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特開2024-709993次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024070999
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】3次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240517BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181680
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福地 良太
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA21
2F065AA46
2F065AA47
2F065AA52
2F065BB13
2F065BB15
2F065CC06
2F065DD03
2F065DD08
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065MM03
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR09
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】簡単な装置構成で3次元測定機器の複数の取付方向軸回りの取付誤差を精度高く算出することができる、3次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置を提供する。
【解決手段】3次元形状測定機器の校正方法は、被測定物Sの3次元形状を測定する3次元形状測定機器5の取付誤差を校正する3次元形状測定機器の校正方法である。当該校正方法は、校正装置10によって、3次元形状測定機器5の複数の取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))に対し、取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))ごとに異なる算出方法を用いて複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する算出工程(ステップS14、ステップS4、ステップS115)を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器の取付誤差を校正する3次元形状測定機器の校正方法であって、
校正装置によって、前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する算出工程を含むことを特徴とする3次元形状測定機器の校正方法。
【請求項2】
前記3次元形状測定機器は、前記被測定物に対してライン状のレーザー光を照射し、前記被測定物までの距離を測定する距離センサであり、前記複数の取付方向軸は、水平方向かつ前記レーザー光のライン方向である水平一軸と、水平方向かつ前記水平一軸に直交する水平二軸と、前記レーザー光に平行かつ前記水平一軸及び前記水平二軸に直交する鉛直軸との3軸であることを特徴とする請求項1に記載の3次元形状測定機器の校正方法。
【請求項3】
前記校正装置によって、前記3次元形状測定機器の前記水平一軸回りの取付誤差を算出する算出工程では、前記3次元形状測定機器が測定した、水平出しした高さの差hが既知の2つの水平面を有する校正部材の前記2つの水平面の高さの差herrのデータを前記校正装置が取得し、前記校正装置が、既知の高さの差hと取得した高さの差herrのデータとに基づいて下記式により前記3次元形状測定機器の前記水平一軸回りの取付誤差Δθxを算出することを特徴とする請求項2に記載の3次元形状測定機器の校正方法。
Δθx=tan-1(h/herr)
【請求項4】
前記校正装置によって、前記3次元形状測定機器の前記水平二軸回りの取付誤差を算出する算出工程では、前記3次元形状測定機器が測定した、水平出しした水平面を有する校正部材の前記水平面の形状データを前記校正装置が取得し、前記校正装置が取得した前記水平面の形状データを1次関数に近似して前記水平面の傾きを算出することにより、前記3次元形状測定機器の前記水平二軸回りの取付誤差Δθyを算出することを特徴とする請求項2に記載の3次元形状測定機器の校正方法。
【請求項5】
前記校正装置によって、前記3次元形状測定機器の前記鉛直軸回りの取付誤差を算出する算出工程では、前記3次元形状測定機器が異なる2方向の測定経路から校正部材をそれぞれ測定して得られた2つの3次元形状測定データのそれぞれについて、設計上の取付角度θzから±θの範囲において微小な角度dθzごとに座標変換した2つの座標変換値を前記校正装置が取得し、前記校正装置が取得した前記2つの座標変換値を重ね合わせて2つの座標変換値が一致する取付角度を算出することにより、前記3次元形状測定機器の前記鉛直軸回りの取付誤差Δθzを算出することを特徴とする請求項2に記載の3次元形状測定機器の校正方法。
【請求項6】
被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器と、
前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する校正装置とを備えていることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項7】
被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器と、前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する校正装置とを備えた3次元形状測定装置と、
前記被測定物の加工を行う加工機器とを備え、
前記3次元形状測定機器は、前記加工機器による加工前及び加工後の少なくとも一方の前記被測定物の3次元形状を測定することを特徴とする自動加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所における厚板精製工程は、被測定物としての金属(鉄鋼、アルミニウム、チタン)製の厚板を精製する工程であり、この厚板精製工程においては、ガス切断やレーザー切断、プラズマ切断などの熱切断で厚板を切断する。そして、かかる厚板を切断した後、切断された厚板の長手方向、幅方向及び対角方向の寸法や平坦度を測定する作業を実施している。
ここで、従来の切断後の厚板の寸法や平坦度の測定においては、依然としてメジャーやハイトゲージなどを使用して人の手作業で行われることが多い。このような切断後の厚板の人手による測定作業は、重筋作業であり、作業足場が悪いことによる転倒災害や、ライン内立ち入り作業のため、切断装置との干渉による衝突・狭圧災害の危険が伴う作業である。また、手作業による測定のため、測定精度に個人差やヒューマンエラーが含まれる懸念や、測定点を多くとれないという課題がある。
【0003】
このような課題を解決するため、厚板の寸法や平坦度を3次元測定装置を用いて自動で行うものとして、従来、例えば、特許文献1に示す光切断法による対象物の3次元測定装置が提案されている。
特許文献1に示す3次元測定装置は、対象物を載置するテーブルと、テーブルの両側端部に設けたアクチュエータと、対象物をいずれも複数方向から直角に照射するために設置された複数のスリット光の光源と、対象物からの反射光をそれぞれ撮像する複数のカメラとを備えている。また、3次元測定装置は、それぞれ互いに対をなす複数個所のスリット光の光源とカメラとを所定位置に支持するとともに、末端部にアクチュエータに沿って移動する移動機構を備えた門型フレームを備えている。更に、3次元測定装置は、各カメラからの画像データをそれぞれ処理する複数の画像処理装置と、各画像処理装置からの3次元計測データを演算処理するとともに、制御部を制御するコンピュータとを備えている。
【0004】
また、光切断法による3次元形状計測装置における光学ヘッド部のキャリブレーション装置として、従来、例えば、特許文献2に示すものが知られている。
