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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071031
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20240517BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240517BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240517BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61M1/14
A61M1/16 185
A61M1/36 127
A61M39/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181749
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑樹
【テーマコード(参考)】
4C066
4C077
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066CC01
4C066FF01
4C066JJ03
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD22
4C077KK17
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】血液浄化器に接続される回路配置を簡潔にしつつ接続ポートを清潔に維持する。
【解決手段】第1接続ポート141は、血液浄化器10の透析液入口11に接続される。第2接続ポート142は、血液浄化器10の排液出口12に接続される。第1接続チューブは、筐体の内部に配置され、第1接続ポート141と連通している。第2接続チューブは、筐体の内部に配置され、第2接続ポート142と連通している。血液浄化装置は、第1接続ポート141および第2接続ポート142を、血液浄化器10と接続不能な第1状態と血液浄化器10と接続可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
血液浄化器の透析液入口に接続される第1接続ポートと、
前記血液浄化器の排液出口に接続される第2接続ポートと、
前記筐体の内部に配置され、前記第1接続ポートと連通している第1接続チューブと、
前記筐体の内部に配置され、前記第2接続ポートと連通している第2接続チューブとを備え、
前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートが、前記血液浄化器と接続不能な第1状態と前記血液浄化器と接続可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている、血液浄化装置。
【請求項2】
前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々は、回動軸を中心に回動可能な回動体に設けられており、
前記回動体が回動することにより、前記第1状態と前記第2状態とに切り替わる、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記透析液入口と前記排液出口との間隔に応じて、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている、請求項1または請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記血液浄化器に関する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記情報に基づいて前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更する制御部とをさらに備える、請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記情報は、前記血液浄化器の、膜面積、全長、ISO規格および品目名のいずれかである、請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記第1状態にある、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々に接続され、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々を洗浄可能な洗浄モジュールをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記第2状態にある、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々は、斜め下方または下方に向いている、請求項1または請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
筐体と、
血液浄化器の透析液入口に接続される第1接続ポートと、
前記血液浄化器の排液出口に接続される第2接続ポートとを備え、
前記透析液入口と前記排液出口との間隔に応じて、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている、血液浄化装置。
【請求項9】
