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特開2024-70965警報システムのための処理装置および処理方法、警報システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070965
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】警報システムのための処理装置および処理方法、警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240517BHJP
   B62J 45/414 20200101ALI20240517BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20240517BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B62J45/414
B62J27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181620
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】バートン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ドゥミトル トライアン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA05
5H181BB04
5H181CC27
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】 鞍乗り型車両における居眠り運転等の運転者の運転不能状態を検出すること。
【解決手段】 処理装置(20)は、鞍乗型車両(100)に装着され、鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサ(11、12、13)からの信号と、鞍乗型車両の運転者のヘルメット(80)に装着され、運転者の頭部振動を検出する第2センサ(81)からの信号を取得する取得部(21)と、運転者の運転可能状態における周波数特性モデルを記憶する記憶部(26)と、車両振動および頭部振動の検出結果から算出される周波数特性と周波数特性モデルに基づいて、運転者の運転不能状態を判定する判定部(23)と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(100)に装着され、前記鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサ(11、12、13)からの信号と、前記鞍乗型車両の運転者のヘルメット(80)に装着され、前記運転者の頭部振動を検出する第2センサ(81)からの信号を取得する取得部(21)と、
前記運転者の運転可能状態における周波数特性モデルを記憶する記憶部(26)と、
前記車両振動および前記頭部振動の検出結果から算出される周波数特性と前記周波数特性モデルに基づいて、前記運転者の運転不能状態を判定する判定部(23)と、を有する
処理装置(20)。
【請求項2】
前記周波数特性は、前記車両振動と前記頭部振動の振幅の変化率および位相差を含む、
請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記判定部(22)による判定結果と、前記判定結果に対応する前記車両振動と前記頭部振動に基づいて、前記周波数特性モデルの機械学習を行う機械学習部(24)を備える、請求項1記載の処理装置。
【請求項4】
前記鞍乗型車両は路面から伝わる振動を吸収するバネを備え、前記第1センサは前記バネを基準として車体側に装着される、請求項1記載の処理装置。
【請求項5】
前記第1センサは前記鞍乗型車両のグリップに装着される、請求項1記載の処理装置。
【請求項6】
前記第1センサは前記鞍乗型車両のサスペンション部に装着される、請求項1記載の処理装置。
【請求項7】
前記第1センサは3軸加速度センサである、請求項1記載の処理装置。
【請求項8】
前記第2センサは3軸加速度センサである、請求項1記載の処理装置。
【請求項9】
前記鞍乗型車両の所定以上の加速度または所定以上の減速度が検出されると、前記判定部は前記運転不能状態の判定を中止する、請求項1記載の処理装置。
【請求項10】
前記運転者による前記鞍乗型車両に搭載される機器への操作が検出されると、前記判定部は前記運転不能状態の判定を中止する、請求項1記載の処理装置。
【請求項11】
請求項1記載の処理装置(20)と、前記第1センサ(11)と、前記第2センサ(12)と、前記判定部による前記運転不能状態の判定結果を受信し前記運転者に警報を発する警報発信器(60)と、を備える、警報システム。
【請求項12】
鞍乗型車両(100)に装着され、前記鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサ(11、12、13)からの信号と、前記鞍乗型車両の運転者のヘルメット(80)に装着され、前記運転者の頭部振動を検出する第2センサ(81)からの信号を取得する取得ステップと、
前記車両振動および前記頭部振動の検出結果から周波数特性を算出する算出ステップと
前記周波数特性と前記運転者の運転可能状態における周波数特性モデルに基づいて、前記運転者の運転不能状態を判定する判定ステップと、を有する
処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗鞍型車両を操縦する運転者が運転不能状態にあるかどうかを判定し、運転不能状態にあると判定された場合に運転者に警報を発信する警報システムの処理装置および処理方法と、その処理装置を備える警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された撮像装置により撮像された運転席の画像に基づいて運転者の頭部の動きを検出し、検出された頭部の揺れの振幅が第1振幅よりも小さいか、または第1振幅よりも大きい第2振幅よりも大きい場合に、運転者が運転不能状態であることを検出する装置が存在する。
