(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070978
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】波長変換素子の製造方法、波長変換素子、光源装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240517BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240517BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G02B5/20
G03B21/00 D
G03B21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181647
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 伸夫
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
【Fターム(参考)】
2H148AA09
2H148AA19
2H148AA25
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA62
2K203GA35
2K203GA40
2K203HA27
2K203HB25
2K203HB29
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】信頼性に優れる波長変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の波長変換素子の製造方法は、第1端面を有し、第1波長帯の第1光を第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、第1端面から射出される第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、波長変換部材を用意する第1工程と、射出部材となる液状の樹脂または軟化状の樹脂を第1端面に直接当接させる第2工程と、第1端面に直接当接させた状態の樹脂を硬化させる第3工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換部材を用意する第1工程と、
前記射出部材となる液状の樹脂または軟化状の樹脂を前記第1端面に直接当接させる第2工程と、
前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を硬化させる第3工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、前記液状の樹脂を前記第1端面に滴下して前記第1端面に直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を加熱して硬化させる、請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂は、光硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、前記液状の樹脂を前記第1端面に滴下して前記第1端面に直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂に光を照射して前記樹脂を硬化させる、請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、型の凹部に充填した前記液状の樹脂または前記軟化状の樹脂に前記第1端面を直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を加熱して硬化させ、
硬化させた前記樹脂を前記型から取り外す第4工程をさらに備える、請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程において、前記第1端面に対する前記樹脂の接触角を90度よりも大きくした状態で前記樹脂を硬化させる、請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂を前記第1端面に当接させる前に、前記樹脂と前記第1端面との親和性を調整する工程をさらに備える、請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項7】
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換部材を用意する第1工程と、
前記射出部材となる軟化状のガラスを前記第1端面に直接当接させる第2工程と、
前記第1端面に直接当接させた前記軟化状のガラスを冷却して硬化させる第3工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、型の凹部に充填した前記軟化状のガラスに前記第1端面を直接当接させ、
前記第3工程において、前記型を冷却して前記ガラスを硬化させ、
硬化させた状態の前記ガラスを前記型から取り外す第4工程をさらに備える、請求項7に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、固体状のガラスに前記第1端面を直接当接させた後、前記ガラスを加熱して軟化させ、前記軟化状のガラスとする、請求項7に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記第3工程において、前記第1端面に対する前記ガラスの接触角を90度よりも大きくした状態で前記ガラスを硬化させる、請求項7に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記ガラスを前記第1端面に当接させる前に、前記ガラスと前記第1端面との親和性を調整する工程をさらに備える、請求項7に記載の波長変換素子の製造方法。
【請求項12】
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、
入射面と射出面とを有し、前記第1端面から射出されて前記入射面から入射する前記第2光を前記射出面から外部空間に射出させる射出部材と、を備え、
前記第1端面と前記入射面とは、互いに直接接触している、波長変換素子。
【請求項13】
前記第1端面の端部に接する前記射出面の傾斜角が90度よりも大きく、
前記射出面は、球面の一部で構成されている、請求項12に記載の波長変換素子。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の波長変換素子と、
前記波長変換部材に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子の製造方法、波長変換素子、光源装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から発せられる蛍光を利用した光源装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1に、励起光を射出する発光素子と、励起光を蛍光に変換する蛍光体と、蛍光体の端面に接合されたレンズと、を備える光源装置が開示されている。特許文献1には、蛍光体の端面にレンズが設けられたことにより、蛍光体の端面で全反射する蛍光を減らし、射出される蛍光を増やすことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置において、蛍光体とレンズとは、光学接着剤によって接合されていると考えられる。ところが、一般的に、蛍光体とレンズと光学接着剤とは、線膨張係数がそれぞれ異なる。そのため、蛍光体から発生する熱によって波長変換素子の温度が上昇すると、蛍光体と光学接着剤との界面、およびレンズと光学接着剤との界面に熱応力が生じる。また、波長変換素子に意図しない外力が加わり、上記の界面に機械的な応力が加わる場合もある。その結果、上記の界面での剥離が生じるおそれがあった。また、特許文献1に、蛍光体の端部を曲面状に加工してレンズとして機能させることも記載されている。ところが、蛍光体の端部を研磨等の手法で所望の形状に加工することは難しく、製造プロセスに負荷が掛かる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の波長変換素子の製造方法は、第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、前記波長変換部材を用意する第1工程と、前記射出部材となる液状の樹脂または軟化状の樹脂を前記第1端面に直接当接させる第2工程と、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を硬化させる第3工程と、を備える。
