(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070809
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/551 20060101AFI20240516BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240516BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240516BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61F13/551 100
A61F13/539
A61F13/49 410
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133581
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2022181435
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹津 嵩礼
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA03
3B200DA28
3B200DE02
(57)【要約】
【課題】廃棄テープを設けることなく、廃棄する際に丸めた状態に保持させやすい吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品は、前身頃領域、股下領域、後身頃領域が長手方向にこの順に形成された外装体と、着用者の排出液を吸収可能な吸収体を含み、少なくとも股下領域を含む位置に配されるように外装体の肌面側に固定された内装体と、内装体の一部に形成され、外装体と接着されていない非接着領域と、を備え、前身頃領域および後身頃領域は、股下領域に比べて幅方向の寸法が大きく、非接着領域と外装体との隙間によって形成され、展開状態の外装体を内装体を内側にして長手方向に沿って丸める巻取り所作がなされることで形成されるロール状部の幅方向端部側領域を差し込み可能な差し込み用ポケットを更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用可能な吸収性物品であって、
着用状態において着用者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域が長手方向にこの順に形成された外装体と、
前記着用者の排出液を吸収可能な吸収体を含み、少なくとも前記股下領域を含む位置に配されるように前記外装体の肌面側に固定された内装体と、
前記内装体の一部に形成され、前記外装体と接着されていない非接着領域と、
を備え、
前記前身頃領域および前記後身頃領域は、前記股下領域に比べて前記長手方向に直交する幅方向の寸法が大きく、
前記非接着領域と前記外装体との隙間によって形成され、展開状態の前記外装体を前記内装体を内側にして前記長手方向に沿って丸める巻取り所作がなされることで形成されるロール状部の幅方向端部側領域を差し込み可能な差し込み用ポケットを更に備える、
吸収性物品。
【請求項2】
前記差し込み用ポケットは、左右両方向から前記ロール状部の幅方向側端部を差し込み可能な第1差し込み口および第2差し込み口を有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記差し込み用ポケットは、前記第1差し込み口および前記第2差し込み口が連通している、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記差し込み用ポケットは、前記外装体の長手方向中央位置よりも前記前身頃領域側に寄った位置に配置されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
展開状態の前記外装体を自然状態において厚み方向に圧縮せずに前記長手方向における一端側から前記差し込み用ポケットに対応する所定の基準位置まで第1巻取り所作を行った時点で形成される前記ロール状部の最外周部における周長をL1としたときに、前記外装体の前記基準位置から前記長手方向における他端までの長さL2が前記周長L1の半分以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記長さL2が前記周長L1以下である、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
展開状態の前記外装体を自然状態において厚み方向に圧縮せずに前記長手方向における一端側から前記差し込み用ポケットに対応する所定の基準位置まで第1巻取り所作を行った後、前記外装体の前記長手方向における他端まで第2巻取り所作を継続したときの前記基準位置を始点とする前記外装体の巻取り長さL3が、前記第1巻取り所作を行った時点で形成される前記ロール状部の最外周部における周長L1の半分以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記巻取り長さL3が前記周長L1以下である、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記差し込み用ポケットは、前記外装体の長手方向中央部よりも前記長手方向における前記他端側に寄った位置に配置されている、
請求項5から8の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記内装体は、前記非接着領域に対して前記長手方向の一方側に隣接すると共に前記外装体と接着された第1接着領域と、前記非接着領域に対して前記長手方向の他方側に隣接すると共に前記外装体と接着された第2接着領域と、を有し、
前記第1接着領域および前記第2接着領域における前記幅方向の接着幅寸法が異なる、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記第1接着領域は前記非接着領域に対して前記前身頃領域側に隣接すると共に、前記第2接着領域は前記非接着領域に対して前記後身頃領域側に隣接しており、かつ、前記第1接着領域における前記接着幅寸法が、前記第2接着領域における前記接着幅寸法よりも大きい、
請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記外装体のうち、前記差し込み用ポケットを覆うポケットカバー領域に、伸長状態で当該ポケットカバー領域に接着された伸縮部材が配されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記伸縮部材は、前記ポケットカバー領域において前記幅方向に沿って延在すると共に、当該ポケットカバー領域の幅方向外部領域まで延在している、
請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記前身頃領域における両側部と前記後身頃領域における両側部とをそれぞれ接合することで形成されたサイドシール部を更に備え、
前記サイドシール部が破断されることによって前記外装体が展開状態となる、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記股下領域の最狭部よりも前記前身頃領域または前記後身頃領域における前記幅方向の外側部分の長さは、前記ロール状部の直径よりも長い、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記差し込み用ポケットの非肌面側を形成する前記外装体又は肌面側を形成する前記内装体に、該差し込み用ポケット周辺と異なる色に付された着色部が配されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記差し込み用ポケットと重なる前記内装体側に設けられ、前記長手方向に伸長状態で前記内装体に接着された伸縮部材が配されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。また、使い捨ておむつとして、外装体の外面におむつ廃棄時止着用の廃棄テープが設けられたものが知られている。この廃棄テープは、使用済みのおむつを丸めて廃棄する際に、その丸めた状態を保持するために使用され、おむつをコンパクトに丸めた状態で廃棄するために資するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄テープは、おむつ廃棄時におむつを丸めた状態に保持するために有用であるものの、その背反としておむつの部品点数の増加に繋がる。
