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  • 特開-発泡粒子成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070952
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】発泡粒子成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/232 20060101AFI20240517BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240517BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08J9/232 CES
C08J9/232 CET
C08L25/04
C08L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181606
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳修
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA21K
4F074AA98
4F074AB05
4F074AG04
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA35
4F074CA39
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA33
4F074DA59
4J002BB021
4J002BB022
4J002BB111
4J002BB112
4J002BB211
4J002BB212
4J002BC021
4J002BC022
4J002BP021
4J002BP022
4J002GG02
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】
発泡粒子成形体の物性を良好に維持しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮させ生産性を向上させることができる発泡粒子成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス(14)、ポリオレフィン系樹脂成分をドメイン(12)とする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子A(10)と、ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス(22)、ポリスチレン系樹脂成分をドメイン(24)とする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子B(20)とが混在し、かつ複合樹脂発泡粒子A(10)と複合樹脂発泡粒子B(20)との質量比が3:97~60:40である混合発泡粒子を型内成形することにより発泡粒子成形体を製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、
ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Aと、
ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Bとが混在し、かつ、
前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~60:40である混合発泡粒子を型内成形することを特徴とする、発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項2】
前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度が20kg/m以上90kg/m以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度の比が0.7以上1.4以下である、請求項1に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混合発泡粒子の平均嵩密度が20kg/m以上90kg/m以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項4】
前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径の比が0.7以上1.4以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項5】
前記複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合PSaが60質量%以上90質量%以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合PSbが60質量%以上90質量%以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項6】
前記複合樹脂発泡粒子Aをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%未満(0を含む)であり、前記複合樹脂発泡粒子Bをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%以上40質量%以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項7】
260℃、荷重2.16kgで測定される複合樹脂発泡粒子AのメルトマスフローレイトMFRaが2.0g/10分以上20g/10分以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【請求項8】
前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~40:60である、請求項1又は2に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子成形体の物性を良好に維持しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1に示されるようなポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分との複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、緩衝性、軽量性、断熱性等の優れた環境適合物性を有する。そのため、上記発泡粒子成形体は、包装分野、自動車分野、建築・土木分野など多種多様の用途に用いることができると共に、更なる用途展開が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-180073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述する発泡粒子成形体の製造方法の観点からは、生産性を高めることが望まれていた。より具体的には、一回の型内成形における一連の工程に要する時間が短く、成形サイクルに優れる製造方法の提案が望まれていた。ただし、製造方法を改善したことによって、発泡粒子成形体の物性が著しく損なわれることは望ましくない。
【0005】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたものであり、発泡粒子成形体の物性を良好に維持しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮させ生産性を向上させることができる発泡粒子成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発泡粒子成形体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Aと、ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Bとが混在し、かつ、上記複合樹脂発泡粒子Aと上記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~60:40である混合発泡粒子を型内成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡粒子成形体の製造方法によれば、発泡粒子成形体の物性を良好に維持しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮することができる発泡粒子成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(1a)は、本発明の一実施形態において用いられる複合樹脂発泡粒子Aの内部の形態学的特徴を説明するための説明図であり、(1b)は、本発明の一実施形態において用いられる複合樹脂発泡粒子Bの内部の形態学的特徴を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発泡粒子成形体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を用いて型内成形して発泡粒子成形体を製造する。上記複合樹脂発泡粒子として、複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bが用いられる。これらの複合樹脂発泡粒子は、いずれもポリスチレン系樹脂成分およびポリオレフィン系樹脂成分を含むが、樹脂成分分布の形態学的特徴において両者は相違する。
