IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソエジマの特許一覧

<>
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図1
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図2
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図3
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図4
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図5
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図6
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図7
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図8
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図9
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図10
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図11
  • 特開-搬送設備および搬送車両 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070939
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】搬送設備および搬送車両
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/04 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B65G59/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181580
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】521111836
【氏名又は名称】株式会社ソエジマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】副島 良廣
【テーマコード(参考)】
3F030
【Fターム(参考)】
3F030AA06
3F030AB02
3F030BA02
3F030FA01
(57)【要約】
【課題】搬送も含めた長尺な鋼材の加工作業を無人化することによって作業者の作業負担を軽減でき人身事故のリスクも低減できる搬送設備およびかかる搬送設備において使用される搬送車両を提供する。
【解決手段】H形鋼Hを加工する自動加工機Mに対してH形鋼Hを搬送する搬送設備1であって、供給部10と、搬送装置20と、を備えており、供給部10は、H形鋼Hの搬送方向において、所定の間隔を空けて設けられた一対の供給コンベア11,12を有しており、搬送装置20は、一対の供給コンベア11,12間の空間を含む、一対の供給コンベア11,12によるH形鋼Hの搬送方向と直交する移動通路MPを移動する移動体30と、移動体30に設けられた、H形鋼Hをその軸方向が一対の供給コンベア11,12によるH形鋼Hの搬送方向と平行となるように保持する保持部35と、保持部35を上下に昇降する昇降機構40と、移動体30の移動および保持部35の作動を制御する制御部50と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な鋼材を加工する加工装置に対して長尺な鋼材を搬送する搬送設備であって、
長尺な鋼材をその軸方向に沿って前記加工装置に搬送する供給部と、
長尺な鋼材を前記供給部に供給する搬送装置と、を備えており、
前記供給部は、
長尺な鋼材の搬送方向において、所定の間隔を空けて設けられた一対の供給コンベアを有しており、
前記搬送装置は、
前記一対の供給コンベア間の空間を含む、該一対の供給コンベアによる長尺な鋼材の搬送方向と直交する移動通路を移動する移動体と、
該移動体に設けられた、長尺な鋼材をその軸方向が前記一対の供給コンベアによる長尺な鋼材の搬送方向と平行となるように保持する保持部と、
該保持部を上下に昇降する昇降機構と、
前記移動体の移動および前記保持部の作動を制御する制御部と、を有している
ことを特徴とする搬送設備。
【請求項2】
複数の長尺な鋼材がその軸方向と前記供給部による長尺な鋼材の搬送方向とが平行となるように積層された状態で搬入される搬入部を備えており、
前記搬入部は、
前記移動通路が該搬入部を通過するように設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の搬送設備。
【請求項3】
積層された長尺な鋼材は、
長尺な鋼材の軸方向の中間位置を前記移動体におけるその移動方向と平行な中心線が通過するように前記搬入部に配置されている
ことを特徴とする請求項2記載の搬送設備。
【請求項4】
前記移動体および/または前記保持部には、
前記移動体の走行方向における前記移動体および/または前記保持部と長尺な鋼材との距離を検出する鋼材検出部が設けられており、
前記制御部は、
前記鋼材検出部の検出した前記距離に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の搬送設備。
【請求項5】
前記保持部が、
長尺な鋼材の上端縁を検出する上端検出部を備えており、
前記制御部は、
前記保持部と長尺な鋼材の上端縁との相対的な位置に基づいて、前記保持部および前記昇降機構の作動を制御する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の搬送設備。
【請求項6】
前記保持部が、
長尺な鋼材を保持する保持機構と、
前記移動体の中心線と直交する方向における長尺な鋼材の軸方向の中間位置と前記移動体の中心線とのズレを検出する中心位置検出部を備えており、
前記保持機構は、
長尺な鋼材を保持する保持装置と、
該保持装置を前記移動体の中心線と直交する方向に移動させる位置調整機構と、を有しており、
前記制御部は、
前記中心位置検出部の検出結果に基づいて、前記移動体の中心線が長尺な鋼材の軸方向の中間位置を通過する状態で前記保持装置によって長尺な鋼材が保持されるように前記位置調整機構を作動させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の搬送設備。
【請求項7】
前記保持部が、
前記移動体の中心線に対して対称に設けられた一対の電磁石を備えている
ことを特徴とする請求項6記載の搬送設備。
【請求項8】
前記移動通路において前記移動体が走行する床には前記移動通路の走行方向に沿って案内部材が設けられており、
前記移動体および/または前記保持部には、
前記案内部材を検出する移動検出部が設けられており、
前記制御部は、
前記移動検出部が検出した前記案内部材の位置に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の搬送設備。
【請求項9】
長尺な鋼材を搬送する搬送車両であって、
床面を走行する移動体と、
該移動体に設けられ、長尺な鋼材をその軸方向が前記移動体の移動方向と直交するように保持する保持部と、
該保持部を上下に昇降する昇降機構と、
前記移動体の移動および前記保持部の作動を制御する制御部と、を備えており、
前記移動体および/または前記保持部には、
前記移動体の走行方向における前記移動体および/または前記保持部と長尺な鋼材との距離を検出する鋼材検出部が設けられており、
前記制御部は、
前記鋼材検出部の検出した前記距離に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有している
ことを特徴とする請求項9記載の搬送車両。
【請求項10】
前記保持部が、
長尺な鋼材の上端縁を検出する上端検出部を備えており、
前記制御部は、
前記保持部と長尺な鋼材の上端縁との相対的な位置に基づいて、前記保持部および前記昇降機構の作動を制御する機能を有している
ことを特徴とする請求項9記載の搬送車両。
【請求項11】
前記保持部が、
長尺な鋼材を保持する保持機構と、
前記移動体の中心線と直交する方向における長尺な鋼材の軸方向の中間位置と前記移動体の中心線とのズレを検出する中心位置検出部を備えており、
前記保持機構は、
長尺な鋼材を保持する保持装置と、
該保持装置を前記移動体の中心線と直交する方向に移動させる位置調整機構と、を有しており、
前記制御部は、
前記中心位置検出部の検出結果に基づいて、前記移動体の中心線が長尺な鋼材の軸方向の中間位置を通過する状態で前記保持装置によって長尺な鋼材が保持されるように前記位置調整機構を作動させる機能を有している
ことを特徴とする請求項9または10記載の搬送車両。
【請求項12】
前記保持部が、
前記移動体の中心線に対して対称に設けられた一対の電磁石を備えている
