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特開2024-71032直動伸縮機構並びに該直動伸縮機構を有するアジャスタ及び階段昇降ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071032
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】直動伸縮機構並びに該直動伸縮機構を有するアジャスタ及び階段昇降ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20240517BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20240517BHJP
   B25J 18/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16H25/20 A
F16H25/24 A
F16H25/24 B
B25J18/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181750
(22)【出願日】2022-11-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】522445000
【氏名又は名称】江口 千央
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】江口 千央
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707CS08
3C707CU03
3C707CY36
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT21
3C707MT01
3C707WA16
3J062AA38
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA14
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD24
3J062CD47
3J062CD50
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】ねじの回転により直線方向伸縮移動をコンパクトな構造で、円滑かつ高精度に行うための直動伸縮機構並びに該直動伸縮機構を有するアジャスタ及び階段昇降ロボットを提供する。
【解決手段】本発明は、一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように隣接螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行う軸部材が少なくとも2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構であって、一方の軸部材の縮小方向側に位置する先端縁部から中央部に形成される雄ねじ(ピッチ幅X1)、及び他方の軸部材の伸張方向側に位置する先端縁部から中央部に形成される雌ねじ(ピッチ幅Y1)において、それぞれのピッチ幅をX1>Y1を満たすように形成するか、又はそれぞれの部分にねじが形成されない平滑部分を設けることにより、両者の軸部材が同期して連動回転するように雄ねじの回転を雌ねじで拘束する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行うため、少なくとも前記軸部材が2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構であって、
前記一方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雄ねじが軸方向に2以上の領域で形成される外周表面、又は雄ねじが形成される部分と前記雄ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雌ねじが軸方向に2以上の領域で形成される内周表面、又は雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記一方の軸部材において一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記他方の軸部材において前記一方の軸部材の一方の端縁部とは反対側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅をY1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するか、又は
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記一方の軸部材の一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじ、又は前記一方の軸部材の外周表面に配置される前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする直動伸縮機構。
【請求項2】
前記一方の軸部材において、前記ピッチ幅X1より狭いピッチ幅X2を有する雄ねじが、前記一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される外周表面と、
前記他方の軸部材面において、前記ピッチ幅Y1より広いピッチ幅Y2を有する雌ねじが、前記一方の軸部材の一方の先端部とは同じ側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される内周表面と、を有しており、
前記ピッチ幅X1、X2及びY1及びY2が、X2≦Y1<X1≦Y2の条件を満たすように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ネジの回転が前記雌ネジに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して、前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項3】
前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、nを2~4のいずれかの整数とするとき、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2をそれぞれ有する雄ねじ及び雌ねじのねじ山角度がすべて同じになるように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項4】
前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、nを2~4のいずれかの整数とするとき、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじにおいて前記ピッチ幅Y2を有する雌ねじと干渉する部分に位置する雄ねじのねじ山を削除することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項5】
前記一方の軸部材の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジの形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじの形成領域との間に、前記雄ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項6】
前記他方の軸部材の内周表面が、ピッチ幅Y1を有する雌ねじの形成領域とピッチ幅Y2を有する雌ねじの形成領域との間に、前記雌ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする請求項5に記載の直動伸縮機構。
【請求項7】
前記一方の軸部材は、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじが軸方向に2つの領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向の直列に備える内周表面を有し、
前記一方の軸部材の一方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記一方の軸方向の一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅Y1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するとともに、
前記雌ねじが形成されない平滑部分には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじの先端部と螺合する雌ねじとしての役割を担うように、前記雄ねじの先端部と同じ形状を有する複数の凹部を前記X1と同じピッチ幅で規則的に形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項8】
前記一方の軸部材が、雄ねじが形成される部分と前記雄ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材が、雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじと干渉させるように、前記一方の軸部材の一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に設けられる前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記他方の軸部材に形成される雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項9】
前記複数の直動伸縮機構が、
最前段又は最上段の位置に配置され、外周表面に雄ねじが形成される前記軸部材Lと、
最前段及び最後段の間、又は最上段及び最下段の間の段に配置され、外周及び内周にそれぞれ雄ねじと雌ねじとが形成される軸部材Mの1または2以上と、
最後段又は最下段の位置に配置され、内周表面に雌ねじが形成される前記軸部材Nと、
の3段以上の軸部材を有し、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記一方の軸部材に相当する軸部材L及びMの外周表面には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじ又は前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記軸部材L及びMの一方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されるとともに、
前記他方の軸部材に相当する軸部材M及びNの内周表面には、前記ピッチ幅Y1を有する雌ねじ又は前記雌ねじが形成されない平滑部分が、前記軸部材M及びNにおいて前記軸部材L及びMの一方の先端部とは反対側に位置する先端縁部から各軸部材の軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されており、
前記X1及びY1を、前記一方の軸部材及び前記他方の軸部材との位置関係においてX1>Y1の条件を満たすようにそれぞれ独立に形成するか、又は
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記軸部材Lが前記軸部材Mの内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記軸部材Lの外周雄ねじが前記軸部材Mの内周雌ねじと当接し、引き続き、前記軸部材Mの外周雄ねじが前記軸部材Nの内周雌ねじと当接するとき、前記雄ねじの回転が順次、雌ねじに拘束され、該拘束によって、
前記軸部材Mが1つである場合は、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な回転から前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ転換され、また、
