(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070854
(43)【公開日】2024-05-23
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法および転化装置
(51)【国際特許分類】
C10G 11/18 20060101AFI20240516BHJP
B01J 29/48 20060101ALI20240516BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20240516BHJP
B01J 29/90 20060101ALI20240516BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J29/48 M
B01J29/40 M
B01J29/90 M
B01J38/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192987
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0150450
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム オク ユン
(72)【発明者】
【氏名】イ ホ ウォン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01B
4G169BA04A
4G169BA04B
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4G169CC07
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4H129AA01
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4H129KD30X
4H129KD31X
4H129NA26
4H129NA46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法、および廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、前記反応器にて廃プラスチック熱分解油を第1金属および第2金属を含む接触分解触媒下で反応させる第2ステップと、前記第2ステップの生成物から触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法を提供する。また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、接触分解反応が行われる流動層反応器と、前記流動層反応器から生成物が流入し、触媒とオイルに分離されるサイクロンと、前記サイクロンからオイルが流入し、ガス成分と液状成分に分離されるスタビライザと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、
前記反応器にて廃プラスチック熱分解油を第1金属および第2金属を含む接触分解触媒下で反応させる第2ステップと、
前記第2ステップの生成物から接触分解触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、
を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項2】
前記第1金属は、マンガン、スズ、または亜鉛から選択される少なくとも1つ以上の金属を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項3】
前記第2金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、またはバナジウムから選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項4】
前記接触分解触媒は、ゼオライト、粘土、およびバインダーをさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項5】
前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ゼオライト、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4、またはL型ゼオライトを含む、請求項4に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項6】
前記接触分解触媒は、第1金属と第2金属の重量比が6:0.1~6:1である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項7】
前記接触分解触媒は、ゼオライト20~70重量%、粘土10~60重量%、バインダー10~50重量%、第1金属1~6重量%、および第2金属0.1~1重量%を含む、請求項4に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項8】
前記接触分解触媒は、平均粒子サイズが50~2000μmである、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項9】