【0007】
本発明の他の一つの態様の波長変換素子の製造方法は、第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、前記波長変換部材を用意する第1工程と、前記射出部材となる軟化状のガラスを前記第1端面に直接当接させる第2工程と、前記第1端面に直接当接させた前記軟化状のガラスを冷却して硬化させる第3工程と、を備える。
【0008】
本発明の一つの態様の波長変換素子は、第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、入射面と射出面とを有し、前記第1端面から射出されて前記入射面から入射する前記第2光を前記射出面から外部空間に射出させる射出部材と、を備え、前記第1端面と前記入射面とは、互いに直接接触している。
【0009】
本発明の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記波長変換部材に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、を備える。
【0010】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置からの前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の第1照明装置の概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の波長変換素子の斜視図である。
【
図5】射出部材の高さと射出効率との関係を示すグラフである。
【
図6A】第1実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【
図7】第2実施形態の波長変換素子の斜視図である。
【
図9A】第3実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【
図10A】第4実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【
図11A】第5実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【
図12A】第6実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【
図13A】第7実施形態の波長変換素子の製造方法の第1工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調装置として液晶パネルを用いたプロジェクターの一例である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0013】
図1は、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーン(被投射面)SCR上にカラー画像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を備える。
【0014】
プロジェクター1は、第1照明装置20と、第2照明装置21と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、光合成素子5と、投射光学装置6と、を備える。
【0015】
第1照明装置20は、黄色の蛍光Yを色分離光学系3に向けて射出する。第2照明装置21は、青色光LBを光変調装置4Bに向けて射出する。第1照明装置20および第2照明装置21の詳細な構成については後述する。
【0016】
以下、図面においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。Z軸は、プロジェクター1の上下方向に沿う軸である。X軸は、第1照明装置20の光軸AX1および第2照明装置21の光軸AX2と平行な軸である。Y軸は、X軸およびZ軸に直交する軸である。第1照明装置20の光軸AX1は、第1照明装置20から射出される蛍光Yの中心軸である。第2照明装置21の光軸AX2は、第2照明装置21から射出される青色光LBの中心軸である。
【0017】
色分離光学系3は、第1照明装置20から射出される黄色の蛍光Yを赤色光LRと緑色光LGとに分離する。色分離光学系3は、ダイクロイックミラー7と、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、を備える。
【0018】
ダイクロイックミラー7は、蛍光Yを赤色光LRと緑色光LGとに分離する。具体的には、ダイクロイックミラー7は、赤色光LRを透過し、緑色光LGを反射する。第2反射ミラー8bは、緑色光LGの光路中に配置されている。第2反射ミラー8bは、ダイクロイックミラー7で反射した緑色光LGを光変調装置4Gに向けて反射する。第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されている。第1反射ミラー8aは、ダイクロイックミラー7を透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。
【0019】
第2照明装置21から射出される青色光LBは、反射ミラー9によって光変調装置4Bに向けて反射される。
【0020】
以下、第2照明装置21の構成について説明する。
第2照明装置21は、光源部81と、集光レンズ82と、拡散板83と、ロッドレンズ84と、リレーレンズ85と、を備える。光源部81は、少なくとも一つの半導体レーザーで構成されている。光源部81は、レーザー光からなる青色光LBを射出する。なお、光源部81は、半導体レーザーに限らず、青色光を発光するLEDで構成されていてもよい。
【0021】
集光レンズ82は、凸レンズから構成されている。集光レンズ82は、光源部81から射出される青色光LBを略集光した状態で拡散板83に入射させる。拡散板83は、集光レンズ82から射出される青色光LBを所定の拡散度で拡散させ、第1照明装置20から射出される蛍光Yと同様の略均一な配光分布を有する青色光LBを生成する。拡散板83としては、例えば、光学ガラスからなる磨りガラスが用いられる。
【0022】
拡散板83で拡散された青色光LBは、ロッドレンズ84に入射する。ロッドレンズ84は、第2照明装置21の光軸AX2方向に沿って延びる角柱状の形状を有する。ロッドレンズ84は、一端に設けられた光入射端面84aと、他端に設けられた光射出端面84bと、を有する。拡散板83は、ロッドレンズ84の光入射端面84aに光学接着剤(図示略)を介して固定されている。拡散板83の屈折率とロッドレンズ84の屈折率とは、できるだけ一致させることが望ましい。
【0023】
青色光LBは、ロッドレンズ84の内部を全反射しつつ伝播することで照度分布の均一性が高められた状態で光射出端面84bから射出される。ロッドレンズ84から射出された青色光LBは、リレーレンズ85に入射する。リレーレンズ85は、ロッドレンズ84によって照度分布の均一性が高められた青色光LBを反射ミラー9に入射させる。
【0024】
ロッドレンズ84の光射出端面84bの形状は、光変調装置4Bの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、ロッドレンズ84から射出された青色光LBは、光変調装置4Bの画像形成領域に効率良く入射する。