前記血液浄化器の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記情報に基づいて前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更する制御部とをさらに備える、請求項8に記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記情報は、前記血液浄化器の、膜面積、全長、ISO規格および品目名のいずれかである、請求項9に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能が低下した患者の治療を行うため、半透膜作用を奏する中空糸が内包された血液浄化モジュールを使用した血液透析による治療が行われてきた。血液透析では、血液回路により治療が行われており、血液回路は、血液浄化モジュールと、患者の血管に直接繋がれた、血液を血液浄化モジュールへ導入する動脈ラインおよび返血のための静脈ラインと、透析液を血液浄化モジュールへ導入する透析液ラインおよびその透析液を排出する排液ラインとを有している。これらの4つのラインが血液浄化モジュールのポート部分に繋がれ、半透膜を介した血液および透析液の濃度差を利用した拡散現象、および圧力差を利用した濾過現象を起こすことで、患者の血液中に存在する尿毒素等の不要な物質の除去と不足しているカルシウム等の物質の補充を行いつつ、血液からの過剰な水分の除去が行われることで腎機能の代替を可能としている。
【0003】
血液透析治療においては、治療前にライン中の空気を液体へ置換しつつ流路の洗浄を行うプライミング操作および過剰な水分放出の対策として補液を導入する操作などの工程が多く、さらに医療従事者のスキルに依存した煩雑な作業が求められていた。医療従事者の負担を減らすため、装置の大半における自動化を図った血液透析装置を開示した先行文献として、特開2000-325470号公報(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-325470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような自動化によって医療従事者の負担が減らされた一方、血液回路の取り回しについては改善されていない。透析装置などの血液浄化装置においては、血液浄化モジュールが、たとえば装置側面のホルダによって、モジュール全体が露出した状態で保持されている。このため、血液浄化装置の周囲が、血液ライン、透析液ラインおよび排液ラインが血液浄化モジュールの各ポートにつながれることにより雑然となり、医療従事者の作業中に各種ラインに腕や手などが引っ掛かる可能性がある。また、血液浄化装置において血液浄化器と接続される接続ポートは、清潔に維持されることが求められる。さらに、患者の体格や状態に合わせて濾過性能の異なる種々の血液浄化モジュールが使用されることから、血液浄化装置は多種多様な血液浄化モジュールに対応できる必要がある。
【0006】
本発明は上記に挙げた種々の課題に鑑みてなされたものであって、血液回路が接続されるポート周りの構造を改善した、血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に基づく血液浄化装置は、筐体と、第1接続ポートと、第2接続ポートと、第1接続チューブと、第2接続チューブとを備える。第1接続ポートは、血液浄化器の透析液入口に接続される。第2接続ポートは、血液浄化器の排液出口に接続される。第1接続チューブは、筐体の内部に配置され、第1接続ポートと連通している。第2接続チューブは、筐体の内部に配置され、第2接続ポートと連通している。血液浄化装置は、第1接続ポートおよび第2接続ポートを、血液浄化器と接続不能な第1状態と血液浄化器と接続可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている。
【0008】
本発明の一形態においては、第1接続ポートおよび第2接続ポートの各々は、回動軸を中心に回動可能な回動体に設けられている。回動体が回動することにより、上記第1状態と上記第2状態とに切り替わる。
【0009】
本発明の一形態においては、血液浄化装置は、透析液入口と排液出口との間隔に応じて、第1接続ポートおよび第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、第1接続ポートと第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている。
【0010】
本発明の一形態においては、血液浄化装置は、記憶部と、制御部とをさらに備える。記憶部は、血液浄化器に関する情報を記憶する。制御部は、記憶部に記憶されている上記情報に基づいて第1接続ポートと第2接続ポートとの間隔を変更する。
【0011】
本発明の一形態においては、上記情報は、血液浄化器の、膜面積、全長、ISO規格および品目名のいずれかである。
【0012】
本発明の一形態においては、血液浄化装置は、上記第1状態にある、第1接続ポートおよび第2接続ポートの各々に接続され、第1接続ポートおよび第2接続ポートの各々を洗浄可能な洗浄モジュールをさらに備える。
【0013】
本発明の一形態においては、上記第2状態にある、第1接続ポートおよび第2接続ポートの各々は、斜め下方または下方に向いている。
【0014】
本発明の第2局面に基づく血液浄化装置は、筐体と、第1接続ポートと、第2接続ポートとを備える。第1接続ポートは、血液浄化器の透析液入口に接続される。第2接続ポートは、血液浄化器の排液出口に接続される。血液浄化装置は、透析液入口と排液出口との間隔に応じて、第1接続ポートおよび第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、第1接続ポートと第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、血液浄化装置において、血液回路が接続されるポート周りの構造を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の第1状態を示す正面図である。
図2図1の血液浄化装置を矢印II方向から見た左側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の第2状態を示す左側面図である。
図4】第1状態のときの回動体の周囲の構成を示す図である。
図5】第2状態のときの回動体の周囲の構成を示す図である。