前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で、沸点340℃以上の減圧ガスオイル(VGO)成分を含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項10】
前記反応器が流動層反応器である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項11】
前記第2ステップは、温度400~600℃および反応圧力50~200kPaで行われる、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法。
【請求項12】
廃プラスチック熱分解油が流入し、接触分解反応が行われる流動層反応器と、
前記流動層反応器から生成物が流入し、触媒とオイルに分離されるサイクロンと、
前記サイクロンからオイルが流入し、ガス成分と液状成分に分離されるスタビライザと、
を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法および転化装置に関し、詳細には、オレフィン選択度が高く、かつ、コークスの生成を最小化することができる廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法および転化装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル度が低く、ゴミとして廃棄処分されていることが多い。このような廃棄物は、自然状態で分解されるのに長時間がかかるため、土壌を汚染させ、深刻な環境汚染を引き起こしている状況である。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、廃プラスチックを熱分解して使用可能なオイルに転化させることができ、それを廃プラスチック熱分解油という。
【0003】
一方、石油系オイルなどの炭化水素オイル混合物の中でもオレフィン、特にエチレン、プロピレンなどの軽質オレフィンは、石油化学産業で広く用いられている。現在までにほとんどのエチレンまたはプロピレンは、主に天然ガスやナフサ留分、ガスオイルなどの炭化水素オイルを対象に、触媒のない無触媒条件下で、800℃以上の高温の水蒸気雰囲気で熱分解して製造されているが、前記方法は、オレフィン選択度および製造収率が低いという問題がある。
【0004】
オレフィン選択度または転化率などの製造収率や反応効率を向上させるための方法として流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking、FCC)工程が行われており、代表的に酸触媒を用いた接触分解工程を例に挙げることができる。特に、様々な酸触媒の中でもゼオライトが最も広く用いられており、代表的な接触分解用ゼオライトとしては、ZSM-5ゼオライト、USYゼオライト、β-ゼオライトなどが用いられている。石油系原料などの炭化水素オイルを対象に、固体酸の活性点を有するゼオライト触媒を用いて、カルベニウムイオン(carbenium ion)によるクラッキング反応を誘導することで接触分解工程を行っているが、廃プラスチック熱分解油は、主に直鎖状炭化水素構造を有する炭化水素オイル混合物であるため、石油系原料に比べて相対的にカルベニウムイオン濃度が低く、クラッキング反応を誘導することが難しいという問題がある。すなわち、従来の石油系原料技術分野で用いられるゼオライト触媒を用いた接触分解工程は、廃プラスチック熱分解油に適用するのに限界がある。
【0005】
これを解決するために、従来、脱水素化/水素化反応が可能な強い水素伝達活性を有するニッケル、鉄、バナジウム、パラジウム、または白金などの活性金属を接触分解触媒に導入して接触分解工程を行っているが、活性金属の導入による水素伝達反応の増加がクラッキング活性を向上させることができるが、一方でオレフィンを飽和させるため、オレフィン選択度が低下し、軽質オレフィン製造収率が著しく低減されるという深刻な問題がある。
【0006】
また、熱分解過程で生成されるコークスにより触媒が不活性化され、転化収率が低く、品質が低下するため、熱分解油の軽質オレフィン転化工程は、経済的および商業的に実用化することが困難である。
そこで、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンを高収率で製造できる技術が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、オレフィン選択度が高く、かつ、コークスの生成を最小化することができる廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法および転化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、前記反応器にて廃プラスチック熱分解油を第1金属および第2金属を含む接触分解触媒下で反応させる第2ステップと、前記第2ステップの生成物から接触分解触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法を提供する。
【0009】
一実施形態において、前記第1金属は、マンガン、スズ、または亜鉛から選択される少なくとも1つ以上の金属を含んでもよい。
