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  • 特開-二次電池及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070834
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240516BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240516BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240516BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240516BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240516BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240516BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/587
H01M50/489
H01M4/133
H01M10/0566
H01M10/058
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/403 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190451
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】202211413685.3
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 永思
(72)【発明者】
【氏名】莫 方杰
(72)【発明者】
【氏名】楊 元嬰
(72)【発明者】
【氏名】孫 化雨
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE09
5H021EE21
5H021HH03
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H050AA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050HA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セパレータを使用せずに、発泡材料が焼成中に発泡してセパレータ状の層を形成するように、化学発泡の原理を利用して負極の表面を発泡材料でコーティングする、二次電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、正極及び/又は負極側に配置され、活物質、開始剤、及び発泡剤を含むセパレータを含む二次電池及びその製造方法を提供する。活物質は、多孔質酸化グラフェンを含み、開始剤、発泡剤及び多孔質酸化グラフェンの質量比は、(1~5):(1~10):(1~5)である。本発明において、発泡材料が焼成中に発泡して良好な延性を有するセパレータ状の層を形成するように、正極及び/又は負極側の表面に発泡材料がコーティングされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、を備える二次電池であって、
前記正極及び/又は負極側にはセパレータが配置され、
前記セパレータは、活物質と、開始剤と、発泡剤と、を含む、二次電池。
【請求項2】
前記活物質は、多孔質酸化グラフェン及び/又は重合体を含み、
前記重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、又はポリエチレンテレフタレートのうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含み、
前記重合体の分子量は100,000~500,000である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記開始剤、前記発泡剤、及び前記多孔質酸化グラフェンの質量比は、(1~5):(1~10):(1~5)である、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記発泡剤は、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛及び炭酸カルシウムを含み、
前記発泡剤中のステアリン酸、ステアリン酸亜鉛及び炭酸カルシウムの質量比は、(0.5~2):(0.5~2):(1~2)である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記セパレータは、可塑剤及び酸化防止剤をさらに含み、
前記可塑剤は、フタル酸ジブチル、1,3-ブタンジオール、グリセリン、パラフィン油のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含み、
酸化防止剤は、酸化防止剤1010及び/又は酸化防止剤168を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータの厚さは、5μm~15μmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
電解液をさらに含み、前記セパレータは、前記負極側に配置され、
前記負極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一側に配置された負極活物質層と、を含み、
前記負極活物質層は、黒鉛を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