前記軸部材Mが2以上である場合は、前記軸部材Mの設置段数に応じて、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な連動回転、前記軸部材Mから隣接する他の軸部材Mとの同期的な連動回転の繰り返し、及び前記別の軸部材Mに隣接する前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ、それぞれ順に転換されることを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項10】
前記一方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部には、前記一方の軸部材を縮小させるとき、前記一方の軸部材の縮小方向への移動を前記他方の軸部材の伸長方向側の先端縁部で停止させるためのストッパが形成されており、
前記ストッパが、前記一方の軸部材の外周表面において伸張方向側に位置する先端縁部から伸長側に向けて所定の長さで形成され、前記雌ねじのピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ、及び、前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじの呼び径を超える直径又は長さを有し、前記一方の軸部材の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるフランジ部又はキャップ部材、の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の直動伸縮機構。
【請求項11】
請求項10に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、を有することを特徴とするアジャスタ。
【請求項12】
請求項10に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、
前記直動伸縮機構と入れ子式又は直列式に組み合わされる円筒状又は角筒状の筒部材の2以上を備える多段筒部材で組まれる直動伸縮機構と、を有し、
前記筒部材のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面、及び前記筒部材の直動をそれぞれ独立に止めるためのフランジ部又は留め具が形成される両端部を備えており、前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構において最近接の筒部材を基台に固定することにより、
前記回転モータの駆動による前記直動伸縮機構の伸縮に伴って前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構の伸縮を行うことを特徴とするアジャスタ。
【請求項13】
請求項10に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材に装着されるスラストベアリングと、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平面と並行な方向に沿って移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が前記スラストベアリングと直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボット。
【請求項14】
請求項10に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平方向と並行に移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が、全方向車輪から構成され、かつ、前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材の先端と直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台や装置の高さ又はロボットアームの先端位置を送りネジの回転により直線方向へ伸縮移動を行うための直動伸縮機構において、コンパクトな構造によって伸縮移動を円滑、かつ、高精度に行うことができる直動伸縮機構及び該直動伸縮機構を有するアジャスタ及び階段昇降ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
装置の底面に取り付けられて床面からの高さを調整するアジャスタとしては様々な方式が採用されており、それらの中で、ネジの螺合を複数段にして伸縮により高さを調整するアジャスタ装置や伸縮装置が広く知られている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0003】
特許文献1には、軸部材21、22、29間の相対移動によって伸縮自在な少なくとも3段式アジャスタ20が提案されている。前記特許文献1において、外側の軸部材22(29)の内部から突出する内側の軸部材21(22)を途中で停止するため、ねじ部を有しない領域25(28)を外側の軸部材22(29)の内部に形成したアジャスタ構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、装置の底面に取り付けられ、ねじの螺号を複数段にして伸縮させることによって床面からの高さを調整するアジャスタが提案されている。前記特許文献2において、ねじ管6a及び台足7aの伸張を停止するため、それぞれねじ管6aの上端にその外周から突出したストッパ64、及び台足7aの上端にその外周より突出したストッパ72が設けられたアジャスタ構造が開示されている。
【0005】
特許文献3には、回転起動機構と、複数のねじ機構と、連結部材とを有するねじ式伸縮装置が提案されている。前記特許文献3において、ねじの直動を停止するためのストッパとして機能する短縮伝達部50が、各ねじ筒の内方端の外方外周56a、56b、56cに設けられ、また、伸張伝達部(不図示)が、各ねじ筒の外方端の外方内周58a、58b、58cに設けられた装置の構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、基部12及び最上部の部品3が回転しないように、外側の入れ子プロフィール構造4~6を有する入れ子式伸縮動力装置が提案されている。
【0007】
さらに、伸縮装置としては、ボールねじ軸と螺合するボールねじナットの移動により入れ子式の筒部材(又はロッド)の伸縮を行う伸縮措置が提案されている(例えば、特許文献5及び6を参照)。
【0008】
一方、産業界及び生活支援の分野においては、平面上の移動機構だけでなく、階段又は段差等の踏破性を備えるロボットが要求されている。それらの機能を有するロボットして、脚と車輪を融合した形状のロボットが提案されている(例えば、特許文献7及び8を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-310207号公報
【特許文献2】実開平3-61377号公報
【特許文献3】特開6-17897号公報
【特許文献4】特表2013-518786号公報
【特許文献5】特開平8-159382号公報
【特許文献6】特開2022-64290号公報
【特許文献7】特開2014-161991号公報
【特許文献8】特開2003-205480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
作業台や装置の高さ又はロボットアームの先端位置を決めるために使用される伸縮装置としては、省スペース化及びメンテナンス容易性の観点から、できるだけコンパクトな構造とすることが求められる。その一方で、それらの先端位置を高精度で調整する場合にはアジャスタ装置又は伸縮装置において、伸縮移動時にモーメント荷重等によるねじ部分又はアーム部分の撓みや変形を抑制するため、直線伸縮移動時の堅牢性(ロバスト性)を向上する必要がある。例えば、アジャスタ装置又は伸縮装置を地面や装置水平面に対して平行方向又は斜め後方に伸縮移動させる場合、移動部分であるねじ部分又はアーム部分が下方への撓みや変形等を起こすような脆弱な構造においては高精度の位置調整を行うことが困難になる。特に、ねじ部分及びアーム部分の最先端部に治具や機器等の重量物又は大物のテーブルなどを接続するときは、先端部の位置精度を許容範囲内に収めることができなくなるという問題がある。
【0011】
前記特許文献1及び2に記載のアジャスタは、雄ねじと雌ねじとが互いに螺合する部分が、ねじ軸の両端一方の片側の狭い領域に限られる。そのため、前記特許文献1に記載のアジャスタを横方向又は斜め方向への伸縮用として使用するときは、軸部材が下方へ撓んだり、変形したりするという問題が発生し、アジャスタ先端部の位置を高精度に調整することが困難である。
【0012】
前記特許文献3に記載のねじ式伸縮装置は、雄ねじ軸の雄ねじと雌ねじ軸の雌ねじとの螺合部分が、ねじ軸方向のほぼ全域にわたって行われるものであるが、ねじの直動を停止するためのストッパとして機能する短縮伝達部又は伸張伝達部が嵌め合うように、両伝達部をねじ筒の両端部に接合して形成する必要がある。これら両伝達部は構造及び機構がやや複雑であり、それらの形成には熟練を有し、また、製造コストが上昇するという問題があった。
【0013】
また、前記特許文献4に記載の入れ子式伸縮動力装置は、部品3及び2の外面に形成される雄ネジと、部品2及び2の内面に形成される雌ネジとの螺合部分が、下側の距離hに形成されるねじ部分の狭い領域に限られる。したがって、前記前記特許文献1及び2に記載の発明と同様に、軸部材が下方へ撓むという問題が発生しやすいため、横方向又は斜め方向への伸縮を行う装置としては適していない。
【0014】
さらに、前記特許文献5及び6に記載の伸縮装置は、ボールねじスプラインシャフト、及び一方のねじ軸の回転を別のネジ軸の回転に伝達するためのネジ結合や伝達装置を同時に備える必要があるため、装置構造が複雑となり、装置の設置及び組立調整に熟練を要するという問題があった。
【0015】
一方、特許文献7に開示されるロボットは、膝関節ピッチ軸と膝関節、膝関節ピッチ軸と頸部直動関節、頸部直動関節と腿部直動関節、及び頸部直動関節と膝関節のいずれかの組合せからなる回転関節機構及び直動関節機構の少なくともいずれかを利用し、腿部リンク及び頸部リンクの脚部の伸縮を行うことによって不整地や連続的な段差である階段への対応を行うものである。しかしながら、特許文献7に記載のロボットは、前記腿部リンク及び前記頸部リンクの各脚部が一定の長さを有し、それらの回転や伸縮の操作が困難であるため、前記脚部の伸縮高さを所望の位置で任意に調整することが難しい。さらに、4脚の足の上げ下げのための機構や制御が複雑になってしまうという問題を有している。
【0016】
また、特許文献8に開示されるロボットは、中央駆動輪を有する本体の左右両側に、側部駆動輪を有する側脚を設けるロボットであるが、前記ロボットの状態変移の各ステップに応じて、本体及び即脚の走行、回動及び伸縮をそれぞれ制御して行う必要があるため、前記特許文献7に記載のロボットと同様に、制御が複雑になるという問題がある。さらに、本体が2脚の側脚で支えられる構造であるため、ロボットが段差を昇降するときに安定性が欠け、段差移動時のロボットとして使用するには適用が限られている。したがって、階段又は段差の昇降用として、前記特許文献7及び8に記載のものよりも機構及び制御が簡単で、かつ、階段などの段差を簡単に移動できるロボットが求められている。
【0017】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、コンパクトな構造で、伸縮移動を円滑、かつ、高精度に行うことができ、さらに、伸縮機構が撓みに対して堅牢な構造を有するため、地表面又は装置水平面に対して垂直の縦方向だけでなく、水平方向及び斜め方向に対しても高精度の位置調整を行うことができる直動伸縮機構ならびに該直動伸縮機構を有するアジャスタ及び階段昇降ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行うため、少なくも前記軸部材が2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構において、一方の軸部材において一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される雄ねじ部分、及び前記他方の軸部材において前記一方の軸部材の一方の先端縁部とは反対側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される雌ねじ部分について、それぞれのねじのピッチ幅の関係又はそれぞれの部分の構造と形状を、前記雄ネジの回転が前記雌ネジで拘束(クランプ)され、前記他方の軸部材が前記一方の軸部材の回転に同期して連動回転する機構が実現されるように設定することによって上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0019】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行うため、少なくとも前記軸部材が2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構であって、
