(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070977
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20240517BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20240517BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240517BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240517BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240517BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240517BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240517BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J35/04 301C
B01J27/053 A ZAB
B01D53/86 222
B01D53/94 222
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181644
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲東 聖次
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸司
(72)【発明者】
【氏名】池部 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】森島 毅
(72)【発明者】
【氏名】原田 瑛志
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB13
3G091BA38
3G091GA06
3G091GA16
3G091GA18
3G091GB01W
3G091GB01X
3G091GB03X
3G091GB04X
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB13X
3G091GB17X
3G091HA11
3G190AA13
3G190BA26
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB15
3G190CB16
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA10X
4D148BA15X
4D148BA19X
4D148BA30X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148CD05
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01B
4G169BA05B
4G169BB06B
4G169BB10B
4G169BC13B
4G169BC43B
4G169BC51B
4G169BC71B
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA10
4G169CA13
4G169CA14
4G169CA15
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA18
4G169EA27
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EB17Y
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EC29
4G169EE09
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】圧力損失の上昇を抑制できる排ガス浄化装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒とを備え、ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、複数のセルは、隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、流入セル側触媒は、隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上及び流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に設けられ、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流入セル側触媒領域の長さの50%の位置を基準位置としたときに、基準位置において、隔壁の流入セル側の隔壁表面の平面視での隔壁の前記流入セル側触媒で被覆された領域の割合は、50%以上95%以下の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム基材と流入セル側触媒とを備える排ガス浄化装置であって、
前記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、
前記複数のセルは、前記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、
前記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、
前記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、
前記流入セル側触媒は、前記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って所定距離離れた位置まで延在する流入セル側触媒領域における前記流入セル側の隔壁表面上及び前記流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に設けられ、
前記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って前記流入セル側触媒領域の長さの50%の位置を基準位置としたときに、該基準位置において、前記隔壁の前記流入セル側の前記隔壁表面の平面視での前記隔壁の前記流入セル側触媒で被覆された領域の割合は、50%以上95%以下の範囲内であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等における内燃機関から排出される排ガスには、大気汚染の原因となる炭素を主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter、以下では「PM」と略すことがある。)や不燃成分であるアッシュ等が含まれている。PMを排ガスから捕集して除去するためのフィルタとして、ウォールフロー構造のフィルタが広く用いられている。
【0003】
ウォールフロー構造のフィルタは、通常、ハニカム基材を備え、ハニカム基材が流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、複数のセルが隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含んでいる。そして、流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。このため、流入セルに流入側端から流入した排ガスは隔壁を透過することで流出セルに流入し、流出セルの流出側端から排出される。そして、排ガスが隔壁を透過する時に、PMが隔壁に存在する空隙に堆積される。ウォールフロー構造のフィルタとしては、例えば、ディーゼルエンジン用のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)やガソリンエンジン用のガソリンパティキュレートフィルタ(GPF、以下では「GPF」と略すことがある。)等が知られている。
【0004】
一方、排ガスには、PMの他に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。有害成分は、貴金属触媒等の触媒を塗布したフィルタによって排ガスから除去できる。近年、PM及び有害成分の両方を排ガスから除去するために、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置が用いられている。
【0005】
このような排ガス浄化装置として、例えば、特許文献1に記載された排ガス浄化装置であって、隔壁の内部に設けられ、基材の排ガス流入側の端部を含む上流側部分(流入側部分)に配置された上流側触媒層と、隔壁の内部に設けられ、基材の排ガス流出側の端部を含む下流側部分(流出側部分)に配置された下流側触媒層とを備える排ガス浄化装置が知られている。この排ガス浄化装置では、上流側触媒層及び下流側触媒層がPt、Pd、及びRhのうちの少なくとも1種の貴金属を含有し、上流側触媒層に含有される貴金属種と下流側触媒層に含有される貴金属種とが異なっており、基材の体積1L当たりの上流側触媒層のコート量が下流側触媒層よりも少なく、基材の体積1L当たりの上流側触媒層のコート量が60g/L以上100g/L未満であり、上流側触媒層が基材の長さの20%~80%に当たる部分に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置において、排ガス浄化性能の確保及びウォッシュコートによる触媒の細孔によるPM捕集性能の向上には、隔壁の流入側にウォッシュコートによる触媒を配置することが有効であることが知られている。このため、例えば、特許文献1に記載された排ガス浄化装置に代表されるように、隔壁の流入側に配置される触媒を好ましい構成することで、排ガス浄化性能、PM捕集性能、圧力損失等の特性を向上できる。
