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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071000
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0444 20160101AFI20240517BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240517BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240517BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240517BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240517BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181683
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】福間 一教
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA02
5H127AA03
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA43
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB13
5H127BB18
5H127BB23
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DB14
5H127DB15
5H127DB34
5H127DB35
5H127DB53
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC55
5H127EE23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転中に正確に不純物濃度を求めることができ、不要なパージを減らすことで、燃料ガス又は酸化剤ガスの損失を抑制できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池16から排出されたガスを再び燃料電池16に戻すガス循環経路12、14と、ガス循環経路12、14のガスの容積を増減させる容積調整部23、25と、燃料電池16の電圧を検出する電圧センサ17と、容積調整部23、25を制御してガスの容積を増加させる容積制御部28bと、ガスの容積の増加による燃料電池16の電圧変化から、ガスの不純物量を推定する推定部28aと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、
前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、
前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、
前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、
前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量を推定する推定部と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路は、排出された前記ガスから水を除去する気液分離器を有し、
前記容積調整部は、前記気液分離器の内部の前記ガスの容積を調整する、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池システムであって、
前記容積調整部は、前記気液分離器の水を排水する排水弁を有し、
前記容積制御部は、前記排水弁を制御して、前記ガスの容積を増加させる、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2記載の燃料電池システムであって、
前記容積調整部は、前記気液分離器の容積を変動させるピストンと前記ピストンを駆動するアクチュエータとを有し、
前記容積制御部は、前記アクチュエータを制御して、前記ガスの容積を増加させる、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出するパージ弁と、
前記ガスの前記不純物量が所定値を越えた場合に前記パージ弁を制御して前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出させるパージ制御部と、を有する、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池システムであって、
前記パージ制御部は、前記ガスの前記不純物量に基づいて前記ガスのパージ量を調整する、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記ガスは水素ガスである、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記ガスは酸素ガスである、燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路は、前記燃料電池のカソード及びアノードにそれぞれ設けられ、
前記容積制御部は、前記カソードの前記ガス循環経路及び前記アノードの前記ガス循環経路の容積を異なる時間に増加させ、
