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特開2024-7101情報処理装置、情報処理方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007101
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108316
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】後藤 航
(72)【発明者】
【氏名】青木 陽士
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA00
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】計画段階において汚染土壌の有無を推定する。
【解決手段】記憶部は調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶し、地質区分検出部は前記地質データを参照して、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択し、
選択した調査地点に共通の地質区分を検出し、汚染土壌推定部は前記汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて前記計画地点における前記汚染土壌の存在を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶する記憶部と、
前記地質データを参照して、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択し、
選択した調査地点に共通の地質区分を検出する地質区分検出部と、
前記汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて前記計画地点における前記汚染土壌の存在を推定する汚染土壌推定部と、を備える
情報処理装置。
【請求項2】
前記地質区分検出部は、
選択した調査地点ごとの各地質区分の標高に基づいて前記計画地点における前記標高を推定し、
前記汚染土壌推定部は、
前記汚染土壌データを参照し、
汚染が検出される地質区分の標高を特定し、
当該標高と前記計画地点における掘削深度の範囲に基づいて、当該計画地点における前記汚染土壌の掘削の有無を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記汚染土壌推定部は、
前記汚染土壌データを参照し、
前記掘削深度の範囲に含まれ、汚染土壌が検出される地質区分の層厚、前記計画地点における掘削面積、および、汚染土壌の存在率に基づいて、汚染土量を推定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の調査地点は、前記計画地点から最も近接した3以上の調査地点であり、前記計画地点は前記3以上の調査地点をそれぞれ頂点とする領域に含まれる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
調査地点ごとに地質区分の深度分布を示す深度分布情報を前記地質データに追加し、
前記調査地点における地質区分での汚染の有無に基づいて前記汚染土壌データを更新する地質情報管理部を備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記地質情報管理部は、
前記調査地点における地質区分から汚染を検出した汚染検出度数を計数し、
前記汚染土壌データにおける当該地質区分での汚染土壌の存在率を
前記汚染検出度数に基づく汚染土壌の存在率に更新する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに
請求項1に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶する記憶部を備える情報処理装置における方法であって、
前記情報処理装置が、
前記地質データを参照して、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択する第1ステップと、
選択した調査地点に共通の地質区分を検出する第2ステップと、
前記汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて前記計画地点における前記汚染土壌の存在を推定する第3ステップと、を実行する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建造物を新たに建築する際、基礎を設置するために地面を掘る工事が行われることがある。このような工事は根切り工事と呼ばれる。根切り工事では、掘削による建設発生土を場外に搬出することが通例である。そのため、搬出先における残土条例等の規定に則り、自然由来汚染の有無を判定する発生土調査を予め行う必要がある。調査の結果、自然地盤中に自然由来汚染が判明した場合には、そのままでの発生土の搬出が許可されない。その場合、処理費用が高額な汚染土壌処理施設での処理が必要となる。自然由来汚染には、例えば、砒素等の重金属類の含有などがある。
【0003】
地表部分に生じがちな人為的な汚染とは異なり、自然由来汚染は、地表から数m~数十m下部に存在することがある。そのため、自然由来汚染の有無を把握するには、ボーリング調査を要していた。特に大規模な新築工事では、発生土の量は数十万mにも達することがある。これらの発生土に自然由来汚染が存在すると処理費用が膨大となり、建設はもとより、その後の事業計画に影響が及ぶことがある。
また、都心部では、現実に建造物が存在している状況下で新築工事を計画することが多い。他方、使用中の建造物の敷地内においてボーリングマシン等を用いて掘削を伴う発生土調査を逐一実施することは現実的ではない。よって、自然由来汚染の存在の有無、汚染土量、および、処理費用を新築計画段階で把握することは困難を伴う。
【0004】