即ち、複合樹脂発泡粒子Aは、ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する。一方、複合樹脂発泡粒子Bは、ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する。
本発明は、かかる複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bが所定範囲の質量比で混在する混合発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を製造する。具体的には、複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとの質量比は、3:97~60:40となるよう調整される。
【0010】
上述するとおり本発明は、樹脂成分分布の形態学的特徴の異なる複合樹脂発泡粒子を所定の割合で用いることによって、発泡粒子成形体の物性を良好に維持しつつ、発泡粒子成形体を製造する際の成形サイクルを短縮し、生産性の向上を図ることができる発泡粒子成形体の製造方法を提供する。
複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bは、共にポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分を含むが、これらの分布に関する形態学的特徴が異なっている。そしてこのように樹脂成分分布の形態学的特徴の異なる複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bを所定の割合で用いることが発泡粒子成形体の製造において有利に働くことが見いだされ、本発明の所期の課題を解決する製造方法の提供に至った。
【0011】
この理由は定かではないが、樹脂成分分布の形態学的特徴の異なる複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bを所定の割合で用いて型内成形を行うと、型内成形時において、複合樹脂発泡粒子Bと比較して、複合樹脂発泡粒子Aの気泡の一部が破泡しやすくなるためか、冷却の際に、発泡粒子成形体の熱が放散され易くなり、得られる発泡粒子成形体の圧縮応力が維持される一方、冷却時間の短縮が図られることが考えられる。
以下に本発明の製造方法についてさらに説明する。尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限および下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限および下限のすべての組み合わせから決定することができる。また以下の説明では、樹脂粒子または発泡粒子における樹脂成分分布の形態学的特徴のことを、単に形態学的特徴という場合がある。
【0012】
[海島構造]
本発明に関し、海島構造とは、発泡粒子を構成する樹脂成分の分布を観察した場合にドメイン(島構造)およびマトリックス(海構造)が確認される構造を指す。ドメイン(島構造)とは、顕微鏡観察で確認される独立した複数の相を指し、マトリックス(海構造)とは、ドメイン(島構造)を取り囲む連続した相を指す。
【0013】
上記海島構造を有する発泡粒子は、海島構造を有する樹脂粒子を発泡させることで製造される。海島構造に関し、図1を用いてさらに説明する。図1aは、本発明の一実施形態に用いられる複合樹脂発泡粒子Aを作製するために用いられる複合樹脂粒子a(10)の形態学的特徴を模擬的に示す説明図であり、図1bは、本発明の一実施形態に用いられる複合樹脂発泡粒子Bを作製するために用いられる複合樹脂粒子b(20)の形態学的特徴を模擬的に示す説明図である。
図1aに示すように複合樹脂粒子a(10)の形態学的特徴において、ポリエチレン系樹脂成分をドメイン(12)とし、ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス(14)とする海島構造が示される。
また図1bに示すように複合樹脂粒子b(20)の形態学的特徴において、ポリエチレン系樹脂成分をマトリックス(22)とし、ポリスチレン系樹脂成分をドメイン(24)とする海島構造が示される。
【0014】
複合樹脂粒子における樹脂成分の分布により示される海島構造は、公知の方法、たとえば、特開2016-069471公報等に記載された手法で確認することができる。
具体的には、たとえば、複合樹脂粒子を略二等分するように切断することで複合樹脂粒子の中心部分が露出した観察用サンプルを得る。なお、押出機を用いて複合樹脂粒子を作製する場合、複合樹脂粒子製造時における押出方向に対して直交する方向に複合樹脂粒子を切断することで、複合樹脂粒子の中心部分が露出した観察用サンプルを得ることができる。次いで、この観察用サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウムにて染色させた後、ウルトラミクロトームを用いて上記観察用サンプルから超薄切片を作製する。この超薄切片をグリッドに載せ、透過型電子顕微鏡(日本電子社製のJEM1010)により倍率10,000倍のTEM写真を撮影する。TEM写真から、複合樹脂粒子の中心部におけるポリオレフィン系樹脂の相とポリスチレン系樹脂の相の分布状態を目視にて観察する。上述する染色による濃淡の発生で樹脂の分布状態を判別することが可能である。具体的には、ポリオレフィン系樹脂およびポリスチレン系樹脂の関係においては、四酸化ルテニウムによって濃く染色される部分がポリオレフィン系樹脂であり、染色されない、もしくは薄く染色される部分がポリスチレン系樹脂であると判別することができる。
【0015】
なお、通常、複合樹脂粒子と、当該複合樹脂粒子から得られた複合樹脂発泡粒子とは、樹脂成分分布の形態学的特徴は変化せず、複合樹脂粒子における海島構造が、当該複合樹脂粒子を発泡して得られる複合樹脂発泡粒子においても維持される。そのため、複合樹脂粒子aを発泡させて得た複合樹脂発泡粒子Aは、複合樹脂粒子aと同様にポリスチレン系樹脂をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂をドメインとする海島構造を有すると言え、複合樹脂粒子bを発泡させて得た複合樹脂発泡粒子Bは、複合樹脂粒子bと同様にポリオレフィン系樹脂をマトリックス、ポリスチレン系樹脂をドメインとする海島構造を有すると言える。
【0016】
尚、複合樹脂発泡粒子がポリスチレン系樹脂成分およびポリオレフィン系樹脂成分から構成されることは、以下のとおり確認することができる。
まず、約5gの複合樹脂発泡粒子を採取してサンプルとし、150メッシュの金網袋中に入れる。次いで、容量200mlの丸型フラスコに約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットする。その後、マントルヒーターで8時間加熱することにより、ソックスレー抽出を行う。抽出終了後、キシレン溶液をアセトン600mlへ投入して得られた混合溶液をろ紙を用いてろ過することにより、上述の混合溶液から可溶分と不溶分の分離を行う。それぞれの成分を減圧蒸発乾固させて固形物を得る。各固形物に対して、示差熱分析及び赤外分光法による測定を行い、ガラス転移温度、融解ピーク、最大吸収波長を確認することで、サンプルとした複合樹脂発泡粒子がポリスチレン系樹脂成分及びポリオレフィン系樹脂成分から構成されることを確認することができる。なお、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂成分から構成される複合樹脂発泡粒子を用いて上記測定を行った際に、前記可溶分から得られる固形物はポリスチレン系樹脂成分に対応し、前記不溶分から得られる固形物はオレフィン系樹脂成分に対応する。
【0017】
[複合樹脂発泡粒子]
(複合樹脂発泡粒子A)
複合樹脂発泡粒子Aは、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子でありポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を示す。
複合樹脂発泡粒子Aは、ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂粒子aを発泡させることで得ることができる。より具体的には、たとえば、ポリスチレン系樹脂成分の配合量が多くなるよう留意してポリスチレン系樹脂成分およびポリオレフィン系樹脂成分を押出機に供給し、溶融し押出して造粒することによってポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂粒子aを得る。そして当該複合樹脂粒子aを発泡させることで複合樹脂発泡粒子Aを得ることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、複合樹脂発泡粒子Aは、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体由来の発泡粒子(再生発泡粒子)であってもよい。