前記推定部は、前記アノードの前記ガス循環経路に含まれる不純物量と前記カソードの前記ガス循環経路に含まれる不純物量とをそれぞれ推定する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいて、燃料電池に供給するガスを循環させる場合がある。このような燃料電池システムで長期間の発電を行うと、循環するガスに徐々に不純物(ガス)が蓄積され、燃料電池の発電性能に悪影響を及ぼすことが知られている。このため、不純物がある程度蓄積された状態で不純物を外部に排出するパージ処理が行われる。
【0003】
特許文献1には、パージ処理を適切に行うために、燃料電池の電流密度と不純物が蓄積する速度との関係を予め求めておき、所定時間毎に燃料電池の電流密度を検出して、不純物の蓄積量を推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-146877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、パージ間隔が長くなると誤差が大きくなるという問題があり、さらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量を推定する推定部と、を備える、燃料電池システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池システムによれば、運転中に正確に不純物濃度を求めることができ、不要なパージを減らすことで、燃料ガス又は酸化剤ガスの損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
図2図2Aは、水素循環経路の水素ガスの容積を増加させる前の気液分離器の水位を示す図であり、図2Bは、水素循環経路の水素ガスの容積を増加させた後の気液分離器の水位を示す図である。
図3図3は、燃料電池のセル電圧と、燃料ガスの不純物濃度と、の関係を示すグラフである。
図4図4は、図1の制御部の動作を示すフローチャートである。
図5図5Aは、実験例に係るセル電圧の測定結果を示すグラフであり、図5Bは実験例で求めた不純物濃度と電圧変化(dv)との関係を示すグラフである。
図6図6は、実施形態の変形例3に係る気液分離器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
図1に示される実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガスを循環させて発電に利用するシステムである。ここでは、燃料ガスとして水素を使用し、酸化剤ガスとして酸素(純酸素)を使用する例について説明する。燃料電池システム10は、図示の構成例において、水素は水素循環経路12から供給され、酸素は酸素循環経路14から供給される構成となっている。このような燃料電池システム10は、酸化剤ガスとして空気が供給されない環境でも動作できる。なお、燃料電池システム10は、酸化剤ガスとして空気を取り込み、水素のみを水素循環経路12で循環させる構成としてもよい。
【0011】
図1に示されるように、燃料電池システム10は、水素循環経路12と、酸素循環経路14と、燃料電池16と、水素タンク18と、酸素タンク20と、第1気液分離器22と、第1容積調整部23と、第2気液分離器24と、第2容積調整部25と、水タンク26と、制御装置28とを主に備える。
【0012】
燃料電池16は、例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、又はアルカリ電解質型燃料電池(AFC)である。ここでは、燃料電池16として、固体高分子型燃料電池(PEFC)を採用する例に基づいて説明する。
【0013】
燃料電池16は、高分子電解質膜をアノードとカソードとで挟んだ膜電極接合体を有する。膜電極接合体は、セパレータで挟まれて1つの発電セルを構成する。燃料電池16は、発電セルを数十層~数百層積層した燃料電池スタックを含む。各発電セルのアノードには、水素が供給される。また、各発電セルのカソードには酸素が供給される。燃料電池16は、水素と酸素との電気化学反応により、発電を行う。燃料電池16の電力出力端子には、電圧センサ17が接続されている。電圧センサ17は、燃料電池16の発電電圧を検出する。電圧センサ17の検出値は、制御装置28に入力される。なお、電圧センサ17は、制御装置28に備えられてもよい。
【0014】
燃料電池16には、水素循環経路12を通じて水素が供給され、酸素循環経路14を通じて酸素が供給される。水素循環経路12は、燃料電池16から排出された水素を燃料電池16に再び供給する経路である。水素循環経路12は、アノード供給路30と、アノード排出路32と、アノード環流路34と、を有する。アノード供給路30は、燃料電池16のアノードに水素を供給する流路である。特に限定されないが、アノード供給路30には、熱交換器36が配置されてもよい。熱交換器36は、燃料電池16に供給される水素の温度を所定温度に維持する。
【0015】
アノード排出路32は、燃料電池16のアノードから水素を排出する流路である。アノード排出路32には、水素と電気化学反応で発生した水とが混合した流体が流れる。アノード排出路32の末端部には、第1気液分離器22が接続されている。
【0016】
第1気液分離器22は、水素と液体状の水とを分離する。第1気液分離器22は、重力を利用して水素と水とを分離する重力式の分離器であってもよい。また、第1気液分離器22は、遠心力を利用して水素と水とを分離する遠心式の分離器であってもよい。水素は、第1気液分離器22のガス回収部38に集められ、分離された水は第1気液分離器22の貯水部40に集められる。
【0017】
ガス回収部38に集められた水素は、アノード環流路34を通じて第1気液分離器22から排出される。一方、貯水部40に貯留された水は、第1排水路42を通じて水タンク26に排水される。第1気液分離器22の排水は、第1排水弁44(第1容積調整部23)によって行われる。
