(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070974
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20240517BHJP
G11C 16/30 20060101ALI20240517BHJP
G11C 5/14 20060101ALI20240517BHJP
G11C 7/04 20060101ALI20240517BHJP
G05F 3/26 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H02M3/07
G11C16/30 120
G11C5/14 400
G11C7/04
G05F3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181641
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 丈晴
【テーマコード(参考)】
5B225
5H420
5H730
【Fターム(参考)】
5B225CA13
5B225DB31
5B225EG02
5B225EG12
5H420BB12
5H420CC02
5H420DD02
5H420EA14
5H420EB37
5H420LL07
5H730AA05
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB02
5H730DD04
(57)【要約】
【課題】昇圧電圧を適切に調整可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、昇圧電圧VPPを生成するように構成された昇圧電圧生成回路110と、第1の温度依存性を持つ定電圧素子121及び122を用いて昇圧電圧VPPを所定のクランプ電圧以下に制限するように構成された電圧調整回路120と、第1の温度依存性とは極性が逆である第2の温度依存性を持つバイアス電圧VBIASを用いてクランプ電圧を調整するように構成されたバイアス電圧生成回路300を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧電圧を生成するように構成された昇圧電圧生成回路と、
第1の温度依存性を持つ定電圧素子を用いて前記昇圧電圧を所定のクランプ電圧以下に制限するように構成された電圧調整回路と、
前記第1の温度依存性とは極性が逆である第2の温度依存性を持つバイアス電圧を用いて前記クランプ電圧を調整するように構成されたバイアス電圧生成回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記電圧調整回路は、前記定電圧素子に直列接続されて制御端に前記バイアス電圧が印加されるトランジスタを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧生成回路は、前記バイアス電圧に応じた分圧電圧を生成するように構成された帰還抵抗部と、前記分圧電圧と所定の参照電圧の入力を受けて前記バイアス電圧を制御するように構成されたアンプとを含み、
前記帰還抵抗部は、前記バイアス電圧の印加端と前記分圧電圧の印加端との間に接続された第1抵抗と、前記分圧電圧の印加端と接地端との間に接続された第2抵抗とを含み、
前記第1抵抗が前記第2の温度依存性を持つ、又は、前記第2抵抗が前記第1の温度依存性を持つ、又は、前記第1抵抗が前記第2の温度依存性を持ちかつ前記第2抵抗が前記第1の温度依存性を持つ、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記帰還抵抗部は、前記第1抵抗及び前記第2抵抗それぞれの抵抗値のうち少なくとも一方が調整可能であるように構成されている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バイアス電圧生成回路は、前記第2の温度依存性を持つ順方向降下電圧が前記バイアス電圧として出力されるように構成された少なくとも1段のダイオード列を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バイアス電圧生成回路は、前記ダイオード列に流れる所定の参照電流を生成するように構成された参照電流生成部をさらに含む、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記参照電流生成部は、前記参照電流が調整可能であるように構成されている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記バイアス電圧生成回路は、所定の参照電流を生成するように構成された電流源と、前記電流源と接地端との間に直列接続されて前記第2の温度依存性を持つ複数のノード電圧を生成するように構成された抵抗ラダー部と、前記複数のノード電圧のうちいずれか一つを前記バイアス電圧として出力するように構成された電圧選択部とを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バイアス電圧生成回路は、前記第2の温度依存性を持つ参照電圧を生成するように構成された参照電圧生成部と、前記参照電圧生成部と接地端との間に直列接続されて複数のノード電圧を生成するように構成された抵抗ラダー部と、前記複数のノード電圧のうちいずれか一つを前記バイアス電圧として出力するように構成された電圧選択部とを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記昇圧電圧を用いてデータが書き込まれるように構成されたメモリセルアレイ回路をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、ツェナーダイオードなどの定電圧素子を用いて昇圧電圧(例えばメモリセルの書き込み電圧)を調整する機能を備えたものがある。