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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007085
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/10 20060101AFI20240111BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
F16B5/10 L
F16B1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108286
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA19
3J001GA02
3J001GC02
3J001GC14
3J001HA08
3J001JD15
3J001JD17
3J001KA19
(57)【要約】
【課題】被固定材に対してチャンネル材を固定する際の施工性に優れた固定具を提供する。
【解決手段】一対のリップ部Rを有するチャンネル材Cを被固定材Bに固定するための固定具100は、貫通孔61aを有し、一対のリップ部Rに対してチャンネル材Cの外側から当接する外側部材6と、ナット部71を有し、一対のリップ部Rに対してチャンネル材Cの内側から当接する内側部材7と、外側部材6を挟んで内側部材7の側とは反対側に配置された頭部81、及び貫通孔61aに挿通された状態でナット部71に螺合するネジ部82を有する締付ボルト8と、頭部81と外側部材6との間に配置され、それらを互いに離間する方向に付勢する弾性部材9と、を備え、貫通孔61aの径が、ネジ部82の外径よりも大きく、頭部81の外径よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリップ部を有するチャンネル材を被固定材に固定するための固定具であって、
前記被固定材に連結されると共に、貫通孔を有し、一対の前記リップ部に対して前記チャンネル材の外側から当接するように配置される外側部材と、
ナット部を有し、一対の前記リップ部に対して前記チャンネル材の内側から当接するように配置される内側部材と、
前記外側部材を挟んで前記内側部材の側とは反対側に配置された頭部、及び前記貫通孔に挿通された状態で前記ナット部に螺合するネジ部を有する締付ボルトと、
前記頭部と前記外側部材との間に配置され、前記頭部と前記外側部材とを互いに離間する方向に付勢する弾性部材と、を備え、
前記貫通孔の径が、前記ネジ部の外径よりも大きく、前記頭部の外径よりも小さい、固定具。
【請求項2】
前記貫通孔が、前記チャンネル材が延在する方向である第1方向の長さよりも、前記第1方向に直交する方向であって一対の前記リップ部が並ぶ方向である第2方向の長さが長い長孔状に形成されている、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記内側部材は、一対の前記リップ部に当接する一対の当接部を、前記ナット部を挟んで前記第2方向の両側に有し、
一対の前記当接部の少なくとも一方は、先端側に向かうに従って前記外側部材との間隔が次第に大きくなるように傾斜状に形成されている、請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記内側部材は、前記ナット部が配置された基部と、前記ナット部を挟んで前記第1方向の両側において、前記基部から前記外側部材に向けて突出する一対の側部と、を有し、
一対の前記側部のそれぞれは、一対の前記リップ部の一方である第1リップ部の先端部が係合可能に形成された切欠部を有する、請求項2又は3に記載の固定具。
【請求項5】
前記外側部材は、一対の前記リップ部の間を前記チャンネル材の内側に向けて突出すると共に、前記チャンネル材の内側において、前記第2方向における一対の前記リップ部の他方である第2リップ部の側に突出する鉤部を有している、請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
前記外側部材は、前記貫通孔を挟んで前記第1方向の両側において、前記内側部材の側とは反対側に窪むように形成された一対の溝部を有し、