【0018】
第1気液分離器22の内部の容積は、水素の容積と水の容積との和である。第1気液分離器22の排水が行われると、水の排水量の分、水素の容積が増加する。すなわち、第1排水弁44は、第1気液分離器22の排水を通じて、水素の容積を調整する第1容積調整部23を構成する。
【0019】
第1気液分離器22は、水の排出量(水素の容積の増加量)を検出するために、第1水量センサ48を備えてもよい。第1水量センサ48の検出値は、制御装置28の容積制御部28bに入力される。なお、第1水量センサ48は必須ではなく、第1水量センサ48の代わりに、第1気液分離器22の第1排水路42に流量センサを設けてもよい。
【0020】
アノード環流路34は、第1気液分離器22から排出された水素をアノード供給路30に戻す流路である。アノード環流路34は、ポンプ50を有してもよい。ポンプ50は、水素循環経路12の内部で水素を循環させる。アノード環流路34を通過した水素は、アノード供給路30を通じて燃料電池16のアノードに供給される。水素循環経路12には、水素補充路52を通じて水素タンク18が接続されている。
【0021】
水素タンク18は、水素を圧縮状体で貯蔵する。水素タンク18の水素は、水素補充路52を通じて水素循環経路12に供給される。水素補充路52は、熱交換器36の上流側のアノード供給路30に接続される。水素補充路52には、減圧弁54が設けられている。減圧弁54は、水素タンク18の高圧状態の水素を減圧して水素循環経路12に供給する。減圧弁54は、水素循環経路12の圧力を所定値に維持する。したがって、燃料電池16による水素の消費にともなって水素循環経路12の水素の量が減少すると、減圧弁54は、水素タンク18の水素を水素循環経路12に供給して、水素循環経路12の圧力を一定に維持する。また、第1気液分離器22の排水が行われた場合にも、減圧弁54は、水素タンク18の水素を水素循環経路12に供給して水素循環経路12の圧力を一定に維持する。
【0022】
水素循環経路12には、水素放出路56と第1パージ弁58とが接続されている。第1パージ弁58は、水素放出路56に設けられている。第1パージ弁58は、パージ制御部28cの制御によって動作し、水素循環経路12の水素を外部に排出(パージ)する。
【0023】
酸素循環経路14は、燃料電池16から排出された酸素を再び燃料電池16に供給する経路である。酸素循環経路14は、カソード供給路60と、カソード排出路62と、第2気液分離器24と、カソード環流路64と、を有する。カソード供給路60は、燃料電池16のカソードに酸素を供給する流路である。カソード供給路60は、熱交換器66を有する。燃料電池16に供給される酸素は、熱交換器66によって所定温度に維持される。
【0024】
カソード排出路62は、燃料電池16から水を含んだ酸素を排出する。カソード排出路62の下流には第2気液分離器24が接続されている。第2気液分離器24は、酸素から水を分離する。第2気液分離器24で分離された酸素は、カソード環流路64のポンプ80を通じてカソード供給路60に戻される。また、第2気液分離器24で回収された水は、第2排水路72を通じて水タンク26に排水される。
【0025】
第2気液分離器24は、第1気液分離器22と同様に構成されており、ガス回収部68と貯水部70と、第2水量センサ78とを有する。第2気液分離器24は、排水を通じて、内部の酸素の容積を増加させることができる。第2気液分離器24の排水は、制御装置28の容積制御部28bで制御された第2排水弁74によって行われる。すなわち、第2排水弁74は、酸素循環経路14の酸素の容積を増減させる第2容積調整部25を構成する。
【0026】
酸素タンク20は、酸素補充路82を通じて酸素循環経路14に酸素を供給する。酸素補充路82は、熱交換器66の上流側のカソード供給路60に接続される。酸素補充路82には、減圧弁84が設けられている。減圧弁84は、酸素タンク20の高圧状態の酸素を減圧して酸素循環経路14に供給する。減圧弁84は、酸素循環経路14の圧力を所定値に維持する。すなわち、燃料電池16による酸素の消費にともなって酸素循環経路14の酸素の量が減少すると、減圧弁84は、酸素タンク20の酸素を酸素循環経路14に供給し、酸素循環経路14の圧力を一定に維持する。また、第2気液分離器24の排水が行われた場合にも、減圧弁84は、酸素循環経路14に酸素を供給して酸素循環経路14の圧力を一定に維持する。
【0027】
酸素循環経路14には、酸素放出路86と第2パージ弁88とが接続されている。第2パージ弁88は、酸素放出路86に設けられている。第2パージ弁88は、制御装置28のパージ制御部28cの制御によって動作し、酸素循環経路14の酸素を外部に排出(パージ)する。
【0028】
制御装置28は、例えば、演算部(処理部)27と記憶部29とを有する。演算部27は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)、すなわち、処理回路(processing circuitry)によって構成され得る。
【0029】
演算部27は、推定部28aと、容積制御部28bと、パージ制御部28cと、を有する。推定部28aと、容積制御部28bと、パージ制御部28cとは、記憶部29に記憶されているプログラムが演算部27によって実行されることによって実現され得る。
【0030】
推定部28aは、水素循環経路12の水素の容積変化及び酸素循環経路14の酸素の容積変化による、燃料電池16の電圧の変化量dV(電圧変化)から水素循環経路12及び酸素循環経路14の内部の不純物量を推定する。
【0031】