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の半導体装置では、昇圧電圧の調整手法について更なる改善(例えば温度依存性の更なるフラット化又は任意の傾き調整)の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されている半導体装置は、昇圧電圧を生成するように構成された昇圧電圧生成回路と、第1の温度依存性を持つ定電圧素子を用いて前記昇圧電圧を所定のクランプ電圧以下に制限するように構成された電圧調整回路と、前記第1の温度依存性とは極性が逆である第2の温度依存性を持つバイアス電圧を用いて前記クランプ電圧を調整するように構成されたバイアス電圧生成回路と、を備える。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、昇圧電圧を適切に調整可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、半導体装置の比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例における昇圧電圧の温度依存性を示す図である。
【
図3】
図3は、半導体装置の第1実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、半導体装置の第2実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態における昇圧電圧の温度依存性を示す図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の第3実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態における昇圧電圧の温度依存性を示す図である。
【
図8】
図8は、半導体装置の第4実施形態を示す図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態における昇圧電圧の温度依存性を示す図である。
【
図10】
図10は、半導体装置の第5実施形態を示す図である。
【
図11】
図11は、書換サイクル寿命の改善効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<半導体装置(比較例)>
図1は、半導体装置の比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。本比較例の半導体装置100は、電気的にデータを書き換えることのできる半導体記憶装置(EEPROM[electrically erasable programmable read-only memory]又はフラッシュメモリなど)である。半導体装置100は、例えば、民生機器又は産業機器などにおいて、種々のプログラム記憶用又はデータ記憶用に幅広く使用され得る。
【0011】
本図に即して述べると、半導体装置100は、Xデコーダ回路210、Yデコーダ回路220、メモリセルアレイ回路230、Yゲート回路240、及び、センスアンプ回路250を備える。
【0012】
また、半導体装置100は、さらに、電源入力端子101、昇圧電圧生成回路110、電圧調整回路120、ラダー抵抗回路130、カレントミラー回路140、ランプ回路150、トリミングレジスタ160、デコーダ回路170、電圧入出力回路180、及び、テスト測定用パッド190を備える。
【0013】
メモリセルアレイ回路230は、大部分を通常用いるデータ記憶用メモリセル231とし、残りを電圧補正用メモリセル232とする。メモリセルアレイ回路230の回路構成については、既存の周知技術を適用すれば足りるので、詳細な説明は省略する。
【0014】
昇圧電圧生成回路110は、電源入力端子101から入力される電源電圧VCCを用いて昇圧電圧VPPを生成する。電源電圧VCCは、例えば1.5V~5.0Vである。昇圧電圧生成回路110は、例えば、トランジスタ111~113とキャパシタC1~C3を含むチャージポンプ回路であってもよい。
【0015】
トランジスタ111及び113の制御電極には、それぞれ、キャパシタC1及びC3を介してチャージポンピング信号CPがそれぞれ印加される。トランジスタ112の制御電極には、キャパシタC2を介して反転チャージポンピング信号CPB(=チャージポンピング信号CPの相補信号)が印加される。これらによって、Xデコーダ回路210及びYデコーダ回路220に印加する昇圧電圧VPP及びランプ電圧VRAMPが生成される。なお、ランプ電圧VRAMP(延いては昇圧電圧VPP)は、メモリセルアレイ回路230にデータを書き込むための書き込み電圧として利用され得る。
【0016】
昇圧電圧生成回路110の出力端には、電圧調整回路120が負荷として結合されている。従って、昇圧電圧VPPのレベルは、電圧調整回路120で一義的に決まる。なお、昇圧電圧生成回路110は、無負荷状態であれば、電圧調整回路120による調整済みの昇圧電圧VPPよりも十分に高い高電圧(例えば30V程度)を出力する能力がある。
【0017】
電圧調整回路120は、定電圧素子121及び122と、トランジスタ123及び124と、電圧設定入力トランジスタ125を含む。定電圧素子121の第1端(カソード)は、昇圧電圧生成回路110の出力端に接続される。定電圧素子121の第2端(アノード)は、定電圧素子122の第1端(カソード)に接続される。定電圧素子122の他端(アノード)は、トランジスタ123及び124それぞれのドレインに共通接続される。
【0018】
定電圧素子121及び122は、例えばツェナーダイオードである。定電圧素子121及び122それぞれのアノード・カソード間のツェナー電圧は、例えば7.5Vである。
【0019】
トランジスタ123のゲートは、トリミングレジスタ160に接続される。トランジスタ123のソースは、電圧設定入力トランジスタのソースに接続される。ダイオード接続されたトランジスタ124は、トランジスタ123と並列に接続される。トランジスタ123のオン/オフによって、トランジスタ124の動作がオフ/オンされる。トランジスタ124のオン/オフによって昇圧電圧VPPの大きさが調整される。すなわち、トランジスタ124の動作がオンのときとオフのときとでは、トランジスタ124の閾値電圧分だけの差を昇圧電圧VPPにもたせることができる。トランジスタ124の段数は1個に限定されず2個以上あってもよい。また、トランジスタ124に代えて、トランジスタ、ダイオード及び抵抗を任意に組み合わせて所定の電圧を設定してもよい。