東京都内を例にすると、「有楽町層」の粘土や砂からの自然由来の汚染が検出される事例が報告されることがある。「有楽町層」は、海進の影響や埋没地形に形成された低地の沖積層であり、複雑な空間分布を有する。新築計画範囲および深度内における「有楽町層」の有無は、地方自治体、その他の公的機関から公開されているボーリング柱状図、地質層序に関する文献、周辺における発生土調査結果等、複数の情報を用いて総合的に判断する必要がある。かかる判断は、地質に関する知識、発生土調査の経験、などに乏しい事業者や施工者にとり困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-133391号公報
【特許文献2】特開2000-2769号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】杉谷晋一、藤井なつみ、他3名、「GISを活用した土壌汚染リスク評価の精度向上に関する検討」、第25回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会、廃棄物資源循環学会、他、S5-18、2019年10月8日
【非特許文献2】新家淳治、棚瀬敦史、秋永克三、「GISを利用した土壌汚染関連データベースの構築」、三重保環研年報 第13号(通巻第56号)、99-106頁、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建造物の設計を目的として行われる発生土調査を伴わないボーリング調査(地質調査)は建築の度になされ、その調査結果となるボーリング柱状図は比較的豊富に蓄積されている。それにも関わらず、既存のボーリング柱状図が自然由来汚染推定のために有効に活用されているとは言い難い。原因として、過去のものではディジタル化されておらず、手書きにより作成された紙ベースのものが多いことが掲げられる。そのため、書式が統一されていない。例えば、同じ土質を指す土質名称や記号がボーリングコアの判定者により異なることがある。
【0008】
この点に関して、非特許文献1には、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を用いて自然由来汚染の存在が推認される地層の分布の柱状図を用いたデータベース化について記載されている。非特許文献2では、三重県簡易型GIS(M-GIS)を用いて、1kmメッシュごとに、既存の調査結果を集約し、共有するシステムについて記載されている。
特許文献1には、サンプル削孔データを基に作成した教師用入力パターンを入力し、各入力パターンに対応した地質区分を教示するための教師用出力パターンが出力されるように学習させたニューラルネットワークの入力層に削孔データを基に作成した入力パターンを入力としたときに、その出力層から出力される出力パターンに基づき地層判別を行う地層判別方法について記載されている。しかしながら、これらのシステムでは、新築計画に係る計画地点の調査結果が含まれていなければ、直ちに新築計画に利用できない。
【0009】
特許文献2には、地盤内部(地層)の物性値(地質)に関する分布情報を非破壊で検出し、地質区分ごとのファジィ化したソフトマップを作成し、分布情報とソフトマップデータとを階層型ニューラルネットワーク処理を行ってファジィ地質マップ出力を非ファジィ化した地質図を得る方法について記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、汚染土壌の存在に関して考慮されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る情報処理装置は、調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶する記憶部と、前記地質データを参照して、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択し、選択した調査地点に共通の地質区分を検出する地質区分検出部と、前記汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて前記計画地点における前記汚染土壌の存在を推定する汚染土壌推定部と、を備える。
【0011】
第2の態様に係る情報処理方法は、調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶する記憶部を備える情報処理装置における方法であって、前記情報処理装置が、前記地質データを参照して、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択する第1ステップと、選択した調査地点に共通の地質区分を検出する第2ステップと、前記汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて前記計画地点における前記汚染土壌の存在を推定する第3ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、計画段階で汚染土壌の有無の可能性を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る深度分布情報を例示する図である。
図4】本実施形態に係る地質調査結果を例示する図である。
図5】本実施形態に係る汚染土壌データを例示する図である。(土壌汚染の存在率)
図6】計画地点における汚染土壌の推定例を示す図である。
図7】本実施形態に係る汚染土壌推定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(システム概要)
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成例を示す概略ブロック図である。
情報処理システム1は、情報処理装置10と、操作入力部20と、データ入力部30と、画像入力部40と、表示部50と、を備える。情報処理装置10は、操作入力部20、データ入力部30、画像入力部40、および、表示部50と各種のデータを入出力可能に無線または有線で接続される。
【0015】
情報処理装置10は、地質調査が行われた調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データを柱状図より参照し、作業計画を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択し、選択した調査地点に共通の地質区分を検出する。情報処理装置10は、地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを発生土調査結果より参照し、検出された地質区分に基づいて選択した計画地点における汚染土壌の存在を推定する。情報処理装置10は、汚染土壌の存在の推定、作業計画の策定などの専用の装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、サーバ装置、タブレット端末装置、などの汎用の情報機器であってもよい。
