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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070951
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181604
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA05
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA24
4E137CA26
4E137EA03
4E137GA03
4E137GB03
(57)【要約】
【課題】凹形状又は凸形状の段差部が天板部に形成されたプレス成形品を、目標形状の外観を損ねることなくスプリングバックを低減することができるプレス成形品の製造方法をする。
【解決手段】本発明に係るプレス成形品の製造方法は、天板部101と、天板部101から稜線部103を介して連続する縦壁部105と、を有し、稜線部直交断面において凹形状の段差部109が天板部101に稜線部103の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品100を少なくとも2工程で製造するものであって、中間天板部121と中間天板部121から中間稜線部123を介して連続する中間縦壁部125とを有する中間成形品120にブランク110をプレス成形する第1成形工程と、中間成形品120の天板部121に凹形状の段差部109を形成して目標形状のプレス成形品100をプレス成形する第2成形工程と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部直交断面において凹形状又は凸形状の段差部が前記天板部に前記稜線部の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品を少なくとも2工程で製造するプレス成形品の製造方法であって、
中間天板部と該中間天板部から中間稜線部を介して連続する中間縦壁部とを有する中間成形品にブランクをプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品の前記中間天板部に前記凹形状又は凸形状の段差部を形成して目標形状の前記プレス成形品をプレス成形する第2成形工程と、を含み、
該第2成形工程において、前記凹形状又は凸形状の段差部を形成する際に、前記中間稜線部であった部位を前記中間天板部側に引き込むことにより、当該中間稜線部であった部位に曲げ曲げ戻しを発生させるようにしたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第1成形工程において、前記中間天板部に目標形状よりも段差高さの低い低段差部を形成し、
前記第2成形工程において、前記低段差部を目標形状の段差高さにすることにより前記段差部を形成する、ことを特徴とする請求項1記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項3】
天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部直交断面において凹形状又は凸形状の段差部が前記天板部に前記稜線部の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品を1工程で製造するプレス成形品の製造方法であって、
前記天板部と該天板部から前記稜線部を介して連続する前記縦壁部とにブランクを成形し、前記稜線部の成形が完了した後又は前記稜線部の成形が完了する直前に、前記天板部に前記凹形状又は前記凸形状の段差部を形成することにより、該段差部を形成する前に前記稜線部であった部位を前記天板部側に引き込むことで当該稜線部であった部位に曲げ曲げ戻しを発生させるようにしたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス成形品の製造方法により、前記天板部と、該天板部の両縁から前記稜線部を介して連続する一対の前記縦壁部と、前記天板部に前記段差部が形成された前記プレス成形品をプレス成形するプレス成形工程と、
該プレス成形工程においてプレス成形した前記プレス成形品の前記天板部を前記稜線部の延在する方向に切断して前記プレス成形品を分割する分割工程と、を含むことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部の延在する方向に沿って前記天板部に凹形状又は凸形状の段差部が形成されたプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性基準の厳格化により、車体の衝突安全性の向上が進展する中で、昨今の二酸化炭素排出規制を受けて、車体の軽量化も必要である。そこで、車体の衝突安全性能の向上と軽量化とを両立するため、従来に比べてさらに高強度な金属板が車体に採用されつつある。至近では、引張強度が1.5GPa級以上の超高張力鋼板の適用が図られている。
【0003】
このような金属板は、プレス成形時に発生する応力が大きくなり、プレス成形後に離型すると大きなスプリングバックが生じて目標形状から大きく乖離しやすい。特に、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有するプレス成形品は、天板部と縦壁部のなす内角が開くスプリングバックが発生する。
【0004】
そこで、これまでに天板部と縦壁部とのなす内角が開くスプリングバックを低減する技術がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、2回以上のプレス成形で所定の製品寸法にプレス成形するにあたって、2回目以降の最後のプレス成形において1回目よりもポンチ幅を広げる方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、パンチの加圧面よりもパンチ側パッドが外側に突出された状態で、ダイ側パッドを被加工材料に押し当てながらプレス成形し、成形下死点でパンチ側パッドがパンチの加圧面と同一の高さになるようにプレス成形する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-111725号公報
【特許文献2】特開2010-082660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に一例として示すような、天板部101に凹形状の段差部109が形成されたプレス成形品100においても、離型すると天板部101と縦壁部105とのなす内角が開くようなスプリングバックが発生する。そのため、プレス成形品100に特許文献1又は特許文献2に開示された方法を適用した。
された。
