(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070927
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】リンクアップ制御方法、局側装置およびOLT
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240517BHJP
G06F 8/656 20180101ALI20240517BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L12/44 Z
G06F8/656
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181556
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健治郎
【テーマコード(参考)】
5B376
5K033
【Fターム(参考)】
5B376CA23
5B376CA76
5B376FA11
5K033AA09
5K033CB01
5K033DA01
5K033DA16
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】OLTのファームウェアの更新中にリンクアップ処理を実行可能にする。
【解決手段】複数のOLTを有する局側装置によって宅側装置のリンクアップを制御するリンクアップ制御方法であって、複数のOLTのうちの第1のOLTを、複数のOLTのうち第1のOLTと通信可能であり、かつファームウェアの更新予定がある第2のOLTによる、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定するステップと、第2のOLTのリンクアップ処理を代替可能なように、第1のOLTを設定するステップと、第2のOLTがファームウェアを更新するステップと、ファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行の主体を、第1のOLTから前記第2のOLTへと戻すステップとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のOLTを有する局側装置によって宅側装置のリンクアップを制御するリンクアップ制御方法であって、
前記複数のOLTのうちの第1のOLTを、前記複数のOLTのうち前記第1のOLTと通信可能であり、かつファームウェアの更新予定がある第2のOLTによる、前記第2のOLTの配下の宅側装置の前記リンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定するステップと、
前記第2のOLTの前記リンクアップ処理を代替可能なように、前記第1のOLTを設定するステップと、
前記第2のOLTがファームウェアを更新するステップと、
前記ファームウェアの更新後に、前記リンクアップ処理の実行の主体を、前記第1のOLTから前記第2のOLTへと戻すステップとを備える、リンクアップ制御方法。
【請求項2】
前記第1のOLTが前記第2のOLTの前記リンクアップ処理の前記代替先である間、前記リンクアップ処理の対象となる宅側装置が、前記第1のOLTおよび前記第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを前記第1のOLTによって判定するステップをさらに備える、請求項1に記載のリンクアップ制御方法。
【請求項3】
前記第1のOLTを設定するステップは、
前記リンクアップ処理の対象となる前記宅側装置から前記第2のOLTに送られるリンクアップ通知を前記第1のOLTに転送するように通知経路を設定するステップを含み、
前記判定するステップは、前記第1のOLTが、前記第2のOLTから前記リンクアップ通知を受信した場合に、前記リンクアップ通知に含まれる情報に基づいて、前記リンクアップ処理の対象となる前記宅側装置が、前記第2のOLTの配下にある宅側装置であると判定するステップを含む、請求項2に記載のリンクアップ制御方法。
【請求項4】
局側装置であって、
複数のOLTを備え、前記複数のOLTは、
第1のOLTと、
前記第1のOLTと通信可能に接続された第2のOLTとを含み、前記第2のOLTはファームウェアを有し、
前記第2のOLTに前記ファームウェアの更新予定がある場合に、前記第1のOLTが、前記第2のOLTによる、前記第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定され、
前記第1のOLTは、前記第2のOLTによる前記リンクアップ処理のための設定を前記第2のOLTから引き継ぐことによって前記リンクアップ処理を代替可能であり、
前記第2のOLTが前記ファームウェアを更新すると、前記リンクアップ処理の実行の主体が、前記第1のOLTから前記第2のOLTへと戻される、局側装置。
【請求項5】
前記第1のOLTおよび前記第2のOLTの各々は、
上位処理部と
前記上位処理部と通信可能であり、かつ、宅側装置との間の通信を担う下位処理部とを有し、
前記第1のOLTの前記下位処理部と、前記第2のOLTの前記下位処理部とが相互に通信可能に接続され、
前記第2のOLTの前記上位処理部が有する前記ファームウェアの前記更新予定がある場合に、前記第1のOLTの前記上位処理部は、前記第2のOLTによる前記リンクアップ処理のための設定を前記第2のOLTから受信することにより、前記リンクアップ処理を代替可能なように構成される、請求項4に記載の局側装置。
【請求項6】
前記第1のOLTが前記第2のOLTの前記リンクアップ処理の前記代替先である間に、前記第1のOLTの前記上位処理部が、前記第1のOLTの前記下位処理部からリンクアップ通知を受信した場合、前記第1のOLTの前記上位処理部は、前記リンクアップ通知に含まれる情報に基づいて、前記リンクアップ処理の対象となる宅側装置が、前記第1のOLTおよび前記第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを判定する、請求項5に記載の局側装置。
【請求項7】