従来から再生発泡粒子のリサイクルは試みられていたが、再生発泡粒子を100%用いて型内成形を行い製造された発泡粒子成形体は、50%ひずみ時の圧縮応力が充分ではなかった。これに対し、本発明は、複合樹脂発泡粒子Aとして再生発泡粒子を所定範囲の割合で使用し、50%ひずみ時の圧縮応力が良好な発泡粒子成形体を製造することが可能である。即ち、複合樹脂発泡粒子Aとして再生発泡粒子を用いる本発明の一実施形態によれば、発泡粒子成形体の製造に用いられる資源を削減することができるため、環境対応技術として大きな技術的意義を有する。
【0019】
再生発泡粒子である複合樹脂発泡粒子Aは、たとえば以下のとおり製造される。
まず、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分を含む複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体を適度な大きさに破砕して粉砕物を準備する。
次に、上記粉砕物を押出機に供給し、溶融させて減容し、次いで押出して造粒することによってポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする複合樹脂粒子aが調製される。後工程である発泡工程において良好な発泡性を示す観点から、複合樹脂粒子aは、必要に応じて、再度、押出機に供給され溶融されるとともに、気泡調整剤などの任意の添加剤と混合された後、押出され造粒されてもよい。添加剤としては、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤等が例示される。尚、押出されて造粒させる造粒方法は、従来の樹脂粒子の製造方法と同様に適宜の方法で実施することができる。
【0020】
気泡調整剤としては、たとえば、高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸金属塩、ポリテトラフルオロエチレン粉末等の有機物;タルク、シリカ、ホウ酸亜鉛、ミョウバン等の無機物を1種または2種以上の組み合わせで用いることができる。気泡調整剤の配合量は複合樹脂粒子a100質量部に対して0.01~2質量部の範囲にすることが好ましい。気泡調整剤の配合量を上記範囲内にすることで、得られる複合樹脂発泡粒子Aが含む気泡の分布が均一となり、発泡粒子成型体を成形する際の成形サイクル、機械物性がより良好になる。
【0021】
ここで、ポリスチレン系樹脂成分をマトリックスとしポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を良好に実現するために、上述する複合樹脂粒子aにおけるポリオレフィン系樹脂成分よりもポリスチレン系樹脂成分が多く含有されるよう調整するとよい。かかる調整方法は特に限定されないが、たとえば、用いる使用済み等の発泡粒子成形体として、ポリオレフィン系樹脂成分よりもポリスチレン系樹脂成分が多く配合された発泡粒子成形体を用いる態様、あるいは、使用済み等の発泡粒子成形体の粉砕物と、別途準備されたポリスチレン系樹脂成分とを押出し装置において溶融混練し、得られる複合樹脂粒子aにおけるポリスチレン系樹脂成分の含有割合を調整する態様等が挙げられる。
【0022】
尚、本発明において、複合樹脂発泡粒子Aは、再生発泡粒子に限定されるものではない。複合樹脂発泡粒子Aは、バージン樹脂から調製された複合樹脂粒子aを用いて調製することもできる。この場合にも、ポリオレフィン系樹脂成分よりもポリスチレン系樹脂成分が多く配合されるよう、複合樹脂粒子aの組成を調整するとよい。
【0023】
上述のとおり調製された複合樹脂粒子aを任意の発泡方法によって発泡させることによって複合樹脂発泡粒子Aが製造される。任意の発泡方法としては、物理発泡剤を含浸させた樹脂粒子をスチームや温風等で加熱して発泡させる方法や、耐圧容器等の密閉可能な容器に水性媒体と樹脂粒子と物理発泡剤とを入れて、所定の温度・圧力に調整した後、容器の内容物を、容器内の圧力よりも低い圧力雰囲気下に放出して樹脂粒子を発泡させる方法等が例示される。使用する発泡剤は、ブタン、ペンタン、プロパン等の有機系物理発泡剤や、二酸化炭素、空気、窒素等の無機系物理発泡剤等が例示される。発泡粒子成形体を成形する成形サイクルを短縮させる観点から、無機系物理発泡剤を使用することが好ましい。
【0024】
上述する発泡方法の一態様に用いられる水性媒体には、必要に応じて複合樹脂粒子が分散媒に均一に分散するように分散剤、または分散助剤を添加してもよい。分散剤としてはたとえばアルミナ、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、金属石鹸、カオリン、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの粉末状の難水溶性物質が例示される。また分散助剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等が例示される。
【0025】
(複合樹脂発泡粒子B)
複合樹脂発泡粒子Bは、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であり、ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する。
複合樹脂発泡粒子Bは、ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂粒子bを発泡させることで得ることができる。より具体的には、たとえば、特開2016-180073等に記載された方法でポリオレフィン系樹脂成分を基材樹脂とする種粒子にスチレン系単量体を含浸重合させることにより複合樹脂粒子bを製造し、当該複合樹脂粒子bを発泡させることで得ることができる。このとき、良好な物性を示すという観点から複合樹脂発泡粒子Bにおいて、ポリオレフィン系樹脂成分よりもポリスチレン系樹脂成分の配合量が多くなるよう留意するとよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、複合樹脂発泡粒子Bは、非再生のポリスチレン系樹脂成分と非再生のポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂粒子bを発泡させてなる発泡粒子(バージン発泡粒子)であってもよい。特には、複合樹脂発泡粒子Aが再生発泡粒子であり、かつ複合樹脂発泡粒子Bがバージン発泡粒子であってもよい。
バージン発泡粒子を100%用いて型内成形を行った場合、成形における冷却時間が長くなる傾向にあった。これに対し、本発明は、複合樹脂発泡粒子Bとしてバージン発泡粒子を所定範囲の割合で使用し、良好な物性を維持しつつ冷却時間の短縮化を図ることが可能である。特に、再生発泡粒子である複合樹脂発泡粒子Aとバージン発泡粒子である複合樹脂発泡粒子Bとを所定範囲の割合で用いる本発明の実施態様によれば、環境に配慮がなされた上、物性が良好でかつ製造効率のよい発泡粒子成形体の製造方法を提供することができる。
【0027】
種粒子は、必要に応じて添加される添加剤をポリオレフィン系樹脂に配合し、配合物を溶融混練してから造粒することにより製造できる。上記添加剤としては、気泡調整剤、顔料、分散径拡大剤、スリップ剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤等が例示される。尚、押出されて造粒させる造粒方法は、従来の樹脂粒子の製造方法と同様に適宜の方法で実施することができる。
【0028】
種粒子に添加される気泡調整剤としては、たとえば、高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸金属塩、ポリテトラフルオロエチレン粉末等の有機物;タルク、シリカ、ホウ酸亜鉛、ミョウバン等の無機物を1種または2種以上の組み合わせで用いることができる。気泡調整剤の配合量は複合樹脂粒子b100質量部に対して0.01~2質量部の範囲にすることが好ましい。気泡調整剤の配合量を上記範囲内にすることで、複合樹脂発泡粒子Bが含む気泡の分布が均一となり、発泡粒子成型体を成形する際の成形サイクル、機械物性がより良好になる。
【0029】
複合樹脂発泡粒子Bを製造するために、上述するとおり得られた複合樹脂粒子bを発泡させる方法は、複合樹脂発泡粒子Aの製造に関し述べる発泡方法から適宜選択することができる。用いる発泡剤としては、発泡粒子成形体を成形する成形サイクルを短縮させる観点から、無機系物理発泡剤を使用することが好ましい。
【0030】
(ポリスチレン系樹脂成分)
本発明に用いられる複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bに含まれるポリスチレン系樹脂成分は、スチレン系樹脂中のスチレン成分単位が50質量%以上であり、スチレン系樹脂におけるスチレン成分単位が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
上記スチレン系樹脂成分を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、本発明の所期の目的を達成できる範囲で、スチレンと共重合可能なモノマーを用いてもよい。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル系単量体等が挙げられる。
【0032】