この装置によれば、運転者が急病を発症して体が硬直している場合、および体が弛緩している場合の頭部の揺れの振幅を検出できるので、運転者の運転不能状態を検出することができる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-009257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自動二輪車のような鞍乗型車両では、運転者の頭部の動きを検出するためのカメラ等の撮像装置を車両に設置するのは困難である。また、運転者が居眠り運転をしている場合には、急病を発症している状態とは異なる動きをするため、従来の装置では居眠り運転を適切に検出することはできない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗型車両の運転者の運転不能状態を確実に判断し、運転者に警報を発信することのできる警報システムの処理装置および処理方法と、その処理装置を備える警報システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る処理装置は、鞍乗型車両に装着され、鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサからの信号と、鞍乗型車両の運転者のヘルメットに装着され、運転者の頭部振動を検出する第2センサからの信号を取得する取得部と、運転者の運転可能状態における周波数特性モデルを記憶する記憶部と、車両振動および頭部振動の検出結果から算出される周波数特性と周波数特性モデルに基づいて、運転者の運転不能状態を判定する判定部と、を有するものである。
【0007】
また本発明に係る警報システムは、上記の処理装置と、第1センサと、第2センサと、判定部による運転不能状態の判定結果を受信し運転者に警報を発する警報発信器と、を備えているものである。
【0008】
また本発明に係る処理方法は、鞍乗型車両に装着され、鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサからの信号と、鞍乗型車両の運転者のヘルメットに装着され、運転者の頭部振動を検出する第2センサからの信号を取得する取得ステップと、車両振動および頭部振動の検出結果から振動特性を算出する算出ステップと、振動特性と運転者の運転可能状態における振動特性モデルに基づいて、運転者の運転不能状態を判定する判定ステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る処理装置、警報システム、および、処理方法では、車両振動と運転者の頭部動作から算出される周波数特性と運転可能状態における周波数特性モデルに基づいて運転者の運転不能状態を判定する。
これにより、鞍乗型車両の運転者の運転不能状態を確実に判定し、運転者に警報を発することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る警報システムの、自動二輪車への搭載状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る警報システムの、システム構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る警報システムの、第1センサおよび第2センサが取得する振動波形の例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る警報システムの、処理装置の動作フローを示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る警報システムの、処理装置の動作フローを示す図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る警報システムの、機械学習部の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る処理装置、警報システム、および、処理方法について、図面を用いて説明する。
【0012】
なお、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る処理装置、警報システム、及び、処理方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0013】
例えば、以下では、鞍乗型車両が自動二輪車である場合を説明しているが、鞍乗型車両が、自転車や自動三輪車であってもよい。
【0014】
また、以下では、同一のまたは類似する説明を適宜簡略化または省略している。また、各図において、同一のまたは類似する部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化または省略している。
【0015】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る緊急通報システムを説明する。
【0016】
<警報システムの構成>
実施の形態1に係る警報システム1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る警報システムの、自動二輪車への搭載状態を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る警報システムのシステム構成を説明する図である。
【0017】