【0025】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0026】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれには、例えば透過型の液晶パネルが用いられる。また、液晶パネルの入射側および射出側には、偏光板(図示略)がそれぞれ配置されている。偏光板は、特定の方向の直線偏光のみを通過させる。
【0027】
光変調装置4Rの入射側には、フィールドレンズ10Rが配置されている。光変調装置4Gの入射側には、フィールドレンズ10Gが配置されている。光変調装置4Bの入射側には、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10Rは、光変調装置4Rに入射する赤色光LRの主光線を平行化する。フィールドレンズ10Gは、光変調装置4Gに入射する緑色光LGの主光線を平行化する。フィールドレンズ10Bは、光変調装置4Bに入射する青色光LBの主光線を平行化する。
【0028】
光合成素子5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された画像光が入射することにより、赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。光合成素子5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0029】
投射光学装置6は、複数の投射レンズから構成されている。投射光学装置6は、光合成素子5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上に画像が表示される。
【0030】
以下、第1照明装置20の構成について説明する。
図2は、第1照明装置20の概略構成図である。
図3は、波長変換素子71の斜視図である。
図4は、波長変換素子71の側面図である。
【0031】
図2に示すように、第1照明装置20は、光源装置100と、平行化光学系63と、インテグレーター光学系70と、偏光変換素子102と、重畳光学系103と、を備える。
【0032】
図2に示すように、光源装置100は、波長変換素子71と、光源部51と、支持部材54と、を備える。波長変換素子71は、波長変換部材50と、射出部材52と、ミラー53と、を備える。光源部51は、基板55と、発光素子56と、を備える。
【0033】
波長変換部材50は、X軸方向に延びる四角柱状の形状を有し、6つの面を有する。波長変換部材50のX軸方向に延びる辺は、Y軸方向に延びる辺およびZ軸方向に延びる辺よりも長い。そのため、X軸方向は、波長変換部材50の長軸方向に対応する。Y軸方向に延びる辺の長さとZ軸方向に延びる辺の長さとは等しい。すなわち、X軸方向に垂直な面(YZ平面)で切断した波長変換部材50の断面形状は、正方形である。波長変換部材50のX軸方向の長さは、例えば40mm~70mm程度である。波長変換部材50の断面形状である正方形の一辺の長さは、例えば1.0mm~1.5mm程度である。X軸方向に垂直な面で切断した波長変換部材50の断面形状は、長方形であってもよいし、円形であってもよい。波長変換部材50の長軸方向に平行な軸であって、波長変換部材50のYZ断面の中心を通る中心軸を、波長変換部材50の光軸Jと定義する。
【0034】
波長変換部材50は、第1端面50aおよび第2端面50bと、第1側面50cおよび第2側面50dと、第3側面50eおよび第4側面50fと、を有する。第1端面50aおよび第2端面50bは、波長変換部材50の長軸方向(X軸方向)に交差し、互いに反対側に位置する。第1側面50cおよび第2側面50dは、第1端面50aおよび第2端面50bと交差し、Y軸方向において互いに反対側に位置する。第3側面50eおよび第4側面50fは、第1側面50cおよび第2側面50dと交差し、Z軸方向において互いに反対側に位置する。以下の説明では、第1側面50c、第2側面50d、第3側面50e、および第4側面50fを合わせて、側面と称することがある。
【0035】
波長変換部材50は、蛍光体を含み、第1波長帯を有する励起光Eを、第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。励起光Eは、第1側面50cから波長変換部材50に入射する。蛍光Yは、波長変換部材50の内部を導光した後、第1端面50aから射出される。本実施形態の励起光Eは、特許請求の範囲の第1光に対応する。本実施形態の蛍光Yは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0036】
波長変換部材50は、励起光Eを蛍光Yに波長変換する多結晶蛍光体からなるセラミック蛍光体を含んでいる。蛍光Yが有する第2波長帯は、例えば490~750nmの黄色の波長帯である。すなわち、蛍光Yは、赤色光成分および緑色光成分を含む黄色の蛍光である。
【0037】
波長変換部材50は、多結晶蛍光体に代えて、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。もしくは、波長変換部材50は、蛍光ガラスから構成されていてもよい。もしくは、波長変換部材50は、ガラスまたは樹脂からなるバインダー中に多数の蛍光体粒子が分散された材料から構成されていてもよい。このような材料からなる波長変換部材50は、励起光Eを蛍光Yに変換する。
【0038】
具体的には、波長変換部材50の材料は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、波長変換部材50の材料として、Y2O3、Al2O3、CeO3等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等が用いられる。
【0039】
図3および
図4に示すように、射出部材52は、半球状の形状を有し、入射面52aと射出面52bとを有する。入射面52aは、円形の平坦面から構成され、波長変換部材50から射出される蛍光Yを入射させる。射出面52bは、半球面から構成され、入射面52aから入射する蛍光Yを外部空間に射出させる。射出面52bは、必ずしも半球面でなくてもよいが、球面の一部から構成されることが望ましい。波長変換素子71の光軸Jは、入射面52aの中心を通る。
【0040】
射出部材52は、透光性を有する熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、低融点ガラス等の材料から構成される。熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂として、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が用いられる。低融点ガラスとして、例えばホウケイ酸亜鉛系ガラス、リン酸亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラス等が用いられる。低融点ガラスを用いる場合、射出部材52の耐光性が高くなる点で好ましい。波長変換部材50の屈折率は、例えば1.80~1.83程度であり、射出部材52の屈折率は、波長変換部材50の屈折率にできるだけ近いことが望ましい。
【0041】
波長変換部材50の第1端面50aと射出部材52の入射面52aとは、互いに直接接触している。波長変換部材50と射出部材52とは、後述する製造方法によって直接接合されている。
【0042】
図4に示すように、波長変換素子71の1つの側面に直交する方向から見た側面視において、射出部材52の射出面52bと波長変換部材50の第1端面50aの端部との接点を接点P1とする。接点P1を通る射出面52bの接線S1と第1端面50aとのなす角度θは、90度よりも小さい。本明細書において、角度θを、第1端面50aの端部に接する射出面52bの傾斜角θと定義する。したがって、本実施形態の場合、第1端面50aの端部に接する射出面52bの傾斜角θは、90度よりも小さい。