活物質、開始剤、及び発泡剤を混合して複合材料を取得し、前記複合材料を圧延、乾燥してセパレータを得る工程を含む、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記複合材料の厚さは、5μm~10μmであり、
前記複合材料は、可塑剤及び酸化防止剤をさらに含み、
前記複合材料は、前記負極の少なくとも一側に圧延され、
前記負極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一側に配置された負極活物質層とを含み、
前記負極活物質層は、黒鉛を含み、
前記複合材料は、前記負極活物質層の前記集電体から離れた側に近接して圧延される、請求項8に記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記二次電池が、正極、負極、及び電解液をさらに含む、請求項8に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の技術分野に属し、特に二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン電池に使用されているセパレータの多くはポリオレフィン系セパレータであるが、薄い、非導電性、非熱伝導性という欠点がある。電解液が通過できるように、ポリオレフィン系フィルムの表面に微細孔を設ける必要がある。同時に、セパレータの相分離技術は相対的に煩雑であり、従来技術では、電池コアを圧延する際に、最初の数巻きの電池コアの角における負極シートの曲率が大きくなる。同時に、その巻き芯が密に巻かれているため、張力も大きくなり、最初の数巻きで負極シートの角でセパレータの亀裂や粉化が発生することが良くあり、帯状の剥がれや銅漏れなどの現象が発生することさえある。
【0003】
電池寿命に対する市場の要求が高まるにつれて、リチウムイオン電池のセパレータに対する性能要件もより高まっている。現在使用されているポリオレフィン系セパレータは、高温時の熱収縮率が高く、電池のショートを引き起こし、安全事故を引き起こす可能性がある。そこで、研究者らは、セパレータの高温安定性を向上させるために、セパレータの表面に耐熱コーティングを施したが、これが電池のエネルギー密度のさらなる向上を妨げた。隔離膜のベースフィルムやコーティングを薄くすると、電解液の浸透性は向上するが、その突き刺し強度や熱収縮耐性が低下し、セルの安全性リスクが大きくなりやすい。
【0004】
上記に基づいて、本技術分野では、電池の空間利用率及びエネルギー密度を向上させるだけでなく、セパレータなしでも良好な電気化学的性能と耐熱性を実現し得る、セパレータフリーのリチウムイオン電池を開発することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を解決し、負極、その製造方法、及び電気化学装置を提供することを目的とする。本発明は、セパレータを使用せずに、発泡材料が焼成中に発泡してセパレータ状の層を形成するように、化学発泡の原理を利用して負極の表面を発泡材料でコーティングする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決策を採用する。
第1の態様において、本発明は、二次電池を提供する。二次電池は、正極及び/又は負極側に配置され、活物質、開始剤、及び発泡剤を含むセパレータを含む。
【0007】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に係る二次電池の製造方法を提供する。セパレータの製造方法は、活物質、開始剤、及び発泡剤を混合して、複合材料を取得し、複合材料を圧延、乾燥してセパレータを得る工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
既存の技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明は、化学発泡の原理を利用して、負極の表面を発泡材料でコーティングすることにより、焼成時に発泡剤が分解して活物質が発泡し、セパレータを使用せずにその場でセパレータ状の層が生成される、セパレータ状の層を有する負極を提供する。さらに、本発明は、活物質として多孔質酸化グラフェンを採用する。第一に、これにより発泡材料の過度の気泡成長が回避され、それによって材料の発泡孔径が制限され、多孔質酸化グラフェンの添加により、作製された負極は良好な延性及び破断伸びを有することができる。次に、酸化グラフェンは熱伝導性を有するものの、電気伝導性を有していないため、釘刺し中に発生する熱を酸化グラフェンが伝導することができる。同時に、酸化グラフェンは、使用中の材料の機械的強度と熱伝導率を高めることができる。最後に、第1の層は内部に酸化グラフェン素材を含み、負極素材との親和性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で提供される負極の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の技術的解決策は、図面及び特定の実施形態と併せて以下でさらに説明される。実施例は本発明の理解を容易にするためのものにすぎず、本発明を特定に限定するものとみなすべきではないことは当業者には明らかである。
【0011】
本明細書における「実施例」への言及は、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が本開示の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書のさまざまな場所でこの語句が出現する場合、必ずしもすべてが同じ実施例を参照しているわけではなく、別の実施例と相互に排他的である又は代替例であるわけでもない。本明細書に記載される実施例が他の実施例と組み合わせられ得ることは、当業者には明示的にも暗黙的にも理解される。
【0012】