特許文献2に示す3次元形状計測装置におけるキャリブレーション装置は、当該キャリブレーション装置において、スリット光源とカメラとを設置した光学ヘッドを分離可能に構成すると共に、分離した光学ヘッド部を所定姿勢で移動可能とする案内部を設けている。そして、キャリブレーション装置には、光学ヘッド部の移動方向に、寸法が既知のキャリブレーションブロックを下り階段状に複数列配置してある。そして、光学ヘッド部をキャリブレーション装置の案内部に沿って移動させ、スリット光源からスリット光を照射させた状態でカメラにより各キャリブレーションブロックを撮影し、その画像からスリット光の輝線を抽出する。そして、抽出したスリット光の輝線の画像面上の座標を求めるとともに、それらの輝線の実空間における座標をキャリブレーションブロックとカメラとの対応位置関係から求めて、それらの座標を対応させてマッピングテーブルとして保存する。そして、光切断法により測定対象を測定する際には、カメラにより撮影した画像中のスリット光の輝線に対して、画像面上の座標を求める。そして、マッピグテーブルとして保存されている各輝線の画像面上の座標と、実空間における座標との対応関係から、カメラにより撮影した画像中のスリット光の輝線の実空間における座標を求めて撮影した画像の補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3375439号公報
【特許文献2】特開2007-33039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の特許文献1に示す3次元測定装置においては、スリット光の光源及びカメラを門型フレームに取り付ける際に、門型フレームの進行方向(x方向)、この進行方向に直交する水平方向(y方向)、及びこれら進行方向及び水平方向に直交する垂直方向(z方向)に対する取付誤差が生じるおそれがある。スリット光の光源及びカメラにこれら取付誤差が生じると、カメラで撮像された画像データに誤差が生じるおそれがある。
一方、特許文献2に示す光切断法による3次元形状計測装置における光学ヘッド部のキャリブレーション装置においては、スリット光源及びカメラの光学ヘッドに対する3軸方向(x軸方向、y軸方向、及びz軸方向)の取付誤差を校正することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に示す光切断法による3次元形状計測装置におけるキャリブレーション装置においては、スリット光源及びカメラの光学ヘッドに対する3軸方向(x軸方向、y軸方向、及びz軸方向)全ての取付誤差を一度に算出している。このため、キャリブレーション装置の装置構成が複雑になるとともに、3軸方向のそれぞれの取付誤差の算出精度がそれほど高くないという課題があった。
従って、本発明は、この従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な装置構成で3次元測定機器の複数の取付方向軸回りの取付誤差を精度高く算出することができる、3次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る3次元形状測定機器の校正方法は、被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器の取付誤差を校正する3次元形状測定機器の校正方法であって、校正装置によって、前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する算出工程を含むことを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る3次元形状測定装置は、被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器と、前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する校正装置とを備えていることを要旨とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係る自動加工装置は、被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器と、前記3次元形状測定機器の複数の取付方向軸に対し、前記取付方向軸ごとに異なる算出方法を用いて前記複数の取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する校正装置とを備えた3次元形状測定装置と、前記被測定物の加工を行う加工機器とを備え、前記3次元形状測定機器は、前記加工機器による加工前及び加工後の少なくとも一方の前記被測定物の3次元形状を測定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る3次元形状測定機器の校正方法、3次元形状測定装置及び自動加工装置によれば、簡単な装置構成で3次元測定機器の複数の取付方向軸回りの取付誤差を精度高く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る自動加工装置としての自動切断装置の概略構成図である。
図2図1に示す自動切断装置における制御装置のブロック図である。
図3図1に示す自動切断装置における距離センサの取付角度調整機構を説明するもので、(a)は水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付角度調整を説明する図、(b)は鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度調整を説明する図、(c)は水平一軸(x軸)回りの距離センサの取付角度調整を説明する図である。
図4】自動切断装置を用いて厚板の3次元形状を測定する方法を説明するもので、(a)は厚板を自動切断装置の台座上に載置した状態の平面図、(b)は(a)に示す状態から距離センサが平面視で矢印Aで示すジグザグ状に移動して厚板の3次元形状を測定している様子を説明する平面図である。
図5】水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付角度の取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが校正部材としての定盤の上面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyがある状態でツールに取り付けられた距離センサが校正部材としての定盤の上面に対してレーザー光を照射している状態の説明図である。
図6】水平一軸(x軸)回りの距離センサの取付角度の取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxがある状態でツールに取り付けられた距離センサがキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(c)はキャリブレーションブロックの2つの水平面の既知の高さの差hと水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxがある状態でツールに取り付けられた距離センサがキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射したときのキャリブレーションブロックの2つの水平面の高さの差herrとの幾何的関係を示す図である。
図7】鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度の取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzがある状態でツールに取り付けられた距離センサの平面図、(c)は鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzがある状態でツールに取り付けられた距離センサが異なる2方向の測定経路a,bでキャリブレーションブロックを測定する説明図、(d)は(c)の方法で異なる2方向の測定経路a,bでキャリブレーションブロックを測定した2つの3次元形状測定データのそれぞれについて座標変換した2つの座標変換値を重ね合わせて2つの座標変換値が一致する取付角度を算出する方法を説明するための図である。
図8】3次元形状測定装置を用いて距離センサの水平二軸(y軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図9】3次元形状測定装置を用いて距離センサの水平一軸(x軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図10】3次元形状測定装置を用いて距離センサの鉛直軸(z軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図11】自動切断装置の変形例を用いて厚板の3次元形状を測定する方法を説明するための平面図である。
図12】本発明の校正方法によって水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例の効果を説明するためのグラフである。
図13】本発明の校正方法によって鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例を説明するもので、距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのスコヤに対してレーザー光を照射している状態の説明図である。