前記弾性部材の付勢力により、一対の前記側部が一対の前記溝部に係合している、請求項4に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のリップ部を有するチャンネル材を被固定材に固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような固定具の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における部材名及び符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1に記載の固定具は、リップ部(リップ部P1)に対してチャンネル材(チャンネル材P)の外側から当接するように配置される外側部材(固定体20)と、リップ部に対してチャンネル材の内側から当接するように配置される内側部材(係止体10)と、を備えている。そして、内側部材がチャンネル材の内側に位置するように、固定具を一対のリップ部の間からチャンネル材に挿入して回転させる。その後、内側部材と外側部材とによりリップ部が挟持されるように、締付ボルト(固定ボルトQ)を用いて内側部材と外側部材とを締結することで、固定具をチャンネル材に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-188700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような固定具をチャンネル材に連結する際、固定具をチャンネル材に対して回転させる必要がある。そのため、施工性の点で、固定具の更なる改善が求められていた。
【0006】
そこで、被固定材に対してチャンネル材を固定する際の施工性に優れた固定具の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固定具は、
一対のリップ部を有するチャンネル材を被固定材に固定するための固定具であって、
前記被固定材に連結されると共に、貫通孔を有し、一対の前記リップ部に対して前記チャンネル材の外側から当接するように配置される外側部材と、
ナット部を有し、一対の前記リップ部に対して前記チャンネル材の内側から当接するように配置される内側部材と、
前記外側部材を挟んで前記内側部材の側とは反対側に配置された頭部、及び前記貫通孔に挿通された状態で前記ナット部に螺合するネジ部を有する締付ボルトと、
前記頭部と前記外側部材との間に配置され、前記頭部と前記外側部材とを互いに離間する方向に付勢する弾性部材と、を備え、
前記貫通孔の径が、前記ネジ部の外径よりも大きく、前記頭部の外径よりも小さい。
【0008】
この構成によれば、締付ボルトがナット部に対して緩締状態である場合、締付ボルトのネジ部が貫通孔に挿通された状態で、締付ボルトが外側部材に対して揺動可能となっている。これにより、ナット部にネジ部が螺合された内側部材の端部を、外側部材に対して拡開することができる。そのため、外側部材に対して拡開させた端部側から、リップ部を外側部材と内側部材との間に容易に配置させることができる。そして、弾性部材の付勢力に抗して固定具をリップ部に向けて押し込むことで、当該リップ部を外側部材と内側部材との間に挟み込んだ状態で、一対のリップ部の間から内側部材をチャンネル材の内側に挿入することができる。このように、本構成によれば、被固定材に対してチャンネル材を固定する際の固定具の施工性を向上させることができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記貫通孔が、前記チャンネル材が延在する方向である第1方向の長さよりも、前記第1方向に直交する方向であって一対の前記リップ部が並ぶ方向である第2方向の長さが長い長孔状に形成されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、締付ボルトがナット部に対して緩締状態である場合、締付ボルトのネジ部が貫通孔に挿通された状態で、締付ボルトが貫通孔の長手方向である第2方向に揺動し易くなる。これにより、ナット部にネジ部が螺合された内側部材の第2方向の一端部又は他端部を、外側部材に対して拡開することが容易となる。このように、本構成によれば、被固定材に対してチャンネル材を固定する際の固定具の施工性を更に向上させることができる。
【0012】
一態様として、
前記内側部材は、一対の前記リップ部に当接する一対の当接部を、前記ナット部を挟んで前記第1方向の両側に有し、
一対の前記当接部の少なくとも一方は、先端側に向かうに従って前記外側部材との間隔が次第に大きくなるように傾斜状に形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、当接部と外側部材との間にリップ部を容易に挟み込むことができる。これにより、固定具をチャンネル材に連結する作業を容易に行うことができる。
【0014】
一態様として、