一実施形態において、前記第2金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、またはバナジウムから選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、ゼオライト、粘土、およびバインダーをさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ゼオライト、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4、またはL型ゼオライトを含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、第1金属と第2金属の重量比が6:0.1~6:1であってもよい。
一実施形態において、前記接触分解触媒は、ゼオライト20~70重量%、粘土10~60重量%、バインダー10~50重量%、第1金属1~6重量%、および第2金属0.1~1重量%を含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、平均粒子サイズが50~2000μmであってもよい。
一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で、沸点340℃以上の減圧ガスオイル(VGO)成分を含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、前記反応器が流動層反応器であってもよい。
一実施形態において、前記第2ステップは、温度400~600℃および反応圧力50~200kPaで行われてもよい。
【0014】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、接触分解反応が行われる流動層反応器と、前記流動層反応器から生成物が流入し、触媒とオイルに分離されるサイクロンと、前記サイクロンからオイルが流入し、ガス成分と液状成分に分離されるスタビライザと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法は、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンを高収率で得ることができる。
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法は、オレフィン選択度が高く、かつ、コークスの生成を最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で用いられる用語の単数の形態は、特に指示しない限り、複数の形態も含むものと解釈されてもよい。
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値および上限値とその範囲内での全ての値、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0017】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0018】
本明細書において、特に言及せずに用いられた%の単位は、特に定義しない限り、重量%を意味する。
本明細書において、特に言及せずに用いられた沸点は、常圧を基準としたものであり、bP、沸騰点などの表現は、沸点を意味する。
本明細書において、特に言及せずに用いられたppm単位は、特に定義しない限り、質量ppmを意味する。
【0019】
従来、石油系原料などの炭化水素オイルを対象に、固体酸の活性点を有するゼオライト触媒を用いて、カルベニウムイオンによるクラッキング反応を誘導することで接触分解工程を行っているが、廃プラスチック熱分解油は、主に直鎖状炭化水素構造を有する炭化水素オイル混合物であるため、石油系原料に比べて相対的にカルベニウムイオン濃度が低く、クラッキング反応を誘導することが難しいという問題がある。すなわち、従来の石油系原料技術分野で用いられるゼオライト触媒を用いた接触分解工程は、廃プラスチック熱分解油に適用するのに限界がある。
【0020】
これを解決するために、従来、脱水素化/水素化反応が可能な強い水素伝達活性を有するニッケル、鉄、バナジウム、パラジウム、または白金などの活性金属を接触分解触媒に導入して接触分解工程を行っているが、活性金属の導入による水素伝達反応の増加がクラッキング活性を向上させることができるが、一方でオレフィンを飽和させるため、オレフィン選択度が低下し、軽質オレフィン製造収率が著しく低減されるという深刻な問題がある。
【0021】
また、熱分解過程で生成されるコークスにより触媒が不活性化され、転化収率が低く、品質が低下するため、熱分解油の軽質オレフィン転化工程は、経済的および商業的に実用化することが困難である。
【0022】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法は、オレフィン選択度が高く、かつ、コークスの生成を最小化することで、軽質オレフィン転化収率を著しく向上させることができる。具体的に、本開示は、廃プラスチック熱分解油を反応器に投入する第1ステップと、前記反応器にて廃プラスチック熱分解油を第1金属および第2金属を含む接触分解触媒下で反応させる第2ステップと、前記第2ステップの生成物から接触分解触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収する第3ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化方法を提供する。