図14】本発明の校正方法によって鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例を説明するもので、(a)は図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを示す説明図、(b)は図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを示す説明図である。
図15】本発明の校正方法によって鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例を説明するもので、(a)は図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°にて座標変換した座標変換値と図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°にて座標変換した座標変換値とを重ね合わせた図、(b)は図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°からΔθz=-2.5°だけ変化させた取付角度42.5°にて座標変換した座標版権値と図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°からΔθz=-2.5°だけ変化させた取付角度42.5°にて座標変換した座標変換値とを重ね合わせた図である。
図16図1に示す自動切断装置において、距離センサの取付角度を校正する前の状態で切断後の厚板の形状を測定する比較例と、図1に示す自動切断装置において、距離センサの取付角度を校正した状態で切断後の厚板の形状を測定する実施例とにおける厚板の形状を測定する方法を説明するための図である。
図17】比較例による測定結果を示すグラフである。
図18】実施例による測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
(自動切断装置の全体構成)
図1には、本発明の一実施形態に係る自動加工装置としての自動切断装置の概略構成が示されている。
【0013】
図1に示す自動切断装置1は、門型切断機であり、x方向(水平方向)に延びるように敷設された一対のレール2上を、車輪(図示せず)を介して走行可能な門型の台車3を備えている。
台車3の側面には、y方向(x方向と直交する水平方向)に直動可能なツール4が設けられている。また、ツール4には、取付角度調整機構7を介して3次元測定機器としての距離センサ5がz方向(鉛直方向)に直動可能に取り付けられている。また、ツール4には、ガス切断やレーザー切断、プラズマ切断などの熱切断で台座1a(図4(a)参照)上に載置された厚板Sを切断するための加工機器としての切断トーチ6が設けられている。切断トーチ6は、ツール4に対してz方向(鉛直方向)に直動可能に取り付けられている。距離センサ5及び切断トーチ6は、共にツール4に対して直動可能に取り付けられているが、両者が同期して動く必要はなく、それぞれ独立してz方向に直動可能となっている。
【0014】
3次元形状測定機器としての距離センサ5は、被測定物(厚板S及び後述する定盤13、キャリブレーションブロック14)に対してライン状のレーザー光を照射し、当該被測定物までの距離を測定する光切断法による非接触式の距離センサである。距離センサ5は、図3乃至図7に示すように、レーザー光5cを被測定物に照射し、図示しないカメラで投光されたレーザー光5cを撮影し、画像上でレーザー光5cの投光位置を算出することで被測定物の2次元形状を測定する。そして、距離センサ5を、台車3及びツール4で、x方向及びy方向に移動させ、ツール4の位置座標と距離センサ5で測定した2次元形状の測定データとを逐次演算することで、被測定物の3次元形状を測定する。つまり、距離センサ5は、台車3及びツール4によってx方向及びy方向に移動させる機能を伴って、被測定物の3次元形状を測定する。台車3に取り付ける3次元形状測定機器としては、光切断法による距離センサ5に限らず、被測定物の2次元の形状測定データを測定可能な他の装置を用いてもよい。2次元の形状測定データを測定可能な他の装置としては、例えば2次元LiDARセンサ等の測定原理としてTOF(Time of Flight)方式を使用したセンサ等が挙げられる。
【0015】
取付角度調整機構7は、距離センサ5のツール4に対する取付角度を調整するものである。距離センサ5の取付方向は、図3(a),(b),(c)に示すように、水平方向かつ距離センサ5のレーザー光5c(光軸5b)のライン方向(レーザー光5cが広がる方向)を水平一軸(x軸)方向とする。また、水平方向かつ水平一軸(x軸)に直交する方向を水平二軸(y軸)方向とする。更に、レーザー光5cの光軸5bに平行かつ水平一軸(x軸)方向および水平二軸(y軸)方向にそれぞれ直交する方向を鉛直軸(z軸)方向とする。
そして、取付角度調整機構7は、距離センサ5のレーザー光5cを基準とした座標系に対して、取付方向軸としての水平一軸(x軸)回りに距離センサ5を回転させる回転軸7c(図3(c)参照)を備えている。また、同様に、取付角度調整機構7は、距離センサ5のレーザー光5cを基準とした座標系に対して、取付方向軸としての水平二軸(y軸)回りに距離センサ5を回転させる回転軸7b(図3(a)参照)を備えている。また、同様に、取付角度調整機構7は、距離センサ5のレーザー光5cを基準とした座標系に対して、取付方向軸としての鉛直軸(z軸)回りに距離センサ5を回転させる回転軸7a(図3(b)参照)を備えている。
【0016】
つまり、取付角度調整機構7は、図3(a)に示すように、回転軸7bによって距離センサ5の光軸5bに対して直角方向である水平二軸(y軸)回りに距離センサ5を回転させることが可能である。また、取付角度調整機構7は、図3(b)に示すように、回転軸7aによって距離センサ5の光軸5bに平行である鉛直軸(z軸)回りに距離センサ5を回転させることが可能である。さらに、取付角度調整機構7は、図3(c)に示すように、回転軸7cによって距離センサ5のレーザー光5cのライン方向(測定幅方向)に平行である水平一軸(x軸)回りに距離センサ5を回転させることが可能である。このように、回転軸7a~7cによって距離センサ5の取付角度を可変にすることで、後述する距離センサ5の取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出した際に、距離センサ5の実際の取付角度を修正することも可能となる。
【0017】
また、自動切断装置1は、制御装置8を備えている。制御装置8は、図1及び図2に示すように、制御部9と、校正装置10と、出力部11とを備えている。制御装置8は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、記憶装置(図示せず)にインストールされたコンピュータプログラムの命令に従って、制御部9、校正装置10、及び出力部11の各機能を実行する。
ここで、制御部9は、台車3、ツール4、距離センサ5、及び切断トーチ6などの自動切断装置1の各部材の動作を制御する。
また、校正装置10は、3次元形状測定機器としての距離センサ5の3つの取付方向軸のそれぞれの取付誤差を算出する。具体的に述べると、校正装置10は、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)に対し、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)回りのそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する。このそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する際に、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)ごとに異なる算出方法を用いて算出する。
【0018】
校正装置10は、図2に示すように、取付誤差算出部10aと、取付誤差出力部10bとを備えている。取付誤差算出部10aは、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)ごとに異なる算出方法を用いて水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)回りのそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する。また、取付誤差出力部10bは、取付誤差算出部10aで算出した水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)回りのそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを出力し、モニター等の表示装置でそれらの情報を表示する。