前記内側部材は、前記ナット部が配置された基部と、前記ナット部を挟んで前記第1方向の両側において、前記基部から前記外側部材に向けて突出する一対の側部と、を有し、
一対の前記側部のそれぞれは、一対の前記リップ部の一方である第1リップ部の先端部が係合可能に形成された切欠部を有すると好適である。
【0015】
この構成によれば、弾性部材の付勢力により外側部材と内側部材との間に第1リップ部が挟み込まれた状態で、第1リップ部の先端部を一対の側部の切欠部に係合させることができる。これにより、外側部材と内側部材との間から第1リップ部が脱離し難くすることができる。また、一対の側部の切欠部に係合した第1リップ部の先端部回りに、固定具を回動させることができるため、固定具をチャンネル材に連結する作業を容易に行うことができる。
【0016】
一態様として、
前記外側部材は、一対の前記リップ部の間を前記チャンネル材の内側に向けて突出すると共に、前記チャンネル材の内側において、前記第2方向における一対の前記リップ部の他方である第2リップ部の側に突出する鉤部を有していると好適である。
【0017】
この構成によれば、鉤部の先端部がチャンネル材の内側に位置した状態で、固定具を第2方向における第2リップ部の側に移動させた場合に、鉤部の先端部をチャンネル材に当接させて、固定具の第2方向の位置決めを行うことができる。また、鉤部の先端部が第2リップ部の下側に位置した状態で、固定具を上側に移動させた場合に、鉤部の先端部が第2リップ部に当接するため、固定具がチャンネル材から脱離することを回避できる。
【0018】
一態様として、
前記外側部材は、前記貫通孔を挟んで前記第1方向の両側において、前記内側部材の側とは反対側に窪むように形成された一対の溝部を有し、
前記弾性部材の付勢力により、一対の前記側部が一対の前記溝部に係合していると好適である。
【0019】
この構成によれば、一対の側部が一対の溝部の側面に当接するため、外側部材に対する内側部材の向きを略一定に維持することができる。これにより、チャンネル材を取り付ける作業を容易に行うことができる。また、締付ボルトを締め付ける際に、内側部材が連れ回りすることを回避できる。したがって、締付ボルトを締め付ける作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る固定具の使用状態を示す斜視図
図2】実施形態に係る固定具の使用状態を示す断面図
図3】実施形態に係る固定具の一部分解斜視図
図4】実施形態に係る固定具の一部分解斜視図
図5】実施形態に係る固定具の外側部材及び内側部材の周辺の構成を示す断面図
図6】実施形態に係る固定具をチャンネル材に連結する作業の一例を示す図
図7】実施形態に係る固定具をチャンネル材に連結する作業の一例を示す図
図8】実施形態に係る固定具をチャンネル材に連結する作業の一例を示す図
図9】実施形態に係る固定具をチャンネル材に連結する作業の一例を示す図
図10】実施形態に係る固定具をチャンネル材に連結する作業の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、実施形態に係る固定具100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、固定具100は、一対のリップ部Rを有するチャンネル材Cをボルト材B(「被固定材」の一例)に固定するために用いられる。
【0022】
ボルト材Bは、天井スラブや梁等の構造体(不図示)から吊り下げられている。本例では、ボルト材Bは、吊ボルトである。なお、ボルト材Bとしては、吊ボルトに限定せず、例えば、当該吊ボルトに連結された別の長尺ボルトであっても良い。つまり、ボルト材Bは、構造体に対して、直接的に又は吊ボルトを介して間接的に吊り下げられた状態で設けられている。
【0023】
チャンネル材Cは、一方向に延在するように形成されている。そして、チャンネル材Cは、底板部C1と、当該底板部C1から立ち上がるように形成された一対の側板部C2と、を有しており、C字状の断面が連続するように形成されている。チャンネル材Cは、当該チャンネル材Cの延在方向の複数箇所のそれぞれにおいて、固定具100によりボルト材Bに固定されている。そして、チャンネル材Cは、例えば、ケーブルラック、ダクト等の吊設機器を下方から支持している。本例では、チャンネル材Cは、リップ溝形鋼である。
【0024】
チャンネル材Cは、一対のリップ部Rを有している。一対のリップ部Rは、一対の側板部C2から互いに接近するように延出している。
【0025】