【0016】
操作入力部20は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた操作信号を生成する。操作入力部20は、生成した操作信号を情報処理装置10に出力する。操作入力部20は、例えば、マウス、キーボード、タッチセンサなどの汎用の入力デバイスであってもよいし、ボタン、レバー、つまみ、などの専用のデバイスであってもよい。
データ入力部30は、他の機器と有線または無線で接続し、各種のデータを入力し、入力された入力データを情報処理装置10に出力する。データ入力部30は、通信ネットワークを経由して接続されてもよい。データ入力部30は、例えば、入力インタフェース、通信インタフェースの一方または両方を備える。
【0017】
画像入力部40は、他機器からまたは自部が取得した画像データを情報処理装置10に出力する。画像入力部40は、例えば、カメラ、スキャナなどのいずれであってもよい。
表示部50は、情報処理装置から入力される表示データに基づいて、各種の情報を視認できるように表示する。表示部50は、例えば、ディスプレイ装置である。表示部50は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、などのいずれであってもよい。
【0018】
(機能構成例)
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成例について説明する。情報処理装置10は、制御部110と、記憶部130と、を備える。制御部110は情報処理装置10の機能を発揮させるための処理、および、その処理を制御する。制御部110は、入力処理部112、地質区分検出部114、汚染土壌推定部116、出力処理部118、および、地質情報管理部120を備える。地質情報管理部120は、地質認識部122、地質区分判定部124、および、地質情報更新部126を備える。
【0019】
入力処理部112は、情報処理装置10に接続される各種の入力デバイスからのデータの入力を制御する。入力処理部112は、例えば、操作入力部20から入力される操作信号で指示される各種の情報を取得する。より具体的には、入力処理部112は、入力される操作信号に基づいて作業計画情報を取得または編集し、得られた作業計画情報に含まれる計画地点情報を地質区分検出部114に出力する。入力処理部112は、作業計画情報入力画面を示す表示データを表示部50に出力し、作業計画情報の取得または編集に係る操作信号を操作入力部20から受け付けてもよい。
なお、計画地点情報には、掘削面積および掘削深度が含まれうる。その場合には、入力処理部112は、さらに掘削面積と掘削深度を含む計画地点情報を地質区分検出部114と汚染土壌推定部116に出力する。
【0020】
入力処理部112は、データ入力部30からの入力データの入力を制御してもよい。より具体的には、入力処理部112は、発生土調査の調査結果をなす汚染物質情報を発生土調査結果として入力し、入力した汚染物質情報を地質情報更新部126に出力する。入力処理部112は、発生土調査情報入力画面を示す表示データを表示部50に出力し、操作入力部20から入力される操作信号での指示に基づいて、データ入力部30からの入力データの取得を制御してもよい。
【0021】
入力処理部112は、画像入力部40から画像データを入力してもよい。より具体的には、入力処理部112は、地質調査の調査結果をなす柱状図を画像入力部40に撮影または読み取らせ、撮影または読み取った柱状図を示す画像データを地質情報管理部120に出力する。入力処理部112は、地質調査情報入力画面を示す表示データを表示部50に出力し、操作入力部20から入力される操作信号での指示に基づいて、画像入力部40からの画像データの取得を制御してもよい。
【0022】
地質区分検出部114は、記憶部130に記憶された地質データを参照し、操作入力部20から入力される計画地点情報に示される計画地点に最も近い調査地点を少なくとも3地点以上を特定する。地質区分検出部114は、特定した調査地点ごとに深度分布情報を抽出し、抽出した深度分布情報に示される標高のうち、掘削深度内の標高ごとの地質区分を特定する。地質区分検出部114は、特定した調査地点間で共通の地質区分を検出する。地質区分検出部114には、掘削深度が予め設定されてもよいし、入力処理部112から入力される計画地点情報で通知される掘削深度が地質区分の特定に用いられてもよい。
地質区分検出部114は、検出した共通の地質区分を示す共通地質区分情報を汚染土壌推定部116に出力する。
【0023】
汚染土壌推定部116は、地質区分検出部114から入力される共通地質区分情報に示される地質区分から汚染土壌の存在を推定する。ここで、汚染土壌推定部116は、発生土調査結果に基づく汚染土壌データを参照し、共通地質区分情報から特定される地質区分に対応する汚染物質の存在率を定める。汚染土壌推定部116は、推定した汚染土壌の存在率を示す汚染物質情報を出力処理部118に出力する。表示部50には、汚染土壌の存在率を示す表示画面が表される。
【0024】
汚染土壌推定部116は、記憶部130に記憶された汚染土壌データを参照し、汚染物質が存在する地質区分ごとの標高とその存在を特定する。汚染土壌推定部116は、地表からの掘削深度の範囲に含まれる地質区分の有無に基づいて、汚染土壌を掘削する可能性の有無を推定することができる。汚染土壌推定部116は、汚染土壌を掘削する可能性の有無または汚染土壌の存在率の一方または両方を示す汚染物質情報を出力処理部118に出力してもよい。表示部50には、汚染物質の有無または汚染土壌の存在率の一方または両方を表す表示画面が表わされる。
【0025】
汚染土壌の掘削が推定される場合、汚染土壌推定部116は、汚染土壌データを参照し、掘削深度の範囲に含まれる地質区分であって汚染物質を含む地質区分の層厚を特定する。汚染土壌推定部116は、特定した層厚と、入力処理部112からの計画地点情報に示される掘削面積、および、存在率との積を汚染土量として推定してもよい。汚染土壌推定部116は、推定した汚染土量を示す情報を汚染物質情報に含めて出力処理部118に出力してもよい。表示部50には、汚染土量を表す表示画面が表される。