前記一方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雄ねじが軸方向に2以上の領域で形成される外周表面、又は雄ねじが形成される部分と前記雄ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雌ねじが軸方向に2以上の領域で形成される内周表面、又は雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記一方の軸部材において一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記他方の軸部材において前記一方の軸部材の一方の端縁部とは反対側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅をY1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するか、又は
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記一方の軸部材の一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじ、又は前記一方の軸部材の外周表面に配置される前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする直動伸縮機構を提供する。
[2]本発明は、前記一方の軸部材において、前記ピッチ幅X1より狭いピッチ幅X2を有する雄ねじが、前記一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される外周表面と、
前記他方の軸部材面において、前記ピッチ幅Y1より広いピッチ幅Y2を有する雌ねじが、前記一方の軸部材の一方の先端部とは同じ側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される内周表面と、を有しており、
前記ピッチ幅X1、X2及びY1及びY2が、X2≦Y1<X1≦Y2の条件を満たすように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ネジの回転が前記雌ネジに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して、前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構を提供する。
[3]本発明は、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、nを2~4のいずれかの整数とするとき、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2をそれぞれ有する雄ねじ及び雌ねじのねじ山角度がすべて同じになるように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[4]本発明は、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、nを2~4のいずれかの整数とするとき、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじが前記ピッチ幅Y2を有する雌ねじと干渉する部分に位置する前記雄ねじのねじ山を削除することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[5]本発明は、前記一方の軸部材の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジの形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじの形成領域との間に、前記雄ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[6]本発明は、前記他方の軸部材の内周表面が、ピッチ幅Y1を有するの雌ねじの形成領域とピッチ幅Y2を有する雌ねじの形成領域との間に、前記雌ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする前記[5]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[7]本発明は、前記一方の軸部材において、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじが軸方向に2つの領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向の直列に備える内周表面を有し、
前記一方の軸部材の一方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記一方の軸方向の一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅Y1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するとともに、
前記雌ねじが形成されない平滑部分には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじの先端部と螺合する雌ねじとしての役割を担うように、前記雄ねじの先端部と同じ形状を有する複数の凹部を前記X1と同じピッチ幅で規則的に形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[1]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[8]本発明は、前記一方の軸部材が、雄ねじが形成される部分と前記雄ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材が、雌ねじが形成される部分と前記雌ねじが形成されない平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじと干渉させるように、前記一方の軸部材の一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に配置される前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記他方の軸部材に形成される前記雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[1]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[9]本発明は、前記複数の直動伸縮機構が、
最前段又は最上段の位置に配置され、外周表面に雄ねじが形成される前記軸部材Lと、
最前段及び最後段の間、又は最上段及び最下段の間の段に配置され、外周及び内周にそれぞれ雄ねじと雌ねじとが形成される軸部材Mの1または2以上と、
最後段又は最下段の位置に配置され、内周表面に雌ねじが形成される前記軸部材Nと、
の3段以上の軸部材を有し、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記一方の軸部材に相当する軸部材L及びMの外周表面には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじ又は前記雄ねじが形成されない平滑部分が、前記軸部材L及びMの一方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されるとともに、
前記他方の軸部材に相当する軸部材M及びNの内周表面には、前記ピッチ幅Y1を有する雌ねじ又は前記雌ねじが形成されない平滑部分が、前記軸部材M及びNにおいて前記軸部材L及びMの一方の先端部とは反対側に位置する先端縁部から各軸部材の軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されており、
前記X1及びY1を、前記一方の軸部材及び前記他方の軸部材との位置関係においてX1>Y1の条件を満たすようにそれぞれ独立に形成するか、又は
前記雄ねじが形成されない平滑部分を、前記雄ねじの呼び径より大きく、かつ、前記他方の軸部材の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成することにより、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記軸部材Lが前記軸部材Mの内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記軸部材Lの外周雄ねじが前記軸部材Mの内周雌ねじと当接し、引き続き、前記軸部材Mの外周雄ねじが前記軸部材Nの内周雌ねじと当接するとき、前記雄ねじの回転が順次、雌ねじに拘束され、該拘束によって、
前記軸部材Mが1つである場合は、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な回転から前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ転換され、また、
前記軸部材Mが2以上である場合は、前記軸部材Mの設置段数に応じて、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な連動回転、前記軸部材Mから隣接する他の軸部材Mとの同期的な連動回転の繰り返し、及び前記別の軸部材Mに隣接する前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ、それぞれ順に転換されることを特徴とする前記[1]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[10]本発明は、前記一方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部には、前記一方の軸部材を縮小させるとき、前記一方の軸部材の縮小方向への移動を前記他方の軸部材の伸長方向側の先端縁部で停止させるためのストッパが形成されており、
前記ストッパが、前記一方の軸部材の外周表面において伸張方向側に位置する先端縁部から伸長側に向けて所定の長さで形成され、前記雌ねじのピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ、及び、前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじの呼び径を超える直径又は長さを有し、前記一方の軸部材の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるフランジ部又はキャップ部材、の少なくともいずれかであることを特徴とする前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の直動伸縮機構を提供する。
[11]本発明は、前記[10]請求項10に記載の直動伸縮機構と、前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、を有することを特徴とするアジャスタを提供する。
[12]本発明は、前記[10]に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、
前記直動伸縮機構と入れ子式又は直列式に組み合わされる円筒状又は角筒状の筒部材の2以上を備える多段筒部材で組まれる直動伸縮機構と、を有し、
前記筒部材のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面、及び前記筒部材の直動をそれぞれ独立に止めるためのフランジ部又は留め具が形成される両端部を備えており、前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構において最近接の筒部材を基台に固定することにより、