また、出力部11は、距離センサ5の座標変換部5aで座標変換された座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz(移動)座標系における被測定物の位置)を取得し、その座標変換値Σを出力し、その被測定物の3次元形状測定データとしての座標変換値Σをモニター等の表示装置で表示する。
【0019】
そして、前述した3次元形状測定機器としての距離センサ5と、校正装置10とにより3次元形状測定装置12を構成している。
なお、距離センサ5には、図1に示すように、座標変換部5aが設けられている。座標変換部5aは、距離センサ5によって測定されたセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)を、次の(1)式を用いてツール4の移動座標系の座標変換値(ツール4が配置されているxyz(移動)座標系における被測定物の位置)へと座標変換する。座標変換部5aは、演算処理機能を有するコンピュータであり、記憶装置(図示せず)にインストールされたコンピュータプログラムの命令に従って、座標変換機能を実行する。
【0020】
Σ=M+R・R・R・Σ …(1)
ここで、Σはツール4の移動座標系の座標変換値(ツール4が配置されているxyz座標系における被測定物の位置)である。Mはツール4の位置座標である。Rはセンサ座標系の水平一軸(x軸)回りの座標変換行列、Rはセンサ座標系の水平二軸(y軸)回りの座標変換行列、Rはセンサ座標系の鉛直軸(z軸)回りの座標変換行列である。Σはセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)である。
そして、R、R、Rは、それぞれ次の(2)式~(4)式で表される。
【0021】
【数1】
なお、θxは距離センサ5の設計上の水平一軸(x軸)回りの取付角度、θyは距離センサ5の設計上の水平二軸(y軸)回りの取付角度、θzは距離センサ5の設計上の鉛直軸(z軸)回りの取付角度である。
(被測定物としての厚板Sの3次元形状測定方法)
次に、図1に示す自動切断装置1を用いた厚板Sの3次元形状測定方法を説明する。
図4は、自動切断装置を用いて厚板の3次元形状を測定する方法を説明するもので、(a)は厚板を自動切断装置の台座上に載置した状態の平面図、(b)は(a)に示す状態から距離センサが平面視で矢印Aで示すジグザグ状に移動して厚板の3次元形状を測定している様子を説明する平面図である。
【0022】
先ず、厚板Sは、図4(a)に示すように、自動切断装置1の一対のレール2間の台座1a上に載置される。
そして、図4(b)に示すように、制御部9は、測定対象の厚板Sに対し、矢印Aで示すように、平面視でジグザグ状に距離センサ5を移動させるよう台車3及びツール4を制御し、距離センサ5が厚板Sの3次元形状を測定する。
そして、距離センサ5によって測定したセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σは、座標変換部5aにおいて、前述の(1)式を用いてツール4の移動座標系の座標変換値(ツール4が配置されているxyz(移動)座標系における被測定物の位置)へと座標変換される。
【0023】
なお、距離センサ5の設計上の水平一軸(x軸)回りの取付角度θx、距離センサ5の設計上の水平二軸(y軸)回りの取付角度θy、及び距離センサ5の設計上の鉛直軸(z軸)回りの取付角度θzは、予め、作業者によって図示しない入力装置から座標変換部5aに入力されている。
また、ツール4のx方向、y方向及びz方向の位置座標Mは、各方向のアクチュエータの回転量をロータリーエンコーダによって取得し、その取得した情報が座標変換部5aに入力される。
そして、座標変換部5aで座標変換されたツール4の移動座標系の座標変換値(ツール4が配置されているxyz座標系の厚板Sの位置)Σが出力部11に送出され、出力部11は、座標変換値Σを出力し、その被測定物の3次元形状測定データとしての座標変換値Σをモニター等の表示装置で表示する。
(距離センサの取付誤差の校正方法)
距離センサ5のツール4に対する取付角度が設計上の取付角度θx、θy、θzと異なる取付角度で前述の(1)式により、ツール4の移動座標系の座標変換値(ツール4が配置されているxyz座標系の被測定物(厚板S)の位置)Σを算出した場合、測定値に誤差が生じる。このため、距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付角度の取付誤差Δθx、距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付角度の取付誤差Δθy、及び距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付角度の取付誤差Δθzを算出し、その誤差を校正する必要がある。
【0024】
本実施形態においては、校正装置10は、距離センサ5の水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)に対し、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)回りのそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する。このそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する際に、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)ごとに異なる算出方法を用いる。
A.距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyの算出方法
距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyの算出方法について、図5及び図8を参照して説明する。図5は、水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが校正部材としての定盤の上面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyがある状態でツールに取り付けられた距離センサが校正部材としての定盤の上面に対してレーザー光を照射している状態の説明図である。図8は、3次元形状測定装置を用いて距離センサの水平二軸(y軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0025】
先ず、図8に示すステップS1において、作業者は、水平出しした水平面13a(図5(a),(b)参照)を有する校正部材としての定盤13を自動切断装置1の台座1a上に載置する。定盤13は、可搬式で定盤13の傾斜を調整可能なアジャスタを有するものが望ましい。
次いで、ステップS2において、作業者は、制御部9、校正装置10、及び距離センサ5の座標変換部5aに水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyの算出指令を入力するとともに、3次元形状測定装置12を起動させる。
次いで、ステップS3において、3次元形状測定機器としての距離センサ5は、定盤13の水平面13aを測定する(定盤測定工程)。この際に、制御部9が台車3及びツール4を制御し、距離センサ5の位置を制御する。
【0026】
次いで、ステップS4において、校正装置10の取付誤差算出部10aは、ステップS3において、距離センサ5が測定した、水平出しした水平面13aを有する定盤13の水平面13aの形状データを取得する。そして、取付誤差算出部10aは、取得した水平面13aの形状データを1次関数に近似して水平面13aの傾きを算出することにより、距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyを算出する(算出工程)。
ここで、距離センサ5の取付角度に誤差が生じている場合は、図5(b)に示すように、距離センサ5で測定された定盤13の水平面13aの形状データが距離センサ5の取付誤差Δθyだけ傾いて出力される。距離センサ5の座標変換部5aは、距離センサ5で測定された水平面13aの形状データを座標変換することなく、その形状データを校正装置10の取付誤差算出部10aに送出する。取付誤差算出部10aは、その定盤13の水平面13aの形状データを取得し、取得した水平面13aの形状データを1次関数に近似し、水平面13aの傾きを算出することで、距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyを算出する。