【0008】
世界の各地域で従来よりも厳しくなる燃費規制に対して、電動化とは別に内燃機関としても様々な取り組みが行われている。その中の一つに排気量の小型化が挙げられ、排気量当たりの出力向上の必要性から排気系の背圧低減への要求が高くなっている。このような状況において、ウォールフロー構造のフィルタに触媒が設けられた排ガス浄化装置としても排ガス浄化性能及びPM捕集性能を維持しながら圧力損失を低減することが求められている。しかしながら、従来のように隔壁の流入側に触媒を配置する場合には圧力損失の上昇の影響が大きいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧力損失の上昇を抑制できる排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒とを備える排ガス浄化装置であって、上記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、上記流入セル側触媒は、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って所定距離離れた位置まで延在する流入セル側触媒領域における上記流入セル側の隔壁表面上及び上記流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に設けられ、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って上記流入セル側触媒領域の長さの50%の位置を基準位置としたときに、該基準位置において、上記隔壁の上記流入セル側の上記隔壁表面の平面視での上記隔壁の上記流入セル側触媒で被覆された領域の割合は、50%以上95%以下の範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化装置によれば、圧力損失の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る排ガス浄化装置を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【
図3】流入セル側触媒が隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上に設けられた構造であって、第1実施形態と異なる構造の例を概略的に示す断面図である。
【
図4】流入セル側触媒が隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上に設けられた構造であって、第1実施形態と異なる構造の例を概略的に示す断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置の変形例におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1及び2の排ガス浄化装置における隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面のSEMによる撮影画像である。
【
図7】(a)~(c)は、それぞれ比較例1~3の排ガス浄化装置における隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面のSEMによる撮影画像である。
【
図8】(a)~(c)は、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率を求めた手順を概略的に説明する工程図である。
【
図9】(a)~(c)は、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率を求めた手順を概略的に説明する工程図である。
【
図10】実施例1及び2並びに比較例1~3の排ガス浄化装置で求められた隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率に対する初期の圧力損失及びNOx80%浄化温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の排ガス浄化装置に係る実施形態について説明する。
実施形態に係る排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒とを備える排ガス浄化装置であって、上記ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有し、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口し、上記流入セル側触媒は、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って所定距離離れた位置まで延在する流入セル側触媒領域における上記流入セル側の隔壁表面上及び上記流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に設けられ、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って上記流入セル側触媒領域の長さの50%の位置を基準位置(以下、「隔壁の延伸方向の基準位置」と略すことがある。)としたときに、該基準位置において、上記隔壁の上記流入セル側の上記隔壁表面の平面視(以下、「平面視」と略すことがある。)での上記隔壁の上記流入セル側触媒で被覆された領域の割合(以下、「隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率」と略すことがある。)は、50%以上95%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0014】
実施形態において、「流入側」とは、排ガス浄化装置において排ガスが流入する側を指し、「流出側」とは、排ガス浄化装置において排ガスが流出する側を指す。また、「隔壁の延伸方向」とは、隔壁が延びる方向を指す。さらに、ハニカム基材の軸方向は、通常、隔壁の延伸方向と略同一であり、セルの延伸方向(セルが延びる方向)は、通常、隔壁の延伸方向と略同一である。なお、以下の実施形態の説明において、「延伸方向」とは、隔壁の延伸方向であって、ハニカム基材の軸方向及びセルの延伸方向と略同一の方向を指す。
【0015】
ここで、実施形態に係る排ガス浄化装置の概略について、第1実施形態に係る排ガス浄化装置を例示して説明する。
図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置を概略的に示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る排ガス浄化装置1は、ハニカム基材10と、封止部16と、流入セル側触媒20と、流出セル側触媒30とを備えている。ハニカム基材10は、円筒状の枠部11と枠部11の内側の空間をハニカム状に仕切る隔壁14とが一体形成された基材である。隔壁14は、ハニカム基材10の流入側端面10Saから流出側端面10Sbまで延びる複数のセル12を画成する多孔質体である。隔壁14の形状は、複数のセル12の延伸方向に垂直な断面が正方形になるように、互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Aと、これらの複数の壁部14Aと直行しかつ互いに離間して平行に配置される複数の壁部14Bとを含み、延伸方向に垂直な断面が格子状となっている。
【0017】
複数のセル12は、隔壁14を挟んで隣接する流入セル12A及び流出セル12Bを含んでいる。流入セル12Aは、流入側端12Aaが開口し、流出側端12Abが封止部16により封止されており、流出セル12Bは、流入側端12Baが封止部16により封止され、流出側端12Bbが開口している。流入セル12A及び流出セル12Bの延伸方向に垂直な断面形状は、矩形となっており、4つのコーナーを有している。
【0018】
流入セル側触媒20は、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に隔壁14の延伸方向の長さの50%の距離離れた位置14bまで延在する流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に設けられている。さらに、流入セル側触媒20は、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁内部領域14NAに存在する空隙にも設けられている。なお、流入セル側触媒20は、大部分が隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SA上に設けられ、残部が隔壁14の流入セル12A側の隔壁内部領域14NAの空隙に設けられている。流入セル側触媒20は、担体と、担体に担持された白金(Pt)を含有する触媒金属粒子とを含んでいる。
【0019】
