IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本アルファの特許一覧

<>
  • 特開-排水栓装置 図1
  • 特開-排水栓装置 図2
  • 特開-排水栓装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070922
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/23 20060101AFI20240517BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20240517BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E03C1/23 Z
E03C1/22 C
A47K1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181546
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DB03
2D061DE11
(57)【要約】
【課題】パッキン部の位置ずれをより精度よく修正して、良好な止水性をより確実に得ること等が可能な排水栓装置を提供する。
【解決手段】排水栓装置1は、環状のパッキン部62を有する栓蓋6を備えており、栓蓋6の下動に伴い、下方に向けて内径が一定の割合で減少する傾斜面23にパッキン部23が接触することで排水口102を閉状態とする。栓蓋6は、パッキン部62が取付けられた栓蓋本体部61を備え、栓蓋本体部61は、パッキン部62よりも上方に位置する芯出部613を有する。パッキン部62が傾斜面23に接触した状態においては、栓蓋6へと下向きの力が付与されることで、栓蓋6がさらに下動可能に構成される。そして、栓蓋6がさらに下動したときには、傾斜面23に芯出部613が接触することで、傾斜面23の中心軸に対しパッキン部62の中心軸が合うように栓蓋6が移動可能に構成される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のパッキン部を有するとともに、槽体の排水口に対応して設けられた上下動可能な栓蓋を備え、
前記栓蓋の下動に伴い、前記排水口に挿設された筒状の排水口部材及び前記槽体のうちの一方に形成された、下方に向けて内径が一定の割合で減少する逆円錐台面状の傾斜面に対し前記パッキン部の外周部が接触することで、前記排水口を閉状態とすることが可能である一方、前記栓蓋の上動に伴い、前記傾斜面から前記パッキン部の外周部が離間することで、前記排水口を開状態とすることが可能な排水栓装置であって、
前記栓蓋は、前記パッキン部が外周に取付けられた栓蓋本体部を備え、
前記栓蓋本体部は、前記パッキン部よりも上方に位置し、当該パッキン部の外周部よりも外側に張り出した形状をなす芯出部を有し、
前記パッキン部の外周部が前記傾斜面に接触した状態において、前記栓蓋に対し下向きの力が付与されることで、前記パッキン部が弾性変形して、前記栓蓋がさらに下動可能であるとともに、
前記栓蓋がさらに下動したときに、前記傾斜面に前記芯出部が接触することで、前記傾斜面の中心軸に対し前記パッキン部の中心軸が合うように前記栓蓋が移動可能に構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記傾斜面に対し、前記芯出部の外周部全周が接触可能であるとともに、
前記傾斜面に対し前記芯出部の外周部全周が接触した状態においては、前記栓蓋本体部によって、前記槽体の貯水空間と、前記芯出部よりも下方に位置する前記傾斜面で囲まれた排水用空間とが非連通状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記排水口部材の内面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記栓蓋本体部は、前記芯出部よりも上方に位置し、かつ、少なくとも外周部が前記芯出部の外周部よりも外側に張り出した形状をなすとともに前記栓蓋の移動方向に沿って前記槽体と直接対向するように構成された本体上側部を有し、