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、1回目に縦壁部105(壁部)と天板部101(底部)とを曲げ成形した部位が、2回目以降の最後の成形により曲げ戻され、該曲げ戻しにより縦壁部105と天板部101との内角を閉じるスプリングバックが生じる。その結果、前記2回目以降の最後の成形で稜線部の内角が開くスプリングバックが抑制される。しかし、1回目の縦壁部105と天板部101との曲げ角度は、2回目以降の最後の成形における稜線部の曲げ角度より大きかった。そのため、曲げ戻しにより内角を閉じるスプリングバックは、2回目以降の最後の成形により内角が開くスプリングバックより小さくなり、成形後のスプリングバックを十分に抑制できないことが判明した。
【0009】
また、特許文献2に開示された方法では、被加工材の断面線長が目標形状より長すぎると、パンチ肩部(図12のプレス成形品100の稜線部103に相当)で折れが発生した。さらに、プレス成形品100の断面線長が目標形状より短いと、稜線部103の角度が目標形状にならなかった。
【0010】
このように、特許文献1及び特許文献2に開示された方法では、スプリングバックが十分に低減せず、目標形状の外観を損ねるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、天板部に凹形状又は凸形状の段差部が形成された目標形状のプレス成形品を、外観を損ねることなくスプリングバックを低減することができるプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部直交断面において凹形状又は凸形状の段差部が前記天板部に前記稜線部の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品を少なくとも2工程で製造するものであって、
中間天板部と該中間天板部から中間稜線部を介して連続する中間縦壁部とを有する中間成形品にブランクをプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品の前記中間天板部に前記凹形状又は凸形状の段差部を形成して目標形状の前記プレス成形品をプレス成形する第2成形工程と、を含み、
該第2成形工程において、前記凹形状又は凸形状の段差部を形成する際に、前記中間稜線部であった部位を前記中間天板部側に引き込むことにより、当該中間稜線部であった部位に曲げ曲げ戻しを発生させるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記第1成形工程において、前記中間天板部に目標形状よりも段差高さの低い低段差部を形成し、
前記第2成形工程において、前記低段差部を目標形状の段差高さにすることにより前記段差部を形成する、ことを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部直交断面において凹形状又は凸形状の段差部が前記天板部に前記稜線部の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品を1工程で製造するものであって、
前記天板部と該天板部から前記稜線部を介して連続する前記縦壁部とにブランクを成形し、前記稜線部の成形が完了した後又は前記稜線部の成形が完了する直前に、前記天板部に前記凹形状又は前記凸形状の段差部を形成することにより、該段差部を形成する前に前記稜線部であった部位を前記天板部側に引き込むことで当該稜線部であった部位に曲げ曲げ戻しを発生させるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のプレス成形品の製造方法により、前記天板部と、該天板部の両縁から前記稜線部を介して連続する一対の前記縦壁部と、前記天板部に前記段差部が形成された前記プレス成形品をプレス成形するプレス成形工程と、
該プレス成形工程においてプレス成形した前記プレス成形品の前記天板部を前記稜線部の延在する方向に切断して前記プレス成形品を分割する分割工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部と、を有し、稜線部直交断面において凹形状又は凸形状の段差部が天板部に稜線部の延在する方向に沿って形成された目標形状のプレス成形品を、外観を損ねることなくスプリングバックを十分に低減して製造することができる。
さらに、本発明において、凹形状又は凸形状の段差部が形成された天板部と、その両縁から稜線部を介して連続する一対の縦壁部と、を有するプレス成形品を、稜線部の延在する方向に天板部を切断して分割する。これにより、1回のプレス成形で製造したハット断面形状又はコの字断面形状のプレス成形品から、スプリングバックを低減したZ字断面形状又はL字断面形状のプレス成形品を2個取りできるため、生産コストを低減することができて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法において、中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、目標形状のプレス成形品をプレス成形する第2成形工程と、説明する図である((a)第1成形工程、(b)第2成形工程)。
図2】本発明の実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法において、第1成形工程での中間成形品の成形過程と、第2成形工程での目標形状のプレス成形品の成形過程を示す稜線部直交方向の断面図である((a)第1成形工程、(b)第2成形工程)。
図3】天板部に凹形状の段差部が形成された目標形状のプレス成形品を1工程でプレス成形する従来の成形工程を説明する図である。
図4】天板部に凹形状の段差部が形成された目標形状のプレス成形品を1工程でプレス成形する従来の方法を説明する稜線部直交方向の断面図である。
図5】従来の方法によるプレス成形品の成形下死点における応力分布を示すコンター図と、離型してスプリングバックした後のプレス成形品の稜線部直交方向の断面図である((a)応力分布、(b)成形下死点とスプリングバック後のプレス成形品の断面)。
図6】本発明の実施形態1に係るプレス成形品の製造方法において、第1成形工程でプレス成形された中間成形品を第2成形工程でプレス成形した目標形状のプレス成形品の成形下死点における応力分布を示すコンター図と、離型してスプリングバックした後のプレス成形品の稜線部直交方向の断面図である((a)応力分布、(b)成形下死点とスプリングバック後のプレス成形品の断面)。
図7】本発明の実施形態1及び2に係る天板部に段差部が形成されたプレス成形品において、スプリングバックが抑制されるメカニズムを説明する図である((a)段差部形成前、(b)段差部形成後)。
図8】本発明の実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法において、1工程で目標形状のプレス成形品をプレス成形する図である。