図6図5の回動体を矢印VI方向から見た図である。
図7】第1接続ポートおよび第2接続ポートが互いに接触して回動体の長さ方向の略中央に位置している状態を示す図である。
図8】第2状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに血液浄化器の透析液入口および排液出口をそれぞれ接続する状態を示す図である。
図9】第1状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに洗浄モジュールを接続する状態を示す図である。
図10】第1状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに洗浄モジュールが接続された状態を図9の矢印X方向から見た図である。
図11】血液浄化装置が備える制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の第1状態を示す正面図である。図2は、図1の血液浄化装置を矢印II方向から見た左側面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の第2状態を示す左側面図である。図4は、第1状態のときの回動体の周囲の構成を示す図である。図5は、第2状態のときの回動体の周囲の構成を示す図である。
【0019】
図1図5に示すように、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置100は、筐体110を備える。筐体110上に操作パネル20が設けられている。筐体110は、略直方体状の外形を有している。筐体110は、正面111を有している。
【0020】
筐体110の正面111に血液ポンプ170が設けられている。血液ポンプ170には、血液回路30が接続される。血液ポンプ170は、たとえばローラ式ポンプである。筐体110の正面111にシリンジポンプ180が設けられている。本実施形態においては、シリンジポンプ180は、血液ポンプ170より上方に位置し、シリンジを水平方向に駆動するように設けられている。また、筐体110の正面111には、血液回路30を保持するための図示しない複数のクリップ部が設けられている。
【0021】
筐体110の正面111に、回動軸120および回動体130が設けられている。回動体130は、回動軸120を中心に回動可能である。回動軸120は、後述する制御部と電気的に接続されており、制御部によって回転駆動させられる。回動体130が回動軸120を中心に回動することにより、図1,2,4に示すように血液浄化器10と接続不能な第1状態と、図3,5に示すように血液浄化器10と接続可能な第2状態とに切り替わる。
【0022】
なお、回動軸120が制御部に電気的に接続されておらず、制御部に電気的接続されている棒状の付加部品が回動体130に取り付けられており、制御部によって付加部品が駆動されることにより回動体130が回動軸120を中心に回動する構成であってもよい。
【0023】
また、第1状態と第2状態とが必ずしも制御部によって切り替えられる構成でなくてもよく、たとえば、回動体130を手などにより筐体110へ向けて押し込む際に押圧される第1面131上の被押圧部と、回動体130が筐体110の外側に向けて回動するように付勢する付勢部材と、回動体130を筐体110に対してロック可能なロック機構とが設けられている、いわゆるプッシュオープン機構が設けられていてもよい。
【0024】
この構成の場合、第1状態にある回動体130の被押圧部が押圧されることによりロックが解除され、ばねなどの付勢部材の付勢力によって回動体130が回動して第2状態に移行する。第2状態にある回動体130の被押圧部が押圧されることにより付勢部材の付勢力に抗しつつ回動体130が回動して第1状態になるとともにロック機構によって回動体130がロックされる。
【0025】
図4および図5に示すように、回動体130は、略三角柱状の外形を有している。回動体130は、回動軸120にそれぞれ接続された、第1面131および第2面132を有している。図1,2,4に示すように、第1状態において、第1面131は、筐体110の正面111と連続した面を構成するように位置している。図3,5に示すように、第2状態において、第2面132は、筐体110の正面111と連続した面を構成するように位置している。なお、回動体130の形状は、三角柱状に限られず、他の多角形状であってもよい。
【0026】
図6は、図5の回動体を矢印VI方向から見た図である。図4~6に示すように、血液浄化装置100は、第1接続ポートと141と、第2接続ポート142と、第1接続チューブと41と、後述する図9,10に示す第2接続チューブ42とを備える。
【0027】
第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、回動体130に設けられている。具体的には、回動体130の内部の、第1面131と第2面132とに挟まれた領域に、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々が配置されている。第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々の端面は、回動体130の外形の三角柱形状における第1面131と第2面132とを互いに接続する仮想面に沿うように位置している。
【0028】
図1,2,4に示す第1状態においては、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、筐体110の内側に格納されている。図3,5に示す第2状態においては、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、筐体110の外側に露出している。
【0029】