前記傾斜面に前記芯出部が接触した状態においては、前記本体上側部の外周部が、前記槽体とは接触しない一方、前記槽体に近接した状態となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記パッキン部の中心軸を含む断面において、当該中心軸と直交する仮想面に対する前記傾斜面の傾斜角度が30°以上60°以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽や洗面ボウルなど)に形成された排水口の開閉状態を切換えるための排水栓装置が知られている。
【0003】
排水栓装置としては、排水口に挿設された筒状の排水口部材と、環状のパッキン部を具備してなる上下動可能な栓蓋とを有するものが知られている。このような排水栓装置においては、遠隔操作により栓蓋が上下動し、排水口部材に対するパッキン部(特にパッキン部の外周部)の接触・非接触が切換えられることで、排水口の開閉状態が切換えられるようになっている(例えば、特許文献1等参照)。また、排水口部材ではなく、槽体に対するパッキン部の接触・非接触が切換えられることで、排水口の開閉状態を切換可能な排水栓装置も提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-113398号公報
【特許文献2】特開2018-204368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排水口を閉状態とし、排水口部材や槽体に対しパッキン部の外周部を接触させた状態において、パッキン部が適正位置から水平方向に僅かにずれた位置に配置されることがある。このような位置ずれが生じると、排水口部材や槽体に対するパッキン部の接触状態が不適切なものとなり、良好な止水性を得ることができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッキン部の位置ずれをより精度よく修正して、良好な止水性をより確実に得ること等が可能な排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.環状のパッキン部を有するとともに、槽体の排水口に対応して設けられた上下動可能な栓蓋を備え、
前記栓蓋の下動に伴い、前記排水口に挿設された筒状の排水口部材及び前記槽体のうちの一方に形成された、下方に向けて内径が一定の割合で減少する逆円錐台面状の傾斜面に対し前記パッキン部の外周部が接触することで、前記排水口を閉状態とすることが可能である一方、前記栓蓋の上動に伴い、前記傾斜面から前記パッキン部の外周部が離間することで、前記排水口を開状態とすることが可能な排水栓装置であって、
前記栓蓋は、前記パッキン部が外周に取付けられた栓蓋本体部を備え、
前記栓蓋本体部は、前記パッキン部よりも上方に位置し、当該パッキン部の外周部よりも外側に張り出した形状をなす芯出部を有し、
前記パッキン部の外周部が前記傾斜面に接触した状態において、前記栓蓋に対し下向きの力が付与されることで、前記パッキン部が弾性変形して、前記栓蓋がさらに下動可能であるとともに、
前記栓蓋がさらに下動したときに、前記傾斜面に前記芯出部が接触することで、前記傾斜面の中心軸に対し前記パッキン部の中心軸が合うように前記栓蓋が移動可能に構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【0009】
上記手段1によれば、栓蓋本体部に設けられた芯出部が、排水口を閉状態とするときにおけるパッキン部の接触対象である傾斜面(つまり、止水面と同じ傾斜面)と接触することで、傾斜面の中心軸に対しパッキン部の中心軸が合うようにして栓蓋の位置調節を行う(つまり、栓蓋の芯出しを行う)ことが可能となっている。ここで、パッキン部と接する傾斜面(止水面と同じ傾斜面)を利用して栓蓋の芯出しが行われるため、パッキン部に合わせた適切な芯出しを行うことができる。これにより、パッキン部の位置ずれをより精度よく修正して、良好な止水性をより確実に得ることができる。
【0010】
また、上記手段1によれば、パッキン部の外周部が傾斜面に接触した状態において栓蓋がさらに下動したときに初めて、傾斜面に対し芯出部が接触するようになっている。従って、芯出部の存在により、傾斜面に対するパッキン部の接触が不十分になって止水性の低下が生じるといったことがない。
【0011】
さらに、上記手段1によれば、水圧や栓蓋を踏むこと等により栓蓋に対し比較的大きな下向きの力が加わったとしても、傾斜面に芯出部が接触することで、パッキン部に対し過度の負荷が加わることを防止できる。これにより、パッキン部の損傷や変形を効果的に抑えることができ、良好な止水性をより長期間に亘って確保することができる。
【0012】