以下の説明では、チャンネル材Cを基準として、固定具100について「第1方向X」、「第2方向Y」、及び「第3方向Z」を定義する。第1方向Xは、チャンネル材Cが延在する方向である。第2方向Yは、第1方向Xに直交する方向であって、一対のリップ部Rが並ぶ方向である。第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yに直交する方向である。本実施形態では、固定具100がチャンネル材Cをボルト材Bに固定した状態において、第3方向Zは、鉛直方向に一致する。そこで、説明の便宜上、鉛直方向(第3方向Z)の上側を単に「上側」、鉛直方向(第3方向Z)の下側を単に「下側」と記す。なお、固定具100についての方向は、固定具100がチャンネル材Cをボルト材Bに固定した状態(図1及び図2に示す状態)での方向を表す。
【0026】
本実施形態では、底板部C1は、一定の第2方向Yの長さを維持しつつ、第1方向Xに延在する板状に形成されている。また、本実施形態では、一対の側板部C2のそれぞれは、一定の第3方向Zの長さを維持しつつ、第1方向Xに延在する板状に形成されている。そして、一対の側板部C2は、底板部C1における第2方向Yの両側の端部から上側に延出するように形成されている。また、本実施形態では、一対のリップ部Rは、一対の側板部C2の上側の端部から互いに接近するように延出している。そして、一対のリップ部Rは、互いに接近するに従って次第に下側に向かうように傾斜している。
【0027】
図1及び図2に示すように、固定具100は、ボルト材Bを保持する第1保持部10と、チャンネル材Cを保持する第2保持部20と、を備えている。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1保持部10は、板状部材1と、挟着部材2と、第1ボルト3と、ナット4と、第1弾性部材5と、を備えている。
【0029】
図1及び図3に示すように、板状部材1は、第1本体部11と、ボルト材当接部12と、ボルト材係合部13と、を有している。
【0030】
第1本体部11は、第1方向X及び第3方向Zに延在する板状に形成されている。そして、第1本体部11には、当該第1本体部11を第2方向Yに貫通するように第1貫通孔11aが形成されている。
【0031】
本実施形態では、第1本体部11における第1貫通孔11aを挟んで第1方向Xの両側に、一対の第1隆起部11bが形成されている。一対の第1隆起部11bは、第2方向Yにおけるボルト材Bの側とは反対側に隆起するように、第3方向Zに沿って連続的に形成されている。一対の第1隆起部11bを設けることで、第1本体部11の強度を高めることができる。
【0032】
ボルト材当接部12は、ボルト材Bに第2方向Yの一方側から当接するように配置されている。ボルト材当接部12は、第1本体部11から第1方向Xの一方側に延出するように形成されている。ボルト材当接部12は、第1方向X及び第3方向Zに延在する板状に形成されている。
【0033】
ボルト材係合部13は、ボルト材当接部12がボルト材Bに当接した状態で、ボルト材Bに係合するように形成されている。ボルト材係合部13は、第2方向Yにおけるボルト材当接部12の側とは反対側からボルト材Bに係合するように形成されている。本実施形態では、ボルト材係合部13は、第1本体部11の上端部を第2方向Yに沿うように屈曲させて形成されている。
【0034】
挟着部材2は、板状部材1との間にボルト材Bを挟み込むように構成されている。挟着部材2は、挟着本体部21と、抱持部22と、を有している。
【0035】
挟着本体部21は、第1方向X及び第3方向Zに延在する板状に形成されている。そして、挟着本体部21は、板状部材1の第1本体部11に対して、第2方向Yにおけるボルト材Bの側に配置されている。また、挟着本体部21は、当該挟着本体部21を第2方向Yに貫通するように形成された貫通孔21aを有している。
【0036】
抱持部22は、ボルト材Bの外形に沿う半円筒状に形成されている。抱持部22の内面には、ボルト材Bの外面に形成されたネジ山に係止する内向きの係止突起22aが、第3方向Zに互いに間隔を空けて複数形成されている。抱持部22は、挟着本体部21における第1方向Xの一端部から連続するように形成されている。
【0037】
第1ボルト3及びナット4は、板状部材1と挟着部材2とを締結するように構成されている。第1ボルト3は、板状部材1を挟んで挟着部材2の側とは反対側に配置された第1頭部31と、板状部材1の第1貫通孔11a及び挟着部材2の貫通孔21aに挿通された状態でナット4に螺合する第1ネジ部32と、を有している。第1ボルト3とナット4とが緩締状態である場合、板状部材1に対して挟着部材2が拡開可能である。一方、第1ボルト3とナット4とが緊締状態である場合、板状部材1と挟着部材2との間(具体的には、ボルト材係合部13と抱持部22との間)にボルト材Bが挟み込まれて保持される。