図6に示すように、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、回動体130の内部に設けられた移動機構150と接続されている。移動機構150は、第1接続ポート141および第2接続ポート142の少なくとも一方を移動させて、第1接続ポート141と第2接続ポート142との間隔を変更可能である。移動機構150は、制御部と電気的に接続されており、制御部によって駆動させられる。移動機構150は、たとえば、ボールねじまたはスライドレールなどで構成されている。
【0030】
図7は、第1接続ポートおよび第2接続ポートが互いに接触して回動体の長さ方向の略中央に位置している状態を示す図である。移動機構150が駆動することにより、図6に示すように第1接続ポート141と第2接続ポート142とが互いに離間している状態から、図7に示すように第1接続ポート141および第2接続ポート142が互いに接触して回動体130の長さ方向の略中央に位置する状態に変化可能である。なお、回動体130の長さ方向は、後述する回動軸の軸方向に平行な方向である。
【0031】
図6および図7に示すように、回動体130の第2面132には、回動体130の長さ方向に延在する開口133が形成されている。開口133は、回動体130の内部から、第1接続チューブ41および第2接続チューブ42の各々を引き出すために設けられている。
【0032】
図4および図5に示すように、第1接続チューブ41は、筐体110の内部に配置され、第1接続ポート141と連通している。同様に、第2接続チューブ42は、筐体110の内部に配置され、第2接続ポート142と連通している。
【0033】
図8は、第2状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに血液浄化器の透析液入口および排液出口をそれぞれ接続する状態を示す図である。血液浄化器10の一例として、ダイアライザがあり、たとえば中空糸膜からなる半透膜を内部に有している。図8に示すように、血液浄化器10は、透析液入口11および排液出口12を有する。
【0034】
第2状態にある、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、斜め下方または下方に向いている。そのため、血液浄化器10の透析液入口11および排液出口12は、斜め上方または上方に向いた状態で、第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ接続される。
【0035】
血液浄化器10の種類に応じて、膜面積、全長、透析液入口11と排液出口12との間隔が異なる場合がある。血液浄化器10の種類は、ISO(International Organization for Standardization)規格などに準ずる。血液浄化器10の種類に応じた透析液入口11と排液出口12との間隔は、後述する制御部の記憶部に記憶されている。制御部は、透析液入口11と排液出口12との間隔に応じて移動機構150を駆動させることにより、第1接続ポート141および第2接続ポート142の少なくとも一方を移動させて、第1接続ポート141と第2接続ポート142との間隔を変更可能である。
【0036】
第1接続ポート141および第2接続ポート142に血液浄化器10の透析液入口11および排液出口12がそれぞれ接続された後、第1接続チューブ41を通じて透析液が供給される。
【0037】
第1接続チューブ41を通流した透析液は、第1接続ポート141に接続された透析液入口11から血液浄化器10内に流入する。第2接続ポート142に接続された排液出口12から血液浄化器10内の使用済み透析液が流出した排液は、第2接続チューブ42を通流して排出される。
【0038】
図9は、第1状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに洗浄モジュールを接続する状態を示す図である。図10は、第1状態にある第1接続ポートおよび第2接続ポートに洗浄モジュールが接続された状態を図9の矢印X方向から見た図である。
【0039】
図9および図10に示すように、血液浄化装置100は、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を洗浄可能な洗浄モジュール190をさらに備える。洗浄モジュール190は、筐体110の内部に配置され、移動可能に設けられている。洗浄モジュール190には、洗浄液が通流する洗浄液流路193が形成されている。洗浄液流路193は、第1接続ポート141に接続される第1接続部191と、第2接続ポート142に接続される第2接続部192とに、繋がっている。
【0040】
図9に示すように、第1接続部191および第2接続部192は、第1接続ポート141および第2接続ポート142が互いに接触して回動体130の長さ方向の略中央に位置する状態のときの第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ接続可能な位置に設けられている。
【0041】
第1接続ポート141および第2接続ポート142に洗浄モジュール190の第1接続部191および第2接続部192がそれぞれ接続された後、洗浄液流路193を通じて洗浄液が供給される。その結果、第1接続ポート141から第1接続チューブ41に洗浄液が流入するとともに、第2接続ポート142から第2接続チューブ42に洗浄液が流入する。洗浄液によって、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々、並びに、第1接続チューブ41および第2接続ポート142の各々を洗浄することができる。洗浄終了後は、洗浄モジュール190は、第1接続ポート141および第2接続ポート142から離間した待避位置に移動する。
【0042】
図11は、血液浄化装置が備える制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。図11に示すように、制御部50は、回動軸120、移動機構150および洗浄モジュール190の各々と電気的に接続されている。制御部50は、回動軸120、移動機構150および洗浄モジュール190の各々の動作を制御する。制御部50は、記憶部51を含む。