図1および図2に示されるように、警報システム1は、少なくとも、自動二輪車100に搭載され、自動二輪車100へ伝わる車両振動を検出する第1センサ11、12、13と、運転者のヘルメット80に装着され、運転者の頭部振動を検出する第2センサ81と、処理装置20を含むコントロールパネル40と、運転者に警報を発する警報発信器60を含む。
【0018】
第1センサ11、12、13は、自動二輪車100へ伝わる車両振動を検出するセンサであって、自動二輪車が走行する路面から自動二輪車へ伝わる振動を吸収するバネ(図示せず)よりも車体側(つまり、車輪側でなく上側)に装着される。路面状態によるセンサ検出精度への影響を低減させるためである。図1においては、第1センサ11、12はハンドルバー30の左右のグリップ31、32に装着されており、第1センサ13はフロントフォークの間のサスペンション部33に装着されている。
【0019】
第1センサはこれらのうちの1つであってもよいし、複数あってもよい。第1センサが複数あることによって、車両振動の検出精度を向上させることができる。
【0020】
第1センサには、接触式または非接触式が適用可能である。接触式は加速度検出型の圧電式センサが、非接触式は速度検出型のレーザードップラー式や、変位検出型の静電容量式が用いられる。ただし、本発明においては広い周波数範囲をカバーできる加速度検出型のセンサであることが好ましい。本発明の一実施形態においては、3軸ジャイロセンサ及び3軸加速度センサを備えるものが採用される。
【0021】
加速度検出型を採用する場合、第1センサは車両振動のみならず、自動二輪車の挙動によって加わる加速度も検出し得るが、本発明では車両振動の検出結果を用いるので、車両の駆動、制動等に起因する車両の加速度成分はフィルタをかけて車両振動のみ抽出するようにしてもよい。これは第2センサにおいても同様である。
【0022】
第1センサ11、12、13は、有線接続またはBluetooth(登録商標)等の無線通信によって処理装置20と電気信号の通信が可能であり、検出された振動を処理装置20に出力する。
【0023】
第2センサ81は、自動二輪車100の運転者のヘルメット80に装着され、運転者の頭部振動を検出する。ここで頭部振動とは、自動二輪車100から運転者の身体を通じてヘルメット80に伝わる車両振動に運転者自身の頭部の動きが加わった、ヘルメットに伝わる動きの全体を指す。第2センサは第1センサと同様に、3軸ジャイロセンサおよび3軸加速度センサを備えるものであり、検出された振動を処理装置20に出力する。第2センサは無線通信によって処理装置20と電気信号の通信が可能であり、検出された振動を処理装置20に出力する
【0024】
処理装置20は、少なくとも取得部21と、周波数特性算出部22と、判定部23と、機械学習部24と、通信部25と、記憶部26を含む。処理装置20の各部は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けて設けられていてもよい。また、処理装置20の一部または全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0025】
取得部21は、第1センサから自動二輪車100へ伝わる車両振動の検出信号を取得する。また、取得部21は、第2センサからヘルメットの動き、つまり運転者の頭部振動の検出信号を取得する。
【0026】
周波数特性算出部22は、所定期間内に第1センサにより検出された車両振動の信号と第2センサにより検出された頭部振動の信号から、周波数特性を算出する。具体的には、第1センサにより検出される車両振動の信号と第2センサにより検出される頭部振動の信号から振幅の変化率および位相差を周波数特性として算出する。
【0027】
また、周波数特性は所定期間に第1センサにより検出された振動を入力とし、第2センサにより検出された振動を出力とした、周波数応答を算出するようにしてもよい。周波数応答P(複素数配列)は、入力信号をフーリエ変換した複素数配列Iと、出力信号をフーリエ変換した複素数配列Oとから、P=O/Iとして算出される。周波数応答Pは、周波数応答関数ともいう。周波数応答は、周波数ごとに、入力信号に対する出力信号の利得(ゲイン)、及び、位相差として表される。即ち、周波数応答は、周波数の関数としての利得と、周波数の関数としての位相差として表される。
【0028】
判定部23は、記憶部26に記憶された運転者の運転可能状態における周波数特性モデルと周波数特性算出部によって算出された周波数特性に基づいて、運転者の運転不能状態を判定する。
【0029】
周波数特性モデルは、所定期間に第1センサにより検出された車両振動の信号と第2センサにより検出された頭部振動の信号に基づいて、運転者の運転可能状態における両振動間の振幅の変化率および位相差を振動周波数の帯域ごとにモデル化したものである。
【0030】
判定部23は、運転者の運転可能状態における周波数特性モデルと周波数特性算出部によって算出された周波数特性を比較し、周波数特性モデルにおける運転可能状態の周波数特性データの正規分布から判断して算出された周波数特性が所定の発生確率分布内に収まっていると判定した場合には、運転者は運転可能状態にあると判定し、所定の発生確率分布内に収まっていないと判定した場合には、運転者は運転不能状態にあると判定する。ここで所定の発生確率分布内に収まっているかどうかの判断には、閾値を設けてもよい。例えば発生確率分布の90%から95%以内に収まっていれば運転可能状態であると判定してもよい。また該閾値は機械学習の学習結果に応じて変更するようにしてもよい。
【0031】
なお、自動二輪車100の所定以上の加速度または所定以上の減速度が検出された場合には、運転者の運転不能状態の判定を中止するようにしてもよい。自動二輪車100の所定以上の加速度または所定以上の減速度が検出される場合には、運転者が運転者自身の操作により車両を加速、または減速させている可能性が高く、このよう場合には運転者が居眠り運転等の運転不能状態にあるとは考えにくいからである。
【0032】