容積制御部28bは、第1水量センサ48の検出値に基づいて第1排水弁44を制御して第1気液分離器22の水を排水することで、第1気液分離器22の水素(ガス)の容積を所定量増加させる。また、容積制御部28bは、第2水量センサ78の検出値に基づいて第2排水弁74を制御して第2気液分離器24の水を排水することで、第2気液分離器24の酸素(ガス)の容積を所定量増加させる。
【0032】
パージ制御部28cは、水素循環経路12及び酸素循環経路14の内部の不純物量が所定値を超えた場合に、第1パージ弁58及び第2パージ弁88を制御して、水素循環経路12の水素及び酸素循環経路14の酸素を外部に排出する。
【0033】
なお、推定部28a、容積制御部28b及びパージ制御部28cの少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されるようにしてもよい。また、推定部28a、容積制御部28b及びパージ制御部28cの少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
【0034】
記憶部29は、不図示の揮発性メモリと、不図示の不揮発性メモリとによって構成され得る。揮発性メモリとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等が挙げられ得る。この揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用され、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられ得る。この不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用され、プログラム、テーブル、マップ、並びに近似関数及びそのパラメータ等を記憶する。記憶部29の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0035】
燃料電池システム10は、以上のように構成される。以下、燃料電池システム10における水素循環経路12及び酸素循環経路14の不純物量の検出動作について説明する。燃料電池16は、水素循環経路12を構成する、燃料電池16の内部のアノード部分と、アノード供給路30と、アノード排出路32と、アノード環流路34とを含む経路内の不純物量が増加すると電圧(発電電圧)が低下する。また、燃料電池16は、酸素循環経路14を構成する、燃料電池16の内部のカソード部分と、カソード供給路60と、カソード排出路62と、カソード環流路64とを含む経路内の不純物量が増加すると電圧(発電電圧)が低下する。
【0036】
燃料電池16の電圧は、例えば、上記の水素循環経路12の不純物量(不純物ガスの容積)の増加によって図3に示されるように低下する。なお、図3は、燃料電池16の出力電流値を一定とした条件での変化を示す。図示のように、燃料電池16の電圧は、水素循環経路12の不純物濃度に応じて変化する。そのため、水素循環経路12の所定の不純物濃度の変化に対して、燃料電池16は所定の電圧の変化量dV(V)を生じる。また、燃料電池16の電圧は、上記の酸素循環経路14の不純物量の増加に対しても、図3と同様に不純物濃度の増加に伴って低下する。燃料電池16の電圧は、酸素循環経路14の所定の不純物濃度の変化に対して、所定の電圧の変化量dV(V)を生じる。なお、燃料電池16の電圧は、発電セルの劣化によっても低下するが、劣化が許容範囲内であれば、所定の不純物濃度の変化に対して、燃料電池16の電圧の変化量dV(V)は所定値をとる。
【0037】
ここで、水素循環経路12の容積をVa(L)として考える。ここに不純物量(不純物ガスの容積)M(L)が蓄積しているとする。このとき、不純物濃度は、Da=M/Vaとなる。
【0038】
次に、図2A及び図2Bに示すように、第1気液分離器22の排水動作により、水素循環経路12容積がVbに増加する場合を考える。なお、第1気液分離器22の排水動作は、比較的短い時間で完了するため、実質的に不純物量Mは一定と見なせる。
【0039】
図3に示されるように、不純物濃度がDaからDbに減少すると、燃料電池16の電圧が変化する。電圧の値は、発電セルの劣化や、温度変化によって変化するが、電圧の変化量dVは発電セルの劣化や温度変化の影響を比較的受けにくい。そこで、本実施形態では、電圧の変化量dVに基づいて、不純物量の推定を行う。不純物濃度の変化に伴う燃料電池16の電圧の変化量dVは、図3の直線の傾きをkとし、不純物濃度の変化量を(Da-Db)としたとき、以下の式(1)で表される。
dV=k(Db-Da)=kM(1/Vb-1/Va)
不純物濃度と燃料電池16の電圧との関係を図3の直線の傾きkと、排水動作前の容積Vaと排水動作後の容積Vbの値を事前に求めておけば、電圧の変化量dVから、不純物量Mが求められる。
【0040】
なお上述の関係式は、説明の便宜のために、不純物濃度Dに対して燃料電池16の電圧が直線的に変化することを前提として簡略化したものである。本実施形態はこれに限定されない。不純物量Mと、容積Vと燃料電池16の電圧の変化量dVとの関係を表す近似関数(又はテーブル)dV=f(M,V)を用いてもよい。この場合には、近似関数dV=f(M,V)に電圧の変化量dVの測定値と、容積Va、Vbの値とを代入して不純物量Mについて解くことで、不純物量Mが求められる。また、不純物濃度Dと電圧の変化量dVの関係は、発電セルの劣化によっても変化する場合がある。この場合には、発電セルの劣化量Zを変数として含ませた近似関数dV=f(M,V,Z)(又はテーブル)を用いることで、さらなる精度向上を図ってもよい。
【0041】