【0020】
電圧設定入力トランジスタ125は、省電力化の観点から見るとPMOS[P-channel type metal oxide semiconductor]トランジスタで構成するのが好ましい。もちろん、電圧設定入力トランジスタ125は、PNPバイポーラトランジスタで構成することも可能である。ただし、その場合にはベース電流が発生するので、省電力化の点でやや劣る。また、電圧設定入力トランジスタ125には、NMOS[N-channel type MOS]トランジスタを採用することも可能である。ただし、電圧設定入力トランジスタ125としてPMOSトランジスタを用いた理由は、電圧設定入力トランジスタ125のソース側に定電圧素子121及び122で生成された電圧を加算して、昇圧電圧生成回路110に結合する回路構成を採用しているからである。
【0021】
定電圧素子121及び122としてツェナーダイオード又はダイオードを用い、さらにそれらにトランジスタ124の閾値電圧を加算して昇圧電圧VPPを生成するときには、それらの素子の温度依存性を考慮することが重要である。
【0022】
例えば、定電圧素子121及び122として、それぞれツェナー電圧が7.5V程度のツェナーダイオードが用いられている場合を考える。この場合、ツェナー電圧の温度依存性は、温度(例えばジャンクション温度Tj又は周囲温度Ta)に比例して高くなる正の勾配(正の温度依存性)を示す。温度係数は、例えば2mV/℃である。
【0023】
一方、トランジスタ123及び124それぞれの温度依存性は、温度に比例して低くなる負の勾配(負の温度依存性)を示す。従って、トランジスタ123及び124が持つ負の温度依存性は、定電圧素子121及び122それぞれが持つ正の温度依存性を打ち消すように働く。ツェナー電圧の大きさは、昇圧電圧VPPの大きさにもよるが、6V~8Vの範囲に設定するのが好ましい。
【0024】
これらの範囲であれば、ツェナー電圧の温度依存性をほぼフラット、または、電圧設定入力トランジスタ125のソース・ゲート間における閾値電圧が持つ温度依存性の傾きと逆で絶対値がほぼ等しい大きさに設定することができる。こうした回路構成によって、昇圧電圧VPPの温度依存性を小さく抑えることができる。
【0025】
ラダー抵抗回路130は、複数の抵抗R1~Rnと、複数のトランジスタTr1~Tr(n+1)と、抵抗回路イネーブルトランジスタ131を有する。抵抗回路イネーブルトランジスタ131は、複数の抵抗R1~Rnが直列接続された抵抗ラダーに対して直列に接続される。抵抗回路イネーブルトランジスタ131は、抵抗ラダーの下流側(=抵抗ラダーと接地電位GNDの印加端との間)に接続される。もちろん、抵抗回路イネーブルトランジスタ131は、抵抗ラダーの上流側(=参照電圧VREFの印加端と抵抗ラダーとの間)に接続されてもよい。
【0026】
抵抗R1の第1端は、参照電圧VREFの印加端とトランジスタTr1のドレインに接続される。参照電圧VREFは、例えばバンドギャップ定電圧回路で生成される。参照電圧VREFの大きさは、例えば1.2Vである。
【0027】
抵抗R1の第2端と抵抗R2の第1端は、いずれもトランジスタTr2のドレインに接続される。抵抗R2の第2端と抵抗R3の第1端は、いずれもトランジスタTr3のドレインに接続される。抵抗R3の第2端と抵抗R4の第1端は、いずれもトランジスタTr4のドレインに接続される。
【0028】
以下も同様にして、抵抗R4の第2端は、図示しない抵抗R5の第1端に接続されるという具合に、例えば20個~60個の抵抗が直列に接続される。なお、抵抗Rnの第2端と抵抗回路イネーブルトランジスタ131のドレインは、いずれもトランジスタTr(n+1)のドレインに接続される。
【0029】
各抵抗同士の接続ノードには、参照電圧VREFを分圧した分圧電圧が発生する。ラダー抵抗回路130に用いられる抵抗R1~Rnそれぞれの抵抗値はすべて等しい。また、抵抗の数nを30(Rn=R30)とすると、1つの分圧電圧は40mV(1.2V/30=0.04V)となる。
【0030】
抵抗回路イネーブルトランジスタ131のゲートには、ラダー抵抗回路130をイネーブル状態にするためのイネーブル信号ENが印加される。抵抗R1~Rnは、MOSトランジスタのゲート電極に用いるポリシリコンで構成される。抵抗R1~Rnそれぞれの大きさは、省電力化のためにもそれぞれ50kΩ~200kΩに選ぶとよい。
【0031】
なお、ラダー抵抗回路130で生成される分圧電圧は、できるだけ小さいほうが好ましい。分圧電圧が10mV~100mVの範囲であれば、MOSトランジスタの閾値電圧又はバイポーラトランジスタのベース・エミッタ間電圧VBEよりも1桁小さい大きさに相当する。これによって昇圧電圧VPPの微調整が可能となる。
【0032】
上記したように、抵抗R1~Rnは、参照電圧VREFと接地電位GND間において、例えば20~60個直列に接続される。トランジスタTr1~Tr(n+1)及び抵抗回路イネーブルトランジスタ131は、例えばNMOSトランジスタで構成される。
【0033】
トランジスタTr1~Tr(n+1)の各ソースは、いずれも共通接続ノード(=バイアス電圧VBIASの印加端)に接続される。この共通接続ノードは、後段の電圧調整回路120を形成する電圧設定入力トランジスタ125のゲートに接続される。
【0034】
ラダー抵抗回路130の別の特徴として、昇圧電圧VPPを調整するときに複数の抵抗R1~Rnを短絡するものではないことが挙げられる。従って、ラダー抵抗回路130に流れる電流に変化が生じない。さらに、トランジスタTr1~Tr(n+1)のオン/オフによっても電流が変化しない。電流の変化はノイズ発生の原因にもなるが、本構成であれば、こうした不具合を抑制することができる。
【0035】
