(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007086
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】シール部材およびロータリフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 33/04 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B01D33/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108288
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA22
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC67
4D116BC70
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4D116RR01
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4D116RR21
4D116RR22
4D116RR26
4D116UU09
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】長寿命化して交換頻度を減少することができるシール部材および当該シール部材を備えたロータリフィルタ装置を提供する。
【解決手段】ロータリフィルタ装置において使用される可撓性のシール部材14において、設置対象に取り付ける取付部14aと、無端帯状フィルタ11の表面に接触する先端部14bと、取付部14aおよび先端部14bを接続する接続部14cと、を備え、無端帯状フィルタ11に垂直な断面形状において、先端部14bの厚さTが接続部14cの厚さtより厚くなるように構成してあるシール部材14、および、当該シール部材14を備えたロータリフィルタ装置。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が流入する筐体の一次側に設けた開口部に沿って移動する無端帯状フィルタが備えられたロータリフィルタ装置において使用され、前記開口部および前記無端帯状フィルタの隙間をシールする可撓性のシール部材において、
設置対象に取り付ける取付部と、前記無端帯状フィルタの表面に接触する先端部と、前記取付部および前記先端部を接続する接続部と、を備え、前記無端帯状フィルタに垂直な断面形状において、前記先端部の厚さが前記接続部の厚さより厚くなるように構成してあるシール部材。
【請求項2】
前記シール部材の前記先端部は、少なくとも一部が前記断面形状の厚さ方向に膨出する膨出部を有する請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記膨出部は前記断面形状が曲線からなる曲面部であり、前記曲面部は、前記無端帯状フィルタの表面に接触する側において、前記断面形状が半円形である請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のシール部材を備えたロータリフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水が流入する筐体の一次側に設けた開口部に沿って移動する無端帯状フィルタが備えられたロータリフィルタ装置において使用され、開口部および無端帯状フィルタの隙間をシールする可撓性のシール部材、および当該シール部材を備えたロータリフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通流経路を横切るように配置され、当該通流経路を流れる被処理水に含まれる固体を濾過する濾過装置(ロータリフィルタ装置)が開示してある。当該ロータリフィルタ装置は、周回軌道に沿って無端状に配列された複数のパネルフィルタを備えて通流経路を横切るように配置してあるフィルタ機構を備え、フィルタ機構の濾過面には濾材が設けてある。各パネルフィルタは、移動機構によって周回軌道に沿って移動させられる。
【0003】
ロータリフィルタ装置には、被処理水がパネルフィルタをバイパスして濾過面の一次側から二次側(濾過面の裏面)に移行することを防止するために、可撓性のシール部材が設けてある。当該シール部材は、濾過面を囲むようにハウジングに配設してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール部材は、その先端側部が移動機構によって周回軌道に沿って移動するパネルフィルタの表面と摺接しているため、シール部材の先端側部は摩耗する。当該摩耗により、やがて被処理水がパネルフィルタをバイパスすることを防止する効果が低下する。そのため、当該シール部材は定期的に交換する必要があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、長寿命化して交換頻度を減少することができるシール部材および当該シール部材を備えたロータリフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るシール部材は、被処理水が流入する筐体の一次側に設けた開口部に沿って移動する無端帯状フィルタが備えられたロータリフィルタ装置において使用され、前記開口部および前記無端帯状フィルタの隙間をシールする可撓性のシール部材であって、その特徴構成は、設置対象に取り付ける取付部と、前記無端帯状フィルタの表面に接触する先端部と、前記取付部および前記先端部を接続する接続部と、を備え、前記無端帯状フィルタに垂直な断面形状において、前記先端部の厚さが前記接続部の厚さより厚くなるように構成した点にある。