【0005】
本発明は、廃棄テープを設けることなく、廃棄する際に丸めた状態に保持させやすい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る着用可能な吸収性物品は、着用状態において着用者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域が長手方向にこの順に形成された外装体と、前記着用者の排出液を吸収可能な吸収体を含み、少なくとも前記股下領域を含む位置に配されるように前記外装体の肌面側に固定された内装体と、前記内装体の一部に形成され、前記外装体と接着されていない非接着領域と、を備え、前記前身頃領域および前記後身頃領域は、前記股下領域に比べて前記長手方向に直交する幅方向の寸法が大きく、前記非接着領域と前記外装体との隙間によって形成され、展開状態の前記外装体を前記内装体を内側にして前記長手方向に沿って丸める巻取り所作がなされることで形成されるロール状部の幅方向端部側領域を差し込み可能な差し込み用ポケットを更に備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、廃棄テープを設けることなく、廃棄する際に丸めた状態に保持させやすい吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの斜視図の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつの展開図の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつの外装体と内装体との接着パターンを説明するための平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る差し込み用ポケットの使用例を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るおむつの長手方向における差し込み用ポケットの配置位置について説明する図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るおむつの平面図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るおむつの分解斜視図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲を挿通可能な胴回り開口部と、着用者の左右の各下肢を挿通可能な左右一対の脚回り開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例に説明する。また、本実施形態では、大人用のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。
【0010】
図1は、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)1の斜視図の一例である。
【0011】
パンツ型にされたおむつ1の三次元形状の各方向については、着用者に着用された着用状態を基準にしておむつ1の上下方向、幅方向、前後方向を定義する(
図1を参照)。また、おむつ1の上下方向を「縦方向」と言う場合があり、幅方向を「横方向」、或いは「左右方向」という場合がある。上下方向と横方向は互いに直交している。また、上下方向と幅方向との両者と直交する方向のことを「前後方向」と言う。なお、おむつ1において、前後方向における前方側が着用者の腹部側に位置し、前後方向における後方側が着用者の背部側に位置する。また、おむつ1が着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を「肌面側」とし、肌面側の反対側を「非肌面側」とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を「厚み方向」と定義する。そのほか、おむつ1を厚み方向から視た状態を「平面視」と言う。
【0012】
図1に示すように、おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下部に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴回りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴回りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rと、を含む外装体BOを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。外装体BOは、おむつ1の外装を形成するシート部材であると共におむつ1の外形を画定している。
図1に示すように、おむつ1は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが対向して配置されており、これらの間に股下領域1Bが位置している。つまり、おむつ1は、前身頃領域1F、股下領域1B、および後身頃領域1Rが、これらの順に形成されている。本明細書において、おむつ1の幅方向と直交する方向に外装体BOに沿って前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとを結ぶ方向を「長手方向」とする。
【0013】
本実施形態におけるおむつ1は、着用者の腹囲を挿通可能な胴開口部2Tと、着用者の脚を挿通可能な左下肢開口部2Lおよび右下肢開口部2Rが形成されるように外装体BOの前身頃領域1Fにおける両側部と後身頃領域1Rにおける両側部とをそれぞれ接合するサイドシール部3SL,3SRを備える。サイドシール部3SLは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおける左側の側部同士を接合している。サイドシール部3SRは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおける右側の側部同士を接合している。また、
図1に示すように、サイドシール部3SL,3SRはおむつ1の上下方向(縦方向)を長手方向として延在している。また、サイドシール部3SL,3SRはおむつ1の長手方向に沿って延在
しているとも言える。
【0014】
胴開口部2Tは、前身頃領域1F上縁と後身頃領域1Rの上縁とによって形成されている。おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0015】
おむつ1には、着用者の排出液を吸収可能な吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rおよびタミーギャザー12が設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LF、3LR(
図1においてレグギャザー3LRは不図示)が設けられる。なお、レグギャザー3LFは前身頃領域1Fに設けられ、レグギャザー3LRは後身頃領域1Rに設けられる。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、伸縮部材の弾性力によって収縮することで着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LF、3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0016】
なお、おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、着用者の排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が排出されてもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1の交換頻度を低くし、おむつ1を長時間使用できる。