図9】本発明の実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法において、1工程で目標形状のプレス成形品をプレス成形する工程を説明する稜線部直交方向の断面図である。
図10】本発明の実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法において、1工程でプレス成形された目標形状のプレス成形品の成形下死点における応力分布を示すコンター図と、成形下死点と離型してスプリングバックした後とのプレス成形品の稜線部直交方向の断面図である((a)応力分布、(b)成形下死点とスプリングバック後のプレス成形品の断面)。
図11】実施例において、成形対象としたハット断面形状のプレス成形品の寸法を示す図である。
図12】本発明において対象とするプレス成形品の一例として、天板部に凹形状の段差部が形成されたプレス成形品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態1及び2に係るプレス成形品の製造方法を説明するに先立って、本発明で対象とするプレス成形品と、本発明に至った経緯について説明する。
【0019】
<プレス成形品>
図12に、本発明で対象とするプレス成形品100の一例を示す。
プレス成形品100は、天板部101と、天板部101から稜線部103を介して連続する縦壁部105と、縦壁部105から連続するフランジ部107と、を有するハット断面形状である。そして、プレス成形品100は、稜線部直交断面において凹形状の段差部109が天板部101に稜線部103の延在する方向に沿って形成されたものである。ここで、段差部109は、稜線部103の延在する方向全長にわたって形成されている。
【0020】
<本発明に至った経緯>
図3に、プレス成形品100(図12)をプレス成形する方法の一例を示す。
従来のプレス成形品100を1工程でプレス成形する過程を、図4に示す稜線部直交方向の断面図に基づいて説明する。
まず、金属板であるブランク110(図4(i))における天板部101に相当する部位に凹形状の段差部109を形成する(図4(ii))。
【0021】
続いて、段差部109の形成と同時にブランク110の両縁側を縦壁部105とフランジ部107に成形する(図4(iii)~(v))。
【0022】
プレス成形品100を従来の1工程でプレス成形する過程を有限要素法(FEM)で解析し、成形下死点における応力分布を求めた結果を図5に示す。
図5(a)は、目標形状のプレス成形品100の斜視図に板厚方向外側の応力分布を表示したコンター図であり、図5(b)は、成形下死点と、離型してスプリングバックした後とのプレス成形品100を重ねて表示した稜線部直交方向の断面図である。
【0023】
図5(a)に示すように、天板部101と縦壁部105と間の稜線部103とその近傍において、稜線部103に直交する方向の大きな引張応力が発生している。その結果、図5(b)に示すように、プレス成形後に離型するとスプリングバックが生じ、プレス成形品100の天板部101と縦壁部105との内角が目標形状の内角より大きくなる。
【0024】
そこで、発明者は、プレス成形品100におけるこのようなスプリングバックを低減する方法を鋭意検討した。その結果、プレス成形の順番を入れ替えて、稜線部103を成形した後に天板部101に段差部109を形成することとした。これにより、稜線部103を天板部101側に引き込んで、該部位に曲げ曲げ戻しを発生させ、目標形状の稜線部103の応力を相殺する応力を発生させることを着想した。
本発明は、かかる着想に基づくものであり、以下の実施の形態で具体的に説明する。
【0025】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法は、図12に一例として示すプレス成形品100を製造するものである。そして、本実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法は、図1に示すように、第1成形工程と、第2成形工程と、を含むものである。
以下、第1成形工程と第2成形工程のそれぞれについて説明する。
【0026】
<第1成形工程>
第1成形工程は、図1(a)及び図2(a)に示すように、ブランク110を、中間成形品120にプレス成形する。ここで、中間成形品120は、中間天板部121と、中間稜線部123と、中間縦壁部125と、中間フランジ部127と、を有するハット断面形状である。そして、中間成形品120は、中間天板部121に段差部109(図2(b))が形成される前の形状である。
【0027】
<第2成形工程>
第2成形工程は、図1(b)及び図2(b)に示すように、中間成形品120の中間天板部121に段差部109を形成して目標形状のプレス成形品100をプレス成形する工程である。そして、第2成形工程においては、段差部109を形成すると中間成形品120における中間稜線部123であった部位が天板部101側に引き込まれることにより、当該部位に曲げ曲げ戻しを発生させる。
【0028】
なお、第2成形工程において、天板部101側に引き込まれるのは、中間成形品120の中間稜線部123であった部位の全部又は一部とするとよい。
【0029】
<スプリングバックが低減する理由>
本実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法により製造されたプレス成形品100においてスプリングバックが低減する理由を以下に説明する。
【0030】
本実施の形態1の第1成形工程及び第2成形工程のそれぞれについてプレス成形する過程を有限要素法(FEM)で解析し、第2成形工程での成形下死点における残留応力分布を図6に示す。
図6(a)は目標形状のプレス成形品100の斜視図に板厚方向外側の応力分布を表示したコンター図であり、図6(b)は、成形下死点と、離型してスプリングバックした後とのプレス成形品100とを重ねて表示した稜線部直交方向の断面図である。
【0031】
図6(a)に示すように、稜線部103の板厚方向外側においては、稜線部直交方向に引張応力が発生し、稜線部103近傍の板厚方向外側の天板部101側においては圧縮応力が発生していることが分かる。ここで、稜線部103に発生した引張応力と天板部101に発生した圧縮応力が相殺される。これにより、目標形状のプレス成形品100を離型してもスプリングバックが生じなくなる。その結果、図6(b)に示すように、離型後のプレス成形品100の天板部101と縦壁部105との内角は成形下死点における内角とほぼ同じになる。
【0032】
本実施の形態1に係る方法を図7に基づいて詳細に説明する。
【0033】
第1成形工程では、図7(a)に稜線部直交方向の断面を示すように、中間稜線部123で、板厚方向外側に曲げによる引張応力が発生し、板厚方向内側に圧縮応力が発生する。