以上の説明は、水素循環経路12を取り上げて説明したが、酸素循環経路14についても、同じ方法で不純物量Mを推定できる。この場合には、酸素循環経路14について、燃料電池16の電圧の変化量dVの関係を表す式(1)のパラメータk、Va、Vbを予め求めておく。そして、第2気液分離器24の排水動作のタイミングで燃料電池16の電圧の変化量dVを測定することで、酸素循環経路14の不純物量Mを求めることができる。なお、酸素循環経路14の不純物量Mの推定は、水素循環経路12の不純物量Mの推定と時間をずらして行うことが好ましい。
【0042】
以下、本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。
【0043】
図1に示されるように、燃料電池システム10は、燃料電池16のアノードに水素循環経路12を通じて水素が供給され、燃料電池16のカソードに酸素循環経路14を通じて酸素が供給される。燃料電池16は、水素と酸素とを反応させて電力を発生させる。酸素タンク20から供給される酸素及び水素タンク18から供給される水素には、微量ながら不純物が含まれる。長期間に亘って燃料電池16を運転すると、水素に含まれる不純物が水素循環経路12に蓄積される。また、酸素に含まれる不純物が、電解質膜を透過して、水素循環経路12に蓄積される場合もある。同様に、酸素循環経路14にも不純物が蓄積される。不純物の蓄積に伴って、燃料電池16の電圧が低下する。
【0044】
不純物の蓄積による燃料電池16の電圧低下を防ぐために、制御装置28は、図4に示される不純物量Mの推定及びパージ処理を、水素循環経路12と、酸素循環経路14とについて、それぞれ行う。以下では、水素循環経路12を例に不純物量Mを推定する処理を説明する。
【0045】
ステップS10において、制御装置28は、所定の出力電流における燃料電池16の電圧(発電電圧)が所定値を下回ったか否かを判断する。ステップS10において、燃料電池16の電圧が所定値以上の場合(NO)には、制御装置28は、不純物量Mの推定及びパージ処理は不要であると判断して、処理を終了する。一方、ステップS10において、燃料電池16の電圧が所定値未満の場合には、制御装置28は、処理をステップS20に進める。
【0046】
ステップS20において、制御装置28は、第1水量センサ48の検出値から水素循環経路12の水素の容積を求める。
【0047】
次に、ステップS30において、制御装置28の容積制御部28bは、第1排水弁44を制御して第1気液分離器22の水を所定量だけ排水させる。これにより、水素循環経路12の水素の容積が、容積Vaから容積Vbに増加する。その後、処理はステップS40に進む。
【0048】
次に、ステップS40において、制御装置28の推定部28aは、電圧センサ17を通じて燃料電池16の電圧を取得する。その後、推定部28aは、ステップS10で取得した燃料電池16の電圧と、容積を増加させた後の燃料電池16の電圧との変化量dV(絶対値)を求める。
【0049】
次に、ステップS50において、制御装置28の推定部28aは、燃料電池16の電圧の変化量dVと、予め求められた傾きkと、ステップS20で求めた容積Vaと、ステップS30で求めた容積Vbの値をdV=kM(1/Vb-1/Va)の関係式に代入し、Mについて解くことで、水素循環経路12の不純物量Mを推定する。なお、ステップS50の不純物量Mの推定は、予め求めた燃料電池16の電圧の変化量dVと不純物量Mと容積Va、Vbとの関係を表す近似関数を用いて行われてもよい。
【0050】
次に、ステップS60において、制御装置28は、ステップS50で推定した不純物量Mが所定値を越えるか否かを判断する。不純物量Mが所定値以下である場合(NO)には、制御装置28は、水素のパージは不要であると判断して、処理を終了する。一方、不純物量Mが所定値を超える場合(YES)には、制御装置28は処理をステップS70に進める。
【0051】
ステップS70において、制御装置28のパージ制御部28cは、第1パージ弁58を制御して水素循環経路12の水素を外部に排出(パージ)する。なお、パージ制御部28cは、ステップS50で推定した不純物量Mに基づいて、第1パージ弁58による開放時間又はパージ量を調整してもよい。以上により、水素循環経路12についての不純物量Mの推定及びパージ処理が完了する。
【0052】
なお、酸素循環経路14に対する不純物量Mの推定及びパージ処理は、上記の説明と同様の処理によって行われる。この場合、ステップS20では、制御装置28は、第2水量センサ78の検出値から酸素循環経路14の酸素の容積を求める。ステップS30において、制御装置28の容積制御部28bは、第2排水弁74を制御して第2気液分離器24の水を所定量だけ排水させる。そして、ステップS50において、制御装置28の推定部28aは、燃料電池16の電圧の変化量dVと、予め求められた傾きkと、ステップS20で求めた容積Vaと、ステップS30で求めた容積Vbの値をdV=kM(1/Vb-1/Va)の関係式に代入し、Mについて解くことで、酸素循環経路14の不純物量Mを推定する。ステップS60で、制御装置28が酸素循環経路14の不純物量Mが所定値を超えると判断した場合には、ステップS70において、制御装置28のパージ制御部28cは、第2パージ弁88を制御して酸素循環経路14の酸素を外部に排出(パージ)する。
【0053】
以上のように、本実施形態の燃料電池システム10は、不純物量Mが所定値以下の場合にパージを行わないことで、水素及び酸素の損失を低減できる。また、不純物の影響による燃料電池16の電圧低下を、他の要因から切り分けて判断できるため、不純物量Mの推定値の誤差を抑制できる。
【0054】
(実験例)
本実験例は、図1に示す燃料電池システム10を実際に動作させた。本実験例では、時間経過に伴う燃料電池16の電圧変化を測定した。また、図5Aの時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8において、水素循環経路12の容積をそれぞれ10%増加させる操作が行われた。容積を増加させる操作は、第1気液分離器22の排水によって行われた。また、水素循環経路12の不純物濃度Dを分析装置で測定した。