昇圧電圧VPPは、電圧設定入力トランジスタ125のゲート電圧をVBIAS、電圧設定入力トランジスタ125のソース・ゲート間の閾値電圧をVpth、トランジスタ124のゲート・ソース間の閾値電圧をVnth、定電圧素子121及び122をツェナーダイオードとし、そのツェナー電圧がそれぞれVZとすると、次の2つの式で示される。
【0036】
第1は、トランジスタ123がオンしているときであり、VPP1=VBIAS+Vpth+2・VZで表せる。第2は、トランジスタ123がオフしているときであり、VPP2=VBIAS+Vpth+Vnth2+2・VZで表せる。ここで、例えばVBIAS=0.6V、Vpth=1.2V、Vnth=1.2V、VZ=7.5Vとすると、VPP1=16.8V、VPP2=18.0Vとなる。
【0037】
このように、電圧調整回路120は、定電圧素子121及び122を用いて昇圧電圧VPPを所定のクランプ電圧VPP1又はVPP2以下に制限する働きを持つ。
【0038】
トランジスタTr1~Tr(n+1)の各ゲートはデコーダ回路170に接続される。
【0039】
カレントミラー回路140は、電圧調整回路120の接地電位GND側に接続される。本図に即して述べると、カレントミラー回路140は、定電流源141、トランジスタ142~144、及びインバータ145を有する。
【0040】
トランジスタ142~144は、それぞれ第1主電極、第2主電極、及び制御電極を有し、カレントミラー回路を構成する。トランジスタ142~144がMOSトランジスタの場合、第1主電極及び第2主電極はドレイン及びソースに相当する。第1主電極を例えばドレインとした場合、第2主電極はソースとなる。逆に、第1主電極を例えばソースとした場合、第2主電極はドレインとなる。
【0041】
トランジスタ142~144はバイポーラトランジスタで構成することも可能である。トランジスタ142~144をバイポーラトランジスタで構成する場合、第1主電極及び第2主電極はコレクタ及びエミッタに相当し、制御電極はベースに相当する。
【0042】
本比較例において、トランジスタ142~144は、すべてNMOSトランジスタで構成している。トランジスタ144のドレインは、電圧設定入力トランジスタ125のソースに接続される。トランジスタ144のソースは、ダイオード接続されたトランジスタ143のドレイン、ゲート、及びトランジスタ142のゲートに接続される。トランジスタ144のゲートには、抵抗回路イネーブルトランジスタ131のゲートに印加したものと同じイネーブル信号ENが印加される。従って、ラダー抵抗回路130とカレントミラー回路は同期してオン/オフする。トランジスタ142及び143の各ソースは、接地電位GNDに接続される。トランジスタ142のドレインは、定電流源141に接続される。
【0043】
インバータ145の入力端は、トランジスタ142のドレインに接続される。インバータ145の出力端(=カレントミラー回路140の出力端)から昇圧電圧生成回路110に向けてチャージイネーブル信号CP_ENが出力される。チャージイネーブル信号CP_ENは、昇圧電圧生成回路110を通常モードか省電力モードのいずれかで動作させるための信号である。
【0044】
例えば、昇圧電圧VPPが所定のレベルに達していないときには、電圧調整回路120に十分な電圧が印加できなくなる。そのため、トランジスタ143及び144に十分な電流の供給ができなくなる。このとき、トランジスタ142はオン状態に至らず、定電流源141を吸い込む能力が不十分となる。従って、トランジスタ142のドレインは、ハイレベルに置かれる。これにより、インバータ145の出力(=チャージイネーブル信号CP_EN)はローレベルとなる。こうした状態では、昇圧電圧生成回路110を通常動作状態にするように制御される。
【0045】
これに対して、昇圧電圧VPPが所定の大きさに到達しているときには、定電流源141から所定の電流がトランジスタ142に供給される。そのため、インバータ145の入力及び出力は、それぞれローレベル及びハイレベルとなる。こうした状態では、昇圧電圧VPPが所定の大きさに到達しているので、昇圧電圧生成回路110を省電力モードで動作させるようにしている。
【0046】
カレントミラー回路140は、電圧調整回路120及び昇圧電圧生成回路110に流す電流を設定する機能を備える。また、カレントミラー回路140は、昇圧電圧生成回路110で生成された昇圧電圧VPPの大きさを検知して、電圧調整回路120及び昇圧電圧生成回路110の回路動作を制御するという役割も担う。
【0047】
ランプ回路150は、昇圧電圧生成回路110とメモリセルアレイ回路230等との間に接続される。ランプ回路150は、例えばデプレッショントランジスタ151を含む。デプレッショントランジスタ151のゲートには、電圧の立ち上がりが傾斜したいわゆるスロープ電圧が印加される。こうしてXデコーダ回路210及びYデコーダ回路220にスロープ状のランプ電圧VRAMPが供給される。これにより、Xデコーダ回路210、Yデコーダ回路220、及びメモリセルに加わるストレスが緩和される。
【0048】
デプレッショントランジスタ151を採用する理由は、ドレイン・ソース間の電圧を0Vでオンさせるためである。これによって、昇圧電圧生成回路110で発生した昇圧電圧VPPをそのままランプ回路150の出力側、つまり、Xデコーダ回路210及びYデコーダ回路220等に伝達することができる。ランプ回路150は、昇圧電圧生成回路110側とXデコーダ回路210及びYデコーダ回路220との間でバッファの役割も担う。
【0049】
トリミングレジスタ160は、電圧補正用メモリセル232に格納された、昇圧電圧VPPのトリミング用電圧をラダー抵抗回路130に供給するときの中継レジスタとしての役割を担う。トリミングレジスタ160は、例えば、6ビットで構成される。
【0050】
トリミングレジスタ160は、電圧補正用メモリセル232から取り出したトリミング値(TRIM_DATA)を格納する。なお、電圧補正用メモリセル232には、例えば40mVステップで0Vから1.2Vまでのトリミング値(TRIM_DATA)が格納されている。
【0051】