【0027】
次いで、ステップS5において、校正装置10の取付誤差出力部10bは、ステップS4において、取付誤差算出部10aで算出した水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyを出力し、モニター等の表示装置でそれらの情報を表示する(取付誤差出力工程)。
B.距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxの算出方法
距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxの算出方法について、図6及び図9を参照して説明する。図6は、水平一軸(x軸)回りの距離センサの取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxがある状態でツールに取り付けられた距離センサがキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(c)はキャリブレーションブロックの2つの水平面の既知の高さの差hと水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxがある状態でツールに取り付けられた距離センサがキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射したときのキャリブレーションブロックの2つの水平面の高さの差herrとの幾何的関係を示す図である。図9は、3次元形状測定装置を用いて距離センサの水平一軸(x軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0028】
先ず、図9に示すステップS11において、作業者は、互いに平行かつ高さが異なり、水平出しした高さの差hが既知の2つの水平面14a,14b(図6(a),(b),(c)参照)を有する校正部材としてのキャリブレーションブロック14を、定盤13上に載置する。
次いで、ステップS12において、作業者は、制御部9、校正装置10、及び距離センサ5の座標変換部5aに水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxの算出指令を入力するとともに、3次元形状測定装置12を起動させる。
次いで、ステップS13において、3次元形状測定機器としての距離センサ5は、キャリブレーションブロック14の2つの水平面14a,14bの高さの差herr(図6(c)参照)を測定する(高さの差測定工程)。この際に、制御部9が台車3及びツール4を制御し、距離センサ5の位置を制御する。なお、図6(a),(b),(c)に示す例では、2段のキャリブレーションブロック14の上段と中段の2つの水平面14a,14bを測定対象としたが、1段のキャリブレーションブロック14の上段の水平面14aと定盤13の水平面の2面を測定対象としてもよい。
【0029】
次いで、ステップS14において、校正装置10の取付誤差算出部10aは、ステップS13において、距離センサ5が測定した、水平出しした高さの差hが既知の2つの水平面14a,14bを有するキャリブレーションブロック14の2つの水平面14a,14bの高さの差herrのデータを取得する。そして、取付誤差算出部10aは、既知の高さの差hと取得した高さの差herrのデータとに基づいて次の(5)式により距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxを算出する(算出工程)。
Δθx=tan-1(h/herr) …(5)
ここで、距離センサ5の座標変換部5aは、距離センサ5で測定された高さの差herrのデータを座標変換することなく、その高さの差herrのデータを校正装置10の取付誤差算出部10aに送出する。
【0030】
次いで、ステップS15において、校正装置10の取付誤差出力部10bは、ステップS14において、取付誤差算出部10aで算出した水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxを出力し、モニター等の表示装置でそれらの情報を表示する(取付誤差出力工程)。
C.距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzの算出方法
距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzの算出方法について、図7及び図10を参照して説明する。図7は、鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付誤差の算出方法を説明するもので、(a)は距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのキャリブレーションブロックの2つの水平面に対してレーザー光を照射している状態の説明図、(b)は鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzがある状態でツールに取り付けられた距離センサの平面図、(c)は鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzがある状態でツールに取り付けられた距離センサが異なる2方向の測定経路a,bでキャリブレーションブロックを測定する説明図、(d)は(c)の方法で異なる2方向の測定経路a,bでキャリブレーションブロックを測定した2つの3次元形状測定データのそれぞれについて座標変換した移動座標系の座標変換値を重ね合わせて2つの移動座標系の座標変換値が一致する取付角度を算出する方法を説明するための図である。図10は、3次元形状測定装置を用いて距離センサの鉛直軸(z軸)回りの取付誤差を算出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0031】
先ず、図10に示すステップS111において、作業者は、図7(a)に示すように、校正部材としての水平面14a,14bを有する平面視で正方形のキャリブレーションブロック14を、定盤13上に載置する。なお、キャリブレーションブロック14の形状は、水平面14a,14bを有する平面視で正方形の立体形状に限らず、立方体、円柱体、あるいは直方体などでもよい。
次いで、ステップS112において、作業者は、制御部9、校正装置10、及び距離センサ5の座標変換部5aに鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzの算出指令を入力するとともに、3次元形状測定装置12を起動させる。また、作業者は、設計上の距離センサ5の取付角度θx、θy、θz及び座標変換する設計上の距離センサ5の取付角度θz±θの範囲における微小な角度dθzの情報を距離センサ5の座標変換部5aに入力する。
【0032】
次いで、ステップS113において、3次元形状測定機器としての距離センサ5は、図7(c)に示すように、異なる直交する2方向の測定経路a,bからキャリブレーションブロック14を測定する(キャリブレーションブロック異方向測定工程)。この際に、制御部9が台車3及びツール4を制御し、距離センサ5の位置を制御する。なお、測定経路a,bの測定方向は、互いに直交しているが、必ずしも測定方向が直交している場合に限られない。
次いで、ステップS114において、距離センサ5の座標変換部5aは、ステップS113において測定した2つの3次元形状測定データ(測定経路a及び測定経路bで測定した2つのデータ)のそれぞれについて(1)式を用いて座標変換する。この座標変換の際に、当該測定した2つの3次元形状測定データ(測定経路a及び測定経路bで測定した2つのデータ)のそれぞれについて、設計上の取付角度θzから±θの範囲において微小な角度dθzごとに(1)式を用いて座標変換する。そして、2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを算出する(座標変換工程)。この際に、(1)式に導入する設計上の距離センサ5の取付角度θx、θy、θz及び座標変換する設計上の距離センサ5の取付角度θz±θの範囲における微小な角度dθzの情報は、ステップS112で座標変換部5aに入力されたものである。また、ツール4の位置座標Mは各x方向、y方向、z方向のアクチュエータの回転量をロータリーエンコーダによって取得し、その取得した情報が座標変換部5aに入力される。
【0033】
ステップS113において測定した2つの3次元形状測定データ(測定経路a及び測定経路bで測定した2つのデータ)のそれぞれについて、設計上の取付角度θzで(1)式を用いて座標変換し、図7(d)に示すように、移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを算出する。すると、距離センサ5の取付角度(θz)に誤差がある場合には、図7(d)の図形15a,15bに示すように、測定したキャリブレーションブロック14の形状が歪んで算出される。形状の歪みは測定経路によって異なる。