【0038】
第1弾性部材5は、第1ボルト3の第1頭部31と板状部材1との間に配置されている。そして、第1弾性部材5は、第1頭部31と板状部材1とを互いに離間する方向に付勢している。本実施形態では、第1ボルト3の第1ネジ部32が第1ワッシャ33に挿通されている。そして、第1弾性部材5は、定常状態(外力が作用していない状態)に比べて圧縮された状態で、第1ワッシャ33と板状部材1の第1本体部11との間に配置されている。こうして、第1ボルト3の第1ネジ部32に螺合されたナット4が、第1弾性部材5により板状部材1に向けて付勢され、挟着部材2がナット4により板状部材1に向けて押圧される。そのため、第1ボルト3とナット4とを緩締状態とすることで、第1弾性部材5の付勢力によって板状部材1と挟着部材2との間にボルト材Bを仮保持することができる。本実施形態では、第1弾性部材5は、円錐コイルばねである。そして、円錐コイルばねとしての第1弾性部材5に、第1ボルト3の第1ネジ部32が挿通される。
【0039】
図2及び図4に示すように、第2保持部20は、外側部材6と、内側部材7と、第2ボルト8と、第2弾性部材9と、を備えている。
【0040】
外側部材6は、一対のリップ部Rに対してチャンネル材Cの外側から当接するように配置されている。本実施形態では、外側部材6は、一対のリップ部Rに対して上側から当接するように配置されている。
【0041】
本実施形態では、外側部材6は、第2本体部61を有している。第2本体部61は、第1方向X及び第2方向Yに延在する板状に形成されている。そして、第2本体部61には、当該第2本体部61を第3方向Zに貫通するように第2貫通孔61aが形成されている。このように、外側部材6は、第2貫通孔61aを有している。
【0042】
本実施形態では、第2本体部61における第2貫通孔61aを挟んで第1方向Xの両側に、一対の第2隆起部61bが形成されている。一対の第2隆起部61bは、上側に隆起するように、第2方向Yに沿って連続的に形成されている。一対の第2隆起部61bを設けることで、第2本体部61の強度を高めることができる。
【0043】
第2本体部61は、第1保持部10の第1本体部11と連結されている。本実施形態では、第2本体部61と第1本体部11とは、第2本体部61における第2方向Yの一端部と、第1本体部11における下側の端部とが連結するように、L字状に一体的に形成されている。そして、第2本体部61の一対の第2隆起部61bと、第1本体部11の一対の第1隆起部11bとが、一体のものとして連続的に形成されている。このように、外側部材6は、ボルト材Bを保持する第1保持部10の板状部材1に連結されている。つまり、外側部材6は、第1保持部10を介してボルト材Bに連結されている。
【0044】
内側部材7は、一対のリップ部Rに対してチャンネル材Cの内側から当接するように配置されている。本実施形態では、内側部材7は、一対のリップ部Rに対して下側から当接するように配置されている。また、内側部材7は、ナット部71を有している。ナット部71の内面には、雌ネジ部が形成されている。
【0045】
本実施形態では、内側部材7は、基部72と、一対の側部73と、を有している。基部72には、ナット部71が配置されている。本実施形態では、基部72は、第1方向X及び第2方向Yに延在する板状に形成されている。そして、ナット部71が基部72を第3方向Zに貫通するように形成されている。一対の側部73は、ナット部71を挟んで第1方向Xの両側において、基部72から外側部材6に向けて突出するように形成されている。本実施形態では、一対の側部73は、基部72における第1方向Xの両端部から上側に突出するように形成されている。
【0046】
第2ボルト8は、外側部材6を挟んで内側部材7の側とは反対側に配置された第2頭部81と、外側部材6の第2貫通孔61aに挿通された状態でナット部71に螺合する第2ネジ部82と、を有する「締付ボルト」である。第2ネジ部82は、ナット部71の雌ネジ部に噛み合う雄ネジ部を有している。図示の例では、第2頭部81は、第2ネジ部82の軸心方向に沿って見た場合に、六角形状に形成されている。つまり、本例では、第2ボルト8は、六角ボルトである。
【0047】
第2ネジ部82が挿通される第2貫通孔61aの径は、第2ネジ部82の外径よりも大きく、第2頭部81の外径よりも小さい。ここで、「第2ネジ部82の外径」とは、第2ネジ部82の雄ネジ部を構成するネジ山の頂の径である。そして、「第2頭部81の外径」とは、第2ネジ部82の軸心方向に沿って見た場合における、第2頭部81の最も小さい径(本例では、六角形の対辺の距離)である。また、「第2貫通孔61aの径は、第2ネジ部82の外径よりも大きい」とは、第2ネジ部82が第2貫通孔61aに挿通された状態で、第2ネジ部82が外側部材6に対して揺動可能な程度のクリアランスが、第2貫通孔61aと第2ネジ部82との間に存在することを意味する。