前記回転モータの駆動による前記直動伸縮機構の伸縮に伴って前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構の伸縮を行うことを特徴とするアジャスタを提供する。
[13]本発明は、前記[10]に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材に装着されるスラストベアリングと、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平面と並行な方向に沿って移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が前記スラストベアリングと直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットを提供する。
[14]本発明は、前記[10]に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平方向と並行に移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が、全方向車輪から構成され、かつ、前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材の先端と直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態による直動伸縮機構は、一方の軸部材の外周表面及び他方の軸部材の内周表面にそれぞれ形成される雄ねじ及び雌ねじにおいて、一方の軸部材の縮小方向側に位置する先端部及び前記他方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部の各部にそれぞれ形成されるねじのピッチ幅の関係又はそれぞれの部分の構造と形状を特定することにより、コンパクトな構成と構造で軸部材間の相対移動による伸縮伸縮移動を円滑に行うことができる。さらに、雄ねじ形成部を有する外周表面と、雌めじ形成部を有する内周表面と、のねじ螺合が複数箇所で広範囲にわたって行われるため、円滑な伸縮とともに、直動伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。それにより、地表又は装置水平面に対して垂直の縦方向だけでなく、平行方向及び斜め方向に対しても高精度の位置調整を行うことができるという利点を有することから、伸縮方向を自在に選択できるアジャスタ及びロボットアームへ適用を拡大することができる。
【0021】
本発明の実施形態による直動伸縮機構は、一方の軸部材の内周表面及び他方の軸部材の外周表面にそれぞれ形成される雄ねじ部及び雌ねじ部において、前記軸部材の先端部縁から所望の長さでピッチ幅が異なるねじ部、又はねじが形成されない平坦部分が形成されるが、これらの部分の形成は既存の方法で容易に行うことができる。また、ストッパ部分、短縮伝達部、伸張伝達部、及び外側の入れ子プロフィール構造等を設ける必要がないため、これらを採用する先行技術に比して、構成及び構造をよりコンパクトにすることができる。直動伸縮機構のコンパクト化は、それを有するアジャスタ及び階段昇降ロボットを製造するときのコスト低減にも寄与する。
【0022】
本発明の実施形態による直動伸縮機構は、シンプルな構成と構造を有する別の多段直動伸縮装置、例えば、伸縮を止めるためのフランジ部又は留め具を有する筒部材を多段で有する多段筒部材による直動伸縮機構と組み合わせることにより、より長い距離範囲で伸張可能なアジャスタ、又は、よりコンパクトな構成と構造を有するアジャスタを得ることができる。また、外側の入れ子方式又は直列的に組まれる多段筒部材の直動機構との組み合わせにより、アジャスタの堅牢性の向上又は伸長距離の増加に寄与する。さらに、本発明の実施形態による直動伸縮機構は、上下方向の伸縮の制御が簡単で、且つ、伸縮位置を所望の位置に調整することが容易であるため、階段などの段差を簡単に移動できる階段昇降ロボットにおいて昇降機能を付与するための装置又は部品として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に実施形態による直動伸縮機構の雄ねじ部及び雌ねじ部を構成する各部位について寸法の定義を説明するための断面図である。
図2】本発明に実施形態において、軸部材が2段で組まれる複数の直動伸縮機構の例を示す断面図である。
図3】本発明に実施形態において、軸部材が3段で組まれる複数の直動伸縮機構の例を示す断面図である。
図4図3に示す直動伸縮機構において2つの軸部材だけを抽出し、それらの基本的な構成と構造の例を示す断面図である。
図5】軸部材が3段で組まれる複数の直動伸縮機構において、軸部材の縮小方向への移動を停止させるためのストッパを備える直動伸縮機構の例を示す断面図である。
図6図5に示す直動伸縮機構の軸部材21に回転モータから回転を伝達するための回転伝達方法の例を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態による直動伸縮機構を入れ子式に組み合わせた円筒状の筒部材を有するアジャスタの例を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態による直動伸縮機構を入れ子式に組み合わせた円筒状の筒部材を有するアジャスタの変形例を示す断面図である。
図9】本発明の実施形態による直動伸縮機構を直列式に組み合わせた円筒状の筒部材を有するアジャスタの例を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態による階段昇降ロボットが有する直動伸縮機構の1台についてその態様を示す断面図である。
図11図10に示す直動伸縮機構を3台で具備する階段昇降ロボットが階段を昇降するときの挙動を説明するための図である。
図12】本発明の実施形態による階段昇降ロボットの変形例が有する直動伸縮機構の1台についてその態様を示す断面図である。
図13図12に示す直動伸縮機構を3台で具備する階段昇降ロボットの変形例が階段を昇降するときの挙動を説明するための図である。
図14】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の一例を第1の実施形態として示す断面図である。
図15】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の変形例を第2の実施形態として示す断面図である。
図16】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の別の変形例を第3の実施形態として示す断面図である。
図17】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の別の変形例を第4の実施形態として示す断面図である。
図18】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の別の変形例を第5の実施形態として示す断面図である。
図19】本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材の別の変形例を第6の実施形態として示す断面図である。
図20】本発明の第6の実施形態による2つの軸部材において、図15に示すものと異なる別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明においては、図1の左側に示すように、一方の軸部材の外周表面に形成される雄ねじが有する各寸法X、Da、Db及びDcを、それぞれ雄ねじのピッチ幅、谷径、有効径、及び呼び径と定義する。ここで、図1の左側に示す角度θは、雄ねじのねじ山角度である。また、図1の右側に示すように、他方の軸部材の内周表面に形成される雌ねじについても各寸法Y、Dd及びDeを、それぞれ雌ねじのピッチ幅、呼び径及び内径と定義する。雌ねじのねじ山角度は、雄ねじに螺合することから図1の左側に示すθで表される。以下、図1に示す定義に基づいて、本発明の実施形態による直動伸縮機構を用いて伸張操作を行うとき及び縮小操作を行うときの各動作メカニズムをについて詳細に説明する。
【0025】
<伸張操作時の直動伸縮機構動作メカニズム>
図2及び図3に、本発明の実施形態による直動伸縮機構を伸張させるときの動作メカニズムを示す。
【0026】
図2は、軸部材が2段で組まれる複数の直動伸縮機構1を示す断面図であり、一方の軸部材2を他方の軸部材3の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着させる。直動伸縮機構1は、一方の軸部材2に接続又は接着される回転伝達棒4を介して回転モータ(不図示)の回転を一方の軸部材2に伝達することにより、その回転に伴い伸長方向側へ移動する。回転モータ(不図示)から回転伝達棒4への回転の伝達は、後述するように、回転モータから直動させてもよいし、回転モータからギヤ又は伝達ベルト部材を用いて回転を伝達してもよい。図2は、一方の軸部材2の回転が回転伝達棒4によって伝達される構成を示しているが、回転伝達棒4を具備せずに、一方の軸部材2を直接的に回転させてもよい。
【0027】
また、図3は、軸部材2、3に加えて、軸部材2及び3の間に別の軸部材12が組まれる3段の直動伸縮機構11を示す断面図である。図3に示す軸部材2及び別の軸部材12は、2段の軸部材間の位置関係において、それぞれ図2に示す一方の軸部材2及び他方の軸部材3に相当する。また、別の軸部材12及び軸部材3の位置関係も、図2においては、それぞれ一方の軸部材2及び他方の軸部材3に相当する。図3に示す複数の直動伸縮機構は、回転モータ(不図示)から直接、又は回転伝達棒4を介して伝達される軸部材2の回転運動によって伸長する。
【0028】
図2及び図3には、各軸部材において破線で囲った部分の断面拡大図を合わせて示している。図2及び図3に示す断面拡大図は、軸部材2、3及び2、12、3において伸長方向側に位置する各端部における雄ねじ及び雌ねじの螺合部分を拡大したものである。拡大図に示す雄ねじ及び雌ねじの螺合部分が、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材を連動回転させるために必須の構成であり、本発明の特徴となる部分である。
【0029】
図2において点線で囲まれる部分の断面拡大図(2A)及び(2B)に示すように、一方の軸部材2が他方の軸部材3の内部で軸線方向に移動して伸張するとき、本発明においては2つの異なる態様で螺合が行われる。一つは、断面拡大図(2A)に示すように、一方の軸部材1の外周表面に形成される雄ねじ5のピッチ幅X1が、他方の軸部材3の内周表面に形成される雌ねじ6のピッチ幅Y1をより大きくなる条件、すなわちX1>Y1の条件を満たすように雄ねじ5及び雌ねじ6をそれぞれ形成する。ピッチ幅X1の雄ねじ5において伸張方向側の最先端雄ねじ5aは、一方の軸部材2の伸長移動に伴い、ピッチ幅Y1の雌ねじ6において縮小方向側の最先端雌ねじ6aに当接するとき、雄ねじ5の回転が雌ねじ6によって拘束(又はクランプ)される。この拘束力によって伸長後の一方の軸部材2の回転が、引き続き、他方の軸部材3に同期的な回転として変換される。同時に、一方の軸部材2は他方の軸部材3から飛び出さず、軸部材3の内部に留まる。
【0030】
ピッチ幅X1を有する雄ねじ5は、長さが1ピッチ以上であれば、雌ねじ5に当接するときに十分の拘束力が得られるが、拘束力を高め、確実に拘束するためには2ピッチ以上の長さで形成するのが実用的である。ピッチ幅Y1を有する雌ねじ6についても、雄ねじ5に当接するときに十分の拘束力を得るため、1ピッチ以上の長さで形成し、さらに、拘束力を高めるために2ピッチ以上で形成するのが実用的である。それにより、一方の軸部材2が他方の軸部材3の内部に留まる形で、一方の軸部材2の伸長が停止する。一方、雄ねじ5及び雌ねじ6の長さの上限値は、コンパクトな構成とシンプルな構造を有する直動伸縮機構という技術思想に反しない程度で、5ピッチ以下に設定される。しかしながら、本発明においては、雄ねじ5及び雌ねじ6の少なくともいずれかを、直動伸縮機構の設計仕様に応じて、5ピッチを超える長さで形成してもよい。
【0031】