【0043】
入射面52aの直径は、第1端面50aの1辺の長さと等しい。そのため、
図3に示すように、第1端面50aのうち、4つの角部の近傍の領域は、射出部材52と接触していない。換言すると、射出部材52は、第1端面50aの1辺の長さと等しい直径を有する透光性材料の球体を半分に切断した形状を有し、切断面が入射面52aに対応する。この構成に代えて、入射面52aの直径は、第1端面50aの対角線の長さと等しくてもよい。本実施形態の場合、波長変換部材50の幅が1.0mmであったとすると、射出部材52の入射面52aの直径が1.0mmであり、射出部材52のX軸方向の高さが0.5mmである。
【0044】
波長変換部材50の第1端面50aに射出部材52を有する本実施形態の波長変換素子71によれば、射出部材を有していない波長変換素子に比べて、波長変換部材50の第1端面50aで全反射し、第2端面50bの側に戻る蛍光Yを減らすことができ、射出部材52から外部空間に射出させることができる。これにより、波長変換素子71からの蛍光Yの射出効率を高めることができる。
【0045】
図2に示すように、ミラー53は、波長変換部材50の第2端面50bに設けられている。ミラー53は、波長変換部材50の内部を導光し、第2端面50bに到達した蛍光Yを反射させ、第1端面50aの側に導く。ミラー53は、波長変換部材50の第2端面50bに形成された金属膜もしくは誘電体多層膜から構成されている。または、ミラー53は、波長変換部材50とは別体の部材で構成され、第2端面50bに接合されていてもよい。
【0046】
光源部51は、第1波長帯の励起光Eを射出する発光面56aを有する発光素子56を備える。発光素子56は、例えばLEDから構成されている。発光素子56の発光面56aは、波長変換部材50の第1側面50cに対向し、第1側面50cに向けて励起光Eを射出する。第1波長帯は、例えば400nm~480nmの紫色から青色にかけての波長帯であり、ピーク波長は例えば445nmである。このように、光源部51は、波長変換部材50の長手方向に沿う4つの側面のうち、1つの側面に対向して設けられている。
【0047】
基板55は、発光素子56を支持する。基板55は、発光素子56が配置される第1面55aを有する。基板55には、発光素子を駆動するための駆動回路が印刷等によって直接形成されていてもよいし、駆動回路を有する回路基板が接続されていてもよい。本実施形態の場合、光源部51は、発光素子56と基板55とから構成されているが、その他、導光板、拡散板、レンズ等の他の光学部材を備えていてもよい。本実施形態において、光源部51は、複数の発光素子56を有するが、発光素子56の個数は1つであってもよいし、特に限定されない。
【0048】
支持部材54は、波長変換部材50の周囲を囲むように設けられている。支持部材54は、波長変換部材50を支持する。支持部材54は、所定の強度を有し、熱伝導率が高い材料で構成されることが望ましい。支持部材54の材料として、例えばアルミニウム、ステンレスなどの金属が用いられ、特に6061系等のアルミニウム合金が用いられることが望ましい。
【0049】
第1照明装置20において、光源部51から射出された励起光Eが波長変換部材50に入射すると、波長変換部材50の内部に含まれる蛍光体が励起され、任意の発光点から蛍光Yが発せられる。蛍光Yは任意の発光点から全ての方向に向かって進むが、4つの側面50c,50d,50e,50fに向かった蛍光Yは、側面50c,50d,50e,50fの複数の個所で全反射を繰り返しつつ、第1端面50aまたは第2端面50bに向かって進む。第1端面50aに向かって進む蛍光Yは、射出部材52に入射する。第2端面50bに向かって進む蛍光Yは、ミラー53で反射され、第1端面50aに向かって進む。
【0050】
波長変換部材50に入射した励起光Eのうち、蛍光体の励起に使われなかった励起光Eの一部は、光源部51の発光素子56を含む波長変換部材50の周囲の部材、または第2端面50bに設けられたミラー53で反射される。そのため、励起光Eの一部は、波長変換部材50の内部に閉じ込められて再利用される。
【0051】
波長変換部材50の第1端面50aから射出される蛍光Yは、第1端面50aに直接接触する入射面52aから射出部材52に入射する。蛍光Yは、射出部材52の内部を進み、射出面52bで屈折して外部空間に射出される。射出面52bから射出される蛍光Yの一部は、射出面52bで屈折する際に光軸Jに平行な方向に近付くように向きを変える。このように、射出部材52は、蛍光Yの一部を集光する機能を有する。
【0052】
図2に示すように、光源装置100とインテグレーター光学系70との間に、コリメーターレンズ等からなる平行化光学系63が設けられている。平行化光学系63は、射出部材52から射出される蛍光Yが入射し、蛍光Yの角度分布をさらに小さくし、平行度の高い蛍光Yをインテグレーター光学系70に入射させる。なお、平行化光学系63は、射出部材52から射出される蛍光Yの平行度が十分に高い場合には設けられていなくてもよい。
【0053】
インテグレーター光学系70は、第1レンズアレイ41と、第2レンズアレイ101と、を有する。インテグレーター光学系70は、重畳光学系103とともに光源装置100から射出された蛍光Yの強度分布を、被照明領域である光変調装置4R,4Gのそれぞれにおいて均一化する均一照明光学系として機能する。平行化光学系63から射出される蛍光Yは、第1レンズアレイ41に入射する。第1レンズアレイ41は、第2レンズアレイ101とともに、インテグレーター光学系70を構成する。
【0054】
第1レンズアレイ41は、複数の第1小レンズ41aを有する。複数の第1小レンズ41aは、第1照明装置20の光軸AX1と直交するYZ平面に平行な面内にマトリクス状に配列されている。複数の第1小レンズ41aは、射出部材52から射出される蛍光Yを複数の部分光束に分割する。第1小レンズ41aの各々の形状は、光変調装置4R,4Gの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、第1レンズアレイ41から射出された部分光束の各々は、光変調装置4R,4Gの画像形成領域にそれぞれ効率良く入射する。
【0055】
第1レンズアレイ41から射出された蛍光Yは、第2レンズアレイ101に向かって進む。第2レンズアレイ101は第1レンズアレイ41に対向して配置されている。第2レンズアレイ101は、第1レンズアレイ41の複数の第1小レンズ41aに対応する複数の第2小レンズ101aを有する。第2レンズアレイ101は、重畳光学系103とともに、第1レンズアレイ41の複数の第1小レンズ41aの像の各々を光変調装置4R,4Gの画像形成領域の近傍に結像させる。複数の第2小レンズ101aは、第1照明装置20の光軸AX1に直交するYZ平面に平行な面内にマトリクス状に配列されている。
【0056】
本実施形態において、第1レンズアレイ41の各第1小レンズ41aと第2レンズアレイ101の各第2小レンズ101aとは、互いに同じサイズを有しているが、互いに異なるサイズを有していてもよい。また、本実施形態において、第1レンズアレイ41の第1小レンズ41aと第2レンズアレイ101の第2小レンズ101aとは、互いの光軸が一致する位置に配置されているが、互いに偏心した状態に配置されていてもよい。
【0057】
偏光変換素子102は、第2レンズアレイ101から射出される蛍光Yの偏光方向を変換する。具体的に、偏光変換素子102は、第1レンズアレイ41で分割され、第2レンズアレイ101から射出された蛍光Yの各部分光束を直線偏光に変換する。
【0058】
偏光変換素子102は、光源装置100から射出される蛍光Yに含まれる偏光成分のうち、一方の直線偏光成分をそのまま透過させるとともに、他方の直線偏光成分を光軸AX1に垂直な方向に反射する偏光分離層(図示略)と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を光軸AX1に平行な方向に反射する反射層(図示略)と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する位相差板(図示略)と、を有する。