スチレン系単量体としては、複合樹脂粒子の発泡性を高めるという観点から、スチレンを単独で用いるか、スチレンとアクリル系単量体とを併用することが好ましい。さらに発泡性を高めるという観点からは、スチレン系単量体としては、スチレンとアクリル酸ブチルとを用いることが特に好ましい。この場合には、アクリル酸ブチルの配合量は、複合樹脂発泡粒子を構成する複合樹脂中のアクリル酸ブチル成分の割合が0.5質量%~10質量%になるように調整することが好ましく、1質量%~8質量%になるように調整することがより好ましく、2質量%~5質量%になるように調整することがさらに好ましい。
【0033】
(複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合)
製造される発泡粒子成形体に適度な剛性を付与しやすい観点からは、複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合PSaおよび複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合PSbは、それぞれ60質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
また、靭性を維持しつつ、より剛性の高い発泡粒子成形体を得ることができる観点からは、上記割合PSaおよび上記割合PSbは、それぞれ65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
また、良好な物性を示す発泡粒子成形体が得られやすい観点からは、上記割合PSaおよび上記割合PSbの差(PSa-PSb)は、-10%以上10%以下であることが好ましく、-5%以上5%以下であることがより好ましく、-2%以上2%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、複合樹脂発泡粒子中におけるポリスチレン系樹脂の割合は、複合樹脂粒子の製造に使用した樹脂中のポリスチレン系樹脂の割合から求めることができる。具体的には、複合樹脂発泡粒子Aにおいては、たとえば、複合樹脂粒子aを作製する際、押出機に投入されるポリスチレン樹脂成分の割合は、ポリスチレン系樹脂成分の割合が既知の複合樹脂発泡粒子から作製された複合樹脂粒子発泡成形体および、適宜追加で添加されたポリスチレン系樹脂成分から算出することができる。投入されたポリスチレン樹脂成分の割合から複合樹脂粒子aのポリスチレン系樹脂の配合割合を算出し、複合樹脂発泡粒子Aにおけるポリスチレン系樹脂の配合割合を算出し、決定することができる。複合樹脂発泡粒子Bにおいては、たとえば、複合樹脂粒子bを作製する際の種粒子(ポリオレフィン系樹脂成分)とスチレン系単量体(ポリスチレン系樹脂成分)の合計量におけるスチレン系単量体の割合から複合樹脂粒子bのポリスチレン系樹脂成分の配合割合を算出し、複合樹脂発泡粒子Bにおけるポリスチレン系樹脂の配合割合を決定することができる。
【0035】
(ポリオレフィン系樹脂成分)
本発明に用いられる複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bに含まれるポリオレフィン系樹脂成分を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が用いられ、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。
ポリエチレン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体等を用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、たとえば、プロピレン単独重合体、プロピレンに由来する構造単位が50質量%以上のプロピレン系共重合体が挙げられる。該共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
上記した樹脂は、1種の重合体でもよく、2種以上の重合体の混合物を用いてもよい。
【0036】
(複合樹脂発泡粒子の嵩密度)
複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度は、特に限定されないが、たとえば20kg/m以上90kg/m以下の範囲であることが好ましい。
また複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度は、特に限定されないが、たとえば20kg/m以上90kg/m以下であることが好ましい。
得られる発泡粒子成形体の機械的強度を高める観点からは、それぞれの嵩密度が、25kg/m以上であることがより好ましく、一方、得られる発泡粒子成形体の軽量性を高める観点からは、それぞれの嵩密度が60kg/m以下であることが好ましい。
混合発泡粒子を成形型内に導入し、熱成形するためにスチームを導入する際、複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bの混合状態が維持されやすいという観点から、複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度に対する複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度の比は、0.7以上1.4以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましく、0.9以上1.1以下であることがさらに好ましい。上述するとおり複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度とを同程度の値に調整することによって、型内成形時に両者を均一に混合させやすく、型内成形後に効率よく冷却することができる。
【0037】
複合樹脂発泡粒子の上記嵩密度は、たとえば以下のとおり測定することができる。
まず、約500cm3の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。次に、メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩容積を読み取り、これをV1[L]とする。次に、発泡粒子群の質量を測定し、これをW1[g]とする。発泡粒子群の質量W1[g]を発泡粒子群の容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めることができる。
【0038】
(複合樹脂発泡粒子の平均粒子径)
複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径は、特に限定されないが、たとえば2mm以上8mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましい。
また複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、2mm以上8mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましい。
混合発泡粒子を成形型内に導入し、熱成形するためにスチームを導入する際、複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bの混合状態が維持されやすいという観点から、複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径に対する複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径の比は、0.7以上1.4以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましく、0.9以上1.1以下であることがさらに好ましい。上述するとおり複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度とを同程度の値に調整することによって、型内成形時に両者を均一に混合させやすく、型内成形後に効率よく冷却することができる。
【0039】
複合樹脂発泡粒子の上記平均粒子径は、発泡粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。発泡粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(たとえば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。
【0040】
(キシレンによるソックスレー抽出)
上述する複合樹脂は、架橋していてもよいし、架橋していなくてもよい。より具体的には、上述する複合樹脂発泡粒子または発泡粒子成形体は、キシレンによるソックスレー抽出を行うことにより測定される、キシレン不溶分を含んでいなくともよく、キシレン不溶分を含んでいてもよい。
型内成形後の冷却時間を良好に短縮させうる観点から、キシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が少ない複合樹脂発泡粒子が混合発泡粒子に適度な割合で含まれることが好ましい。より具体的には、本発明の製造方法の一態様として、複合樹脂発泡粒子Aをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%未満(0を含む)であり、複合樹脂発泡粒子Bをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0041】