もう一つの態様は、断面拡大図(2B)に示すように、一方の軸部材2の外周表面に雄ねじが形成されない平滑部分7を設ける。雄ねじが形成されない平滑部分7が、他方の軸部材3の内周表面において伸張方向側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて形成されるピッチ幅Y1の雌ねじ6に当接するとき、雄ねじが形成されない平滑部分7の回転伸張が雌ねじ6によって拘束(又はクランプ)される。この拘束力によって伸長後の一方の軸部材2の回転が、引き続き、他方の軸部材3に同期的な回転として変換される。同時に、一方の軸部材2は軸部材3から飛び出さず、他方の軸部材3の内部に留まるようになる。ここで、雄ねじが形成されない平滑部分7は、雌ねじが形成されない平滑部分8と嵌合した状態で伸張するが、一方の軸部材2の伸張を停止させ、他方の軸部材3の内部に留めるためには、他方の軸部材3の内周表面に形成される雌ねじ6の縮小方向側の最先端雌ねじ6aに干渉させることが必要となる。そのため、本発明の実施形態による直動伸縮機構は、雄ねじが形成されない平滑部分7を、雄ねじが形成されない平滑部分7とは別領域に形成される雄ねじ9の呼び径(図1に示すDcに相当)より大きく、かつ、他方の軸部材3の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成する。ここで、雄ねじが形成されない平滑部分7は円柱状の表面平滑面に相当するため、断面片側の形状が矩形となる。本発明では断面片側の形状は断面拡大図(2B)に示す矩形には限定されず、台形であってもよい。
【0032】
ここで、本発明で規定する「他方の軸部材の内径」とは、他方の軸部材3の内周表面に形成される雌ねじが形成されない平滑部分8の内径(断面拡大図(2B)に示す内径Df)に相当し、一方の軸部材2の別領域に形成される雄ねじ9の呼び径を超える寸法で形成される。本発明においては、雄ねじが形成されない平滑部分7と、雌ねじが形成されない平滑部分8との間には、雄ねじが形成されない平滑部分7を挿入できる程度の隙間を存在させることが必要である。その一方で、その隙間が広すぎる場合は、一方の軸部材2を伸縮移動させるときに軸部材の撓みやガタが大きくなる傾向にある。この問題が生じないようにするため、雄ねじが形成されない平滑部分7及び雌ねじが形成されない平滑部分8との間の隙間(寸法)ができるだけ小さくなるように形成する。これらの部分の形成は、当該技術分野の設計範囲内で行うことができるが、雄ねじが形成されない平滑部分7の外径を、雌ねじが形成されない平滑部分8の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱形状の表面平滑面として形成する。それに対して、嵌め合い寸法の公差域クラスがh9以上になる場合は両平坦部分間の隙間が大きくなる場合があるため軸部材の撓みやガタが顕著になるという問題が生じる。
【0033】
日本工業規格(JIS B0401)に規定される交差域クラスh8の寸法許容差内の設計仕様とは、軸の方が穴径より常に小さい状態である「すきまばめ」において、穴を基準にしたときに軸の軽転合が可能な寸法公差を意味するものである。本発明においては、この効果を得るために寸法公差として公差域クラスh8を確保するのが実用的である。さらに伸縮移動させるときに一方の軸部材2の撓みやガタの発生をより低減するためには、より厳しい寸法許容差を要求する公差域クラスh7による設計仕様を採用してもよい。この公差域クラスh8及びh7の寸法許容差範囲は、嵌め合軸の製造分野において大きな困難を伴わずに達成できる寸法である。嵌め合い寸法の公差域クラスh8及びh7は、下記の表1に基づいて設定される。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1において、例えば、他方の軸部材3に形成される「雌ねじが形成されない平滑部分」(図2に示す符号8)の内径を30超え50mm以下に設定する場合は、軸の公差域クラスのh7及びh8を実現するため、一方の軸部材2に形成される「雄ねじが形成されない平滑部分」(図2に示す符号8)の外径をそれぞれ-25~0μm及び-39~0μmの寸法許容差で形成する。
【0036】
本発明において、雄ねじが形成されない平滑部分7の外径の寸法許容差は、雌ねじが形成されない平滑部分8の内径に対してh7又はh8の公差域クラスで規定されるが、逆に、雌ねじが形成されない平滑部分8の内径の寸法公差を、雄ねじが形成されない平滑平坦部分7の外径に対して公差域クラスH7又はH8で規定してもよい。その場合でも、雌ねじが形成されない平滑部分8の内径と、雄ねじが形成されない平滑部分7の外径との間隙が同じ寸法公差が許容されるため、「すきまばめ」として同じ効果が得られる。
【0037】
雄ねじが形成されない平滑部分7は、断面拡大図(2B)に示す雄ねじ9のピッチ幅を基準にしたとき1ピッチの以上で形成することにより、他方の軸部材3の内周表面に形成される雌ねじ6aとの当接時に十分の拘束力が得られる。さらに、拘束力を高め、確実に拘束を行うためには2ピッチ以上の長さで形成するのが実用的である。雌ねじ6についても、雄ねじが形成されない平滑部分7との当接時に十分の拘束力を得るため1ピッチ以上の長さで形成する。さらに、拘束力を高めるために2ピッチ以上で形成するのが実用的である。それにより、一方の軸部材2が他方の軸部材3の内部に留まる形で、一方の軸部材2の伸長が停止する。一方、雌ねじ6の長さの上限値は1ピッチ以上、好ましくは2~5ピッチの間に設定されるが、雌ねじが形成されない平滑部分8については、直動伸縮機構の設計仕様に応じて(例えば、後述の図19及び図20の(a)及び(b)を参照)、5ピッチを超える長さで形成してもよい。
【0038】
図3に示す複数の直動伸縮機構11は、軸部材2、3及び別の軸部材12の3段で組まれるものである。図3に示す断面拡大図(3A)及び(3B)は、軸部材2の伸長方向側先端部の外周表面に形成される雄ねじ5と軸部材12の縮小側先端部の内周表面に形成される雌ねじ13との干渉部分、及び軸部材2の縮小方向側先端部の外周表面に設けられる雄ねじが形成されない平滑部分7と、軸部材12の縮小方向側先端部の内周表面に形成される雌ねじ13との干渉部分をそれぞれ示す断面図である。また、図3において、ピッチ幅X1を有する雄ねじ14とピッチ幅Y1を有する雌ねじ6との干渉部分を示す断面拡大図(3C)、及び雄ねじが形成されない平滑部分16と雌ねじ6との干渉部分を示す断面拡大図(3D)は、軸部材2が軸部材12に変わるだけであり、干渉部分についてはそれぞれ図2に示す断面拡大図(2A)又は(2B)に対応する。
【0039】
図3に示す3段の直動伸縮機構の伸長メカニズムを説明する。図3の断面拡大図(3A)に示す軸部材2に形成される雄ねじ5において伸張方向側に位置する最先端雄ねじ5aが、軸部材2の伸長移動に伴い、ピッチ幅Y1を有する雌ねじ13において縮小方向側に位置する最先端雌ねじ13aに当接するとき、雄ねじ5の回転が雌ねじ13で拘束(又はクランプ)される。この拘束力を利用して軸部材2の回転を軸部材12の同期的な連動回転に変換する。それにより、軸部材2の伸長が停止し、代わりに軸部材12が回転しながら伸長する。その後、図3の断面拡大図(3C)に示すように、軸部材12に形成されるピッチ幅X1の雄ねじ14において伸張側に位置する先端部の雄ねじ14aは、軸部材12の伸長移動に伴い、ピッチ幅Y1の雌ねじ6において縮小方向側に位置する最先端雌ねじ6aに当接するとき、雄ねじ14の回転が雌ねじ6によって拘束(又はクランプ)される。この拘束力によって軸部材12は、それ以上伸張せず、軸部材3の内部に留まる。
【0040】
一方、雄ねじに代えて雄ねじが形成されない平滑部分7を有する軸部材2と、雌ねじ13を有する軸部材12との螺合の場合は、図3の断面拡大図(3B)に示すように、軸部材2に設けられる雄ねじが形成されない平滑部分7の回転が雌ねじ13で拘束(又はクランプ)される拘束力を利用して軸部材2の伸張を停止させ、代わりに軸部材2の回転に同期して軸部材12が回転しながら伸長する。その後、図3の断面拡大図(3D)に示すように、軸部材12の縮小方向側先端部の外周表面に設けられる雄ねじが形成されない平滑部分16が、軸部材12の伸長移動に伴い、軸部材3の縮小方向側先端部の内周表面に形成されるピッチ幅Y1の雌ねじ6の中で縮小方向側に位置する最先端雌ねじ6aに当接するとき、雄ねじが形成されない平坦部分16の回転が雌ねじ6によって拘束(クランプ)される。この拘束力によって軸部材12は、それ以上伸張せず、軸部材3の内部に留まる。
【0041】
図2及び図3には、軸部材が2段で組まれる複数の直動伸縮機構1、及び3段で組まれる複数の直動伸縮機構11がそれぞれ示されているが、本発明に実施形態による直動伸縮機構は軸部材が4段以上で組まれてもよい。その場合、図3に示す軸部材12の外側又は内側に隣接した形で、該軸部材12と基本的に同等の構造と機能を有する別の軸部材を配置し、前記別の軸部材が軸部材12の外側で移動可能となるように互いに螺着する構成と構造を採用する。このように、本発明において複数の直動伸縮機構を軸部材が4段以上で構成する場合は、軸部材12と基本的に同等の構造と機能を有する軸部材とが2段以上で配置される。
【0042】
本発明において、軸部材2は、軸部材最前段又は最上段の位置に配置され、外周表面に雄ねじが形成される「軸部材L」と規定される。また、軸部材3は、最後段又は最下の位置に配置され、内周表面に雌ねじが形成される「軸部材N」と規定される。直動伸縮機構が軸部材を3段で組まれる場合は、軸部材12が、最前段及び最後段の間、又は最上段及び最下段の間の段に配置される。軸部材12は、外周及び内周にそれぞれ雄ねじ及び雌ねじが形成されており、本発明においては「軸部材M」と規定される。直動伸縮機構が軸部材を4段以上で有する場合は、前記軸部材Mの内側又は外側に、別の軸部材を隣接して設ける。別の軸部材は、前記軸部材Mと同じように、外周及び内周にそれぞれ形成される雄ねじと雌ねじとを有することから「別の軸部材M」と規定する。このように、前記軸部材Mを1つ備えるのが3段で組まれる直動伸縮機構に、また、軸部材Mを2以上備えるのが4段以上で組まれる直動伸縮機構に該当する。
【0043】
図3に示す直動伸縮機構11について、軸部材2及び12の2つの軸部材だけを抽出し、それらの基本的な構成と構造の例を図4に断面図で示す。図3に示す軸部材3は、軸部材12において外周表面が、雄ねじに代えて、雄ねじが形成されない平滑部分となっている点が異なるだけであり、省略する。図4の(a)及び(b)に示すように、軸部材2と12は地面又は据付装置に対して水平面に配置するものであり、図3に示す直動伸縮機構11における垂直方向とは伸長方向が異なる。しかしながら、一方の軸部材2の伸長が停止するときのメカニズムは、図3の断面拡大図(3A)及び(3B)に示すものと基本的に同じである。
【0044】
図4(a)に示す軸部材2及び12の組合せの例では、一方の軸部材に相当する軸部材2の外周表面に、前述のピッチ幅X1の雄ねじ5と、雄ねじ17とが形成される。ここで、雄ねじ17は、X2のピッチ幅を有するものとする。また、他方に軸部材に相当する軸部材12の内周表面には、前述のピッチ幅Y1の雌ねじ13と、雌ねじ18が形成される。ここで、雌ねじ18は、Y2のピッチ幅を有するものとする。図4の(a)には雄ねじ5と17との間に存在する雄ねじ19が示されているが、この雄ねじ19を雄ねじ17のピッチ幅と同じピッチ幅X2で、かつ、軸部材12の内周表面に形成される雌ねじ18との干渉が起きないように、雄ねじ5の呼び径(図1においてDcで示す径に相当)より小さい呼び径に加工して形成する。ここで、雄ねじ17についても、呼び径を雄ねじ5より小さくし、かつ、雄ねじ19と同じ呼び径としてもよい(後述の第1の実施形態を参照)。また、雄ねじ19については、ピッチ幅X2より小さいピッチ幅X3で形成してもよい。その場合は、ピッチ幅の異なる雄ねじが軸方向に3領域で形成されるものとなる。また、雌ねじが形成される領域についても、ピッチ幅X1の雄ねじ5と螺合するようにピッチ幅Y2を形成するだけでなく、図4の(a)に示すピッチ幅Y2の雌ねじの代わりに、前記Y2より広いピッチ幅Y3を有する雌ねじを形成する領域を設けてもよい。その場合は、ピッチ幅の異なる雌ねじが軸方向に3領域で形成されるものとなる。
【0045】
雄ねじ19と雌ねじ18との干渉を避ける方法としては、図4に示す構造には限定されない。例えば、雄ねじ17において雌ねじ18と干渉する雄ねじ部分だけを切削又は研磨等の後加工によって削除してもよい。その場合は、雄ねじ17、19の呼び径を、雄ねじ5の呼び径より小さくするための加工を省略することができる(後述の第2の実施形態を参照)。
【0046】