【0059】
[射出部材の形状に関する考察]
本発明者は、射出部材52の形状を変化させたときの射出効率の変化を調べるシミュレーションを行った。以下、シミュレーション結果について説明する。
【0060】
シミュレーション条件として、波長変換部材50の幅を1.0mmとし、射出部材52の入射面52aの直径を1.0mmとした上で、射出部材52のX軸方向の高さを0.525mmから0.2mmまで変化させた。
【0061】
図5は、シミュレーション結果を示すグラフである。
図5において、横軸は射出部材52のX軸方向の高さ(mm)である。縦軸は、射出効率(無単位)である。射出効率は、入射面52aの形状および大きさが上記のシミュレーション条件と共通の複合放物面型集光器(Compound Parabolic Concentrator, CPC)の射出光量に対する射出光量の比で表す。
【0062】
図5に示すように、射出部材52の高さを0.525mmから小さくすると、0.5mmのときに射出効率が1.03程度となり、射出効率の最大値を示す。本シミュレーション条件において射出部材52の高さが0.5mmであることは、射出部材52の形状が半球状であることに対応し、CPCに対して射出効率を3%程度向上させることができる。射出部材52の高さが0.44mm程度のとき、射出効率が1.00となり、CPCと略同等の射出効率を示す。射出部材52の高さを0.44mmからさらに小さくすると、射出効率は1.00から徐々に低下する。以上の結果から、高い射出効率を得るためには、射出部材52の形状は半球状であることが望ましいことが判った。
【0063】
[波長変換素子の製造方法]
以下、本実施形態の波長変換素子71の製造方法について説明する。
図6Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図6Bは、
図6Aの後の第2工程を示す図である。
図6Cは、
図6Bの後の第3工程を示す図である。
第1実施形態では、射出部材52の材料として、熱硬化性樹脂を用いる例について説明する。
【0064】
第1工程として、
図6Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを上方に向けて治具60に装着する。なお、治具60は、複数の波長変換部材をまとめて装着できる構成となっていてもよい。また、工程間の搬送には、ベルトコンベア等の搬送用機器を用いてもよい。この構成によれば、波長変換素子71の生産性を向上することができる。
【0065】
次に、第2工程として、
図6Bに示すように、後に射出部材52となる液状の樹脂61を第1端面50aに直接当接させる。この例では、ディスペンサー62を用いて、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂61を第1端面50aに滴下して、第1端面50aに直接当接させる。なお、ディスペンサー62に代えて、インクジェット等の他の滴下法を用いてもよい。
【0066】
次に、第3工程として、
図6Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61を加熱して硬化させる。この例では、治具60に装着した波長変換部材50を加熱炉64に収容し、例えば120℃、120分等の条件で加熱を行い、樹脂61を硬化させる。
【0067】
最後に、図示を省略するが、治具60に装着した波長変換部材50を加熱炉64から取り出し、自然に冷却する。
以上の工程により、本実施形態の波長変換素子71が完成する。
【0068】
なお、上記の製造プロセスは、樹脂61を第1端面50aに当接させる前に、樹脂61と第1端面50aとの親和性を調整する工程をさらに備えていてもよい。例えば、波長変換部材50の第1端面50aの周縁部に、フッ素系コーティング剤を塗布する。これにより、波長変換部材50の第1端面50aの周縁部に、フッ素系コーティング剤による撥液膜を形成することができる。または、波長変換部材50の第1端面50aの周縁部に、シリコーンオイル、エタノール、水等の界面活性剤を塗布する。これにより、波長変換部材50の第1端面50aの周縁部に、界面活性剤等による親液膜を形成することができる。上記のコーティング剤、界面活性剤等の材料の種類を変えることにより、波長変換部材50の第1端面50aに対する液状の樹脂61の接触角を調整することができる。その結果、第1端面50aの端部に接する射出面52bの傾斜角を制御することができる。
【0069】
このように、波長変換部材50の第1端面50aの樹脂61に対する親和性を調整した後、樹脂61を加熱して硬化させる。このとき、硬化後の樹脂61の形状は、硬化前からほとんど変化しない。また、樹脂61は、接触角が所望の範囲に維持された状態で硬化する。これにより、硬化後の樹脂61からなる射出部材52の射出面52bを所望の形状に制御することができる。
【0070】
なお、上記の方法では、波長変換部材50の第1端面50aに撥液性材料または親液性材料を塗布することにより、樹脂61の接触角を調整したが、その他、例えば樹脂61の硬化時の温度等、硬化条件を調整することにより、樹脂61の接触角を調整してもよい。また、樹脂61の接触角を小さくする場合には、空気プラズマ処理、酸素プラズマ処理等の手法を用いてもよい。
【0071】
また、樹脂61を滴下する際の温度条件を変えることにより、波長変換部材50に対する樹脂61の接触角を調整することができる。この方法は、樹脂61を滴下する下地の温度によって表面自由エネルギーが変化し、樹脂61の接触角が変わることを利用する方法である。例えば波長変換部材50の温度を相対的に高くした状態で樹脂61を滴下することにより、波長変換部材50に対する樹脂61の接触角を小さくし、波長変換部材50の温度を相対的に低くした状態で樹脂61を滴下することにより、波長変換部材50に対する樹脂61の接触角を大きくすることができる。
【0072】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の波長変換素子71の製造方法は、波長変換部材50を用意する第1工程と、射出部材52となる液状の樹脂61を第1端面50aに直接当接させる第2工程と、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61を硬化させる第3工程と、を備える。また、樹脂61として熱硬化性樹脂を用い、第2工程において、液状の樹脂61を第1端面50aに滴下して第1端面50aに直接当接させ、第3工程において、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61を加熱して硬化させる。
【0073】
本実施形態の波長変換素子71は、第1端面50aを有し、励起光Eを蛍光Yに変換する波長変換部材50と、入射面52aと射出面52bとを有し、第1端面50aから射出されて入射面52aから入射する蛍光Yを射出面52bから外部空間に射出させる射出部材52と、を備え、第1端面50aと入射面52aとは、互いに直接接触している。
【0074】
本実施形態によれば、波長変換部材50の第1端面50aと射出部材52の入射面52aとが互いに直接接触しているため、波長変換部材と射出部材との間に接着剤が介在する従来の波長変換素子に比べて、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する部材同士の界面での剥離が生じるおそれを低減することができる。これにより、信頼性の高い波長変換素子71を提供することができる。また、製造プロセスにおいて、波長変換部材50を研磨する必要がなく、滴下した樹脂61の表面張力によって射出部材52の形状を作ることができるため、製造プロセスの負荷を軽減することができる。
【0075】
本実施形態の光源装置100は、本実施形態の波長変換素子71を備えているため、信頼性に優れる。
【0076】
本実施形態のプロジェクター1は、本実施形態の光源装置100を備えているため、信頼性に優れる。