例えば、昇圧電圧VPPの設定目標値を16.88Vに設定するとする。ここで、バイアス電圧VBIASを参照電圧VREF(1.2V)の1/2の大きさの0.6Vに設定して、テスト測定用パッド190で昇圧電圧VPPを測定したときの大きさが16.84Vであったとする。この場合、昇圧電圧VPPが目標設定よりも0.04V(40mV)低いことになる。そこで、電圧補正用メモリセル232に格納された0.04V(40mV)のトリミング値(TRIM_DATA)をセンスアンプ回路250等を介してトリミングレジスタ160に記憶する。
【0052】
トリミングレジスタ160に記憶されたトリミング値(TRIM_DATA)は、デコーダ回路170に入力される。デコーダ回路170は、トリミング値(TRIM_DATA)をラダー抵抗回路130の制御信号に変換する。すなわち、デコーダ回路170は、トリミングレジスタ160に格納された符号化データをデコードするためのデコーダを含む。デコーダは、例えば5ビットで構成される。
【0053】
デコーダ回路170によりデコードされた制御信号により、後段のラダー抵抗回路130が駆動される。本図に即して述べると、ラダー抵抗回路130の制御信号は、トランジスタTr1~Tr(n+1)それぞれのゲート信号VTr1~VTr(n+1)である。
【0054】
ラダー抵抗回路130では、バイアス電圧VBIASが0.64V(0.6V+0.04V)を出力するように、トランジスタTr1~Tr(n+1)のいずれかが選択的にオン状態とされる。なお、バイアス電圧VBIAS及び昇圧電圧VPPの設定は、半導体装置100がウエーハ状態のときに行われる。
【0055】
電圧入出力回路180は、調整された昇圧電圧VPPをテスト測定用パッド190に出力するときには、出力スイッチとして用いられる。また、電圧入出力回路180は、メモリセルアレイ回路230側のストレステスト時には、ストレス電圧を印加する入力スイッチとして用いられる。
【0056】
テスト測定用パッド190は、半導体装置100がウエーハ状態時での測定端子として用いられる。テスト測定用パッド190は、ストレス電圧印加端子としても用いられる。
【0057】
電圧入出力回路180は、トランジスタ181と、スイッチ電圧印加手段182を有する。スイッチ電圧印加手段182には、トランジスタ181をオンまたはオフさせるためのハイレベルとローレベルの2つのレベルをもった電圧が切り換えられて印加される。
【0058】
テスト測定用パッド190に昇圧電圧VPPを出力しない場合、及び、ストレス電圧をメモリセルアレイ回路230等に印加しない場合には、トランジスタ181のゲートをローレベルまたはハイレベルに固定する。トランジスタ181としてNMOSトランジスタが用いられるときには、トランジスタ181のゲートがローレベルに固定される。一方、トランジスタ181としてPMOSトランジスタが用いられるときには、トランジスタ181のゲートがハイレベルに固定される。
【0059】
本比較例の半導体装置100であれば、ラダー抵抗回路130により昇圧電圧VPPを数十mVの単位で細やかに調整することができる。従って、定電圧素子121及び122として用いられるツェナーダイオードまたはダイオードの製造ばらつき等に依ることなく昇圧電圧VPPを高精度にレギュレートすることが可能となる。
【0060】
<比較例に関する考察>
ただし、本比較例の半導体装置100では、電圧調整回路120の定電圧素子121及び122におけるツェナー電圧が正の温度依存性を持つ。先述の通り、トランジスタ123及び124が負の温度依存性を持つ場合には、両者の温度依存性が打ち消し合うので、昇圧電圧VPPの温度依存性を小さく抑えることができる。しかしながら、昇圧電圧VPPの温度依存性をフラットに近付けることは決して容易ではない。また、電圧調整回路120がトランジスタ123及び124を含まない構成も考えられる。
【0061】
図2は、比較例(
図1)における昇圧電圧VPPの温度依存性(本図では周囲温度Taに対する依存性)を示す図である。なお、図中の実線は、昇圧電圧VPPを示している。一方、破線L1は、半導体装置100に集積化される高耐圧素子の耐圧ラインを示している。また、破線L2は、メモリセルアレイ回路230へのデータ書き込みに必要な昇圧電圧VPPの下限値を示している。
【0062】
本図で示すように、昇圧電圧VPPは、周囲温度Taが上がるほど高くなる。つまり、昇圧電圧VPPが正の温度依存性を持つ。これは定電圧素子121及び122(例えばツェナーダイオード)が持つ正の温度依存性がキャンセルされていないことに起因する。
【0063】
昇圧電圧VPPが正の温度依存性を持つと、高温時に昇圧電圧VPPが破線L2から乖離して破線L1の近傍値まで上昇する。このように過剰な昇圧電圧VPPがメモリセルアレイ回路230に印加されると、メモリセルアレイ回路230の書換サイクル寿命が短くなるおそれがある。また、高電圧の印加による素子破壊の懸念もあり信頼性が低下する。
【0064】
以下では、上記の考察に鑑み、昇圧電圧VPPの適切な調整(例えば温度依存性の更なるフラット化又は任意の傾き調整)を実現することのできる新規な実施形態を提案する。
【0065】
<半導体装置(第1実施形態)>
図3は、半導体装置100の第1実施形態を示す図である。本実施形態の半導体装置100は、先出の比較例(
図1)を基本としつつ、ラダー抵抗回路130に代えてバイアス電圧生成回路300を備える。
【0066】
バイアス電圧生成回路300は、負の温度依存性(本図では[NEG]と表記)を持つバイアス電圧VBIASを生成する。すなわち、バイアス電圧VBIASは、周囲温度Taが高いほど電圧値が低下するように負の温度勾配を持つ。言い換えると、バイアス電圧VBIASが持つ負の温度依存性と、定電圧素子121及び122それぞれのツェナー電圧が持つ正の温度依存性(本図では[POS]と表記)とは、互いの極性(正負)が逆である。
【0067】
バイアス電圧生成回路300は、バイアス電圧VBIASを電圧調整回路120の電圧設定入力トランジスタ125のゲートに印加することにより昇圧電圧VPPの上限値(=先述のクランプ電圧VPP1又はVPP2)を調整する。この点については、先出の比較例(