また、運転者による自動二輪車100に搭載されるいずれかの機器への操作が検出されると、判定部23は運転者の運転不能状態の判定を中止するようにしてもよい。ここでいう機器とは、例えばアクセル、ブレーキ、コントロールパネル等のことを指す。つまり、これらの機器が運転者により操作されている場合にも、上記と同様に運転者が運転不能状態にあることは想定されないからである。
【0033】
図3に第1センサおよび第2センサにより検出された振動波形の例を示す。
左側グラフは舗装道路走行中に第1センサによって検出される車両振動波形を表し、右側グラフは同時刻において第2センサによって測定された頭部振動波形を表している。
図3aにおける車両振動と頭部動作との振動振幅および振動位相の変化率は所定の範囲に収まっているが、図3bにおける車両振動と頭部振動との振動振幅および振動位相の変化率は大きく逸脱している(矢印参照)。この逸脱範囲が周波数特性モデルにおける運転可能状態の周波数特性データの正規分布から判断して所定の発生確率分布内に収まっていないと判定されると、判定部23は運転者が運転不能状態にあると判定する。
【0034】
また、車両の速度と車両の振動とは密接な関係にあるので、どの振動周波数帯域の周波数特性モデルを適用するかの判断において、車両の速度情報を参照するようにしてもよい。
【0035】
機械学習部24は、判定部23による判定結果と、判定結果に対応する車両振動および頭部振動に基づいて、周波数特性モデルの機械学習を行う。具体的には、判定部によって運転者が運転可能状態であると判定された場合における周波数特性の結果を教師データとして、記憶部26に記憶されている周波数特性モデルの機械学習を行う。また周波数特性が所定の発生確率分布内に収まっているかどうかを判断する閾値を、機械学習の結果に応じて可変とするようにしてもよい。蓄積される周波数特性データの量に応じて、算出される周波数特性の逸脱の程度は変更され得るからである。
【0036】
通信部25は、判定部23によって運転者の運転不能状態を判定すると、警報発信器60へ判定結果を送信する。
【0037】
記憶部26は、運転者の運転可能状態における周波数特性モデルを記憶する。周波数特性モデルが機械学習部によって学習された場合には、その学習後の周波数特性モデルを記憶する。
【0038】
警報発信器60は、通信部25から判定結果を受信すると、運転者に対して警報を発する。警報の方法としては、例えば音、光、振動を用いて、運転者に通知するものであってよい。
【0039】
音により運転者に警報を発する場合には、ヘルメットに備えられるスピーカ(図示せず)を通じて警報音を発するようにしてもよい。光により運転者に警報を発する場合には、コントロールパネル40のディスプレイの少なくとも一部を点灯または点滅させることによって警報光を発するようにしてもよい。振動により運転者に警報を発する場合には、自動二輪車100のグリップ、シート、ヘルメット等、運転者の身体の一部が直接触れる部分にバイブレータ(図示せず)を配置し、運転者に警報振動を発するようにしてもよい。
【0040】
<警報システムの動作>
実施の形態1に係る警報システムの動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る警報システムの、処理装置の動作フローを示す図である。
【0041】
処理装置20は、図4に示される動作フローを実行する。
【0042】
(取得ステップ)
ステップS101において、取得部21は、第1センサにより検出される車両振動の信号を取得し、ステップS102において、取得部21は、第2センサにより検出される頭部振動の信号を取得する。
【0043】
(算出ステップ)
ステップS103において、周波数特性算出部22は、ステップS101において所定期間に第1センサにより検出される車両振動と、ステップS102において第2センサにより検出される頭部振動から、周波数特性を算出する。
【0044】
(判定ステップ)
ステップS104において、判定部23は、ステップS103において算出された周波数特性と、周波数特性モデルに基づいて運転者の運転不能状態を判定する。
具体的には、あらかじめ記憶部26に記憶された周波数特性モデルと、ステップS101において取得部21によって取得される車両振動の信号とステップS102において取得部21によって取得される頭部振動の信号から算出される周波数特性と、を比較することによって運転者の運転不能状態を判定する。運転者の運転可能状態における周波数特性モデルと周波数特性算出部22によって算出される周波数特性を比較し、周波数特性モデルにおける運転可能状態のデータ正規分布から判断して算出された周波数特性が所定の発生確率分布内に収まっている(Y)と判定した場合には、運転者は運転可能状態にあると判定し処理を終了し、所定の発生確率分布内に収まっていないと判定した場合には、運転者は運転不能状態にあると判定する。
【0045】
(通信ステップ)
ステップS104において運転者の運転不能状態が判定されると、通信部25はステップS105においてその判定結果を警報発信器60に送信する。
【0046】
<警報システムの効果>
実施の形態1に係る警報システムの効果について説明する。
警報システムの処理装置が、鞍乗型車両に装着され鞍乗型車両へ伝わる車両振動を検出する第1センサからの信号と鞍乗型車両の運転者のヘルメットに装着され運転者の頭部振動を検出する第2センサからの信号を取得する取得部と、運転者の運転可能状態における周波数特性モデルを記憶する記憶部と、車両振動および頭部振動の検出結果から算出される周波数特性と周波数特性モデルに基づいて、運転者の運転不能状態を判定する判定部と、を有する。このため、運転者の頭部を撮像するカメラを設置することが不可能な自動二輪車においても、検出される振動を解析することによって運転者の運転不能状態を確実に判断し、運転者に警報を発することが可能となる。