【0023】
前記廃プラスチック熱分解油は、炭化水素オイルの混合物が含まれており、例えば、常圧で、沸点80~150℃、炭素数C7~C9のナフサ、沸点150~265℃、炭素数C10~C17のKERO、沸点265~340℃、炭素数C18~C20のLGO、沸点340℃以上、炭素数C21以上のVGO/ARなどの様々な沸点および分子量分布を有する炭化水素オイルの混合物が含まれている。後述するように、従来、VGOは、軽質オレフィン転化工程時、KERO、ナフサに比べて転化効率が非常に低く、それを活用することが困難であるため、主にVGOを除くKERO、ナフサを原料として転化工程を行っていたが、本開示の軽質オレフィンの高収率転化工程は、減圧ガスオイル(VGO)成分を含む廃プラスチック熱分解油を原料とする場合にも、クラッキング効率および軽質オレフィン転化効率に非常に優れるという利点がある。
【0024】
一実施形態において、前記第1金属は、マンガン、スズ、亜鉛、またはコバルトから選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
一実施形態において、前記第2金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、またはバナジウムから選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0025】
前記第1金属および第2金属の両方を含む接触分解触媒は、水素伝達活性(または、水素移動反応活性)を最適な効率で制御することで、生成されたオレフィンのコークス生成反応を抑制するとともに、オレフィンが飽和するのを防止してパラフィン生成反応を抑制することができる。そこで、オレフィン選択度が高く、コークス生成量を低減して触媒の不活性化を防止することができるため、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンを高収率で得ることができる。好ましくは、上記効果の面で、前記第1金属は、マンガンまたはスズであってもよく、第2金属は、ジルコニウムまたはチタンであってもよい。より好ましくは、前記第1金属は、マンガンであってもよく、第2金属は、ジルコニウムであってもよい。この場合、オレフィン選択度およびコークス低減効果に最も優れることができる。
【0026】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、ゼオライト、粘土、およびバインダーをさらに含んでもよい。前記接触分解触媒がゼオライト、粘土、およびバインダーをさらに含んで複合体を形成することで高い機械的強度を有することができるため、廃プラスチック熱分解油の軽質化工程のような大規模な石油化学工程に用いることができる。
【0027】
一実施形態において、前記ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y-ゼオライト、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、MCM-22、SUZ-4、またはL型ゼオライトを含んでもよい。ゼオライトは、豊富な気孔構造および大きい比表面積を有する多孔性分子篩であり、活性部位が多く、接触分解効率に優れるという利点がある。前記ゼオライトは、気孔を形成する原子数、気孔サイズ、または気孔の立体構造(1次元、2次元、または3次元)に応じてクラッキング活性が調節されることができる。上述したゼオライトのほか、従来公知のゼオライトを限定なく使用可能であるが、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィン転化特性を考慮すると、ZSM-5またはY-ゼオライトを用いることが好ましい。
【0028】
前記接触分解触媒は、結合剤としてバインダーを含んでもよい。前記バインダーはAl2O3、SiO2、またはAl2O3-SiO2を含んでもよいが、これは一例にすぎず、前記バインダーは必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、第1金属と第2金属の重量比が6:0.1~6:1であってもよい。上記重量比を満たす場合、オレフィン選択度およびコークス低減効果が最適化され、オレフィンを高収率で得ることができる。第1金属と第2金属の重量比が6:0.1~6:1である場合、第2金属の含量増加により、オレフィン選択度の向上効果をかえって低減させ得る。上記重量比は、具体的には6:0.1~6:0.8であってもよく、より具体的には6:0.2~6:0.6であってもよい。
【0030】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、ゼオライト20~70重量%、粘土10~60重量%、バインダー10~50重量%、第1金属1~6重量%、および第2金属0.1~1重量%を含んでもよい。上記重量範囲を全て満たす接触分解触媒は、軽質オレフィン転化収率が著しく向上することができ、触媒の不活性化を効果的に防止して流動接触分解工程を長期間安定的に行うことができる。