ことを特徴とする請求項11記載の搬送車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送設備および搬送車両に関する。さらに詳しくは、H形鋼やI形鋼などの長尺な鋼材を無人で連続して搬送することができる搬送設備およびかかる搬送設備において使用される搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼やI形鋼などの長尺な鋼材(以下、長尺鋼材という)は種々の用途で使用される。例えば、岸壁や建築物等の梁や柱、基礎杭などの構造材として使用されたり、機械や船舶、車両などの構造材としても使用されたりする。
【0003】
このような長尺鋼材を建築物等の構造材として使用する場合には、自動加工装置による加工がおこなわれる。例えば、自動加工装置では、他の構造材との連結に使用される付属部材を長尺鋼材に取り付ける加工や、長尺鋼材に他の部材を取り付ける際に使用される穴などを形成する加工等が自動で実施される。
【0004】
自動加工装置には、搬送装置によって長尺鋼材LSが順次供給されている。例えば、図12に示すような搬送装置が設けられている。図12に示すように、搬送装置100には、軸方向の端部から軸方向に沿って長尺鋼材LSを自動加工装置Mに供給するローラコンベアなどのコンベア(以下供給コンベア101という場合がある)が設けられている。また、搬送装置100には、供給コンベア101に対して長尺鋼材LSを順次供給するローラコンベアなどのコンベア(以下補給コンベア102という場合がある)が設けられている。この補給コンベア102は、供給コンベア101による長尺鋼材LSの搬送方向と直交する方向に長尺鋼材LSを搬送するものである。具体的には、補給コンベア102は、供給コンベア101による搬送姿勢と同じ姿勢で搬送方向に沿って並んで載せられた複数の長尺鋼材LSを順次供給コンベア101に供給するものである。
【0005】
かかる搬送装置100を設ければ、長尺鋼材LSを順次自動加工装置Mに供給できるので、長尺鋼材LSの加工を自動化することができる。
【0006】
しかし、図12に示すような搬送装置100では、複数の長尺鋼材LSを連続して自動加工装置Mに供給するには、複数の長尺鋼材LSを並べておくために補給コンベア102にはある程度長さ(図12では左右方向の長さ)が必要になる。すると、搬送装置100を設置するために大きなスペースが必要になる。
【0007】
また、長尺鋼材LSが自動加工装置Mに供給されると(言い換えれば長尺鋼材LSが供給コンベア101に供給されると)、その分だけ、補給コンベア102に長尺鋼材LSを載せる(補給する)必要がある。長尺鋼材LSを補給コンベア102に載せる作業は天井クレーンやクレーン車を利用して実施されるが、天井クレーン等による移載作業は、長尺鋼材LSをワイヤロープで固定して釣り上げ、長尺鋼材LSを一本ずつ補給コンベアに載せることになる。すると、作業の都度作業者が補助をしながら天井クレーン等を操作する必要があり、作業効率が著しく悪く、作業者の危険度も高く、人身事故が発生する可能性がある。しかも、補給コンベア102に対して作業者が長尺鋼材LSを一本ずつ供給することになるので、搬送も含めた長尺鋼材LSの加工作業について作業者の作業負担を十分に軽減することは難しい。
【0008】
そこで、搬送も含めた長尺鋼材の加工作業について、作業者の搬送作業負担を軽減する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。この特許文献1、2には、上述した供給コンベアに相当するコンベアを有する設備であって、積み重ねた状態の長尺鋼材(以下では積層鋼材という場合がある)から長尺鋼材を1本ずつ供給コンベアに供給する技術が開示されており、積層鋼材から供給コンベアに長尺鋼材を供給する作業を自動化できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平02-123097号公報
【特許文献2】特開平08-198582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、特許文献1の技術では、積層鋼材の状態とするために、供給コンベアの近傍に長尺鋼材を積層する作業を行わなければならない。長尺鋼材の積層は作業者がクレーンを操作して実施しなければならないため、積層鋼材が形成できれば自動化できるものの、作業者の作業負担は軽減できない。しかも、供給コンベア近傍の狭い場所で積層作業を行うことが必要になるため、作業者の作業負担は逆に大きくなる可能性があるし、人身事故が発生する危険性も大きくなる可能性がある。
【0011】
一方、特許文献2の技術では、積層鋼材をチェーンコンベアによって供給コンベアの近傍まで搬送する構成を採用しているため、供給コンベア近傍での作業者の作業は軽減できる。しかし、特許文献2の技術では、積層鋼材の状態で積層鋼材を移動させる構成となっているため、積層鋼材が移動する際に転倒の恐れが生じる。チェーンコンベアに積層鋼材を供給する作業は作業者が実施することになるので、積層鋼材が転倒した場合、人身事故が発生する危険性が大きくなる。つまり、特許文献2の技術では、ある程度作業者の作業負担を軽減できるものの作業負担を軽減は十分ではなく、人身事故が発生する危険性が大きくなる可能性がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決すべく、搬送も含めた長尺な鋼材の加工作業を無人化することによって作業者の作業負担を軽減でき人身事故のリスクも低減できる搬送設備およびかかる搬送設備において使用される搬送車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
<搬送設備>
第1発明の搬送設備は、長尺な鋼材を加工する加工装置に対して長尺な鋼材を搬送する搬送設備であって、長尺な鋼材をその軸方向に沿って前記加工装置に搬送する供給部と、長尺な鋼材を前記供給部に供給する搬送装置と、を備えており、前記供給部は、長尺な鋼材の搬送方向において、所定の間隔を空けて設けられた一対の供給コンベアを有しており、前記搬送装置は、前記一対の供給コンベア間の空間を含む、該一対の供給コンベアによる長尺な鋼材の搬送方向と直交する移動通路を移動する移動体と、該移動体に設けられた、長尺な鋼材をその軸方向が前記一対の供給コンベアによる長尺な鋼材の搬送方向と平行となるように保持する保持部と、該保持部を上下に昇降する昇降機構と、前記移動体の移動および前記保持部の作動を制御する制御部と、を有していることを特徴とする。
第2発明の搬送設備は、第1発明において、複数の長尺な鋼材がその軸方向と前記供給部による長尺な鋼材の搬送方向とが平行となるように積層された状態で搬入される搬入部を備えており、前記搬入部は、前記移動通路が該搬入部を通過するように設けられていることを特徴とする。
第3発明の搬送設備は、第2発明において、積層された長尺な鋼材は、長尺な鋼材の軸方向の中間位置を前記移動体におけるその移動方向と平行な中心線が通過するように前記搬入部に配置されていることを特徴とする。
第4発明の搬送設備は、第1、第2または第3発明において、前記移動体および/または前記保持部には、前記移動体の走行方向における前記移動体および/または前記保持部と長尺な鋼材との距離を検出する鋼材検出部が設けられており、前記制御部は、前記鋼材検出部の検出した前記距離に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有していることを特徴とする。
第5発明の搬送設備は、第1、第2または第3発明において、前記保持部が、長尺な鋼材の上端縁を検出する上端検出部を備えており、前記制御部は、前記保持部と長尺な鋼材の上端縁との相対的な位置に基づいて、前記保持部および前記昇降機構の作動を制御する機能を有していることを特徴とする。
第6発明の搬送設備は、第1、第2または第3発明において、前記保持部が、長尺な鋼材を保持する保持機構と、前記移動体の中心線と直交する方向における長尺な鋼材の軸方向の中間位置と前記移動体の中心線とのズレを検出する中心位置検出部を備えており、前記保持機構は、長尺な鋼材を保持する保持装置と、該保持装置を前記移動体の中心線と直交する方向に移動させる位置調整機構と、を有しており、前記制御部は、前記中心位置検出部の検出結果に基づいて、前記移動体の中心線が長尺な鋼材の軸方向の中間位置を通過する状態で前記保持装置によって長尺な鋼材が保持されるように前記位置調整機構を作動させる機能を有していることを特徴とする。
第7発明の搬送設備は、第6発明において、前記保持部が、前記移動体の中心線に対して対称に設けられた一対の電磁石を備えていることを特徴とする。
第8発明の搬送設備は、第1、第2または第3発明において、前記移動通路において前記移動体が走行する床には前記移動通路の走行方向に沿って案内部材が設けられており、前記移動体および/または前記保持部には、前記案内部材を検出する移動検出部が設けられており、前記制御部は、前記移動検出部が検出した前記案内部材の位置に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有していることを特徴とする。
<搬送車両>
第9発明の搬送車両は、長尺な鋼材を搬送する搬送車両であって、床面を走行する移動体と、該移動体に設けられ、長尺な鋼材をその軸方向が前記移動体の移動方向と直交するように保持する保持部と、該保持部を上下に昇降する昇降機構と、前記移動体の移動および前記保持部の作動を制御する制御部と、を備えており、前記移動体および/または前記保持部には、前記移動体の走行方向における前記移動体および/または前記保持部と長尺な鋼材との距離を検出する鋼材検出部が設けられており、前記制御部は、前記鋼材検出部の検出した前記距離に基づいて前記移動体の移動を制御する機能を有していることを特徴とする。