図2の吹き出しには、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に流入セル側触媒領域14Xの延伸方向の長さの50%(隔壁14の延伸方向の長さの25%)の距離離れた位置を基準位置14c(隔壁14の延伸方向の基準位置14c)としたときに、隔壁14の延伸方向の基準位置14cの延伸方向に垂直な断面において、流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域がSEM(Scanning Electron Microscope)で撮影された画像が示されている。
図2の吹き出しに示されるように、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率は、50%以上95%以下の範囲内になっている。
【0020】
ここで、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率とは、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおいて、隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAの平面視での隔壁14の流入セル側触媒20で被覆された領域の割合であり、具体的には、隔壁14の延伸方向の基準位置14cの延伸方向に垂直な断面において、流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域に対して流入セル側触媒20の隔壁被覆部分が幅方向に占める割合を指す。流入セル側触媒20の隔壁被覆部分とは、流入セル側触媒20のうちの隔壁14の流入セル12A側を被覆している部分に相当し、流入セル側触媒20の上端から流出セル12B側に向かって連続している部分を指す。なお、流入セル側触媒20の上端とは、流入セル側触媒20の流出セル12B側とは反対側の端を指す。幅方向とは、隔壁14の延伸方向及び隔壁14の厚さ方向(隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAに垂直な方向)の両方に垂直な方向を指す。
【0021】
流出セル側触媒30は、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの70%の距離離れた位置14eまで延在する流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の隔壁内部領域14NBに存在する空隙に設けられている。流出セル側触媒30は、担体と、担体に担持されたロジウム(Rh)を含有する触媒金属粒子とを含んでいる。
【0022】
一方、排ガス浄化装置において、第1実施形態のように流入セル側触媒が隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上に設けられた構造であって、第1実施形態と異なる構造としては、例えば、
図3に示す構造が想定される。この構造では、第1実施形態と比較すると、装置の製造時に隔壁14の流入セル側触媒領域14Xに供給される流入セル側触媒20の材料(スラリー)の供給量が過剰である結果、流入セル側触媒20のうちの隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SA上の部分の厚さが厚くなり、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率が95%より高くなっている。すなわち、流入セル側触媒20は、隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAの平面視で隔壁14の流入セル側触媒領域14Xを露出する空隙がほとんど無い層として、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xの流入セル12A側の全体を被覆するように設けられている。このため、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xの隔壁表面14SAでは、隔壁14の空隙の開口部のほとんどが、流入セル側触媒20により塞がれている。これにより、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xでは、排ガスが隔壁14を流入セル12A側から流出セル12B側に透過することが大幅に制限される。この結果、圧力損失が顕著に上昇することになる。
【0023】
また、第1実施形態のように流入セル側触媒が隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上に設けられた構造であって、第1実施形態と異なる構造としては、例えば、
図4に示す構造も想定される。この構造では、第1実施形態と比較すると、装置の製造時に隔壁14の流入セル側触媒領域14Xに供給される流入セル側触媒20の材料の供給量が過少である結果、流入セル側触媒20のうちの隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SA上の部分の厚さが薄くなり、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率が50%より低くなっている。すなわち、流入セル側触媒20は、隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAの平面視で隔壁14の流入セル側触媒領域14Xに所々に設けられているに過ぎない。このため、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xの隔壁表面14SAでは、隔壁14の空隙の開口部の多くが、流入セル側触媒20により塞がれず、流入セル12Aに対し開口された状態に維持されている。これにより、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xでは、流入セル側触媒20の被覆率が所定値より低いのに加えて、排ガスが隔壁14を流入セル12A側から流出セル12B側に透過する流量が過剰となり、流入セル12Aでの排ガスの流量が不十分となることで、十分な量の排ガスが流入セル側触媒20に接触しない。この結果、排ガスを流入セル側触媒20により十分に浄化できない。
【0024】
これに対し、第1実施形態に係る排ガス浄化装置1では、
図3及び
図4に示す構造とは異なり、装置の製造時に隔壁14の流入セル側触媒領域14Xに供給される流入セル側触媒20の材料の供給量が適度な量に調整されることで、
図2に示すように、流入セル側触媒20のうちの隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SA上の部分の厚さが適度な厚さとなっており、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率は、50%以上95%以下の範囲内となっている。すなわち、流入セル側触媒20は、隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAの平面視で隔壁14の流入セル側触媒領域14Xを露出する空隙が散在する形状で設けられ、このような空隙が全く無い又はほとんど無い
図3に示すような層として形成されていない。このため、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xの隔壁表面14SAでは、隔壁14の空隙の開口部のうちの所望の割合が、流入セル側触媒20により塞がれず、流入セル12Aに対し開口された状態に維持される。これにより、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xでは、圧力損失を顕著に上昇させない流量で排ガスが隔壁14を流入セル12A側から流出セル12B側に透過できる。よって、圧力損失の顕著な上昇を抑制できる。また、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xでは、流入セル側触媒20の被覆率が所定値以上であるのに加えて、排ガスが隔壁14を流入セル12A側から流出セル12B側に透過する流量が過剰とならず、流入セル12Aでの排ガスの流量が十分に確保されることで、十分な量の排ガスが流入セル側触媒20に接触する。よって、排ガスを流入セル側触媒20により十分に浄化できる。さらに、第1実施形態に係る排ガス浄化装置1では、PMを排ガスから捕集して除去するPM捕集性能に関して、流入セル側触媒20の厚さとして適度な厚さを確保することで流入セル側触媒20にPMの捕集機能が付与される上に、圧力損失の抑制に伴い排ガスの流速が低減されるため、PMの捕集効率が向上する。よって、PM捕集性能を向上できる。
【0025】
従って、実施形態に係る排ガス浄化装置によれば、例えば、第1実施形態に係る排ガス浄化装置のように、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率は、50%以上95%以下の範囲内であることにより、圧力損失の上昇を抑制できる。また、排ガスを流入セル側触媒により十分に浄化できる。さらに、PM捕集性能を向上できる。
【0026】
続いて、実施形態に係る排ガス浄化装置の各構成について、詳細に説明する。
【0027】
1.ハニカム基材
ハニカム基材は、流入側端面から流出側端面まで延びる複数のセルを画成する多孔質の隔壁を有する。そして、上記複数のセルは、上記隔壁を挟んで隣接する流入セル及び流出セルを含み、上記流入セルは、流入側端が開口し、流出側端が封止され、上記流出セルは、流入側端が封止され、流出側端が開口している。ハニカム基材は、いわゆるウォールフロー型のハニカム基材である。
【0028】
ハニカム基材は、枠部と枠部の内側の空間をハニカム状に区切る隔壁とが一体形成された基材である。
【0029】