【0043】
記憶部51は、血液浄化器10に関する情報を記憶する。血液浄化器10に関する情報には、血液浄化器10の、膜面積、全長、ISO規格および品目名が含まれる。記憶部51に、血液浄化器10の中空糸膜の面積に応じた透析液の流量がさらに記憶されていてもよい。
【0044】
制御部50は、記憶部51に記憶されている上記情報に基づいて第1接続ポートと第2接続ポートとの間隔を変更する。たとえば、制御部50は、記憶部51に記憶されているISO規格に準じた透析液入口11と排液出口12との間隔に基づいて第1接続ポートと第2接続ポートとの間隔を変更する。
【0045】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、回動体130を回動することにより、第1状態と第2状態とに切り替える構成であったが、血液浄化装置100の構成はこれに限られない。血液浄化装置は、たとえば、筐体110に第1接続ポート141および第2接続ポート142が固定されており、第1接続ポート141および第2接続ポート142を外部から隔離可能なシャッターなどが設けられることにより、シャッターの開閉によって第1状態と第2状態とに切り替える構成であってもよい。
【0046】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、第1接続チューブ41は、筐体110の内部に配置され、第1接続ポート141と連通している。第2接続チューブ42は、筐体110の内部に配置され、第2接続ポート142と連通している。血液浄化装置100は、第1接続ポート141および第2接続ポート142を、筐体110の内側に格納した第1状態と筐体110の外側に露出した第2状態とに切り替え可能に構成されている。
【0047】
これにより、第1接続チューブ41および第2接続チューブ42が筐体110の外部に位置しないため、血液浄化器10に接続される回路配置を簡潔にすることができ、透析治療時以外は第1接続ポート141および第2接続ポート142は筐体110の内部で保護されているため、第1接続ポート141および第2接続ポート142を清潔に維持することができる。
【0048】
また、第1状態において、第1接続ポート141および第2接続ポート142が筐体110の内側に格納されているため、筐体110の正面111の凹凸を減らして、筐体110の正面111を簡易に清掃することができる。
【0049】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、回動軸120を中心に回動可能な回動体130に設けられている。回動体130が回動することにより、上記第1状態と上記第2状態とに切り替わる。これにより、第1状態において、回動体130の第1面131を筐体110の正面111と連続した面を構成するように位置させることができるため、筐体110の正面111の凹凸を効果的に減らすことができる。その結果、筐体110の正面111をより簡易に清掃することができる。
【0050】
特に、回動体130の外形が三角柱形状であることにより、第2状態において、回動体130の第2面132を筐体110の正面111と連続した面を構成するように位置させることができ、透析治療中に筐体110の内部に異物が侵入することを抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、透析液入口11と排液出口12との間隔に応じて、第1接続ポート141および第2接続ポート142の少なくとも一方を移動させて、第1接続ポート141と第2接続ポート142との間隔を変更可能に構成されている。これにより、透析液入口11と排液出口12との間隔が互いに異なる種々の血液浄化器10に対応することが可能となる。
【0052】
また、制御部50が記憶部51に記憶されている、血液浄化器10の種類に応じた透析液入口11と排液出口12との間隔に基づいて、移動機構150を駆動させて第1接続ポート141と第2接続ポート142との間隔を自動で変更することにより、透析液入口11と排液出口12との間隔が互いに異なる種々の血液浄化器10に簡易に対応することができる。
【0053】
本実施形態に係る血液浄化装置100は、第1状態にある、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々に接続され、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を洗浄可能な洗浄モジュール190をさらに備える。これにより、洗浄モジュール190によって、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を洗浄することができ、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を清潔に維持することができる。
【0054】
また、洗浄モジュール190が制御部50によって動作を制御されることにより、第1接続部191および第2接続部192を第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ確実に接続した状態で、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を洗浄することができる。その結果、洗浄中に洗浄液が漏れることを抑制することができる。
【0055】
さらに、第1接続部191および第2接続部192は、第1接続ポート141および第2接続ポート142が互いに接触して回動体130の長さ方向の略中央に位置する状態のときの第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ接続される。これにより、透析液入口11と排液出口12との間隔が互いに異なる種々の血液浄化器10に対応するために第1接続ポート141と第2接続ポート142との間隔が変更された後に第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々を洗浄する場合において、第1接続ポート141および第2接続ポート142を一定の位置に配置した状態で、第1接続部191および第2接続部192を第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ接続することができる。その結果、第1接続部191と第2接続部192との間隔を変更する機構を設ける必要がないため、洗浄モジュール190の構成を簡易にすることができる。
