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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007089
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】組立方法及び組立装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20240111BHJP
   F02C 7/20 20060101ALI20240111BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20240111BHJP
   F23R 3/60 20060101ALI20240111BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20240111BHJP
   B23P 21/00 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
B23P19/00 302P
F02C7/20 B
F23R3/42 A
F23R3/60
B23P19/02 A
B23P21/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108293
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】江頭 健人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓
(72)【発明者】
【氏名】中村 太
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 篤
(72)【発明者】
【氏名】武田 一真
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030AA18
3C030BC19
3C030CC00
(57)【要約】
【課題】複数ある重複領域の中から調節が必要な重複領域を特定することができる組立方法及び組立装置を提供する。
【解決手段】軸線Xoを中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の貫通孔11aを有するアウターライナ11に、軸線Xbを中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の貫通孔32aを有するバルクヘッド30を所定の位置に嵌め込んで組み立てる組立方法であって、アウターライナ11にバルクヘッド30が嵌め込まれた状態において、対応するそれぞれの貫通孔11aと貫通孔32aとの重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、全ての重複領域のサイズに基づいて、貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係の調節が必要な重複領域を特定する重複領域特定工程とをコンピュータが実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てる組立方法であって、
前記第1筒状体に前記第2筒状体が嵌め込まれた状態において、対応するそれぞれの前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、
全ての前記重複領域のサイズに基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する重複領域特定工程と、
をコンピュータが実行する組立方法。
【請求項2】
前記サイズ検知工程は、前記重複領域に軸部材を挿入して、挿入方向と直交する方向の前記軸部材のガタ量を検知することで行われる請求項1に記載の組立方法。
【請求項3】
前記サイズ検知工程は、前記重複領域にボルトを挿入して、前記第2筒状体に設けられたナット部に前記ボルト螺合する際に発生するトルクを検知することで行われる請求項1に記載の組立方法。
【請求項4】
前記重複領域特定工程で調節が必要と判断された前記重複領域を形成する前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係を調節する位置合わせ工程をコンピュータが実行する請求項1に記載の組立方法。
【請求項5】
前記サイズ検知工程の前に、
前記第1軸線に対して前記第2軸線が相対的に傾斜した状態で前記第2筒状体の外周面と前記第1筒状体の内周面とを接触させる接触工程と、
前記第1筒状体と前記第2筒状体との接触箇所を支点にして、前記第1軸線と前記第2軸線とが一致するように前記第2筒状体を前記第1筒状体に嵌め込む嵌込工程と、
をコンピュータが実行する請求項1に記載の組立方法。
【請求項6】
前記嵌込工程の後、かつ、前記サイズ検知工程の前に、
前記重複領域を形成する前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係を調節する初期位置合わせ工程をコンピュータが実行する請求項5に記載の組立方法。
【請求項7】
前記第1筒状体の内径は、前記第2筒状体の外径よりも小径とされている請求項5に記載の組立方法。
【請求項8】
前記位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された軸部材を挿入方向と直交する方向に動かすことによって行われる請求項4に記載の組立方法。
【請求項9】
前記位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材によって行われる請求項4に記載の組立方法。
【請求項10】
前記初期位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材によって行われる請求項6に記載の組立方法。
【請求項11】
前記第1筒状体は燃焼器のアウターライナであり、前記第2筒状体は前記燃焼器のバルクヘッドである、又は、