ハニカム基材の軸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さを用いることができるが、例えば10mm以上500mm以下の範囲内が好ましく、中でも50mm以上300mm以下の範囲内が好ましい。ハニカム基材の容量、すなわち、セルの総体積は、特に限定されず、一般的な容量を用いることができるが、例えば0.1L以上5L以下の範囲内が好ましい。
【0030】
ハニカム基材の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス等の合金等が挙げられる。
【0031】
枠部の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、例えば、円筒形の他、楕円筒形、多角筒形等の筒形が挙げられる。枠部の他の構成は、特に限定されず、一般的な構成を用いることができる。
【0032】
隔壁の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、通常、第1実施形態のように、複数のセルの延伸方向に垂直な断面が所望の形状になるように、延伸方向に延びる互いに離間して平行に配置される複数の壁部と、当該複数の壁部と交わりかつ延伸方向に延びる互いに離間して平行に配置される他の複数の壁部とを含んでいる。隔壁の延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さと略同一となる。隔壁の厚さは、特に限定されず、一般的な厚さを用いることができるが、例えば50μm以上2000μm以下の範囲内が好ましく、中でも100μm以上1000μm以下の範囲内が好ましい。隔壁の厚さがこれらの範囲内であることにより、基材の強度を確保しつつ、十分なPMの捕集性能を得ることができ、圧力損失を十分に抑制できるからである。
【0033】
隔壁は排ガスが透過可能な細孔からなる空隙を含む多孔質構造体である。隔壁の触媒層が設けられていない部分の空隙率は、特に限定されず、一般的な空隙率を用いることができるが、例えば40%以上70%以下の範囲内が好ましく、中でも50%以上70%以下の範囲内が好ましい。空隙率がこれらの範囲の下限以上であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからであり、空隙率がこれらの範囲の上限以下であることにより、十分な機械的強度を確保できるからである。隔壁の空隙の平均細孔径は、特に限定されず、一般的な平均細孔径を用いることができるが、例えば1μm以上60μm以下の範囲内が好ましく、中でも5μm以上30μm以下の範囲内が好ましい。空隙の平均細孔径がこれらの範囲内であることにより、十分なPMの捕集性能を得ることができ、圧力損失を十分に抑制できるからである。なお、「隔壁の空隙の平均細孔径」は、例えば、水銀圧入法により測定されたものを指す。
【0034】
流入セル及び流出セルは、枠部の内側の空間を隔壁が区切ることで形成されたものであり、隔壁を挟んで隣接する。流入セル及び流出セルは、通常、延伸方向に垂直な方向が隔壁で囲まれている。
【0035】
流入セルは、通常、流出側端が封止部により封止されている。流出セルは、通常、流入側端が封止部により封止されている。封止部の延伸方向の長さは、特に限定されず、一般的な長さでよいが、例えば2mm以上20mm以下の範囲内が好ましい。封止部の材料は、特に限定されず、一般的な材料でよい。
【0036】
流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができ、排ガス浄化装置を透過する排ガスの流量及び成分等を考慮して適宜設定することができる。断面形状としては、例えば、正方形等の矩形、六角形等を含む多角形、円形等が挙げられる。流入セル及び流出セルの延伸方向に垂直な断面積は、特に限定されず、一般的な断面積を用いることができるが、例えば1mm2以上7mm2以下の範囲内である。流入セル及び流出セルの延伸方向の長さは、特に限定されないが、通常、ハニカム基材の軸方向の長さから封止部の延伸方向の長さを差し引いた長さと略同一となる。流入セル及び流出セルの配置態様は、第1実施形態に係る配置態様のように、流入セル及び流出セルを交互に配置する市松模様のような態様等が挙げられる。
【0037】
2.流入セル側触媒
流入セル側触媒は、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って所定距離離れた位置まで延在する流入セル側触媒領域における上記流入セル側の隔壁表面上及び上記流入セル側の隔壁内部領域(内部領域に存在する空隙)の少なくとも一方に設けられている。上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って上記流入セル側触媒領域の長さの50%の位置を基準位置(隔壁の延伸方向の基準位置)としたときに、該基準位置において、上記隔壁の上記流入セル側の上記隔壁表面の平面視での上記隔壁の上記流入セル側触媒で被覆された領域の割合(隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率)は、50%以上95%以下の範囲内である。ここで、「流入セル側触媒領域」とは、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に所定距離離れた位置まで延在する領域を指す。流入セル側触媒の被覆率がこの範囲の下限以上であることにより、排ガスを流入セル側触媒により十分に浄化できる。また、流入セル側触媒の被覆率がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失の上昇を抑制できる。
【0038】
隔壁の流入セル側触媒領域としては、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に所定距離離れた位置まで延在する領域であれば特に限定されないが、例えば、第1実施形態のように、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に隔壁の延伸方向の長さの25%以上100%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、中でも隔壁の延伸方向の長さの35%以上80%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましく、特に隔壁の延伸方向の長さの40%以上60%以下の距離離れた位置まで延在する領域が好ましい。流入セル側触媒領域の延伸方向の長さ(流入セル側触媒の延伸方向の長さ)がこれらの距離の範囲の下限以上であることにより、ガスとの接触頻度を確保でき浄化機能を担保できるからである。また、流入セル側触媒領域の延伸方向の長さがこれらの距離の範囲の上限以下であることにより、隔壁の流入セル側の隔壁表面への触媒コートによる圧損上昇を抑制できるからである。
【0039】
隔壁の延伸方向の基準位置としては、上記隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に上記流入セル側触媒領域の延伸方向の長さの50%の距離離れた位置であれば特に限定されないが、例えば、流入セル側触媒領域の延伸方向の長さが隔壁の延伸方向の長さの50%である場合には、隔壁の延伸方向の基準位置は、隔壁の流入側端から延伸方向に沿って流出側に隔壁の延伸方向の長さの25%の距離離れた位置となる。
【0040】
「隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率」とは、上記隔壁の延伸方向の基準位置において、上記隔壁の上記流入セル側の隔壁表面の平面視での上記隔壁の上記流入セル側触媒で被覆された領域の割合であり、具体的には、例えば、隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面において、幅方向の所定領域(例えば、流入セルの隣接するコーナー間の領域等)に対して流入セル側触媒の隔壁被覆部分が幅方向に占める割合を指す。「流入セル側触媒の隔壁被覆部分」とは、流入セル側触媒のうちの隔壁の流入セル側を被覆している部分に相当し、流入セル側触媒の上端から流出セル側に向かって連続している部分を指す。なお、「流入セル側触媒の上端」とは、流入セル側触媒の流出セル側とは反対側の端を指す。「幅方向」とは、隔壁の延伸方向及び隔壁の厚さ方向(隔壁の流入セル側の隔壁表面に垂直な方向)の両方に垂直な方向を指す。
【0041】
隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率としては、50%以上95%以下の範囲内であれば特に限定されないが、55%以上95%以下の範囲内が好ましく、中でも55%以上80%以下の範囲内が好ましく、特に55%以上75%以下の範囲内が好ましい。被覆率がこれらの範囲の下限以上であることにより、排ガスを流入セル側触媒によりさらに効果的に浄化できるからである。また、被覆率がこれらの範囲の上限以下であることにより、圧力損失の上昇をさらに効果的に抑制できるからである。
【0042】
流入セル側触媒としては、上記隔壁の流入セル側触媒領域における上記流入セル側の隔壁表面上及び上記流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に設けられたものであれば特に限定されず、例えば、第1実施形態に係る流入セル側触媒20のように、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上及び流入セル12A側の隔壁内部領域14NAの両方に設けられたものでもよい。