図1)と特に変わるところはない。
【0068】
このように、電圧調整回路120に対して負の温度依存性[NEG]を持つバイアス電圧VBIASが印加されることにより、定電圧素子121及び122それぞれが持つ正の温度依存性[POS]がキャンセルされる。従って、昇圧電圧VPPの温度依存性がフラットに近付けられる。その結果、例えば、高温時における過剰な昇圧電圧VPPの出力が防止され得る。
【0069】
また、本実施形態の半導体装置100であれば、バイアス電圧VBIASが持つ負の温度依存性[NEG]を調整することにより、昇圧電圧VPPの温度依存性を任意に調整することもできる。従って、例えば、半導体装置100の外部からバイアス電圧VBIASが持つ負の温度依存性[NEG]を制御することにより、半導体装置100の用途及び仕様(メモリセルの特性又は素子耐圧など)に合わせて柔軟に対応することが可能となる。
【0070】
なお、本実施形態では、定電圧素子121及び122が正の温度依存性[POS]を持ち、バイアス電圧VBIASが負の温度依存性[NEG]を持つ例が挙げられている。ただし、両者の関係は上記に限定されるものではない。すなわち、定電圧素子121及び122が第1の温度依存性を持ち、バイアス電圧VBIASが第1の温度依存性とは極性が逆の第2の温度依存性を持っていればよい。
【0071】
<半導体装置(第2実施形態)>
図4は、半導体装置100の第2実施形態を示す図である。本実施形態の半導体装置100は、先出の第1実施形態(
図3)を基本としつつ、バイアス電圧生成回路300の内部構成例が明示されている。本図に即して述べると、本実施形態のバイアス電圧生成回路300は、帰還抵抗部301とアンプ302を含む。
【0072】
帰還抵抗部301は、バイアス電圧VBIASに応じた分圧電圧VDIVを生成する。本図に即して述べると、帰還抵抗部301は、抵抗301a及び301bを含む。抵抗301aは、バイアス電圧VBIASの印加端(=アンプ302の出力端)と分圧電圧VDIVの印加端との間に接続されている。抵抗301bは、分圧電圧VDIVの印加端と接地端との間に接続されている。
【0073】
抵抗301aは、負の温度依存性[NEG]を持つ抵抗素子であってもよい。抵抗301aは、例えば、ポリ抵抗であってもよい。ポリ抵抗は、ポリシリコン層の抵抗成分を利用した抵抗素子である。
【0074】
抵抗301bは、正の温度依存性[POS]を持つ抵抗素子であってもよい。抵抗301bは、例えば、N型ウェル抵抗又はトンネル抵抗であってもよい。N型ウェル抵抗は、N型ウェルの抵抗成分を利用した抵抗素子である。また、トンネル抵抗は、表層にポリシリコン層が形成されたトンネル領域の抵抗成分を利用した抵抗素子である。
【0075】
ただし、抵抗301a及び301bそれぞれの温度依存性は、バイアス電圧VBIASが負の温度依存性[NEG]を持つ範囲で任意に調整され得る。
【0076】
また、抵抗301a及び301bは、それぞれの抵抗値のうち少なくとも一方がトリミング等により任意に調整可能であってもよい。
【0077】
アンプ302は、反転入力端(-)に入力される先出の分圧電圧VDIVと、非反転入力端(+)に入力される所定の参照電圧VREFとがイマジナリショートするように、出力端から出力されるバイアス電圧VBIASを制御する。なお、参照電圧VREFの温度依存性は、フラットであってもよい。参照電圧VREFは、例えば、デプレッション型電圧源で生成されてもよい。
【0078】
図5は、第2実施形態(
図4)における昇圧電圧VPPの温度依存性(本図では周囲温度Taに対する依存性)を示す図である。なお、図中の実線は、昇圧電圧VPPを示している。一方、破線L1は、半導体装置100に集積化される高耐圧素子の耐圧ラインを示している。また、破線L2は、メモリセルアレイ回路230へのデータ書き込みに必要な昇圧電圧VPPの下限値を示している。また、破線L3は、比較例(
図1)における昇圧電圧VPPの温度依存性を対比のために示している。
【0079】
本図で示すように、本実施形態における昇圧電圧VPP(実線)の温度依存性は、比較例(破線L3)と異なり、ほぼフラットになる。従って、高温時における昇圧電圧VPPの上昇が抑えられる。その結果、メモリセルアレイ回路230の書換サイクル寿命が長くなる。また、高電圧の印加による素子破壊の懸念が払拭されるので、信頼性が向上する。
【0080】
<半導体装置(第3実施形態)>
図6は、半導体装置100の第3実施形態を示す図である。本実施形態の半導体装置100は、先出の第1実施形態(
図3)を基本としつつ、バイアス電圧生成回路300の内部構成例が明示されている。本図に即して述べると、本実施形態のバイアス電圧生成回路300は、ダイオード列303と参照電流生成部304を含む。
【0081】
ダイオード列303は、複数段(本図では2段)のダイオード303a及び303bを含む。ダイオード303aのアノードは、バイアス電圧VBIASの印加端に接続されている。ダイオード303aのカソードは、ダイオード303bのアノードに接続されている。ダイオード303bのカソードは、接地端に接続されている。
【0082】
ダイオード303a及び303bそれぞれの順方向効果電圧Vfは、いずれも負の温度依存性[NEG]を持つ。従って、ダイオード列303のアノードから引き出されるバイアス電圧VBIAS(=2×Vf)も負の温度異存性[NEG]を持つ。
【0083】
参照電流生成部304は、ダイオード列303に流れる所定の参照電流IREFを生成する。本図に即して述べると、参照電流生成部304は、トランジスタ304a及び304b(例えばPMOSFET)と、トランジスタ304c(例えばデプレッション型NMOSFET)と、を含む。
【0084】
トランジスタ304a及び304bそれぞれのソースは、いずれも電源端に接続されている。トランジスタ304a及び304bそれぞれのゲートは、いずれもトランジスタ304aのドレインに接続されている。トランジスタ304aのドレインは、トランジスタ304cのドレインに接続されている。トランジスタ304bのドレインは、バイアス電圧VBIASの印加端に接続されている。トランジスタ304cのゲート及びソースは、いずれも接地端に接続されている。