【0017】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図の一例である。
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図の一例である。
図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。
図2に示すように、おむつ1の展開状態において、前身頃領域1F、股下領域1B、および後身頃領域1Rが長手方向に沿ってこれらの順に配置されている。
【0018】
おむつ1は、外装体BOを構成するカバーシート4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートであり、前身頃領域1F側の端部と後身頃領域1R側の端部以外は同形状でほぼ同じ大きさである。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側に配置され、インナーカバーシート5は着用者の肌面側に配置されるようにカバーシート4およびインナーカバーシート5が積層されている。また、カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3R、タミーギャザー12,およびレグギャザー3LF、3LRを形成するための伸縮部材が設けられている。本実施形態では、伸縮部材として糸ゴムが採用されている。なお、伸縮部材と
しては、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0019】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0020】
おむつ1の外装体BOの肌面側(内面側)には、バックシート6、吸収体8、及びトップシート9を含んで構成された内装体BIが固定されている。内装体BIは、外装体BOにおける少なくとも股下領域1Bを含む位置に配されるように外装体BOの肌面側(内面側)に対して固定されている。内装体BIは、バックシート6の非肌面側(外面側)がインナーカバーシート5に接着されることで外装体BOの肌面側(内面側)に固定されている。また、内装体BIは、バックシート6とトップシート9との間に吸収体8を介在させた状態で一体化されている。また、内装体BIは、外装体BO(より詳しくは、インナーカバーシート5)側から、バックシート6、吸収体8、及びトップシート9の順に積層されており、バックシート6とトップシート9との間に吸収体8が介在している。但し、内装体BIは吸収体8を含んで構成されていればよい。
【0021】
内装体BIを構成するバックシート6、吸収体8、トップシート9は何れも、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略長方形を呈している。ここで、バックシート6は、排出物の漏れを抑制するために非透液性の熱可塑性樹脂を材料として形成されている。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置されている。トップシート9は、その一部又は全体において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に吸収される。トップシート9を構成する液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0022】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸収材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排出された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。本実施形態において、吸収コア8cは中央部付近が括れた略砂時計型を呈しているが、目的に応じた適宜の形状を採用できる。なお、
図3に示す符号8c1は、吸収コア8cのうち前身頃領域1Fに配置される前側領域であり、符号8c2は、吸収コア8cのうち後身頃領域1Rに配置される後側領域である。
【0023】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシー
ト6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0024】
内装体BIにおけるバックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。なお、
図3(B)においてはトップシート9の図示を省略している。
【0025】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着される。糸ゴム10L1,10R1は、例えば自然長よりも伸長した状態でサイドシート10L,10Rに接着される。
【0026】
本実施形態においては、外装体BOにおける前身頃領域1Fの左側縁4F4と後身頃領域1Rの左側縁4R4とが互いに接合されてサイドシール部3SL(
図1を参照)が形成され、外装体BOにおける前身頃領域1Fの右側縁4F5と後身頃領域1Rの右側縁4R5とが互いに接合されてサイドシール部3SR(
図1を参照)が形成される。おむつ1が
図1に示す立体形状に成形されると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。
【0027】
なお、本実施形態において左側縁4F4及び左側縁4R4、右側縁4F5及び右側縁4R5は、例えば、超音波溶着(超音波シール)によって接合されているが、その接合方法は特に限定されず、例えば、ヒートシール、高周波シール等によって行ってもよい。
【0028】
更に、おむつ1は、エンド押さえシート11F,11Rを備えている。エンド押さえシート11F,11Rは、外装体BOの幅方向に沿って延在するように当該外装体BOの肌面側(すなわち、インナーカバーシート5)に接合される補強用のシート部材である。エンド押さえシート11F,11Rは、外装体BO(カバーシート4およびインナーカバーシート5)の幅方向を長手方向として配置される短冊状シートとして形成され、その長手寸法は外装体BOの幅寸法と等しい。
【0029】
また、エンド押さえシート11F,11Rは、外装体BOの肌面側(インナーカバーシート5)に固定された内装体BIの長手方向における端部を肌面側から覆うように外装体BOの肌面側(すなわち、インナーカバーシート5)に接合されている。すなわち、エンド押さえシート11F,11Rは、内装体BIの長手方向端部を肌面側から押さえるためのシートとしても機能する。これにより、内装体BIの長手方向端部を補強すると共に、内装体BIの端部が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐことができる。エンド押さえシート11F,11Rは、例えば、非透水性の不織布によって形成されていてもよく、これにより内装体BIの長手方向端部からの排出液の漏れを抑制できる。
【0030】
エンド押さえシート11F,11Rは、インナーカバーシート5に対して肌面側から接着されている。但し、エンド押さえシート11F,11Rが内装体BIを覆う領域におい
ては、トップシート9に対してエンド押さえシート11F,11Rが接着(接合)される。本実施形態においては、エンド押さえシート11F,11Rをインナーカバーシート5及びトップシート9に接着する接着剤としてホットメルト接着剤を採用しているが、これには限定されない。また、接着剤ではなく、他の接合方法によってエンド押さえシート11F,11Rをインナーカバーシート5及びトップシート9に接合してもよい。
【0031】
図3に示されるように、レグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F3は、おむつ1が組み立てられた場合に着用者の脚が入る右下肢開口部2Rおよび左下肢開口部2Lの前身頃領域1F側の縁に沿うように設けられる。糸ゴム4F3は、カバーシート4とインナーカバーシート5の間に挟まれ、かつ、自然長より伸長した伸長状態でこれらに接着されている。そして、糸ゴム4F3は、前身頃側の股下領域1Bにおいて、左右方向に横切るように設けられる。このように左右方向に横断するように糸ゴム4F3が設けられる場所では、おむつ1の厚み方向において糸ゴム4F3と吸収体8とは重なっている。また、このような横断領域の幅方向中央部は、おむつ1が着用された場合の着用者の尿道口に対応する領域となる。なお、厚み方向において吸収体8が重なっている領域において、糸ゴム4F3の配置形態は