また、傾斜面に芯出部が接触することによって、傾斜面の奥にパッキン部が過度に入り込むことを抑制できる。これにより、パッキン部の過度の入り込みに伴い、栓蓋の上下動ひいては排水口の開閉状態の切換えに支障が生じることをより確実に防止でき、開閉状態の円滑な切換えを担保することができる。
【0013】
手段2.前記傾斜面に対し、前記芯出部の外周部全周が接触可能であるとともに、
前記傾斜面に対し前記芯出部の外周部全周が接触した状態においては、前記栓蓋本体部によって、前記槽体の貯水空間と、前記芯出部よりも下方に位置する前記傾斜面で囲まれた排水用空間とが非連通状態となるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0014】
上記手段2によれば、芯出部の外周部全周が傾斜面と接触するため、栓蓋の芯出しをより効果的に行うことができる。これにより、良好な止水性を一層確実に得ることが可能となる。
【0015】
また、傾斜面に対し芯出部の外周部全周が接触した状態においては、栓蓋本体部によって、槽体の貯水空間と、芯出部よりも下方に位置する傾斜面で囲まれた排水用空間とが非連通状態となる。つまり、前記貯水空間と前記排水用空間とが栓蓋本体部によって分離される。従って、芯出部に補助的な止水(シール)機能を持たせることができ、万が一、止水を主に担うパッキン部において多少の破損などが生じたとしても、良好な止水性をより確実に維持することができる。
【0016】
手段3.前記傾斜面は、前記排水口部材の内面に形成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0017】
上記手段3によれば、パッキン部や芯出部が接触する傾斜面は、排水口部材の内面に形成されている。従って、槽体に傾斜面を形成する場合と比べて、傾斜面をより高精度で形成することができる。その結果、傾斜面にパッキン部が接触することによる止水機能、及び、傾斜面に芯出部が接触することによる栓蓋の芯出し機能のそれぞれをより効果的に発揮させることができる。
【0018】
手段4.前記栓蓋本体部は、前記芯出部よりも上方に位置し、かつ、少なくとも外周部が前記芯出部の外周部よりも外側に張り出した形状をなすとともに前記栓蓋の移動方向に沿って前記槽体と直接対向するように構成された本体上側部を有し、
前記傾斜面に前記芯出部が接触した状態においては、前記本体上側部の外周部が、前記槽体とは接触しない一方、前記槽体に近接した状態となるように構成されていることを特徴とする手段3に記載の排水栓装置。
【0019】
尚、「近接した状態」とあるのは、本体上側部の外周部(槽体と直接対向する部位)と槽体との間の距離が例えば0.5mm以上2.0mm以下となっている状態をいう。
【0020】
上記手段4によれば、傾斜面に芯出部が接触したときに、本体上側部の外周部であって栓蓋の移動方向に沿って槽体と直接対向する部位は、槽体と接触しないようになっている。従って、本体上側部との接触に伴い槽体に傷がつくことを防止でき、外観品質の低下防止などを図ることができる。
【0021】
一方、本体上側部の外周部は芯出部の外周部よりも外側に張り出した形状をなしており、傾斜面に芯出部が接触した状態においては、本体上側部の外周部が槽体に近接した状態となるように構成されている。そのため、本体上側部によって、排水口部材における芯出部との接触部分、つまり、排水口部材における汚れ等が比較的付着しやすい部分を覆い隠すことができる。これにより、外観品質の向上を図ることができる。
【0022】
手段5.前記パッキン部の中心軸を含む断面において、当該中心軸と直交する仮想面に対する前記傾斜面の傾斜角度が30°以上60°以下とされていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0023】
上記手段5によれば、パッキン部の中心軸と直交する仮想面(例えば水平面)に対する傾斜面の傾斜角度が30°以上60°以下とされている。従って、傾斜面に対しパッキン部が接触することによる止水機能、傾斜面に芯出部が接触することによる栓蓋の芯出し機能、及び、傾斜面の奥に対するパッキン部の過度の入り込み防止機能をそれぞれバランスよく発揮させることができる。
【0024】
尚、上記各機能を一層バランスよく発揮させるという点では、傾斜角度を40°以上60°以下とすることがより好ましい。
【0025】