なお、複合樹脂発泡粒子Aは、上述するとおり、ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを混合して押出機に供給し、溶融し押出すことによって得られた複合樹脂粒子を発泡させる方法で製造されうる。このような製造方法を経た複合樹脂発泡粒子Aは、後述する方法で測定されるキシレン不溶分の割合が少なくなる傾向にある。
【0042】
本発明の一実施形態として、混合発泡粒子が、キシレンによりソックスレー抽出したときのキシレン不溶分の割合が3質量%未満(0を含む)である複合樹脂発泡粒子Aと、キシレンによりソックスレー抽出したときのキシレン不溶分の割合が3質量%以上40質量%以下である複合樹脂発泡粒子Bとを含む場合、複合樹脂発泡粒子Bの上記不溶分の割合(F2)と、複合樹脂発泡粒子Aの上記不溶分の割合(F1)との差(F2-F1)は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。この場合、得られる発泡粒子成形体の物性を維持しつつ、安定して冷却時間を短縮しやすくなる。
【0043】
複合樹脂発泡粒子におけるキシレン不溶分の割合は、以下のソックスレー抽出方法により求められる。具体的にはまず、約1gの複合樹脂発泡粒子を採取してサンプルとし、その質量を小数点第4位まで計量し、150メッシュの金網袋中に入れる。次いで、容量200mlの丸型フラスコに約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットする。その後、マントルヒーターで8時間加熱することにより、ソックスレー抽出を行い、抽出終了後、空冷により冷却する。冷却後、抽出管から金網袋を取り出し、約600mlのアセトンにより金網袋ごとサンプルを洗浄し、次いで、アセトンを揮発させる。その後、金網袋ごと温度120℃で乾燥し、金網袋から回収された乾燥物をキシレン不溶分とする。
キシレン不溶分の含有割合は、上述のとおり計量した複合樹脂発泡粒子の質量に対するキシレン不溶分の質量の割合を計算することで求めることができる。
【0044】
(複合樹脂発泡粒子のメルトマスフローレイト)
上述のとおり得られた複合樹脂発泡粒子Aの、260℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレイト(MFRa)は、1.0g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、2.0g/10分以上25g/10分以下であることがより好ましく、2.0g/10分以上20g/10分以下であることがさらに好ましい。上述するMFRaの範囲であれば、発泡粒子成形体の製造時の冷却時間を良好に短縮できるとともに好ましい物性を示す発泡粒子成形体を製造し易く、また成形型に対する寸法変化率の小さい発泡粒子成形体を提供可能である。
【0045】
一方、上述のとおり得られた複合樹脂発泡粒子Bの、260℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレイト(MFRb)は、0.01g/10分以上1.0g/10分以下であることが好ましい。
たとえば、メルトマスフローレイト(MFRa)が2.0g/10分以上20g/10分以下である複合樹脂発泡粒子Aと、メルトマスフローレイト(MFRb)が0.01g/10分以上1.0g/10分以下である複合樹脂発泡粒子Bとが所定の割合で混在した複合樹脂発泡粒子を用いることによって、優れた物性を維持しつつ、充分に冷却時間を短縮化させることが可能であり好ましい。
【0046】
複合樹脂発泡粒子のメルトマスフローレイトの測定方法は、JIS K7210-1:2014に基づいて、260℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
複合樹脂発泡粒子のメルトマスフローレイトを測定するための試料は、発泡粒子を200℃に温度調節した加熱プレス盤でプレスし、厚さ0.2mm以上1mm以下の脱泡されたプレスシートを作製し、該プレスシートからペレット状にシートを切り出すことで調製される。
【0047】
複合樹脂発泡粒子Aのメルトマスフローレイトは複合樹脂粒子aを調製する際の溶融混練の条件を調整することで制御することができる。具体的な調整手法として、押出機温度、押出機スクリュー回転数、複合樹脂粒子の溶融混練工程を複数回行うこと等が挙げられる。本発明において押出機温度、押出機スクリュー回転数、溶融混練工程の回数を増加させると複合樹脂発泡粒子Aのメルトマスフローレイトが上昇する傾向がある。
【0048】
[混合発泡粒子]
混合発泡粒子は、上述する複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとが混在する。混合発泡粒子の調製方法は特に限定されない。
たとえば、複合樹脂粒子aと複合樹脂粒子bとを所定の割合で混合させて得た混合物を圧力釜に入れて発泡剤を含浸させて発泡させることによって、混合発泡粒子を調製することができる。
また別の調製方法として、複合樹脂発泡粒子aを任意の方法で発泡させて複合樹脂発泡粒子Aを製造する。また複合樹脂発泡粒子bを任意の方法で発泡させて複合樹脂発泡粒子Bを製造する。そして、個別に製造された複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bを所定の割合で混合することで、混合発泡粒子を得ることもできる。
【0049】
本発明において、混合発泡粒子における、複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとの質量比(複合樹脂発泡粒子Aの質量:複合樹脂発泡粒子Bの質量)は、3:97~60:40に調整される。冷却時間の短縮化を図り生産サイクルを充分に短縮化させつつ、優れた物性を示す発泡粒子成形体を提供する観点からは、複合樹脂発泡粒子Bに対し複合樹脂発泡粒子Aの配合量を適度に抑えることが好ましく、具体的には、上記質量比は、3:97~40:60であることが好ましく、3:97~20:80であることがより好ましい。また環境保護の観点から複合樹脂発泡粒子Aとして再生発泡粒子を用いる場合には、リサイクル品の使用量を多く確保できる観点から、上記質量比率は、5:95~40:60であることが好ましい。
【0050】
(混合発泡粒子の平均嵩密度)
製造される発泡粒子成形体が適度な密度を示す観点から、混合発泡粒子の平均嵩密度は、20kg/m以上90kg/m以下であることが好ましく、25kg/m以上60kg/m以下であることがより好ましい。
【0051】
上記平均嵩密度は、混合発泡粒子における、複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとの質量比を考慮した、複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度とを加重平均した値として、求めることができる。尚、複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度の測定方法は上述の通りである。
【0052】
[型内成形]
本発明の製造方法は、上述する混合発泡粒子を用いて型内成形により発泡粒子成形体を製造する。本発明における型内成形とは、発泡粒子を用いた公知の型内成形方法を広く含む。たとえば、本発明の製造方法は、所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に混合発泡粒子を充填し、スチーム等の加熱媒体により成形型内に充填された混合発泡粒子を加熱する。キャビティ内の混合発泡粒子を加熱することによって更に複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bを発泡させると共に、相互に融着させ、混合発泡粒子を構成する複合樹脂発泡粒子同士を一体化させる。次いで成形型および成形型内の成形体が冷却された後、当該成形型から発泡粒子成形体が取り出される。ここでの冷却方法は特に限定されないが、たとえば水冷等が挙げられる。かかる一連の成形工程によって、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。上述するとおり、本発明は、冷却に要する時間が短縮されるため、上述する一連の工程の実施時間が短く成形サイクルに優れる。
【0053】
上述する型内成形における成形圧は、一般的な発泡粒子の型内成形と同程度とすることができ、たとえば、0.08MPa(G)以上0.14MPa(G)以下の範囲で調整することができる。尚、本明細書において(G)とは、ゲージ圧を示す。
【0054】
型内成形における上記冷却の終了は、スチームによる加熱終了後、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G)になったことにより確認される。したがって、型内成形における冷却時間は、発泡粒子を用いた型内成形時において、スチームによる加熱が終了した時点から、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G)になった時点までの時間を測定することで測定される。
【0055】
[発泡粒子成形体]
次に本発明の製造方法により製造される発泡粒子成形体について説明する。
(成形型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率)