第10発明の搬送車両は、第9発明において、前記保持部が、長尺な鋼材の上端縁を検出する上端検出部を備えており、前記制御部は、前記保持部と長尺な鋼材の上端縁との相対的な位置に基づいて、前記保持部および前記昇降機構の作動を制御する機能を有していることを特徴とする。
第11発明の搬送車両は、第9または第10発明において、前記保持部が、長尺な鋼材を保持する保持機構と、前記移動体の中心線と直交する方向における長尺な鋼材の軸方向の中間位置と前記移動体の中心線とのズレを検出する中心位置検出部を備えており、前記保持機構は、長尺な鋼材を保持する保持装置と、該保持装置を前記移動体の中心線と直交する方向に移動させる位置調整機構と、を有しており、前記制御部は、前記中心位置検出部の検出結果に基づいて、前記移動体の中心線が長尺な鋼材の軸方向の中間位置を通過する状態で前記保持装置によって長尺な鋼材が保持されるように前記位置調整機構を作動させる機能を有していることを特徴とする。
第12発明の搬送車両は、第11発明において、前記保持部が、前記移動体の中心線に対して対称に設けられた一対の電磁石を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
<搬送設備>
第1発明によれば、保持部によって長尺な鋼材を保持した移動体を一対の供給コンベア間に移動させて昇降機構によって保持部を下降させれば、一対の供給コンベアの搬送方向と長尺な鋼材の軸方向とを一致させた状態で一対の供給コンベア上に長尺な鋼材を載置できる。また、移動体は移動通路を移動するだけであるので、長尺な鋼材を一対の供給コンベアに供給する作業を無人化しやすくなる。
第2発明によれば、長尺な鋼材が積層された状態で搬入されているので、複数の長尺な鋼材を搬入する場合でも搬入部の面積を小さくできる。また、移動体を移動通路に沿って直線的に移動させるだけで搬入部から供給部に長尺な鋼材を搬送できるので、長尺な鋼材を供給部に供給する作業を無人化しやすくなる。
第3発明によれば、移動体を移動通路に沿って直線的に移動させれば、長尺な鋼材の軸方向の中間位置と移動体の中心線とを一致させた状態で保持部によって長尺な鋼材を保持させることができるので、保持部による長尺な鋼材の保持を無人化しやすくなる。
第4発明によれば、鋼材検出部が移動体の走行方向における長尺な鋼材の位置を検出するので、長尺な鋼材を保持する上で適切な位置まで移動体を自動で移動させることができる。すると、移動体の走行方向における長尺な鋼材の位置が変化しても、移動体によって長尺な鋼材を適切に保持できるので、長尺な鋼材の搬送作業を無人化できる。
第5発明によれば、長尺な鋼材の高さが一定でなくても、保持部による長尺な鋼材を保持する作業を無人化できる。
第6発明によれば、中心位置検出部によって長尺な鋼材の軸方向の中間位置と移動体の中心線とのズレを検出すれば、位置調整機構を作動させることによって両者を合わせることができる。すると、保持部によって長尺な鋼材を安定して保持でき、保持部によって長尺な鋼材を保持した移動体を安定して移動させることができる。しかも、保持部による長尺な鋼材の保持を無人化できる。
第7発明によれば、一対の電磁石で長尺な鋼材の保持解放を制御できるので、保持部による長尺な鋼材の保持解放が容易になるし、長尺な鋼材の保持解放を無人化できる。しかも、保持部によって長尺な鋼材を安定して保持することができる。
第8発明によれば、移動検出部が検出する案内部材に基づいて移動体を移動させれば、移動体を移動通路に沿って移動させることができるので、移動体の移動を無人化しても安定した移動が可能になる。
<搬送車両>
第9発明によれば、鋼材検出部が移動体の走行方向における長尺な鋼材の位置を検出するので、長尺な鋼材を保持する上で適切な位置まで移動体を自動で移動させることができる。すると、長尺な鋼材の位置が変化しても、移動体によって長尺な鋼材を適切に保持できるので、長尺な鋼材の搬送作業を無人化できる。
第10発明によれば、長尺な鋼材の高さが一定でなくても、保持部による長尺な鋼材を保持する作業を無人化できる。
第11発明によれば、中心位置検出部によって長尺な鋼材の軸方向の中間位置と移動体の中心線とのズレを検出すれば、位置調整機構を作動させることによって両者を合わせることができる。すると、保持部によって長尺な鋼材を安定して保持でき、保持部によって長尺な鋼材を保持した移動体を安定して移動させることができる。しかも、保持部による長尺な鋼材の保持を無人化できる。
第12発明によれば、一対の電磁石で長尺な鋼材の保持解放を制御できるので、保持部による長尺な鋼材の保持解放が容易になるし、長尺な鋼材の保持解放を無人化できる。しかも、保持部によって長尺な鋼材を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の搬送設備1の概略側面図である。
図2】本実施形態の搬送設備1の概略平面図である。
図3】(A)は搬送装置20によって搬送H形鋼HSを保持している状態の概略説明図であり、(B)は供給部10の一対の供給コンベア11,12に搬送H形鋼HSを載置した状態の概略説明図である。
図4】本実施形態の搬送設備1の搬送装置20の概略説明図である。
図5】本実施形態の搬送設備1による搬送H形鋼HSの搬送作業の概略側面説明図である。
図6】本実施形態の搬送設備1による搬送H形鋼HSの搬送作業の概略側面説明図である。
図7】本実施形態の搬送設備1による搬送H形鋼HSの搬送作業の概略側面説明図である。
図8】本実施形態の搬送設備1による搬送H形鋼HSの搬送作業の概略平面説明図である。
図9】本実施形態の搬送設備1による搬送H形鋼HSの搬送作業の概略平面説明図である。
図10】搬送装置20の制御部50の概略ブロック図である。
図11】保持部35に位置調整機構38を設けた搬送装置20の概略説明図である。
図12】従来の搬送装置100の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の搬送設備は、長尺な鋼材を次工程に搬送するための搬送装置であり、搬送も含めた長尺な鋼材の加工作業を無人化しやすくできるようにしたことに特徴を有するものである。
【0017】
本実施形態の搬送設備が採用される設備などはとくに限定されない。例えば、岸壁や建築物等の梁や柱、基礎杭などの構造材として使用されたり機械や船舶、車両などの構造材として使用されたりする長尺な鋼材を加工する設備において、長尺な鋼材を加工する自動加工装置やドリルマシンなどに長尺な鋼材を供給する設備として採用することができる。
【0018】
また、本実施形態の搬送設備によって搬送される長尺な鋼材もとくに限定されない。長尺な鋼材としては、例えば、H形鋼やI形鋼、溝型鋼などを挙げることができる。また、長尺な鋼材の大きさもとくに限定されない。例えば、長さが6~13m程度、重量が1~4トン程度のものを、本発明で用いられる本実施形態の搬送設備によって搬送される長尺な鋼材とすることができる。
【0019】
以下の説明では、本実施形態の搬送設備1を、自動加工機MにH形鋼Hを供給する場合を代表として説明する。なお、以下の図面では、構造を分かりやすくするために、各部の相対的な長さは実際の寸法とは必ずしも一致しない。
【0020】
なお、本明細書において「無人化」という場合には、全ての作業を無人化することを意味する。ここでいう「全ての作業」とは、本実施形態の搬送設備1が実施する全ての作業を意味している。後述するように、搬入部2に搬入された積層鋼材SHのH形鋼Hを自動加工機Mまで搬送する作業が本実施形態の搬送設備1が実施する全ての作業に該当する。したがって、本明細書において「無人化」という場合には、搬入部2に搬入された積層鋼材SHのH形鋼Hを自動加工機Mに搬送するまでの全ての作業を無人化することを意味する。なお、後述する搬入部2に積層鋼材SHを搬入する作業は本実施形態の搬送設備1が実施する作業には含まれないが、搬入部2に積層鋼材SHを搬入する作業も無人化できることが望ましい。
【0021】
<本実施形態の搬送設備1>
図1および図2に示すように、本実施形態の搬送設備1は、長尺な鋼材をその軸方向に沿って自動加工機Mに搬送する供給部10と、H形鋼Hを供給部10に供給する搬送装置20と、H形鋼Hが搬入される搬入部2と、を備えている。
【0022】
<搬入部2>
図1および図2に示すように、本実施形態の搬送設備1の搬入部2は、供給部10の近傍に設けられた領域である。この搬入部2は、複数のH形鋼Hが積層された状態で置かれる領域である。具体的には、複数のH形鋼Hは、その軸方向が平行となるように積層された状態で搬入部2に配置される。より詳しくいえば、複数のH形鋼Hは、その軸方向が互いに平行かつウェブHwの側面が水平になった状態で、フランジHf同士が重なり合わないように積層される(図1参照)。このため、複数のH形鋼Hが積層された状態では、最上部に位置するH形鋼Hでは、そのウェブHwの側面が水平になった状態で上方に露出した状態となる。後述するように、この露出したウェブHwの側面に搬送装置20の保持部35の電磁石37が接触して電磁石37がH形鋼Hを保持することになる。
【0023】
以下では、複数のH形鋼Hが積層された状態のものを積層鋼材SHという場合がある。この積層鋼材SHは、その幅WSがH形鋼Hの幅W1とほぼ同じ幅になるので、積層鋼材SHの占める領域は一本のH形鋼Hが占める領域とほぼ同じ領域にできる。すると、積層鋼材SHの状態で複数のH形鋼Hを搬入部2に配置すれば、複数のH形鋼Hが占める領域を小さくできるので、本実施形態の搬送設備1の設置面積を小さくできる。
また、以下では、積層鋼材SHにおいて最上部に位置するH形鋼Hを搬送H形鋼HSという場合がある。
【0024】