【0055】
燃料電池16の電圧は、図5Aに示されるように、実験開始から、時間に比例して減少する傾向を示した。また、水素循環経路12の容積を増加させたタイミングで、電圧の変化(上昇)が発生した。
【0056】
次に、水素循環経路12の容積の増加によって発生した電圧の変化量dVと、不純物濃度Dとの関係を求めた。この結果は図5Bに示される。図示のように、不純物濃度Dの増加に応じて電圧の変化量dVが増加する結果が得られた。この結果から、水素循環経路12の容積の増加と、電圧の変化量dVとから、不純物量Mを推定できることが確認できた。
【0057】
以下、本実施形態の燃料電池システム10の変形例について説明する。
【0058】
(実施形態の変形例1)
図1の燃料電池システム10は、酸素循環経路14を有する場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。燃料電池システム10は、酸化剤ガスとして大気中から空気を取り込む構成としてもよい。この場合には、酸化剤ガスは循環せずにカソード排出路62から大気中に排出され、燃料電池システム10は、酸素循環経路14を備えない。このような燃料電池システム10の場合には、水素循環経路12についてのみ、不純物量Mの推定と、水素のパージを行えばよい。
【0059】
(実施形態の変形例2)
図4は、不純物量Mの推定と同時にパージを実施する例を示すが、本実施形態はこのような態様に限定されない。制御装置28は、複数回の不純物量Mの推定結果に基づいて、不純物量Mが所定値を超える時間を推定し、その時間にパージを行ってもよい。すなわち、制御装置28のパージ制御部28cは、不純物量Mと時間とのデータに基づいて、不純物量Mの時間に対する変化を表す近似関数M=f(t)を求める。そして、パージ制御部28cは、近似関数M=f(t)から不純物量Mが所定値を超える時刻を求め、その時刻に水素循環経路12又は酸素循環経路14のパージ処理を行う。
【0060】
本変形例は、水素循環経路12(酸素循環経路14)のパージのタイミングが、第1気液分離器22(第2気液分離器24)の排水のタイミングに制約されないという利点を有する。本変形例は、最適なタイミングでのパージにより、水素及び酸素の損失をさらに抑制できる。
【0061】
(実施形態の変形例3)
図6に示されるように、本変形例は、図1の第1気液分離器22の別の構成例である。本変形例の第1気液分離器22Aは、ガス回収部38に設けられたピストン90と、ピストン90を駆動するアクチュエータ92とを有する。ピストン90は、ガス回収部38の内壁に沿って移動し、ガス回収部38の容積を減少又は増加させる。アクチュエータ92は、容積制御部28b(図1参照)によって制御されることで、ピストン90の位置を変化させる。なお、本変形例の第1気液分離器22Aは、ピストン90に代えて蛇腹状の壁を有し、アクチュエータ92で蛇腹を伸縮させることで、容積を減少又は増加させてもよい。
【0062】
本変形例では、第1気液分離器22の排水に変えて、第1気液分離器22Aのアクチュエータ92の動作により、水素循環経路12の水素の容積を増加させることができる。本変形例の第1気液分離器22Aは、第1気液分離器22Aに十分な量の水が貯留されていない場合であっても、水素循環経路12の水素の容積を増加させることができる。なお、本変形例は、第2気液分離器24(図1参照)にも同様に適用できる。
【0063】
(実施形態の変形例4)
図1の例では、容積制御部28bは、第1気液分離器22及び第2気液分離器24のガスの容積を変化させたが、本実施形態はこれに限定されない。本変形例では、容積制御部28bは、第1気液分離器22及び第2気液分離器24と別に設けられたシリンダと、ピストンと、ピストンを駆動するアクチュエータと、で構成されてよい。
【0064】
(実施形態の変形例5)
本変形例は、図1の燃料電池システム10を、水電解システムと組み合わせて、再生型燃料電池システムを構成する例について説明する。再生型燃料電池システムは、燃料電池システム10の発電で生じた水を、水電解システムを利用して水素と酸素とを発生させ、再び燃料電池システム10の発電に利用するシステムである。このような、再生型燃料電池システムは、例えば、太陽光発電システムや風力発電システム等の発電システムで発生した余剰電力の貯蔵に好適に用いられる。
【0065】
再生型燃料電池システムの水電解システムは、電気化学的に水を電気分解する水電解スタックと、電気化学的に水素を昇圧する水素昇圧スタックとを備える。水電解スタックは、例えば、アニオン(例えばOH-イオン)輸送型の電解質膜を備えた水電解セルを備える。なお、水電解スタックは、プロトン輸送型の電解質膜を備えた水電解セルを備えてもよい。上述の水電解スタックは、水タンク26から供給された水を電気分解して、酸素と水素を発生させる。水電解スタックは、酸素タンク20に接続されており、酸素タンク20に高圧の酸素を供給する。
【0066】
また、水電解スタックで発生した水素は、水素昇圧スタックに供給される。水素昇圧スタックは、プロトン輸送型の電解質膜を有し、電気化学的に水素を昇圧して水素タンク18に高圧の水素を供給する。
【0067】
上述の再生型燃料電池システムは、水電解システムと燃料電池システム10との間で水素と酸素が循環し、繰り返し使用される。そのため、再生型燃料電池システムに使用される燃料電池システム10の水素循環経路12及び酸素循環経路14には、不純物が蓄積されやすい傾向がある。さらに、水電解スタックでは、微量ながら一酸化炭素や二酸化炭素が発生する。水電解スタックで発生した一酸化炭素や二酸化炭素は、水素循環経路12及び酸素循環経路14に蓄積されやすい。