【0008】
本構成によれば、シール部材は、先端部の厚さを接続部の厚さに比べて相対的に厚く構成してあるため、摩耗代を大きくとることができる。このときの摩耗代は、仮に先端部の厚さを接続部の厚さと同じ厚さとしたときの摩耗代に比べて相対的に大きくなる、ということである。
【0009】
一方、シール部材において接続部の厚さを先端部の厚さに比べて相対的に薄く構成してあるため、接続部において屈曲したときに作用する復元力(ばね力)が相対的に小さいので、接続部において屈曲したときの濾過面への押し付け力は小さい。このときの押し付け力は、仮に取付部および接続部の厚さを先端部の厚さと同じ厚さとしたときの接続部において屈曲したときの押し付け力に比べて相対的に小さくなる、ということである。これにより、シール部材が濾過面を必要以上に押し付けないようにすることができるため、摩耗を抑制することができる。
【0010】
従って、本発明では、シール部材において、先端部の厚さが接続部の厚さより厚くなるように構成することによって、摩耗代を大きくして、かつ、濾過面に対して押し付けられる押し付け力を小さくすることができるため、先端部の長寿命化を図ることができる。そのため、シール部材の交換頻度を減少することができる。
【0011】
本発明に係るシール部材の更なる特徴構成は、前記シール部材の前記先端部は、少なくとも一部が前記断面形状の厚さ方向に膨出する膨出部を有する点にある。
【0012】
本構成では、膨出部は、シール部材の先端部の少なくとも一部が膨れ上がった形状として先端部の前記断面形状の厚さが接続部の厚さより厚くなるように構成することができるため、先端部の形状を容易に加工することができる。
【0013】
本発明に係るシール部材の更なる特徴構成は、前記膨出部は前記断面形状が曲線からなる曲面部であり、前記曲面部は、前記無端帯状フィルタの表面に接触する側において、前記断面形状を半円形とした点にある。
【0014】
本構成によれば、膨出部を曲面部とし、さらに先端部において無端帯状フィルタの表面に接触する部位を半円形とすることにより、前記断面形状が角状である場合よりもシール部材の先端部と濾過面との接触面積を増大させることができるため、効率よく面圧を下げて摩耗を抑制することができる。従って、本構成では先端部の更なる長寿命化を図ることができるため、シール部材の交換頻度をより減少することができる。
【0015】
本発明に係るロータリフィルタ装置の特徴構成は、上記の特徴構成に記載のシール部材を備えたロータリフィルタ装置とした点にある。
【0016】
本構成によれば、シール部材の交換頻度を減少することができるロータリフィルタ装置を供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態のロータリフィルタ装置を示す概略図である。
【
図5A】ハウジングのシール部材設置部に取り付けてあるシール部材(断面形状が半円形)を示す断面図である。
【
図5B】シール部材(断面形状が円形)を示す断面図である。
【
図5C】シール部材(断面形状が三角形)を示す断面図である。
【
図5D】シール部材(断面形状が台形)を示す断面図である。
【
図6A】比較例1のシール部材を示す断面図である。
【
図6B】比較例2のシール部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のシール部材はロータリフィルタ装置に備えてある。
図1~3に示したようにロータリフィルタ装置Xは、通流経路1を横切るように配置され、当該通流経路1を流れる被処理水W1に含まれる固体を濾過する装置である。当該通流経路1は、水槽である筐体2の内部に設けてある。筐体2には被処理水W1の流入口3と流出口4とが設けてある。
【0019】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1に示したように、被処理水W1が流入する筐体2の一次側に設けた開口部2Aに沿って移動する無端帯状フィルタ11が備えられ、無端帯状フィルタ11に被処理水を通流させて固体を濾過するように構成してある。本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、周回軌道Pに沿って無端状に配列された複数のパネルフィルタ(無端帯状フィルタの例)11を備えて通流経路1を横切るように配置してあるフィルタ機構10と、各パネルフィルタ11を周回軌道Pに沿って移動させる移動機構20と、が備えられ、移動機構20によって各パネルフィルタ11を移動させながら、パネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに周回軌道Pの外方から内方へと被処理水W1を通流させて固体を濾過するように構成してある場合について説明する。