【0026】
出力処理部118は、画面表示をはじめ、制御部110からの各種の情報出力に係る処理を行う。出力処理部118は、例えば、汚染土壌推定部116から入力された汚染物質情報を表示情報として含む表示画面を生成し、生成した表示画面を示す表示データを表示部50に出力する。表示部50には、汚染物質情報を示す表示画面が表される。
【0027】
地質情報管理部120は、各種の調査により得られた地質に関する情報を管理する。地質情報管理部120において、地質調査による柱状図の取得に応じて地質データが更新され、発生土調査結果の取得に応じて汚染土壌データが更新される。地質情報管理部120は、地質認識部122、地質区分判定部124、および、地質情報更新部126を備える。
【0028】
地質認識部122には、入力処理部112から柱状図を示す画像データが入力される。柱状図は、地質調査の調査結果をなす。地質認識部122は、入力される画像データに対して公知のAI(Artificial Intelligence)モデルを用いて画像認識処理を実行し、深度ごとの地質情報を認識する。より具体的には、地質認識部122は、地質情報として、例えば、土質、色調、および、N値(標準貫入試験値)を判別する。土質は、例えば、土質記号と土質名を用いて特定される。N値は、地質調査により得られる地盤の強度の指標値の一種である。N値は、地中に差し込んだサンプラを30cm貫入させるために要した打撃回数に相当する。地質認識部122は、深度ごとに認識された地質情報を地質区分判定部124に出力する。
【0029】
地質区分判定部124は、地質認識部122から入力される深度ごとの地質情報に基づいて、予め定めた判定基準を用いて、地質区分、その地質区分の層序ならびに層厚を判定する。個々の地質区分は、各1層の地層に相当する。地質区分判定部124は、例えば、地質情報の要素となる特性値の変化量が所定の変化量の閾値よりも大きい深度、または、その要素となる属性が変化する深度を、相互に隣接する2層の地質区分の境界として判定する。地質区分判定部124は、隣接する2個の境界に挟まれる領域を1個の地質区分として判定することができる。よって、地質区分判定部124は、判定した境界から個々の地質区分を特定し、個々の境界の深度から地質区分ごとに層厚を定めることができる。また、地質区分判定部124は、特定した地質区分の深度による順序を層序として判定することができる。
【0030】
地質区分判定部124が判定した地質区分、地質区分ごとの層厚、および、地質区分間の層序は、地質調査地点における地質区分の深度分布を表す深度分布情報とみなすことができる。なお、深度分布情報において地質区分の高さは、標高で表されている場合と、調査地点を基準とする深度で表されている場合がある。地質区分の高さが深度で表されている場合には、地質区分判定部124は、調査地点における標高に基づいて、その深度を標高に換算してもよい。地質区分判定部124は、調査地点における深度分布情報を地質情報更新部126に出力する。
【0031】
地質情報更新部126には、地質区分判定部124から深度分布情報が入力される。地質情報更新部126は、地質調査地点ごとに位置情報と深度分布情報を関連付けて記憶部130に記憶する。調査地点ごとに累積された深度分布情報は、上記の地質データに相当する。
【0032】
地質情報更新部126には、入力処理部112から汚染物質情報が調査地点ごとに入力される。汚染物質情報は、発生土調査の調査結果として、予め定めた深度のそれぞれから採取された土壌から検出された汚染物質の濃度を示す。発生土調査の調査地点は、地質調査の調査地点と共通になってもよいし、異なってもよい。地質情報更新部126は、深度ごとに検出された汚染物質の濃度に基づいて汚染の有無を判定する。地質情報更新部126は、例えば、ある深度において少なくとも1種類の汚染物質の濃度が、所定の判定基準値を超えるとき、その深度において汚染ありと判定する。判定基準値は、汚染物質により異なりうる。地質情報更新部126は、いずれの汚染物質の濃度も所定の判定基準値以下となる深度に対しては、汚染なしと判定する。地質情報更新部126は、地質データを参照し、その調査地点での判定対象とした深度に対応する標高における地質区分を特定し、判定した汚染の有無に応じて汚染土壌の存在率を更新する。
【0033】
より具体的には、地質情報更新部126は、汚染ありと判定した深度に対応する標高を範囲内に含む地質区分に対して、汚染検出度数を1増加させる(インクリメント)。地質情報更新部126は、汚染なしと判定した深度に対応する標高を範囲内に含む地質区分に対して、汚染検出度数を変更せずに維持する。また、地質情報更新部126は、汚染の有無に関わらず、その地層区分に対して調査数を1増加させる。但し、地質区分ごとの汚染検出度数と調査数の初期値をゼロとする。よって、地質区分ごとに汚染を検出した回数が汚染検出度数として計数され、調査を行った回数が調査数として計数される。地質情報更新部126は、地質区分ごとに計数した汚染検出度数を調査数で除算して得られる商を汚染土壌の存在率として算出できる。記憶部130には、地質区分ごとに存在率、調査数および汚染検出度数を示すデータが汚染土壌データとして記憶される。
【0034】
記憶部130は、制御部110において用いられる各種のデータ(パラメータを含む)、制御部110により取得される各種のデータを一時的または永続的に記憶する。記憶部130には、地質データと汚染土壌データが記憶される。地質データは、地質調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す深度分布情報を含んで構成される。汚染土壌データは、発生土調査結果に基づく地質区分ごとの汚染土壌の存在を示す。
【0035】
なお、情報処理装置10は、操作入力部20、データ入力部30、画像入力部40、および、表示部50の全てと別個に構成されてもよいし、それらのいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、または、全部が情報処理装置10の一部として構成されてもよい。
【0036】
(ハードウェア構成例)