【0056】
また、洗浄終了後に、洗浄モジュール190は、制御部50によって第1接続ポート141および第2接続ポート142から離間した待避位置に移動させられる。これにより、回動体130が回動して第1状態から第2状態に切り替わる際に、洗浄モジュール190は回動体130の回動に関わらず待避位置に留まっているため、洗浄モジュール190が筐体110の内部で他の構成部品と干渉することを抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、第2状態にある、第1接続ポート141および第2接続ポート142の各々は、斜め下方または下方に向いている。これにより、血液浄化器10の透析液入口11および排液出口12は、斜め上方または上方に向いた状態で、第1接続ポート141および第2接続ポート142にそれぞれ接続されるため、プライミング時に、血液浄化器10内のエアを透析液入口11および排液出口12のいずれかから効率よく除去することができる。
【0058】
(付記)
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0059】
(第1項)
筐体と、
血液浄化器の透析液入口に接続される第1接続ポートと、
前記血液浄化器の排液出口に接続される第2接続ポートと、
前記筐体の内部に配置され、前記第1接続ポートと連通している第1接続チューブと、
前記筐体の内部に配置され、前記第2接続ポートと連通している第2接続チューブとを備え、
前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートを、前記血液浄化器と接続不能な第1状態と前記血液浄化器と接続可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている、血液浄化装置。
【0060】
(第2項)
前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々は、回動軸を中心に回動可能な回動体に設けられており、
前記回動体が回動することにより、前記第1状態と前記第2状態とに切り替わる、第1項に記載の血液浄化装置。
【0061】
(第3項)
前記透析液入口と前記排液出口との間隔に応じて、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている、第1項または第2項に記載の血液浄化装置。
【0062】
(第4項)
前記血液浄化器に関する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記情報に基づいて前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更する制御部とをさらに備える、第3項に記載の血液浄化装置。
【0063】
(第5項)
前記情報は、前記血液浄化器の、膜面積、全長、ISO規格および品目名のいずれかである、第4項に記載の血液浄化装置。
【0064】
(第6項)
前記第1状態にある、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々に接続され、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々を洗浄可能な洗浄モジュールをさらに備える、第1項~第5項のいずれか1項に記載の血液浄化装置。
【0065】
(第7項)
前記第2状態にある、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの各々は、斜め下方または下方に向いている、第1項~第6項のいずれか1項に記載の血液浄化装置。
【0066】
(第8項)
筐体と、
血液浄化器の透析液入口に接続される第1接続ポートと、
前記血液浄化器の排液出口に接続される第2接続ポートとを備え、
前記透析液入口と前記排液出口との間隔に応じて、前記第1接続ポートおよび前記第2接続ポートの少なくとも一方を移動させて、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更可能に構成されている、血液浄化装置。
【0067】
(第9項)
前記血液浄化器に関する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記情報に基づいて前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとの間隔を変更する制御部とをさらに備える、第8項に記載の血液浄化装置。
【0068】
(第10項)
前記情報は、前記血液浄化器の、膜面積、全長、ISO規格および品目名のいずれかである、第9項に記載の血液浄化装置。
【0069】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10 血液浄化器、11 透析液入口、12 排液出口、20 操作パネル、30 血液回路、41 第1接続チューブ、42 第2接続チューブ、50 制御部、51 記憶部、100 血液浄化装置、110 筐体、111 正面、120 回動軸、130 回動体、131 第1面、132 第2面、133 開口、141 第1接続ポート、142 第2接続ポート、150 移動機構、170 血液ポンプ、180 シリンジポンプ、190 洗浄モジュール、191 第1接続部、192 第2接続部、193 洗浄液流路。
図1
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