図5(a)及び
図5(b)は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置の変形例におけるセルの延伸方向に平行な断面の要部を概略的に示す断面図である。流入セル側触媒としては、例えば、
図5(a)に示す流入セル側触媒20のように、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上及び流入セル12A側の隔壁内部領域14NAのうちの隔壁表面14SA上のみに設けられたものでもよい。流入セル側触媒としては、例えば、
図5(b)に示す流入セル側触媒20のように、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上及び流入セル12A側の隔壁内部領域14NAのうちの隔壁内部領域14NAのみに設けられたものでもよい。
【0043】
流入セル側触媒の隔壁被覆部分の厚さの平均は、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、中でも1μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。厚さの平均がこれらの範囲の下限以上であることにより、排ガスを流入セル側触媒により効果的に浄化できるように、流入セル側触媒の被覆率を所定値以上に設定し易いからである。厚さの平均がこれらの範囲の上限以下であることにより、圧力損失の上昇を効果的に抑制できるように流入セル側触媒の被覆率を所定値以下に設定し易いからである。ここで、「流入セル側触媒の隔壁被覆部分の厚さの平均」とは、例えば、隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面の幅方向の所定領域(例えば、流入セルの隣接するコーナー間の領域等)における流入セル側触媒の隔壁被覆部分(流入セル側触媒の上端から流出セル側に向かって連続している部分)の厚さの平均を指す。なお、流入セル側触媒の隔壁被覆部分の厚さの平均を算出する際には、隔壁の上記断面の幅方向の上記所定領域(例えば、
図2の断面撮影画像の幅方向の領域)において、流入セル側触媒の隔壁被覆部分が設けられていない箇所での流入セル側触媒の隔壁被覆部分の厚さを0μmとする。
【0044】
流入セル側触媒は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含む。流入セル側触媒は、例えば、触媒金属粒子が担体に担持された触媒付担体を含む焼結体である。
【0045】
触媒金属粒子の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属等が挙げられる。触媒金属粒子の材料は、1種の金属又は2種以上の金属でもよいし、2種以上の金属を含有する合金でもよい。触媒金属粒子の材料としては、Pt及びPd等の少なくとも1種が好ましい。
【0046】
触媒金属粒子の平均粒径は、特に限定されず、一般的な平均粒径を用いることができるが、例えば0.1nm以上20nm以下の範囲内が好ましい。平均粒径がこの範囲の上限以下であることにより、排ガスとの接触面積を大きくできるからである。なお、触媒金属粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される粒径から求められる平均値を指す。
【0047】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず、一般的な含有量を用いることができるが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がPt、Pd、及びRhの少なくとも1種である場合には、ハニカム基材の1L当たり0.05g以上5g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流入セル側触媒に含有される触媒金属粒子の質量を、流入セル側触媒の延伸方向の長さ(流入セル側触媒領域の延伸方向の長さ)と軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0048】
担体の材料は、特に限定されず、一般的な材料を用いることができるが、例えば、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物、例えば、アルミナ-ジルコニア(Al2O3-ZrO2)複合酸化物、セリア-ジルコニア(CeO2-ZrO2)複合酸化物等の固溶体などが挙げられる。担体の材料としては、これらのうちの1種でも2種以上でもよい。担体の材料としては、アルミナ及びセリア-ジルコニア複合酸化物等の少なくとも1種が好ましい。
【0049】
担体の形状は、特に限定されず、一般的な形状を用いることができるが、粉末状が好ましい。より大きい比表面積を確保できるからである。粉末状の担体の平均粒径D50は、特に限定されず一般的な平均粒径でよいが、例えば、1μm以上15μm以下の範囲内が好ましく、特に4μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。平均粒径D50がこれらの範囲の下限以上であることにより、十分な耐熱特性が得られるからである。平均粒径D50がこれらの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の分散性を十分に確保することで浄化性能を効果的に向上できるからである。なお、粉末状の担体の平均粒径D50は、例えば、レーザー回折・散乱法により求められ、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)などを使用することで測定できる。
【0050】
触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比は、特に限定されず、一般的な質量比を用いることができるが、例えば、0.01質量%以上10質量%以下の範囲内が好ましい。質量比がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、質量比がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。
【0051】
触媒金属粒子を担体に担持させる方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、触媒金属塩(例えば、硝酸塩等)又は触媒金属錯体(例えば、テトラアンミン錯体等)を含有する水溶液に担体を浸した後、乾燥し、焼成する方法等が挙げられる。
【0052】
流入セル側触媒は、触媒金属粒子及び担体の他に、例えば、OSC(OSC:Oxygen Storage Capacity)材等の助触媒などを含んでもよい。
【0053】
助触媒の材料は、特に限定されず一般的な材料でよいが、例えば、担体と同様の材料が挙げられる。助触媒の中でも特にOSC材の材料は、例えば、セリア、セリアを含む複合酸化物などが挙げられる。セリアを含む複合酸化物としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物等が挙げられる。助触媒の形状は、特に限定されず一般的な形状でよいが、例えば、担体と同様の形状が挙げられる。粉末状の助触媒の平均粒径D50は、特に限定されず一般的な平均粒径でよいが、例えば、粉末状の担体と同様の平均粒径が挙げられる。触媒金属粒子、担体、及び助触媒の合計の質量に対する助触媒の質量比は、特に限定されず、一般的な質量比を用いることができるが、例えば、30質量%以上80質量%以下の範囲内が好ましい。
【0054】
流入セル側触媒の密度は、特に限定されないが、例えば、5g/L以上100g/L以下の範囲内、中でも10g/L以上65g/L以下の範囲内、特に10g/L以上30g/L以下の範囲内が好ましい。流入セル側触媒の密度がこれらの範囲の下限以上であることにより、排ガスを流入セル側触媒により効果的に浄化できるように、流入セル側触媒の被覆率を所定値以上に設定し易いからである。また、流入セル側触媒の密度がこれらの範囲の上限以下であることにより、圧力損失の上昇を効果的に抑制できるように流入セル側触媒の被覆率を所定値以下に設定し易いからである。なお、「流入セル側触媒の密度」とは、流入セル側触媒の質量を、流入セル側触媒の延伸方向の長さ(流入セル側触媒領域の延伸方向の長さ)と軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0055】
流入セル側触媒の形成方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、触媒金属粒子及び触媒金属粒子が担持された担体を溶媒に混合することで調製されるスラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上及び流入セル側の隔壁内部領域(内部領域に存在する空隙)の少なくとも一方に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0056】
スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成することで流入セル側触媒を形成する方法において、スラリーは、触媒金属粒子及び担体並びに溶媒に加えて、助触媒、バインダー、添加剤等の任意の成分を適宜含んでもよい。スラリーに含まれる粉末状の担体や助触媒等の固形分の平均粒径などは、例えば、第1実施形態や
図5(a)に示す変形例のように、流入セル側触媒を主に隔壁の流入セル側の隔壁表面上に形成する場合には、スラリーが隔壁の内部領域に浸透しないように適宜調整してもよい。また、例えば、第1実施形態や