そこで、本実施形態にあっては、ステップS114において、距離センサ5の座標変換部5aは、ステップS113において測定した2つの3次元形状測定データのそれぞれについて、設計上の取付角度θzから±θの範囲において微小な角度dθzごとに(1)式を用いて座標変換し2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを算出する。そして、次の、ステップS115において、校正装置10が、2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bが一致する取付角度を算出し、距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzを算出するようにしている。
【0034】
次いで、ステップS115において、校正装置10の取付誤差算出部10aは、ステップS114において、距離センサ5の座標変換部5aが座標変換した2つの移動座標系の座標変換値Σr,a((図7(d)において符号15aで示される図形)、Σr,b図7(d)において符号15bで示される図形)を取得する。そして、取付誤差算出部10aは、取得した2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを重ね合わせて2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bが一致する取付角度を算出する。これにより、距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzを算出する(算出工程)。図7(d)においては、一致する座標変換値Σr,a、Σr,bは、それぞれ符号16aで示される図形、16bで示される図形となっている。
【0035】
ここで、2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bが一致するとは、移動座標系の座標変換値Σr,aの3次元の点群データのエッジ部と、移動座標系の座標変換値Σr,b3次元の点群データのエッジ部とが重なることを意味する。ここで、「重なる」とは、当該エッジ部同士の距離が1.0mm以下になることをいう。
例えば、設計上の距離センサ5の取付角度θzが45°でその±3°の範囲において0.1°ごとに座標変換する場合、42.0°、42.1°、42.2°、・・・、47.9°、48.0°と順次、2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを算出する。そして、2つの移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを重ねてΣr,a、Σr,bの3次元の点群データのエッジ部同士が重なった際の角度が取付角度θz±取付誤差Δθzとなる。
【0036】
次いで、ステップS116において、校正装置10の取付誤差出力部10bは、ステップS115において、取付誤差算出部10aで算出した鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzを出力し、モニター等の表示装置でそれらの情報を表示する(取付誤差出力工程)。
D.距離センサ5の取付角度の校正
本実施形態では、前述のA~Cの方法で取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出した後、算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθzに基づいて距離センサ5の取付角度を校正する。
【0037】
距離センサ5の取付角度の校正方法としては、例えば、距離センサ5の取付角度を算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分だけ直接修正する方法が挙げられる。また、前述の(1)式を用いてセンサ座標系の測定値Σをツール4の移動座標系の座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz座標系における被測定物の位置)へと座標変換する際に、座標変換列R、R、Rを補正する方法もある。
前者の距離センサ5の取付角度を直接修正する場合には、距離センサ5の取付角度を算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分だけ修正した後、距離センサ5を用いて被測定物の3次元形状を測定する。
【0038】
一方、後者の座標変換列R、R、Rを補正する場合には、距離センサ5の取付角度を修正せずに、距離センサ5を用いて被測定物の3次元形状を測定する。そして、センサ座標系の測定値Σを座標変換部5aで座標変換する際に、算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分を考慮して(1)式における座標変換列R、R、Rの値を補正する。具体的には、算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを(2)~(4)式における設計上の取付角度θx、θy、θzに足して補正した座標変換列R、R、Rを次の(6)~(8)式により算出する。そして、これら補正した座標変換列R、R、Rにセンサ座標系の測定値Σを掛け合わせ、ツール4の位置座標を足して(1)式によりツール4の移動座標系の座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz座標系における被測定物の位置)を求める。
【0039】
【数2】
(自動切断装置1を用いた厚板の切断方法)
本実施形態に係る自動切断装置1を用いて厚板Sの切断加工を行う際に、事前に距離センサ5の取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出しておく。即ち、自動切断装置1の台座1a上に厚板Sを載置する前に、前述のA~Cの方法で距離センサ5の取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する。そして、距離センサ5の取付角度の校正方法として、距離センサ5の取付角度を算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分だけ直接修正する場合には、この時点で距離センサ5の取付角度を修正する。
【0040】
次いで、切断前の厚板Sを自動切断装置1の台座1a上に載置し、距離センサ5を用いて厚板Sの3次元形状を測定する。そして、距離センサ5で測定したセンサ座標系の測定値Σを座標変換部5aにおいて(1)式によりツール4の移動座標系の座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz座標系における厚板Sの位置)へと座標変換する。距離センサ5の取付角度の校正方法として座標変換列R、R、Rを補正する場合には、この時点でセンサ座標系の測定値Σを座標変換部5aで座標変換する際に、算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分を考慮して(1)式における座標変換列R、R、Rの値を補正する。そして、これら補正した座標変換列R、R、Rにセンサ座標系の測定値Σ(距離センサ5で測定した3次元形状測定データ)を掛け合わせ、ツール4の位置座標を足して(1)式によりツール4の移動座標系の座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz座標系における厚板Sの位置)を求める。
【0041】
そして、ツール4の移動座標系の座標変換値Σ(ツール4が配置されているxyz座標系における厚板Sの位置)から厚板Sの切断位置を決定し、自動切断装置1は切断位置に沿ってツール4の位置合わせを行い、切断トーチ6によって厚板Sを切断する。これにより、指定された製品寸法の厚板製品を切り出す。