前記第2のOLTの前記下位処理部は、前記第1のOLTが前記リンクアップ処理を代替可能なときに、前記第2のOLTの配下にある前記宅側装置の前記リンクアップのためのリンクアップ通知が、前記第1のOLTの前記上位処理部に転送されるように、前記リンクアップ通知の転送経路を設定する、請求項5または請求項6に記載の局側装置。
【請求項8】
OLTであって、
ファームウェアを有する上位処理部と、
前記上位処理部および他のOLTと通信可能であり、かつ、宅側装置との間の通信を担う下位処理部とを備え、
前記上位処理部の前記ファームウェアの更新予定がある場合、前記上位処理部は、宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理を、前記下位処理部を通じて前記他のOLTに代替させ、前記ファームウェアの更新後に、前記リンクアップ処理の実行主体を、前記他のOLTから前記上位処理部へと戻す、OLT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンクアップ制御方法、局側装置およびOLTに関する。
【背景技術】
【0002】
各家庭までのネットワークアクセスサービスを光ファイバによって提供するFTTH(Fiber To The Home)を実現する形態のひとつにPON(Passive Optical Network)がある。PONの特長は、宅側に設けられる光回線終端装置(ONU(Optical Network Unit))と局側に設けられる光回線終端装置(OLT(Optical Line Terminal))との間を結ぶ光ファイバの一部を共有して通信を行なうことにより、低コストで光アクセスサービスを提供できることである。
【0003】
FTTHを含めたネットワークシステムでは、新たな機能の追加および問題点の改善を行なう機能を求められることが多い。このような機能の実現方法としては、ネットワーク機器内のCPU(Central Processing Unit)によって実行されるファームウェアを更新する方法がある。この明細書では、「ファームウェア」とは、通信機器(OLT,ONUを問わない)の内部のCPUが実行するプログラムコードを含むものとする。
【0004】
OLTのファームウェアを更新する間、OLTの処理が停止する可能性がある。この問題の解決のため、たとえば特開2014-78784号公報(特許文献1)は、OLTを、上位処理部と下位処理部とによって構成することを提案する。この構成によれば、上位処理部のファームウェアが更新されている間、下位処理部によってOLTとONUとの間の通信を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2014-78784号公報によって提案された構成では、OLTの上位処理部のファームウェアが更新中の間、その上位処理部は、ONUのリンクアップのための処理を実行できない。しかしながら、特開2014-78784号公報は、このような課題について説明しておらず、したがって、その課題に対する解決策も示していない。
【0007】
本開示の目的は、OLTのファームウェアの更新中にリンクアップ処理を実行可能にするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のリンクアップ制御方法は、複数のOLTを有する局側装置によって宅側装置のリンクアップを制御するリンクアップ制御方法であって、複数のOLTのうちの第1のOLTを、複数のOLTのうち第1のOLTと通信可能であり、かつファームウェアの更新予定がある第2のOLTによる、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定するステップと、第2のOLTのリンクアップ処理を代替可能なように、第1のOLTを設定するステップと、第2のOLTがファームウェアを更新するステップと、ファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行の主体を、第1のOLTから前記第2のOLTへと戻すステップとを備える。
【0009】
本開示の局側装置は、複数のOLTを備え、複数のOLTは、第1のOLTと、第1のOLTと通信可能に接続された第2のOLTとを含み、第2のOLTはファームウェアを有し、第2のOLTにファームウェアの更新予定がある場合に、第1のOLTが、第2のOLTによる、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定され、第1のOLTは、第2のOLTによるリンクアップ処理のための設定を第2のOLTから引き継ぐことによってリンクアップ処理を代替可能であり、第2のOLTがファームウェアを更新すると、リンクアップ処理の実行の主体が、第1のOLTから第2のOLTへと戻される。
【0010】
本開示のOLTは、ファームウェアを有する上位処理部と、上位処理部および他のOLTと通信可能であり、かつ、宅側装置との間の通信を担う下位処理部とを備え、上位処理部のファームウェアの更新予定がある場合、上位処理部は、宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理を、下位処理部を通じて他のOLTに代替させ、ファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行主体を、他のOLTから上位処理部へと戻す。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、OLTのファームウェアの更新中にリンクアップ処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の1つの実施の形態に係るPONシステムの構成の概略を示した図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した上位処理部111の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、無瞬断ファームウェア更新中にリンクアップ処理を行う場合に生じうる課題を説明するためのシーケンス図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態による、無瞬断ファームウェア更新中のリンクアップ処理を模式的に説明するためのシーケンス図である。
【
図5】