前記第1筒状体は前記燃焼器のバルクヘッドであり、前記第2筒状体は前記燃焼器のインナーライナである請求項1に記載の組立方法。
【請求項12】
第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てるための組立装置であって、
軸部材を保持する保持ツールと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記軸部材を前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域に対して挿入するように前記保持ツールを制御して、
前記軸部材を挿入方向と直交する方向に移動させるように前記保持ツールを制御して、
前記軸部材の移動量に基づいて前記重複領域における前記軸部材のガタ量を算出して、
算出された全ての前記重複領域におけるガタ量に基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する組立装置。
【請求項13】
第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てるための組立装置であって、
ボルトを保持する保持ツールと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ボルトを前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域に対して挿入するとともに、前記ボルトが前記第2筒状体に設けられたナット部に螺合するように前記保持ツールを制御して、
前記ナット部に螺合する際の前記ボルトのトルクに基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組立方法及び組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機に搭載されるターボファンエンジンには、圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器が設けられている(特許文献1)。
【0003】
燃焼器は、例えば、筒状のアウター燃焼器、筒状のインナー燃焼器及び環状のバルクヘッドによって画定された燃焼室を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-532411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼器の組立てにおいては、例えば、バルクヘッドをアウター燃焼器に嵌め込むという作業が発生する。
【0006】
バルクヘッド及びアウター燃焼器には締結用のボルトが挿入される複数の貫通孔が周方向に沿って形成されており、バルクヘッドをアウター燃焼器に精度よく締結するためには、貫通孔同士の位置が全ての箇所で均一に一致することが好ましい。すなわち、バルクヘッドの貫通孔とアウター燃焼器の貫通孔との重複領域が周方向に沿った全ての箇所で均一になるように重複領域のサイズを調節することが好ましい。しかしながら、調整が必要となる重複領域を特定する方法は定まっていない。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数ある重複領域の中から調節が必要な重複領域を特定することができる組立方法及び組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の組立方法及び組立装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る組立方法は、第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てる組立方法であって、前記第1筒状体に前記第2筒状体が嵌め込まれた状態において、対応するそれぞれの前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、全ての前記重複領域のサイズに基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する重複領域特定工程と、をコンピュータが実行する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る組立装置は、第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てるための組立装置であって、軸部材を保持する保持ツールと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記軸部材を前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域に対して挿入するように前記保持ツールを制御して、前記軸部材を挿入方向と直交する方向に移動させるように前記保持ツールを制御して、前記軸部材の移動量に基づいて前記重複領域における前記軸部材のガタ量を算出して、算出された全ての前記重複領域におけるガタ量に基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数ある重複領域の中から調節が必要な重複領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る燃焼器を示した斜視図である。
図2図1の切断線II-IIにおける燃焼器の断面図である。
図3】アウター燃焼器の斜視図である。
図4】インナー燃焼器の斜視図である。
図5】バルクヘッドの斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係る組立方法のフロー図である。
図7】バルクヘッドをアウター燃焼器まで搬送している様子を示した斜視図である。
図8】バルクヘッドをアウター燃焼器(アウターライナ)に対して位置決めしている様子を示した斜視図である。
図9】整列ピンを挿入している様子を示した斜視図である。