図5(b)に示す変形例のように、流入セル側触媒を主に隔壁の流入セル側の隔壁内部領域に形成する場合には、スラリーが隔壁の内部領域に浸透するように適宜調整してもよい。
【0057】
スラリーの調製方法としては、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、触媒金属塩(例えば、硝酸Pt)又は触媒金属錯体を含有する溶液(例えば、硝酸Ptを含有する水溶液)に粉末状の担体(例えば、アルミナ)を浸した後、それらを乾燥、焼成し、貴金属(例えば、Pt)を担持した貴金属担持粉末(例えば、Pt担持粉末)を調製する。次に、貴金属担持粉末に、OSC材(例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物)、助触媒(例えば、硫酸バリウム)、バインダー、並びにイオン交換水を加え、それらを十分に撹拌し、固形分の平均粒径D50が所望値となるように湿式粉砕する。これにより、スラリーを調製する。
【0058】
スラリーの固形分の平均粒径D50は、特に限定されず一般的な平均粒径でよいが、例えば、第1実施形態や
図5(a)に示す変形例のように、流入セル側触媒を主に隔壁の流入セル側の隔壁表面上に形成する場合には、隔壁の空隙の平均細孔径(MPS)(例えば、10μm~20μmの範囲内)の1/10以上2/3以下の範囲内が好ましく、中でも隔壁の空隙の平均細孔径の1/4以上2/3以下の範囲内が好ましい。具体的には、例えば、1μm以上15μm以下の範囲内が好ましく、中でも4μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。スラリーの固形分の平均粒径D50がこれらの範囲の下限以上であることにより、十分な耐熱特性が得られる上に、スラリーの固形分が隔壁の内部領域に入り込むことを抑制し、スラリーの固形分を主に隔壁の流入セル側の隔壁表面上に配置できるからである。スラリーの固形分の平均粒径D50がこれらの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の分散性を十分に確保できるからである。スラリーの固形分の平均粒径D50は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)などを使用することで測定できる。
【0059】
スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上及び流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に供給する方法としては、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流入側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、例えば、流入セル側触媒を主に隔壁の流入セル側の隔壁表面上に形成する場合には、スラリーが隔壁の内部領域に供給されないように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよいし、流出セルを流出側から加圧して流出セル及び流入セルの間に圧力差を生じさせてもよい。また、例えば、流入セル側触媒を主に隔壁の流入セル側の隔壁内部領域に形成する場合には、スラリーが隔壁の流入セル側の隔壁内部領域に供給されるように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよい。さらに、スラリーを隔壁の流入セル側触媒領域における流入セル側の隔壁表面上及び流入セル側の隔壁内部領域の少なくとも一方に供給する方法では、スラリーを供給する際に、隔壁の表面上及び内部領域における触媒の不要部分にスラリーが供給されないように、ブロアーを使用しスラリーを吹き払う方法を使用してもよい。
【0060】
スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成する方法において、乾燥条件は、特に限定されないが、ハニカム基材や担体等の形状や寸法等により左右されるが、例えば、80℃以上300℃以下の範囲内の温度で1時間以上10時間以下の範囲内の時間乾燥する条件が好ましい。焼成条件は、特に限定されないが、例えば、400℃以上1000℃以下の範囲内の温度で1時間以上4時間以下の範囲内の時間焼成する条件が好ましい。
【0061】
スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成することで流入セル側触媒を形成する方法において、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率は、例えば、スラリーの固形分の平均粒径D50、スラリーの固形分濃度、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等を調整する方法などにより調整できる。また、流入セル側触媒の隔壁被覆部分の厚さ、流入セル側触媒の気孔率等の性状などについても、同様の方法により調整できる。
【0062】
3.排ガス浄化装置
排ガス浄化装置は、ハニカム基材と流入セル側触媒とを備える。排ガス浄化装置は、通常、流入セルの流出側端を封止する封止部及び流出セルの流入側端を封止する封止部をさらに備える。
【0063】
(1)流出セル側触媒
排ガス浄化装置は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置のように、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って所定距離離れた位置まで延在する流出セル側触媒領域に設けられた流出セル側触媒をさらに備えるものでもよい。
【0064】
隔壁の流出セル側触媒領域としては、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入側に所定距離離れた位置まで延在する領域であれば特に限定されないが、例えば、隔壁の流出側端から延伸方向に沿って流入セル側触媒領域と重複する位置まで延在する領域が好ましい。排ガスが隔壁の触媒の設けられていない領域を透過し、排ガス浄化装置から未浄化のまま排出されることを抑制できるからである。
【0065】
流出セル側触媒は、隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の隔壁内部領域(内部領域に存在する空隙)及び流出セル側の隔壁表面上の少なくとも一方に設けられたものである。
【0066】
流出セル側触媒は、通常、触媒金属粒子と、触媒金属粒子を担持する担体とを含み、例えば、触媒金属粒子が担体に担持された触媒付担体を含む焼結体である。
【0067】
触媒金属粒子の材料については、ロジウム(Rh)等が好ましい点を除いて、流入セル側触媒に含まれる触媒金属粒子と同様である。触媒金属粒子の平均粒径については、流入セル側触媒に含まれる触媒金属粒子と同様である。
【0068】
触媒金属粒子の含有量は、特に限定されず一般的な含有量でよいが、触媒金属粒子の材料によって異なり、例えば、材料がPt、Pd、及びRhの少なくとも1種である場合には、ハニカム基材の1L当たり0.01g以上2g以下の範囲内が好ましい。含有量がこの範囲の下限以上であることにより、十分な触媒作用が得られるからであり、含有量がこの範囲の上限以下であることにより、触媒金属粒子の粒成長を抑制できると同時にコスト面で有利になるからである。ここで、触媒金属粒子の基材の体積1L当たりの含有量とは、流出セル側触媒に含有される触媒金属粒子の質量を、流出セル側触媒の延伸方向の長さ(流出セル側触媒領域の延伸方向の長さ)と軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0069】
担体の材料及び形状については、流入セル側触媒に含まれる担体と同様である。粉末状の担体の平均粒径D50は、特に限定されず一般的な平均粒径でよい。触媒金属粒子及び担体の合計の質量に対する触媒金属粒子の質量比については、流入セル側触媒の当該質量比と同様である。触媒金属粒子を担体に担持させる方法については、流入セル側触媒での当該方法と同様である。流出セル側触媒は、流入セル側触媒と同様に助触媒などを含んでもよい。助触媒については、流入セル側触媒に含まれる助触媒と同様である。
【0070】
流出セル側触媒の密度は、特に限定されないが、30g/L以上250g/L以下の範囲内が好ましい。流出セル側触媒の密度がこの範囲の下限以上であることにより、浄化性能を効果的に向上できるからである。流出セル側触媒の密度がこの範囲の上限以下であることにより、圧力損失を効果的に抑制できるからである。なお、「流出セル側触媒の密度」とは、流出セル側触媒の質量を、流出セル側触媒の延伸方向の長さ(流出セル側触媒領域の延伸方向の長さ)と軸方向の長さが同一のハニカム基材の軸方向の一部の体積で割った値を指す。
【0071】
流出セル側触媒の形成方法は、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、触媒金属粒子及び触媒金属粒子が担持された担体を溶媒に混合することで調製されるスラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の隔壁内部領域及び流出セル側の隔壁表面上の少なくとも一方に供給した後に、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0072】
スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成することで流出セル側触媒を形成する方法において、スラリーは、流入セル側触媒に含まれる触媒金属粒子及び担体の代わりに流出セル側触媒に含まれる触媒金属粒子及び担体を含む点を除いて、流入セル側触媒の形成に用いるスラリーと同様である。スラリーの調製方法としては、流入セル側触媒の形成に用いるスラリーの調製方法と同様である。スラリーの固形分の平均粒径D50は、特に限定されず一般的な平均粒径でよい。
【0073】
スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の隔壁内部領域及び流出セル側の隔壁表面上の少なくとも一方に供給する方法としては、特に限定されず一般的な方法でよいが、例えば、スラリー中にハニカム基材を流出側から浸漬し、所定の時間が経過した後、スラリーから取り出す方法等が挙げられる。この方法では、スラリーが隔壁の流出セル側の隔壁内部領域に供給されるように、スラリーの固形分濃度、粘度等の性状を適宜調整してもよいし、また、スラリーが隔壁の流出セル側の隔壁内部領域に供給されないように、スラリーの固形分濃度、スラリーの粘度等の性状を適宜調整してもよいし、流入セルを流入側から加圧して流入セル及び流出セルの間に圧力差を生じさせてもよい。スラリーを隔壁の流出セル側触媒領域における流出セル側の隔壁内部領域及び流出セル側の隔壁表面上の少なくとも一方に供給する方法としては、スラリーを供給する際に、隔壁の内部領域及び表面上における触媒の不要部分にスラリーが供給されないように、ブロアーを使用しスラリーを吹き払う方法を用いてもよい。
【0074】
スラリーを隔壁に供給した後に、乾燥し、焼成する方法での乾燥条件及び焼成条件は、流入セル側触媒の形成に用いる乾燥条件及び焼成条件と同様である。
【0075】
なお、流出セル側触媒の厚さ、気孔率等の性状などは、例えば、スラリーの固形分の平均粒径D50、スラリーの固形分濃度、スラリーの性状、スラリーの供給量、乾燥条件、焼成条件等を調整する方法などにより調整できる。
【0076】
(2)その他
排ガス浄化装置が流出セル側触媒をさらに備えるものである場合には、排ガス浄化装置は、第1実施形態のように、流入セル側触媒に含まれる触媒金属粒子が白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の少なくとも1種を含有し、かつ流出セル側触媒に含まれる触媒金属粒子がロジウム(Rh)を含有するものが好ましい。排ガスに含まれる炭化水素(HC)が流入セル側触媒に含まれる触媒金属粒子により効果的に浄化された後に、排ガスが流出セル側触媒に接触することになるので、流出セル側触媒に含まれる触媒金属粒子に含有されるロジウム(Rh)が炭化水素(HC)により被毒されるのを抑制できるからである。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例を挙げて、実施形態に係る排ガス浄化装置をさらに具体的に説明する。
【0078】
[実施例1]
第1実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を作製した。具体的には、まず、ハニカム基材10と封止部16とを備え、触媒がコートされていないGPFを準備した。GPFのハニカム基材10及び封止部16の構成の詳細は、下記の通りである。
【0079】
(GPFのハニカム基材及び封止部の構成)
ハニカム基材の材料:コージェライト製
ハニカム基材のサイズ:外径×軸方向の長さ=129mm×100mm
隔壁の厚さ:200μm
隔壁の空隙の平均細孔径:15μm
セル密度:1平方インチ当たり300個
【0080】
次に、粉末状の担体に触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流入セル側触媒用スラリーを調製した。具体的には、硝酸Pt(触媒金属塩)を含有する水溶液に粉末状のアルミナ(担体)を浸した後、それらを乾燥、焼成し、粉末状のアルミナに対してPtを担持させたPt担持粉末を調製した。次に、Pt担持粉末に、セリア-ジルコニア複合酸化物(OSC材)、硫酸バリウム(助触媒)、及びバインダー、並びにイオン交換水を加え、それらを十分に撹拌し、湿式粉砕した。これにより、流入セル側触媒用スラリーを調製した。
【0081】
次に、流入セル側触媒用スラリーを、流入側端12Aaから流入セル12Aに流し込むことで隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に供給した。この際には、流入セル側触媒20の密度が所望値になるようにスラリーの供給量を調整した。隔壁14の流入セル側触媒領域14Xは、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に隔壁14の延伸方向の長さの50%の距離離れた位置14bまで延在する領域である。スラリーの供給の際には、隔壁の内部領域や表面上の不要部分にスラリーが不必要に供給されないように、ブロアーを使用しスラリーを吹き払った。その後に、流入セル側触媒用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用し、120℃で2時間加熱することで乾燥して水分を飛ばした後、電気炉を使用し、500℃で2時間焼成した。これにより、流入セル側触媒20を形成した。
【0082】
次に、粉末状の担体に触媒金属粒子を担持させた触媒付担体と溶媒とを混合することで、流出セル側触媒用スラリーを調製した。具体的には、硝酸Rh(触媒金属塩)を含有する水溶液に粉末状のセリア-ジルコニア複合酸化物(担体)を浸した後、それらを乾燥、焼成し、粉末状のセリア-ジルコニア複合酸化物に対してRhを担持させたRh担持粉末を調製した。次に、Rh担持粉末に、アルミナ(助触媒)、バインダー、及びイオン交換水を加え、それらを十分に撹拌し、湿式粉砕した。これにより、流出セル側触媒用スラリーを調製した。
【0083】
次に、流出セル側触媒用スラリーを、流出側端12Bbから流出セル12Bに流し込むことで隔壁14の流出セル側触媒領域14Yにおける流出セル12B側の隔壁内部領域14NBに供給した。隔壁14の流出セル側触媒領域14Yは、隔壁14の流出側端14dから延伸方向に沿って流入側に隔壁14の延伸方向の長さの70%の距離離れた位置14eまで延在する領域である。スラリーの供給の際には、隔壁の表面上や内部領域の不要部分にスラリーが不必要に供給されないように、ブロアーを使用しスラリーを吹き払った。その後に、流出セル側触媒用スラリーを供給したハニカム基材10を、乾燥機を使用し、120℃で2時間加熱することで乾燥して水分を飛ばした後、電気炉を使用し、500℃で2時間焼成した。これにより、流出セル側触媒30を形成した。
【0084】
以上により、
図2に示すように、ハニカム基材10と、封止部16と、流入セル側触媒20と、流出セル側触媒30とを備える排ガス浄化装置1を作製した。流入セル側触媒20の密度は22g/Lであった。
【0085】
[実施例2]
流入セル側触媒用スラリーを、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に供給する際に、流入セル側触媒用スラリーの供給量を調整することにより、流入セル側触媒20の密度が43g/Lとなるようした点を除いて、実施例1と同様の作製方法により、排ガス浄化装置1を作製した。
【0086】
[比較例1]
流入セル側触媒用スラリーを、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に供給する際に、流入セル側触媒用スラリーの供給量を調整することにより、流入セル側触媒20の密度が83g/Lとなるようした点を除いて、実施例1と同様の作製方法により、排ガス浄化装置1を作製した。
【0087】
[比較例2]
流入セル側触媒用スラリーを、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に供給する際に、流入セル側触媒用スラリーの供給量を調整することにより、流入セル側触媒20の密度が103g/Lとなるようした点を除いて、実施例1と同様の作製方法により、排ガス浄化装置1を作製した。
【0088】
[比較例3]
流入セル側触媒用スラリーを、隔壁14の流入セル側触媒領域14Xにおける流入セル12A側の隔壁表面14SA上に供給する際に、流入セル側触媒用スラリーの供給量を調整することにより、流入セル側触媒20の密度が15g/Lとなるようした点を除いて、実施例1と同様の作製方法により、排ガス浄化装置1を作製した。
【0089】
[評価]
実施例1及び2並びに比較例1~3で作製した排ガス浄化装置について、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率に対する初期の圧力損失及び耐久試験後の排ガス浄化性能を評価した。
【0090】
(隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率)
実施例1及び2並びに比較例1~3で作製した排ガス浄化装置1において、隔壁14の流入側端14aから延伸方向に沿って流出側に流入セル側触媒領域14Xの延伸方向の長さの50%(隔壁14の延伸方向の長さの25%)の距離離れた位置を基準位置14c(隔壁14の延伸方向の基準位置14c)としたときに、隔壁14の延伸方向の基準位置14cの延伸方向に垂直な断面において、流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域をSEM(Scanning Electron Microscope)により撮影した。