【0077】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクター、光源装置および波長変換素子の基本構成は第1実施形態と略同様であり、射出部材が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクター、光源装置および波長変換素子の基本構成の説明は省略する。
図7は、第2実施形態の波長変換素子72の斜視図である。
図8は、波長変換素子72の側面図である。
図7および
図8において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図7および
図8に示すように、本実施形態の波長変換素子72において、射出部材66は、第1端面50aの1辺の長さよりも大きい直径を有する球体を半分よりも大きい部分を残して切断した形状を有し、切断面が入射面66aに対応する。入射面66aの直径は、第1端面50aの1辺の長さと等しい。そのため、第1端面50aのうち、4つの角部の近傍の領域は射出部材66と接触していない。射出面66bは、半球面よりも大きい面積を有する球面の一部から構成される。射出部材66の材料および屈折率は、第1実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態の場合も、第1実施形態と同様、波長変換部材50の第1端面50aと射出部材66の入射面66aとは、互いに直接接触している。すなわち、波長変換部材50の第1端面50aと射出部材66の入射面66aとの間に、接着材は介在していない。本実施形態の場合、第1実施形態と異なり、第1端面50aの端部に接する射出面66bの傾斜角θは、90度よりも大きい。波長変換素子72のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子71と同様である。
【0080】
本実施形態の波長変換素子72の製造方法は、図示を省略するが、第3工程において、波長変換部材50の第1端面50aに対する樹脂61の接触角を90度よりも大きくした状態で樹脂61を硬化させる。樹脂61の接触角を90度よりも大きくするために、第1実施形態で述べたように、樹脂61を滴下する工程の前に、樹脂61と第1端面50aとの親和性を調整する工程を行ってもよい。具体的には、例えば第1端面50aの周縁部に撥液膜を形成した後、第1実施形態よりも多量の樹脂61を滴下すればよい。
【0081】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子72を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
さらに本実施形態の波長変換素子72においては、以下の格別の効果が得られる。
第1実施形態の波長変換素子71の場合、
図4に示すように、第1端面50aから90度に近い射出角βで射出する蛍光Y1は、射出面52bに対して臨界角未満の入射角で入射するため、射出面52bで全反射することなく、外部空間に射出される。この場合、蛍光Y1は、波長変換素子71から射出されるが、光軸Jとは大きく離れる方向に向かって進む。そのため、蛍光Y1は、波長変換素子71の後段の光学系に入射されず、光利用効率を低下させる。
【0083】
これに対して、本実施形態の波長変換素子72の場合、
図8に示すように、
図4と同じ射出角βで射出する蛍光Y1であっても、蛍光Y1は、射出面66bに対して臨界角以上の入射角で入射するため、射出面66bで全反射し、次に入射する射出面66bに臨界角未満の入射角で入射し、外部空間に射出される。この場合、蛍光Y1は、
図4の場合とは異なり、光軸Jに近付く方向に進むため、波長変換素子72の後段の光学系に入射され、光利用効率を低下させることがない。このように、本実施形態の波長変換素子72は、第1端面50aの端部に接する射出面66bの傾斜角θが90度よりも大きいため、光源装置としての光利用効率を第1実施形態に比べて高めることができる。
【0084】
本発明者は、波長変換素子の後段の光学系に入射される蛍光の量のシミュレーションを行った。その結果、本実施形態の波長変換素子72によれば、波長変換素子72の後段の光学系に入射される蛍光の量を、半球状の射出部材を有する第1実施形態の波長変換素子71に比べて2~3%増加できることが判った。
【0085】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図面を用いて説明する。
以下の各実施形態においては、第1実施形態の波長変換素子71の製造方法の他の例を説明する。
図9Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図9Bは、
図9Aの後の第2工程を示す図である。
図9Cは、
図9Bの後の第3工程を示す図である。
図9A~
図9Cにおいて、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態では、射出部材52の材料として、熱硬化性樹脂を用いる例について説明する。
【0086】
最初に、第1工程として、
図9Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを下方に向けて治具60に装着する。
【0087】
次に、第2工程として、
図9Bに示すように、射出部材52となる液状の樹脂61を第1端面50aに直接当接させる。この例では、容器68に収容した液状の樹脂61に向けて治具60を降下させて、波長変換部材50の第1端面50aを樹脂61に直接当接させる。このとき、波長変換部材50の側面に樹脂61が付着しないように、側面に撥液膜を形成しておいてもよい。
【0088】
次に、第3工程として、
図9Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61を加熱して硬化させる。この例では、治具60に装着した波長変換部材50を加熱炉64に収容して加熱を行い、樹脂61を硬化させる。
【0089】
最後に、図示を省略するが、治具60に装着した波長変換部材50を加熱炉64から取り出し、自然に冷却する。
以上の工程により、波長変換素子71が完成する。
【0090】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図面を用いて説明する。
図10Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図10Bは、
図10Aの後の第2工程を示す図である。
図10Cは、
図10Bの後の第3工程を示す図である。
図10Dは、
図10Cの後の第4工程を示す図である。
図10A~
図10Dにおいて、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第4実施形態では、射出部材52の材料として、熱硬化性樹脂を用いる例について説明する。
【0092】
最初に、第1工程として、
図10Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを下方に向けて治具60に装着する。
【0093】
次に、第2工程として、
図10Bに示すように、射出部材52となる液状の樹脂61を第1端面50aに直接当接させる。この例では、型69の凹部69hに充填した液状の樹脂61に向けて治具60を降下させ、波長変換部材50の第1端面50aを樹脂61に直接当接させる。なお、型69の凹部69hに樹脂61を充填する前に、凹部69hの内面に離型剤を塗布しておいてもよい。これにより、後の工程で凹部69hから樹脂61を取り外しやすくなる。
【0094】
次に、第3工程として、
図10Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61を加熱して硬化させる。この例では、加熱炉64の内部で樹脂61を加熱して硬化させる。なお、加熱炉64を用いずに、型69を直接加熱してもよい。
【0095】
次に、第4工程として、
図10Dに示すように、治具60を上昇させることで硬化させた樹脂61を型69の凹部69hから取り外し、自然に冷却する。