<供給部10>
図2図3に示すように、供給部10は、一対の供給コンベア11,12を備えている。一対の供給コンベア11,12は、自動加工機Mに対して、H形鋼Hをその軸方向に沿って軸端から供給するものである。この一対の供給コンベア11,12は、その搬送方向(図2では上下方向、図3では左右方向)とH形鋼Hの軸方向が平行になるようにH形鋼Hが載置されると、自動加工機Mに向かってH形鋼Hをその軸方向に移動させることができるように設置されている。
【0025】
一対の供給コンベア11,12は、その搬送方向において所定の間隔を空けた状態、つまり、互いに離間した状態で配設されている。一対の供給コンベア11,12間の空間の間隔(以下コンベア間隔L1という場合がある、図2参照)はとくに限定されない。自動加工機MにH形鋼Hが供給される際に、H形鋼Hが自動加工機M側に位置する供給コンベア12だけに載せられた状態になるが(図9(B)参照)、その状態でも安定してH形鋼Hを搬送できる距離にコンベア間隔L1は設定されている。このコンベア間隔L1は搬送されるH形鋼Hの長さや重量によって異なる。例えば、部品が取り付けられていないH形鋼Hや特別な加工をされていないH形鋼Hであれば、その長さが13mであれば、コンベア間隔L1を3m程度とすれば安定してH形鋼Hを搬送できる。
【0026】
なお、H形鋼Hの先端部(図2では下端部)が自動加工機Mに供給されると自動加工機M側の装置によってH形鋼Hの先端部が保持されH形鋼Hが安定するような場合であれば、コンベア間隔L1はH形鋼Hの長さに限定されない。例えば、自動加工機M側の装置によってH形鋼Hの先端部が保持されるタイミングで、供給コンベア11上にH形鋼Hの他端部が配置されている程度にコンベア間隔L1を調整してもよい。
【0027】
また、一対の供給コンベア11,12間の空間をその搬送方向と直交する方向に沿って延ばした領域が後述する搬送装置20の移動体30が走行する領域である移動通路MPとなる。そして、図2に示すように、この移動通路MPは搬入部2が設けられている領域を通過するものとなる。
【0028】
<搬送装置20>
図1図3に示すように、搬送装置20は、H形鋼Hを保持する保持部35と保持部を昇降させる昇降機構40とを備えた移動体30を備えている。
なお、保持部35と昇降機構40とを備えた移動体30が、特許請求の範囲にいう搬送車両に相当するものとなる。
【0029】
<移動体30>
図1図4に示すように、搬送装置20は自走する移動体30を備えている。この移動体30は、その中心軸CL(図2参照)に沿って直線的に移動することができる機能を有しており、その中心軸CLと移動通路MPの延びる方向(図2では左右方向)が一致するように配設されている。しかも、移動体30は、その中心軸CLと移動通路MPの中心軸MCとが一致するように配設されている(図2参照)。つまり、移動体30は、一対の供給コンベア11,12間の空間と搬入部2との間を、移動通路MPの延びる方向に移動通路MPの中心軸MCに沿って直線的に移動できるように配設されている。以下では、移動体30の移動方向という場合、とくに言及がない場合には、移動体30の中心軸CLに沿った方向を意味する。また、以下では、「移動通路MPに沿って移動」という場合、とくに言及がない場合には、移動通路MPの中心軸MCに沿って直線的に移動することを意味し、「移動通路MPに沿って移動体30を移動」という場合、とくに言及がない場合には、移動通路MPの中心軸MCに沿って移動体30を直線的に移動させることを意味する。
【0030】
この移動体30が自走して移動通路MPを移動する機構はとくに限定されない。例えば、複数の車輪30rと、この車輪30rを駆動するモータなどの駆動源30d(図10参照)とを移動体30の移動機構とすることができる。また、一対の供給コンベア11,12間から搬入部2に向かって延びるレールと、このレール上を走行する車輪と、この車輪を駆動するモータなどの駆動源と、によって移動体30の移動機構を構成してもよい。
【0031】
<保持部35>
図1図4に示すように、移動体30には、H形鋼Hを保持する保持部35が設けられている。具体的には、移動体30において、移動体30の移動方向において搬入部2側には、昇降機構40を介して保持部35が設けられている。
【0032】
この保持部35は、移動体30の中心軸CLと直交する方向に延びる保持フレーム36を備えている(図2図3参照)。この保持フレーム36は、所定の剛性を有する部材によって形成されている。ここでいう所定の剛性とは、後述するように電磁石37によってH形鋼Hを保持した際に変形や破損しない剛性を意味している。例えば、保持フレーム36は、H形鋼やI形鋼などの剛性の高い部材によって形成することができる。
【0033】
保持フレーム36には、H形鋼Hを保持する電磁石37が設けられている。具体的には、保持フレーム36の下面には電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aが取り付けられている。この一対の磁気発生部37a,37aは、移動体30の中心線CLに対して対称となる位置に設けられている。各磁気発生部37aは、その下面(磁着面)がほぼ平坦面に形成されており、H形鋼HのウェブHwの側面と密着する(つまり面接触する)形状に形成されている。しかも、各磁気発生部37aは、その幅WA(図4参照)がH形鋼HのウェブHwの内面間の距離W2(図1参照)よりも短く形成されている。例えば、各磁気発生部37aをH形鋼HのウェブHwに吸着すると、各磁気発生部37aとフランジHfとの間に50mm以上の隙間gが形成される大きさに各磁気発生部37aは形成されている(図8(B)参照)。
【0034】
したがって、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aの磁着面をH形鋼HのウェブHwの側面に配置し、一対の磁気発生部37a,37aに通電して磁力を発生させれば、一対の磁気発生部37a,37aにH形鋼Hを吸着することができる。また、一対の磁気発生部37a,37aに対する通電を停止すれば、H形鋼Hを一対の磁気発生部37a,37aから解放することができる。つまり、一対の磁気発生部37a,37aに対する通電を制御すれば、保持部35によるH形鋼Hの保持解放を制御できる。
【0035】
また、磁気発生部37aが、その内面間の距離W2が上記のごとき大きさに形成されているので、一対の磁気発生部37a,37aをH形鋼Hの一対のフランジHf,Hf間に容易に配置できる。つまり一対のフランジHf,Hf間を通して、一対の磁気発生部37a,37aをH形鋼HのウェブHwにスムースに接近させることができる。
【0036】
なお、各磁気発生部37aとフランジHfとの間に形成される隙間gの大きさはとくに限定されない。一対の磁気発生部37a,37aによってウェブHwを吸着する際に、一対のフランジHf,Hf間に一対の磁気発生部37a,37aをスムースに配置できる程度の隙間であればよい。
【0037】
<昇降機構40>
図1図4に示すように、移動体30の移動方向において搬入部2側には、保持部35を上下方向に昇降させる昇降機構40が設けられている。この昇降機構40は、一般的なフォークリフトのフォークを昇降させる機構と同様の構造を有している。例えば、図4に示すように、移動体30の移動方向における搬入部2側に上下方向に沿って延びる保持部35の昇降を案内する一対のマスト41,41と、一対のマスト41,41に沿って設けられた保持部35を移動する図示しないリフトチェーンと、リフトチェーンを駆動するモータなどの駆動部40d(図10参照)と、を備えている。したがって、昇降機構40の駆動部40dを駆動することによってリフトチェーンを作動すれば、一対のマスト41,41に沿って保持部35を昇降させることができる。
【0038】
したがって、昇降機構40によって保持部35を上昇させれば、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aを搬送H形鋼HSより上方に配置できる(図5(B)参照)。そして、昇降機構40によって保持部35を搬送H形鋼HSの上方から下降させれば、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aを搬送H形鋼HSを吸着できる位置に配置できる。そして、一対の磁気発生部37a,37aによって搬送H形鋼HSを吸着すれば、搬送H形鋼HSを保持部35によって保持することができる(図6参照)。
【0039】
一方、保持部35によって保持された状態の搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12の上方に配置し、その状態から昇降機構40によって保持部35を下降すれば搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12上に載置できる(図7(A)参照)。その状態で電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aから搬送H形鋼HSを解放すれば、搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12によって搬送できる状態とすることができる。
【0040】
なお、昇降機構40は上記のごとき構造に限定されず、H形鋼Hを保持した保持部35を安定して昇降させることができる種々の構造を採用することができる。例えば、保持部35を移動する機構として、チェーン駆動に代えて、上下方向に伸縮するシリンダを有するシリンダ機構としてもよい。なお、昇降機構40としてシリンダ機構を採用した場合(とくに、複数本のシリンダを設けた場合)には、保持部35の昇降を案内する一対のマスト41,41は必ずしも設けなくてもよい。