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ実施例1及び2の排ガス浄化装置における隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面のSEMによる撮影画像である。
図7(a)~
図7(c)は、それぞれ比較例1~3の排ガス浄化装置における隔壁の延伸方向の基準位置の延伸方向に垂直な断面のSEMによる撮影画像である。これらの各図には、隔壁の流入セル側の隔壁表面上及び隔壁内部領域を示すとともに、隔壁の基材部、隔壁の空隙(空隙のうちの触媒の未充填部)、及び流入セル側触媒の箇所を示す。
【0091】
各例の排ガス浄化装置1で、SEMによる撮影画像を使用することにより、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおいて、隔壁14の流入セル12A側の隔壁表面14SAの平面視での隔壁14の流入セル側触媒20で被覆された領域の割合(以下、「隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率」と略すことがある。)を求めた。
【0092】
以下、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率を求めた手順について説明する。
図8(a)~
図8(c)及び
図9(a)~
図9(c)は、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率を求めた手順を概略的に説明する工程図である。当該工程図では、実施例2の排ガス浄化装置を例として手順が説明されている。
【0093】
各例の排ガス浄化装置1で、隔壁14の延伸方向の基準位置14cにおける流入セル側触媒20の被覆率を求めた際には、まず、
図8(a)に示すように、上述したように、隔壁14の延伸方向の基準位置14cの延伸方向に垂直な断面において、流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域をSEMにより撮影し、撮影画像を取得した(STEP1)。具体的には、隔壁14の断面における流入セル12Aの隣接するコーナー間のうちのコーナー近傍を除いた領域を150倍の倍率で撮影し、撮影画像を1280×960ピクセルの8ビット形式で取得した。
【0094】
次に、
図8(b)に示すように、画像処理ソフトウェアImageJを使用することにより、ImageJのThresholdメニューを用いて、画像を2値化する時のしきい値を所定値に設定した上で、STEP1で取得された撮影画像を暫定的に2値化することにより、撮影画像の領域を暫定的に流入セル側触媒20の領域とその他の領域(隔壁14の基材部及び空隙部並びにセルの領域)とに分類し、暫定的に分類された流入セル側触媒20の領域及びその他の領域を白の階調及び黒の階調にそれぞれ変換した(STEP2)。
【0095】
次に、
図8(c)に示すように、ImageJのGaussian Blurメニューを用いることで、Sigma(Radius)値を2.00に設定し、STEP2で取得された画像をスムージングした(STEP3)。これにより、後述するように、画像において流入セル側触媒20の上端から流出セル12B側に向かって連続している部分を選択する際に、ノイズ等が原因となって当該部分が誤って選択されることを抑制した。
【0096】
次に、
図9(a)に示すように、ImageJのThresholdメニューを用いて、画像を2値化する時のしきい値を所定値に設定した上で、STEP3で取得された画像を改めて2値化することにより、画像の領域を改めて流入セル側触媒20の領域とその他の領域とに分類し、改めて分類された流入セル側触媒20の領域とその他の領域を白の階調及び黒の階調にそれぞれ変換した(STEP4)。
【0097】
次に、
図9(b)に示すように、ImageJのDeleteメニューを用いることにより、STEP4で取得された画像において、「範囲の選択及び削除/切り取り」の操作を行うことで、流入セル側触媒20のうちの隔壁14の流入セル12A側を被覆している部分に相当する、流入セル側触媒20の上端から流出セル12B側に向かって連続している部分(以下、「流入セル側触媒20の隔壁被覆部分」と略すことがある。)を選択して白の階調に維持し、流入セル側触媒20のそれ以外の部分を隔壁の基材部等の領域と同じ黒の階調に変換した(STEP5)。
【0098】
次に、図示しないが、ImageJのSave as Text Imageメニューを用いることにより、STEP5で取得された画像のデータをテキストファイル形式で保存した(STEP6)。この際には、STEP1で取得された撮影画像が8ビット形式の1280×960ピクセルであることに応じて、テキストファイル形式の画像のデータは、白及び黒の階調を表現する数値をそれぞれ「255」及び「0」として、STEP5で取得された画像の各ピクセルの白及び黒の階調を数値で表現した1280列×960行の数値のデータとした。
【0099】
次に、
図9(c)に示すように、マイクロソフト社製エクセル(登録商標)を使用し、STEP6で取得されたテキストファイル形式の画像のデータをエクセルファイル形式で開くことで、STEP5で取得された画像の1280×960ピクセルを1280列×960行のセルで表示した。そして、1280列×960行のセルのうち流入セル側触媒20の隔壁被覆部分(階調:白)に対応するセルの数値が「255」、その他の部分(階調:黒)に対応するセルの数値が「0」となっていることを利用して、1280列の各列における流入セル側触媒の隔壁被覆部分(階調:白)に対応するセル(数値:「255」)の数をカウントした(STEP7)。この際には、エクセルのVBAを用いて一括で計算した。
【0100】
次に、図示しないが、STEP7で取得された結果から、1280列のうち流入セル側触媒の隔壁被覆部分(階調:白)に対応するセル(数値:「255」)の数が0個であった列数を求めた上で、この列数を全列数の1280で除算することにより、隔壁14の断面における流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域に対して流入セル側触媒で被覆されていない領域が幅方向に占める割合[%]を求めた(STEP8)。
【0101】
次に、図示しないが、隔壁14の断面における流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域の幅方向の全体の割合(100%)から、STEP8で取得された流入セル側触媒で被覆されていない領域が幅方向に占める割合[%]を差し引くことにより、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率として、隔壁14の断面における流入セル12Aの隣接するコーナー間の領域に対して流入セル側触媒の隔壁被覆部分が幅方向に占める割合を求めた(STEP9)。
【0102】
以上の手順で求めた各例での隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率を下記表1に示す。
【0103】
(初期の圧力損失)
実施例1及び2並びに比較例1~3で作製した排ガス浄化装置について、初期の圧力損失を測定した。具体的には、初期の圧力損失として、各例の排ガス浄化装置に空気を7m3/分、20℃で流通させた時の圧力損失[kPa]を測定した。下記表1に、各例での初期の圧力損失を示す。
【0104】
(耐久試験後の排ガス浄化性能)
実施例1及び2並びに比較例1~3で作製した排ガス浄化装置について、耐久試験後の排ガス浄化性能の指標として、耐久試験後のNOx80%浄化温度を測定した。具体的には、まず、各例の排ガス浄化装置をV型8気筒エンジンの排気系に装着し、触媒床温900℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより、耐久試験を実施した。続いて、耐久試験後の各例の排ガス浄化装置をL型4気筒エンジンの排気系に装着し、A/F(空燃比)が14.4の排ガスを供給し、Ga=28g/sの条件において、入りガス温度を200℃から600℃(20℃/分)まで昇温させた。そして、各入りガス温度で入りガス及び出ガスのNOx濃度を測定してNOx浄化率を算出し、NOxが80%浄化された時点の入りガス温度をNOx80%浄化温度[℃]として測定した。下記表1に、各例でのNOx80%浄化温度を示す。
【0105】
【0106】
図10は、実施例1及び2並びに比較例1~3の排ガス浄化装置で求められた隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率に対する初期の圧力損失及びNOx80%浄化温度の関係を示すグラフである。表1及び
図10に示すように、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率が高くなるに従い、初期の圧力損失が上昇する傾向が見られるが、流入セル側触媒の被覆率が95%を超えると初期の圧力損失は急激に上昇している。一方、流入セル側触媒の被覆率が高くなるに従い、NOx80%浄化温度が低下する傾向が見られるが、流入セル側触媒の被覆率が50%以上になるとNOx80%浄化温度の低下率は大幅に小さくなっている。これらの結果から、排ガス浄化装置では、隔壁の延伸方向の基準位置における流入セル側触媒の被覆率が50%以上95%以下である場合には、圧力損失の上昇を抑制でき、排ガスを流入セル側触媒により十分に浄化できると考えられる。
【0107】
以上、本発明の排ガス浄化装置の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。