【0085】
トランジスタ304cは、所定の参照電流IREFを生成する電流源として機能する。なお、参照電流IREFの温度依存性は、フラットであってもよい。また、トランジスタ304cは、トリミング等により参照電流IREFが任意に調整可能であってもよい。
【0086】
トランジスタ304a及び304bは、トランジスタ304aのドレインに入力される参照電流IREFをミラーしてトランジスタ304bのドレインから出力するカレントミラーとして機能する。
【0087】
図7は、第3実施形態(
図6)における昇圧電圧VPPの温度依存性(本図では周囲温度Taに対する依存性)を示す図である。なお、図中の実線は、昇圧電圧VPPを示している。一方、破線L1は、半導体装置100に集積化される高耐圧素子の耐圧ラインを示している。また、破線L2は、メモリセルアレイ回路230へのデータ書き込みに必要な昇圧電圧VPPの下限値を示している。また、破線L3は、比較例(
図1)における昇圧電圧VPPの温度依存性を対比のために示している。
【0088】
本図で示すように、本実施形態における昇圧電圧VPP(実線)の温度依存性は、比較例(破線L3)と異なり、ほぼフラットになる。従って、高温時における昇圧電圧VPPの上昇が抑えられる。その結果、メモリセルアレイ回路230の書換サイクル寿命が長くなる。また、高電圧の印加による素子破壊の懸念が払拭されるので、信頼性が向上する。すなわち、本実施形態では、先出の第2実施形態(
図4)と同様の効果が享受される。
【0089】
<半導体装置(第4実施形態)>
図8は、半導体装置100の第4実施形態を示す図である。本実施形態の半導体装置100は、先出の第1実施形態(
図3)を基本としつつ、バイアス電圧生成回路300の内部構成例が明示されている。本図に即して述べると、本実施形態のバイアス電圧生成回路300は、電流源305と、抵抗ラダー部306と、電圧選択部307と、を含む。
【0090】
電流源305は、所定の参照電流IREFを生成する。なお、参照電流IREFの温度依存性は、フラットであってもよい。また、参照電流IREFは、負の温度依存性[NEG]を持ってもよい。
【0091】
抵抗ラダー部306は、電流源305と接地端との間に直列接続されて負の温度依存性[NEG]を持つ複数のノード電圧(本図ではノード電圧Va、Vb及びVc)を生成する。本図に即して述べると、抵抗ラダー部306は、抵抗306a、306b及び306cを含む。抵抗306aは、電流源305とノード電圧Vaの印加端との間に接続されている。抵抗306bは、ノード電圧Vaの印加端とノード電圧Vbの印加端との間に接続されている。抵抗306cは、ノード電圧Vbの印加端とノード電圧Vcの印加端(=接地端)との間に接続されている。なお、抵抗306a、306b及び306cは、それぞれ負の温度依存性[NEG]を持つ抵抗素子(例えばポリ抵抗)であってもよい。
【0092】
電圧選択部307は、ノード電圧Va、Vb及びVcのうちいずれか一つをバイアス電圧VBIASとして出力する。本図に即して述べると電圧選択部307は、スイッチ307a、307b及び307cを含む。スイッチ307aの第1端は、ノード電圧Vaの印加端に接続されている。スイッチ307bの第1端は、ノード電圧Vbの印加端に接続されている。スイッチ307cの第1端は、ノード電圧Vcの印加端(=接地端)に接続されている。スイッチ307a、307b及び307cそれぞれの第2端は、いずれもバイアス電圧VBIASの印加端に接続されている。スイッチ307a、307b及び307cは、例えば、デコーダ回路170からの制御信号に応じて択一的にオン状態とされる。
【0093】
図9は、第4実施形態(
図8)における昇圧電圧VPPの温度依存性(本図では周囲温度Taに対する依存性)を示す図である。なお、図中の実線は、昇圧電圧VPPを示している。一方、破線L1は、半導体装置100に集積化される高耐圧素子の耐圧ラインを示している。また、破線L2は、メモリセルアレイ回路230へのデータ書き込みに必要な昇圧電圧VPPの下限値を示している。また、破線L3は、比較例(
図1)における昇圧電圧VPPの温度依存性を対比のために示している。
【0094】
本図で示すように、本実施形態における昇圧電圧VPP(実線)の温度依存性は、比較例(破線L3)よりも小さい傾きとなる。すなわち、先出の第2実施形態(
図5)及び第3実施形態(
図7)と異なり、本実施形態における昇圧電圧VPP(実線)は、周囲温度Taに対して或る程度の傾きを持って変化する。従って、半導体装置100の用途及び仕様(メモリセルの特性又は素子耐圧など)に合わせて柔軟に対応することが可能となる。
【0095】
<半導体装置(第5実施形態)>
図10は、半導体装置100の第5実施形態を示す図である。本実施形態の半導体装置100は、先出の第4実施形態(
図8)を基本としつつ、バイアス電圧生成回路300の内部構成に変更が加えられている。本図に即して述べると、本実施形態のバイアス電圧生成回路300は、先出の電流源305に代えて参照電圧生成部308を含む。
【0096】
参照電圧生成部308は、負の温度依存性[NEG]を持つ参照電圧VREFを生成して抵抗ラダー部306に供給する。
【0097】
本実施形態であれば、先出の第4実施形態(
図8)と同様の作用及び効果を奏する。
【0098】
<書換サイクル寿命>
図11は、第1~第5実施形態における書換サイクル寿命の改善効果を示す図である。本図の横軸は、メモリセルアレイ回路230の書換サイクル(データの書換回数)を示している。本図の縦軸は、メモリセルアレイ回路230から読み出されるビット信号L11及び反転ビット信号L12、並びに、読出センス電圧Vsenseそれぞれの電圧値を示している。また、図中の破線L10は、比較例(
図1)におけるビット信号を対比のために示している。
【0099】
本図で示したように、高温時における昇圧電圧VPPの低電圧化(上昇抑制)を実現することにより、メモリセルアレイ回路230の劣化が抑制される。従って、書換サイクル寿命の改善、延いては書換保証回数の増大が期待される。