【0020】
ロータリフィルタ装置Xは、
図2に示したように、開口部2Aおよびパネルフィルタ11の隙間をシールして、被処理水W1がパネルフィルタ11をバイパスすることを防止する可撓性のシール部材14が設けてある。
【0021】
シール部材14は、
図4,5Aに示したように、設置対象に取り付ける取付部14aと、パネルフィルタ11の表面に接触する先端部14bと、取付部14aおよび先端部14bを接続する接続部14cと、を備え、パネルフィルタ11に垂直な断面形状において、先端部14bの厚さTが接続部14cの厚さtより厚くなるように構成してある。
【0022】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1に示したように、さらに、各パネルフィルタ11が濾過した被処理水W1中の固体を各パネルフィルタ11から除去する除去機構5と、これらを収容するハウジング6と、を備える。ロータリフィルタ装置Xの各部は、他の材質を明記する場合を除き、ステンレス鋼、例えばSUS304を適当に加工することによって製造してある。
【0023】
本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、被処理水W1の流路の上流側から下流側に傾く態様で設けられ、移動機構20によって、被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタ11が下方から上方に移動する。このとき、被処理水W1に含まれる固体(し渣など)はパネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに遮られ、被処理水W1中の水分であるろ過水W2は濾過面Fを通過して流出口4へ移流する。
【0024】
本実施形態における周回軌道Pが、
図1に示したように、二か所の折返部Pa,Pcと、折返部Pa,Pc間を結ぶ二か所の直線部Pb,Pdと、を有する場合について説明する。折返部Paは、通流経路1における通流方向の上流側であって水面下に設けてあり、折返部Pcは、通流経路1における通流方向の下流側であって水面上に設けてある。直線部Pbは、通流経路1における通流方向の上流側において折返部Pa,Pc間に設けてあり、直線部Pdは、通流経路1における通流方向の下流側において折返部Pa,Pc間に設けてある。
【0025】
各パネルフィルタ11は、
図1において時計回りの矢印で示されるとおり、移動機構20によって周回軌道Pに沿って、折返部Pa、直線部Pb、折返部Pc、直線部Pdの順に移動させられる。その際、直線部Pbにあるときに当該フィルタ機構10の濾過面Fとして機能する。
【0026】
除去機構5は、パネルフィルタ11の表面の固体を掻き落とすスクレーパや、パネルフィルタ11の裏面から表面にむけて高圧の洗浄水を噴射するスプレー機構や、パネルフィルタ11から除去された固体を回収する回収部等を備えて構成してある。濾過された固体は、折返部Pcから直線部Pdへ移行する際に、除去機構5によって各パネルフィルタ11から除去される。なお、スクレーパは、濾材13を破損する虞のない適度な可撓性を有する部材とするのがよい。本実施形態におけるスクレーパの材質は、弾性ゴムであるクロロプレンゴムとする場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
図3に示したように、パネルフィルタ11は、枠体12と、枠体12に設けられ、当該フィルタ機構10の濾過面Fを構成する濾材13と、を備える。
【0028】
枠体12は、平板を加工することによって形成され、濾材13が設けられる濾材配設部12aと、当該枠体12を後述するローラチェーン23に対して着脱自在なローラチェーン取付部12bと、を備える。
【0029】
濾材配設部12aは、パネルフィルタ11の移動方向において短手であり、当該移動方向に直交する幅方向において長手である矩形であり、複数の開口12cが設けてある。
【0030】
濾材配設部12aの表面(周回軌道Pの外方を向いた面)には、当該開口12cを覆うように濾材13が設けられ、当該濾材13がフィルタ機構10の濾過面Fを構成する。濾材配設部12aの裏面(周回軌道Pの内方を向いた面)であって、開口12cどうしの間には、濾材配設部12aの表面側に作用する水圧や固体の重量を受けるリブ12dが設けてある。ローラチェーン取付部12bは、濾材配設部12aの長手方向の両端部に設けてある。
【0031】
濾材13は、網目が0.1mm~1.0mm程度の金網から構成され、濾材13は濾材配設部12aに対して溶接や焼結等によって取り付けてあるが、このような態様に限定されるものではない。また、当該金網は、平織、綾織、平畳織、綾畳織等であってよく、網目は濾過する固体の流径に応じて適当なものを採用するとよい。
【0032】
移動機構20は、
図1,2に示したように、折返部Pcを構成するスプロケット21と、折返部Pa及び直線部Pb、Pdを構成する案内レール22(22a,22b,22d)と、各パネルフィルタ11が取り付けられるとともに、スプロケット21と噛み合う状態で当該スプロケット21と案内レール22とに亘って巻き掛けられたローラチェーン23と、スプロケット21を回転駆動させる電動機24と、を備える。尚、電動機24の駆動軸からの出力は、伝達機構25を介してスプロケット21の回転軸に伝達される。