本明細書における「及び/又は」という用語は、関連する対象物を記載する単なる関連関係であり、3つの関係が存在し得ることを示している。例えば、A及び/又はBは、Aのみが存在する、AとBの両方が存在する、Bが単独で存在するという3つの状況を意味することができる。さらに、本明細書における文字「/」は、文脈における対象物が「又は」の関係であることを一般的に示す。
【0013】
セパレータの電気伝導性及び熱伝導性が悪く、負極の活物質層が粉化や亀裂を生じやすいという従来技術における課題を解決するために、本発明は、セパレータ状の層を有する負極を提供する。ここで、負極の表面は発泡材料でコーティングされており、焼成中に発泡材料が発泡してセパレータを使用せずにセパレータ状の層を形成する。
【0014】
第1の態様において、本発明は、負極を提供する。第1の層は、負極の少なくとも一側に配置される。
第1の層は、活物質、開始剤、及び発泡剤を含む。活物質は、多孔質酸化グラフェンを含む。開始剤、発泡剤、多孔質酸化グラフェンの質量比は、(1~5):(1~10):(1~5)である。
【0015】
本発明は、化学発泡の原理を利用して、負極の表面を発泡材料でコーティングすることにより、焼成時に発泡剤が分解して活物質が発泡し、セパレータを使用せずにその場でセパレータ状の層が生成される。さらに、本発明は、活物質として多孔質酸化グラフェンを採用する。第一に、これにより発泡材料の過度の気泡成長が回避され、それによって材料の発泡孔径が制限され、多孔質酸化グラフェンの添加により、作製された負極は良好な延性及び破断伸びを有することができる。次に、酸化グラフェンは熱伝導性を有するものの、電気伝導性を有していないため、釘刺し中に発生する熱を酸化グラフェンが伝導することができる。同時に、酸化グラフェンは、使用中の材料の機械的強度と熱伝導率を高めることができる。最後に、第1の層は内部に酸化グラフェン素材を含み、負極素材との親和性を高めることができる。本発明によって提供される自己発泡セパレータは、電池のエネルギー密度を向上させることができ、発泡配合は非常に普遍的であり、単一の重合体材料に特有のものではない。
【0016】
さらに、本発明では、開始剤、発泡剤、及び多孔質酸化グラフェンの質量比を調整することにより、発泡材料の細孔径を適切な範囲に制御することで、良好な延性及び破断伸びを有しながらも、発泡材料はセパレータとしての役割を果たすことができる。質量比が上記範囲を超えると、この範囲内の細孔径が得られなくなり、上記の優れた性能を同時に達成することは困難となる。
【0017】
いくつかの実施形態において、活物質は重合体をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、又はポリエチレンテレフタレートのうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含み、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、又はポリエチレンテレフタレートであって良い。簡潔にするために、上記の範囲内の数値を1つずつ列挙しない。
【0019】
いくつかの実施形態において、重合体の分子量は、100,000~500,000、例えば、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、及び500,000である。簡潔にするために、上記の範囲内の数値を1つずつ列挙しない。
【0020】
本発明においては、重合体の分子量を調整することにより、昇温過程に同期して重合体が溶融し、スムーズに発泡することができる。分子量が低すぎる場合、重合体は早期に溶融し、分子量が高すぎる場合、重合体は溶融しにくくなる。
【0021】
いくつかの実施形態において、発泡剤は、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、及び炭酸カルシウムの組み合わせを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、発泡剤中のステアリン酸、ステアリン酸亜鉛及び炭酸カルシウムの質量比は、(0.5~2):(0.5~2):(1~2)であり、例えば、0.5:0.5:1、0.8:0.8:1.2、1:1:1.5、1.2:1.5:1.5、1.8:0.8:1.8、1:1:1であって良い。簡潔にするために、上記の範囲内の数値を1つずつ列挙しない。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の層は、可塑剤及び酸化防止剤をさらに含む。
【0024】
本発明において、電解液が第1の層により形成されるセパレータ状材料を腐食することを防止し、保護する役割を果たすために、第1の層に可塑剤及び酸化防止剤が添加される。
【0025】
いくつかの実施形態において、可塑剤は、フタル酸ジブチル、1,3-ブタンジオール、グリセリン、又はパラフィン油のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの組み合わせを含む。例えば、フタル酸ジブチル、1,3-ブタンジオール、グリセリン、パラフィンオイルである。簡潔にするために、上記の範囲内の組み合わせを1つずつ列挙しない。
【0026】
いくつかの実施形態において、酸化防止剤は、酸化防止剤1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))及び/又は酸化防止剤168 (トリス[2,4-ジ-tert-ブチルフェニル]ホスファイト)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の層の厚さは、5μm~15μmであり、例えば、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μmであって良い。
【0028】