次に、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成例について説明する。情報処理装置10は、図1に例示される各1個または複数個の機能部の組をなす専用の部材(例えば、集積回路)を含んで構成されてもよいが、一部または全部を汎用のコンピュータシステムとして構成されてもよい。
【0037】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。情報処理装置10は、例えば、プロセッサ152、ドライブ部156、入力部158、出力部160、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random Access Memory)164、補助記憶部166、および、インタフェース部168を含んで構成される。プロセッサ152、ドライブ部156、入力部158、出力部160、ROM162、RAM164、補助記憶部166、および、インタフェース部168は、バスBS(基線)を用いて相互に接続される。
【0038】
プロセッサ152は、例えば、ROM162に記憶されたプログラムや各種のデータを読み出し、当該プログラムを実行して、情報処理装置10の動作を制御する。プロセッサ152には、例えば、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)が含まれる。なお、本願では「プログラムを実行する」とは、プログラムに記述された各種の指令(コマンド)で指示された処理を実行するとの意味を含む。
【0039】
プロセッサ152は、所定のプログラムを実行して、上記の機能部の全部または一部の機能、例えば、制御部110の入力処理部112、地質区分検出部114、汚染土壌推定部116、出力処理部118、および、地質情報管理部120の一部または全部の機能を実現する。また、プロセッサ152は、ROM162、RAM164、ならびに、補助記憶部166のいずれか、または、いずれかの組と協働して記憶部130の機能を実現する。プロセッサ152は、入力部158、および、インタフェース部168のいずれか、または、両者と協働して操作入力部20、データ入力部、および、画像入力部40の機能を実現してもよい。プロセッサ152は、出力部160、および、インタフェース部168のいずれか、または、いずれかの組と協働して表示部50の機能を実現してもよい。
【0040】
記憶媒体154は、各種のデータを記憶する。記憶媒体154は、例えば、光磁気ディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどの可搬記憶媒体である。
ドライブ部156は、例えば、記憶媒体154からの各種データの読み出しと、記憶媒体154への各種データの書き込みの一方または両方を行う機器である。
【0041】
入力部158は、入力元となる各種の機器から入力データが入力され、入力データをプロセッサ152に出力する。
出力部160は、プロセッサ152から入力される出力データを、出力先となる各種の機器に出力する。
【0042】
ROM162は、例えば、プロセッサ152が実行するためのプログラムを記憶する。
RAM164は、例えば、プロセッサ152で用いられる各種データ、プログラムを一時的に保存する作業領域として機能する主記憶媒体として用いられる。
補助記憶部166は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの記憶媒体である。
【0043】
インタフェース部168は、他の機器と接続し各種のデータを入力および出力可能とする。インタフェース部168は、例えば、有線または無線でネットワークに接続する通信モジュールを備える。
【0044】
(深度分布情報)
次に、本実施形態に係る深度分布情報の例について説明する。図3は、本実施形態に係る深度分布情報を例示する図である。深度分布情報は、地質調査地点と深度ごとの地質区分を示す。ボーリング番号(No.)は、ボーリング調査における調査地点を識別するための番号である。調査地点の位置は、北緯、東経、および、地表面の標高(T.P.:Tokyo Peil、東京湾平均海面)を用いて表されている。地質区分間の層序は、標高の降順に示されている。図3において、個々の地質区分に対応付けて記述されている標高は、その地質区分の表面の高さである。個々の地質区分の深度は、調査地点の標高と、その地質区分の表面における標高との差分に相当する。個々の地質区分の層厚は、その地質区分の表面における標高と、その地質区分の底面における標高との差分に相当する。その地質区分の底面における標高は、その底面に隣接する他の地質区分の表面における標高に相当する。例えば、「有楽町層」の層序、標高、層厚は、それぞれ、最上位から第2番目、-3.32m、6.85mとなる。
【0045】
(地質調査結果)
次に、本実施形態に係る地質調査結果の例について説明する。図4は、本実施形態に係る地質調査結果を例示する図である。調査地点は、表示座標をなす北緯ならびに東経、および、孔口標高を用いて表されている。孔口標高の「孔口」とは、調査地点に設けられたボーリング孔の開口部を指す。例示される地質調査結果は、地質区分ごとに層厚、深度、柱状図、土質区分、および、色調と、開始深度ごとに、打撃回数、貫入量、および、N値を含んで構成される。柱状図は、土質区分ごとの図模様(ハッチパターン)を表す。図模様は、その土質区分の外観特性を図案化して表現する。N値は、0~50を範囲とする折れ線グラフで表現されている。色調は、その土質区分の色を文字で表現する。各調査地点における深度分布情報は、地質データの構成要素となる。図4に例示される地質調査結果も深度分布情報とみなすことができるが、図3に例示される深度分布情報とは形式が異なる。地質情報管理部120により、個々の調査地点に係る深度分布情報を一定の形式を有するディジタル情報として管理することで、その活用を図ることができる。
【0046】
記憶部130には、さらに地図データを記憶させておき、地質データをなす深度分布情報が、その調査地点と共通の位置を示す緯度および経度をもって地図データと関連付けられてもよい。また、汚染土壌データをなす地質区分が、その調査地点と共通の位置を示す緯度および経度をもって地図データと関連付けられてもよい。かかる地図データは、地質情報管理部120により各種のGISから取得される。また、地質情報管理部120は、地質データと汚染土壌データをGISに提供し、GISにおいて地図データと関連付けて管理されてもよい。
【0047】
(汚染土壌データ)