このように、本発明の直動伸縮機構は基本的な構成及び構造として、一方の軸部材に相当する軸部材2が、ピッチ幅がX1及びX2とそれぞれ異なる雄ねじが軸方向に2以上の領域で形成される外周表面を有し、かつ、他方の軸部材に相当する軸部材12が、ピッチ幅が異なる雌ねじが軸方向に2以上の領域で形成される内周表面を有する。さらに、軸部材2の外周表面において、前記ピッチ幅X1より狭いピッチ幅X2を有する雄ねじが、一方の軸部材2の伸長方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所定の長さで形成され、また、他方の軸部材3の内周表面において、前記ピッチ幅Y1より広いピッチ幅Y2を有する雌ねじが、前記一方の軸部材の縮小方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所定の長さで形成される。すなわち、前記ピッチ幅X1、X2及びY1及びY2は、X2≦Y1<X1≦Y2の条件を満たすように形成される。X2≦Y1及びX1≦Y2の条件は、一方の軸部材2を回転伸長させるとき、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17及び19を、X2と同等か、又はX2より大きなピッチ幅Y1を有する雌ネジ13に螺合させるとともに、ピッチ幅X1を有する雄ねじ5を、X1と同等か、又はX1よりも大きなピッチ幅Y2を有する雌ネジ18に螺合させることを意味する。この条件を満たすことにより、雌ねじ18との回転螺合が阻害されずに雄ねじ17、19及び5が回転するため、一方の軸部材2の自在移動を円滑に行うことができる。
【0047】
図4(a)に示す直動伸縮機構の構成において、軸部材2の雄ねじ5及び17、19は、軸部材12の雌ねじ18及び13と互いに螺合する部分であり、軸部材2の軸方向において2か所以上の広範囲の部分にわたって螺合する。そのため、図4(a)に示すように、直動伸縮機構11を地面又は装置の水平面に対して横方向へ伸縮させる場合でも、伸縮移動中に発生しやすい軸部材2及び12の下方への撓みを抑えることができる。それにより、図3に示す直動伸縮機構11の先端部位置を高精度に調整することができるという利点を有する。
【0048】
図4(b)に示す軸部材の組合せは、軸部材2の外周表面に、雄ねじ20が形成される部分と雄ねじが形成されない平滑部分7とを軸方向に直列に有する。また、軸部材12の内周表面には、雌ねじ13が形成される部分と雌ねじが形成されない平滑部分15とを軸方向に直列に有する。ここで、雄ねじ20と雌ねじ13とは、同じピッチ幅で形成されるが、ピッチ幅は前記Y1に限定されない。雄ねじ20と雌ねじ13との回転螺合による軸部材2は、図3に示すものと基本的に同じ原理と機能に基づいて、雄ねじが形成されない平滑部分7が、雌ねじ13の縮小側に位置する最先端雌ねじ13aに当接するときに拘束(又はクランプ)されて伸長が停止する。この拘束力によって、図3に示す場合と同じように、軸部材2は軸部材12の内部に留まる。
【0049】
図4(b)に示す直動伸縮機構の構成では、軸部材2の雄ねじ20が、他方の軸部材3の雌ねじ13に螺合し、さらに、軸部材2において雄ねじが形成されない平滑部分7が、軸部材12において雌ねじが形成されない平滑部分15に当接する。それら2か所を含め、一方の軸部材2は、伸縮移動時に軸方向の広範囲の部分にわたって他方の軸部材12によって支持される。そのため、図4(b)に示すように、直動伸縮機構11を地面又は装置の水平面に対して横方向へ伸縮させる場合でも、伸縮移動中に発生しやすい軸部材2及び12の下方への撓みを抑えることができる。それにより、図3に示す直動伸縮機構11の先端部位置を高精度に調整することができるという利点を有する。
【0050】
なお、図2図4に示す2段以上で組まれる直動伸縮機構は、ピッチ幅X1を有する雄ねじが、軸部材2の縮小方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて形成され、さらに、ピッチ幅Y1を有する雌ねじが、軸部材2の伸長方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて形成される例を示しているが、本願発明においては、雄ねじ及び雌ねじが形成される位置は、複数の軸部材が移動する順序に応じて変わるため相対的なものである。後述するように、本発明の実施形態による直動伸縮機構を入れ子式に多段筒部材からなる直動伸縮機構と組み合わせる場合には、複数の軸部材の中で伸張側に最初に移動する軸部材が図2図4に示す場合とは逆になるため、雄ねじ及び雌ねじがそれそれぞれ逆の位置で形成される。すなわち、ピッチ幅X1を有する雄ねじ5、14が、軸部材2、12の伸長方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて形成され、さらに、ピッチ幅Y1を有する雌ねじ13、6が、軸部材12、3の縮小方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて形成される(後述の図8を参照)。
【0051】
図4(a)に示す直動伸縮機構の構成において、最もコンパクトな構成とシンプルな構造を有する軸部材2及び12は、ピッチ幅X2=Y1<X1=Y2の条件を満たす2つの雄ねじ及び2つの雌ねじの組合せからなる。また、図4(b)に示す直動伸縮機構の構成は、内周表面に雌ねじ13を形成する軸部材12と、雌ねじ13と同じピッチ幅で外周表面に雄ねじ20が形成される軸部材2とからなる組合せが、最もコンパクトな構成とシンプルな構造となる。これらの条件を満たす構成と構造を2段の直動伸縮機構として組み合わせた例については、後述の実施形態で具体的に説明する。
【0052】
<縮小操作時の直動伸縮機構動作メカニズム>
次に、縮小操作時の直動伸縮機構動作メカニズムについて説明する。図5は、軸部材が3段で組まれる複数の直動伸縮機構において、軸部材の縮小方向への移動を停止させるためストッパ機構を有する直動伸縮機構の例を示す断面図である。図5に示す直動伸縮機構20は、3つの軸部材21、22及び23から組み立てられる。ここで、軸部材21、22及び23は、本発明で規定する軸部材L、軸部材M及び軸部材Nに相当する。軸部材21、22及び23は、図3に示す軸部材2、12及び3とは、各軸部材の伸張方向側に位置する先端部に形成されるストッパを有する点で異なる。このストッパは、軸部材21及び22を縮小方向へ移動させるときに軸部材21及び22の移動を停止させるため、それら軸部材の伸長方向側先端部に形成されている。図5には、前記ストッパを備える部分として点線で囲った部分を拡大した断面拡大図を、それぞれ(5A)~(5H)に示している。
【0053】
図5に示す断面拡大図(5A)~(5H)は、本発明の実施形態による直動伸縮機構を構成する軸部材軸部材21と22が有するストッパの例である。断面拡大図(5A)、(5C)、(5E)及び(5G)は、軸部材21及び22の伸張方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所定の長さで、前記ストッパとしてそれぞれ前記ピッチ幅X1を有する雄ねじ24及び25を形成する例である。ここで、ピッチ幅X1を有する雄ねじ24及び25は、長さが1ピッチ以上であれば、ストッパとして十分の拘束力が得られるが、拘束力を高め、確実な拘束を行うためには2ピッチ以上の長さで形成するのが実用的である。図5に示す雄ねじ24、25のストッパは、軸部材21及び22の外周表面に形成されるピッチ幅X1の雄ねじ17と同じ形状と構造を有するものには限定されず、雌ねじのピッチ幅Y1より広ければ、前記X1とは異なるピッチ幅を有する雄ねじの構造であってもよい。
【0054】
また、図5に示す断面拡大図(5B)、(5D)、(5F)及び(5H)は、他方の軸部材に相当する軸部材21又は22の伸長方向側先端部に前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじ13、6の呼び径(図1に示すDdに相当)を超える直径又は長さを有し、軸部材21又は22の伸長側の先端部にそれぞれ接続又は接合されるキャップ部材26又はフランジ部28をストッパ用の部材として示す図である。キャップ部材26及びフランジ部材28は、雌ねじ6、13の内径(図1に示すDe)を超える直径又は長さで形成することによりストッパ機能を発現することも可能であるが、より確実にストッパ機能を実現するためには雌ねじ6、13の呼び径(図1に示すDd)を超える寸法にすることが実用的である。また、キャップ部材26及びフランジ部材28は、図5において断面拡大図(5B)に示す雄ねじ27又は断面拡大図(5D)に示す雄ねじ29のピッチ幅を基準にしたとき1ピッチの以上で形成する。さらに、ストッパの機能を確実にするためには2ピッチ以上の長さで形成するのが実用的である。本発明の実施形態においては、キャップ部材26を、フランジ部28と同じか、又はそれよりも大きな直径又は長さで形成することにより、キャップ部材26がフランジ部28によるストッパ機能を兼ね備えることができる。その場合、フランジ部28を設ける必要がなくなるため、キャップ部材26だけを形成すればよい。キャップ部材26は断面拡大図5Fに示す形状に限定されず、フランジ形状で設けてもよい。キャップ部材26には、用途に応じて、基台やロボットハンド等の付帯部品や付帯治具を接合又は接続する。
【0055】
雄ねじ24又はキャップ部材26を形成する場合、例えば、図5に示す軸部材21、22を用いて両者を螺合及び嵌合した後、雄ねじ24又はキャップ部材26に相当するストッパを溶接、溶着若しくは嵌合等の方法又は接着剤等を用いて、軸部材21の伸長方向側先端部に接合又は接続を行って形成する。このとき、雄ねじ24又はキャップ部材26と、軸部材21、22の伸長方向側先端部との嵌め合いを円滑に行うため、雄ねじ24又はキャップ部材26、及び軸部材2の伸長方向側先端部の少なくともいずれかには、凹部、貫通孔、及びそれらと嵌合する突起部をそれぞれ独立に形成してもよい。また、雄ねじ24の内周表面に、軸部材21の雄ねじ17のピッチ幅と同じピッチ幅を有する雌ねじを形成することによって、雄ねじ17との螺合による嵌め合いを行った後、両者の接合又は接続を行う方法を採用してもよい。また、軸部材21の伸長方向側先端部のみをプレス成形することによってキャップ部材26の形状を有するストッパを形成してもよい。
【0056】
一方、軸部材22に雄ねじ25又はフランジ部28を形成する場合、伸長方向側の先端部外周表面に雄ねじ25又はフランジ部材28の取付用スペース(例えば、断面拡大図(5C)において断面寸法hで示す部分)を設け、その取付用スペースに雄ねじ25又はフランジ部28を接合、接着、カシメ又はプレス等の何れかの方法によって取り付けてもよい。
【0057】
図5に示すように、軸部材2及び22にストッパを形成することにより、伸縮移動を自在に行うことができる本発明の実施形態による直動伸縮機能が得られる。
【0058】
<直動伸縮機能を有するアジャスタ>
本発明の実施形態による直動機能を有するアジャスタは、上記の直動伸縮機構と、上記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を直動又はギヤ若しくは伝達ベルト部材を介して回転駆動させるための回転モータと、を基本構成として有する。本発明の実施形態による直動機能を有するアジャスタの例を図6に示す。図6に示すアジャスタは、図5に示す直動伸縮機構を有するものであり、最も内側に配置される軸部材21を回転させる方法として、(a)回転モータによる直動回転、(b)ギヤによる回転伝達、(c)ベルトによる回転伝達、及び(d)フレキブル回転具による回転伝達がそれぞれ行われる。
【0059】
図6(a)に示す回転モータによる直動回転は、回転モータ30を支持する基部31と、被動歯車を備える歯車機構部を介して回転モータ30により回転駆動させる駆動雄ねじボルト32とを備える。駆動雄ねじボルト32の回転によって、前記駆動雄ねじボルト32に接続又は締結した軸部材21が回転する。
【0060】
図6(b)に示すギヤによる回転伝達方式は、回転モータ30の出力軸に接続された駆動歯車33と、この駆動歯車33に噛合する従動歯車34と、これら駆動歯車33及び従動歯車34を回転自在に軸支するベースプレートと、このベースプレートに固定され前記駆動歯車及び従動歯車を覆うように配置されるカバーとからなる基部35を備える。図6(b)に示す回転伝達方法は、歯車を噛合させる構成を有するが、これに限定されるものではなく、例えば、図6(c)に示すように、回転自在なプーリ36にベルト37を巻回して回転モータ30の回転力を、連結軸を介して軸部材21に伝達する構成であってもよい。
【0061】