図10】整列ピンを挿入している様子を示した斜視図の部分拡大図である。
図11】重複領域と整列ピンとの関係を示した図である。
図12】整列ピンの機構の概念を示した図である。
図13】整列ピンの機構の例を示した図である。
図14】重複領域と整列ピンとの関係を示した図である。
図15】バルクヘッドをアウター燃焼器(アウターライナ)に嵌め込んでいる様子を示した斜視図である。
図16】バルクヘッドがアウター燃焼器(アウターライナ)に嵌め込まれた状態で孔整列動作を行っている様子を示した斜視図である。
図17】ボルトを挿入している様子を示した斜視図である。
図18】ボルトを挿入している様子を示した斜視図の部分拡大図である(外周面側)。
図19】ボルトを挿入している様子を示した斜視図の部分拡大図である(内周面側)。
図20】重複領域のサイズを検知している様子を示した図である。
図21】アセンブリをインナー燃焼器まで搬送している様子を示した斜視図である。
図22】アセンブリをインナー燃焼器(インナーライナ)に嵌め込んでいる様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る組立方法及び組立装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[燃焼器の基本的構成について]
まず、組立方法及び組立装置の適用対象の一例である燃焼器1の基本的構成について説明する。
【0014】
燃焼器1は、例えば航空機に搭載されるターボファンエンジンにおいて、圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させ、タービンを回転させる高温の燃焼ガスを生成する燃焼室CCを画定している機器である。
【0015】
図1及び図2に示すように、燃焼器1は、アウター燃焼器10、インナー燃焼器20、バルクヘッド30及びフード40を備えている。
【0016】
図2及び図3に示すように、アウター燃焼器10は、アウターライナ11及びアウターライナ11の内周面に設けられた複数のアウターライナ用パネル12(以下、単に「パネル12」という。)を有した、全体として円筒形状の部品である。
【0017】
アウターライナ11は、軸線Xoを中心軸線とする円筒形状とされた金属製の部品であり、例えば板金とされている。
燃焼室CCに臨むアウターライナ11の内周面は、複数のパネル12によって分割されて略全面が覆われている。パネル12は、アウターライナ11を燃焼ガスから熱的に保護する。
【0018】
図2及び図3に示すように、各パネル12は、アウターライナ11の外周面の各所の形状に対応した円弧形状の部品であり、例えば鋳造された板材の表面に耐熱処理(例えばセラミックコーティング)が施されることで構成されている。
各パネル12の外周面には、外側に向かって突出した複数のスタッド12aが設けられている。
各パネル12は、アウターライナ11に形成された孔にスタッド12aが挿通されるとともに孔から突出したスタッド12aにワッシャ12b及びナット12cが取り付けられることで、アウターライナ11に固定されている。
【0019】
アウターライナ11の一端側の周面(縁部分)には、軸線Xoを中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔11aが略等角度間隔で形成されている。この縁部分は、パネル12に覆われていない。後述するが、この縁部分には、バルクヘッド30の外側壁部32が嵌め込まれる(例えば、しまりばめ)。
【0020】
図2及び図4に示すように、インナー燃焼器20は、インナーライナ21及びインナーライナ21の内周面に設けられた複数のインナーライナ用パネル22(以下、単に「パネル22」という。)を有した、全体として円筒形状の部品である。
図1及び図2に示すように、インナー燃焼器20は、組立て後の燃焼器1において、アウター燃焼器10の内側に配置されている。
【0021】
図2及び図4に示すように、インナーライナ21は、軸線Xiを中心軸線とする円筒形状とされた金属製の部品であり、例えば板金とされている。
燃焼室CCに臨むインナーライナ21の外周面は、複数のパネル22によって分割されて略全面が覆われている。パネル22は、インナーライナ21を燃焼ガスから熱的に保護する。
【0022】
図2及び図4に示すように、各パネル22は、インナーライナ21の外周面の各所の形状に対応した円弧形状の部品であり、例えば鋳造された板材の表面に耐熱処理(例えばセラミックコーティング)が施されることで構成されている。
各パネル22の内周面には、内側に向かって突出した複数のスタッド22aが設けられている。
各パネル22は、インナーライナ21に形成された孔にスタッド22aが挿通されるとともに孔から突出したスタッド22aにワッシャ22b及びナット22cが取り付けられることで、インナーライナ21に固定されている。
【0023】
インナーライナ21の一端側の周面(縁部分)には、軸線Xiを中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔21aが略等角度間隔で形成されている。この縁部分は、パネル22に覆われていない。後述するが、この縁部分には、バルクヘッド30の内側壁部33が嵌め込まれる(例えば、しまりばめ)。
【0024】
図1及び図2に示すように、バルクヘッド30は、アウター燃焼器10の一端とインナー燃焼器20の一端との間に形成された環状の開口を塞ぐように設置された、軸線Xbを中心軸線とする環状の部品とされている。
図2及び図5に示すように、バルクヘッド30は、環状の底部31、底部31の外周縁から立設した外側壁部32及び底部31の内周縁から立設した内側壁部33を有している。
なお、後述するが、外側壁部32は、アウターライナ11に嵌め込まれている。また、内側壁部33は、インナーライナ21に嵌め込まれている。
【0025】
外側壁部32には、軸線Xbを中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔32aが略等角度間隔で形成されている。