続く第2成形工程では、図7(b)に稜線部直交方向の断面を示すように、中間天板部121に段差部109を成形すると、中間縦壁部125側から中間天板部121へと中間稜線部123であった部位が中間天板部121側に引き込まれる。これにより、プレス成形品100の天板部101における中間稜線部123であった部位では、板厚方向外側では曲げ曲げ戻しによる圧縮応力が発生し、板厚方向内側では引張応力が発生する。
【0034】
その結果、稜線部103の板厚方向外側における引張応力は、天板部101における曲げ戻された中間稜線部123の板厚方向外側の圧縮応力(図7(b))により相殺される。さらに、稜線部103の板厚方向内側における圧縮応力は、天板部101における曲げ戻された中間稜線部123の板厚方向内側の引張応力(図7(b))により相殺される。
このように、離型した後の目標形状のプレス成形品100においては、稜線部103に作用する応力が、段差部109の形成によって発生した応力によって相殺されることで、スプリングバックが十分に低減するわけである。
【0035】
以上、本実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法によれば、特許文献1に比べて、凹形状の段差部109が形成されたプレス成形品100において天板部101と縦壁部105との内角が開くようなスプリングバックを十分に低減することができる。
【0036】
また、本実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法は、特許文献2に開示された方法のように、中間成形品120の断面線長を目標形状よりも長くしすぎることはないため、稜線部103に折れが発生することはない。その上、中間成形品120の断面線長を目標形状よりも短くしすぎるものではないため、稜線部103の角度を目標形状とすることができる。
【0037】
なお、本実施の形態1の他の態様として、第1成形工程において、中間天板部121に目標形状よりも段差高さの低い低段差部を形成するものであってもよい。
この場合、続く第2成形工程において、第1成形工程で形成した低段差部を目標形状の段差高さにすることにより、段差部109を形成してスプリングバックを抑制することができる。
【0038】
[実施の形態2]
本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法について、天板部101に段差部109が形成された目標形状のプレス成形品100を1工程でプレス成形する過程(図8参照)について、図9に示す稜線部直交方向の断面図に基づいて説明する。
【0039】
まず、金型50のパッド59とパンチ57とでブランク110を挟む(図9(i))。
続いて、ブランク110の両縁側をカム61で挟んで寄せ曲げする(図9(ii))。
【0040】
そして、稜線部103の成形が完了する直前において、縦壁部105とフランジ部107を成形するとともに、天板部101に段差部109を形成する(図9(iii)~(iv))。
【0041】
本実施の形態2において、目標形状のプレス成形品100を1工程でプレス成形する過程を有限要素法(FEM)で解析し、成形下死点における残留応力分布を図10に示す。
【0042】
図10(a)はプレス成形品100の斜視図に板厚方向外側の応力分布を表示したコンター図であり、図10(b)は、プレス成形過程における稜線部直交方向の断面図である。
図10(a)に示すように、稜線部103とその近傍の板厚方向外側には引張応力が発生し、隣接する天板部101側には圧縮応力が発生する。
その結果、図10(b)に示すとおり、これら応力が相殺してスプリングバックは生じなくなり、プレス成形品100の天板部101と縦壁部105との内角は成形下死点における内角とほぼ同じになる。
【0043】
スプリングバックが低減する理由は、前述した図7と同様である。すなわち、段差部109を形成する前のプレス成形途中では、図7(a)に示すとおり、板厚方向外側に曲げによる引張応力が発生し、板厚方向内側に圧縮応力が発生する。その後、成形下死点近傍で段差部109が形成されると、稜線部103から天板部101へと引き込まれる。これにより、図7(b)に示すように、板厚方向外側では曲げ曲げ戻しによる圧縮応力が発生し、板厚方向内側に引張応力が発生する。
【0044】
その結果、稜線部103の板厚方向外側における引張応力は、天板部101における曲げ戻された稜線部103の板厚方向外側の圧縮応力(図7(b))により相殺される。さらに、稜線部103の板厚方向内側における圧縮応力(図7(a))は、天板部101における曲げ戻された稜線部103の板厚方向内側の引張応力(図7(b))により相殺される。これにより、離型した後の目標形状のプレス成形品100においては、スプリングバックが十分に低減するわけである。
【0045】
以上、本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法によれば、凹形状の段差部109が形成されたプレス成形品100において天板部101と縦壁部105との内角が開くスプリングバックを十分に低減することができる。
さらに、本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法は、前述した実施の形態1と同様、目標形状のプレス成形品100の外観を不良とするものではない。
【0046】
なお、上記の本実施の形態2においては、稜線部103の成形が完了する直前に段差部109を形成するものであった。もっとも、本発明は、稜線部103の成形が完了した後に段差部109を形成するものであってもよい。
【0047】
また、本発明において、天板部に形成する凹形状の段差部の段差高さ(段差部の底面までの深さ)は、稜線部直交方向の断面長さの1/5~2倍の範囲で設定することが好ましい。ここで、稜線部直交方向の断面 長さとは、天板部との曲げ開始部位から縦壁部との曲げ止まり部位までの長さのことをいう。
【0048】
段差部の段差高さが1/5未満と小さすぎると、段差部を形成する際に縦壁部を引き込んで曲げ戻す量が少なくなり、離型した後のスプリングバックによる天板部と縦壁部の内角の拡大を十分相殺することができない。
一方、段差部の段差高さが2倍超えと大きすぎると、段差部を形成する際に縦壁部105を引き込む量が大きすぎて縦壁部をドロー成形して反りを発生させることになり、目標形状になりにくい。
【0049】
また、本実施の形態1及び2は、いずれも、プレス成形方向に凹んだ段差部が形成されたプレス成形品を対象としたものであった。もっとも、本発明は、稜線部直交断面において凸形状の段差部が天板部に稜線部の延在する方向に沿って形成されたプレス成形品を対象とするものであってもよい。
【0050】
凸形状の段差部が形成されたプレス成形品においても、実施の形態1又は2と同様の方法で凸形状の段差部を形成すればよい。この場合においても、凸形状の段差部を形成する際に縦壁部から天板部側へと材料が引き込まれる。このとき、目標形状の天板部において、2工程で目標形状のプレス成形する場合では中間稜線部であった部位において、1工程でプレス成形する場合では段差部を形成する前に稜線部であった部位において、曲げ戻しが発生する。その結果、離型した後の目標形状のプレス成形品においては、天板部と縦壁部の内角が拡大するスプリングバックを十分に低減できるわけである。