また、上記各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記手段2、3又は4に係る技術事項に対し上記手段5に係る技術事項を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】傾斜面にパッキン部が接触する一方、傾斜面に芯出部が接触していない状態の排水栓装置を示す一部破断正面図である。
図2】傾斜面にパッキン部及び芯出部が接触した状態の排水栓装置を示す一部破断正面図である。
図3】傾斜面の傾斜角度などを示すための部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての浴槽100に取付けられている。尚、浴槽100は、その底面を構成する底面部101を備えており、当該底面部101には排水口102が貫通形成されている。
【0028】
排水栓装置1は、排水口部材2と、配管3と、アタッチメント部材4と、支持軸機構5と、栓蓋6とを備えている。
【0029】
排水口部材2は、円筒状に形成されており、自身の中心軸と排水口102の中心軸とがほぼ一致するように排水口102に挿設されている。排水口部材2は、その上端部において径方向外側に突出形成された鍔部21と、当該鍔部21よりも下側の外周に形成された雄ねじ部22とを備えている。
【0030】
また、鍔部21の外面(外周面)には、外側に向けて開口する環状の収納溝21aが設けられており、当該収納溝21aには、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)で形成された環状の第一シール部材7(Oリング)が配置されている。そして、浴槽100と排水口部材2の外面との間で第一シール部材7が挟み込まれた状態になることで、排水口部材2の外側を通って浴槽100内の水が配管3側へと漏れ出すことをより確実に防止可能となっている。
【0031】
さらに、排水口部材2における上側内面には、下方に向けて内径が一定の割合で減少する逆円錐台面状の傾斜面23が形成されている。そして、後述するパッキン部62の中心軸CLを含む断面〔より正確には、傾きのない状態の(設計上の)パッキン部62の中心軸CLを含む断面〕においては、当該中心軸CLと直交するとともに傾斜面23を通る仮想面VS1に対して傾斜面23のなす角のうち小さい方の角の角度である傾斜角度αが30°以上60°以下となるように設定されている(図3参照)。尚、本実施形態において、仮想面VS1は水平面となる。
【0032】
配管3は、排水口102を流れる排水の流路を構成するものであり、少なくとも上側が円筒状をなす管である。配管3は、その上端側内周に前記雄ねじ部22を螺合可能な雌ねじ部31を備えている。そして、底面部101の下方において排水口102とほぼ同軸となるように配管3を配置した上で、底面部101の上方から排水口102及び配管3内に対し排水口部材2を挿通しつつ雄ねじ部22を雌ねじ部31に螺合し、鍔部21及び配管3の上端面により底面部101を挟み込むことで、排水口部材2及び配管3が接続されるとともに、両者が浴槽100に取付けられた状態となっている。
【0033】
また、排水口部材2及び配管3が接続された状態においては、排水口部材2及び配管3によって、内側に向けて開口した環状凹部であるアタッチメント取付部32が形成されることとなる。このアタッチメント取付部32は、アタッチメント部材4の取付に用いられる。
【0034】
尚、本実施形態において、配管3の上端面と底面部101の裏面(下面)との間には、弾性変形可能な材料(例えば、樹脂やゴム等)により形成された環状の第二シール部材8が配置されている。この第二シール部材8によって、配管3と浴槽100との間からの漏水防止が図られている。
【0035】
アタッチメント部材4は、排水の流路、つまり、排水口部材2や配管3の内部において支持軸機構5を保持するためのものである。アタッチメント部材4は、外環部41、連結部42及び保持部43を備えている。
【0036】
外環部41は、円環状をなしており、排水口部材2や配管3に対するアタッチメント部材4の取付部として機能する。本実施形態において、外環部41は、アタッチメント取付部32に配置されることにより、排水口部材2及び配管3に取付けられている。尚、外環部41(アタッチメント部材4)の取付対象を、排水口部材2及び配管3のうちのいずれか一方のみとしてもよい。
【0037】
連結部42は、外環部41の内周面と保持部43の外周面とを連結する部位であって、保持部43の周方向に沿って間隔をあけた状態で複数(例えば等間隔に4つ)設けられている。排水は、各連結部42間の隙間を通って下流へと流れることとなる。尚、連結部42の数や形状については適宜変更してもよい。
