(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070971
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】食品用ゲル化剤、食品、および食品の作製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/238 20160101AFI20240517BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20240517BHJP
【FI】
A23L29/238
A23L29/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181637
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅根 伸悟
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LD03
4B041LD10
4B041LH07
4B041LH08
4B041LK02
4B041LK07
4B041LK11
4B041LP04
(57)【要約】
【課題】水への分散性に優れ、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる食品用ゲル化剤、その食品用ゲル化剤を含む食品、および食品の作製方法を提供する。
【解決手段】アマシードガムとカルシウム塩とを含有する、食品用ゲル化剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマシードガムとカルシウム塩とを含有することを特徴とする食品用ゲル化剤。
【請求項2】
アマシードガムとカルシウム塩とを含有することを特徴とする食品。
【請求項3】
アマシードガムとカルシウム塩とを用いることを特徴とする食品の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用ゲル化剤、その食品用ゲル化剤を含む食品、および食品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に粘性や付着性を付与したり、ゼリーのようなゲル状態とすることを求められることがあり、このために食品添加物の増粘剤(糊料)が用いられることがよくある。増粘剤として、カラギナン、キサンタンガム等が知られている。κカラギナン等のカラギナンは単独でもゲル化するが、ローカストビーンガムやグルコマンナンと併用することによってゲル状になり、また、キサンタンガムは、ローカストビーンガムやグルコマンナンと併用することによってゲル状になり、両者は食品工業では一般的に使われている(特許文献1~3参照)。
【0003】
しかし、カラギナンは、海藻が由来の天然物を原料としているため、供給量等の問題がある。また、カラギナンとカロブビーンガムやグルコマンナンとを併用すると、しっかりした硬いゲルが形成されるが、弾力のあるゲルが求められることがある。
【0004】
キサンタンガムは、発酵により製造され、自然現象の影響を受けにくい。しかし、キサンタンガムは単独で冷水に溶解し粘性を発現するため、使用する際に分散性が悪く、凝集物が生成したり、製造中に強力な撹拌機やポンプが必要になり、このような設備がない場合は添加レベルを低くする必要がある等の問題がある。
【0005】
特許文献4には、水への分散性に優れ、弾力のあるゲルを形成することができる食品用増粘剤として、アマシードガムとグルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つとを含有する組成物が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献4のアマシードガムとグルコマンナンおよびローカストビーンガムのうち少なくとも1つとを含有する組成物には、べたつき易いという問題点がある。また、グルコマンナンおよびローカストビーンガムはアマシードガムと比較して、価格の高い原料であり、特にローカストビーンガムの価格高騰は大きな課題となっており、各種用途において、代替可能な原料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭48-035463号公報
【特許文献2】特公昭57-028254号公報
【特許文献3】特許第3447213号公報
【特許文献4】特開2002-038770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、水への分散性に優れ、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる食品用ゲル化剤、その食品用ゲル化剤を含む食品、および食品の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アマシードガムとカルシウム塩とを含有する、食品用ゲル化剤である。
【0010】
本発明は、アマシードガムとカルシウム塩とを含有する、食品である。
【0011】
本発明は、アマシードガムとカルシウム塩とを用いる、食品の作製方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、水への分散性に優れ、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる食品用ゲル化剤、その食品用ゲル化剤を含む食品、および食品の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<食品用ゲル化剤>
本実施形態に係る食品用ゲル化剤は、アマシードガムとカルシウム塩とを含有する食品用ゲル化剤である。
【0015】
本発明者らは、陸生植物由来でカラギナンとは原料由来が異なるアマシードガムを用いて検討した結果、食品用ゲル化剤としてアマシードガムとカルシウム塩とを併用することによって、水への分散性に優れ、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができることを見出した。本実施形態に係る食品用ゲル化剤によって、付着性が高く粘弾性の高いゲルを形成することができる。また、アマシードガムまたはカルシウム塩の食品への添加濃度を調整することによって、緩いゲルから弾力のあるゲルを得ることができる。アマシードガムは、陸生植物由来であるため、海藻が由来の天然物を原料としているカラギナンに比べて、供給量等の問題が少ない。
【0016】
アマシードガムは、アマ科アマ(Linum usitatissimum LINNE)の種子から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。アマシードガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0017】