図3に示されるように横断することに限定されない。
【0032】
一方、レグギャザー3LRを形成する糸ゴム4R3は、右下肢開口部2Rおよび左下肢開口部2Lの後身頃領域1R側の縁に沿うように設けられる。そして、後身頃側の股下領域1Bにおいて、糸ゴム4R3の先端部は幅方向を向いている。糸ゴム4R3は、後身頃領域1Rを幅方向に横断しておらず、後身頃領域1Rの幅方向中央部において左側の糸ゴム4R3と右側の糸ゴム4R3とが不連続となっている。
図3に示す例において、糸ゴム4R3は、後身頃寄りの股下領域1Bにおいて、吸収体8と重なる位置まで幅方向内側に延在している。糸ゴム4R3は、カバーシート4とインナーカバーシート5の間に挟まれ、かつ、自然長より伸長した伸長状態でこれらに接着されている。
【0033】
カバーシート4は、
図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて長手方向における一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域1Fに糸ゴム4F1が自然長よりも伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに糸ゴム4R1が自然長よりも伸長された状態で接着されることで形成される。また、タミーギャザー12は、カバーシート4の前身頃領域1Fに糸ゴム4F2が自然長よりも伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに糸ゴム4R2が自然長よりも伸長された状態で接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に配置されている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に配置されている。糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2は、カバーシート4とインナーカバーシート5の間に挟まれた状態で、これらに接着されている。
【0034】
ここで、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の幅方向(左右方向)と一致する向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の幅方向(左右方向)と一致する向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、おむつ1が
図1に示す立体形状に成形されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴回り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8
と重畳するように設けられている。
【0035】
糸ゴム4F1,4R1は、
図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて平行に設けられている。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。
【0036】
ここで、カバーシート4のうち、折り返し線4FF、4RFを境に折り返された部位を、それぞれ折り返しシート部41F,41Rと呼ぶ。カバーシート4の長手方向における各端部に位置する折り返しシート部41F,41Rは、糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。カバーシート4における折り返しシート部41F,41Rは、当該折り返しシート部41F,41Rの非肌面側に配置されているインナーカバーシート5と接着されており、外装体BOを補強する補強シートとして機能する。
【0037】
なお、本明細書において、シート同士が重なった状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触した状態で重なり合う形態に限定されず、シートの一部分同士が重なり合う形態を含む概念である。
【0038】
ところで、本実施形態におけるおむつ1は、使用済みのおむつ1を廃棄する際に、当該おむつ1を丸めた状態に保持させやすくするための構造として差し込み用ポケットを備えており、これによって、従来の廃棄テープを具備しなくてもよい構造となっている。以下、おむつ1における差し込み用ポケットの詳細について説明する。
【0039】
図4は、実施形態に係るおむつ1の外装体BOと内装体BIとの接着パターンを説明するための平面図である。
図4では、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態が模式的に示されている。また、
図4においては、トップシート9及びサイドシート10L,10Rの図示を省略している。
【0040】
内装体BIは、接着領域20および非接着領域30を有している。非接着領域30は、内装体BIにおけるバックシート6の一部に形成されており、当該バックシート6が外装体BOのインナーカバーシート5と接着されていない領域である。また、内装体BIにおける接着領域20は、バックシート6が外装体BOのインナーカバーシート5と接着されている領域である。接着領域20には、おむつ1(外装体BO)の幅方向に沿って延在する複数の線状接着部20Aを有している。複数の線状接着部20Aは、おむつ1(外装体BO)の長手方向に間隔(例えば、一定間隔)を空けて配列されており、例えば、ホットメルト接着剤によって形成されている。
図4においては、線状接着部20Aに斜めハッチングを付している。
【0041】
図4に示す符号6Aは、内装体BI(バックシート6)の長手方向における第1端部であり、符号6Bは内装体BI(バックシート6)の長手方向における第2端部である。また、
図4に示す符号E1は、外装体BOの長手方向において前身頃領域1F側に位置する方の前身頃端部であり、符号E2は、外装体BOの長手方向において後身頃領域1R側に位置する方の後身頃領域1R側に位置する方の後身頃端部である。
【0042】
接着領域20は、外装体BOの長手方向における前身頃端部E1側から後身頃端部E2側に向かって(内装体BI(バックシート6)の長手方向における第1端部6A側から第
2端部6B側に向かって)配列される第1接着領域21、第2接着領域22、第3接着領域23を有している。
図4に示すように、非接着領域30は、第1接着領域21と第2接着領域22の間に挟まれるようにして配置されている。また、第2接着領域22と第3接着領域23は、外装体BOの長手方向(内装体BIの長手方向)に連設されている。
【0043】
ここで、内装体BI(バックシート6)における第1接着領域21、第2接着領域22、および非接着領域30の配列について、配列方向中央の第2接着領域22を基準とすると、第1接着領域21は、非接着領域30に対して外装体BOにおける長手方向の一方側に隣接すると共に外装体BOと接着された領域と言える。また、第2接着領域22は、非接着領域30に対して外装体BOにおける長手方向の他方側に隣接すると共に外装体BOと接着された領域と言える。
【0044】
図4に示す例では、内装体BI(バックシート6)における第1接着領域21および第2接着領域22は、外装体BOにおける幅方向(内装体BIにおける幅方向)に沿った接着幅寸法が互いに異なっている。
図4に示す例では、具体的には、第1接着領域21に含まれる線状接着部20Aの延在長さが、第2接着領域22に含まれる線状接着部20Aの延在長さよりも相対的に長く、その結果、第1接着領域21の接着幅寸法が第2接着領域22の接着幅寸法に比べて相対的に大きくなっている。
【0045】
また、
図4に示す符号CLは、外装体BOの長手方向における中央位置を示す中心線である。中心線CLは、外装体BOの幅方向に平行であり、外装体BOの前身頃端部E1および後身頃端部E2からの距離が等しい。
図4に示すように、内装体BIにおける非接着領域30は、外装体BOの長手方向中央位置(中心線CLの位置)よりも前身頃端部E1側に寄った位置に配置されている。