【0033】
このように構成された移動機構20によってスプロケット21を回転させるとこれに噛み合わされたローラチェーン23が案内レール22に沿って案内されつつ、周回軌道Pに沿って移動する。
【0034】
ハウジング6には、開口部2Aおよびパネルフィルタ11の隙間をシールして被処理水W1がパネルフィルタ11をバイパスすることを防止するために、シール部材14が設けてある。従って、濾過面Fの一次側の液体は、濾過面Fを通過してのみ当該濾過面Fの二次側に流れることができる。
【0035】
図4,5に示したように、シール部材14は板状の態様であり、設置対象に取り付ける取付部14aと、パネルフィルタ11の表面に接触する先端部14bと、取付部14aおよび先端部14bを接続する接続部14cと、を備える。本実施形態では、設置対象をハウジング6のシール部材設置部61とした場合について説明する。即ち、シール部材14は、濾過面Fを囲むようにハウジング6(シール部材設置部61)に配設してある(
図2)。詳述すると、パネルフィルタ11の長手方向で対向する側辺61A,61Bとそれらを連結する下辺61Cとを有するシール部材設置部61をハウジング6に設け、当該シール部材設置部61にシール部材14を配設してある。本実施形態のシール部材設置部61は、筐体2の一次側に設けた開口部2Aを規定する。当該シール部材設置部61は、濾過面Fに平行な設置基部61aと、当該設置基部61aから濾過面Fに向かって斜め下方に延びる設置端部61bと、を備える
【0036】
シール部材14は、シール部材設置部61に沿って配設する際に、例えば、各辺61A~61Cに複数のシール部材14を別異に配設してもよいし、これら複数のシール部材14を一体に結合したコ字形のシール部材14を配設してもよい。本実施形態では、コ字形のシール部材14を配設する場合について説明する(
図4)。複数のシール部材14を一体に結合する際には、例えばコ字形の角部14Aで結合するのではなく、直線部分の結合部14Bで結合するように構成するとよい。これにより、結合部14Bよりも応力集中し易い角部14Aで結合するのを避けることができる。また、結合部14Bは角部14Aよりも接続部14cの長さを短くできるため、シール性を高くすることができる。
【0037】
シール部材14は、可撓性を有する部材によって構成するとよい。本実施形態では、シール部材14を弾性ゴム(弾性部材の一例)であるクロロプレンゴムによって構成した場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0038】
図5に示したように、シール部材14は、取付部14aが、シール部材設置部61(設置端部61b)および板状の押さえ部材15によって挟まれるように、ボルト16によって取り付けてある。
【0039】
本実施形態におけるシール部材14は、濾過面Fに垂直な断面形状において、先端部14bの厚さTが接続部14cの厚さtより厚くなるように構成してある(T>t)。
【0040】
本実施形態におけるシール部材14が、取付部14aから接続部14cに亘って一様の厚さtで先端部14bに接続する場合について説明する。本構成により、シール部材14は設置端部61bにおいて隙間なく配設することができ、シール性を高めることができる。しかし、このような態様に限定されるものではなく、取付部14aから接続部14cに亘る厚さを変更してもよい。
【0041】
図5に示したように、シール部材14をシール部材設置部61に配設した状態では、先端部14bがパネルフィルタ11の表面に接触しているが、このとき、取付部14aと先端部14bとが接続する接続部14cにおいて屈曲した態様となっている。当該屈曲による弾性力によって先端部14bが濾過面Fに対して押し付けられる押し付け力が発生し、先端部14bおよび濾過面Fの間に隙間が発生し難くなる。これにより、被処理水がパネルフィルタ11をバイパスすることを防止することができる。
【0042】
本発明では、シール部材14は、先端部14bの厚さTを接続部14cの厚さtに比べて相対的に厚く構成してあるため、摩耗代Mを大きくとることができる。このときの摩耗代Mは、仮に先端部14bの厚さを接続部14cの厚さtと同じ厚さとしたときの摩耗代に比べて相対的に大きくなる、ということである。
【0043】
一方、シール部材14において接続部14cの厚さtを先端部14bの厚さTに比べて相対的に薄く構成してあるため、接続部14cにおいて屈曲したときに作用する復元力(ばね力)が相対的に小さいので、接続部14cにおいて屈曲したときの濾過面Fへの押し付け力は小さい。このときの押し付け力は、仮に取付部14aおよび接続部14cの厚さを先端部14bの厚さTと同じ厚さとしたときの接続部14cにおいて屈曲したときの押し付け力に比べて相対的に小さくなる、ということである。これにより、シール部材14が濾過面Fを必要以上に押し付けないようにすることができるため、摩耗を抑制することができる。
【0044】