カルシウム塩は、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸化カルシウム等のカルシウムの無機塩等が挙げられ、水への溶解度等の点から乳酸カルシウムが好ましい。これらのカルシウム塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
本実施形態に係る食品用ゲル化剤において、カルシウム塩の含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して、5質量%~50質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~20質量%の範囲である。カルシウム塩の含有量がアマシードガム100質量%に対して5質量%未満であると、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができない場合があり、50質量%を超えると、塩が溶けきらずに残る場合がある。
【0019】
本実施形態に係る食品用ゲル化剤は、アマシードガム、カルシウム塩の他に、澱粉、加工澱粉、寒天、カラギナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、グルコマンナン、こんにゃく粉(芋)、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、アルギン酸エステル、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カラヤガム、プルラン、カードラン、トラガントガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、大豆水溶性多糖類、メチルセルロ-ス、ウェランガム、カシアガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、グァーガム酵素分解物、ファーセレラン、および発酵セルロース等の他の成分を含んでもよい。
【0020】
他の成分の含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して5質量%~1000質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~200質量%の範囲である。
【0021】
本実施形態に係る食品用ゲル化剤は、粉末の形態であってもよいし、粒状に造粒した顆粒の形態であってもよい。
【0022】
<食品>
本実施形態に係る食品は、上記食品用ゲル化剤を含有する食品であり、アマシードガムとカルシウム塩とを含有する食品である。
【0023】
食品としては、例えば、ゼリー、グミ、ヨーグルト等のデザート類、タレ、ドレッシング、冷菓、調味料、畜肉製品、水産製品、麺類、惣菜等に好適に適用することができる。本実施形態に係る食品用ゲル化剤を食品に添加することにより、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる。
【0024】
本実施形態に係る食品中のアマシードガムの含有量は、例えば、食品全体の質量に対して、0.01質量%~20質量%の範囲であり、好ましくは0.02質量%~5質量%の範囲である。食品中のアマシードガムの含有量が、食品全体の質量に対して0.01質量%未満であると、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができない場合があり、20質量%を超えると、ダマになる場合がある。
【0025】
本実施形態に係る食品中のカルシウム塩の含有量は、例えば、アマシードガム100質量%に対して、5質量%~50質量%の範囲であり、好ましくは10質量%~20質量%の範囲である。カルシウム塩の含有量がアマシードガム100質量%に対して5質量%未満であると、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができない場合があり、50質量%を超えると、塩が溶けきらずに残る場合がある。
【0026】
本実施形態に係る食品は、上記食品用ゲル化剤の他に、一般的に食品に用いられる食品素材、食品添加物等を含んでもよい。
【0027】
食品中の他の成分の含有量は、各種食品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0028】
本実施形態に係る食品は、上記食品用ゲル化剤を含有することにより、弾力があり、べたつきがほとんどないゲル化された食品である。
【0029】
<食品の作製方法>
本実施形態に係る食品の作製方法は、アマシードガムとカルシウム塩とを含有する食品用ゲル化剤を用いる方法であり、アマシードガムとカルシウム塩とを用いる方法である。
【0030】
食品の作製方法は、各種食品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0031】
ゼリーは、例えば、上記食品用ゲル化剤を用いて一般的に用いられる水に分散後加熱する方法により作製すればよい。また、ヨーグルトは、例えば、上記食品用ゲル化剤を水に加え加熱後、50℃以下に冷却し、30℃以上の酸乳に加える方法により作製すればよい。
【0032】
本実施形態に係る食品用ゲル化剤を食品に添加することにより、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる。また、食品を製造する際に、水への分散性に優れる。
【0033】
本実施形態に係る食品用ゲル化剤を用いることによって、食品ゲルのかたさを、例えば、1000N/m2以上に、好ましくは1000~5000N/m2の範囲に、付着性を、200J/m3以下に、好ましくは50J/m3以下にすることができる。
【実施例0034】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
<実施例1~3、比較例1~3>
表1に示す配合量(質量部)で各材料を、予めゲル化剤と砂糖とを混合し、その混合物を水道水に混合して混合液を調製した。混合液を調製してから90℃で加熱後、冷却し、Φ40mm×高さ15mmの金属シャーレに充填し、4℃で24時間静置した後のかたさ(N/m2)および付着性(J/m3)を、クリープメータ(山電製、RE2-33005C型)を用いて、圧縮速度10mm/秒、圧縮率66.7%、Φ20mmプランジャーの条件で測定した。また、測定後のサンプルの性状、べたつきを確認した。結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1に示すように、実施例1~3では、かたさおよび付着性が良好であり、べたつきがほとんどないゲルであった。
【0038】
以上のように、実施例によって、水への分散性に優れ、弾力があり、べたつきがほとんどないゲルを形成することができる食品用ゲル化剤を得ることができた。