本発明の製造方法で製造される発泡粒子成形体は、複合樹脂発泡粒子Aを100%用いて製造された発泡粒子成形体および複合樹脂発泡粒子Bを100%用いて製造された発泡粒子成形体と同程度の、成形型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率を示しうる。
上記寸法変化率は、値が小さいほど発泡粒子成形体の収縮が少なく、成形型の寸法に近い良好な発泡粒子成形体が得られていることを意味する。上記寸法変化率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。より望ましい寸法変化率を示す発泡粒子成形体を提供するために、たとえば、上述する好ましい範囲のメルトマスフローレイトを示す複合樹脂発泡粒子Aを使用するとよい。
上記寸法変化率の測定方法は、後述する実施例の記載が参照される。
【0056】
(発泡粒子成形体の密度)
本発明により製造される発泡粒子成形体の密度は、特に限定されないが、適度な物性をしめしつつ軽量性にも優れる観点から、20kg/m以上90kg/m以下であることが好ましい。
上記密度の測定方法は、後述する実施例の記載が参照される。
【0057】
(発泡粒子成形体の独立気泡率)
本発明により製造される発泡粒子成形体の独立気泡率は、特に限定されないが、得られる発泡粒子成形体の機械的物性を高めやすい観点からは、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。一方、冷却時間を短縮化させ型内成形時の成形サイクルの改善を図りやすい観点からは、発泡粒子成形体の独立気泡率は、95%以下であることが好ましく、93%以下であることが好ましく、92%以下であることがさらに好ましく、90%以下であることが特に好ましい。
上記独立気泡率の測定方法は、後述する実施例の記載が参照される。
【0058】
(発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力σ50
本発明により製造される発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力σ50は、特に限定されないが、バージン発泡粒子100%を用いて製造された発泡粒子成形体と同程度の優れた圧縮物性を示し、また種々の用途に対応可能な物性を示す観点から280kPa以上であることが好ましく、300kPa以上であることがより好ましい。
上記50%ひずみ時の圧縮応力σ50の測定方法は、後述する実施例の記載が参照される。
【0059】
(σ50/密度)
発泡粒子成形体の密度に対する、発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力σ50の比(σ50/密度)は広い密度範囲にわたって高い緩衝特性を有する発泡体を得る観点から、7kPa/[kg/m]以上であることが好ましく、8[kg/m]以上であることがより好ましく、9[kg/m]以上であることがさらに好ましい。上限は実用上20[kg/m]以下であり、好ましくは15[kg/m]以下である。
【実施例0060】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。まず、以下に示す方法で、複合樹脂発泡粒子B(B1、B2)および複合樹脂発泡粒子A(A1~A6)を製造した。製造された各複合樹脂発泡粒子Aおよび各複合樹脂発泡粒子Bの詳細は、表1に示す。また各複合樹脂発泡粒子Aおよび各複合樹脂発泡粒子Bを用いた実施例、比較例について表2、3に示す。尚、表2、3では、複合樹脂発泡粒子Aおよび複合樹脂発泡粒子Bをそれぞれ発泡粒子A、発泡粒子Bとして記載する。
【0061】
(複合樹脂発泡粒子B1の製造)
まず以下のとおりポリエチレン系樹脂を用いた種粒子を製造した。
ポリエチレン系樹脂として、メタロセン重合触媒を用いて重合してなる直鎖状低密度ポリエチレン(具体的には、東ソー(株)製「ニポロンZHF210K」)を準備した。このポリエチレン系樹脂の融点Tmは、103℃であった。また、酸化防止剤マスターバッチとして、東邦(株)製「TMB113」を準備した。さらに、発泡核剤マスターバッチとしてポリコール(株)製「CE-7335」を準備した。ポリコール(株)製「CE-7335」は、ホウ酸亜鉛(気泡調整剤)の含有量が10質量%、直鎖状低密度ポリエチレン(ニポロンZHF210K)の含有量が90質量%であった。ポリエチレン系樹脂8.57kgと、酸化防止剤マスターバッチ0.09kgと、気泡調整剤マスターバッチ1.34kgとをヘンシェルミキサーに供給し、5分間混合することにより、樹脂混合物を得た。次いで、50mmφの単軸押出機を用いて樹脂混合物を溶融混練し、水中カット方式により平均0.35mg/個に切断することにより、種粒子を得た。
【0062】
次に、上述のとおり得られた種粒子にスチレン系単量体を含浸させ重合させることによって複合樹脂粒子b1を得た。
具体的には、撹拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6.0gを加えた。その後、粉末状の硝酸マグネシウム6水和物12.9gを加え、室温で30分間撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)2.0g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.2g、及び種粒子75g添加した。
次いで、重合開始剤として、2種類の有機過酸化物を準備した。具体的には、有機過酸化物Aとして、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製の「パーブチルE」)を準備し、有機過酸化物Bとして、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(日油株式会社製「パーヘキシルZ」)を準備した。また、連鎖移動剤として、αメチルスチレンダイマー(日油株式会社製「ノフマーMSD」)を準備した。そして、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート1.72gと、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート0.86gと、αメチルスチレンダイマー0.63gとを、第1モノマー(スチレン系単量体)に溶解させた。そして、溶解物を回転速度500rpmで撹拌しながら、種粒子等が添加された上述のオートクレーブ内に添加した。尚、第1モノマーとしては、スチレン60gとアクリル酸ブチル15gとの混合モノマーを用いた。
次いで、オートクレーブ内の空気を窒素にて置換した後、昇温を開始し、1時間30分かけてオートクレーブ内を温度100℃まで昇温させた。昇温後、この温度100℃で1時間保持した。その後、撹拌速度を450rpmに下げ、温度100℃で7.5時間保持した。このときの温度(具体的には100℃)が重合温度である。また、温度100℃に到達してから1時間経過時に、第2モノマー(スチレン系単量体)としてのスチレン350gを5時間かけてオートクレーブ内に添加した。
次いで、オートクレーブ内を温度125℃まで2時間かけて昇温させ、そのまま温度125℃で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を冷却させ、内容物(複合樹脂を基材樹脂とするプレ複合樹脂粒子b1)を取り出した。次いで、硝酸を添加してプレ複合樹脂粒子b1の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機により脱水及び洗浄を行い、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去することにより、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の比率(質量比)が85:15の複合樹脂粒子b1を得た。このポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との比率は、製造時に用いたスチレン系単量体とエチレン系樹脂との配合比(質量比)から求められる。
【0063】
上述のとおり製造された複合樹脂粒子b1を1000g用い、分散媒としての水3000gと共に撹拌機を備えた5Lの耐圧密閉容器内に仕込んだ。続いて、耐圧密閉容器内の分散媒中に分散剤としてのカオリン5g、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)0.2gとをさらに添加した。次いで、回転速度300rpmで耐圧密閉容器内を撹拌しながら、容器内を発泡温度165℃まで昇温させた。その後、物理発泡剤である二酸化炭素を、耐圧密閉容器内の圧力が4.0MPa(G)になるように耐圧密閉容器内に圧入し、同温度で15分間保持した。これにより複合樹脂粒子b1に二酸化炭素を含浸させて、発泡性複合樹脂粒子を得た。次いで、発泡性複合樹脂粒子を分散媒と共に密閉容器から大気圧下に放出することにより、嵩密度が34kg/mの複合樹脂発泡粒子B1を得た。
【0064】
(複合樹脂発泡粒子B2の製造)
ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の比率(質量比)が70:30となるよう原料の使用量を変更したこと以外は複合樹脂発泡粒子B1と同様の製造方法により、複合樹脂発泡粒子B2を製造した。
【0065】
(複合樹脂発泡粒子A1の製造)