【0068】
図1の燃料電池システム10は、上述のようにして水素循環経路12及び酸素循環経路14に蓄積された不純物をパージ処理によって排出できるため、再生型燃料電池システムに適用した場合に、再生型燃料電池システムの発電性能を長期間に亘って維持できるという利点がある。
【0069】
以上の開示は、以下のようにまとめられる。
【0070】
一観点は、燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量を推定する推定部と、を備える、燃料電池システムにある。
【0071】
上述の燃料電池システムは、ガスの容積を増加させることで、ガス中の不純物濃度を減少させ、その結果生じる燃料電池の電圧の変化量から不純物量を推定できる。そのため、燃料電池システムは、運転中に正確に不純物量を求めることができ、不要なパージを減らすことで、ガスの損失を抑制できる。
【0072】
上述の燃料電池システムであって、前記ガス循環経路は、排出された前記ガスから水を除去する気液分離器を有し、前記容積調整部は、前記気液分離器の内部の前記ガスの容積を調整してもよい。この燃料電池システムは、気液分離部をガス循環経路の容積の調整に用いるため、装置を小型化及び簡素化できる。
【0073】
上述の燃料電池システムであって、前記容積調整部は、前記気液分離器の水を排水する排水弁を有し、前記容積制御部は、前記排水弁を制御して、前記ガスの容積を増加させてもよい。この燃料電池システムは、構造的な改変を行わずに、ガス循環経路の容積の調整機能を実現できるため、装置を簡素化及び低コスト化できる。
【0074】
上述の燃料電池システムであって、前記容積調整部は、前記気液分離器の容積を変動させるピストンと前記ピストンを駆動するアクチュエータとを有し、前記容積制御部は、前記アクチュエータを制御して、前記ガスの容積を増加させてもよい。この燃料電池システムは、気液分離器の水量に関係なく、十分な量の容積変化を発生させることができるため、不純物量の推定を行う機会を増やすことができる。
【0075】
上述の燃料電池システムであって、前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出するパージ弁と、前記ガスの不純物量が所定値を越えた場合に前記パージ弁を制御して前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出させるパージ制御部と、を有してもよい。この燃料電池システムは、無駄なパージを減らすことで、水素の損失量を抑制できる。
【0076】
上述の燃料電池システムであって、前記パージ制御部は、前記ガスの不純物量に基づいて前記ガスのパージ量を調整してもよい。この燃料電池システムは、パージ量の抑制により、ガスの損失を抑制できる。
【0077】
上述の燃料電池システムであって、前記ガスは水素ガスでもよい。また、上述の燃料電池システムであって、前記ガスは酸素ガスでもよい。
【0078】
上述の燃料電池システムであって、前記ガス循環経路は、前記燃料電池のカソード及びアノードにそれぞれ設けられ、前記容積制御部は、前記カソードの前記ガス循環経路及び前記アノードの前記ガス循環経路の容積を異なる時間に増加させ、前記推定部は、前記アノードの前記ガス循環経路に含まれる不純物量と前記カソードの前記ガス循環経路に含まれる不純物量とをそれぞれ推定してもよい。この燃料電池システムは、アノードの循環経路に含まれる不純物量と、カソードの循環経路に含まれる不純物量と、をまとめて推定できるため、処理を迅速化できる。
【0079】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0080】
10…燃料電池システム 12…水素循環経路(ガス循環経路)
14…酸素循環経路(ガス循環経路) 16…燃料電池
22…第1気液分離器 24…第2気液分離器
28…制御装置 46…容積調整部
58…第1パージ弁 88…第2パージ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
以下の開示の一観点は、燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量又は不純物濃度を推定する推定部と、を備える、燃料電池システムにある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
以上のように、本実施形態の燃料電池システム10は、不純物量Mが所定値以下の場合にパージを行わないことで、水素及び酸素の損失を低減できる。また、不純物の影響による燃料電池16の電圧低下を、他の要因から切り分けて判断できるため、不純物量Mの推定値の誤差を抑制できる。なお、上記の方法において、不純物量Mを循環経路の容積Vで除した不純物濃度Dで、不純物量Mを置き換えても同様の結果が得られることは、自明なこととして理解されるであろう。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
一観点は、燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量又は不純物濃度を推定する推定部と、を備える、燃料電池システムにある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
上述の燃料電池システムは、ガスの容積を増加させることで、ガス中の不純物濃度を減少させ、その結果生じる燃料電池の電圧の変化量から不純物量又は不純物濃度を推定できる。そのため、燃料電池システムは、運転中に正確に不純物量又は不純物濃度を求めることができ、不要なパージを減らすことで、ガスの損失を抑制できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