【0048】
本実施形態では、第2貫通孔61aは、第1方向Xの長さよりも、第2方向Yの長さが長い長孔状に形成されている。そのため、第2ボルト8とナット部71とが緩締状態である場合、第2ネジ部82が第2貫通孔61aに挿通された状態で、第2ボルト8が第3方向Zに対して第2方向Yに揺動可能である。よって、ナット部71に第2ネジ部82が螺合された内側部材7の第2方向Yの一端部又は他端部が、外側部材6に対して拡開可能である。一方、第2ボルト8とナット部71とが緊締状態である場合、内側部材7が外側部材6に対して密着した状態となる。
【0049】
第2弾性部材9は、第2ボルト8の第2頭部81と外側部材6との間に配置されている。そして、第2弾性部材9は、第2頭部81と外側部材6とを互いに離間する方向に付勢している。本実施形態では、第2ボルト8の第2ネジ部82が第2ワッシャ83に挿通されている。そして、第2弾性部材9は、定常状態(外力が作用していない状態)に比べて圧縮された状態で、第2ワッシャ83と外側部材6の第2本体部61との間に配置されている。こうして、ナット部71に第2ボルト8の第2ネジ部82が螺合された内側部材7が、第2弾性部材9の付勢力により外側部材6に向けて付勢される。本実施形態では、第2弾性部材9は、円錐コイルばねである。そして、円錐コイルばねとしての第2弾性部材9に、第2ボルト8の第2ネジ部82が挿通される。
【0050】
図2に示すように、内側部材7は、一対のリップ部Rに当接する一対の当接部74を有している。一対の当接部74は、ナット部71を挟んで第2方向Yの両側に配置されている。一対の当接部74の少なくとも一方は、先端側に向かうに従って外側部材6との間隔が次第に大きくなるように傾斜状に形成されている。本実施形態では、一対の当接部74のうち、第2方向Yにおける第1保持部10の側とは反対側(図2における左側)の当接部74は、第1保持部10から離れるに従って次第に下側に向かうように形成されている。また、一対の当接部74のうち、第2方向Yにおける第1保持部10の側(図2における右側)の当接部74は、第1保持部10に近付くに従って次第に下側に向かうように形成されている。
【0051】
本実施形態では、一対の側部73におけるナット部71よりも第2方向Yの一方側の部分と、一対の側部73におけるナット部71よりも第2方向Yの他方側の部分とが、一対の当接部74として機能する。そのため、本実施形態では、一対の側部73におけるナット部71よりも第2方向Yの一方側の部分の上端面は、第2方向Yの一方側に向かうに従って次第に下側に向かうように形成されている。また、一対の側部73におけるナット部71よりも第2方向Yの他方側の部分の上端面は、第2方向Yの他方側に向かうに従って次第に下側に向かうように形成されている。
【0052】
以下の説明では、一対のリップ部Rの一方を「第1リップ部R1」とし、一対のリップ部Rの他方を「第2リップ部R2」とする。また、内側部材7における一対の当接部74のうち、第1リップ部R1に当接する方を「第1当接部741」とし、第2リップ部R2に当接する方を「第2当接部742」とする。
【0053】
図2及び図4に示すように、本実施形態では、一対の側部73のそれぞれは、切欠部73aを有している。切欠部73aは、第1リップ部R1の先端部が係合可能に形成されている。本実施形態では、切欠部73aは、側部73の上端面が下側に窪むように形成されている。
【0054】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、外側部材6は、鉤部62を更に有している。鉤部62は、一対のリップ部Rの間をチャンネル材Cの内側に向けて突出すると共に、チャンネル材Cの内側において、第2方向Yにおける第2リップ部R2の側に突出するように形成されている。本実施形態では、一対の鉤部62が、第2本体部61における第1方向Xの両側の端部に形成されている。そして、一対の鉤部62は、次第に第2方向Yにおける第2リップ部R2の側に向かうように下側に突出し、そこから次第に上側に向かうように第2方向Yにおける第2リップ部R2の側に突出する形状を有している。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、外側部材6は、一対の溝部61cを有している。一対の溝部61cは、第2貫通孔61aを挟んで第1方向Xの両側において、内側部材7の側とは反対側に窪むように形成されている。本実施形態では、一対の溝部61cは、一対の第2隆起部61bと一体的に形成されている。説明を加えると、本実施形態では、第2本体部61の上面が隆起するように一対の第2隆起部61bが形成され、第2本体部61における一対の第2隆起部61bが形成された部分の下面が窪むように一対の溝部61cが形成されている。