【0051】
なお、本発明は、ハット断面形状のプレス成形品に限らず、コの字断面形状、Z字断面形状、L字断面形状のプレス成形品においても、天板部と縦壁部とのなす内角が開くスプリングバックを低減することができる。
【0052】
また、天板部と縦壁部とフランジ部とを有してなるZ字断面形状のプレス成形品は、以下のように、プレス成形工程と、分割工程と、により製造することができる。
【0053】
プレス成形工程は、前述した実施の形態1又は2に係る方法により、図12に示すハット断面形状のプレス成形品100をプレス成形する工程である。
分割工程は、プレス成形したプレス成形品100の天板部101を稜線部の延在する方向に切断し、プレス成形品100を分割する工程である。これにより、Z字断面形状のプレス成形品を2個得ることができる。
【0054】
プレス成形工程でプレス成形したハット断面形状のプレス成形品においては、前述したように、スプリングバックを低減することができる。
そのため、続く分割工程においてハット断面形状のプレス成形品を分割したZ字断面形状のプレス成形品は、スプリングバックを十分に低減したものである。
このように、スプリングバックを低減したZ字断面形状のプレス成形品を、1回のプレス成形で製造したハット断面形状のプレス成形品から2個取りできるため、生産コストを低減することができて好ましい。
【0055】
L字断面形状のプレス成形品では、コの字断面形状のプレス成形品をプレス成形し、続く分割工程で天板部を切断してL字断面形状のプレス成形品に2分割してもよい。
【実施例0056】
本発明の作用効果を検証したので、以下、これについて説明する。
板厚1.0mm、引張強度1470MPa級又は引張強度980MPa級の鋼板を用い、ハット断面形状、コの字断面形状、Z字断面形状、L字断面形状のプレス成形品を製造した。
【0057】
ハット断面形状のプレス成形品100の目標形状の寸法は、図11に示すように、長さを50mm、天板部101の幅を150mm、縦壁部105の縦壁高さを55mm、縦壁部と天板部のなす内角を95°、稜線部103の曲げ半径をR4mmとした。さらに、段差部109の幅を80mm、段差高さを9mm(稜線部直交方向の断面長さの1.43倍)とした。また、浅い凹形状、浅い凸形状の段差部(以下、低段差部と称する)の段差高さを5mmとした。
【0058】
コの字断面形状のプレス成形品は、図11に示すハット断面形状のプレス成形品100からフランジ部107を除いたものであり、各部位の寸法は、図11に示すプレス成形品100の寸法と等しくした。
【0059】
Z字断面形状のプレス成形品は、図11に示すハット断面形状のプレス成形品100から一方の縦壁部105とフランジ部107とを除いたものである。そして、天板部と段差部の幅をそれぞれ半分である75mm、40mmとして、その他の部位の寸法はプレス成形品100の寸法と等しくした。
【0060】
L字断面形状のプレス成形品は、図11に示すハット断面形状のプレス成形品100から一方の縦壁部105及び双方のフランジ部107を除いたものであり、天板部と段差部の幅をそれぞれ半分とし、その他の部位の寸法はプレス成形品100の寸法と等しくした。
【0061】
実施例において、前述した実施の形態1及び2で述べた方法によりプレス成形したものを発明例とした。発明例では、前述の目標形状において天板部に形成する段差部の形状、工程数、天板部に段差部を形成するタイミングを変更した。なお、プレス成形品の工程数については、前述した実施の形態1に係る方法として2工程、前述した実施の形態2に係る方法として1工程とした。
【0062】
そして、目標形状のプレス成形品を離型してスプリングバックした後の天板部と縦壁部との内角を測定し、スプリングバック量として評価した。
さらに、前述した図3に示した従来の方法により、凹形状又は凸形状の段差部が天板部に形成されたプレス成形品を1工程でプレス成形したものを従来例とした。従来例についても、発明例と同様、目標形状のプレス成形品を離型してスプリングバックした後の天板部と縦壁部との内角を測定した。
表1に、発明例及び従来例の結果をまとめて示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1において、No.1~No.26は、引張強度1470MPa級の鋼板をブランクとして用いた。
No.1~No.4は、天板部101に凹形状の段差部109が形成されたハット断面形状のプレス成形品100(図11)をプレス成形したものである。
【0065】
No.1は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凹形状の段差部109を形成したものである。No.1における天板部101と縦壁部105との内角が111度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0066】
No.2は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部109を形成したものである。No.2における天板部101と縦壁部105との内角が102度であり、従来例のNo.1よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0067】
No.3は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部109を形成したものである。No.3における天板部101と縦壁部105との内角が100度であり、従来例のNo.1及び発明例のNo.2よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0068】
No.4は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程で浅い凹形状の低段差部を形成し、第2成形工程で目標形状の段差高さにしたものである。No.4における天板部101と縦壁部105との内角が101度であり、従来例のNo.1よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0069】
表1において、No.5~No.8は、天板部に凹形状の段差部が形成されたコの字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0070】
No.5は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凹形状の段差部を形成したものである。No.5における天板部と縦壁部との内角が108度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0071】
