7379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、製造品質が上がり暗電流が過大な欠陥品になることを避けることができる光検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は、
格子定数が基本値である基板と、
前記基板に重なるように設置されている緩衝層と、
前記緩衝層に形成されているものであって、格子定数が前記基本値より大きく且つ前記基板から離れる方向に沿って格子定数が徐々に増加する順で配列されている複数のサブ層部を含む漸増層と、
前記漸増層に形成されており、且つ、格子定数の設定値が前記基本値より大きく且つ前記複数のサブ層部のそれぞれの格子定数以上であるバリヤー層と、
前記バリヤー層に形成されている吸収層と、を備えることを特徴とする光検出器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成により、本発明の光検出器は、漸増層の複数のサブ層部の格子定数は、基板の基本値と基本値より大きいバリヤー層の設定値との間で一層ごとに増加するので、結晶成長する過程で応力が累積しにくく、応力の解放による欠陥が生じない。光検出器の欠陥がより少ないと、光検出器の製造品質を確保できる上、実際に動作する時に検出結果に影響する暗電流も生じにくくなり、検出性能がより優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
図1】現有の光検出器を示す側面図である。
図2】本発明の光検出器の第1の実施形態及び第2の実施形態を示す側面図である。
図3】上記の第1の実施形態における漸増層の複数のサブ層部を説明するグラフである。
図4】上記の第1の実施形態の結晶成長角度を示す図である。
図5図4に合わせて上記の第1の実施形態の結晶成長角度の品質比較実験を示す顕微鏡画像である。
図6】上記の第1の実施形態の暗電流テストを行う状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明をより詳細に説明する前に、適切と考えられる場合において、符号又は符号の末尾部分は、同様の特性を有し得る対応の又は類似の要素を示すために各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい。
<第1の実施形態>
図2に示されるように、本発明の光検出器の第1の実施形態は、格子定数が基本値である基板2と、基板2に重なるように設置されている緩衝層3と、緩衝層3に形成されている漸増層4と、漸増層4に形成されており、且つ、格子定数が該基本値より大きい設定値であるバリヤー層5と、バリヤー層5に形成されている吸収層6と、吸収層6に形成されており、且つ、1つの入光口70が画成されているウィンドウ層7とを備える。なお、他の実施形態において、画成された入光口70の数は、2個以上であり得る。
【0014】
この実施形態においては、光検出器の上記各層が有機金属気相成長(MOCVD)エピタキシー法により一層一層形成される状況で説明する。
【0015】
基板2はヒ化ガリウムにより構成されている。緩衝層3は、基板2の材料に合わせて同じくヒ化ガリウムにより構成されているが、厚さが基板2の厚さより薄く、且つ、必要に応じて異なる成分をドープすることができる。この実施形態において、基板2及び緩衝層3はN型ドープヒ化ガリウムを例として説明し、基板2の格子定数が基本値であって、基板2がN型ドープヒ化ガリウムである場合、該基本値は5.653である。
【0016】
漸増層4は、格子定数が基本値より大きく且つ基板2から離れる方向に沿って格子定数が徐々に増加する順で配列されている複数のサブ層部41を含む。
【0017】
バリヤー層5の格子定数の設定値は、複数のサブ層部41のそれぞれの格子定数以上であり、即ちサブ層部41のうち格子定数が最も大きいものの格子定数と同じかそれより大きい。
【0018】
具体的に、漸増層4及びバリヤー層5は、ヒ化インジウムガリウムにより構成されており、バリヤー層5の格子定数の設定値は5.750である。なお、吸収層6もヒ化インジウムガリウムにより構成されており、ウィンドウ層7はリン化インジウムガリウムにより構成されている。
【0019】
基板2は、第13族元素である第1の元素を含み、バリヤー層5は、前記第1の元素と、前記第1の元素と異なり且つ第13族元素である第2の元素とを含み、且つ、漸増層4の複数のサブ層部41は、前記第1の元素及び前記第2の元素を含む、と定義する。
【0020】
複数のサブ層部41は、基板2からバリヤー層5へ向かう方向に沿ってサブ層部41が含む第13族元素における前記第1の元素の割合の前記第2の元素の割合に対する比の値(第1の元素の第13族元素における割合/第2の元素の第13族元素における割合)が徐々に減少する順で配列され、即ち各サブ層部41ごとに上記比の値が段々と減少するように配列されている。
【0021】
この実施形態において、バリヤー層5に直接に接するサブ層部41においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比の値は、前記バリヤー層5においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比の値と同じであり、前記第1の元素は、ガリウムであり、前記第2の元素は、インジウムであり、漸増層4の複数のサブ層部41においての前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素に対する第13族元素における割合の比は、(1-X):Xであり、式中Xは0.03~0.24であり、即ち、第1の元素の第13族元素における割合:第2の元素の第13族元素における割合=(1-X):Xである。