【0056】
図5に示すように、一対の側部73は、第2弾性部材9の付勢力により、一対の溝部61cに係合している。本実施形態では、一対の側部73のそれぞれが備える突出部73bが、溝部61cに係合している。一対の突出部73bは、一対の側部73における第1当接部741と第2当接部742との間に配置され、上側に向けて突出するように形成されている。なお、図5は、第2ボルト8とナット部71とが緩締状態である様子を示している。
【0057】
以下では、本実施形態に係る固定具100をチャンネル材Cに連結する作業の一例について、図6から図10を参照して説明する。なお、本例では、上記作業は、作業者が固定具100の第1保持部10にボルト材Bを保持させた後に行う。また、上記作業は、作業者がチャンネル材Cを把持し、当該チャンネル材Cを固定具100に対して相対移動させることによって行う。
【0058】
まず、図6に示すように、チャンネル材Cを傾かせて、外側部材6の第2本体部61の下面に第1リップ部R1の基端部(第1リップ部R1における側板部C2との接続部)を当接させると共に、内側部材7の第1当接部741を成す一対の側部73の上面に第1リップ部R1の先端部を当接させる。つまり、第2本体部61と第1当接部741とで、第1リップ部R1を挟んだ状態とする。更に、外側部材6の一対の鉤部62の下面に第2リップ部R2の先端部を当接させる。
【0059】
次に、図7に示すように、第1リップ部R1の先端部が一対の側部73の上面上を第1当接部741の先端部の側から基端部の側に相対的に摺動するように、チャンネル材Cを移動させる。その結果、長孔状の第2貫通孔61a内で第2ボルト8の第2ネジ部82が第2方向Yに傾き、それに伴って第1当接部741と第2本体部61との間隔が大きくなる。
【0060】
チャンネル材Cを更に移動させると、第2弾性部材9の付勢力に抗して第1当接部741と第2本体部61との間隔が更に大きくなる。その結果、図8に示すように、第1当接部741に第1リップ部R1の側の側板部C2の内面が当接すると共に、第1リップ部R1の先端部が一対の側部73の切欠部73aに係合する。こうして、第1リップ部R1の先端部が一対の側部73の切欠部73aに係合した状態で、第2弾性部材9の付勢力により、第1リップ部R1が第2本体部61と第1当接部741とに挟み込まれる。そのため、第2本体部61と第1当接部741との間から第1リップ部R1が脱離し難くなっている。また、一対の側部73の切欠部73aに係合した第1リップ部R1の先端部回りに、固定具100に対してチャンネル材Cを回動可能な状態となっている。
【0061】
続いて、図9に示すように、内側部材7がチャンネル材Cの内側に向けて相対移動するように、チャンネル材Cを第1リップ部R1の先端部回りに回動させる。その結果、第2本体部61が第1リップ部R1の基端部(第1リップ部R1における側板部C2との接続部)に加えて、第2リップ部R2の基端部(第2リップ部R2における側板部C2との接続部)にも当接した状態となる。更に、第1当接部741に加えて第2当接部742もチャンネル材Cの内側に位置すると共に、一対の鉤部62における第2リップ部R2の側に突出した部分もチャンネル材Cの内側に位置した状態となる。
【0062】
そして、図10に示すように、一対の鉤部62の先端部に第2リップ部R2の側の側板部C2の内面が当接するまで、チャンネル材Cを第2方向Yに摺動させる。その結果、第1リップ部R1の先端部に第1当接部741が当接すると共に、第2リップ部R2の先端部に第2当接部742が当接した状態となる。
【0063】
最後に、第2ボルト8を締め付けて緊締状態とすることで、固定具100をチャンネル材Cに連結する作業が完了する。
【0064】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第2貫通孔61aが第1方向Xの長さよりも第2方向Yの長さが長い長孔状に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2ボルト8が外側部材6に対して第2方向Yに揺動可能であれば、第2貫通孔61aが第2方向Yの長さよりも第1方向Xの長さが長い長孔状に形成されていても良いし、第2貫通孔61aの第1方向Xと第2方向Yとの長さが同一に(例えば、丸穴状に)形成されていても良い。