No.6は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を形成するものである。No.6における天板部と縦壁部との内角が98度であり、従来例のNo.5よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0072】
No.7は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を形成したものである。No.7における天板部101と縦壁部105との内角が98度であり、発明例のNo.6と同様に従来例のNo.5よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0073】
No.8は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程で浅い凹形状の低段差部を形成し、第2成形工程で目標形状の段差高さにしたものである。No.8における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.5よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0074】
表1において、No.9~No.12は、天板部に凸形状の段差部が形成されたハット断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0075】
No.9は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凸形状の段差部を形成したものである。No.9における天板部と縦壁部との内角が115度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0076】
No.10は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.10における天板部と縦壁部との内角が101度であり、従来例のNo.9よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0077】
No.11は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.11における天板部101と縦壁部105との内角が101度であり、No.10と同様に従来例のNo.9よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0078】
No.12は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程で低い凸形状の低段差部を形成し、第2成形工程で目標形状の段差高さにしたものである。No.12における天板部と縦壁部との内角が104度であり、従来例のNo.9よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0079】
表1において、No.13~No.16は、天板部に凸形状の段差部が形成されたコの字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0080】
No.13は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凸形状の段差部を形成したものである。No.13における天板部と縦壁部との内角が113度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0081】
No.14は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.14における天板部と縦壁部との内角が101度であり、従来例のNo.13よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0082】
No.15は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.15における天板部と縦壁部との内角が101度であり、発明例のNo.14と同様に従来例のNo.13よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0083】
No.16は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程では凸形状の低段差部を形成し、第2成形工程で目標形状の段差高さにしたものである。No.16における天板部と縦壁部との内角が101度であり、発明例のNo.14及びNo.15と同様に従来例のNo.13よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0084】
表1において、No.17~No.21は、Z字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0085】
No.17は、従来の1工程で、天板部に段差部を形成せずにプレス成形したものである。No.17における天板部と縦壁部との内角が113度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0086】
No.18は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を天板部に形成したものである。No.18における天板部と縦壁部との内角が102度であり、従来例のNo.17よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0087】
No.19は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を天板部に形成したものである。No.19における天板部と縦壁部との内角が101度であり、従来例のNo.17よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0088】
No.20は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を天板部に形成したものである。No.20における天板部と縦壁部との内角が100度であり、従来例のNo.17よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0089】
No.21は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を天板部に形成したものである。No.21における天板部と縦壁部との内角が101度であり、発明例のNo.19と同様に従来例のNo.17よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0090】