上述する複合樹脂発泡粒子B1と同様の方法で製造した発泡粒子を用いて型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。具体的には、上記のようにして得られた複合樹脂発泡粒子B1を、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板形状のキャビティを有する金型内に充填した。次いで、金型内にスチームを導入し、0.12MPa(G)の成形圧で所定時間加熱することで、発泡粒子を相互に融着させた。その後、金型内を水冷し、冷却終了が確認された後、金型から発泡粒子成形体を取り出した。さらに発泡粒子成形体を温度60℃に調整されたオーブン内に12時間載置することにより、乾燥及び養生を行った。このようにして発泡粒子成形体を得た。尚、上述する冷却終了は、スチームによる加熱終了後、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G)になったことにより確認した。またスチームによる加熱が終了した時点から、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G)になった時点までの時間を測定した。冷却時間は120秒であった。
【0066】
そして上記発泡粒子成形体を破砕し、破砕により得られた粒子を押出機に供給して減容、溶融混練し、溶融混練物を押出機先端に取り付けた口金の小孔からストランド状に押出し、水槽で冷却し、ストランドを質量が略28mgになるように切断し、乾燥して、複合樹脂原料を得た。
次に、上述のとおり得られた複合樹脂原料とホウ酸亜鉛を押出機に供給し、押出機の最高設定温度を260℃として溶融混練し、溶融混練物を押出機先端に取り付けた口金の小孔からストランド状に押出し、水槽で冷却し、ストランドを質量が略2.2mgとなるように切断し、乾燥して、複合樹脂粒子a1を得た。尚、ホウ酸亜鉛は複合樹脂原料100質量部に対して0.2質量部となるように供給した。
【0067】
上述のとおり製造された複合樹脂粒子a1を1000g用いたこと以外は、上述する複合樹脂発泡粒子B1の製造方法と同様に、物理発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性複合樹脂粒子を得、発泡性複合樹脂粒子を分散媒と共に密閉容器から大気圧下に放出することにより、複合樹脂発泡粒子A1を得た。
【0068】
(複合樹脂発泡粒子A2の製造)
上述する複合樹脂発泡粒子B2を用いて製造された発泡粒子成形体を使用したこと以外は上述する複合樹脂発泡粒子A1の製造方法と同様の方法で複合樹脂発泡粒子A2を製造した。
【0069】
(複合樹脂発泡粒子A3~A6の製造)
上述する複合樹脂発泡粒子A1の製造に使用した複合樹脂原料を使用し、溶融混練時の条件を変更することでメルトマスフローレイトの調整を行ったこと以外は複合樹脂A1の製造方法と同様の方法で複合樹脂発泡粒子A3~A6を製造した。
【0070】
(実施例1~6、実施例8~10)
表1に示す発泡粒子A1~A6および発泡粒子B1を用い、表2、表3に示す発泡粒子の種類および混合割合となるように混在させ、各実施例に用いられる混合発泡粒子を得た。上記混合発泡粒子を用いたこと以外は、複合樹脂発泡粒子A1の製造に用いた発泡粒子成形体の型内成形方法と同様の方法により発泡粒子成形体を製造した。スチーム加熱終了後の冷却時間を測定し、表2、表3に示した。
(実施例7)
表2に示す発泡粒子A2および発泡粒子B2を用い表2に示す発泡粒子の種類及び混合割合となるように混在させ、混合発泡粒子の成形時の成形圧を0.10MPa(G)としたこと以外は、実施例1と同様に型内成形を実施し発泡粒子成形体を得た。スチーム加熱終了後の冷却時間を測定し、表2に示した。
【0071】
(比較例1~4)
表3に示すとおり、使用する発泡粒子として発泡粒子B1、または発泡粒子A1を100%用いたこと以外は、実施例1と同様に型内成形を実施し発泡粒子成形体を製造し、比較例1、3とした。
また使用する発泡粒子として発泡粒子B2、または発泡粒子A2を100%用いたこと以外は、実施例2と同様に型内成形を実施し発泡粒子成形体を製造し、比較例2、4とした。スチーム加熱終了後の冷却時間を測定し、表3に示した。
【0072】
比較例に関しては、複合樹脂発泡粒子Aを100%用いて型内成形を実施した場合(比較例3、4)、比較的冷却時間が短いが、製造された発泡粒子成形体の50%ひずみ時圧縮応力は充分でない傾向にあった。また、複合樹脂発泡粒子Bを100%用いて型内成形を実施した場合(比較例1、2)、50%ひずみ時の圧縮応力が高い発泡粒子成形体を得られるが、型内成形時の冷却時間が長くなる傾向にあった。
一方、実施例に関しては、いずれも、複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとが特定の範囲で混合された混合発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を製造すると、複合樹脂発泡粒子Aを100%用いた場合と同程度あるいはそれを下回る冷却時間を実現し、かつ複合樹脂発泡粒子Bを100%用いて製造された発泡粒子成形体と同程度の優れた物性を示す発泡粒子成形体が得られることがわかった。
【0073】
[複合樹脂粒子の観察、並びに複合樹脂発泡粒子および混合発泡粒子の測定]
各実施例および各比較例に用いた複合樹脂発泡粒子A1~A6およびB1、B2に関し、以下の観察および測定を行った。また表2、表3に示す混合割合で調整された混合発泡粒子の平均嵩密度を求めた。いずれも結果は表2および表3に示す。
【0074】
<複合樹脂粒子の海島構造の観察>
以下の方法により、複合発泡粒子の製造に用いた複合樹脂粒子の形態学的特徴を観察した。また観察された海島構造におけるマトリックス(海構造)を構成する樹脂成分およびドメイン(島構造)を構成する樹脂成分を確認した。
まず樹脂粒子中心部が露出するように複合樹脂粒子を切断して観察用サンプルを得た。なお、複合樹脂粒子aについては、複合樹脂粒子製造時における押出方向に対して直交する方向に複合樹脂粒子を切断することで、複合樹脂粒子の中心部分が露出した観察用サンプルを得た。次いで、この観察用サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウムにて染色した。その後、ウルトラミクロトームを用いて上記観察用サンプルから超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、透過型電子顕微鏡(日本電子社製のJEM1010)により、倍率10,000倍のTEM写真を撮影した。TEM写真から、複合樹脂粒子におけるポリエチレン系樹脂の相とポリスチレン系樹脂の相の分布状態を目視にて観察した。そして、濃く染色される部分をポリエチレン系樹脂と認識し、染色されない、もしくは薄く染色される部分をポリスチレン系樹脂と認識し両樹脂成分により、複合樹脂粒子のマトリックスとドメインとからなる海島構造を確認した。また上記確認結果から、当該複合樹脂粒子を用いて製造された複合樹脂発泡粒子の海島構造も同様の形態学的特徴を有するものと推定し、表1に記載した。
<複合樹脂発泡粒子A、Bのポリスチレン系樹脂成分の差(PSа-PSb)>
上述する複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の割合を求める方法に倣い、複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂粒子a中のポリスチレン系樹脂成分割合PSaと複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂粒子b中のポリスチレン系樹脂成分割合PSbとを求め、これらの差(PSa-PSb)を求めた。
<平均粒子質量>
無作為に選択した200個の複合樹脂発泡粒子の質量を測定し、算術平均により平均粒子質量を求めた。
<メルトマスフローレイト>
JIS K7210-1:2014に基づき、260℃、荷重2.16kgの条件で、複合樹脂発泡粒子のメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。
<平均粒子径>
複合樹脂発泡粒子の体積基準における粒度分布を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)を用いて取得した。そして上記粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値を求め、これを平均粒子径とした。
また、複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径D1と複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径D2との比(D1/D2)を求めた。
<嵩密度>
約500cm3の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。次に、メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩容積を読み取り、これをV1[L]とした。次に、発泡粒子群の質量を測定し、これをW1[g]とした。発泡粒子群の質量W1[g]を発泡粒子群の容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めた。