【0100】
このように、第1~第5実施形態で提案する技術は、メモリセルアレイ回路230を備える半導体装置100(いわゆるメモリIC)に好適である。また、同技術は、装置内部で昇圧電圧(高電圧)を生成する機能を備えた半導体装置全てに広く適用され得る。
【0101】
<付記>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0102】
本明細書中に開示されている半導体装置は、昇圧電圧を生成するように構成された昇圧電圧生成回路と、第1の温度依存性を持つ定電圧素子を用いて前記昇圧電圧を所定のクランプ電圧以下に制限するように構成された電圧調整回路と、前記第1の温度依存性とは極性が逆である第2の温度依存性を持つバイアス電圧を用いて前記クランプ電圧を調整するように構成されたバイアス電圧生成回路と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0103】
上記第1の構成による半導体装置において、前記電圧調整回路は、前記定電圧素子に直列接続されて制御端に前記バイアス電圧が印加されるトランジスタを含む構成(第2の構成)としてもよい。
【0104】
上記第1又は第2の構成による半導体装置において、前記バイアス電圧生成回路は、前記バイアス電圧に応じた分圧電圧を生成するように構成された帰還抵抗部と、前記分圧電圧と所定の参照電圧の入力を受けて前記バイアス電圧を制御するように構成されたアンプとを含み、前記帰還抵抗部は、前記バイアス電圧の印加端と前記分圧電圧の印加端との間に接続された第1抵抗と、前記分圧電圧の印加端と接地端との間に接続された第2抵抗とを含み、前記第1抵抗が前記第2の温度依存性を持つ、又は、前記第2抵抗が前記第1の温度依存性を持つ、又は、前記第1抵抗が前記第2の温度依存性を持ちかつ前記第2抵抗が前記第1の温度依存性を持つ構成(第3の構成)としてもよい。
【0105】
上記第3の構成による半導体装置において、前記帰還抵抗部は、前記第1抵抗及び前記第2抵抗それぞれの抵抗値のうち少なくとも一方が調整可能であるように構成されている構成(第4の構成)としてもよい。
【0106】
上記第1又は第2の構成による半導体装置において、前記バイアス電圧生成回路は、前記第2の温度依存性を持つ順方向降下電圧が前記バイアス電圧として出力されるように構成された少なくとも1段のダイオード列を含む構成(第5の構成)としてもよい。
【0107】
上記第5の構成による半導体装置において、前記バイアス電圧生成回路は、前記ダイオード列に流れる所定の参照電流を生成するように構成された参照電流生成部をさらに含む構成(第6の構成)としてもよい。
【0108】
上記第6の構成による半導体装置において、前記参照電流生成部は、前記参照電流が調整可能であるように構成されている構成(第7の構成)としてもよい。
【0109】
上記第1又は第2の構成による半導体装置において、前記バイアス電圧生成回路は、所定の参照電流を生成するように構成された電流源と、前記電流源と接地端との間に直列接続されて前記第2の温度依存性を持つ複数のノード電圧を生成するように構成された抵抗ラダー部と、前記複数のノード電圧のうちいずれか一つを前記バイアス電圧として出力するように構成された電圧選択部とを含む構成(第8の構成)としてもよい。
【0110】
上記第1又は第2の構成による半導体装置において、前記バイアス電圧生成回路は、前記第2の温度依存性を持つ参照電圧を生成するように構成された参照電圧生成部と、前記参照電圧生成部と接地端との間に直列接続されて複数のノード電圧を生成するように構成された抵抗ラダー部と、前記複数のノード電圧のうちいずれか一つを前記バイアス電圧として出力するように構成された電圧選択部とを含む構成(第9の構成)としてもよい。
【0111】
上記第1~第9いずれかの構成による半導体装置は、前記昇圧電圧を用いてデータが書き込まれるように構成されたメモリセルアレイ回路をさらに備える構成(第10の構成)としてもよい。
【0112】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。また、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0113】
100 半導体装置
101 電源入力端子
110 昇圧電圧生成回路
111、112、113 トランジスタ
120 電圧調整回路
121、122 定電圧素子
123、124 トランジスタ
125 電圧設定入力トランジスタ
130 ラダー抵抗回路
131 抵抗回路イネーブルトランジスタ
140 カレントミラー回路
141 定電流源
142、142、143、144 トランジスタ
145 インバータ
150 ランプ回路
151 デプレッショントランジスタ
160 トリミングレジスタ
170 デコーダ回路
180 電圧入出力回路
181 トランジスタ
182 スイッチ電圧印加手段
190 テスト測定用パッド
210 Xデコーダ回路
220 Yデコーダ回路
230 メモリセルアレイ回路
231 データ記憶用メモリセル
232 電圧補正用メモリセル
240 Yゲート回路
250 センスアンプ回路
300 バイアス電圧生成回路
301 帰還抵抗部
301a、301b 抵抗
302 アンプ
303 ダイオード列
303a、303b ダイオード
304 参照電流生成部
304a、304b トランジスタ(PMOSFET)
304c トランジスタ(デプレッション型NMOSFET)
305 電流源
306 抵抗ラダー部
306a、306b、306c 抵抗
307 電圧選択部
307a、307b、307c スイッチ
308 参照電圧生成部
C1、C2、C3 キャパシタ
CP_EN チャージポンプイネーブル信号
EN イネーブル信号
GND 接地電位
R1~Rn 抵抗
Ta 周囲温度
Tr1~Tr(n+1) トランジスタ
Va、Vb、Vc ノード電圧
VBIAS バイアス電圧
VCC 電源電圧
VPP 昇圧電圧
VRAMP ランプ電圧
VREF 参照電圧
Vnth、Vpth 閾値電圧
VZ ツェナー電圧