いくつかの実施形態において、負極は、第2の層をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、第2の層は、黒鉛、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、又はハードカーボンなどを含み、その厚さは10μm~80μmである。
【0030】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に係る負極の製造方法を提供し、この方法は、活物質、開始剤、及び発泡剤を混合して複合材料を形成し、この複合材料を負極の少なくとも一側に圧延して乾燥させ、セパレータを得る工程を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、複合材料の厚さは5μm~10μm、例えば、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μmである。簡潔にするために、上記の範囲内の数値を1つずつ列挙しない。
【0032】
いくつかの実施形態において、複合材料は、可塑剤及び酸化防止剤をさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、乾燥温度は120℃であり、その乾燥時間は2時間~4時間である。
【0034】
なお、負極は第2の層をさらに含み、第2の層は黒鉛を含むことに留意されたい。
【0035】
第3の態様において、本発明は、電気化学装置を提供する。電気化学装置は、正極、負極、及び電解液を含む。負極は、第1の態様に係る負極である。
【0036】
本発明により提供される負極により作製されたリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いという利点を有する。
【0037】
具体的な実施例及び比較例の配合に従って作製された負極を同じ電池に実装することよって、本発明により作製された負極が電気化学的性能に及ぼす影響を以下に説明する。
【0038】
正極の準備:
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン、及び導電剤としてスーパーPを97:2:1の重量比で混合し、適切な量の溶媒N-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone、NMP)を加えて正極スラリーを調製し、この正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布して乾燥させ、圧延して正極を得た。
【0039】
他の実施形態において、本発明に記載の正極活物質は、リチウム含有複合酸化物であって良い。具体的な例としては、LiMnO、LiFeO、LiMn、LiFeSiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiCOMn、LiNi(1-x-y)Co(式中、0.01≦x≦0.20、0≦y≦0.20、0.97≦z≦1.20であり、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、Alから選択される少なくとも1種の元素を表す)、LiFePO、及びLiCO(1-x) (式中、0≦x≦0.1、0.97≦z≦1.20であり、Mは、Mn、Ni、V、Mg、Mo、Nb、及びAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す)を含んで良い。
【0040】
負極の準備:
黒鉛、導電性カーボンブラック、カルボキシメチルセルロースナトリウムを96:1:3の割合で混合し、脱イオン水を加えて負極スラリーを調製し、次に、この負極スラリーを銅箔上に塗布して乾燥させ、銅箔を圧延して負極を得た。
【0041】
他の実施形態において、本発明で説明される負極活物質黒鉛は、リチウムを挿入及び脱離できる材料と置換することができる。これには、結晶質炭素(天然黒鉛、人造黒鉛など)、非晶質炭素、炭素コーティング黒鉛、樹脂コーティング黒鉛などの炭素材料、又は、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化スズ、チタン酸リチウム、酸化亜鉛、又は酸化リチウムなどの酸化物材料が含まれ、又は、リチウム金属又はリチウムと合金を形成し得る金属材料であっても良いが、これらに限定されるものではない。リチウムと合金を形成し得る金属材料としては、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、及びAgなどが挙げられる。これらの金属とリチウムとを含む2元又は3元系合金を負極活物質として使用することもできる。これらの負極活物質は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エネルギー密度を向上させる観点からは、黒鉛などの炭素材料と、Si、Si合金、及びSi酸化物などのSi系材料とを組み合わせて用いても良い。しかしながら、黒鉛が好ましい。
【0042】
電解液の調製:
有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合物であり、EC、EMCとDECの体積比は20:20:60であった。水分含有量が10ppm未満のアルゴン雰囲気グローブボックス内で、十分に乾燥させたリチウム塩(LiPF)を有機溶媒に溶解し、均一に混合した後、LiPFの濃度が1mol/Lの電解液を得た。
【0043】
いくつかの他の実施形態において、電解液は、一般に、非水溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含む。
【0044】
非水溶媒は、当該技術分野における従来の非水溶媒であって良く、エステル溶媒であることが好ましく、カーボネート溶媒であることがより好ましい。特に、カーボネート溶媒は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)の1つ又は複数であることが好ましい。