図5は、通常時のリンクアップ処理の流れを説明するための図である。
【
図6】
図6は、ファームウェアの更新とリンクアップ処理とを両立させるリンクアップ制御方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態に係るリンクアップ処理の全体の流れを説明したシーケンス図である。
【
図8】
図8は、リンクアップ処理の例を説明したシーケンス図である。
【
図9】
図9は、通信設定部を経由して伝送される情報について説明するための図である。
【
図10】
図10は、通信処理部がONUとの間で遣り取りするフレームのフォーマットの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
(1) 本開示の一実施形態に係るリンクアップ制御方法は、複数のOLTを有する局側装置によって宅側装置のリンクアップを制御するリンクアップ制御方法であって、複数のOLTのうちの第1のOLTを、複数のOLTのうち第1のOLTと通信可能であり、かつファームウェアの更新予定がある第2のOLTによる、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定するステップと、第2のOLTのリンクアップ処理を代替可能なように、第1のOLTを設定するステップと、第2のOLTがファームウェアを更新するステップと、ファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行の主体を、第1のOLTから前記第2のOLTへと戻すステップとを備える。
【0015】
この構成によれば、第2のOLTがファームウェアを更新する間は、第1のOLTが、第2のOLTに替り、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップ処理を実行することができる。したがって、第2のOLTのファームウェアの更新中にリンクアップ処理を実行できる。なお、「第1」および「第2」との用語は、リンクアップ処理の代替先であるOLTと、ファームウェアの更新予定のあるOLTとに対して便宜上付される用語である。
【0016】
(2) 上記(1)のリンクアップ制御方法において、第1のOLTが第2のOLTのリンクアップ処理の代替先である間、リンクアップ処理の対象となる宅側装置が、第1のOLTおよび第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを第1のOLTによって判定するステップをさらに備える。
【0017】
上記の構成によれば、第1のOLTが第2のOLTのリンクアップ処理の代替先である間、第1のOLTは、第1のOLTの配下のONUのリンクアップと第2のOLTの配下のONUのリンクアップとの両方に対応する必要がある。リンクアップ処理の対象となるONUが、第1のOLTおよび第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを判定することにより、リンクアップを正常に実行することができる。
【0018】
(3) 上記(2)のリンクアップ制御方法において、第1のOLTを設定するステップは、リンクアップ処理の対象となる宅側装置から第2のOLTに送られるリンクアップ通知を第1のOLTに転送するように通知経路を設定するステップを含み、判定するステップは、第1のOLTが、第2のOLTからリンクアップ通知を受信した場合に、リンクアップ通知に含まれる情報に基づいて、リンクアップ処理の対象となる宅側装置が、第2のOLTの配下にある宅側装置であると判定するステップを含む。
【0019】
上記の構成によれば、第1のOLTは、リンクアップ処理の対象となるONUが、第1のOLTおよび第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを判定することができる。
【0020】
(4) 本開示の一実施形態に係る局側装置は、複数のOLTを備え、複数のOLTは、第1のOLTと、第1のOLTと通信可能に接続された第2のOLTとを含み、第2のOLTはファームウェアを有し、第2のOLTにファームウェアの更新予定がある場合に、第1のOLTが、第2のOLTによる、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定され、第1のOLTは、第2のOLTによるリンクアップ処理のための設定を第2のOLTから引き継ぐことによってリンクアップ処理を代替可能であり、第2のOLTがファームウェアを更新すると、リンクアップ処理の実行の主体が、第1のOLTから第2のOLTへと戻される。
【0021】
この構成によれば、第2のOLTがファームウェアを更新する間は、第1のOLTが、第2のOLTに替り、第2のOLTの配下の宅側装置のリンクアップ処理を実行することができる。
【0022】
(5) 上記(4)の局側装置において、第1のOLTおよび第2のOLTの各々は、上位処理部と、上位処理部と通信可能であり、かつ、宅側装置との間の通信を担う下位処理部とを有し、第1のOLTの下位処理部と、第2のOLTの下位処理部とが相互に通信可能に接続され、第2のOLTの上位処理部が有するファームウェアの更新予定がある場合に、第1のOLTの上位処理部は、第2のOLTによるリンクアップ処理のための設定を第2のOLTから受信することにより、リンクアップ処理を代替可能なように構成される。
【0023】
この構成によれば、第2のOLTの上位処理部のファームウェアが更新される場合、第1のOLTの上位処理部は、第2のOLTの下位処理部および第1のOLTの下位処理部を介して、第2のOLTによるリンクアップ処理のための設定を受信できる。これにより、第1のOLTの上位処理部は、第2のOLTの上位処理部に替り、第2のOLTの配下のONUのリンクアップのためのリンクアップ処理を実行できる。
【0024】
(6) 上記(5)の局側装置において、第1のOLTが第2のOLTのリンクアップ処理の代替先である間に、第1のOLTの上位処理部が、第1のOLTの下位処理部からリンクアップ通知を受信した場合、第1のOLTの上位処理部は、リンクアップ通知に含まれる情報に基づいて、リンクアップ処理の対象となる宅側装置が、第1のOLTおよび第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを判定する。