図6(d)に示すフレキブル回転具による回転伝達方式は、回転モータの回転力を、フレキシブル回転具38によって軸部材21に伝達する構成を有する。フレキシブル回転具38は、軸部材21に回転を伝達するための連結軸の向きを一方向(図面上下方向)から、その方向に対して垂直(図面水平方向)又は斜めの方向に変更するために使用するものである。それにより、図6(d)に示す回転伝達方法は、図6(a)~(c)に示す例のように軸部材21と接続又は締結する連結軸を前記一方向だけに長い軸長で設ける必要がなくなるため、直動伸縮機構の回転機構の設計自由度が増すだけでなく、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0062】
本発明の実施形態によるアジャスタは、本発明の直動伸縮機構を入れ子式に、又は本発明の直動伸縮機構と直列式に組み合わせるために筒部材の2以上を有する直動伸縮機構を有してもよい。図7及び図8には、本発明の直動伸縮機構を入れ子式に組み合わせた円筒状の筒部材を複数で備えるアジャスタの例39、46を示す。また、図9には、本発明の直動伸縮機構と直列式に組み合わせた円筒状の筒部材を複数で備えるアジャスタの例51を示す。前記筒部材としては、本発明の直動伸縮機構の伸縮移動を妨げない形状のものであれば、円筒状に限定されず、角筒状であってもよい。
【0063】
図7はアジャスタ39を示す断面図である。アジャスタ39は、図3に示す直動伸縮機構において軸部材3の外側に、円筒状の筒部材として第1筒部材40、第2筒部材41及び第3筒部材42の3段の筒部材を取り付けることによって入れ子式に組み合わせたアジャスタの一例である。第1筒部材40、第2筒部材41及び第3筒部材42のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面を有し、その両端部には各筒部材の直動をそれぞれ独立に停止させるため、一点鎖線で囲った部分に示すように、互いに篏合するような形状を有するフランジ部が形成されている。前記フランジ部は、各部材の端部を固定するように形成される留め具であってもよい。第3筒部材42のフランジ部43は、製品筐体の床、壁又は天井などの基台44に接続又は締結して固定される。また、軸部材2の伸長方向側先端部には、軸部材2及び12の縮小方向への移動を停止するためのストッパとしてキャップ部材45が接合又は接続される。このキャップ部材45を介して、軸部材2は第1筒部材40と接合又は接続されている。その構造を採用することにより、軸部材2が回転しながら移動するときは第1筒部材40が同時に伸張方向に移動する。その移動が停止した後、引く続き、軸部材12が軸部材1の回転に同期する形で回転しながら伸長方向に移動する。図7に示す直動伸縮機構を縮小方向へ移動させるときは、軸部材1の回転方向を逆にし、キャップ部材45を利用して軸部材12及び軸部材2を縮小方向に移動する。
【0064】
図7に示すアジャスタ39の伸縮機構について説明する。まず、回転モータの回転駆動に伴ってアジャスタの軸部材2が伸長方向に移動する(図7において(a)→(b)の移動)。そのとき、キャップ部材45を介して接合又は接続された第1筒部材40も同時に移動するが、第1筒部材40の収縮方向側フランジ部が第2筒部材41の伸長方向側フランジ部に当接して篏合することにより、軸部材2の伸長方向への移動が停止する。同時に軸部材2の雄ねじの回転が軸部材12の雌ねじで拘束されるため、第1筒部材40に対して伸長方向へ継続して移動させるような負荷は加わらない。引き続き、軸部材2の回転に同期して軸部材12が連動回転することによって、軸部材12は第2筒部材41とともに伸長方向へ移動する(図7において(b)→(c)の移動)。最終的に、第2筒部材41の収縮方向側フランジ部が第3筒部材42の伸長方向側フランジ部に当接して篏合することにより、軸部材12の伸長方向への移動が停止する。同時に軸部材12の雄ねじの回転が軸部材3の雌ねじで拘束されるため、第2筒部材41に対して伸長方向へ継続して移動させるような負荷は加わらない。その間、第3筒部材42はフランジ部43の接合又は接続によって基台43に固定された状態が維持されている。アジャスタを縮小方向へ移動させる場合には、図7において(c)→(a)の移動となるように、回転モータを伸長の場合とは逆向きに回転させる。軸部材2及び12は、キャップ部材45によって順次、縮小方向へ移動するため、最終的に図7(a)に示す位置にまで戻る。アジャスタの高さ又は位置は、アジャスタを伸縮移動させた後に停止する位置に従って、制御装置を用いて回転モータの回転駆動時間及び移動距離を制御することによって調整する。
【0065】
図8に示すアジャスタ46の伸縮機構について説明する。アジャスタ46は、図3に示す直動伸縮機構において、軸部材3の外側に、円筒状の筒部材として第1筒部材47、第2筒部材48及び第3筒部材49の3段を取り付けることによって入れ子式に組み合わせたアジャスタの例である。第1筒部材47、第2筒部材48及び第3筒部材49のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面を有し、その両端部には各筒部材の直動をそれぞれ独立に停止させるため、一点鎖線で囲った部分に示すように、互いに篏合するような形状を有するフランジ部が形成されている。アジャスタ46は、前記フランジ部に代えて、突起状の留め具を設けることによって前記各筒部材の直動をそれぞれ独立に停止させる方法を採用してもよい。アジャスタ46は、図7に示すアジャスタ39とは次の2点で異なる。第1点は、軸部材の縮小方向への移動を停止するためのストッパとして機能するキャップ部材50が、第1筒部材47とともに軸部材3に接合又は接続される点である。第2点はアジャスタの伸縮機構が異なっており、伸張時に軸部材1が伸張前の最初に位置に留まる代わりに、軸部材12及び3が順次、伸長方向へ移動する点である。
【0066】
図8に示すアジャスタ46において回転モータの回転駆動を図7に示すものとは逆方向に行うことにより、軸部材2が固定される最初の位置から押し出される形で軸部材12及び3の両者が伸長方向に移動する(図8において(a)→(b)の移動)。そのとき、第1筒部材47の収縮方向側フランジ部が第2筒部材48の伸長方向側フランジ部に当接して篏合することにより、軸部材2及び3の伸長方向への移動が停止する。このとき、図8の断面拡大図(8A)に示すように、軸部材2の雄ねじ5の回転が軸部材12の雌ねじ13によって拘束されるため、第1筒部材47に対して伸長方向へ継続して移動させるような負荷は加わらない。引き続き、軸部材2の回転に同期して軸部材12が連動回転することによって、軸部材3が伸長方向に押し出されるような形で、第2筒部材48とともに伸長方向へ移動する(図7において(b)→(c)の移動)。最終的に、第2筒部材48の収縮方向側フランジ部が第3筒部材49の伸長方向側フランジ部に当接して篏合することにより、軸部材3の伸長方向への移動が停止する。このとき、図8の断面拡大図(8B)に示すように、軸部材12の雄ねじ14の回転が軸部材3の雌ねじ6によって拘束されるため、第2筒部材48に対して伸長方向へ継続して移動させるような負荷は加わらない。その間、3筒部材49は基台44に固定された状態が維持されている。アジャスタを縮小方向へ移動させる場合には、図8において(c)→(a)の移動となるように、回転モータを伸長の場合とは逆向きに回転させる。軸部材3及び12は、キャップ部材50によって順次、縮小方向へ移動するため、最終的に図8(a)に示す位置にまで戻る。アジャスタの高さ又は位置は、アジャスタを伸縮移動させた後に停止する位置に従って、制御装置を用いて回転モータの回転駆動時間及び移動距離を制御することによって調整する。
【0067】
図8に示すアジャスタ46は、図7に示すアジャスタ39に比して、軸部材1の長さを短くできるという利点を有するため、アジャスタの設計自由度が増すだけでなく、装置のコンパクト化を図ることができるという利点を有する。また、図8に示すアジャスタ46は軸部材12及び3を軸部材1で支えるものであるが、装置の堅牢性を増すため、例えば、軸部材1の径を大きくしたり、また、軸部材2、12及び3の径をこの順で小さくしたりする等によって軸部材の構成と構造を最適化してもよい。
【0068】
次に、図9に示すアジャスタ51の伸縮機構について説明する。図9に示すアジャスタ51は、筒部材として第1筒部材52、第2筒部材53、第3筒部材54及び第4筒部材55の4段と、図3に示すように軸部材が3段で組まれる直動伸縮機構とを直列式に組み合わせたアジャスタ例を示す図である。第1筒部材52、第2筒部材53、第3筒部材54及び第4筒部材55のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面を有し、両端部には各筒部材の直動をそれぞれ独立に停止させるために互いに篏合するような形状を有するフランジ部又は留め具が形成されている。また、第1筒部材52は、製品筐体の天井又は壁等の基台56に付属する天板57と固定台58を介して接続又は締結され、基台56に固定される。
【0069】
図9に示すアジャスタ51は、軸部材2、12及び3の3段で組まれる直動伸縮機構を基台56に対して下方に伸長させるとき、前記3段で組まれる直動伸縮機構の自重と各軸部材の回転運動に伴って4段の筒部材が第4筒部材55、第3筒部材54、第2筒部材53及び第1筒部材52の順で自由に落下する(図9において(a)→(b)の移動)。その後、直動伸縮機構の軸部材2の回転が、前記軸部材12との同期的な回転から前記軸部材3との同期的な連動回転へ転換されて伸長方向へ移動する。それにより前記3段で組まれる直動伸縮機構(例えば、図5に示す直動伸縮機構20)を有するアジャスタに比して、伸長距離を長くできるという利点を有する。また、縮小させるときは回転モータ30の回転を逆方向に駆動することにより、3段の直動伸縮機構が軸部材3、軸部材12及び軸部材3の順で縮小した後、4段の筒部材が第4筒部材55、第3筒部材54、第2筒部材53及び第1筒部材52の順で縮小方向へ移動する。その移動により、アジャスタを最終的に図9(a)に示す位置にまで戻すことができる。
【0070】
本願発明の実施形態による直動伸縮機構は、前記直動伸縮機構の一部又は全部を内蔵するアーム部と、前記直動伸縮機構を直動又はギヤ若しくは伝達ベルト部材を介して回転駆動させるための回転モータと、前記回転モータの回転数駆動時間及び移動距離を、前記直動伸縮機構が伸縮移動した後、所定の位置に停止するように制御するための制御装置と、を組み合わせることにより伸縮機構を有するロボットアームとして使用してもよい。前記アーム部は、図5に示す直動伸縮機構の一部又は全部を内蔵できる所望の形状で、金属、プラスチック又は木材によって成形及び加工して作製される。前記アーム部は、例えば、図7及び図8に示すように、多段の筒部材からなる部分であってもよい。また、本発明の実施形態によるロボットアームは、前記アーム部として付加的な部材を用いない構成、例えば図5に示すように、多段で組まれる軸部材がそのまま剥き出しとなった構成も含まれる。
【0071】
<直動伸縮機能を有する階段昇降ロボット>
上述したように、本発明の実施形態による直動伸縮機構は上下方向又は水平方向の伸縮移動の制御が簡単で、且つ、伸縮位置を所望の任意の位置に調整することが容易である。そのため、階段などの段差を簡単に移動できる階段昇降ロボットにおいて昇降機能を付与するための装置又は部品として使用してもよい。本発明の実施形態による階段昇降ロボットは、例えば、以下に示す構成を有するものである。
【0072】
第1の構成としては、本発明の実施形態による直動伸縮機構の3以上と、前記直動伸縮装置の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮装置のそれぞれに装着される回転モータと、前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、前記直動伸縮装置のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材に装着されるスラストベアリングと、前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平面と並行な方向に沿って移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、前記車輪が前記スラストベアリングと直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットである。
【0073】