また、複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度X1と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度X2との比(X1/X2)を求めた。
<複合樹脂発泡粒子のキシレン不溶分の割合>
まず、約1gの複合樹脂発泡粒子を採取してサンプルとし、その質量W0を小数点第4位まで計量し、150メッシュの金網袋中に入れた。次いで、容量200mlの丸型フラスコに約200mlのキシレンを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットした。その後、マントルヒーターで8時間加熱することにより、ソックスレー抽出を行い、抽出終了後、空冷により冷却した。冷却後、抽出管から金網袋を取り出し、約600mlのアセトンにより金網袋ごとサンプルを洗浄し、次いで、アセトンを揮発させた。その後、金網袋ごと温度120℃で乾燥し、金網袋から回収された乾燥物をキシレン不溶分とした。
キシレン不溶分の含有割合は、上述のとおり計量した複合樹脂発泡粒子の質量W0に対するキシレン不溶分の質量W1の割合(すなわち(W1/W0)×100[質量%])で算出した。尚、キシレン不溶分の含有割合は、複合樹脂発泡粒子のサンプルの代わりに、複合樹脂粒子または複合樹脂発泡粒子成形体のサンプルについて測定を行っても、同様の測定結果を得ることができる。
また、複合樹脂発泡粒子Aのキシレン不溶分の割合F1と複合樹脂発泡粒子Bのキシレン不溶分の割合F2との差(F2-F1)を求めた。
【0075】
<混合発泡粒子の平均嵩密度>
混合発泡粒子における、複合樹脂発泡粒子Aと複合樹脂発泡粒子Bとの質量比を考慮した、複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度と複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度との加重平均を求め、これを混合発泡粒子の平均嵩密度とした。
【0076】
<複合樹脂発泡粒子の独立気泡率>
複合樹脂発泡粒子の独立気泡率を以下のように測定した。
まず、嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定する。次に見掛けの体積Vaを測定した発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定する。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出した。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回の独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求めた。
[数1]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子群の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子群の質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0077】
[発泡粒子成形体の測定]
上述とおり製造された各実施例および各比較例の発泡粒子成形体を用い、以下の測定を行った。結果は表2、表3に示す。
【0078】
<金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率>
養生後の発泡粒子成形体の縦方向の寸法(LB)を測定した。成形型の縦方向の寸法(LA)に対する、成形型の縦方向の寸法(LA)と発泡粒子成形体の縦方向の寸法(LB)との差の比率(([LA-LB]/LA)×100)を算出し、金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率とした。
<発泡粒子成形体の密度>
発泡粒子成形体の質量を、発泡粒子成形体の寸法に基づいて算出される体積で除することにより、当該発泡粒子成形体の密度を求めた。
<発泡粒子成形体の独立気泡率>
まず、発泡粒子成形体から、成形体のスキンを含まないように、30mm×25mm×25mmの外形寸法を有する直方体状の測定用サンプルを切り出し、その外形寸法から測定用サンプルの見掛けの体積Vbを測定した。次に、見掛けの体積Vbを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、測定用サンプルの真の体積の値Vyを測定した。この真の体積Vyの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(2)により独立気泡率を算出した。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回の独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求めた。
[数2]
独立気泡率(%)=(Vy-W/ρ)×100/(Vb-W/ρ)・・・(2)
Vy:上記方法で測定される測定用サンプルの真の体積(cm
Vb:測定用サンプルの外形寸法から求めた体積(cm
W:測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子成形体を構成する樹脂の密度(g/cm
<発泡粒子成形体の50%ひずみ時圧縮応力σ50
得られた発泡粒子成形体から、成形体の表面にあるスキン層が試験片に含まれないように、成形体の中心部から縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片を切り出した。JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の50%圧縮応力を求めた。また、得られた50%ひずみ時の応力を発泡粒子成形体の密度で除し、比強度(σ50/密度)を算出した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)ポリスチレン系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造する方法であって、
ポリスチレン系樹脂成分をマトリックス、ポリオレフィン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Aと、
ポリオレフィン系樹脂成分をマトリックス、ポリスチレン系樹脂成分をドメインとする海島構造を有する複合樹脂発泡粒子Bとが混在した混合発泡粒子を用い、
前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~60:40であることを特徴とする、発泡粒子成形体の製造方法。
(2)前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度が20kg/m以上90kg/m以下であり、前記複合樹脂発泡粒子Bの嵩密度に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの嵩密度の比が0.7以上1.4以下である、上記(1)に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(3)前記混合発泡粒子の平均嵩密度が20kg/m以上90kg/m以下である、上記(1)又は(2)に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(4)前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bの平均粒子径に対する前記複合樹脂発泡粒子Aの平均粒子径の比が0.7以上1.4以下である、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(5)前記複合樹脂発泡粒子Aを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合PSaが60質量%以上90質量%以下であり、
前記複合樹脂発泡粒子Bを構成する複合樹脂中の前記ポリスチレン系樹脂成分の割合PSbが60質量%以上90質量%以下である、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(6)前記複合樹脂発泡粒子Aをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%未満(0を含む)であり、前記複合樹脂発泡粒子Bをキシレンによりソックスレー抽出したときの不溶分の割合が3質量%以上40質量%以下である、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(7)260℃、荷重2.16kgで測定される複合樹脂発泡樹脂粒子AのメルトマスフローレイトMFRが2.0g/10分以上20g/10分以下である、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
(8)前記混合発泡粒子における、前記複合樹脂発泡粒子Aと前記複合樹脂発泡粒子Bとの質量比が3:97~40:60である、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の発泡粒子成形体の製造方法。
【符号の説明】
【0083】
10・・・複合樹脂粒子a
12、24・・・ドメイン
14、22・・・マトリックス
20・・・複合樹脂粒子b

図1