【0025】
上記の構成によれば、第1のOLTの上位処理部は、リンクアップ処理の対象となるONUが、第1のOLTおよび第2のOLTのうちのいずれの配下にある宅側装置であるかを判定する。これにより、リンクアップを正常に実行することができる。
【0026】
(7) 上記(5)または(6)の局側装置において、第2のOLTの下位処理部は、第1のOLTがリンクアップ処理を代替可能なときに、第2のOLTの配下にある宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ通知が、第1のOLTの上位処理部に転送されるように、リンクアップ通知の転送経路を設定する。
【0027】
この構成によれば、第2のOLTの下位処理部は、第2のOLTの配下のONUのリンクアップについての通知を、第2のOLTの上位処理部に替えて第1のOLTの上位処理部に転送する。これにより、第1のOLTの上位処理部は、第2のOLTの上位処理部に替り、第2のOLTの配下のONUのリンクアップのためのリンクアップ処理を実行できる。
【0028】
(8) 本開示の一実施形態に係るOLTは、ファームウェアを有する上位処理部と、上位処理部および他のOLTと通信可能であり、かつ、宅側装置との間の通信を担う下位処理部とを備え、上位処理部のファームウェアの更新予定がある場合、上位処理部は、宅側装置のリンクアップのためのリンクアップ処理を、下位処理部を通じて他のOLTに代替させ、ファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行主体を、他のOLTから上位処理部へと戻す。
【0029】
この構成によれば、ファームウェアを更新する間は、他のOLTに、自己の配下の宅側装置のリンクアップ処理を代替させることが可能なOLTを提供することができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0031】
本開示の実施の形態の説明において、「リンクアップ処理」とは、ONUとOLTとの間の論理的なリンクを確立するためにOLTが実行する処理を意味する。本開示の実施の形態において、「リンクアップ処理」とは、リンクアップに限らず、たとえば、認証処理、正常性確認等の処理を含んでもよい。
【0032】
図1は、本開示の1つの実施の形態に係るPONシステムの構成の概略を示した図である。
図1に示すように、PONシステム10は、局側装置100を備える。局側装置100は、たとえば通信事業者の中継局に設置される終端装置である。
図1には明示されていないが、局側装置100は、上位ネットワークに接続される。
【0033】
本開示の実施の形態では、局側装置100は、複数のOLTを含む。
図1に示すように、複数のOLTは、OLT101,102を含む。本開示の実施の形態では、OLTの形態は特に限定されない。たとえば本開示の実施の形態の1つによれば、OLT101,102は、小型汎用タイプのモジュールである。このような実施形態によれば、たとえば、OLT101,102の各々は、筐体に収容された回線ユニットの形態で実現されてもよい。あるいはOLT101,102の各々は、回線カードの形態で実現されてもよい。
【0034】
図示の都合上、
図1では、局側装置100に備えられたOLTの数を2としている。しかし、局側装置100は、複数のOLTを備えるよう構成されていればよい。したがって局側装置100は、3台以上のOLTを備えていてもよい。
【0035】
OLT101,102の各々は、光回線を介してONUに接続される。PONシステムでは、OLTからの1本の光回線が、光スプリッタによって、各々のONUに接続される複数の回線へと分岐される。
図1に示す構成では、OLT101は、光回線11を介してM台のONU(ONU211~21M)に接続され、OLT102は、光回線12を介してN台のONU(ONU221~22N)に接続される。ここで、M,Nは、1以上の任意の整数を表わす。M,Nは、異なる数であってもよく、同じ数であってもよい。ONU211~21Mの各々は、光回線11を介してOLT101に接続されているので「OLT101の配下のONU」と呼ぶことができる。同様に、ONU221~22Nの各々は、光回線12を介してOLT102に接続されているので「OLT102の配下のONU」と呼ぶことができる。
【0036】
OLT101とOLT102とは、互いに通信可能に接続される。これにより、OLT101とOLT102とは、制御信号を互いに送受信することができる。
【0037】
各々のOLTは、上位処理部および下位処理部を含む。上位処理部は、ファームウェアを有し、階層化された通信プロトコルの上位レイヤを司る。下位処理部は、上位処理部によって制御され、階層化された通信プロトコルの下位レイヤを司る。「階層化された通信プロトコル」とは、たとえばOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに従う通信プロトコルである。この場合において、「上位レイヤ」とは、たとえば、第4層(トランスポート層)およびそれより上の階層であり、「下位レイヤ」とは、たとえば、OSI参照モデルの第1層(物理層)、第2層(データリンク層)、第3層(ネットワーク層)までの階層である。なお、データリンク層のプロトコルには、MPCP(Multi-Point Control Protocol)およびOAM(Operations, Administration and Maintenance)プロトコルを含むが、これらに限定されない。
【0038】
下位処理部は、上位処理部と通信可能であり、かつ、ONUとの間の通信を担う。下位処理部は、上位処理部の一部あるいは全部の処理が一時的に停止した場合にも、ONUとの間の通信を継続できるように構成される。
【0039】
具体的には、OLT101は、上位処理部111および下位処理部112を含む。下位処理部112は、PONインターフェイス(I/F)部113と、通信処理部114と、上位インターフェイス(I/F)部115とを含む。
【0040】
PONインターフェイス部113は、光回線11(光ファイバ)と接続され、光回線11から受信した光信号(上り信号)を電気信号に変換する。一方、PONインターフェイス部113は、通信処理部114から入力された電気信号である下り信号を光信号に変換して光回線11にその光信号を送出する。