貫通孔32a同士の角度間隔は、貫通孔11a同士の角度間隔と等しい。このため、バルクヘッド30をアウターライナ11に嵌め込んだときに、各貫通孔32aの位置を各貫通孔11aの位置と周方向に一致させることができる。
【0026】
内側壁部33には、軸線Xbを中心軸線とする周方向に沿って複数の貫通孔33aが略等角度間隔で形成されている。
貫通孔33a同士の角度間隔は、貫通孔21a同士の角度間隔と等しい。このため、バルクヘッド30をインナーライナ21に嵌め込んだときに、各貫通孔32aの位置を各貫通孔21aの位置と周方向に一致させることができる。
【0027】
図2に示すように、組立て後の燃焼器1において、バルクヘッド30の外側壁部32はアウター燃焼器10の内周面に接触して、バルクヘッド30の内側壁部33はインナー燃焼器20の内周面に接触している。
バルクヘッド30は、外側壁部32及びアウター燃焼器10に挿通されたボルト51が外側壁部32に設けられたナットプレート52(ナット部)に螺合され、かつ、内側壁部33及びインナー燃焼器20に挿通されたボルト51が内側壁部33に設けられたナットプレート52に螺合されることで、アウター燃焼器10及びインナー燃焼器20に固定される。詳細については後述する。
【0028】
燃焼室CCは、上記のアウター燃焼器10、インナー燃焼器20及びバルクヘッド30によって画定されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、フード40は、バルクヘッド30を覆うように設置された環状の部品とされている。
【0030】
以上ように構成された燃焼器1は、次のように機能する。
すなわち、コンプレッサで圧縮された空気及び燃料が燃焼室CCに供給され、燃焼室CCで混合される。
そして、空気及び燃料の混合流体を燃焼室CCで燃焼させて、タービンを回転させる高温の燃焼ガスを生成する。
【0031】
[組立方法及び組立装置について]
次に、組立方法について説明する。
なお、この組立方法を用いた燃焼器1の組立ては、搬送ツール61、孔整列ツール62、押込ツール63及びナットランナ64(保持ツール)を備えているロボットシステムによって行われる。
ロボットシステムを構成している搬送ツール61、孔整列ツール62、押込ツール63及びナットランナ64は、例えばそれぞれロボットアームに設けられており、作業応じて動作が任意に制御される。
【0032】
ロボットシステムの動作に関する制御は、制御部82(Controller)によって実行される。
制御部82は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御部82は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0033】
この組立方法では、バルクヘッド30(詳細には外側壁部32(第2筒状体))をアウター燃焼器10(詳細にはアウターライナ11(第1筒状体))に嵌め込んでからボルト51で固定した後、それらのアセンブリにおけるバルクヘッド30をインナー燃焼器20(詳細にはインナーライナ21)に嵌め込んでからボルト51で固定する工程を経る。
以下、組立方法について、図6に示すフロー図に沿って詳細に説明する。
【0034】
図7に示すように、搬送ツール61でバルクヘッド30を把持して、固定治具81の上に固定されたアウター燃焼器10にバルクヘッド30を近付けるようにバルクヘッド30の姿勢・位置を制御する。
このとき、バルクヘッド30の軸線Xbがアウターライナ11の軸線Xoに対して傾斜するようにバルクヘッド30の姿勢・位置を制御する。
【0035】
そして、図8に示すように、アウターライナ11に対して傾斜させた状態で、バルクヘッド30の外側壁部32の外周面をアウターライナ11の内周面に接触させるようにバルクヘッド30の姿勢・位置を制御する。
このとき、バルクヘッド30がアウターライナ11に対して傾斜しているので、バルクヘッド30の外側壁部32の外周面は、アウターライナ11の内周面に一箇所で接触する。そして、バルクヘッド30は、接触箇所によってアウターライナ11に対して位置決めされることになる(図6のS101:接触工程)。
【0036】
なお、バルクヘッド30を位置決めするとき、接触箇所に対応する位置にある一の貫通孔11aと接触箇所に対応する位置にある一の貫通孔32aとが略一致するようにバルクヘッド30の姿勢・位置を制御する。
ここで言う「略一致」とは、貫通孔11aと貫通孔32aとが完全に一致した状態ではなく、少なくとも貫通孔11aと貫通孔32aとが重なることで形成された重複領域が存在している状態を指す。「重複領域」とは、1個の貫通孔11aとそれに対応する1個の貫通孔32aとが例えば前後に重なったときに形成される前後方向に貫通した領域を指す(図11においてクロスハッチングで表示)。
【0037】
バルクヘッド30の位置決めが完了したら、図9から図11に示すように、貫通孔11aと貫通孔32aとの重複領域に整列ピン62a(変形軸部材)が挿入されるように孔整列ツール62の姿勢・位置を制御する(図6のS102)。これによって、後述する作業や動作によってバルクヘッド30がアウターライナ11に対してずれてしまうことを防止できる。
なお、図9に示すように、整列ピン62aは、孔整列ツール62に設けられている。
【0038】
図12に示すように、整列ピン62aは、外径を拡大することがきる軸部材である。
図12において、二点鎖線は変形前の整列ピン62aの外径(外形状)を表し、実線は変形後の整列ピン62aの外径(外形状)を表している。変形前の外径は、貫通孔11a及び貫通孔32aの内径よりも小さい。また、変形後の外径は、貫通孔11a及び貫通孔32aの内径と同程度が好ましい。
【0039】
整列ピン62aとしては、図13に示すように、四分割された扇形の部材を半径方向に移動可能に構成した機構を採用したものが例示される。
ただし、この機構は例示に過ぎず、外径又は外形状を拡大することができる軸部材であればどのような機構を採用しもよい。
【0040】
この整列ピン62aは、次のように機能する。