図5は、本実施形態に係る汚染土壌データを例示する図である。図5の例では、汚染土壌データは、地質区分ごとに汚染土壌の存在率、および、調査数を表す。例えば、「有楽町層」に対する存在率、調査数は、それぞれ100%、1000である。「有楽町層」、「東京層」および「東久留米層」は、地質区分検出部114により地質データを参照して3箇所の調査地点のいずれにおいても検出され、かつ、有害物質が検出された地質区分である。
【0048】
個々の地質調査地点は、柱状図番号を用いて区別されている。柱状図番号は、上記のボーリング番号に相当し、個々の深度分布情報に対応する。調査地点の欄には、その位置の北緯、東経、および、標高(T.P.)が記述されている。各調査地点の位置が●印を用いて地図上に表されている。各調査地点における深度の欄には、その調査地点において検出された地質区分の標高の範囲が記述されている。例えば、柱状図「No.1-1」に係る調査地点において「有楽町層」が検出される標高の範囲は、-1m~-8となる。地質区分検出部114は、調査地点の位置と地質区分ごとの標高の範囲は、地質データを参照して検出することができる。出力処理部118は、図示されるように、地図に調査地点を表す記号と、各調査地点について地質区分ごとの標高の範囲と汚染物質の存在率を示す情報を表す表示画面を生成し、生成した表示画面を表す表示データを表示部50に出力してもよい。
【0049】
(汚染土壌の推定例)
次に、計画地点における汚染土壌の推定例について説明する。図6は、計画地点における汚染土壌の推定例を示す図である。図6において、計画地点の位置は、地図上に星印で表される。計画地点は、当該計画地点から最も近接する3箇所の調査地点をそれぞれ頂点とする三角形の領域内に含まれる。自然由来汚染土壌存在率の欄には、計画地点の標高から掘削深度だけ低い標高までの範囲内に3箇所の調査地点に共通の地質区分であって、汚染物質を含む地質区分のそれぞれについて、計画地点における深度の範囲、存在率、および、調査数が表されている。
【0050】
計画地点における各地質区分についての表面または底面の標高は、地質区分検出部114により、調査地点ごとの表面または底面の標高に対して公知の補間方法を用いて推定される。調査地点が3箇所である場合には、補間方法として線形補間を用いることができる。図6の例では、計画地点において、有楽町層の表面の標高は-2m、有楽町層の底面または東京層の表面の標高は-11m、東京層の底面の標高または東久留米層の表面の標高は-15m、東久留米層の底面の標高は-24mと推定される。なお、調査地点が4箇所以上である場合には、地質区分検出部114は、二次以上となる、より高次の補間方法を用いることができる。調査地点が4箇所以上である場合には、各調査地点における標高の推定値と測定値との誤差の大きさが極力小さくなるように補間に用いられる補間関数のパラメータを定めることができる。これに対し、各地質区分に対応する存在率と調査数は、汚染土壌推定部116により汚染土壌データを参照して取得することができる。
【0051】
推定汚染土量の欄には、計画地点における掘削面積、掘削深度、および、汚染土量(推定汚染土量)が表されている。掘削面積、および、掘削深度の情報は、入力処理部112により計画地点情報に含めて取得される。推定汚染土量は、汚染土壌推定部116により、掘削面積、掘削深度の範囲に含まれる汚染物質を有する地質区分の層厚、および、その地質区分での汚染土壌の存在率の積の地質区分間の総和をもって推定される。
【0052】
例えば、汚染土壌推定部116は、計画地点の標高である-2mと掘削深度である20mから掘削深度の範囲を-2m~-22mと定めることができる。汚染土壌推定部116は、地質区分検出部114により推定された有楽町層の表面の標高-2m、底面の標高-11mから、有楽町層の全部が掘削深度の範囲に含まれ、その層厚を9mと定めることができる。汚染土壌推定部116は、推定された東京層の表面の標高-11m、底面の標高-15mから、東京層の全部が掘削深度の範囲に含まれ、その層厚を4mと定めることができる。汚染土壌推定部116は、推定された東久留米層の表面の標高-15m、底面の標高-24mから、東久留米層のうち標高-15m~-22mの範囲が掘削深度の範囲に含まれ、その層厚を7mと定めることができる。有楽町層、東京層、東久留米層の掘削面積、層厚、および、存在率の積は、それぞれ9000、2000、700となる。汚染土壌推定部116は、これらの総和である11700mを推定汚染土量として算出することができる。
【0053】
なお、上記の推定汚染土量は、掘削面積と層厚との積に対する地質区分ごとの汚染土壌の存在率を重み係数とする掘削深度内の地質区分間の加重和である場合を例にしたが、汚染土壌推定部116は、重み係数をすべて1とする単純和を推定汚染土量として算出されてもよい。この推定汚染土量は、汚染物資が多少でも検出される可能性がある地質区分からの発生土量に相当する。
【0054】
また、汚染土壌データは、各地質区分について汚染物質の種別ごとの存在率を示す情報を含んで構成されてもよい。汚染物質の種別として、例えば、砒素、フッ素、カドミウム、鉛、などが代表的である。汚染土壌推定部116は、この汚染土壌データを参照し、汚染物質の種別ごとに、その種別の汚染物質を含む汚染物質の標高とその存在率を定めることができる。そして、汚染土壌推定部116は、汚染物質の種別ごとに、掘削面積と、掘削深度に含まれる地質区分であって、その種別の汚染物質を含む地質区分の層厚の、掘削深度内の地質区分間の和を、汚染物質の種別ごとの推定汚染土量として算出してもよい。算出される推定汚染土量は、汚染物質の種別ごとに異なる処理量や費用の見積に役立てることができる。
【0055】
(汚染土壌推定処理)
次に、本実施形態に係る汚染土壌推定処理について説明する。図7は、本実施形態に係る汚染土壌推定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7に例示される汚染土壌推定処理は、ステップS102~S118の処理を有する。
そのうち、ステップS102~S108の処理は、地質調査の調査結果に基づく地質データの更新に係る。図7の例では、地質調査の調査結果として柱状図が用いられる。柱状図は、調査地点の地下における複数の地層からなる階層構造を示す図表である。個々の地層は、地質区分をもって区分される。
【0056】