【0038】
保持部43は、全体として円筒状をなしており、その内周に配置された支持軸機構5を保持する役目を有している。
【0039】
支持軸機構5は、栓蓋6を上下動させるための機構である。支持軸機構5は、棒状の支持軸51と、当該支持軸51の外周側に位置する円筒状のケース部52とを備えている。
【0040】
支持軸51は、ケース部52の内周において上下動可能な状態とされており、ケース部52から突出した支持軸51の先端側部分(上側部分)に対し、栓蓋6が取付けられている。
【0041】
ケース部52は、保持部43の内周に配置されており、保持部43によって上下動不能な状態で保持されている。また、ケース部52には、筒状のアウターチューブ91の端部が接続されており、当該アウターチューブ91内には、金属製のワイヤー部品等からなるインナーワイヤ92が配置されている。インナーワイヤ92は、アウターチューブ91内にて往復移動可能とされており、図示しない所定の操作装置に設けられた操作部を操作する(例えば操作ボタンを押圧する)ことで、インナーワイヤ92が往動(前記操作部側から支持軸機構5側に移動)する。そして、インナーワイヤ92の往動に伴い、支持軸51及び栓蓋6が上動する。
【0042】
尚、ケース部52内には、支持軸51に対し下向きの力を付与する戻りばね(不図示)が設けられている。また、前記操作装置には、図示しないロック機構(例えばスラストロック機構)が設けられており、インナーワイヤ92が所定位置を越える位置まで往動した状態で前記操作部に対する操作が解除されると、インナーワイヤ92が往動した状態でロックされ、ひいては支持軸51及び栓蓋6が上動した状態でロックされるようになっている。尚、前記操作部を再度操作することで、前記ロック機構によるロックを解除することができる。
【0043】
栓蓋6は、排水口102に対応して設けられた、排水口102を開閉するための栓である。栓蓋6は、所定の樹脂等からなる栓蓋本体部61と、当該栓蓋本体部61の外周に取付けられたパッキン部62とを備えている。
【0044】
栓蓋本体部61は、円板状の本体上側部611と、本体上側部611の背面中央に突出形成されたガイド部612と、ガイド部612の外面(外周面)から外側に突出形成された鍔状の芯出部613と、ガイド部612の外面(外周面)に形成された環状のパッキン収納溝614とを備えている。
【0045】
本体上側部611は、表面が上側(浴槽100の貯水空間側)を向いており、芯出部613よりも上方に位置するとともに、少なくとも外周部が芯出部613よりも外側に張り出した形状をなしている。また、本体上側部611における少なくとも外周部は、栓蓋6の移動方向に沿って浴槽100(底面部101)と直接(他の部品などを間に置くことなく)対向するように構成されている。
【0046】
ガイド部612は、保持部43の外周に配置されており、支持軸51や栓蓋6の往復移動時に保持部43の外周面に沿って移動する。ガイド部612は、栓蓋6の上下動時に、栓蓋6の傾きや水平方向に沿った位置ずれを抑制する機能を有する。但し、栓蓋6の円滑な移動のために、ガイド部612及び保持部43間には若干の隙間が形成されていること等から、水平方向に沿った栓蓋6の位置ずれは若干ではあるが生じ得る。
【0047】
芯出部613は、パッキン部62よりも上方に位置し、当該パッキン部62の外周部よりも外側に張り出した形状をなしている。芯出部613の外周部には、下方に向けて徐々に外径が小さなものとなるテーパ面613a(図3参照)が形成されている。そして、パッキン部62の中心軸CLを含む断面〔より正確には、傾きのない状態の(設計上の)パッキン部62の中心軸CLを含む断面〕においては、当該中心軸CLと直交するとともにテーパ面613aを通る仮想面VS2に対してテーパ面613aのなす角のうち小さい方の角の角度である傾斜角度β(図3参照)が、傾斜面23の前記傾斜角度αと同一となるように設定されている。
【0048】
パッキン部62は、弾性変形可能な材料(例えば樹脂やゴム等)によって形成されており、環状をなしている。また、パッキン部62の外周側上面と栓蓋本体部61との間には、隙間Kが設けられており、パッキン部62は、この隙間K側に入り込むようにして弾性変形可能となっている。
【0049】