すなわち、図14に示すように、まず、重複領域を形成する貫通孔11a及び貫通孔32aに挿入された状態で、整列ピン62aの外径を拡大させる。
すると、拡大の過程で、整列ピン62aの外周面が、貫通孔11aの内周縁及び貫通孔32aの内周縁に接触する。更に、接触後にも整列ピン62aの拡大が継続されることで、貫通孔11a(アウターライナ11)及び貫通孔32a(バルクヘッド30)は、重複領域のサイズが大きくなる方向に移動する。すなわち、貫通孔11aと貫通孔32aとがより一致する方向にアウターライナ11及び/又はバルクヘッド30が移動することになる。以下、このような動作を「孔整列動作」と言う。
【0041】
なお、「重複領域のサイズ」とは、重複領域の寸法(例えば幅寸法や高さ寸法)や重複領域の面積、大きさ等を含む概念である。また、重複領域のサイズは、その重複領域を形成する貫通孔11aと貫通孔32aとの整列度合(一致度合)を判断するパラメータとなり、重複領域のサイズが大きいほど整列度合が高いことになる。
【0042】
位置決めに使用されている接触箇所の近傍にある一箇所の重複領域において孔整列動作を行った後、図15に示すように、バルクヘッド30をアウターライナ11の内側に嵌め込んでいく(図6のS103:嵌込工程)。
【0043】
バルクヘッド30の嵌込みは、押込ツール63の姿勢・位置を制御することで行われる。具体的には、アウターライナ11に対して浮いているバルクヘッド30の部分(例えば、接触箇所の反対側にある部分)を押込ツール63で押し込むことで、アウターライナ11との接触箇所を支点にして、バルクヘッド30をアウターライナ11にゆっくりと嵌め込んでいく。
【0044】
このとき、アウターライナ11の外周面(好ましくは全周)を、軸線Xoと直交する方向(例えば真横)からビジョンセンサ等で画像認識しておくことが好ましい。具体的には、それぞれの箇所・位置に対応する各重複領域のサイズを画像で認識しておく。
これによって、貫通孔11aと貫通孔32aとの整列度合(一致度合)を各箇所で把握することができる。そして、全ての箇所で貫通孔11aと貫通孔32aとがおおよそ整列したと制御部82が判断したとき、制御部82はバルクヘッド30の嵌込みが完了したものと判断する(図6のS104)。
なお、嵌込動作が終了したとき、バルクヘッド30の軸線Xbは、アウターライナ11の軸線Xoと略一致することになる。
【0045】
嵌込動作において、傾斜したバルクヘッド30の軸線Xbが徐々にアウターライナ11の軸線Xoと一致するようにバルクヘッド30を押し込むことで、アウターライナ11の内周面に対するバルクヘッド30の外側壁部32の接触面積は徐々に増えていくことになる。
このため、バルクヘッド30の軸線Xbとアウターライナ11の軸線Xoとを最初から一致させた状態でバルクヘッド30を押し込む場合と比較して、小さな力で、かつ、安定的にバルクヘッド30を押し込むことができる。
【0046】
バルクヘッド30の嵌込動作が完了したら、搬送ツール61、孔整列ツール62及び押込ツール63を対象物から退避させる(図6のS105)。
【0047】
各ツールの退避が完了したら、図16に示すように、全ての重複領域に対して孔整列動作を行うように孔整列ツール62(整列ピン62a)を制御する(図6のS106:初期位置合わせ工程)。
【0048】
全ての孔整列動作が完了したら、図17及び図18に示すように、全ての重複領域にボルト51(軸部材)が挿入されるようにナットランナ64の姿勢・位置を制御する。
なお、図17に示すように、ボルト51は、ナットランナ64に保持されている。
【0049】
図19に示すように、バルクヘッド30の外側壁部32の内周面には、ナットプレート52(ナット部)が設けられている。
ナットプレート52は、外側壁部32と接続されているものの、所定の範囲内であれば動くことができる可動域を有している。なお、可動域は、ボルト51の軸方向と直交する面内におけるものである。
【0050】
ボルト51を挿入したら、ボルト51の先端がナットプレート52に螺合するようにナットランナ64を制御する(ボルト51を回転させる)。この動作を、全ての箇所で行う。これによって、ボルト51が仮締めされた状態になる(図6のS107)。
なお、上述の通り、ナットプレート52は可動域を有するので、仮締めの状態では、ボルト51をナットプレート52と共に動かすことができる。
【0051】
ボルト51が仮締めされたら、全ての箇所で重複領域のサイズを検知する(図6のS108:サイズ検知工程)。
以下、その具体な方法を例示する。
【0052】
<サイズ検知工程の実施例1>
図20に示すように、まず、ナットランナ64で、仮締めされた状態で重複領域に挿入されたボルト51を軸方向と直交する方向(例えば、上下方向及び左右方向)に動かす。
【0053】
動かされたボルト51は、貫通孔11aの内周縁及び/又は貫通孔32aの内周縁に接触する。接触したとき、ボルト51を保持するナットランナ64に負荷がかかるので、その位置でボルト51の移動を停止させて、その位置の座標を制御部82で取得しておく。そして、制御部82は、取得した座標に基づいて重複領域の寸法を算出する。すなわち、制御部82は、重複領域におけるボルト51のガタ量を検知することになる。
これによって、重複領域のサイズの検知が可能となる。
【0054】
<サイズ検知工程の実施例2>
ナットランナ64で、仮締めされた状態のボルト51を更に締め付ける方向に回転させて、そのときに発生する締付けトルクを検知して、締付けトルクの値を制御部82で取得しておく。
【0055】
重複領域が大きい場合、ボルト51の外周面と貫通孔11aの内周縁及び貫通孔32aの内周縁との間の空間的な余裕が大きく、締付けトルクが増大しにくい傾向になる。
一方で、重複領域が小さい場合、空間的な余裕が小さく、ボルト51を締め付ける過程において、ボルト51が貫通孔11aの内周縁及び/又は貫通孔32aの内周縁に引っ掛かりやすく、この場合、締付けトルクが増大する傾向にある。
このように、締付けトルクを測定することで、重複領域のサイズを予測してもよい。
【0056】