【0045】
リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiN(SOF) (LiFSIと略す)、LiClO、LiAsF、LiB(C (LiBOBと略す)、LiBF(C) (LiDFOBと略す)、LiN(SO、LiN(SOF)(SO)のうちの少なくとも1つを含んで良い。その電解液における含有量は、5%~20%が好ましい。
【0046】
添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチレンスルファート(DTD)、ビニレンスルファート、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペニルスルトン、及び1,4-ブタンスルトンのうちの1つ又は複数であることが好ましい。電解液における添加剤の含有量は、電解液の1%~4%であり、例えば2%である。
【0047】
リチウムイオン電池の準備:
セパレータが正極シートと負極シートの間に位置して隔離の役割を果たすように、上記で作製された正極シート、セパレータ、及び負極シートを順次積層した。次に、生成物をアルミニウムプラスチックフィルムで包み、真空オーブンに移して120℃で乾燥させた。3.0g/Ahの電解液を注入した後、開口部を密封した。放置、熱間プレス、冷間プレス、成形、型締め、分積などの工程を経て、容量1Ahのソフトパック電池(リチウムイオン電池)が形成された。
【0048】
各実施例及び比較例で用いた具体的な物質及び成分は以下の通りである。
【0049】
実施例
【0050】
実施例1では、負極を提供する。図1に示されるように、負極の両面に厚さ10μmの第1の層が提供される。第1の層は、2重量部の活物質と、1重量部のアゾビスイソブチロニトリル開始剤と、2重量部の発泡剤と、1重量部のフタル酸ジブチルと、0.1重量部の酸化防止剤1010と、を含み、活物質は、多孔質酸化グラフェン及びポリエチレンテレフタレート(分子量30万)を含み、アゾビスイソブチロニトリル開始剤、発泡剤(ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、及び炭酸カルシウムの質量比は0.5:0.5:1である)、多孔質酸化グラフェンの質量比は1:2:2であった。第2の層は、厚さ20μmの人造黒鉛からなり、第1の層と銅箔(集電体)との間に配置された。
【0051】
実施例1は、以下の工程を含む負極の製造方法も提供する。
活物質、開始剤、発泡剤、フタル酸ジブチル、酸化防止剤1010を混合して、厚さ10μmの複合材料を得る。この複合材料を負極の両面に圧延し、120℃で3時間乾燥して、負極を得る。
【0052】
試験条件
【0053】
実施例1~実施例6及び比較例1~比較例3の負極を充填した電池の性能試験を行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0054】
[熱伝導率]
このシートを直径3cmの円形平板とし、熱伝導率計を用いてASTM-D5470-2012に準拠して25℃で熱伝導率を測定した。
【0055】
[吸液率]
同じ質量のセパレータをそれぞれ秤量し、セパレータの質量mを記録し、電解液にセパレータを入れて1時間浸漬し、取り出し、電解液が滴下しなくなるまで2分間放置し、質量mを秤量した。下記式により吸液率を算出した。
吸液率=(m-m)/m×100%
【0056】
[引張特性試験]
試験には汎用電子引張機械(Instron 4465 タイプ)を使用し、ASTM D638-2014に準拠してサンプルを試験用に作製し、引張速度50mm/minで、材料の破断伸びが記録された。
【0057】
他の実施例及び比較例は、実施例1に基づいてパラメータを変更したものであり、具体的な変更のパラメータ及び対応する試験結果は表1に示すとおりである。
【表1】
【0058】
表1のデータから、本発明の実施例1~実施例6で提供された負極は、良好な熱伝導率、電解液に対する良好な濡れ性、及びより高い破断伸びを有することが分かる。具体的には、実施例1~実施例6で得られた負極の熱伝導率は0.512W/mk以上であり、その吸液率は37%以上であり、その破断伸びは105.4%以上であった。
【0059】
比較例1は、酸化グラフェン材料が添加されていないことを示している。酸化グラフェンは、熱伝導性、親液性、高い破断伸びという特徴を有するため、作製された負極の総合性能は、実施例1で提供された負極ほど良くなかった。比較例2は、発泡剤材料を添加しない場合、活物質が発泡せず、セパレータ状の層が得られないため、電解液に対する濡れ性が悪かったことを示している。比較例3は、多孔質酸化グラフェンの質量が大きすぎると、熱伝導率はある程度高くなるものの、適切な細孔径を有する材料が得られず、良好な延性と破断伸びを両方とも達成できないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明では、開始剤、発泡剤、及び多孔質酸化グラフェンの質量比を調整することにより、発泡材料の細孔径を適切な範囲に制御することで、発泡材料がセパレータとして機能することを確保し、同時に、良好な延性及び破断伸びを実現することができる。
【0061】
出願人は、本発明が上記の実施例を通じて本発明のプロセス方法を説明したが、本発明は上記のプロセス工程に限定されない。すなわち、本発明が実施されるために上記のプロセス工程に依存しなければならないことを意味するものではない。当業者は、本発明に対するあらゆる改良、本発明において選択された原材料の等価置換、補助成分の追加、特定の方法の選択などはすべて、本発明の保護範囲及び開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0062】
1: 第1の層
2: 活物質層
3: 銅箔
図1
【外国語明細書】