【0065】
(2)上記の実施形態では、第1保持部10が板状部材1と挟着部材2との間にボルト材Bを挟み込む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ボルト材Bが収容される凹部をそれぞれが有する一対の対向壁を備えた箱状の押さえ金具により第1保持部10が構成されていても良い。
【0066】
(3)上記の実施形態では、一対の当接部74の双方が、それらの先端側に向かうに従って外側部材6との間隔が次第に大きくなるように傾斜状に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、一対の当接部74のいずれか一方のみが、その先端側に向かうに従って外側部材6との間隔が次第に大きくなるように傾斜状に形成されていても良い。或いは、一対の当接部74の双方が、傾斜状に形成されておらず、平坦状に形成されていても良い。
【0067】
(4)上記の実施形態では、内側部材7が基部72及び一対の側部73を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、内側部材7が一対の側部73を有しない構成としても良い。この構成では、基部72におけるナット部71よりも第2方向Yの一方側の部分と、基部72におけるナット部71よりも第2方向Yの他方側の部分とが、一対の当接部74として機能する。この場合、基部72における一対の当接部74として機能する部分が、外側部材6に向けて突出するように形成されていると好適である。また、切欠部73aに相当する切欠部が基部72に形成されていると好適である。なお、内側部材7は、板材を屈曲させることによって形成されていても良いし、上記の実施形態の基部72及び一対の側部73に対応する形状の外面を有する塊状の部材として形成されていても良い。
【0068】
(5)上記の実施形態では、外側部材6が一対の鉤部62を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、外側部材6が1つの鉤部62のみを有する構成としても良い。或いは、外側部材6が鉤部62を有しない構成としても良い。
【0069】
(6)上記の実施形態では、一対の側部73がそれぞれ係合する一対の溝部61cが外側部材6に設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、一対の側部73が係合する比較的大きい1つの溝部61cが外側部材6に設けられていても良い。
【0070】
(7)上記の実施形態では、固定具100をボルト材Bに固定してから、ボルト材Bに固定された固定具100にチャンネル材Cを連結する構成を例として説明した。しかし、固定具100の使用方法はそのような構成に限定されることなく、固定具100とチャンネル材Cとを連結してから、チャンネル材Cが連結された固定具100をボルト材Bに固定しても良い。
【0071】
(8)上記の実施形態では、第1弾性部材5及び第2弾性部材9として円錐コイルばねを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば引張コイルバネや圧縮コイルバネ、板バネ、棒状ゴム、伸縮ゴム、スポンジ等を用いても良い。
【0072】
(9)上記の実施形態では、固定具100によるチャンネル材Cの固定対象(すなわち、「被固定材」)がボルト材Bである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば丸棒、角棒、輪形状、C型チャンネル、L型チャンネル、又は板等に対してチャンネル材Cを固定するために固定具100を用いても良い。第1保持部10の具体的構造は、被固定材の形状に応じて適宜決定される。
【0073】
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示に係る技術は、一対のリップ部を有するチャンネル材を被固定材に固定するための固定具に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 :固定具
6 :外側部材
61a :第2貫通孔(貫通孔)
7 :内側部材
71 :ナット部
72 :基部
73 :側部
74 :当接部
741 :第1当接部
742 :第2当接部
8 :第2ボルト(締付ボルト)
81 :第2頭部(頭部)
82 :第2ネジ部(ネジ部)
9 :第2弾性部材(弾性部材)
B :ボルト材(被固定材)
C :チャンネル材
R :リップ部
X :第1方向
Y :第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10