【0022】
【表1】
【0023】
図2及び図3に合わせて表1を参照すると、漸増層4の複数のサブ層部41の設置は、主に緩衝層3とバリヤー層5との間の格子定数の差異に対応するためである。従って、サブ層部41の数を8層に設定する場合、各サブ層部41におけるガリウムとインジウムとの割合の合計を1とすると、インジウムの割合は、0.03、0.06、0.09、0.12、0.15、0.18、0.21、0.24であり、ガリウムの割合は、0.97、0.94、0.91、0.88、0.85、0.82、0.79、0.76である。ガリウムの割合の増加に伴ってインジウムの割合が減少することにより、複数のサブ層部41の格子定数が基板2の基本値からバリヤー層5の設定値までに徐々に増加して、緩衝層3とバリヤー層5との間の格子定数の差異を埋め合わせる。
【0024】
図2に合わせて図4及び図5を参照すると、漸増層4、バリヤー層5及び吸収層6は、緩衝層3から、基板1と略直交する基準線と結晶成長角度θになる方向に沿って結晶成長されたものであり、結晶成長角度θは、6度~14度であると定義する。図5に示される、結晶成長角度θが6度~14度である本発明の第1の実施形態と、結晶成長角度θが1度未満の試験例1と、結晶成長角度θが1度以上且つ6度未満である試験例2とを比較した。
【0025】
図5に示されるように、本発明の第1の実施形態は確実により優れた平坦度を有するように形成できる。よって、結晶成長角度θは、製造品質に影響することがわかり、それにより欠陥が生じる可能性を更に低減することができる。
【0026】
図2に合わせて図6を参照すると、この実施形態の光検出器は、1130ナノメートル規格のもので、この実施形態の欠陥が標準に合致することを画像から検証する以外、この実施形態が確実に暗電流を低減する効果を奏することを検証するために、この実施形態に対して実際に逆バイアス(reverse bias)を加えると共に、入光口70を経由して実際に光を照射することによりテストを行った。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示されるように、ウィンドウ層7の入光口70が円形であって、入光口70の直径が107μm、125μm、145μm及び195μmの規格でテストを行った。
【0029】
逆バイアスが0.1ボルトである際、比較例とした直径が107μmである場合に暗電流テスト標準を少し超えた以外、実施例1~実施例3とした直径が125μm、145μm及び195μmである場合には暗電流テスト標準に合格した。
【0030】
即ち、この実施形態は、暗電流テストにおけるパフォーマンスが良好であって、これが用いられた製品は一定範囲のスケール及び規格に対応できる。
<第2の実施形態>
図2に示されるように、本発明の光検出器の第2の実施形態は、漸増層4及びバリヤー層5がリン化インジウムガリウムにより構成されていること以外、第1の実施形態と類似する。
【0031】
実際に使用した元素成分比について、バリヤー層5の材料はN-In0.72Ga0.28Pである。
【0032】
使用した材料が第1の実施形態と異なる状況においても、漸増層4の複数のサブ層部41における格子定数が基板2からバリヤー層5へ一層ごとに増加するように構成するために、前記第1の元素がガリウムであり且つ前記第2の元素はインジウムである時に、前記第1の元素の第13族元素における割合の前記第2の元素の第13族元素における割合に対する比は、(1-X):Xであり、式中Xは0.48~0.72である。
【0033】
基板2及び緩衝層3の材料は第1の実施形態と同じであり、即ち緩衝層3の格子定数は基板2の基本値と同じである。バリヤー層5の格子定数の設定値が第1の実施形態より大きい場合、漸増層4のサブ層部41を8層より多く設けて、格子定数が基板2からバリヤー層5へ徐々に増加するように配置することができる。それにより、格子定数が徐々に増加する設計を達成し、第1の実施形態と同じ効果を達成することができる。
【0034】
上記の構成によれば、本発明の光検出器は、漸増層4の複数のサブ層部41における格子定数が基板2の基本値と基本値より大きいバリヤー層5の設定値との間で一層ごとに増加するので、結晶成長する過程で応力が累積しにくく、応力の解放による欠陥が生じない。それにより、光検出器の製造品質を確保できる上、実際に暗電流テストを行った結果でも、検出結果に影響する暗電流が生じにくいことが検証され、光検出器の検出性能がより優れるようになる。
【0035】
従って、本発明の目的を確実に達成できる。
【0036】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能で有る。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の光検出器は例えば半導体の光検出に使用することに適する。
【符号の説明】
【0038】
2 基板
3 緩衝層
4 漸増層
41 サブ層部
5 バリヤー層
6 吸収層
7 ウィンドウ層

図1
図2
図3
図4
図5
図6