【0041】
<制御部50>
図10に示すように、搬送装置20は、移動体30の駆動源30d、電磁石37の磁気発生部37a、昇降機構40の駆動部40dが電気的に接続された制御部50を備えている。この制御部50は、上述した移動体30の駆動源30d、電磁石37の磁気発生部37a、昇降機構40の駆動部40dの作動を制御する機能を有している。この制御部50の詳細は後述する。
【0042】
<本実施形態の搬送設備1によるH形鋼Hの搬送作業>
上述した機構を有する本実施形態の搬送設備1によるH形鋼Hの搬送作業、つまり、搬入部2に搬入された積層鋼材SHから順次H形鋼Hを自動加工機Mに供給する作業を図5図9に基づいて説明する。
【0043】
図5(A)、図8(A)に示すように、作業開始時には、一対の供給コンベア11,12にはH形鋼Hが載せられておらず、移動体30は、移動通路MPにおいて一対の供給コンベア11,12にH形鋼Hを供給する位置(以下、単に供給位置という場合がある)に待機している。また、保持部35は、昇降機構40によって積層鋼材SHの最上端(言い換えれば搬入部2に搬入されている所定の数のH形鋼Hが積層された状態における積層鋼材SHの最上端)よりも上方に位置するように配置される(以下、この位置を保持部35の待機位置という)。
【0044】
まず、搬入部2に積層鋼材SHが搬入される。このとき、積層鋼材SHは、その軸方向の中間位置を移動通路MPの中心線MCが通過し、かつ、H形鋼Hの軸方向が移動通路MPの中心線MCと直交するように搬入部2に配置される。また、積層鋼材SHは、一つだけが搬入部2に搬入されてもよいが、複数の積層鋼材SHを搬入してもよい。この場合には、移動通路MPの延びる方向に沿って並ぶように複数の積層鋼材SHが配置される。
【0045】
図5(B)、図8(B)に示すように、積層鋼材SHが搬入されると、制御部50によって移動体30の駆動源30dが作動され、移動体30は積層鋼材SHに向かって移動する。そして、所定の位置、つまり、保持部35によって搬送H形鋼HSを保持できる位置まで移動すると、制御部50によって移動体30の駆動源30dの作動が停止し、移動体30は停止する。
【0046】
図6(A)に示すように、移動体30が停止すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dが作動され、昇降装置40によって保持部35が下降される。保持部35の電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aによって搬送H形鋼HSを磁着できる位置まで保持部35が下降すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dの作動が停止され、昇降装置40による保持部35の下降が停止する。すると、制御部50によって一対の磁気発生部37a,37aに通電され、一対の磁気発生部37a,37aに搬送H形鋼HSが磁着される。つまり、保持部35によって搬送H形鋼HSが保持された状態となる。
【0047】
図6(B)に示すように、保持部35によって搬送H形鋼HSが保持された状態となると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dが作動され、搬送H形鋼HSとその下方に位置するH形鋼H(つぎに搬送H形鋼HとなるH形鋼H)とが干渉しない位置まで昇降装置40によって保持部35が上昇される。すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dの作動が停止される。
【0048】
昇降機構40の駆動部40dの作動が停止すると、制御部50によって移動体30の駆動源30dが作動され、移動体30は一対の供給コンベア11,12に向かって移動する。つまり、移動体30は供給位置に向かって移動する。
【0049】
図9(A)に示すように、移動体30が供給位置まで移動すると、制御部50によって移動体30の駆動源30dの作動が停止し、移動体30は供給位置で停止する。移動体30が供給位置で停止すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dが作動され、昇降装置40によって保持部35が下降され、やがて、搬送H形鋼HSが一対の供給コンベア11,12上に載置された状態となる。すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dの作動が停止され、昇降装置40による保持部35の下降が停止する。すると、制御部50によって一対の磁気発生部37a,37aに対する通電が停止され、一対の磁気発生部37a,37aから搬送H形鋼HSが解放される。つまり、搬送H形鋼HSは、一対の供給コンベア11,12上に載せられた状態となる(図7(A))。
【0050】
図7(B)に示すように、搬送H形鋼HSが一対の磁気発生部37a,37a上に載せられた状態となると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dが作動され、昇降装置40によって保持部35はその待機位置まで上昇される。保持部35がその待機位置まで上昇すると、制御部50によって昇降機構40の駆動部40dの作動が停止し、搬送H形鋼HSの搬送作業が終了する。
【0051】
一対の供給コンベア11,12上に載せられた搬送H形鋼HSは、所定のタイミングで自動加工機Mに供給される。例えば、自動加工機Mからの指令に基づいて、一対の供給コンベア11,12の制御部が一対の供給コンベア11,12を作動させて、搬送H形鋼HSが自動加工機Mに供給される(図9(B))。
【0052】
一対の供給コンベア11,12上の搬送H形鋼HSが自動加工機Mに供給されると、制御部50によって移動体30の駆動源30dが作動され、移動体30は積層鋼材SHに向かって移動し、上述した作業が実施される。つまり、一対の供給コンベア11,12上に搬送H形鋼HSがなくなった状態となると、制御部50によって積層鋼材SHから搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12上に載置する作業が実施される。
【0053】
以上のように、本実施形態の搬送設備1によれば、移動体30を供給位置と搬入部2との間を移動させるだけで、積層鋼材SHの状態で搬送されたH形鋼Hを保持部35によって保持して一対の供給コンベア11,12まで順次搬送できるので、H形鋼Hを連続して自動加工機Mに供給することができる。そして、上記作業を繰り返せば、積層鋼材SHの全てのH形鋼HSを自動加工機Mに供給することができる
【0054】
また、積層鋼材SHは、その軸方向の中間位置を移動通路MPの中心線MCが通過し、かつ、H形鋼Hの軸方向が移動通路MPの中心線MCと直交するように搬入部2に配置されている。しかも、移動体30が移動通路MPの中心軸MCに沿って移動するので、移動体30が移動通路MPの中心軸MCに沿って直線的に移動するだけで、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置が移動体30および保持部35の中心線上に位置しかつ移動体30の移動方向と搬送H形鋼HSの軸方向とが直交するように保持できる。すると、供給位置で停止した移動体30の保持部35から一対の供給コンベア11,12に搬送H形鋼HSを載置するだけで、一対の供給コンベア11,12の搬送方向とH形鋼Hの軸方向とを平行にできる。したがって、積層鋼材SHから搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12上に載置する作業、言い換えれば、積層鋼材SHから搬送H形鋼HSを自動加工機Mに供給する作業を無人化することが容易になる。
【0055】
さらに、図1および図2に示すように、複数の積層鋼材SHが移動通路MPの延びる方向に沿って並ぶように配置されていれば、一対の供給コンベア11,12に最も近い積層鋼材SHの全てのH形鋼Hが自動加工機Mに供給された後でも、積層鋼材SHのH形鋼Hを順次自動加工機Mに供給できる。すると、ある程度の量の積層鋼材SHを搬入部2に搬入しておけば、積層鋼材SHを頻繁に搬入部2に搬入しなくても、自動加工機Mに対するH形鋼Hの供給を継続することができる。しかも、搬入部2に搬入した積層鋼材SHは移動させる必要がないので、積層鋼材SHの転倒などのリスクも軽減できる。
【0056】
<制御部50の詳細な説明>
図10に示すように、搬送装置20は、移動体30の駆動源30d、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37a、昇降機構40の駆動部40dが電気的に接続された制御部50を備えている。この制御部50は、上述した移動体30の駆動源30dの作動、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aへの通電、昇降機構40の駆動部40dの作動、をそれぞれ制御する機能を有している。具体的には、制御部50は、移動体30の駆動源30dの作動を制御して移動体30の移動を制御する移動制御機能51と、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aと昇降機構40の駆動部40dの作動を制御してH形鋼Hの保持解放を制御する保持制御機能52と、を有している。
【0057】
<移動制御機能51>