上述した排水栓装置1では、次のようにして排水口102の開閉状態が切換えられる。すなわち、前記操作装置に設けられた前記操作部を操作する(例えば操作ボタンを押圧する)ことで、インナーワイヤ92が往動し、このインナーワイヤ92の往動に伴い、支持軸51及び栓蓋6が上動する。そして、インナーワイヤ92が所定位置を越える位置まで往動した状態で、前記操作部に対する操作が解除されると、前記ロック機構によって、インナーワイヤ92が往動した状態でロックされ、ひいては支持軸51及び栓蓋6が上動した状態でロックされる。その結果、パッキン部62が傾斜面23から離間した状態で維持され、排水口102が開状態で維持される。
【0050】
一方、排水口102が開状態であるときに、前記操作部への操作に伴い前記ロック機構によるロックが解除されると、前記戻りばねから加わる力などにより支持軸51及び栓蓋6が復動(下動)する。そして、パッキン部62の外周部全周が傾斜面23と接触することで、排水口102が閉状態とされる。
【0051】
尚、排水口102を閉状態とし、パッキン部62の外周部全周が傾斜面23に接触した状態においては、図2に示すように、浴槽100に貯留された水からの水圧等によって栓蓋6に対し下向きの力が付与されることで、パッキン部62が前記隙間K側に弾性変形して、栓蓋6がさらに下動する。そして、栓蓋6がさらに下動したときには、傾斜面23に芯出部613(本実施形態では、テーパ面613a)が接触することで、傾斜面23の中心軸(尚、図1,2では、傾斜面23の中心軸はパッキン部62の中心軸CLと一致した状態となっている)に対しパッキン部62の中心軸CLが合うようにして、栓蓋6が移動可能となっている。
【0052】
さらに、水圧等により栓蓋6がさらに下動したことに伴い、傾斜面23に対し芯出部613の外周部全周が接触した状態においては、栓蓋本体部61によって、浴槽100の貯水空間と、芯出部613よりも下方に位置する傾斜面23で囲まれた排水用空間SK(つまり、排水の流れる空間)とが非連通状態となる。つまり、栓蓋本体部61によって、前記貯水空間と排水用空間SKとが空間的に分離される。
【0053】
加えて、傾斜面23に芯出部613が接触した状態においては、本体上側部611の外周部が、浴槽100(底面部101)とは接触しない一方、浴槽100(底面部101)に近接した状態となる。尚、「近接した状態」とあるのは、例えば、栓蓋6の移動方向に沿った本体上側部611の外周部と浴槽100(底面部101)との間の距離が0.5mm以上2.0mm以下となる状態をいう。
【0054】
以上詳述したように、本実施形態によれば、芯出部613が、排水口102を閉状態とするときにおけるパッキン部62の接触対象である傾斜面23(つまり、止水面と同じ傾斜面23)と接触することで、傾斜面23の中心軸に対しパッキン部62の中心軸が合うようにして栓蓋6の位置調節を行う(つまり、栓蓋6の芯出しを行う)ことが可能となっている。ここで、パッキン部62と接する傾斜面23(止水面と同じ傾斜面23)を利用して栓蓋6の芯出しが行われるため、パッキン部62に合わせた適切な芯出しを行うことができる。これにより、パッキン部62の位置ずれをより精度よく修正して、良好な止水性をより確実に得ることができる。
【0055】
特に本実施形態では、芯出部613の外周部全周が傾斜面23と接触するため、栓蓋6の芯出しをより効果的に行うことができる。これにより、良好な止水性を一層確実に得ることが可能となる。
【0056】
また、パッキン部62の外周部が傾斜面23に接触した状態において栓蓋6がさらに下動したときに初めて、傾斜面23に対し芯出部613が接触するようになっている。従って、芯出部613の存在により、傾斜面23に対するパッキン部62の接触が不十分になって止水性の低下が生じるといったことがない。
【0057】
さらに、水圧や栓蓋6を踏むこと等により栓蓋6に対し比較的大きな下向きの力が加わったとしても、傾斜面23に芯出部613が接触することで、パッキン部62に対し過度の負荷が加わることを防止できる。これにより、パッキン部62の損傷や変形を効果的に抑えることができ、良好な止水性をより長期間に亘って確保することができる。
【0058】
また、傾斜面23に芯出部613が接触することによって、傾斜面23の奥にパッキン部62が過度に入り込むことを抑制できる。これにより、パッキン部62の過度の入り込みに伴い、栓蓋6の上下動ひいては排水口102の開閉状態の切換えに支障が生じることをより確実に防止でき、開閉状態の円滑な切換えを担保することができる。
【0059】