次に、検知された全ての重複領域のサイズに基づいて、貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係の調整が必要な重複領域を制御部82で特定する(図6のS109:重複領域特定工程)。
【0057】
具体的には、制御部82で、(1)全ての重複領域のサイズに基づいて重複領域のサイズの平均値を算出して、(2)その平均値から所定値以上ずれた重複領域を「調整が必要な重複領域」と判断する方法が例示される。
所定値は、予め設定されているが、適宜変更することもできる。
【0058】
なお、基本的には、平均値よりも所定値以上小さい重複領域を「調整が必要な重複領域」と判断する。なぜなら、後述する位置合わせ工程では、重複領域を広げるような調整をするからである。
【0059】
また、他の例として、下限値が設定された所定範囲から外れている重複領域を「調整が必要な重複領域」と判断してもよい。すなわち、所定のサイズよりも小さい重複領域を「調整が必要な重複領域」と判断してもよい。
【0060】
調整が必要な重複領域を特定したら、その重複領域を形成する貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係を調整する(図6のS201:位置合わせ工程)。
【0061】
具体的には、ナットランナ64で、仮締めされた状態のボルト51を軸方向と直交する方向に動かして、貫通孔11aの位置及び/又は貫通孔32aの位置を動かす方法が例示される。
【0062】
また、他の例として、仮締めしたボルト51を一度外して、その重複領域に対して整列ピン62aで孔整列動作を行ってもよい。なお、孔整列動作の後、ボルト51を再び仮締めする。
【0063】
対象となる全ての重複領域について位置関係の調整が完了したら、再度、S109のステップを実行して、以降、調整が必要な重複領域がなくなるまでこれを繰り返す。
これによって、重複領域のサイズを全ての箇所で均一にすることができる。
【0064】
重複領域のサイズが全ての箇所で均一になったら、ナットランナ64で全てのボルト51を締め込んで本締めを行う(図6のS110)。
これによって、バルクヘッド30が適切な位置でアウター燃焼器10に締結されることになる(図6のS111)。
【0065】
次に、図21及び図22に示すように、搬送ツール61でアウター燃焼器10とバルクヘッド30とのアセンブリを把持して、固定治具81の上に固定されたインナー燃焼器20にアセンブリを近付けるようにアセンブリの姿勢・位置を制御する。
このとき、アセンブリの軸線(軸線Xo及び軸線Xb)がインナーライナ21の軸線Xiに対して傾斜するようにアセンブリの姿勢・位置を制御する(図6のS112)。
【0066】
以下、アウター燃焼器10とバルクヘッド30とを組み立てる際に行ったステップと同様のステップを繰り返すことで、アセンブリとインナー燃焼器20とを組み立てる。このとき、アセンブリのバルクヘッド30(詳細には内側壁部33)が第1筒状体となり、インナー燃焼器20(詳細にはインナーライナ21)が第2筒状体となる。
これによって、最終的に燃焼器1が組み立てられることになる。
【0067】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
アウターライナ11にバルクヘッド30が嵌め込まれた状態において、貫通孔11aと貫通孔32aとの重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、全ての重複領域のサイズに基づいて、貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係の調節が必要な重複領域を特定する重複領域特定工程と、をコンピュータが実行するので、複数ある重複領域の中から調節が必要な重複領域を容易に特定することができる。
【0068】
また、サイズ検知工程は、重複領域にボルト51を挿入して、挿入方向と直交する方向のボルト51のガタ量を検知することで行われるので、簡便な方法によって重複領域のサイズを測定することができる。
【0069】
また、サイズ検知工程は、重複領域にボルト51を挿入して、バルクヘッド30に設けられたナットプレート52にボルト51を螺合する際に発生するトルクを検知することで行われるので、簡便な方法によって重複領域のサイズを予測することができる。
【0070】
また、調節が必要と判断された重複領域を形成する貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係を調節する位置合わせ工程をコンピュータが実行するので、適切な範囲にない貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係を適切な位置に調節することができる。
これによって、重複領域のサイズを全ての箇所で均一にすることができる。
【0071】
また、サイズ検知工程の前に、軸線Xoに対して軸線Xbが相対的に傾斜した状態でバルクヘッド30の外周面(外側壁部32の外周面)とアウターライナ11の内周面とを接触させる接触工程と、アウターライナ11とバルクヘッド30との接触箇所を支点にして、軸線Xoと軸線Xbとが一致するようにバルクヘッド30をアウターライナ11に嵌め込む嵌込工程と、をコンピュータが実行するので、接触箇所でアウターライナ11とバルクヘッド30との位置決めを行いつつ、徐々に負荷をかけて嵌め込むことができる。
【0072】
また、嵌込工程の後、かつ、サイズ検知工程の前に、重複領域を形成する貫通孔11aと貫通孔32aとの位置関係を調節する初期位置合わせ工程をコンピュータが実行するので、予め重複領域を可能な限り拡大させておくことができる。
【0073】
また、位置合わせ工程は、重複領域に挿入されたボルト51を挿入方向と直交する方向に動かすことによって行われるので、貫通孔11aの内周縁又は貫通孔32aの内周縁にボルト51を接触させ、その状態から更にボルト51を移動させることで、貫通孔11a(アウターライナ11)又は貫通孔32a(バルクヘッド30)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0074】