従って、本発明では、シール部材14において、先端部14bの厚さTが接続部14cの厚さtより厚くなるように構成することによって、摩耗代Mを大きくして、かつ、濾過面Fに対して押し付けられる押し付け力を小さくすることができるため、先端部14bの長寿命化を図ることができる。そのため、シール部材14の交換頻度を減少することができる。
【0045】
先端部14bの厚さTは、接続部14cの厚さtの例えば2~4倍程度にするのがよい。この範囲であれば、シール部材14の摩耗代Mを大きくし、かつコストに優れたシール部材14とすることができる。
【0046】
シール部材14の先端部14bは、少なくとも一部が膨出する膨出部14dを有するように構成するとよい。
【0047】
当該膨出部14dは、前記断面形状が曲線からなる曲面部14d1あるいは直線からなる多角形部14d2の何れかとするのがよい。
【0048】
曲面部14d1は、前記断面形状が、半円形(
図5A)および円形(
図5B)の何れかとするのがよい。例えば前記断面形状を半円形とする場合は、パネルフィルタ11の表面に接触する側が半円形となるように構成するか、パネルフィルタ11の表面に接触する側の反対側が半円形となるように構成すればよい。曲面部14d1における前記断面形状はこれらに限定されず、例えば半円形あるいは円形以外の円弧や、楕円等を適用してもよい。
【0049】
多角形部14d2は、前記断面形状が、三角形・四角形などの多角形(
図5Cは三角形である場合を示す)および台形(
図5D)の何れかとするのがよい。例えば前記断面形状を三角形或いは四角形とする場合は、パネルフィルタ11の表面に接触する側が三角形或いは四角形となるように構成するか、パネルフィルタ11の表面に接触する側の反対側が三角形或いは四角形となるように構成すればよい。多角形部14d2における前記断面形状はこれらに限定されず、例えば五角形以上の多角形を適用してもよい。
【0050】
本実施形態では、シール部材14の先端部14bが、パネルフィルタ11の表面に接触する側において、前記断面形状が半円形である曲面部14d1を備える場合について説明する(
図5A)。
【0051】
本構成では、先端部14bにおいてパネルフィルタ11の表面に接触する部位を曲面形状とすることができる。これにより、先端部14bに膨出部14dを設けない態様における前記断面形状が角状となっている場合よりもシール部材14の先端部14bと濾過面Fとの接触面積を増大させることができるため、効率よく面圧を下げて摩耗を抑制することができる。従って、本構成では先端部14bの更なる長寿命化を図ることができるため、シール部材14の交換頻度をより減少することができる。
【0052】
曲面部14d1は、その断面形状を例えば円形状とすれば、当該断面形状を半円形状とする場合に比べて断面積が増大し、摩耗代Mを大きくすることができる。そのため、シール部材14の交換頻度をさらに減少することができる。
【実施例0053】
〔実施例〕
本発明のロータリフィルタ装置Xにおいて、先端部14bの厚さTが接続部14cの厚さtより厚くなるように構成し、先端部14bに曲面部14d1を備えたシール部材14を使用した。本実施例のシール部材14は、取付部14aから接続部14cに亘って一様の厚さt=3mm、先端部14b(曲面部14d1)の厚さ(最大厚さ)T=10.5mmの寸法とした。
【0054】
本実施例のシール部材14は、先端部14bの厚さT(10.5mm)が接続部14cの厚さt(3mm)より厚くなる(3.5倍)ように構成してある。即ち、シール部材14において接続部14cの厚さtを先端部14bの厚さTに比べて相対的に薄く構成してあるため、接続部14cにおいて屈曲したときに作用する復元力(ばね力)が相対的に小さいので、接続部14cにおいて屈曲したときの濾過面Fへの押し付け力を小さくすることができ、かつ、摩耗代Mを大きくとることができる(本発明例1:
図5)。
【0055】
比較例として、取付部14a’から先端部14b’に亘って一様の厚さt1=3mmとしたシール部材14’とした場合(比較例1:
図6A)、および、取付部14a”から先端部14b”に亘って一様の厚さt2=6mmとしたシール部材14”とした場合(比較例2:
図6B)について説明する。
【0056】
比較例1のシール部材14’は、接続部14c’においても厚さt1=3mmとなり、本実施例のシール部材14と同様に押し付け力は小さいが、先端部14b’の厚さが薄いため、摩耗代M’は本実施例のシール部材14における摩耗代Mに比べて小さい。そのため、シール部材14’の交換頻度は、本実施例のシール部材14における交換頻度より多くなる。
【0057】
比較例2のシール部材14”は、接続部14c”においても厚さt2=6mmとなり、本実施例のシール部材14に比べて押し付け力は大きいため摩耗しやすい。また、先端部14b”の厚さは厚いものの、その摩耗代M”は、膨出部14dを設けた本発明例1のシール部材14における摩耗代Mに比べて小さい。そのため、シール部材14”の交換頻度は、本実施例のシール部材14における交換頻度より多くなる。
本発明は、被処理水が流入する筐体の一次側に設けた開口部に沿って移動する無端帯状フィルタが備えられたロータリフィルタ装置において使用され、開口部および無端帯状フィルタの隙間をシールする可撓性のシール部材、および当該シール部材を備えたロータリフィルタ装置に利用できる。