【0031】
前記接触分解触媒に含まれる各成分を個別に見ると、第1金属と第2金属の重量比が上記6:0.1~6:1を満たすことを前提に、上記重量%の範囲で含まれる場合、弱い水素伝達反応によりクラッキング活性およびオレフィン選択度を調節することで、軽質オレフィン転化収率が最大化されることができる。具体的に、前記第1金属は1~5重量%、および第2金属は0.1~0.8重量%で含まれてもよく、より具体的に、第1金属は1~4重量%、および第2金属は0.1~0.6重量%で含まれてもよい。
【0032】
ゼオライトが上記重量範囲で含まれる場合、接触分解効率が向上し、軽質オレフィン転化収率が向上することができる。前記ゼオライトは、具体的には20~60重量%で含まれてもよく、より具体的には30~50重量%で含まれてもよい。
【0033】
粘土が上記重量範囲で含まれる場合、触媒の割合および全体的な触媒活性が最適化されることができる。前記粘土は、具体的には10~50重量%で含まれてもよく、より具体的には20~40重量%で含まれてもよい。
【0034】
バインダーが上記重量範囲で含まれる場合、接触分解触媒の摩耗強度のような物理的特性を良好に維持することができる。前記バインダーは、具体的には10~40重量%で含まれてもよく、より具体的には15~35重量%で含まれてもよい。
【0035】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、平均粒子サイズが50~2000μmであってもよい。廃プラスチック熱分解油の粘度、密度などの固有特性に相応して、上記大きさを有する接触分解触媒を選別して用いる場合、オレフィン選択度および触媒活性が著しく向上することができる。前記平均粒子サイズは、具体的には50~1000μmであってもよく、より具体的には50~700μmであってもよい。前記平均粒子サイズは、好ましくは50~200μmであってもよく、より好ましくは80~150μmであってもよい。
【0036】
前記接触分解触媒は、総比表面積が50~150m2/gおよび見掛け密度が0.5~1g/cm3であってもよい。上記範囲にて、原料との接触面積が最適化され、接触分解効率が向上することができる。具体的に、前記総比表面積は50~130m2/g、および見掛け密度は0.5~0.8g/cm3であってもよく、より具体的に、前記総比表面積は70~100m2/g、および見掛け密度は0.6~0.7g/cm3であってもよい。
【0037】
一実施形態において、前記接触分解触媒は、下記式1を満たしてもよい。
[式1]
2<(D90-D10)/D50<5
(前記式1は、接触分解触媒のレーザ回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準分布における粒度分布幅を示したものであり、D10は累積10%直径、D50は累積50%直径、D90は累積90%直径である。)
【0038】
前記式1を満たさない場合、スラリー分散性の低下による接触分解触媒の安定性の低下および接触分解効率の低下などの問題がある。前記式1を満たすことで、触媒安定性および接触分解効率が向上することができ、具体的に、前記式1は、2<(D90-D10)/D50<4であってもよく、より具体的に、前記式1は、2<(D90-D10)/D50<3であってもよい。粒度分布幅が上記数値範囲を満たすことで、流動層反応器における安定性および接触分解効率がより好ましく非常に向上することができる。
【0039】
一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、常圧で、沸点340℃以上の減圧ガスオイル(VGO)成分を含んでもよい。従来、VGOは、軽質オレフィン転化工程時、KERO、ナフサに比べて転化効率が非常に低く、それを活用することが困難であるため、主にVGOを除くKERO、ナフサを原料として転化工程を行っていたが、本開示の軽質オレフィンの高収率転化工程は、減圧ガスオイル(VGO)成分を含む廃プラスチック熱分解油を原料とする場合にも、クラッキング効率および軽質オレフィン転化効率に非常に優れるという利点がある。
【0040】
一実施形態において、前記反応器が流動層反応器であってもよい。固定層反応器を用いる場合、炭化水素が接触分解触媒と接触する反応初期にはオレフィン収率が高いにもかかわらず、時間の経過とともに接触分解触媒の不活性化および過剰のコークス発生により、全体的に炭化水素の転化率とオレフィンの収率が低下し、再生工程に多くのエネルギーが消費されるという問題がある。流動層反応器を用いることで、上記の問題を解決するとともに、経済的および効率的に軽質オレフィンを生産することができる。
【0041】
一実施形態において、前記第2ステップは、温度400~600℃および反応圧力50~200kPaで行われてもよい。前記第2ステップの反応効率は、温度および圧力に大きく依存するため、上記条件にて、エネルギー消費を最小化することができ、接触分解触媒の不活性化を効果的に抑制することができる。具体的に、前記温度は400~550℃、および圧力は50~150kPaであってもよく、より具体的に、前記温度は400~500℃、および圧力は50~100kPaであってもよい。
【0042】