また、位置合わせ工程は、重複領域に挿入された状態で拡径する整列ピン62aによって行われるので、整列ピン62aを重複領域で拡径することで、貫通孔11a(アウターライナ11)又は貫通孔32a(バルクヘッド30)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0075】
初期位置合わせ工程は、重複領域に挿入された状態で拡径する整列ピン62aによって行われるので、整列ピン62aを重複領域で拡径することで、貫通孔11a(アウターライナ11)又は貫通孔32a(バルクヘッド30)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0076】
以上の通り説明した本実施形態に係る組立方法及び組立装置は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の第1態様に係る組立方法は、第1軸線(Xo)を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔(11a)を有する第1筒状体(11)に、第2軸線(Xb)を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔(32a)を有する第2筒状体(30)を所定の位置に嵌め込んで組み立てる組立方法であって、前記第1筒状体に前記第2筒状体が嵌め込まれた状態において、対応するそれぞれの前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、全ての前記重複領域のサイズに基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する重複領域特定工程と、をコンピュータが実行する。
【0077】
本態様に係る組立方法によれば、第1筒状体に第2筒状体が嵌め込まれた状態において、第1貫通孔と第2貫通孔との重複領域のサイズを検知するサイズ検知工程と、全ての重複領域のサイズに基づいて、第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係の調節が必要な重複領域を特定する重複領域特定工程と、をコンピュータが実行するので、複数ある重複領域の中から調節が必要な重複領域を容易に特定することができる。
【0078】
また、本開示の第2態様に係る組立方法は、第1態様に係る組立方法において、前記サイズ検知工程は、前記重複領域に軸部材(51)を挿入して、挿入方向と直交する方向の前記軸部材のガタ量を検知することで行われる。
【0079】
本態様に係る組立方法によれば、サイズ検知工程は、重複領域に軸部材を挿入して、挿入方向と直交する方向の軸部材のガタ量を検知することで行われるので、簡便な方法によって重複領域のサイズを測定することができる。
【0080】
また、本開示の第3態様に係る組立方法は、第1態様又は第2態様に係る組立方法において、前記サイズ検知工程は、前記重複領域にボルトを挿入して、前記第2筒状体に設けられたナット部(52)に前記ボルト螺合する際に発生するトルクを検知することで行われる。
【0081】
本態様に係る組立方法によれば、サイズ検知工程は、重複領域にボルトを挿入して、第2筒状体に設けられたナット部にボルトを螺合する際に発生するトルクを検知することで行われるので、簡便な方法によって重複領域のサイズを予測することができる。
【0082】
また、本開示の第4態様に係る組立方法は、第1態様から第3態様のいずれかに係る組立方法において、前記重複領域特定工程で調節が必要と判断された前記重複領域を形成する前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係を調節する位置合わせ工程をコンピュータが実行する。
【0083】
本態様に係る組立方法によれば、重複領域特定工程で調節が必要と判断された重複領域を形成する第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係を調節する位置合わせ工程をコンピュータが実行するので、適切な範囲にない第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係を適切な位置に調節することができる。
これによって、重複領域のサイズを全ての箇所で均一にすることができる。
【0084】
また、本開示の第5態様に係る組立方法は、第1態様から第4態様のいずれかに係る組立方法において、前記サイズ検知工程の前に、前記第1軸線に対して前記第2軸線が相対的に傾斜した状態で前記第2筒状体の外周面と前記第1筒状体の内周面とを接触させる接触工程と、前記第1筒状体と前記第2筒状体との接触箇所を支点にして、前記第1軸線と前記第2軸線とが一致するように前記第2筒状体を前記第1筒状体に嵌め込む嵌込工程と、をコンピュータが実行する。
【0085】
本態様に係る組立方法によれば、サイズ検知工程の前に、第1軸線に対して第2軸線が相対的に傾斜した状態で第2筒状体の外周面と第1筒状体の内周面とを接触させる接触工程と、第1筒状体と第2筒状体との接触箇所を支点にして、第1軸線と第2軸線とが一致するように第2筒状体を第1筒状体に嵌め込む嵌込工程と、をコンピュータが実行するので、接触箇所で第1筒状体と第2筒状体との位置決めを行いつつ、徐々に負荷をかけて嵌め込むことができる。
【0086】
また、本開示の第6態様に係る組立方法は、第1態様から第5態様のいずれかに係る組立方法において、前記嵌込工程の後、かつ、前記サイズ検知工程の前に、前記重複領域を形成する前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係を調節する初期位置合わせ工程をコンピュータが実行する。
【0087】
本態様に係る組立方法によれば、嵌込工程の後、かつ、サイズ検知工程の前に、重複領域を形成する第1貫通孔と第2貫通孔との位置関係を調節する初期位置合わせ工程をコンピュータが実行するので、予め重複領域を可能な限り拡大させておくことができる。