また、本発明においては車両振動を参照して頭部振動の異常を判定する。このため、いかなる路面状態であっても、運転者の運転不能状態を正確に判定することが可能となる。
【0047】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る警報システムについて説明する。
なお、実施の形態2に係る警報システムでは、実施の形態1に係る警報システムに対して、ステップ104(判定ステップ)以降の処理装置20の動作フローのみが異なっている。実施の形態1に係る緊急通報システムと重複または類似する説明は、適宜簡略化または省略している。
【0048】
<警報システムの動作>
実施の形態2に係る緊急通報システムの動作について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係る警報システムの、処理装置の動作フローを示す図である。
【0049】
処理装置20は、図5に示される動作フローを実行する。ステップS201-S203は実施の形態1のステップS101-S103と共通であるから説明については省略する。
【0050】
(判定ステップ)
ステップS204において、判定部23は、ステップS203において算出された周波数特性と、周波数特性モデルに基づいて運転者の運転不能状態を判定する。
具体的には、あらかじめ記憶部26に記憶された周波数特性モデルと、ステップS201において取得部21によって取得される車両振動の信号とステップS202において取得部21によって取得される頭部振動の信号から算出される周波数特性と、を比較することによって運転者の運転不能状態を判定する。運転者の運転可能状態における周波数特性モデルと周波数特性算出部22によって算出される周波数特性を比較し、周波数特性モデルにおける運転可能状態のデータ正規分布から判断して、算出された周波数特性が所定の発生確率分布内に収まっている(ステップS204/Y)と判定した場合には、運転者は運転可能状態にあると判定し、所定の発生確率分布内に収まっていない(ステップS204/N)と判定した場合には、運転者は運転不能状態にあると判定する。
【0051】
ステップS204において、運転者が運転可能状態にあると判定されると(ステップS204/Y)、ステップS205において、機械学習部24は該結果を取得した上で周波数特性モデルの機械学習を行い、更新後の周波数特性モデルを記憶部26に記憶する。
機械学習の詳細フローについては、後ほど説明する。
【0052】
ステップS204において、運転者が運転不能状態にあると判定されると(ステップS204/N)、通信部はステップS206において該判定結果を警報発信器60へ送信する。
【0053】
<警報システムの効果>
実施の形態2に係る警報システムの効果について説明する。
実施の形態2によれば、運転者が運転可能状態にあると判定されると、機械学習部は該結果を取得し、周波数特性モデルの機械学習を行う。このため、運転可能状態における車両振動、頭部振動データを蓄積することによって判定の精度を向上させることができる。
【0054】
以上、実施の形態1および実施の形態2について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の一部のみが実施されてもよく、また、各実施の形態の全てまたは一部が組み合わされてもよい。また、動作フローの各ステップの全てまたは一部が異なる順序で実行されてもよく、例えば、第1センサからの信号と第2センサからの信号は同時に取得されてよい。
【0055】
<機械学習部の動作>
続いて、図6を参照して、処理装置20の機械学習部24の動作について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る処理装置の機械学習処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0056】
図5のステップS204において、運転者が運転可能状態にあると判定されると、機械学習部は、ステップS301において該判定結果に対応する第1センサおよび第2センサからの振動の信号を取得する。
【0057】
処理装置20は、ステップS302において現在の周波数特性モデルを取得する。具体的には、機械学習部24は、記憶部26に記憶された周波数特性モデルを取得する。
【0058】
次に、機械学習部24は、運転可能状態の判定結果および該結果に対応する第1センサおよび第2センサからの振動の信号を用いて周波数特性モデルを更新する(ステップS303)。具体的には、機械学習部24は、複数の機械学習モデルのうちの1つを選択し、選択された機械学習モデルと運転可能状態の判定結果および該結果に対応する第1センサおよび第2センサからの振動の検出値とを用いて周波数特性モデルの機械学習を行う。
【0059】
次に、機械学習部24は、更新後の周波数特性モデルの正確性を算出する(ステップS304)。具体的には、機械学習部24は、機械学習により得られた新たな周波数特性モデルにテスト用入力データを入力し、出力された値とテスト用出力データとを比較することによりモデルの正確性を算出する。
【0060】
算出値が閾値以上である場合(ステップS305/Y)、機械学習部24は、更新後の周波数特性モデルを記憶する(ステップS306)。具体的には、機械学習部24は、算出された正確性が閾値以上である場合、新たな周波数特性モデルを記憶部26に記憶させる。なお、算出値が閾値未満である場合(ステップS305/N)、ステップS303から処理をやり直す。
【符号の説明】
【0061】
1 警報システム、11-13 第1センサ、20 処理装置、21 取得部、22 周波数特性算出部、23 判定部、24 機械学習部、25 通信部、26 記憶部、60 警報発信器、80 ヘルメット、81 第2センサ、100 自動二輪車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6