その他に、前記第2ステップの反応効率は、滞留時間、触媒/熱分解油の割合、または熱分解油/スチームの割合に依存することができる。前記滞留時間は約0.1~600秒、触媒/熱分解油の割合は1~50、熱分解油/スチームの割合は0.01~10であってもよく、具体的に、前記滞留時間は約0.5~120秒、触媒/熱分解油の割合は5~30、熱分解油/スチームの割合は0.1~2.0であってもよく、より具体的に、前記滞留時間は約1~20秒、触媒/熱分解油の割合は10~20、熱分解油/スチームの割合は0.3~1であってもよい。
【0043】
前記接触分解反応を行った後、第3ステップにより、反応生成物から接触分解触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収することができる。具体的に、前記第2ステップの反応生成物は、後述するサイクロンに流入し、短時間で反応生成物と接触分解触媒を分離することができる。このように、前記第3ステップにおいて触媒とオイルを分離して軽質オレフィンを回収することで、最終的に廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンを得ることができる。
【0044】
前記接触分解触媒の製造方法は次のとおりである。アルミナゲルを含むバインダーを製造するステップと、ゼオライトと粘土を混合して固体微粉を製造するステップと、前記混合固体微粉とバインダーを均一に混合して混合スラリーを製造するステップと、前記混合スラリーを噴霧乾燥した後に焼成して球状触媒を製造するステップと、ふるい分けにより平均粒子サイズ5~200μmの触媒を回収するステップと、回収された触媒をセリウムおよびランタンを含む希土類金属(RE)塩化物の水溶液でイオン交換処理した後に焼成するステップと、第1金属前駆体および第2金属前駆体水溶液で触媒表面に担持した後に焼成するステップと、を含んでもよい。
【0045】
前記廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンに転化する収率は5%以上であってもよい。前記第1金属および第2金属を含む接触分解触媒の使用時、廃プラスチック熱分解油から軽質オレフィンに転化する収率が5%以上と高収率で軽質オレフィンを得ることができる。具体的に、軽質オレフィンに転化する収率は10%以上であってもよい。
【0046】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、接触分解反応が行われる流動層反応器と、前記流動層反応器から生成物が流入し、触媒とオイルに分離されるサイクロンと、前記サイクロンからオイルが流入し、ガス成分と液状成分に分離されるスタビライザと、を含む、廃プラスチック熱分解油の軽質オレフィンの高収率転化装置を提供する。
【0047】
前記廃プラスチック熱分解油は、流動層反応器の内部に供給され、より円滑な反応のために30~600℃の温度に加熱して供給されてもよい。前記廃プラスチック熱分解油は、流動層反応器内に備えられた接触分解触媒と混合されるか、または再生器から流動層反応器に連結されたパイプを介して供給される再生された触媒と混合されてもよい。その他に、供給源料と触媒の混合工程は当業界で周知の様々な方法により構成が可能であり、このような構成はいずれも本開示の領域に含まれる。
【0048】
前記流動層反応器にて400~600℃の温度条件および50~200kPaの圧力条件で接触分解反応が行われることができ、それにより生成された反応生成物と触媒がサイクロンに流入して分離されることができる。前記分離過程の効率を高めるために、選択的にサイクロンを用いることができる。前記サイクロンから分離された反応生成物は、スタビライザに流入し、冷却によりガス成分と液状成分に分離されることができる。
【0049】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、これらは本発明をより詳しく説明するためのものであり、本発明の権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0050】
実施例1
1)供給源料
廃プラスチック200gをバッチ式熱分解反応器に投入し、500℃で熱分解を行って熱分解油を得た。前記熱分解油に含まれた炭化水素オイル混合物の分布を下記表1に示した。
【0051】
【表1】
蒸留装置を介して前記熱分解油を沸点別に分離し、C21以上のVGOのみを選択的に回収して熱分解油原料を準備した。
【0052】
2)触媒の製造
擬ベーマイト(Pseudoboehmite)70gを水500gに導入し、常温で撹拌しつつ、ギ酸10gを導入した後に3時間維持してアルミナゲルを製造する。粘土(カオリン)、ZSM-5を混合器に導入して10分間撹拌する。ZSM-5は、粘土に43重量%導入した。混合器にて粘土、ZSM-5、MgOの混合物を撹拌して小さい粒子に均一にした後、前記アルミナゲルを導入し、再び混合器にて撹拌する。撹拌中にLudox(AS40)60gを導入した後、粘度計を用いてスラリーの粘度を測定する。
【0053】