【0046】
また、
図4に示すように、外装体BOの前身頃領域1Fのうち、レグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F3が幅方向に横断する領域は、内装体BIにおける非接着領域30と厚み方向において重なっている。なお、
図4に示す符号4B1,4B2は、股下領域1Bにおける左側縁および右側縁である。本実施形態におけるおむつ1の外装体BOは、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rの幅寸法が、股下領域1Bの幅方向に比べて大きい。従って、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおける左側縁4F4,4R4は、股下領域1Bの左側縁4B1よりも幅方向外側(左側)に突出した位置に配されている。同様に、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおける右側縁4F5,4R5は、股下領域1Bの右側縁4B2よりも幅方向外側(右側)に突出した位置に配されている。
【0047】
図5は、
図4中のA―A矢視の概略図である。本実施形態におけるおむつ1は、
図5に示すように、内装体BIにおける非接着領域30と、外装体BO(より詳しくは、外装体BOのうち、非接着領域30の非肌面側に対向する領域)との隙間によって差し込み用ポケット40が形成される。差し込み用ポケット40は、展開状態の外装体BOを、内装体BIを内側にして長手方向に沿って丸める巻取り所作がなされることで形成されるロール状部の幅方向端部側領域を差し込むための(差し込み可能な)収容空間である。以下、外装体BOのうち、差し込み用ポケット40を覆う部分、すなわち非接着領域30の非肌面側に対向する領域を「ポケットカバー領域PR」と呼ぶ(
図5を参照)。なお、ロール状部の幅方向端部側領域の詳細については後述する。
【0048】
図4に示す例において、差し込み用ポケット40は、おむつ1(外装体BO)の幅方向に延在している。
図4に示す符号41は、差し込み用ポケット40の第1差し込み口であり、差し込み用ポケット40の左端において外部に向かって開口している。また、符号42は、差し込み用ポケット40の第2差し込み口であり、差し込み用ポケット40の右端において外部に向かって開口している。
図4および
図5で例示する差し込み用ポケット4
0は、差し込み用ポケット40の第1差し込み口41および第2差し込み口42が連通するように、トンネル状の隙間として形成されている。差し込み用ポケット40は、第1差し込み口41および第2差し込み口42を通じて、左右両方向からロール状部の幅方向端部側領域を差し込み用ポケット40内に差し込むことが可能である。
【0049】
次に、差し込み用ポケット40の使用例について説明する。典型的には、差し込み用ポケット40は、使用済みのおむつ1を廃棄する際に、当該おむつ1を丸めた状態に保持させるために使用される。
図1に例示されるおむつ1は、サイドシール部3SL,3SRを備えるパンツ型のおむつであるため、着用状態のおむつ1を着用者から脱がす場合には、通常、サイドシール部3SL,3SRをその長手方向に沿って破断させながら(引き裂いて)脱がす所作が行われる。このようにして、着用者から脱がした使用済みのおむつ1は、
図3や
図4に示したように展開状態となる。
【0050】
上記のように、展開状態となったおむつ1を廃棄する際、展開状態の外装体BOを、内装体BIを内側にして長手方向に沿って丸める巻取り所作を行う。つまり、展開状態における外装体BOを前身頃端部E1、又は、後身頃端部E2を起点として、おむつ1を長手方向に沿って巻き取ってゆく。
【0051】
内装体BIにおける吸収体8(吸収コア8c)は、一般的に、前側領域8c1に比べて後側領域8c2の面積を大きく確保する設計がなされることが多く、その結果、着用者がおむつ1の着用時に配設した排泄物は、後側領域8c2により多く吸収されている傾向がある。したがって、おむつ1の廃棄時に上記巻取り所作を行う際には、より多くの排泄物を吸収している後身頃領域1Rから外装体BOを丸めてしまおうという意識が働く。つまり、その際には、展開状態にある外装体BOの後身頃端部E2を起点として巻取り所作が開始されることになる。
【0052】
図6は、差し込み用ポケット40の使用例を説明する図である。(A)は、展開状態にある外装体BOの後身頃端部E2(
図4を参照)を起点として上記巻取り所作を行い、長手方向の途中までおむつ1を丸めた(巻き取った)状態を模式的に示している。この状態において、おむつ1は股下領域1B、概ね差し込み用ポケット40に対応する位置まで巻き取られている。符号RRは、上記巻取り所作に伴い、おむつ1がロール状に丸められることで形成されたロール状部である。
図4で説明したように、おむつ1の外装体BOは、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rの幅寸法が、股下領域1Bの幅方向に比べて大きい。したがって、ロール状部RRにおける幅方向端部側の領域は、股下領域1Bの各側縁4B1,4B2から幅方向外側に突出した状態となる。以下、ロール状部RRにおいて、股下領域1Bの各側縁4B1,4B2から幅方向外側に突出した左右の領域を、それぞれ「第1幅方向端部側領域WR1」、「第2幅方向端部側領域WR2」と呼ぶ。また、ロール状部RRの幅方向において、第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2の間に位置する部位を「幅方向中央側領域WR3」と呼ぶ。
【0053】
次に、(A)に示す状態から、ロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を例えば指で摘み、各幅方向端部側領域WR1,WR2を差し込み用ポケット40の第1差し込み口41および第2差し込み口42(
図4、
図5を参照)から差し込み用ポケット40内に差し込む。(A)に示す状態では、例えば、紙面奥方向に各幅方向端部側領域WR1,WR2を折り込みながら、これらを第1差し込み口41および第2差し込み口42から差し込み用ポケット40内に差し込む。以下、この所作を「第1ロール端部差し込み所作」という。(B)は、第1ロール端部差し込み所作が完了した状態を示す。
【0054】
ところで、(A)に示すロール状部RRの幅方向中央側領域WR3には、外装体BOと
共に内装体BIが一緒に巻き取られている。一方、ロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2は主として外装体BOのみが丸められて形成されており、外装体BOの内側に内装体BIは巻き取られていない。したがって、ロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2は、幅方向中央側領域WR3に比べて厚みが薄く、柔軟である。よって、第1ロール端部差し込み所作において、第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を差し込み用ポケット40内へと容易に差し込むことができる。
【0055】
上記のように、第1ロール端部差し込み所作が完了すると、引き続き、(C)に示すようにおむつ1の巻取り所作を続行し、前身頃領域1Fを丸めてゆく。そして、前身頃領域1Fの前身頃端部E1まで巻取り所作が完了した時点で形成されたロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を最終的に第1差し込み口41および第2差し込み口42から差し込み用ポケット40内に差し込む「第2ロール端部差し込み所作」を行う。これにより、(D)に示すように、ロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2が差し込み用ポケット40内に差し込まれ、おむつ1が丸められた状態に維持される。
【0056】
以上のように、本実施形態に係るおむつ1は、差し込み用ポケット40を備え、使用済みのおむつ1を廃棄する際になされる巻取り所作によって形成されたロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を当該差し込み用ポケット40に差し込むことでおむつ1を丸めた状態に保持させやすくなる。よって、本実施形態に係るおむつ1によれば、従来の廃棄テープを具備していなくても廃棄時にコンパクトに丸めた状態に維持することができる。