表1において、No.22~No.26は、L字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0091】
No.22は、従来の1工程で、天板部に段差部を形成せずにプレス成形したものである。No.22における天板部と縦壁部との内角が108度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0092】
No.23は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を形成したものである。No.23における天板部と縦壁部との内角が98度であり、従来例のNo.22よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0093】
No.24は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.24における天板部と縦壁部との内角が101度であり、従来例のNo.22よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0094】
No.25は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を形成したものである。No.25における天板部と縦壁部との内角が98度であり、発明例のNo.23と同様に従来例のNo.22よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0095】
No.26は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.26における天板部と縦壁部との内角が101度であり、発明例のNo.24と同様に従来例のNo.22よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0096】
表1において、No.51~No.76は、引張強度980MPa級の鋼板をブランクとして用いた。
No.51~No.54は、天板部101に凹形状の段差部109が形成されたハット断面形状のプレス成形品100(図11)をプレス成形したものである。
【0097】
No.51は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凹形状の段差部109を形成したものである。No.51における天板部101と縦壁部105との内角が103度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0098】
No.52は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部109を形成したものである。No.52における天板部101と縦壁部105との内角が99度であり、従来例のNo.51よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0099】
No.53は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部109を形成したものである。No.53における天板部101と縦壁部105との内角が97度であり、従来例のNo.51よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0100】
No.54は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程では低段差部を形成し、第2成形工程では目標形状の段差高さにしたものである。No.54における天板部101と縦壁部105との内角が97度であり、発明例のNo.53と同様に従来例のNo.51よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0101】
表1において、No.55~No.58は、天板部に凹形状の段差部が形成されたコの字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0102】
No.55は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凹形状の段差部を形成したものである。No.55における天板部と縦壁部との内角が101度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0103】
No.56は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を形成したものである。No.56における天板部と縦壁部との内角が96度であり、従来例のNo.55よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0104】
No.57は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を形成したものである。No.57における天板部101と縦壁部105との内角が96度であり、発明例のNo.56と同様に従来例のNo.55よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0105】
No.58は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程では低段差部を形成し、第2成形工程では低段差部を目標形状の段差高さにしたものである。No.58における天板部と縦壁部との内角が96度であり、発明例のNo.56及びNo.57と同様に従来例のNo.55よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0106】
表1において、No.59~No.62は、天板部に凸形状の段差部が形成されたハット断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0107】
No.59は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凸形状の段差部を形成したものである。No.59における天板部と縦壁部との内角が110度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0108】
No.60は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.60における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.59よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0109】