上述の燃料電池システムであって、前記容積調整部は、前記気液分離器の容積を変動させるピストンと前記ピストンを駆動するアクチュエータとを有し、前記容積制御部は、前記アクチュエータを制御して、前記ガスの容積を増加させてもよい。この燃料電池システムは、気液分離器の水量に関係なく、十分な量の容積変化を発生させることができるため、不純物量又は不純物濃度の推定を行う機会を増やすことができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
上述の燃料電池システムであって、前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出するパージ弁と、前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度が所定値を越えた場合に前記パージ弁を制御して前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出させるパージ制御部と、を有してもよい。この燃料電池システムは、無駄なパージを減らすことで、ガスの損失量を抑制できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
上述の燃料電池システムであって、前記パージ制御部は、前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度に基づいて前記ガスのパージ量を調整してもよい。この燃料電池システムは、パージ量の抑制により、ガスの損失を抑制できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
上述の燃料電池システムであって、前記ガス循環経路は、前記燃料電池のカソード及びアノードにそれぞれ設けられ、前記容積制御部は、前記カソードの前記ガス循環経路及び前記アノードの前記ガス循環経路の容積を異なる時間に増加させ、前記推定部は、前記アノードの前記ガス循環経路に含まれる前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度と前記カソードの前記ガス循環経路に含まれる前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度とをそれぞれ推定してもよい。この燃料電池システムは、アノードの循環経路に含まれるガスの不純物量又は不純物濃度と、カソードの循環経路に含まれるガスの不純物量又は不純物濃度と、をまとめて推定できるため、処理を迅速化できる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から排出されたガスを再び前記燃料電池に供給するガス循環経路と、
前記ガス循環経路の前記ガスの容積を増減させる容積調整部と、
前記燃料電池の電圧を検出する電圧センサと、
前記容積調整部を制御して前記ガスの容積を増加させる容積制御部と、
前記ガスの容積の増加による前記燃料電池の電圧変化から、前記ガスの不純物量又は不純物濃度を推定する推定部と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路は、排出された前記ガスから水を除去する気液分離器を有し、
前記容積調整部は、前記気液分離器の内部の前記ガスの容積を調整する、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池システムであって、
前記容積調整部は、前記気液分離器の水を排水する排水弁を有し、
前記容積制御部は、前記排水弁を制御して、前記ガスの容積を増加させる、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2記載の燃料電池システムであって、
前記容積調整部は、前記気液分離器の容積を変動させるピストンと前記ピストンを駆動するアクチュエータとを有し、
前記容積制御部は、前記アクチュエータを制御して、前記ガスの容積を増加させる、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出するパージ弁と、
前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度が所定値を越えた場合に前記パージ弁を制御して前記ガス循環経路の前記ガスを外部に排出させるパージ制御部と、を有する、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池システムであって、
前記パージ制御部は、前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度に基づいて前記ガスのパージ量を調整する、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記ガスは水素ガスである、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記ガスは酸素ガスである、燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記ガス循環経路は、前記燃料電池のカソード及びアノードにそれぞれ設けられ、
前記容積制御部は、前記カソードの前記ガス循環経路及び前記アノードの前記ガス循環経路の容積を異なる時間に増加させ、
前記推定部は、前記アノードの前記ガス循環経路に含まれる前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度と前記カソードの前記ガス循環経路に含まれる前記ガスの前記不純物量又は前記不純物濃度とをそれぞれ推定する、燃料電池システム。