【0041】
通信処理部114は、上位処理部111と通信を行なう。上位処理部111および通信処理部114の間の通信に用いられるプロトコルは、たとえばTCP/IPである。通信処理部114は、OLT101の配下のONU、すなわちONU211~21NのいずれかのONUから送信された上り信号がデータ信号であると判別すると、当該データ信号をOLT101から上位ネットワーク(図示せず)へと送信するための各種の処理を実行する。一方、通信処理部114は、上位ネットワークからOLT101に送られた下り信号(データ信号)を、光回線11を通じてOLT101の配下のONUに送信するための各種の処理を実行する。
【0042】
さらに、通信処理部114は、OLT101に制御フレームが伝送された場合には、当該制御フレームを上位処理部111に転送する。また、OLT101からONUに制御フレームを伝送すべき場合、通信処理部114は、ONUに送出されるべき制御フレームを上位処理部111から受信して、当該制御フレームを光回線11へと送出するための処理を実行する。
【0043】
OLT102は、上位処理部121および下位処理部122を含む。下位処理部122は、PONインターフェイス(I/F)部123と、通信処理部124と、上位インターフェイス(I/F)部125とを含む。上位処理部121および下位処理部122の機能は、上述した上位処理部111の機能および下位処理部112の機能とそれぞれ同じである。また、下位処理部122におけるPONインターフェイス部123、通信処理部124、および上位インターフェイス部125の機能は、上述したPONインターフェイス部113、通信処理部114、および上位インターフェイス部115の機能とそれぞれ同じである。したがって、OLT102の上位処理部121および下位処理部122の各々の機能について、詳細な説明は以後繰り返さない。
【0044】
OLT101の下位処理部112と、OLT102の下位処理部122とは互いに通信可能に接続される。たとえば下位処理部112,122の各々の制御ポートが互いに接続される。これにより、OLT101とOLT102との間で制御信号を送受信可能である。
【0045】
図2は、
図1に示した上位処理部111の機能ブロック図である。なお、上位処理部121の機能ブロックは上位処理部111の機能ブロックと同様であるので、以下では、代表して上位処理部111の機能ブロックを説明する。
【0046】
図2に示すように、上位処理部111は、更新部131と、記憶部132と、制御部133とを含む。更新部131は、上位処理部111が有するファームウェアを、新しいファームウェアへと更新する。具体的には、更新部131は、OLT101の外部から新しいファームウェアを取得する。新しいファームウェアは、たとえばネットワークを通じてOLT101に提供される。更新部131は、新しいファームウェアを記憶部132に一旦格納する。次に、更新部131は、たとえばオペレータの指示に従って、記憶部132から新しいファームウェアを読み出すとともに、現在のファームウェアを、その新しいファームウェアに更新する。
【0047】
記憶部132は、上位処理部111が実行する処理に必要な各種の情報を記憶する。たとえば記憶部132は、OLT101の設定に関する情報を記憶する。
【0048】
制御部133は、記憶部132に記憶された情報、または下位処理部112から送られた情報に基づいて各種の処理を実行する。たとえば制御部133は、ONUのリンクアップのためのリンクアップ処理を実行する。ファームウェアが更新された場合、制御部133は、下位処理部112の機能の更新に関する設定を行なう。
【0049】
OLTに新たな機能を追加する、あるいはOLTの動作上の問題点を改修するなどの目的で、上位処理部のファームウェアを新しいファームウェアに更新することがある。ファームウェアを更新する間、上位処理部の全部または一部の機能は実行できない。OLTを上位処理部と下位処理部とで構成することにより、上位処理部のファームウェアの更新期間中にも下位処理部がONUとの間の通信を継続することができる。これによって、ファームウェアの更新に起因するデータ通信の停止を防ぐことができる。下位処理部による通信を維持可能にしながら上位処理部のファームウェアを更新することを、以下では「無瞬断ファームウェア更新」と呼ぶ。
【0050】
図3は、無瞬断ファームウェア更新中にリンクアップ処理を行う場合に生じうる課題を説明するためのシーケンス図である。
図3に示すように、OLTが起動されると、上位処理部の初期化が実行される(ステップS1)。次に上位処理部は、下位処理部に対して通信の設定を行う(ステップS2)。これにより、下位処理部は、上位処理部およびOLTの配下のONUと通信可能な状態となる。
【0051】
続いて、上位処理部のファームウェア(
図2では「FW」と表記する)が更新される(ステップS3)。一方、ONUのリンクアップの必要が生じたとする。しかし、上位処理部がファームウェアを更新する間は、上位処理部はリンクアップ処理を実行することができない。
【0052】
ファームウェアの更新後に、上位処理部が再起動される(ステップS4)。上位処理部の再起動の間も、上位処理部はリンクアップ処理を実行することができない。再起動の後で上位処理部が初期化されることより上位処理部の機能が更新される(ステップS5)。再起動後に上位処理部はリンクアップ処理を実行することができる。
【0053】
このように、ファームウェアの更新予定があるOLTにおいては、少なくともファームウェアの更新開始から再起動終了までの間、リンクアップ処理を実行できない可能性がある。本開示の実施の形態は、このような課題を解決する。
【0054】
図4は、本開示の実施の形態による、無瞬断ファームウェア更新中のリンクアップ処理を模式的に説明するためのシーケンス図である。
図3に示す「上位処理部1」は、OLT101,102の各々の上位処理部(上位処理部111,121)の一方であり、「上位処理部2」は、上位処理部111、121の他方である。たとえば「上位処理部1」を、上位処理部111とし、「上位処理部2」を上位処理部121とする。この場合、
図3に示す「下位処理部1」は、OLT101の下位処理部112である。