No.61は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.61における天板部101と縦壁部105との内角が98度であり、従来例のNo.59よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0110】
No.62は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程では低段差部を形成し、第2成形工程では目標形状の段差高さにして段差部を形成したものである。No.62における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.59よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0111】
表1において、No.63~No.66は、天板部に凸形状の段差部が形成されたコの字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0112】
No.63は、従来の1工程でプレス成形したものであって、成形初期から凸形状の段差部を形成したものである。No.63における天板部と縦壁部との内角が107度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0113】
No.64は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.64における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.63よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0114】
No.65は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.65における天板部と縦壁部との内角が98度であり、従来例のNo.63及びよりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0115】
No.66は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第1成形工程では低段差部を形成し、第2成形工程では目標形状の段差高さにして段差部を形成したものである。No.66における天板部と縦壁部との内角が99度であり、発明例のNo.64と同様に従来例のNo.63よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0116】
表1において、No.67~No.71は、Z字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0117】
No.67は、従来の1工程で、天板部に段差部を形成せずにプレス成形したものである。No.67における天板部と縦壁部との内角が106度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0118】
No.68は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を形成したものである。No.68における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.67よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0119】
No.69は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.69における天板部と縦壁部との内角が100度であり、従来例のNo.67よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0120】
No.70は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を形成したものである。No.70における天板部と縦壁部との内角が97度であり、従来例のNo.67よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0121】
No.71は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.71における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.67よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0122】
表1において、No.72~No.76は、L字断面形状のプレス成形品(図示なし)をプレス成形したものである。
【0123】
No.72は、従来の1工程で、天板部に段差部を形成せずにプレス成形したものである。No.72における天板部と縦壁部との内角が101度であり、スプリングバックが大きく生じた。
【0124】
No.73は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凹形状の段差部を形成したものである。No.73における天板部と縦壁部との内角が96度であり、従来例のNo.72よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0125】
No.74は、本発明に係る1工程でプレス成形したものであって、成形下死点近傍で凸形状の段差部を形成したものである。No.74における天板部と縦壁部との内角が99度であり、従来例のNo.72よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0126】
No.75は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凹形状の段差部を形成したものである。No.75における天板部と縦壁部との内角が96度であり、発明例の73と同様に従来例のNo.72よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【0127】
No.76は、本発明に係る第1成形工程と第2成形工程とによる2工程でプレス成形したものであって、第2成形工程において凸形状の段差部を形成したものである。No.76における天板部と縦壁部との内角が98度であり、従来例のNo.72よりもスプリングバックが低減して良好であった。
【符号の説明】
【0128】
10 第1の金型
20 第2の金型
30 金型
50 金型
59 パッド
61 カム
100 プレス成形品
101 天板部
103 稜線部
105 縦壁部
107 フランジ部
109 段差部
110 ブランク
120 中間成形品
121 中間天板部
123 中間稜線部
125 中間縦壁部
127 中間フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12