併せて、傾斜面23に対し芯出部613の外周部全周が接触した状態においては、栓蓋本体部61によって、浴槽100の貯水空間と排水用空間SKとが非連通状態となる。従って、芯出部613に補助的な止水(シール)機能を持たせることができ、万が一、止水を主に担うパッキン部62において多少の破損などが生じたとしても、良好な止水性をより確実に維持することができる。
【0060】
さらに、パッキン部62や芯出部613が接触する傾斜面23は、排水口部材2の内面に形成されている。従って、浴槽100に「傾斜面」を形成する場合と比べて、傾斜面23をより高精度で形成することができる。その結果、傾斜面23にパッキン部62が接触することによる止水機能、及び、傾斜面23に芯出部613が接触することによる栓蓋6の芯出し機能のそれぞれをより効果的に発揮させることができる。
【0061】
加えて、傾斜面23に芯出部613が接触したときに、本体上側部611の外周部であって栓蓋6の移動方向に沿って浴槽100(底面部101)と直接対向する部位は、浴槽100(底面部101)と接触しないようになっている。従って、本体上側部611との接触に伴い浴槽100(底面部101)に傷がつくことを防止でき、外観品質の低下防止などを図ることができる。
【0062】
一方、本体上側部611の外周部は芯出部613の外周部よりも外側に張り出した形状をなしており、傾斜面23に芯出部613が接触した状態においては、本体上側部611の外周部が浴槽100(底面部101)に近接した状態となる。そのため、本体上側部611によって、排水口部材2における芯出部613との接触部分、つまり、排水口部材2における汚れ等が比較的付着しやすい部分を覆い隠すことができる。これにより、外観品質の向上を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、仮想面VS1に対する傾斜面23の傾斜角度αが30°以上60°以下とされている。従って、傾斜面23に対しパッキン部62が接触することによる止水機能、傾斜面23に芯出部613が接触することによる栓蓋6の芯出し機能、及び、傾斜面23の奥に対するパッキン部62の過度の入り込み防止機能をそれぞれバランスよく発揮させることができる。尚、上記各機能を一層バランスよく発揮させるという点では、傾斜角度αを40°以上60°以下とすることがより好ましい。
【0064】
加えて、本実施形態では、芯出部613の外周に設けられたテーパ面613aの傾斜角度βが傾斜角度αと同一とされている。従って、傾斜面23に対し芯出部613を面接触させることができ、芯出部613との接触に伴い傾斜面23に傷がつくことをより確実に防止できる。その結果、外観品質の低下防止をより効果的に図ることができるとともに、傾斜面23を利用した栓蓋6の芯出し機能をより確実に発揮させることができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態において、パッキン部62及び芯出部613と接触する傾斜面23は、排水口部材2に設けられているが、傾斜面を浴槽100(底面部101)に設け、当該傾斜面に対しパッキン部62や芯出部613が接触するように構成してもよい。
【0067】
(b)上記実施形態では、本体上側部611及び芯出部613が分離した状態となっているが、本体上側部611及び芯出部613を非分離状態とした構成であってもよい。
【0068】
(c)上記実施形態において、芯出部613は鍔状(円板状)をなしているが、芯出部613の形状を適宜変更してもよい。例えば、芯出部を、ガイド部612の外面(外周面)から放射状に延びる複数の棒状部分によって構成してもよい。
【0069】
(d)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面ボウルやキッチンの流し台などの浴槽以外の槽体に対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【0070】
(e)上記実施形態において、傾斜面23は平面視円形状(円環状)をなしているが、傾斜面が平面視円形状以外の形状(例えば、平面視矩形状や平面視楕円形状など)をなしていてもよい。尚、この場合、栓蓋6(パッキン部62や芯出部613など)の形状については、傾斜面の形状に合わせて適宜変更すればよい。
【符号の説明】
【0071】
1…排水栓装置、2…排水口部材、6…栓蓋、23…傾斜面、61…栓蓋本体部、62…パッキン部、100…浴槽(槽体)、611…本体上側部、613…芯出部、CL…(パッキン部の)中心軸、SK…排水用空間、VS1…仮想面。
図1
図2
図3