【0055】
図3に示すシーケンスと同様に、まず、OLT101,102が起動されて、上位処理部111,121の初期化が実行される(ステップS1,S1A)。次に上位処理部111,121は、それぞれに対応する下位処理部に対して通信の設定を行う(ステップS2,S2A)。
【0056】
上位処理部111においてファームウェアが更新される間(ステップS3)、および、ファームウェアの更新後の上位処理部111の再起動の間(ステップS4)、上位処理部111は、OLT101の配下のONUのリンクアップのための処理を実行することができない。しかし、この場合、上位処理部121が、上位処理部111によるリンクアップ処理を代替して実行する。これにより、OLT101の配下のONUのリンクアップが可能となる。
【0057】
また、上位処理部111の初期化後に、上位処理部111は下位処理部112を通じてリンクアップ処理を実行することができる(ステップS5)。
【0058】
このように、本実施の形態では、基本的にはそれぞれ独立したOLTとして動作する2つのOLTが、ファームウェア更新時に、各々の上位処理部を連携させる。一方の上位処理部のファームウェアが更新中の場合、その上位処理部によるリンクアップ処理を、他方の上位処理部が代替して実行する。これにより、無瞬断ファームウェア更新を実行できるだけでなく、ファームウェアの更新中にもリンクアップ処理を実行することができる。
【0059】
続いて、OLTによるリンクアップ処理について詳細に説明する。
図5は、通常時のリンクアップ処理の流れを説明するための図である。「通常時」とは、ファームウェアの更新が無い場合に相当する。リンクアップイベントは、たとえば、ONUの光回線への初回接続時、あるいは、ONUが再起動された場合に発生する。
【0060】
OLT101の配下のONUのリンクアップイベントが発生したとする。この場合、当該ONUは、リンクアップ信号を光回線11を介してOLT101に送信する。リンクアップ信号は、下位処理部112によって受信される。
【0061】
下位処理部112では、通信処理部114が、PONインターフェイス部113を介して、リンクアップ信号を受信して、上位処理部111に、リンクアップ通知を転送する。上位処理部111は、下位処理部112からのリンクアップ通知を受信すると、設定情報134を参照して、ONUのリンクアップのためのリンクアップ処理を実行する。
【0062】
設定情報134は、OLT101の内部(たとえば
図2に示す記憶部132)に記憶される。設定情報134は、OLT101と、その配下のONUとの間の通信設定に関する情報を含むことができる。
【0063】
同様に、OLT102の配下のONUのリンクアップイベントが発生した場合、当該ONUは、リンクアップ信号を光回線12に送信する。この場合、リンクアップ信号は、OLT102の下位処理部122によって受信される。通信処理部124は、リンクアップ信号を受信すると、上位処理部121に、リンクアップ通知を送信する。上位処理部121は、リンクアップ通知を受信すると、設定情報144を参照して、リンクアップ処理を実行する。
【0064】
図6は、ファームウェアの更新とリンクアップ処理とを両立させるリンクアップ制御方法を説明するための図である。
図6に示した例では、OLT102の上位処理部121のファームウェアが更新される。この場合、OLT101がOLT102によるリンクアップ処理の代替先に決定される。さらに、OLT102のリンクアップ処理を代替可能なように、OLT101が設定される。
【0065】
具体的には、上位処理部121は、ファームウェアの更新予定がある場合、OLT102の設定情報144をOLT101にコピーする。OLT101の内部に記憶される設定情報144Aは、設定情報144のコピーであり、OLT101とOLT102との間のリンクを経由して、OLT101に転送される。
【0066】
さらに上位処理部121は、通信処理部124に制御信号を送り、通信処理部124の設定を変更する。同様に、上位処理部121は、通信処理部124を介して通信処理部114に制御信号を送信する。これにより、通信処理部124がOLT101の配下のONUからリンクアップ信号を受信すると、通信処理部124は、リンクアップ通知を通信処理部114に転送する。通信処理部114は、そのリンクアップ通知を上位処理部111に転送する。上位処理部111は、リンクアップ通知を受信すると、通信処理部124の設定のための制御信号を通信処理部114を介して通信処理部124に転送する。たとえば上位処理部111,121は各々の制御ポート(
図6において「Port1」と表記)を介して通信処理部との間で制御信号を送受信し、通信処理部114,124は各々の通信ポート(
図6において「Port2」と表記)を介して制御信号を互いに送受信する。
【0067】
OLT102からファームウェアの更新終了通知を受け取った場合、上位処理部111は、OLT102が管理するONUの状態に関する最新の情報を、OLT102に転送する。さらに、上位処理部111は、OLT102の配下のONUからのリンクアップ信号がOLT101に転送されないように、通信処理部124の設定を変更する。これにより、OLT102のファームウェアの更新後に、リンクアップ処理の実行の主体が、OLT101からOLT102へと戻される。
【0068】
図6に示した制御方法によれば、OLT101を、OLT101と通信可能であり、かつファームウェアの更新予定があるOLT102による、OLT102の配下のONUのリンクアップのためのリンクアップ処理の代替先に決定する。そして、OLT102のリンクアップ処理を代替可能なように、OLT101を設定する。OLT102がファームウェアを更新すると、その更新後に、リンクアップ処理の実行の主体が、OLT101からOLT102へと戻される。これにより、OLT102のファームウェア更新と、リンクアップ処理とを両立させることができる。
【0069】
ファームウェアの更新と、ONUのリンクアップとは、互いに独立した事象である。OLTのファームウェアの更新は確実に予定されているものの、ファームウェアの更新開始時点ではリンクアップ処理の必要が生じるかどうかは不明であることが起こりえる。本実施の形態では、このような場合であっても、他方のOLTを、リンクアップ処理の代替先に決定することにより、ファームウェアの更新中のリンクアップ処理に対応することができる。すなわち本実施の形態では、一方のOLTにファームウェアの更新予定がある場合に、他方のOLTがリンクアップ処理を代替可能なように設定されていればよく、必ずしも、ファームウェアの更新中にリンクアップ処理との両方が実行される必要はない。