以上の工程により、波長変換素子71が完成する。
【0096】
[第4実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。また、所望の凹部形状を有する型69を用いることにより、型69の凹部形状に応じた所望の形状を有する射出部材52を作製することができる。
【0097】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図面を用いて説明する。
図11Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図11Bは、
図11Aの後の第2工程を示す図である。
図11Cは、
図11Bの後の第3工程を示す図である。
図11A~
図11Cにおいて、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第5実施形態では、射出部材52の材料として、光硬化性樹脂を用いる例について説明する。
【0098】
第1工程として、
図11Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを上方に向けて治具60に装着する。
【0099】
次に、第2工程として、
図11Bに示すように、射出部材52となる液状の樹脂61を第1端面50aに直接当接させる。この例では、ディスペンサー62を用いて、液状の樹脂61を第1端面50aに滴下して、第1端面50aに直接当接させる。なお、ディスペンサー62に代えて、インクジェット等の他の滴下法を用いてもよい。
【0100】
次に、第3工程として、
図11Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の樹脂61に光を照射して硬化させる。この例では、紫外光源75から射出される紫外光Fを樹脂61に照射し、樹脂61を硬化させる。
以上の工程により、波長変換素子71が完成する。
【0101】
[第5実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図面を用いて説明する。
図12Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図12Bは、
図12Aの後の第2工程の一部を示す図である。
図12Cは、
図12Bの後の第2工程の他の一部を示す図である。
図12Dは、
図12Cの後の第3工程を示す図である。
図12A~
図12Dにおいて、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第6実施形態では、射出部材52の材料として、低融点ガラスを用いる例について説明する。
【0103】
第1工程として、
図12Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを上方に向けて治具60に装着する。
【0104】
次に、第2工程として、射出部材52となる軟化状のガラスを第1端面50aに直接当接させる。この例では、最初に、
図12Bに示すように、軟化していない粉末状の低融点ガラス77を第1端面50aに配置する。なお、低融点ガラス77は、粉末状に限らず、顆粒状であってもよいし、塊状であってもよく、固体状であればよい。
【0105】
次に、
図12Cに示すように、低融点ガラス77を加熱して軟化させる。この例では、低融点ガラス77を第1端面50a上に配置した波長変換部材50を加熱炉64に収容し、低融点ガラス77を軟化点以上の温度まで加熱して軟化させる。これにより、低融点ガラス77の表面は滑らかな球面状となる。このとき、低融点ガラス77の軟化点から融点までの温度において、低融点ガラス77の形状を制御することができる。また、波長変換部材50は、低融点ガラス77の軟化点から融点までの温度で耐熱性を有する。なお、上記の方法に代えて、予め軟化させたガラスを第1端面50a上に塗布してもよい。
【0106】
次に、第3工程として、
図12Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の低融点ガラス77を冷却して硬化させる。この例では、低融点ガラス77を第1端面50aに配置した波長変換部材50を加熱炉64から取り出し、低融点ガラス77を自然に冷却する。
以上の工程により、波長変換素子71が完成する。
【0107】
[第6実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、図面を用いて説明する。
図13Aは、波長変換素子71の製造プロセスの第1工程を示す図である。
図13Bは、
図13Aの後の第2工程を示す図である。
図13Cは、
図13Bの後の第3工程を示す図である。
図13Dは、
図13Cの後の第4工程を示す図である。
図13A~
図13Dにおいて、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第7実施形態では、射出部材52の材料として、低融点ガラスを用いる例について説明する。
【0109】
最初に、第1工程として、
図13Aに示すように、波長変換部材50を用意する。この例では、蛍光体を含む波長変換部材50を洗浄した後、第1端面50aを下方に向けて治具60に装着する。
【0110】
次に、第2工程として、
図13Bに示すように、射出部材52となる軟化状の低融点ガラス77を第1端面50aに直接当接させる。この例では、型69の凹部69hに充填した軟化状の低融点ガラス77に向けて治具60を降下させ、波長変換部材50の第1端面50aを低融点ガラス77に直接当接させる。なお、型69の凹部69hに低融点ガラス77を充填する前に、凹部69hの内面に離型膜を形成しておくことが望ましい。これにより、後の工程で型69から低融点ガラス77を取り外しやすくなる。
【0111】
次に、第3工程として、
図13Cに示すように、第1端面50aに直接当接させた状態の低融点ガラス77を冷却して硬化させる。この例では、液冷、空冷などの任意の方法を用いて型69を冷却することにより、低融点ガラス77を冷却して硬化させる。
【0112】
次に、第4工程として、
図13Dに示すように、治具60を上昇させることで硬化させた低融点ガラス77を型69から取り外す。
以上の工程により、波長変換素子71が完成する。
【0113】
[第7実施形態の効果]
本実施形態においても、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子を提供することができる、製造プロセスの負荷を軽減することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0114】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記実施形態および変形例の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0115】
波長変換素子の製造方法において、樹脂やガラスを硬化させる際には、樹脂やガラスを当接させた第1端面を上向きに配置してもよいし、樹脂やガラスを当接させた第1端面を下向きに配置してもよい。第1端面を上向きに配置する場合、樹脂やガラスが重力の影響によってつぶれやすいため、高さが比較的低い射出部材を形成する場合に好適である。この場合、射出部材の形状の制御が難しい場合には、上述したように、樹脂やガラスと波長変換部材との親和性を調整することが望ましい。これに対して、第1端面を下向きに配置する場合、樹脂やガラスが重力の影響によって垂れ下がりやすいため、例えば砲弾型のように、高さが比較的高い射出部材を形成する場合に好適である。
【0116】
上記実施形態では、波長変換部材の形状が四角柱状の例を挙げたが、例えば円柱状であってもよい。円柱状の波長変換部材を用いる場合、例えば第1端面に液状の樹脂を滴下すると、第1端面の全域に樹脂が濡れ広がった状態で半球面状の射出部材を形成することができるため、形状を制御しやすい。
【0117】
その他、波長変換素子、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0118】