【0057】
そして、本実施形態における差し込み用ポケット40は左右両側に第1差し込み口41および第2差し込み口42が形成されているため、第1差し込み口41および第2差し込み口42を通じて各幅方向端部側領域WR1,WR2を左右両方向から差し込むことができる。これにより、上記ロール端部差し込み所作を行いやすい。
【0058】
また、差し込み用ポケット40は、第1差し込み口41および第2差し込み口42が連通するようにトンネル状の隙間として形成されている。これによれば、ロール端部差し込み所作のバリエーションが増える。例えば、ロール状部RRの各幅方向端部側領域WR1,WR2を差し込み用ポケット40に差し込むだけでなく、幅方向端部側領域WR1,WR2同士を差し込み用ポケット40内で結ぶことも可能である。これにより、おむつ1の廃棄時において、おむつ1をより堅固に丸めた状態に維持することができる。勿論、幅方向端部側領域WR1,WR2の双方を差し込み用ポケット40内に収納する必要は無く、例えば、第1差し込み口41から挿入した第1幅方向端部側領域WR1を、差し込み用ポケット40をくぐらせつつ反対側の第2差し込み口42から外部に露出させた後、その第1幅方向端部側領域WR1を第2幅方向端部側領域WR2と結ぶようにしてもよい。勿論、逆に、第2差し込み口42から挿入した第2幅方向端部側領域WR2を、差し込み用ポケット40をくぐらせつつ反対側の第1差し込み口41から外部に露出させた後、その第2幅方向端部側領域WR2を第1幅方向端部側領域WR1と結ぶようにしてもよい。このようにして、本実施形態における差し込み用ポケット40の使用例は、
図6で説明した特定の態様に限定されない。
【0059】
更に、本実施形態に係るおむつ1は、
図4で説明したように、内装体BIにおける非接着領域30が外装体BOの長手方向中央位置(中心線CLの位置)よりも前身頃端部E1側に寄った位置に配置されている。これに伴い、差し込み用ポケット40も、外装体BOの長手方向中央位置(中心線CLの位置)よりも前身頃端部E1側に寄った位置に配置されている。そして、おむつ1は、後身頃領域1R側により多くの排泄物が吸収されている
傾向があり、おむつ1の廃棄時に後身頃領域1R側から外装体BOを丸めようと使用者の意識が働く傾向があることは上記の通りである。
【0060】
これに対して、本実施形態におけるおむつ1によれば、外装体BOの長手方向中央位置よりも前身頃端部E1側に寄った位置に差し込み用ポケット40が配置されているため、おむつ1の巻取り所作を後身頃端部E2側から開始する場合に、おむつ1のより多くの部分を巻き取った状態で第1ロール端部差し込み所作を行うことができる点で便利である。但し、おむつ1の巻取り所作を前身頃端部E1側から開始してもよく、この場合においても、巻取り所作によって形成されたロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を差し込み用ポケット40に差し込み、これを保持することが可能である。
【0061】
更に、おむつ1は、外装体BOのうち、差し込み用ポケット40を非肌面側から覆うポケットカバー領域PRに、伸長状態で当該ポケットカバー領域PRに接着された伸縮部材が配されている。この伸縮部材には、
図4に示すように、レグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F3が該当し、非接着領域30(差し込み用ポケット40)を幅方向に横断している。これによれば、糸ゴム4F3の収縮によって外装体BOにおけるポケットカバー領域PRを、内装体BIにおける非接着領域30側へと押さえつける(付勢する)ことができ、ロール端部差し込み所作によって差し込み用ポケット40内に差し込まれた幅方向端部側領域WR1,WR2を差し込み用ポケット40から抜け出しにくくすることができる。勿論、
図4に示す糸ゴム4F3に代えて、或いは、併用して、別の伸縮部材を、ポケットカバー領域PRに接着してもよい。また、ポケットカバー領域PRに接着される伸縮部材の延在方向は特に限定されない。つまり、
図4に示す例では、糸ゴム4F3がおむつ1の幅方向に延在しているが、他の方向(例えば、長手方向)に延在していてもよい。
【0062】
なお、上記のように、外装体BOのポケットカバー領域PRにレグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F3を配置したおむつ1のサンプルを用意し(サンプル数N=10)、
図6(D)に示すようにおむつ1を丸められた状態にしてから、高さ1.5mから床面に自由落下させた試験を行ったところ、落下の衝撃を受けてもおむつ1は丸められた状態に維持され、差し込み用ポケット40に差し込まれた幅方向端部側領域WR1,WR2の抜け出しは確認されなかった。
【0063】
また、本実施形態では、外装体BOのポケットカバー領域PRに接着される糸ゴム4F3(伸縮部材)は、ポケットカバー領域PRにおいて幅方向に沿って延在すると共に、当該ポケットカバー領域PRの幅方向外部領域まで延在している。
図4に示す例では、ポケットカバー領域PRにおいて幅方向に延在していた糸ゴム4F3(伸縮部材)は、幅方向外部領域においては、前身頃端部E1側に向かって延在している。このように、外装体BOのうち、ポケットカバー領域PRの幅方向外側の領域においても糸ゴム4F3(伸縮部材)を配置することで、当該領域についても内装体BIにおける非接着領域30側に押さえつける(付勢する)ことができる。よって、差し込み用ポケット40からの幅方向端部側領域WR1,WR2の抜け出しを、より一層好適に抑制できる。
【0064】
更に、
図4で説明したように、内装体BI(バックシート6)における第1接着領域21および第2接着領域22は、外装体BOにおける接着幅寸法が互いに異なっている。このように、非接着領域30に対しておむつ1の長手方向の一方側に隣接する第1接着領域21と、他方側に隣接する第2接着領域22とにおける接着幅寸法を異ならせることにより、差し込み用ポケット40における一方の幅方向長さと他方の幅方向長さを互いに異ならせることができる。ここで、差し込み用ポケット40の幅方向長さは、
図4において符号W1、W2で示す両矢印の長さに相当し、おむつ1の幅方向と平行の長さである。
【0065】
符号W1は、差し込み用ポケット40の第1幅方向長さであり、非接着領域30と第1接着領域21との境界部における線状接着部20Aの延在長さと実質的に等しい。符号W2は、差し込み用ポケット40の第2幅方向長さであり、非接着領域30と第2接着領域22との境界部における線状接着部20Aの延在長さと実質的に等しい。以下、差し込み用ポケット40のうち、非接着領域30と第1接着領域21との境界部によって規定される部分を「第1側部40A」と呼び、非接着領域30と第2接着領域22との境界部によって規定される部分を「第2側部40B」と呼ぶ(
図5を参照)。
【0066】
差し込み用ポケット40において、第1側部40Aの延在長さに相当する第1幅方向長さW1は、第1側部40Aの位置における第1差し込み口41と第2差し込み口42の離間寸法を規定している。また、第2側部40Bの延在長さに相当する第2幅方向長さW2は、第2側部40Bの位置における第1差し込み口41と第2差し込み口42の離間寸法を規定している。
【0067】
図4に示す例では、第1接着領域21の接着幅寸法が第2接着領域22の接着幅寸法に比べて大きいため、差し込み用ポケット40の第1幅方向長さW1の方が第2幅方向長さW2よりも長い。これによれば、差し込み用ポケット40の第2側部40Bにおける第2幅方向長さW2が短いため、例えば、
図6で説明したロール端部差し込み所作を行う際、第1差し込み口41(第2差し込み口42)から挿入した幅方向端部側領域WR1(WR2)を反対側の第2差し込み口42(第1差し込み口41)から引っ張り出しやすくなる。そのため、このようにして第2差し込み口42(第1差し込み口41)から引っ張り出した幅方向端部側領域WR1(WR2)を、他方の幅方向端部側領域WR2(WR1)と結び、固定する際に利便性が高い。
【0068】