その後、切り出した厚板製品の3次元形状を距離センサ5を用いて再び測定し、距離センサ5で測定したセンサ座標系の測定値Σを座標変換部5aにおいて(1)式によりツール4の移動座標系の座標変換値Σへと座標変換し、切り出した厚板製品の寸法が指定された寸法になっているかを確認する。距離センサ5の取付角度の校正方法として座標変換列R、R、Rを補正する場合には、この時点でセンサ座標系の測定値Σを座標変換部5aで座標変換する際に、算出した取付誤差Δθx、Δθy、Δθz分を考慮して(1)式における座標変換列R、R、Rの値を補正する。そして、これら補正した座標変換列R、R、Rにセンサ座標系の測定値Σを掛け合わせ、ツール4の位置座標を足して(1)式によりΣ:移動座標系(ツール4が配置されているxyz座標系の厚板Sの位置)を求める。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る3次元形状測定機器の校正方法によれば、校正装置10によって、3次元形状測定機器としての距離センサ5の3つの取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))に対し、3つの取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する算出工程(ステップS14、ステップS4、ステップS115)を含む。この算出工程の際に、取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))ごとに異なる算出方法を用いて3つの取付方向軸回りのそれぞれの取付誤差を算出する。
これにより、各々の取付方向軸に対応する最適な算出方法を用いて3次元形状測定機器としての距離センサ5の取付誤差を算出することができ、距離センサ5の3つの取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))回りの取付誤差を精度高く算出することができる。
【0043】
また、1つの算出方法で1つの取付方向軸回りの取付誤差のみを算出するため、各算出方法の装置構成や算出工程を簡略化することができる。
また、実施形態に係る3次元形状測定機器の校正方法によれば、校正装置10によって、3次元形状測定機器としての距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付誤差を算出する算出工程(ステップS14)において、次の処理を行う。即ち、距離センサ5が測定した(ステップS13で測定した)、水平出しした高さの差hが既知の2つの水平面14a,14bを有する校正部材としてのキャリブレーションブロック14の2つの水平面14a,14bの高さの差herrのデータを校正装置10が取得する。そして、校正装置10は、既知の高さの差hと取得した高さの差herrのデータとに基づいて前述の(5)式により距離センサ5の水平一軸回りの取付誤差Δθxを算出する(ステップS14)。
【0044】
これにより、簡単な方法で精度高く距離センサ5の水平一軸回りの取付誤差Δθxを算出することができる。
また、本実施形態に係る3次元形状測定機器の校正方法によれば、校正装置10によって、3次元形状測定機器としての距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差を算出する算出工程(ステップS4)において、次の処理を行う。即ち、校正装置10は、距離センサ5が測定した(ステップS3で測定した)、水平出しした水平面13aを有する校正部材としての定盤13の水平面13aの形状データを取得する。そして、校正装置10は、その取得した水平面13aの形状データを1次関数に近似して水平面13aの傾きを算出することにより、距離センサ5の水平二軸回りの取付誤差Δθyを算出する(ステップS4)。
【0045】
これにより、簡単な方法で精度高く距離センサ5の水平二軸軸回りの取付誤差Δθyを算出することができる。
また、本実施形態に係る3次元形状測定機器の校正方法によれば、校正装置10によって、3次元形状測定機器としての距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差を算出する算出工程(ステップS115)において、次の処理を行う。即ち、距離センサ5が異なる2方向の測定経路a,bから校正部材としてのキャリブレーションブロック14をそれぞれ測定して得られた2つの3次元形状測定データ(センサ座標系の測定値)Σのそれぞれについて、設計上の取付角度θzから±θの範囲において微小な角度dθzごとに座標変換した2つの座標変換値Σr,a、Σr,bを校正装置10が取得する。そして、校正装置10は、その取得した2つの座標変換値Σr,a、Σr,bを重ね合わせて2つの座標変換値Σr,a、Σr,bが一致する取付角度を算出することにより、距離センサ5の鉛直軸回りの取付誤差Δθzを算出する(ステップS115)。
【0046】
これにより、簡単な方法で精度高く距離センサ5の鉛直軸回りの取付誤差Δθzを算出することができる。
また、本実施形態に係る3次元形状測定装置12によれば、被測定物の3次元形状を測定する3次元形状測定機器としての距離センサ5と、校正装置10とを備えている。校正装置10は、距離センサ5の3つの取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))に対し、3つの取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))回りのそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する。このそれぞれの取付誤差Δθx、Δθy、Δθzを算出する際に、取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))ごとに異なる算出方法を用いる。
【0047】
これにより、校正装置10が、各々の取付方向軸に対応する最適な算出方法を用いて3次元形状測定機器としての距離センサ5の取付誤差を算出することができる。このため、距離センサ5の3つの取付方向軸(水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸))回りの取付誤差を精度高く算出することができる。
また、本実施形態に係る自動加工装置としての自動切断装置1によれば、前述の3次元形状測定装置12と、被測定物としての厚板Sの加工を行う加工機器としての切断トーチ6とを備えている。そして、3次元形状測定機器としての距離センサ5は、切断トーチ6による加工前及び加工後の少なくとも一方の厚板Sの3次元形状を測定する。
【0048】
これにより、3次元形状測定装置12の校正装置10が、各々の取付方向軸に対応する最適な算出方法を用いて3次元形状測定機器としての距離センサ5の取付誤差を精度高く算出することができるので、切断トーチ6による加工前及び加工後の少なくとも一方の厚板Sの3次元形状を精度高く測定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、距離センサ5の取付方向軸である水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)の3軸全てについて距離センサ5の取付誤差を求める必要は必ずしもなく、必要な軸についてのみ誤差を算出すればよい。例えば、鉛直方向(z方向)に設置した切断トーチ6を水平方向(y方向)に動かして厚板Sを切断する場合には、距離センサ5の水平一軸(x軸)回りの取付誤差Δθxを考慮する必要はない。このため、水平二軸(y軸)と鉛直軸(z軸)の2軸回りの取付誤差のみを校正すればよい。
【0049】
また、距離センサ5の取付方向軸は、水平一軸(x軸)、水平二軸(y軸)、及び鉛直軸(z軸)の3軸であるが、3軸に限らず、複数軸あればよい。
また、3次元測定機器としての距離センサ5を自動切断装置1に取り付け、被測定物としての厚板Sを切断する場合について説明したが、3次元形状測定装置12を単独で設置することも可能である。また、3次元形状測定装置12を、自動切断装置1以外の被測定物の各種自動加工装置に取り付けることも可能である。さらに、被測定物についても、厚板Sには限らず、3次元形状測定装置12は、様々な物体の3次元形状の測定に適応することができる。
【0050】
また、自動切断装置1についても、切断トーチ6や距離センサ5を被測定物に対して相対移動させることができる構成であれば門型の切断機に限らない。
また、3次元形状測定機器としての距離センサ5は、加工機器としての切断トーチ6による被測定物としての厚板Sの加工前及び加工後の双方の場合に厚板Sの3次元形状を測定している。しかし、この場合に限らず、厚板Sの加工前及び加工後の少なくとも一方において厚板Sの3次元形状を測定するようにすればよい。
また、自動切断装置1を用いて厚板Sの3次元形状を測定するに際し、図11に示すように、距離センサ5を門型の台車3の幅方向に複数台設置して、複数台の距離センサ5をそれぞれ矢印B方向(x方向)のみに走査させて厚板Sの3次元形状を測定する構成としてもよい。
【実施例0051】
(1)本発明の校正方法によって水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例について、図12を参照して説明する。図12は、本発明の校正方法によって水平二軸(y軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例の効果を説明するためのグラフである。