その後、スラリーの粘度がゾルからゲルに転化する過程で噴霧乾燥により球状触媒に製造した後、120℃のオーブンで12時間乾燥し、550℃で3時間焼成して流動層触媒を製造した。回収された触媒は、ふるい分けにより粒子サイズ30~200μmの触媒のみを選別分離した後、5% RE-metal solutionで60℃で3時間イオン交換させた後、触媒を乾燥し、550℃で3時間焼成し、イオン交換された流動層触媒を製造した。回収された触媒にMnCl2・4H2OおよびZrO(NO3)2・H2Oを定量の水に溶解し、全水溶液を基準としてHNO3 1%導入し、溶液滴下含浸法(incipient wetness)で触媒に担持を行い、マンガン(Mn)3重量%、ジルコニウム(Zr)0.1重量%が導入されるように担持した。担持された触媒は、120℃で乾燥した後、500℃で3時間焼成した。
【0054】
3)接触分解工程
DCR反応システムを介して触媒活性評価を行った。クラッキング反応と再生器(Regenerator)での触媒再生反応は、それぞれ530℃、730℃で行われ、クラッキング反応が起こるストリッパ(Stripper)は、527℃に維持されつつ反応が行われた。反応部にフィートとスチームがそれぞれ850g/h、80g/hで導入され、N2がストリッパに180lps、反応器(Reactor)に40lps導入され、総220lpsの速度で導入され、サイクロンで分離された触媒は、再生器に流入して再生された。Airは、再生器での触媒再生のために900lpsの速度で導入された。触媒と導入原料の割合であるCat/Oil ratioは、11~20の条件で運転を行った。生成物は、スタビライザにてガスと液体に分離され、回収されたガスは、GCを介して分析し、液体は、simdistを介して分析が行われた。コークス、CO2、H2は、CO/CO2アナライザを介して分析を行った。
【0055】
実施例2
実施例1において、接触分解触媒の製造時、ZrO(NO3)2・H2Oの代わりにTi{OCH(CH3)2}4を用いて接触分解触媒を製造したことを除いては、実施例1と同様の条件で工程を行った。
【0056】
実施例3
実施例1において、接触分解触媒の製造時、MnCl2・4H2Oの代わりにSnCl2・2H2Oを用いて接触分解触媒を製造したことを除いては、実施例1と同様の条件で工程を行った。
【0057】
実施例4
実施例1において、Mn 3重量%、Zr 0.6重量%になるように担持して接触分解触媒を製造したことを除いては、実施例1と同様の条件で工程を行った。
【0058】
比較例1
実施例1において、MnCl2・4H2Oを用いずに接触分解触媒を製造したことを除いては、実施例1と同様の条件で工程を行った。
【0059】
比較例2
実施例1において、ZrO(NO3)2・H2Oを用いずに接触分解触媒を製造したことを除いては、実施例1と同様の条件で工程を行った。
【0060】
評価例
ガス成分のオイルは、オンライン(on-line)ガスクロマトグラフィー(モデル名HP 6890N)により定量し、液状成分のオイルは、貯蔵タンクに回収された後、Simdistを介して定量し、廃プラスチック熱分解油からエチレンおよびプロピレンを含む軽質オレフィンとコークスの重量を分析し、軽質オレフィン転化収率を評価した。
前記分析結果を下記表2に示した。
【0061】
【0062】
前記表2に示すように、実施例1~実施例4は、比較例1および比較例2に比べて、廃プラスチック熱分解油からの軽質オレフィン転化収率およびコークス低減効果にさらに優れることを確認することができる。
【0063】
詳細には、実施例1の場合、第1金属としてマンガン3重量%および第2金属としてジルコニウム0.1重量%を含むことで、軽質オレフィン転化収率およびコークス低減効果に最も優れることを確認することができる。
【0064】
実施例4の場合、第1金属と第2金属の重量比が6:1.2であることで(マンガン3重量%、ジルコニウム0.6重量%)、実施例1に比べて軽質オレフィン生成量がやや低下するが、比較例1および比較例2に比べて優れることを確認することができる。
【0065】
実施例2の場合、接触分解触媒が第1金属としてマンガン3重量%および第2金属としてチタン0.1重量%を含むことで、実施例1に比べて軽質オレフィン転化収率およびコークス低減効果がやや低下するが、比較例1および比較例2に比べて優れることを確認することができる。
【0066】
実施例3の場合、接触分解触媒が第1金属としてスズ3重量%および第2金属としてジルコニウム0.1重量%を含むことで、実施例1に比べて軽質オレフィン転化収率およびコークス低減効果がやや低下するが、比較例1および比較例2に比べて優れることを確認することができる。
【0067】
これに対し、比較例1は、接触分解触媒が第1金属のみ(マンガン)を3重量%含み、第2金属(ジルコニウム)を含まないことで、軽質オレフィン転化収率が低下し、コークス生成量も増加することを確認することができる。
【0068】
比較例2は、接触分解触媒が第1金属を含まず、第2金属(ジルコニウム)のみを3重量%含むことで、軽質オレフィン転化収率が最も低いことを確認することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実施されてもよく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。したがって、以上に記述された実施形態は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解しなければならない。