移動制御機能51は、保持部35に設けられた鋼材検出部51aからの信号に基づいて移動体30の移動を制御する機能を有している。具体的には、鋼材検出部51aからの信号に基づいて移動体30の移動方向における積層鋼材SHと移動体30との距離D1(図5(B)参照)を算出する機能を移動制御機能51は有している。そして、算出した距離D1に基づいて適切な位置まで移動体30を移動させる機能を移動制御機能51は有している。ここでいう適切な位置とは、搬送H形鋼HSを保持部35が適切に保持できる位置を意味している。
【0058】
例えば、移動制御機能51は、以下のように移動体30の移動を制御する。
【0059】
図5(B)に示すように、移動体30の移動方向において、移動体30の車輪30rの位置(回転軸の位置a)から積層鋼材SHの移動体30側の面(つまり搬送H形鋼HSのフランジHfの表面fa)までの距離を距離D1とする。また、図5(A)に示すように、移動体30の移動方向において、回転軸の位置aから磁気発生部37aの幅方向の中心線までの距離を距離D2とする。そして、移動体30の移動方向における搬送H形鋼HSの中心線を中心線b、この中心線bから搬送H形鋼HSのフランジHfの表面faまでの距離を距離D4とする。
【0060】
この場合、移動制御機能51は、算出される距離D1が、距離D2から距離D4を引いた値DDよりも大きい場合には、移動体30を積層鋼材SHに向かって移動させる。そして、距離D1と値DDとの差が一定よりも小さくなると、移動制御機能51は移動体30の移動速度を減速し、距離D1と値DDとが一致すると移動体30を停止させる。すると、移動体30を停止した状態で保持部35によって搬送H形鋼HSを保持することができる。
【0061】
また、保持部35が搬送H形鋼HSを保持すると、移動制御機能51は一対の供給コンベア11,12間まで移動体30を移動させる機能を有している。つまり、保持部35が搬送H形鋼HSを保持している移動体30を供給位置まで移動させる機能も有している。なお、移動制御機能51は、保持制御機能52から送信される信号、つまり、保持部35が搬送H形鋼HSを保持し保持部35が所定の高さまで上昇したことを通知する信号を受信することによって、移動体30を移動できる状態になったことを把握し、その後移動制御機能51は移動体30を移動させる。
【0062】
この場合には、移動制御機能51は、一対の供給コンベア11,12と移動体30との距離DCを算出する機能を有する。
【0063】
図5(A)に示すように、移動体30の移動方向において、移動体30の回転軸の位置aから一対の供給コンベア11,12の側面(図5(A)では左側の側面、つまり、積層鋼材SHと逆側の側面11sまたは12s)までの距離を距離DCとする。また、図9(A)に示すように、保持部35に保持された状態の搬送H形鋼HSの軸方向の中心軸と一対の供給コンベア11,12の中心軸とが平面視で一致した状態(搬送H形鋼HSの中心軸ALと一対の供給コンベア11,12の中心軸CAとが同一鉛直面に位置する状態)において、移動体30の移動方向における回転軸の位置aから一対の供給コンベア11,12の側面Sまでの距離を距離DGとする(図7(A)参照)。
【0064】
一対の供給コンベア11,12間まで移動体30を移動させる場合、まず、移動制御機能51は、保持部35が搬送H形鋼HSを保持した後、積層鋼材SHから後退する(言い換えれば一対の供給コンベア11,12に向かって移動する)ように移動体30を移動させる。そして、距離DCを算出できない場合、つまり、移動体30が一対の供給コンベア11,12よりも積層鋼材SH側に位置する場合には、移動制御機能51は、移動体30が一対の供給コンベア11,12に接近する移動(言い換えれば積層鋼材SHから遠ざかる移動)を維持する。やがて、移動体30が一対の供給コンベア11,12間の隙間を通過して、一対の供給コンベア11,12に対して積層鋼材SHと逆側に位置するようになる。すると、距離DCが算出できる状態になるので、算出される距離DCが距離DGよりも小さい場合には、移動制御機能51は、移動体30の移動を継続する。そして、距離DCと距離DGとの差が一定よりも大きくなると、移動制御機能51は移動体30の移動速度を減速し、距離DCが距離DGとが一致すると移動体30を停止させる。すると、移動体30が供給位置に配置されるので、保持部35によって搬送H形鋼HSを一対の供給コンベア11,12の適切な位置に載置することができる。なお、通常は、上記距離DGは距離D1(図5(B)参照)と一致する。
【0065】
なお、移動制御機能51は、保持制御機能52から送信される信号、つまり、保持部35が搬送H形鋼HSを解放したことを通知する信号を受信することによって、保持部35が搬送H形鋼HSを解放したことを把握する。そして、保持部35が搬送H形鋼HSを解放したことを把握したのち、移動制御機能51は所定のタイミングで搬送H形鋼HSの搬送作業(つまり移動30の移動)を開始する。
【0066】
なお、鋼材検出部51aを設ける位置はとくに限定されず、保持部35のどの位置に設けてもよいし、移動体30に設けてもよい。鋼材検出部51aは、搬入部2に搬入されている積層鋼材SHの位置を検出できる位置に設けられていればよい。
【0067】
また、鋼材検出部51aは、移動体30の移動方向における積層鋼材SHと移動体30との距離(相対的な位置)や移動体30の移動方向における一対の供給コンベア11,12と移動体30との距離(相対的な位置)を適切に算出できる情報を移動制御機能51に供給できるものであればよく、種々のセンサを採用することができる。例えば、鋼材検出部51aには、カメラや近接センサ、距離センサなどの種々のセンサを使用することができる。
【0068】
<保持制御機能52>
保持制御機能52は、保持部35に設けられた上端検出部52aからの信号に基づいて電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aと昇降機構40の駆動部40dの作動を制御して搬送H形鋼HSの保持解放を制御する機能を有している。具体的には、上端検出部52aからの信号に基づいて保持部35から搬送H形鋼HSまでの距離、つまり、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aの磁着面から搬送H形鋼HSのウェブHwの表面までの距離T2(図5(B)参照)を算出する機能を保持制御機能52は有している。そして、算出した距離T2に基づいて、昇降機構40の駆動部40dを作動させる機能、つまり、保持部35を昇降させる機能を保持制御機能52は有している。また、保持制御機能52は、算出した距離T2に基づいて、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aへの通電を制御して、搬送H形鋼HSの保持解放する機能を有している。
【0069】
例えば、保持制御機能52は、以下のように電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aと昇降機構40の駆動部40dの作動を制御する。
なお、鉛直方向における上端検出部52aから保持部35の電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aの磁着面(以下単に一対の磁気発生部37a,37aの磁着面という場合がある)までの距離を距離THとする。
【0070】
まず、保持制御機能52は、通常の状態、つまり、保持部35がH形鋼Hを保持していない状態では、昇降機構40の駆動部40dを作動して、保持部35を待機位置に配置する。すると、一対の磁気発生部37a,37aの磁着面の高さが所定の数のH形鋼Hが積層された状態における積層鋼材SHの最上端(言い換えれば搬入部2に搬入されている積層鋼材SHの最上端)よりも上方に位置するように配置される。
【0071】
この状態で、搬送H形鋼HSを保持する上で適切な位置まで移動体30が移動したことを通知する信号が移動制御機能51から供給されると、保持制御機能52は、保持部35による搬送H形鋼HSを保持する作業を開始する。
【0072】
まず、上端検出部52aによって上端検出部52aから搬送H形鋼HSのウェブHwの表面までの距離T1を検出する。すると、保持制御機能52は、距離T1から距離THを引いた値T2を算出し、この値T2が一定の距離以上の場合には、昇降機構40の駆動部40dを作動して保持部35を下降させる。そして、値T2が所定の値になると、昇降機構40の駆動部40dの作動を停止し、一対の磁気発生部37a,37aに通電する。すると、一対の磁気発生部37a,37aの磁着面に搬送H形鋼HSのウェブHwの表面が磁着されるので、搬送H形鋼HSが保持部35によって保持された状態となる。一対の磁気発生部37a,37aに通電してから一定の時間経過すると、保持制御機能52は、昇降機構40の駆動部40dを作動して、搬送H形鋼HSのフランジHfとその下方に位置するH形鋼HSのフランジHfとが水平方向において重ならない位置まで保持部35を上昇させる。つまり、搬送H形鋼HSのフランジHfの下端がその下方に位置するH形鋼HSのフランジHfの上端よりも上方に位置するまで保持部35を上昇させる(例えば、上述した待機位置まで保持部35を上昇させる)。すると、保持部35が搬送H形鋼HSを保持した状態でも、搬送H形鋼HSが積層鋼材SHと干渉しない(接触しない)で、移動部30が移動できる状態となる。
【0073】