前述したAで示す距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyの算出方法において、距離センサ5が水平出しした定盤13の水平面13aを測定し、その距離センサ5が測定した水平面13aの形状データを校正装置10が取得した。そして、校正装置10は、その取得した水平面13aの形状データを1次関数に近似して水平面13aの傾きを算出した。その結果、水平面13aの傾きは0.51°であった。これにより、校正装置10において、距離センサ5の水平二軸(y軸)回りの取付誤差Δθyは0.51°と算出された。
そして、作業者は、水平二軸(y軸)回りの距離センサ5の取付角度を0.51°だけ補正し、定盤13の水平面13aを測定した。その結果、図12に示すように、定盤13の水平面13aの傾きは0°近傍となった。
【0052】
(2)本発明の校正方法によって鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例について、図13乃至図15を参照して説明する。図13は、本発明の校正方法によって鉛直軸(z軸)回りの距離センサの取付角度を校正した実施例を説明するもので、距離センサが定盤上に載置された校正部材としてのスコヤに対してレーザー光を照射している状態の説明図である。図14(a)は、図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを示す説明図である。図14(b)は、図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを示す説明図である。図15(a)は、図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°にて座標変換した座標変換値と図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°にて座標変換した座標変換値とを重ね合わせた図である。図15(b)は、図13に示す測定経路aでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°からΔθz=-2.5°だけ変化させた取付角度42.5°にて座標変換した座標版権値と図13に示す測定経路bでスコヤを測定した3次元形状測定データを設計上の距離センサの取付角度θz=45°からΔθz=-2.5°だけ変化させた取付角度42.5°にて座標変換した座標変換値とを重ね合わせた図である。
【0053】
前述したCで示す距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzの算出方法において、距離センサ5は、図13に示すように、異なる直交する2方向の測定経路a,bからスコヤTを測定した。その結果、図13に示す測定経路aでスコヤTを測定したセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σaは図14(a)に示すようになり、図13に示す測定経路bでスコヤTを測定したセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σbは図14(b)に示すようであった。
そして、距離センサ5の座標変換部5aは、距離センサ5で測定したセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σa及びセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σbのそれぞれについて、設計上の距離センサの取付角度θz==45°にて(1)式を用いて座標変換した移動座標系の座標変換値Σr,a、Σr,bを算出した。この際に、設計上の距離センサの取付角度θxは0°、θyは0°とした。
【0054】
そして、校正装置10は、その算出された両座標変換値Σr,a、Σr,bを取得し、図15(a)に示すように重ね合わせた。その結果、両座標変換値Σr,a、Σr,bの間に4.07mmの誤差があった。
また、距離センサ5の座標変換部5aは、距離センサ5で測定したセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σa及びセンサ座標系の測定値(3次元形状測定データ)Σbのそれぞれについて、設計上の距離センサの取付角度θz:45°-取付誤差Δθz:2.5°=42.5°にて(1)式を用いて座標変換した移動座標系の座標変換値Σr,a’、Σr,b’を算出した。この際に、設計上の距離センサの取付角度θxは0°、θyは0°と変わらない。
そして、校正装置10は、両座標変換値Σr,a’、Σr,b’を取得し、図15(b)に示すように重ね合わせた。その結果、両座標変換値Σr,a’、Σr,b’の間の誤差が0.37mmとなり、ほぼ一致した。これにより、校正装置10は、距離センサ5の鉛直軸(z軸)回りの取付誤差Δθzを2.5°と算出した。
そして、鉛直軸(z軸)回りの距離センサ5の取付角度を2.5°だけ補正した。
【0055】
(3)次に、図1に示す自動切断装置1において、距離センサ5の取付角度を校正する前の状態で切断後の厚板Sの形状を測定した比較例と、図1に示す自動切断装置1において、距離センサ5の取付角度を校正した状態で切断後の厚板Sの形状を測定した実施例とについて、図16乃至図18を参照して説明する。
図16は、図1に示す自動切断装置1において、距離センサ5の取付角度を校正する前の状態で切断後の厚板の形状を測定する比較例と、図1に示す自動切断装置1において、距離センサ5の取付角度を校正した状態で切断後の厚板の形状を測定する実施例とにおける厚板の形状を測定する方法を説明するための図である。図17は、比較例による測定結果を示すグラフである。図18は、実施例による測定結果を示すグラフである。
比較例では、図16において、距離センサ5の取付角度を校正する前の状態で切断後の厚板Sの形状を矢印Cで示す方向に沿って測定し、厚板Sの長手方向の寸法lx及び厚板Sの幅方向の寸法lyを求めた。そして、メジャーを用いて手計測によって切断後の厚板Sの形状を測定し、厚板Sの長手方向の寸法Lx及び厚板Sの幅方向の寸法Lyを求めた。
【0056】
そして、メジャーを用いて手計測によって測定して求めたLx,Lyと、比較例による方法で測定して求めたlx、lyとの差を測定誤差dx、dyとした。
dx=Lx-lx
dy=Ly-ly
測定誤差dx、dyの結果を図17及び表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
図17及び表1に示すように、メジャーを用いて手計測によって測定して求めたLx,Lyと、比較例による方法で測定して求めたlx、lyとの測定誤差dx、dyについては、測定誤差dxは最大で約3mm、測定誤差dyは最大で約7.5mmあり、非常に大きかった。
これに対し、実施例では、図16において、距離センサ5の取付角度を校正した後の状態で切断後の厚板Sの形状を矢印Cで示す方向に沿って測定し、厚板Sの長手方向の寸法lx及び厚板Sの幅方向の寸法lyを求めた。そして、メジャーを用いて手計測によって切断後の厚板Sの形状を測定し、厚板Sの長手方向の寸法Lx及び厚板Sの幅方向の寸法Lyを求めた。
そして、メジャーを用いて手計測によって測定して求めたLx,Lyと、実施例による方法で測定して求めたlx、lyとの差を測定誤差dx、dyとした。
dx=Lx-lx
dy=Ly-ly
測定誤差dx、dyの結果を図18及び表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
図18及び表2に示すように、メジャーを用いて手計測によって測定して求めたLx,Lyと、実施例による方法で測定して求めたlx、lyとの測定誤差dx、dyについては、測定誤差dxは最大で約0.86mm、測定誤差dyは最大で約0.96mmあり、比較例に比べ測定誤差が減少することが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 自動切断装置(自動加工装置)
1a 台座
2 レール
3 台車
4 ツール
5 距離センサ(3次元形状測定機器)
5a 座標変換部
5b 光軸
5c レーザー光
6 切断トーチ(加工機器)
7 取付角度調整機構
7a 回転軸
7b 回転軸
7c 回転軸
8 制御装置
9 制御部
10 校正装置
10a 取付誤差算出部
10b 取付誤差出力部
11 出力部
12 3次元形状測定装置
13 定盤(校正部材)
13a 水平面
14 キャリブレーションブロック(校正部材)
14a 水平面
14b 水平面
S 厚板(被測定物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18