(ステップS102)入力処理部112は、画像入力部40にある地質調査地点に係る柱状図の画像を読み込ませ、読み込ませた画像を示す画像データを取得し、地質認識部122に出力する。
(ステップS104)地質認識部122は、入力処理部112から入力される画像データに対して公知のAI(Artificial Intelligence)モデルを用いて画像認識処理を実行し、地表からの深度ごとの地質情報を認識する。地質認識部122は、認識した地質情報を地質区分判定部124に出力する。
【0057】
(ステップS106)地質区分判定部124は、地質認識部122から入力される地質情報に基づいて、予め定めた判定基準を用いて、地質区分、および、その地質区分の層序ならびに層厚を判定する。地質区分判定部124は、例えば、地質情報の要素となる特性値の変化量が所定の変化量の閾値よりも大きい深度、または、その要素となる属性が変化する深度を、相互に隣接する2層の地質区分の境界として判定する。地質区分判定部124は、隣接する2個の境界に挟まれる階層を1個の地質区分として判定する。地質区分判定部124は、個々の地質区分の境界における深度から、隣接する境界に挟まれる階層をなす地質区分の層厚を定める。また、地質区分判定部124は、調査地点の標高に基づいて、特定した地質区分の深度による順序を層序として判定する。地質区分判定部124が判定した地質区分、地質区分ごとの層厚、および、複数の地質区分間の層序は、調査地点における地質区分の深度分布を表す深度分布情報に相当する。地質区分判定部124は、個々の境界における深度を標高に換算する。地質区分判定部124は、その調査地点における深度分布情報を地質情報更新部126に出力する。
【0058】
(ステップS108)地質情報更新部126は、地質区分判定部124から入力された深度分布情報を調査地点の位置情報と関連付けて記憶部130に記憶する。記憶部130には、調査地点ごとに深度分布情報が追加される。調査地点ごとに累積した深度分布情報は、地質データとして形成される。
【0059】
ステップS110、および、S112の処理は、発生土調査の調査結果に基づく汚染土壌データの更新に係る。発生土調査は、調査地点において異なる深度から土壌を採取する工程と、個々の深度から採取された土壌に含まれる汚染物質の濃度を分析する工程を含む。
(ステップS110)入力処理部112は、データ入力部30を用い、ある発生土調査地点について、深度ごとの汚染物質の濃度を示す汚染物質情報を取得し、取得した汚染物質情報を地質情報更新部126に出力する。
【0060】
(ステップS112)地質情報更新部126は、発生土調査において深度ごとに取得した汚染物質情報に基づき汚染の有無を判定する。地質情報更新部126は、例えば、ある深度における少なくとも1種類の汚染物質の濃度が、所定の基準値を超えるとき汚染ありと判定し、いずれの汚染物質の濃度も所定の基準値以下であるとき汚染なしと判定する。地質情報更新部126は、地質データを参照し、その調査地点における個々の深度に対応する標高における地質区分を特定する。地質情報更新部126は、地質区分ごとに、汚染の有無に関わらず調査数と、そのうち汚染を検出した度数である汚染検出度数を累積する。地質情報更新部126は、地質区分ごとの存在率として、累積した汚染検出度数を調査数で除算して得られる存在率に更新する。記憶部130には、地質区分ごとに存在率と調査数を含むデータが汚染土壌データとして記憶される。
【0061】
ステップS114~S118の処理は、新たな作業計画における汚染土壌の推定に係る。図2の例では、作業計画として新築工事計画を例にする。
(ステップS114)入力処理部112は、操作入力部20から入力される新築工事計画情報を取得する。新築工事計画情報には、新築工事に係る計画地点情報が含まれる。計画地点情報は、新築工事が予定される計画地点を示す緯度、経度、および、標高を用いて表される。計画地点情報には掘削面積と掘削深度が含まれる。入力処理部112は、取得した計画地点情報を地質区分検出部114と汚染土壌推定部116に出力する。
【0062】
(ステップS116)地質区分検出部114は、地質データを参照し、入力処理部112から入力される計画地点情報に示される計画地点に最も近い3地点の調査地点を選択する。地質区分検出部114は、選択した地点ごとに深度分布情報を抽出する。地質区分検出部114は、抽出した深度分布情報に示される地質区分のうち、その地点の標高から掘削深度の範囲に含まれる地質区分を特定する。地質区分検出部114は、特定した地点間で共通の地質区分を検出する。地質区分検出部114は、検出した共通の地質区分を示す共通地質区分情報を汚染土壌推定部116に出力する。
【0063】
(ステップS118)汚染土壌推定部116は、汚染土壌データを参照し、汚染物質を含む地質区分のうち、掘削深度として掘削地点となる地表面の標高から掘削深度だけ低い標高までの範囲、つまり、掘削深度の範囲に含まれる地質区分の有無に基づいて、汚染土壌の掘削の可能性の有無を推定することができる。汚染土壌推定部116は、汚染土壌が掘削される可能性の有無を示す汚染物質情報を出力処理部118に出力し、汚染物質情報を表す表示画面を表示部50に表示させる。また、汚染土壌推定部116は、汚染土壌データを参照し、掘削深度の範囲に含まれ、汚染物質を有する地質区分の層厚、掘削面積、および、汚染土壌の存在率の積の地質区分間の総和を汚染土量として推定してもよい。汚染土壌推定部116は、推定した汚染土量を汚染物質情報に含めてもよい。その後、図2の処理を終了する。
【0064】
(応用例、変形例)
なお、本実施形態は、次のように応用されてもよいし、変形して実施されてもよい。
上記の説明では、作業計画として主に新築工事計画を例にしたが、これには限られない。本実施形態は、計画段階において地中における汚染の存在の推定が期待される作業計画にも適用することができる。かかる作業計画として、例えば、改築工事、基礎工事、地下工事などの計画にも適用できる。
【0065】
本実施形態によれば、新築工事など、作業計画の段階で、自然由来汚染の有無、その存在率、汚染土量を推定することができる。推定された情報は、工事費用の概算、掘削(根切り)計画、土壌処理計画、環境対策、工程策定などに役立てることができる。推定された情報は、各種のGIS上で管理されてもよい。GIS上での管理により、土地利用計画の検討、地下構造の設計変更などへの応用が容易になる。本実施形態に係る情報処理システム1は、GISとして構成されてもよい。