【0070】
図7は、本実施の形態に係るリンクアップ処理の全体の流れを説明したシーケンス図である。
図7では、
図6と同様に、OLT102のファームウェアが更新され、かつ、OLT101がOLT102のリンクアップ処理を代替する場合の処理の流れが示される。
【0071】
まず、上位処理部121のファームウェア(FW)の更新が開始される(ステップS11)。上位処理部121は、自身の設定情報144を参照する(ステップS12)。上位処理部121は、設定情報144を上位処理部111へとコピーする(ステップS13)。これにより、設定情報144のコピーである設定情報144Aが、通信処理部124および通信処理部114を介して上位処理部111へと転送される。
【0072】
このように上位処理部111は、OLT102によるリンクアップ処理のための設定をOLT102から受信することにより、OLT102のリンクアップ処理を代替可能なように構成される。
【0073】
次に、上位処理部121は、通信処理部124および通信処理部114に対してリンクアップ通知経路の変更を行う(ステップS14,S15)。これにより、通信処理部124からのリンクアップ通知が通信処理部114に転送されるように経路が変更される。
【0074】
OLT102の配下のONUがリンクアップ信号を送信する(ステップS16)。通信処理部124は、そのONUからリンクアップ信号を受信すると、リンクアップ信号に基づいてリンクアップ通知を生成する。通信処理部124は、そのリンクアップ通知を通信処理部114に送信する。リンクアップ通知は、通信処理部114から上位処理部111に転送される(ステップS17)。これにより、上位処理部111は、上位処理部121に替り、OLT102の配下のONUのリンクアップのためのリンクアップ処理を実行できる。
【0075】
リンクアップ通知は、リンクアップ対象のONUを識別する情報、リンクアップ信号の送信先であるOLTを識別する情報を含む。下記の項目に限定されないが、リンクアップ通知は、たとえばOLTのMAC(Media Access Control)アドレス(OLTMAC)、ポート番号(Port No)、ONUのMACアドレス、および、メッセージ種別を含んでもよい(
図10を参照)。リンクアップ通知に含まれる情報の例を以下に示す。
【0076】
OLTMAC=AA:BB:CC:DD:EE:FF
Port No=1
ONUMAC=00:11:22:33:44:55
メッセージ種別:リンクアップ
上記の情報のうち、「Port No=1」は、
図6に示した上位処理部の制御ポート「Port1」の指定を意味する。
【0077】
OLT101がOLT102のリンクアップ処理の代替先である間、上位処理部111は、OLT101の配下のONUのリンクアップに加えて、OLT102の配下のONUのリンクアップのための処理も担う。したがって、上位処理部111は、通信処理部114から転送されたリンクアップ通知に基づいて、リンクアップ処理の対象となるONUが、OLT101およびOLT102のうちのいずれの配下にあるONUを判定する。
【0078】
上位処理部111は、通信処理部124から受信したリンクアップ通知のOLTMACを参照する。OLTMACは、OLTを識別するための識別子に相当する。上位処理部111は、リンクアップ通知に含まれるOLTMACに基づいて、通信処理部114から受信したリンクアップ通知が、OLT101宛の通知であるか、OLT102宛の通知であるかを判定することができる。
【0079】
図7に示した例では、上位処理部111は、OLT102宛のリンクアップ通知を受信する。この場合、上位処理部111は、設定情報144Aを参照して、OLT102の配下のONUのリンクアップのための情報を取得する。上位処理部111は、その情報に従って、通信処理部124およびONUの通信設定を行う(ステップS19,S20)。これにより、通信処理部124およびリンクアップ信号を送信したONUは、上位処理部111による通信設定の可能な状態になる。したがって上位処理部111によってONUのリンクアップ処理が実行される。
【0080】
上位処理部121におけるファームウェアの更新が終了する(ステップS21)。上位処理部121は、通信処理部124および通信処理部114に対して制御信号を送信して、リンクアップ通知経路の変更を行う(ステップS21,S22)。この場合、通信処理部124からのリンクアップ通知が、通信処理部124から上位処理部121に転送されるように、リンクアップ通知の経路が戻される。これにより、OLT102の配下のONUのリンクアップのための処理の実行主体がOLT101からOLT102へと戻される。
【0081】
続いて上位処理部121は、上位処理部111に対して、設定情報144Aの削除を要求する(ステップS23)。要求に応じて、上位処理部111は、設定情報144Aを削除する(ステップS24)。これにより、一連の処理が終了する。
【0082】
なお、OLT102がOLT101のリンクアップ処理を代替する場合も、同様の処理が行われる。OLT102がOLT101のリンクアップ処理を代替する場合は、以下の説明において、「OLT101」(上位処理部111、通信処理部114)と「OLT102」(上位処理部121、通信処理部124)とを入れ替えればよい。
【0083】
本実施の形態において、リンクアップ処理は特定の処理に限定されるものではない。
図8は、リンクアップ処理の例を説明したシーケンス図である。なお、本実施の形態を限定するものではないが、
図8では、例として、IEEE802.3av,ahに従うリンクアップ処理が示されている。また、
図8のシーケンス図は、各OLTの上位処理部(111,121)が、そのOLTの配下のONUのリンクアップ処理を実行する場合、2つのOLTの一方が他方のリンクアップ処理を代替する場合の両方を区別することなく示している。
【0084】