一方、差し込み用ポケット40の第1幅方向長さW1と第2幅方向長さW2の双方が短い場合には、たしかに幅方向端部側領域WR1,WR2を差し込み用ポケット40に挿入した方と反対側の差し込み口から引っ張り出しやすくなるが、幅方向端部側領域WR1,WR2を挿入した方の差し込み口からこれらが抜け出しやすくなるとも考えられる。
【0069】
これに対して、本実施形態に係るおむつ1は、差し込み用ポケット40の第1幅方向長さW1が第2幅方向長さW2よりも長く確保されている。これによれば、上述したロール端部差し込み所作時に差し込み用ポケット40に差し込まれた幅方向端部側領域WR1,WR2が自身の復元力或いは外力等によって差し込み用ポケット40から抜け出そうとする際に、幅方向端部側領域WR1,WR2と第1側部40Aとの摩擦区間を長く確保することができる。これにより、幅方向端部側領域WR1,WR2が差し込み用ポケット40から抜け出しにくくなり、より大きな外力に抵抗しておむつ1を丸めた状態に保持することができる。
【0070】
次に、
図7を参照しておむつ1の長手方向における差し込み用ポケット40の好適な配置位置について説明する。
【0071】
本実施形態において、展開状態の外装体BOを自然状態において厚さ方向に圧縮せずに長手方向における一端側(例えば、後身頃端部E2側)から差し込み用ポケット40に対応する所定の基準位置PBまで第1巻取り所作を行った時点で形成されるロール状部RRの最外周部における周長をL1としたときに、外装体BOの上記基準位置から長手方向における他端(例えば、前身頃端部E1)までの長さL2が上記周長L1の半分以上となるように差し込み用ポケット40が配置されていると好ましい。また、上記長さL2は、上記周長L1以下となるように差し込み用ポケット40が配置されていると更に好ましい。
【0072】
また、本実施形態において、展開状態の外装体BOを自然状態において厚さ方向に圧縮
せずに長手方向における一端側(例えば、後身頃端部E2側)から差し込み用ポケット40に対応する所定の基準位置まで第1巻取り所作を行った後、外装体BOの長手方向における他端(例えば、前身頃端部E1)まで第2巻取り所作を継続したときの上記基準位置を始点とする外装体BOの巻取り長さL3が、第1巻取り所作を行った時点で形成されるロール状部の最外周部における周長L1の半分以上となるように差し込み用ポケット40が配置されていると好ましい。また、上記巻取り長さL3が上記周長L1以下となるように差し込み用ポケット40が配置されていると更に好ましい。
【0073】
第1巻取り所作および第2巻取り所作を行う際の「自然状態」とは、おむつ1を所定時間放置したときの状態である。例えば、製品状態のおむつ1を展開後、例えば、机等の平面に静置し、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態と定義してもよい。そして、第1巻取り所作および第2巻取り所作においては、上述した自然状態において、おむつ1の厚み方向に圧縮せずに、展開状態の外装体BOを、内装体BIを内側にして長手方向に沿って丸める。なお、ここでいう「厚み方向に圧縮せず」とは、第1巻取り所作および第2巻取り所作を行う際に、おむつ1を厚み方向に積極的に圧縮しないことを意味する。
【0074】
図7の(A)は、第1巻取り所作が完了した状態を説明する図である。ここでは、外装体BOの後身頃端部E2を起点として第1巻取り所作を行う場合を例に説明する。
図7の(A)において、おむつ1は、差し込み用ポケット40に対応する基準位置PBまで巻き取られている。ここでいう外装体BOの基準位置PBは、例えば、
図4に示す差し込み用ポケット40の中心線CL2に対応する位置として規定される。差し込み用ポケット40の中心線CL2は、外装体BOの幅方向に平行であり、差し込み用ポケット40における第1側部40Aおよび第2側部40Bからの長手方向における距離が等しい。
【0075】
図7に示す符号SVは仮想水平面であり、第1巻取り所作および第2巻取り所作を行う際におむつ1を載置する机等の水平面を模擬したものである。符号C1は、第1巻取り所作を行った時点で形成されるロール状部RR(より詳しくは、幅方向中央側領域WR3)の最外周部RR1の中心位置である。ここでいう最外周部RR1とは、第1巻取り所作が完了した時点において、ロール状部RR(幅方向中央側領域WR3)の最外周に位置する部分(外装体BOの非肌面側を形成するカバーシート4の外表面)を意味する。なお、図中の符号VL1は、中心位置C1および基準位置PBを通る仮想直線である。
【0076】
本実施形態においては、第1巻取り所作を行った時点で形成されるロール状部RR(より詳しくは、幅方向中央側領域WR3)の最外周部RR1の周長をL1としたときに、外装体BOの上記基準位置PBから長手方向における他端(第1巻取り所作を後身頃端部E2から開始した場合には、前身頃端部E1)まで余長部EPの長さ(余長長さ)L2が上記周長L1の半分以上となるように規定されている。ここで、余長部EPとは、外装体BOのうち、第1巻取り所作の完了時において未だ巻き取られていない部分と捉えることができる。
【0077】
これによれば、第1巻取り所作の後、外装体BOの長手方向における他端(第1巻取り所作を後身頃端部E2から開始した場合には、前身頃端部E1)まで第2巻取り所作を継続して余長部EPを巻き取った時点で、外装体BOの長手方向における他端(E1)の位置を、
図7の(B)に示すように、第2基準位置PB2をおむつ1の巻取り方向に越えさせることができる。
図7の(B)は、第2巻取り所作が完了した時点の状態を示している。また、第2基準位置PB2は、第2巻取り所作が完了した時点におけるロール状部RR(より詳しくは、幅方向中央側領域WR3)の最外周部RR1が、上記仮想直線VL1が交差する位置として規定できる。
【0078】
上記によれば、第2巻取り所作が完了した際、外装体BOの他端(前身頃端部E1)が外装体BOの巻取り方向において第2基準位置PB2を越えて位置付けられる。以下、第2巻取り所作が完了した時点で形成されたロール状部RR(幅方向中央側領域WR3)における最外周部RR1のうち、第2基準位置PB2を越えた区間を引掛り区間OPと呼ぶ。本実施形態によれば、第2巻取り所作の完了時にロール状部RR(幅方向中央側領域WR3)に引掛り区間OPを形成することができる。そのため、この状態で上述したロール端部差し込み所作を行うことにより、ロール端部差し込み所作を行った後に引掛り区間OPが最外周部RR1の内側に位置する内周部RR2に引っ掛かるため、内周部RR2から最外周部RR1がずれ落ちにくくなる。これにより、ロール端部差し込み所作によって差し込み用ポケット40内に差し込まれた幅方向端部側領域WR1,WR2を、より一層抜け出しにくくすることができる。
【0079】
また、本実施形態においては、
図7(A)における余長部EPの長さ(余長長さ)L2が上記周長L1以下となるように差し込み用ポケット40が配置されていると更に好ましい。これによれば、第2巻取り所作が完了した際、引掛り区間OPが基準位置PBを越えてしまうことがない。これにより、第2巻取り所作が完了した時点で、差し込み用ポケット40が引掛り区間OPによって覆われてしまうことを抑制できるため、ロール端部差し込み所作を行いにくくなることを抑制できる。
【0080】
なお、
図7(A)には、第1巻取り所作を行った後、外装体BOの長手方向における他端(第1巻取り所作を後身頃端部E2から開始した場合には、前身頃端部E1)まで第2巻取り所作を継続したときの上記基準位置PBを始点とする外装体BOの巻取り長さL3を示している。この巻取り長さL3は、上述した余長部EPの長さ(余長長さ)L2と実質的に等しい。本実施形態においては、この巻取り長さL3が、第1巻取り所作を行った時点で形成されるロール状部RR(幅方向中央側領域WR3)の最外周部RR1における周長L1の半分以上となるように差し込み用ポケット40が配置されていると好ましい。これにより、第2巻取り所作の完了時にロール状部RR(幅方向中央側領域WR3)に引掛り区間OPを形成することができ、差し込み用ポケット40に差し込まれた幅方向端部側領域WR1,WR2の抜け出しを好適に抑制できる。また、上記巻取り長さL3を上記周長L1以下となるように差し込み用ポケット40を配置することで、第2巻取り所作が完了した時点で差し込み用ポケット40が引掛り区間OPによって覆われてしまうことを抑制でき、ロール端部差し込み所作を行いやすくすることができる。