また、保持部35が搬送H形鋼HSを保持し保持部35が所定の高さまで上昇すると、そのことを通知する信号が保持制御機能52から移動制御機能51に送信され、その信号を受けた移動制御機能51が移動体30を供給位置まで移動させる。そして、移動体30が供給位置まで移動したことを通知する信号が移動制御機能51から保持制御機能52に供給されると、保持制御機能52は、以下のように電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aと昇降機構40の駆動部40dの作動を制御して、一対の供給コンベア11,12上に搬送H形鋼HSを載置する。
【0074】
まず、移動体30が供給位置まで移動したことを通知する信号が移動制御機能51から保持制御機能52に供給されると、上端検出部52aによって上端検出部52aから一対の供給コンベア11,12の載置面までの距離TCを検出する。すると、保持制御機能52は、距離TCから距離THを引いた値TDを算出し、この値TDが一定の距離以上の場合には、昇降機構40の駆動部40dを作動して保持部35を下降させる。そして、値TDが所定の値になると、昇降機構40の駆動部40dの作動を停止し、一対の磁気発生部37a,37aの通電を停止する。すると、一対の磁気発生部37a,37aの磁着面から搬送H形鋼HSのウェブHwの表面が解放されるので、一対の供給コンベア11,12の載置面上に載置された状態となる。すると、保持制御機能52は、昇降機構40の駆動部40dを作動して、保持部35をその待機位置まで上昇させて、その位置で保持部35を維持する。保持部35がその待機位置に維持された状態となると、保持制御機能52から搬送H形鋼HSの搬送が完了した信号が移動制御機能51に供給される。この信号は、一対の供給コンベア11,12の作動を制御する制御部にも供給されるので、適切なタイミングで一対の供給コンベア11,12が作動し、一対の供給コンベア11,12によって搬送H形鋼HSが自動加工機Mに供給される。
【0075】
なお、上端検出部52aを設ける位置はとくに限定されず、保持部35のどの位置に設けてもよく、鋼材検出部51aは、搬送H形鋼HSのウェブHwの表面との距離を検出できる位置に設けられていればよい。
【0076】
また、上端検出部52aは、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aの磁着面から搬送H形鋼HSのウェブHwの表面までの距離T2を算出する機能や、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aの磁着面から一対の供給コンベア11,12の載置面までの距離TCを適切に算出できる情報を保持制御機能52に供給できるものであればよく、種々のセンサを採用することができる。例えば、上端検出部52aには、カメラや近接センサ、距離センサなどの種々のセンサを使用することができる。
【0077】
また、上端検出部52aとして一対の磁気発生部37a,37aの磁着面が搬送H形鋼HSのウェブHwの表面に接触したことを検出するセンサ(例えば接触式変位センサ等)を採用することも可能である。この場合、一対の供給コンベア11,12の載置面に搬送H形鋼HSが載置されたことをこのセンサによって検出してもよいし、一対の供給コンベア11,12の載置面に搬送H形鋼HSが載置されたことを検出するセンサを別途設けることが望ましい。
【0078】
<案内機構>
移動通路MPを移動体30が直線的に移動する場合、安定して直線的に移動させる上では、移動体30の移動を案内する案内する案内機構を設けてもよい。例えば、移動通路MPの移動方向に沿って、移動通路MPの床面に誘導磁場を発生させる誘導磁気発生器MBを設けておき(図2参照)、この誘導磁気発生器MBが発生する磁場を検出する誘導センサ(図示せず)を移動体30に設けておく。そして、移動制御機能51に、誘導センサが検出した磁場に基づいて移動体30が移動通路MPの移動方向に沿って移動するように移動体30の駆動部の作動を制御する機能を設けておく。すると、移動体30を移動通路MPに沿って安定して移動させることができるので、移動体30の移動を無人化しても安定した移動、つまり、安定したH形鋼Hの搬送が可能になる。
【0079】
<中心位置調整機能53>
上述したように、積層鋼材SHの搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置を移動通路MPの中心線MCが通過するように積層鋼材SHが配置されている場合には、移動通路MPに沿って移動体30を移動させるだけで、移動体30の中心軸CLが搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置を通過するように保持部35によって搬送H形鋼HSを保持させることができる。つまり、移動通路MPを移動する移動体30の中心軸CLがH形鋼Hの軸方向の中間位置を通過するように積層鋼材SHが配置されている場合には、移動通路MPに沿って移動体30を移動させるだけで、移動体30の中心軸CLと搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置を一致させた状態かつ搬送H形鋼HSの軸方向が移動体30の中心軸CLと直交した状態で保持部35によって搬送H形鋼HSを保持させることができる。しかし、積層鋼材SHのH形鋼Hの軸方向の中間位置が移動体30の中心軸CLに対してその移動方向と直交する方向にずれている場合には、保持部35によって搬送H形鋼HSを保持したときに、移動体30の中心軸CLと搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置がずれることになる。すると、そのずれが小さければ、搬送H形鋼HSを保持した状態で移動体30を安定して移動させることができるが、ずれが大きければ、移動体30が移動した際に移動体30の姿勢が乱れて安定して搬送H形鋼HSを搬送できない可能性がある。
【0080】
しかし、保持部35に以下のような中心位置検出部53aと位置調整機構38を設け、制御部50に中心位置調整機能53を設ければ、搬入部2に搬入された積層鋼材SHの位置がずれていても、移動体30の中心軸CLと搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置とを一致させた状態で保持部35に搬送H形鋼HSを保持させることができる。
【0081】
図11に示すように、保持部35の保持部材36と電磁石37との間(つまり、保持部材36と一対の磁気発生部37a,37aの間)に位置調整機構38を設ける。具体的には、保持部材36にレール38rを設けて、このレール38rに沿って移動する移動部材38aを設け、この移動部材38aを移動する駆動源38dを有する移動機構38cを設ける。そして、この移動部材38aに一対の磁気発生部37a,37aを取り付ける。
【0082】
また、保持部35の保持部材36に、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置を検出する中心位置検出部53aを設ける(図10参照)。例えば、中心位置検出部53aとして、保持部35の保持部材36の下方を撮影するカメラを設け、中心位置検出部53aが撮影した画像を制御部50の中心位置調整機能53に供給するようにする。
【0083】
かかる構成とすれば、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と移動体30の中心軸CLとを一致した状態とすることができる。
【0084】
まず、通常は、位置調整機構38によって、保持部35の保持部材36の中心位置と移動体30の中心軸CLとが一致した状態に維持されている(図11(A)の状態)。この状態で、積層鋼材SHに移動体30が接近し搬送H形鋼HSを保持できる位置まで移動すると、中心位置調整機能53によって搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と移動体30の中心軸CLとのずれが把握される。具体的には、中心位置調整機能53は、中心位置検出部53aが撮影した画像と、中心位置検出部53aの設置位置と、に基づいて、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と移動体30の中心軸CLとのずれを把握する。
【0085】
例えば、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と移動体30の中心軸CLとが一致している画像(基準画像)を中心位置調整機能53に記憶させておく。すると、基準画像と撮影された現在の画像(現在位置画像)とを比較すれば、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と移動体30の中心軸CLとのずれを把握することができる。このずれを把握すると、中心位置調整機能53は、まず、搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置と保持部材36の中心位置とが一致するように、移動部材38aをレール38rに沿って移動させる。
【0086】
例えば、搬送H形鋼HSが図11の右方向にずれていれば、中心位置調整機能53は駆動源38dを作動し、移動部材38aをレール38rに沿って右方向に移動させる(図11(B)参照)。逆に、搬送H形鋼HSが図11の左方向にずれていれば、中心位置調整機能53は駆動源38dを作動し、移動部材38aをレール38rに沿って左方向に移動させる(図11(C)参照)。
【0087】