まず、下位処理部(112,122)とONUとの間の通信を制御するMPCP(Multi-point Control Protocol)でのリンクアップが実施される(ステップS31)。OLTは、MPCPに従って新たなONUとのリンクを確立する。さらに、下位処理部とONUとの間でOAM(Operation Administration and Maintenance)でのリンクアップが実施される(ステップS32)。
【0085】
続いて下位処理部は上位処理部に対してリンクアップ通知を送信する(ステップS33)。リンクアップ通知の内容の例を以下に示す。
【0086】
OLTMAC=AA:BB:CC:DD:EE:FF
Port No=1
ONUMAC=00:11:22:33:44:55
メッセージ種別:リンクアップ
上位処理部は、リンクアップ通知を受信すると、設定情報(134,144または144A)を参照する(ステップS34)。設定情報144は、たとえばONUのMACアドレス(ONU MAC)、ONU所属ポート、ONU番号、所属VLAN、UNI(User Network Interface)ポート数を含む。ただし設定情報144に含まれる情報はこれらに限定されない。
【0087】
上位処理部121は、設定情報に従って、下位処理部122に対する設定を行う(ステップS35)。OLTの通信設定が完了すると、下位処理部は通信可能状態となる。
【0088】
続いて上位処理部は、ONUの通信設定を行う(ステップS36)。ONUの通信設定が完了すると、ONUは通信可能状態となる。ONUの通信設定において、OLTとONUとの間では、プロプライエタリなメッセージが遣り取りされる。下位処理部でのメッセージ変換により、ONUとOLTとの間は、たとえばIEEE802.3av, ahに準拠したOAMに従ってメッセージが交換される。ONUの通信設定で遣り取りされるメッセージの例を以下に示す。
【0089】
(1)変換前メッセージ:
OLTMAC=AA:BB:CC:DD:EE:FF
Port No=1
ONUMAC=00:11:22:33:44:55
メッセージ種別:ONU通信設定
小分類:ONUのキュー設定
(2) 変換後メッセージ(IEEE 802.3av, ah準拠OAM)
Dest MAC=01:80:c2:00:00:02
Src MAC=AA:BB:CC:DD:EE:FF (すなわちOLT MAC)
ethType = OAM
Type = 0xFE (vendor specific)
OUI = 0xXXXXXX
メッセージ種別:ONU通信設定
小分類:ONUの経路設定
図9は、通信設定部を経由して伝送される情報について説明するための図である。
図9を参照して、ONUから送信されたリンクアップ信号がPONインターフェイス部123に入力される。上位処理部121においてファームウェアが更新中でない場合(すなわち通常時)、通信処理部124は、リンクアップ通知を上位処理部121に送信する。この場合、通信処理部124は、受信したメッセージに含まれるLLID(Logical Link ID)から、メッセージを送信したONUを特定して、上位処理部121に通知するだけでよい。なお、通信処理部124がリンク処理の必要が生じたことを、バスを介して上位処理部121に通知するだけでもよい。
【0090】
一方、上位処理部121においてファームウェアが更新中の場合には、通信処理部124は、リンクアップ通知をOLT101(
図9に示さず)に転送する。この場合、通信処理部124は、リンクアップ通知を、フレームに格納し、そのフレームをOLT101に転送するのでもよい。リンクアップ通知を格納するフレームは、たとえばレイヤ2(L2)通信またはレイヤ3(L3)通信で用いられるフレームであることが好ましい。
【0091】
通信処理部124は、通信処理部124に届いたメッセージがOLT通信設定用のメッセージであるか、またはONU通信設定用のメッセージであるかを、メッセージ種別に基づいて判別できる。通信処理部124に届いたメッセージがOLT通信設定用メッセージの場合は、通信処理部124で、そのメッセージに基づいて処理を行う。通信処理部124に届いたメッセージがONU通信設定用のメッセージの場合は、ONU宛に専用のフレームフォーマットを使って通信設定を行う。この場合、通信処理部124は、上位処理部121が送った制御信号をONUあての専用フレームフォーマットに変換する役割を担う。
【0092】
図10は、通信処理部がONUとの間で遣り取りするフレームのフォーマットの例を示した図である。
図10に示すように、フレームは、宛先アドレス(DA)フィールド、送信元アドレス(SA)フィールド、VLAN(Virtual LAN)フィールド、タイプ(Type)フィールド、データ(Data)フィールド、およびFCS(Frame Check Sequence)フィールドを含む。なお、
図10では、プリアンブルは示していない。
【0093】
宛先アドレスフィールドおよび送信元アドレスフィールドには、それぞれ、宛先となるノードのMACアドレスおよび送信元のMACアドレスが格納される。
【0094】
VLANフィールドは、VLANタグ用のタグヘッダを指定するためのフィールドである。たとえばOLT102が送信元の場合、VLAN IDが10に指定され、ポート番号1(Port1)のONUの場合は、VLAN IDが1001に指定される。この場合、OLT101側では、VLANと送信元とを対応付ける対応表を有する。
【0095】
タイプフィールドには、vendor specificを示すコード0xFEが格納される。データフィールドには、メッセージ種別、ONUを特定するための情報(LLID、MACアドレス、リンク管理情報)、ONUの状態等の各種の情報が格納される。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
10 PONシステム
11,12 光回線
100 局側装置
101,102 OLT
111,121 上位処理部
112,122 下位処理部
113,123 PONインターフェイス部
114,124 通信処理部
115,125 上位インターフェイス部
131 更新部
132 記憶部
133 制御部
134,144,144A 設定情報
211~21M、221~22N ONU
S1~S5,S1A,S2A,S11~S24,S31~S36 ステップ