上記実施形態では、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0119】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0120】
(付記1)
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換部材を用意する第1工程と、
前記射出部材となる液状の樹脂または軟化状の樹脂を前記第1端面に直接当接させる第2工程と、
前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を硬化させる第3工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【0121】
付記1の構成によれば、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子が得られる。また、波長変換部材を加工する必要がなく、製造プロセスの負荷を軽減することができる。
【0122】
(付記2)
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、前記液状の樹脂を前記第1端面に滴下して前記第1端面に直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を加熱して硬化させる、付記1に記載の波長変換素子の製造方法。
【0123】
付記2の構成によれば、熱硬化性樹脂を第1端面に滴下し、加熱して硬化させることにより、所望の形状を有する射出部材を作製することができる。
【0124】
(付記3)
前記樹脂は、光硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、前記液状の樹脂を前記第1端面に滴下して前記第1端面に直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂に光を照射して前記樹脂を硬化させる、付記1に記載の波長変換素子の製造方法。
【0125】
付記3の構成によれば、光硬化性樹脂を第1端面に滴下し、光硬化性樹脂に光を照射して硬化させることにより、所望の形状を有する射出部材を作製することができる。
【0126】
(付記4)
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記第2工程において、型の凹部に充填した前記液状の樹脂または前記軟化状の樹脂に前記第1端面を直接当接させ、
前記第3工程において、前記第1端面に直接当接させた状態の前記樹脂を加熱して硬化させ、
硬化させた前記樹脂を前記型から取り外す第4工程をさらに備える、付記1に記載の波長変換素子の製造方法。
【0127】
付記4の構成によれば、所望の凹部形状を有する型を用いることにより、型の凹部形状に応じた所望の形状を有する射出部材を作製することができる。
【0128】
(付記5)
前記第3工程において、前記第1端面に対する前記樹脂の接触角を90度よりも大きくした状態で前記樹脂を硬化させる、付記1から付記4までのいずれか一項に記載の波長変換素子の製造方法。
【0129】
付記5の構成によれば、光源装置に用いた場合に光利用効率の高い波長変換素子を得ることができる。
【0130】
(付記6)
前記樹脂を前記第1端面に当接させる前に、前記樹脂と前記第1端面との親和性を調整する工程をさらに備える、付記1から付記5までのいずれか一項に記載の波長変換素子の製造方法。
【0131】
付記6の構成によれば、第1端面に対する樹脂の接触角を調整することができ、射出部材の形状を制御することができる。
【0132】
(付記7)
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、前記第1端面から射出される前記第2光を入射させて外部空間に射出させる射出部材と、を備える波長変換素子の製造方法であって、
前記波長変換部材を用意する第1工程と、
前記射出部材となる軟化状のガラスを前記第1端面に直接当接させる第2工程と、
前記第1端面に直接当接させた前記軟化状のガラスを冷却して硬化させる第3工程と、
を備える、波長変換素子の製造方法。
【0133】
付記7の構成によれば、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子が得られる。また、射出部材は、ガラスで構成されるため、耐光性に優れる。また、波長変換部材を加工する必要がなく、製造プロセスの負荷を軽減することができる。
【0134】
(付記8)
前記第2工程において、型の凹部に充填した前記軟化状のガラスに前記第1端面を直接当接させ、
前記第3工程において、前記型を冷却して前記ガラスを硬化させ、
硬化させた状態の前記ガラスを前記型から取り外す第4工程をさらに備える、付記7に記載の波長変換素子の製造方法。
【0135】
付記8の構成によれば、所望の凹部形状を有する型を用いることにより、型の凹部形状に応じた所望の形状を有する射出部材を作製することができる。
【0136】
(付記9)
前記第2工程において、固体状のガラスに前記第1端面を直接当接させた後、前記ガラスを加熱して軟化させ、前記軟化状のガラスとする、付記7に記載の波長変換素子の製造方法。
【0137】
付記9の構成によれば、固体状のガラスを用いて射出部材を作製することができる。
【0138】
(付記10)
前記第3工程において、前記第1端面に対する前記ガラスの接触角を90度よりも大きくした状態で前記ガラスを硬化させる、付記7から付記9までのいずれか一項に記載の波長変換素子の製造方法。
【0139】
付記10の構成によれば、光源装置に用いた場合に光利用効率の高い波長変換素子を得ることができる。
【0140】
(付記11)
前記ガラスを前記第1端面に当接させる前に、前記ガラスと前記第1端面との親和性を調整する工程をさらに備える、付記7から付記10までのいずれか一項に記載の波長変換素子の製造方法。
【0141】
付記11の構成によれば、第1端面に対するガラスの接触角を調整することができ、射出部材の形状を制御することができる。
【0142】
(付記12)
第1端面を有し、第1波長帯の第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する柱状の波長変換部材と、
入射面と射出面とを有し、前記第1端面から射出されて前記入射面から入射する前記第2光を前記射出面から外部空間に射出させる射出部材と、を備え、
前記第1端面と前記入射面とは、互いに直接接触している、波長変換素子。
【0143】
付記12の構成によれば、線膨張係数の違いや機械的衝撃に起因する部材同士の剥離のおそれを低減でき、信頼性の高い波長変換素子が得られる。
【0144】
(付記13)
前記第1端面の端部に接する前記射出面の傾斜角が90度よりも大きく、
前記射出面は、球面の一部で構成されている、付記12に記載の波長変換素子。
【0145】
付記13の構成によれば、光源装置に用いた場合に光利用効率の高い波長変換素子を得ることができる。
【0146】
(付記14)
付記12または付記13に記載の波長変換素子と、
前記波長変換部材に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【0147】
付記14の構成によれば、信頼性に優れる光源装置が得られる。
【0148】
(付記15)
付記14に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【0149】
付記15の構成によれば、信頼性に優れるプロジェクターが得られる。
【符号の説明】
【0150】
1…プロジェクター、4B,4G,4R…光変調装置、6…投射光学装置、50…波長変換部材、50…波長変換部材、50a…第1端面、52,66…射出部材、52a,66a…入射面、52b,66b…射出面、56…発光素子、61…樹脂、69…型、69h…凹部、77…低融点ガラス、100…光源装置、E…励起光(第1光)、Y…蛍光(第2光)。