【0088】
また、本開示の第7態様に係る組立方法は、第1態様から第6態様のいずれかに係る組立方法において、前記第1筒状体の内径は、前記第2筒状体の外径よりも小径とされている。
【0089】
本態様に係る組立方法によれば、第1筒状体の内径は、第2筒状体の外径よりも小径とされているので、第1筒状体と第2筒状体とはしまりばめの関係にあり、この場合において、接触工程及び嵌込工程を経ることで、徐々に力をかけながら第2筒状体を第1筒状体に嵌め込むことができる。
【0090】
また、本開示の第8態様に係る組立方法は、第1態様から第7態様のいずれかに係る組立方法において、前記位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された軸部材を挿入方向と直交する方向に動かすことによって行われる。
【0091】
本態様に係る組立方法によれば、位置合わせ工程は、重複領域に挿入された軸部材を挿入方向と直交する方向に動かすことによって行われるので、第1貫通孔の縁又は第2貫通孔の縁に軸部材を接触させ、その状態から更に軸部材を移動させることで、第1貫通孔(第1筒状体)又は第2貫通孔(第2筒状体)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0092】
また、本開示の第9態様に係る組立方法は、第1態様から第8態様のいずれかに係る組立方法において、前記位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材(62a)によって行われる。
【0093】
本態様に係る組立方法によれば、位置合わせ工程は、重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材によって行われるので、変形軸部材を重複領域で拡径することで、第1貫通孔(第1筒状体)又は第2貫通孔(第2筒状体)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0094】
また、本開示の第10態様に係る組立方法は、第1態様から第9態様のいずれかに係る組立方法において、前記初期位置合わせ工程は、前記重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材によって行われる。
【0095】
本態様に係る組立方法によれば、初期位置合わせ工程は、重複領域に挿入された状態で拡径する変形軸部材によって行われるので、変形軸部材を重複領域で拡径することで、第1貫通孔(第1筒状体)又は第2貫通孔(第2筒状体)を動かして、それらの位置関係を調節することができる。
【0096】
また、本開示の第11態様に係る組立方法は、第1態様から第10態様のいずれかに係る組立方法において、前記第1筒状体は燃焼器のアウターライナであり、前記第2筒状体は前記燃焼器のバルクヘッドである、又は、前記第1筒状体は前記燃焼器のバルクヘッドであり、前記第2筒状体は前記燃焼器のインナーライナである。
【0097】
また、本開示の第12態様に係る組立装置は、第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てるための組立装置であって、軸部材を保持する保持ツールと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記軸部材を前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域に対して挿入するように前記保持ツールを制御して、前記軸部材を挿入方向と直交する方向に移動させるように前記保持ツールを制御して、前記軸部材の移動量に基づいて前記重複領域における前記軸部材のガタ量を算出して、算出された全ての前記重複領域におけるガタ量に基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する。
【0098】
また、本開示の第13態様に係る組立装置は、第1軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第1貫通孔を有する第1筒状体に、第2軸線を中心軸線とする周方向に沿って形成された複数の第2貫通孔を有する第2筒状体を所定の位置に嵌め込んで組み立てるための組立装置であって、ボルトを保持する保持ツールと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ボルトを前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との重複領域に対して挿入するとともに、前記ボルトが前記第2筒状体に設けられたナット部に螺合するように前記保持ツールを制御して、前記ナット部に螺合する際の前記ボルトのトルクに基づいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との位置関係の調節が必要な前記重複領域を特定する。
【符号の説明】
【0099】
1 燃焼器
10 アウター燃焼器
11 アウターライナ
11a 貫通孔
12 パネル(アウターライナ用パネル)
12a スタッド
12b ワッシャ
12c ナット
20 インナー燃焼器
21 インナーライナ
21a 貫通孔
22 パネル(インナーライナ用パネル)
22a スタッド
22b ワッシャ
22c ナット
30 バルクヘッド
31 底部
32 外側壁部
32a 貫通孔
33 内側壁部
33a 貫通孔
40 フード
51 ボルト(軸部材)
52 ナットプレート(ナット部)
61 搬送ツール
62 孔整列ツール
62a 整列ピン(変形軸部材)
63 押込ツール
64 ナットランナ(保持ツール)
81 固定治具
82 制御部
CC 燃焼室
Xb 軸線(バルクヘッドの軸線)
Xi 軸線(インナーライナの軸線)
Xo 軸線(アウターライナの軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22