【0066】
地質区分検出部114は、特定される3以上の地質調査地点を、それぞれの調査地点を頂点として有する多角形の領域が計画地点を含むことを条件として選択してもよい。また、地質区分検出部114は、断層の分布をさらに示す地質データを参照し、その多角形の領域が断層を含むか否かを判定し、断層を含まないことを条件として、その3以上の調査地点を選択してもよい。地質区分検出部114は、地図データに表される断層の分布に基づいて、多角形の領域が断層を含むか否かを判定することができる。断層を境界として、地質構造が大きく異なる可能性が高いため、断層を跨いで分布する調査地点の選択を避けることで汚染を有する地質区分の推定精度を確保することができる。
【0067】
また、操作入力部20として機能するタッチセンサは、表示部50として機能するディスプレイと一体化し、タッチパネルとして構成されてもよい。
出力処理部118からの汚染物質情報の出力先は、表示部50に限られない。出力先は、他の機器、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末装置、多機能携帯電話機、などであってもよい。
【0068】
入力処理部112、地質区分検出部114、汚染土壌推定部116、出力処理部118、および、地質情報管理部120の一部または全部は、専用の集積回路を含んで構成されてもよいし、情報処理装置10をなす汎用のコンピュータシステムが記憶部130から読み出したプログラムに記述された指令で指示される処理を実行して、それらの機能を実現してもよい。
【0069】
以上に説明したように、前述の実施形態に係る情報処理装置10は、地質調査地点ごとの地質区分の深度分布を示す地質データと、発生土調査に基づく地質区分ごとに汚染土壌の存在を示す汚染土壌データを記憶する記憶部130を備える。情報処理装置10は、地質データを参照して、作業計画(例えば、新築計画)を有する計画地点からの距離に基づいて複数の調査地点を選択し、選択した調査地点に共通の地質区分を検出する地質区分検出部114を備える。情報処理装置10は、汚染土壌データを参照し、検出された地質区分に基づいて計画地点における汚染土壌の存在を推定する汚染土壌推定部116と、を備える。
この構成によれば、計画地点からの距離に基づいて選択された複数の調査地点に共通の地質区分が、計画地点における地質区分として推定される。汚染土壌データを算出して、推定された地質区分に基づいて計画地点における汚染土壌の存在が推定される。計画地点において掘削を伴う地質調査を行わずに汚染土壌の存在が推定される。汚染土壌の有無や量に依存する作業工程の要否を計画段階で推定することで、工事計画を推進することができる。
【0070】
また、地質区分検出部114は、選択した調査地点ごとの各地質区分の標高に基づいて計画地点における各地質区分の標高を推定してもよい。汚染土壌推定部116は、汚染土壌データを参照し、汚染が検出される地質区分の標高を特定し、当該標高と計画地点における掘削深度の範囲に基づいて、当該計画地点における汚染土壌の掘削の有無を推定してもよい。
この構成によれば、各調査地点における地質区分の標高から計画地点において推定される地質区分の標高と掘削深度に基づいて、汚染が検出される地質区分の掘削の有無が判定される。汚染が検出される地質区分の掘削の有無を、計画地点における予備的な掘削を伴わずに推定することができる。
【0071】
また、汚染土壌推定部116は、汚染土壌データを参照し、掘削深度の範囲に含まれ、汚染土壌が検出される地質区分の層厚、計画地点における掘削面積、および、汚染土壌の存在率に基づいて、汚染土量を推定してもよい。
この構成によれば、計画地点において掘削深度の範囲に含まれる地層区分のうち、汚染土壌が検出される地質区分の層厚、掘削面積、および、汚染土壌の存在率から、汚染土量が推定される。汚染が検出される汚染土量を、計画地点における予備的な掘削を伴わずに推定することができる。
【0072】
また、複数の調査地点は、計画地点から最も近接した3以上の調査地点であり、計画地点は3以上の調査地点をそれぞれ頂点とする領域に含まれる。
この構成によれば、計画地点から最も近接し、その計画地点を含む領域を形成する3以上の調査地点における地質区分の深度分布が汚染土壌の存在の推定に用いられる。そのため、計画地点における地質区分、ひいては、汚染土壌の存在に対する推定精度を確保することができる。
【0073】
また、情報処理装置10は、地質調査地点ごとに地質区分の深度分布を示す深度分布情報を地質データに追加し、調査地点における地質区分での汚染の有無に基づいて汚染土壌データを更新する地質情報管理部120を備えてもよい。
この構成によれば、地質調査により調査地点における地質情報が取得される都度に、地質情報に基づく深度分布情報が地質データに追加される。また、発生土調査により調査地点における地質区分の汚染の有無が判明する都度、汚染土壌データが更新される。地質データおよび汚染土壌データの更新により、汚染土壌の推定精度を向上することができる。
【0074】
また、地質情報管理部120は、調査地点における地質区分から汚染を検出した汚染検出度数を計数し、汚染土壌データにおける当該地質区分での汚染土壌の存在率を汚染検出度数に基づく汚染土壌の存在率に更新してもよい。
この構成によれば、発生土調査地点において汚染の有無を検出した地質区分ごとに汚染の存在率が更新される。汚染土壌データにおける汚染の存在率の更新により、計画時点において推定される汚染土壌の存在率の推定精度を向上することができる。
【0075】
以上、本実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の各構成に限られるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の各構成は、任意に組み合わせることができ、その一部が省略されうる。
【符号の説明】
【0076】
1…情報処理システム、10…情報処理装置、20…操作入力部、30…データ入力部、40…画像入力部、50…表示部、110…制御部、112…入力処理部、114…地質区分検出部、116…汚染土壌推定部、118…出力処理部、120…地質情報管理部、122…地質認識部、124…地質区分判定部、126…地質情報更新部、130…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7