【0081】
なお、差し込み用ポケット40は、外装体BOの長手方向中央部よりも長手方向における上記他端側(前身頃端部E1)に寄った位置に配置されている。ここでいう他端とは、外装体BOの長手方向において、巻取り所作終点となる方の端部である。このようにすることで、余長部EPの長さ(余長長さ)L2が周長L1の半分以上、周長L1以下となるような好適な位置に差し込み用ポケット40を配置し易くなる。また、巻取り長さL3が周長L1の半分以上、周長L1以下となるような好適な位置に差し込み用ポケット40を配置し易くなる。
【0082】
また、
図7(B)に示す第2巻取り所作が完了した時点でのロール状部RRの直径を直径D1とすると、
図4に示す外装体BOの最狭部よりも幅方向の外側部分の長さD2は、D1よりも長い方が好ましい。なお、上述の通り、
図7(B)に示す第2巻取り所作が完了した時点でのロール状部RRは、展開状態の外装体BOを自然状態において厚さ方向に圧縮せずに巻いた状態である。
【0083】
ここで、
図4に示すように、外装体BOの最狭部は、股下領域の長手方向中央部であり、この最狭部よりも前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおける幅方向の外側部分の長さを長さD2とする。この長さD2は、
図6(A)~(C)に示す第1幅方向端部側領域
WR1および第2幅方向端部側領域WR2の長さに相当する。差し込み用ポケット40に差し込む部分で、差し込み用ポケット40から最も遠隔となる部位は、
図4(B)に示すように後身頃領域1R側から外装体BOを丸めた場合には外装体BOの前身頃領域1F側であり、これとは逆に前身頃領域1F側から外装体BOを丸めた場合には外装体BOの後身頃領域1R側である。差し込み用ポケット40に差し込む部分で、差し込み用ポケット40から最も遠隔となる部位の長さD2を直径D1よりも長くすることによって当該部位を差し込み用ポケット40に差し込むのを容易とすることができる。仮に、長さD2が直径D1よりも短い場合には、差し込み用ポケット40に差し込んだ部位がポケットから抜けてしまう虞がある。本実施形態に係るおむつ1は、差し込み用ポケット40に差し込んだ部位をポケットから抜けにくくすることができる。なお、本実施形態では、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおける幅方向の外側部分の長さの両方が長さD2であるが、後身頃領域1R側から外装体BOを丸める構成の場合には、長さD2は前身頃領域1F側の長さであってもよい。また、前身頃領域1F側から外装体BOを丸める構成の場合には、長さD2は後身頃領域1R側の長さであってもよい。
【0084】
また、一般的に、おむつはそのほとんどが白色であり、
図6(D)に示すように、ロール状部RRの第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を差し込み用ポケット40内に差し込む際に、差し込み用ポケット40の位置が分かりにくくなる可能性がある。そこで、本実施形態に係るおむつ1では、差し込み用ポケット40の非肌面側を形成する外装体BO又は肌面側を形成する内装体BIに、差し込み用ポケット40周辺と異なる色に付された着色部が配置されていることが好ましい。本実施形態では、
図4に示す糸ゴム4F3が着色部の一例である。外装体BOは白色であり、糸ゴム4F3は白色とは異なる有色(例えば、青色)である。外装体BO側からおむつ1を視た場合に、青色の糸ゴム4F3は認識しやすく、この着色部に重なる位置に差し込み用ポケット40が形成されていることの目印として機能する。
【0085】
また、着色部は、糸ゴム4F3に限られない。例えば、着色部は、差し込み用ポケット40の縁側や前後端に配置されていてもよい。
図8は、実施形態に係るおむつ1の着色部を説明するための平面図である。
図8に示すように、本例では、着色部50が差し込み用ポケット40の縁側に設けられている。着色部50は、外装体BOを構成するカバーシート4に印刷によって形成されていてもよい。着色部50は、文字や図形などを含んでいてもよい。着色部50が外装体BOに設けられる場合には、着色部50は、着色部50以外の部位と異なる色に付されていればよい。
【0086】
<変形例>
次に、変形例に係るおむつ1について説明する。本変形例に係るおむつ1は、差し込み用ポケット40と重なる内装体BI側に設けられ、おむつ1の長手方向に伸長状態で内装体BIに接着された糸ゴム4F7(本開示における「伸縮部材」の一例)が配置されていることに特徴を有している。
【0087】
図9は、変形例に係るおむつ1の分解斜視図である。
図9に示すように、バックシート6とコアラップシート7の間には、おむつ1の長手方向に伸長状態で糸ゴム4F7(本開示の「第1伸縮部材」の一例)が幅方向中央部に設けられている。糸ゴム4F7の肌面側には糸ゴムカバーシート13(伸縮部材カバーシート)が配置されている。糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7を肌面側から覆ってバックシート6に接着されている。糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7と吸収体8の間に配置されている。また、糸ゴムカバーシート13は、吸収体8のコアラップシート7とは接着されていない。糸ゴム4F7は、吸収体8とバックシート6の間に配置され、バックシート6に接着され且つ吸収体8と非接着である。これにより、吸収体8に糸ゴム4F7の弾性力(収縮力)が作用するのを防ぎ、吸収体8が変形するのを防ぐことができる。なお、糸ゴム4F7に代えて帯状の
伸縮部材を用いる場合は、糸ゴムカバーシート13を設けることなく、伸縮部材とコアラップシート7を非接着とすることができる。また、本実施形態では、糸ゴムカバーシート13は、バックシート6と同じ長さで形成されている。なお、糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7の延在領域に合わせた長さで形成されていてもよいし、糸ゴム4F7の延在領域より長く且つバックシート6よりも短く形成されていてもよい。なお、糸ゴム4F7は、カバーシート4とインナーカバーシート5との間に設けられてもよい。
【0088】
図10は、変形例に係るおむつ1の糸ゴム4F7の延在領域を説明するための平面図である。おむつ1を厚み方向に視た場合、糸ゴム4F7は、差し込み用ポケット40と重なって延在している。この構成によれば、糸ゴム4F7の伸縮力によって差し込み用ポケット40と重なる部分の吸収体8が肌面側に持ち上げられるので、内装体BIと外装体BOとの間に隙間ができ、差し込み用ポケット40の第1差し込み口41及び第2差し込み口42が開きやすくなる。これにより、差し込み用ポケット40に
図6に示す第1幅方向端部側領域WR1および第2幅方向端部側領域WR2を差し込むのが容易となる。
【0089】
なお、本変形例では、糸ゴム4F7は、バックシート6に配置されているが、糸ゴム4F7は、内装体BIにおける吸収体8の非肌面側に配置されることが好ましい。これにより、糸ゴム4F7の収縮力によって吸収体8を肌面側に持ち上げやすくなる。
【0090】
以上、本発明に係る吸収性物品としてのおむつ1の実施形態を例示的に説明したが、これらは本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、前身頃領域側の外装体(前身頃外装体)と後身頃領域側の外装体(後身頃外装体)は、一体的に形成されているが、前身頃領域側の外装体と後身頃領域側の外装体とが、別体で設けられていてもよい。また、実施形態にいては、おむつ1をパンツ型のおむつとして説明したが、テープ型のおむつについて本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 :おむつ
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2L :左下肢開口部
2R :右下肢開口部
2T :胴開口部
3SL,3SR:サイドシール部
4 :カバーシート
5 :インナーカバーシート
8 :吸収体
40 :差し込み用ポケット
BO :外装体
BI :内装体