その後、電磁石37によって搬送H形鋼HSが保持されると、移動体30の中心軸CLと搬送H形鋼HSの軸方向の中間位置とが一致するように、中心位置調整機能53は、駆動源38dを作動し移動部材38aをレール38rに沿って移動させる。言い換えれば、保持部35の保持部材36の中心位置と移動体30の中心軸CLとが一致した状態となるように、中心位置調整機能53は、駆動源38dを作動し移動部材38aをレール38rに沿って移動させる。
【0088】
例えば、搬送H形鋼HSが図11の右方向にずれていた場合であれば(図11(B)参照)、中心位置調整機能53は、移動部材38aをレール38rに沿って左方向に移動させる。逆に、中心位置調整機能53は、搬送H形鋼HSが図11の左方向にずれていた場合であれば(図11(C)参照)移動部材38aをレール38rに沿って右方向に移動させる。すると、保持部35の保持部材36の中心位置と移動体30の中心軸CLとが一致した状態となる(図11(A)参照)。
【0089】
すると、搬送H形鋼HSを安定した状態で保持部35によって保持できるので、移動体30を安定して移動させることができるし、搬送H形鋼HSを安定した状態で一対の供給コンベア11,12に載置することができる。
【0090】
そして、中心位置調整機能53を設けておけば、積層鋼材SHを搬入部2に搬入する際に、ある程度アバウトに積層鋼材SHを配置することができる。すると、積層鋼材SHを搬入部2に搬入する作業も容易になる。
【0091】
<移動制御機能51による制御について>
上記例では、移動制御機能51は、移動体30の移動方向における移動体30と一対の供給コンベア11,12との距離に基づいて一対の供給コンベア11,12に搬送H形鋼HSを載置する位置まで移動体30を移動させる場合を説明した。一方、上述した中心位置調整機能53を有している場合や、鋼材検出機能52が上端検出部52aとしてカメラを有している場合には、これらのカメラの画像に基づいて移動体30と一対の供給コンベア11,12との位置、言い換えれば、搬送H形鋼HSと一対の供給コンベア11,12との位置を合わせるようにしてもよい。
【0092】
つまり、平面視で搬送H形鋼HSが一対の供給コンベア11,12の適切な位置に配置された画像(基準画像)を移動制御機能51に記憶させておく。すると、基準画像と撮影された現在の画像(現在位置画像)とを比較すれば、搬送H形鋼HSが一対の供給コンベア11,12上の適切な位置に配置されているか否かを把握することができる。そして、基準画像と現在位置画像とが一致するように移動制御機能51によって移動体30を移動すれば、供給位置に移動体30を配置できる。
【0093】
同様に、上述した中心位置検出部53aを有している場合や、保持制御機能52が上端検出部52aとしてカメラを有している場合には、これらのカメラの画像に基づいて移動体30を積層鋼材SHに対して適切な位置に配置するようにしてもよい。
【0094】
つまり、平面視で電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aが積層鋼材SHの搬送H形鋼HSを保持する上で適切な位置に配置された画像(基準画像)を移動制御機能51に記憶させておく。すると、基準画像と撮影された現在の画像(現在位置画像)とを比較すれば、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aと積層鋼材SHの搬送H形鋼HSとが適切な位置に配置されているか否かを把握することができる。そして、基準画像と現在位置画像とが一致するように移動制御機能51によって移動体30を移動すれば、電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aが積層鋼材SHの搬送H形鋼HSを保持する上で適切な位置に移動体30を配置できる。
【0095】
もちろん、移動制御機能51は、上述した鋼材検出部51aの信号と、上述した中心位置検出部53aや上端検出部52aのカメラが撮影した画像の両方を利用して、移動体30の移動を制御してもよい。この場合には、移動体30の移動制御をより正確に行うことができる。
【0096】
<保持部35の電磁石37について>
保持部35の電磁石37の一対の磁気発生部37a,37aは、保持フレーム36の下面に固定されていてもよいし、保持フレーム36の下面に対して若干傾くことができるように保持フレーム36に連結されていてもよい。例えば、保持フレーム36の軸方向と直交する軸(移動体30の中心軸と平行な軸)や保持フレーム36の軸方向と平行な軸(移動体30の中心軸と直交する軸)によって、各磁気発生部37aがそれぞれ保持フレーム36に対して揺動できるように設けてもよい。しかし、一対の磁気発生部37a,37aが保持フレーム36の下面に固定されていれば、保持フレーム36によって搬送H形鋼HSを安定して保持しやすくなる。
【0097】
また、電磁石37に設ける磁気発生部37aの数は2つに限られず、一つでもよいし、3つ以上設けてもよい。磁気発生部37aの磁着面(つまり搬送H形鋼HSのウェブHwと接触する面)が移動体30の中心線CLに対して対称となるように設けられていればよい。なお、磁気発生部37aの磁着面が移動体30の中心線CLに対して対称とは、完全に対称となる場合と対称から若干ずれている場合も含んでいる。つまり、電磁石37の磁気発生部37aによって搬送H形鋼HSを吸着した際に、保持フレーム36によって搬送H形鋼HSを安定して保持できるように設けられていればよい。
【0098】
<H形鋼Hを保持する保持機構について>
また、上記例では、保持部35として、つまり、搬送H形鋼HSを保持する保持機構として、保持フレーム36と電磁石37とを有する場合を説明したが、保持部35は搬送H形鋼HSを安定して保持できる構成であればよく、必ずしも上記の構造に限定されない。例えば、保持部35を、保持フレーム36と保持フレーム36に設けられたH形鋼Hを挟んで保持する一般的なチャックなどで形成してもよいし、保持部35を一般的なチャックを有するロボットアームとしてもよい。しかし、保持部35として、上述したような保持フレーム36と電磁石37とを有する構成とすれば、搬送H形鋼HSの保持解放が容易になるし保持部35の構造も簡素化できる。
【0099】
<移動体30について>
移動体30は、上述したような装備以外にも、一般的なフォークリフトなどが搬送物を保持した状態で安定して走行させるために必要な装備(例えばカウンターウェイト等)を設けることが望ましい。
【0100】
また、上記例では、移動体30がその中心軸CLに沿って直線的に移動する場合を説明したが、移動体30は、必ずしも直線的に移動するだけでなく、旋回したり曲がったりできる移動機構を有していてもよい。つまり、移動体30は、一般的なフォークリフトのように移動できるものであってもよい。この場合、積層鋼材SHのH形鋼Hの軸方向の中間位置が移動体30の中心軸CLに対してその移動方向と直交する方向にずれている場合、つまり、搬入部2において移動通路MPからずれた位置に積層鋼材SHが搬入されていても、移動体30によって積層鋼材SHの搬送H形鋼HSを保持して、搬送H形鋼HSをその軸方向が供給部10の一対の供給コンベア11,12の搬送方向と平行となるように一対の供給コンベア11,12に供給することができる。
【0101】
なお、移動体30が旋回したり曲がったりできる移動機構を有している場合でも、上述した案内機構の誘導磁気発生器MBと誘導センサを設けておけば、一対の供給コンベア11,12間の空間に、所定の姿勢となるように移動体30を誘導することができる。つまり、H形鋼Hをその軸方向が供給部10の一対の供給コンベア11,12に供給できる姿勢となるように、移動体30を一対の供給コンベア11,12間の空間に誘導することができる。
【0102】
また、移動体30は、上述したように完全に無人で作動するものが望ましいが、人が遠隔操作することができる機能を有していてもよい。この場合、無人で作動する状態と人による遠隔操作とを切り換える機能を制御部50が有していることが望ましい。かかる機能を設ければ、何らかのトラブルで移動体30の移動や作業に異常が発生した場合に、人による操作に切り換えて作業を継続することも可能になる。
【0103】
<本発明の搬送設備の他の用途について>
本発明の搬送設備は、上述したH形鋼Hのような長尺な鋼材に限らず、ある程度の長さを有する物体を搬送する搬送設備に採用することができる。例えば、常温倉庫や冷凍・冷蔵倉庫等の物流倉庫において、ある程度の長さを有する物体をコンベアによって次工程などに搬送する場合に、物体を次工程に搬送する設備として本発明の搬送設備を採用することができる。この場合、移動体(つまり搬送車両)には、鋼材検出部と同等の機能を有する物体検出部を設ければよい。また、物体が磁石に吸着しない場合には、上述したようなロボットアームなどを保持部として設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の搬送設備は、H形鋼などの長尺な鋼材を連続して搬送して次工程に供給する搬送設備として適している。
【符号の説明】
【0105】
1 搬送設備
2 搬入部
10 供給部
11 供給コンベア
12 供給コンベア
20 搬送装置
30 移動体
35 保持部
36 保持フレーム
37 電磁石
37a 磁気発生部
38 位置調整機構
40 昇降機構
50 制御部
51 移動制御機能
51a 鋼材検出部
52 保持制御機能
52a 上端検出部
53 中心位置調整機能
53a 中心位置検出部
H H形鋼
Hw ウェブ
Hf フランジ
M 自動加工機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12