第1の構成を有する階段昇降ロボットの例として、図5に示す伸長及び縮小の両機能を有する直動伸縮機構を4台で備える階段昇降ロボットを図10及び図11に示す。図10は、本発明の実施形態による階段昇降ロボット59が有する直動伸縮機構60について代表的な1台の態様を模式的に示す断面図である。図10(a)には、直動伸縮機構60の伸張前又は縮小後の状態を示している。また、図10(b)には、直動伸縮機構60を構成するすべての軸部材2、12及び3を伸張させた後又はそれらの軸部材を縮小させる前の状態を示している。図10(a)及び(b)に示す各状態は、軸部材の回転方向を変えることによって得られる。なお、図10は直動伸縮機構60の伸縮途中の状態を省略している。図11は、図10に示す直動伸縮機構60を4台で具備する階段昇降ロボット59が、階段を昇降するときの挙動を説明するための上面図及び側面図である。
【0074】
図10の(a)及び(b)に示すように、直動伸縮機構60を構成する軸部材2、12及び3において、階段昇降ロボット59を構成するフレームとして使用するベース部材61に軸部材3の端部が接続される。直動伸縮機構60には、最も内側に位置する軸部材2にスラストベアリング62が装着されている。軸部材2の先端部には、回転伝達棒を介して回転モータ30が装着されており、回転モータ30の駆動により、階段昇降ロボットのベース部材61の位置が上下に移動する。直動伸縮機構60の下方の位置には、直動伸縮機構60及びベース部材61の荷重を支えながら、ベース部材61の水平面と並行な方向に沿って移動するように、車輪63として63R、63Lの2台が直動伸縮機構60の両側にそれぞれ装着される。ここで、車輪63の装着は、スラストベアリング62と直接的又は車輪支持部材64を介して間接的に接続された形で行われる。車輪63R、63Lの車軸は、車輪駆動用として装着される2台の電動モータ65R、65Lにそれぞれ繋がっている。
【0075】
スラストベアリング62は、軸部材2の回転時に軸方向に加わる荷重を受け止めるための軸受けとして使用され、車輪63R、63Lと一体化することにより軸部材2の回転を円滑にできるという効果を有する。スラストベアリング62は、軸部材2と12との間で負荷の掛かる回転時に軸方向に力が働き、両者の噛み合いを減らすように作用するため、回転時の異音発生の抑制及びねじの寿命向上を図ることができる。
【0076】
図10に示す実施形態においては、回転伝達棒を介さずに軸部材2の先端部に回転モータ30を直に接続してもよい。また、軸部材2の回転駆動用として使用する回転モータ30の装着場所は、図10に示すように軸部材2の下方先端部に限定されるものではなく、軸部材2の上方先端部に装着させてもよい。その場合は、ベース部材61の貫通穴を設けるとともに、回転モータ30をベース部材61の上面に固定する形で装着する。ベース部材61の上面に固定した回転モータ30から軸部材2への回転伝達は、例えば、回転伝達棒を用いて、ベース部材61に形成される貫通孔に前記回転伝達棒を通過させることによって行ってもよい。さらに、車輪63の装着は2台に限定されず、直動伸縮機構59の片側に1台だけで行ってもよい。スラストベアリング62と車輪63との接続も、図10に示す車輪支持部材64R、64Lの構造には限定されず、当業者が通常行う設計範囲内で別の構造を採用してもよい。
【0077】
図10に示す直動伸縮機構60による伸縮機構について説明する。軸部材2の回転駆動によって軸部材2が設置される最初の位置から押し出される形で軸部材12及び3の両者が順次伸長することにより、ベース部材61が上方に移動する(図10において(a)→(b)の移動)。他方、ベース部材61の位置を下方に移動させる場合は、図10において(b)→(a)の移動となるように、回転モータ30を伸長の場合とは逆向きに回転させる。軸部材3及び12は、ベース部材61によって順次、縮小方向へ移動するため、最終的に図10(a)に示す最初の位置にまで戻る。これらの操作によりベース部材61を上下に移動させるとともに、ベース部材61の昇降駆動とは独立して車輪63を駆動することによってベース部材61の水平面と並行な方向に沿って移動させる。このように、ベース部材の昇降駆動及び車輪の走行駆動を、階段段差の位置、高さ及び長さ(又は広さ)に応じてそれぞれ独立して行うことにより、階段昇降ロボットとしての機能と機動性を高めることができる。次に、図10に示す直動伸縮機構60を有する階段昇降ロボットについて、直動伸縮機構60を4台で具備する階段昇降ロボット59が階段を昇降するときの挙動を図11によって説明する。
【0078】
図11において(a)~(d)及び(e)~(h)は、階段66を上るとき及び下るときのそれぞれの挙動を示す断面図である、図11の(a)~(d)において、上段及び下段に示す図はそれぞれ上面図及び側面図である。各上面図において点線円形状で示すように、階段昇降ロボット59は4台の直動伸縮機構60a、60b、60c及び60dが三角形のベース部材61の下面下方に具備されている。また、図11には階段66の段数として3段が例示されているが、(a)~(e)において具体的に示すのは1段目の階段を昇るときの挙動である。2段目以降の階段を昇るときも、(a)~(e)に示すものと基本的に同じ操作を行う。また、図11の(f)~(h)には、階段66の3段目から2段目に降りるときの挙動を示している。階段66の2段目以降の階段を降りるときも、(f)~(h)に示すものと基本的に同じ操作を行う。
【0079】
図11の(a)及び(b)に示すように、階段昇降ロボット59を階段66の1段目に揚げる場合、直動伸縮機構60の中で階段66の1段目に最も近い直動伸縮機構60aの高さを、階段66の高さに合うように調整する。その場合、直動伸縮機構60a、60b、60c及び60dを伸張方向へ移動させて上げた後、直動伸縮機構60aだけを階段66の1段目の高さに合うように縮小方向へ移動させる操作を行ってもよいし、また、動伸縮機構60aの高さが階段66の1段目の高さに合うように、直動伸縮機構60b、60c及び60dを伸張方向へ移動させる操作を行ってもよい。次に、図11(c)に示すように、直動伸縮機構60bの高さが階段66の1段目の高さに合うように、直動伸縮機構60bを縮小方向へ移動させる操作を行う。さらに、図11(d)に示すように、直動伸縮機構60c及び60dの高さが階段66の1段目の高さに合うように、直動伸縮機構60c及び60dを縮小方向へ移動させる操作を行う。それにより階段昇降ロボット59の全体を階段1段目に揚げる操作が完了する。引き続き、階段2段目、又は2段目を経て3段目までに昇る場合は、それぞれ図11の(a)~(d)に示す操作を繰り返す。
【0080】
他方、階段昇降ロボット59を階段66の3段目から2段目に降ろす場合は、図11の(e)~(h)に示す操作を行う。まず、図11(e)に示すように、階段昇降ロボット59の進行方向を、階段66の第1段目に上げたげたときとは逆方向になるように車輪63の走行によって変える。その場合、階段昇降ロボット59の方向転換が狭い範囲で容易に行えるように、直動伸縮機構60a、60b、60c及び60dに装着される車輪としては、回転方向だけに移動する通常の車輪に代えて、例えば、旋回や全方向への移動が可能な全方向車輪を使用してもよい。全方向車輪としては、例えば、オムニホイール及びナカナムホイール等が挙げられる。次に、図11(f)に示すように、直動伸縮機構60の中で階段66の2段目に最も近い直動伸縮機構60aの高さが階段2段目の高さに合うように、直動伸縮機構60aを伸長方向に移動させる操作を行う。引く続き、直動伸縮機構60bについても同様に伸長の操作を行う(図11(g)を参照)。さらに、図11(h)に示すように、階段昇降ロボット59を進行させ、下段66の3段目を降り切った起点で、直動伸縮機構60a、60b、60c及び60dの高さがすべて同じになるように、直動伸縮機構60a、60bを縮小方向へ、又は直動伸縮機構60c、60dを伸長方向へ移動させる操作を行う。それにより階段昇降ロボット59の全体を階段2段目に降ろす操作が完了する。引き続き、階段2段目から所望の場所まで降りる場合は、(e)~(h)に示す操作を繰り返す。
【0081】
次に、本発明の階段昇降ロボットの第2の構成を説明する。第2の構成としては、図5に示す伸長及び縮小の両機能を有する直動伸縮機構の3以上と、前記直動伸縮装置の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮装置のそれぞれに装着される回転モータと、前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平方向と並行に移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、前記車輪が、オムニホイール、ナカナムホイール及び球体ホイールの少なくともいずれか1つの全方向車輪で構成され、かつ、前記直動伸縮装置のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材の先端と直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットである。
【0082】
第2の構成を有する階段昇降ロボットの例として、図5に示す伸長及び縮小の両機能を有する直動伸縮機構を3台で備える階段昇降ロボットを図12及び図13に示す。図12は、本発明の実施形態による階段昇降ロボット67が有する直動伸縮機構68についいて代表的な1台の態様を模式的に示す断面図である。図12(a)は、直動伸縮機構68の伸張前又は縮小後の状態を示し、また、図12(b)は、直動伸縮機構68の軸部材2だけを下方に伸張させた状態を示している。図12(c)は、直動伸縮機構68を構成するすべての軸部材2、12及び3を伸張させた後又はそれらの軸部材を縮小させる前の状態を示す図である。図12(a)~(c)に示す各状態は、直動伸縮機構68の伸張又は縮小の方向に応じて各軸部材2、12及び3の回転方向を変えることによって得られる。また、図12の(d)には、図12(a)に示す階段昇降ロボット67の変形例として車体構造が異なる階段昇降ロボット77を示している。図13は、図12において(a)~(c)に示す直動伸縮機構68を3台で具備する階段昇降ロボットが階段を昇降するときの挙動を説明するための上面図及び側面図である。
【0083】
図12の(a)~(c)に示すように、直動伸縮機構68を構成する軸部材2、12及び3において、軸部材3の下方部分が、階段昇降ロボット67を構成するフレームとして使用するベース部材69に接続される。直動伸縮機構68には、最も内側に位置する軸部材2の下方先端部に車体70が装着されている。車体70を含む点線部分の拡大図を拡大断面図(12A)として示す。拡大断面図(12A)に示すように、車体70は、一方の脚片状の右側部材71Rと左側部材71Lとに分岐した支持部材71を有する。右側部材71R及び左側部材71Lは、右側及び左側の回転部材72R及び72Lを回転可能に支持している。回転部材72R、72Lには、それぞれプーリ73R、73Lが一体的に形成されている。また、車体70には、二つの電動モータ74R、74Lが取り付けられている。電動モータ74R、74Lは、ベルト75R、75L(又はリンクチェーン)によってそれぞれプーリ73R、73Lと駆動連結され、プーリ73R、73Lを回転駆動する。プーリ73R、73Lの回転駆動に伴って、回転部材72R及び72L間に装着される車輪76が回転することにより階段昇降ロボット67が走行駆動する。図12に示す本実施形態においては直動伸縮機構68の伸縮移動を軸部材2の回転によって行うが、軸部材2の回転に同期して同じ方向に車体70も同時に回転する。そのため、車輪76としては、旋回や全方向への移動が可能な全方向車輪を使用する。使用する全方向車輪としては、上述したように、オムニホイール及びナカナムホイール等が挙げられるが、図12の(a)~(c)には、全方向車輪の例として、金属本体部分と弾力のあるローラー部分とからなるオムニホイールを示している。
【0084】
図12の(d)に、図12(a)~(c)に示す車体70とは構造が異なる車体78を有する階段昇降ロボット77を示す。図12の(d)に示す階段昇降ロボット77は、軸部材2、12及び3から構成される直動伸縮機構68を有し、軸部材3の下方部分が、階段昇降ロボット68を構成するフレームとして使用するベース部材69と接続されている。直動伸縮機構68には、最も内側に位置する軸部材2の下方先端部に車体78が装着されている。車体78を含む点線部分の拡大図を拡大断面図(12B)として示す。拡大断面図(12B)に示すように、車体78は、一方の脚片状の中央部79Cから右側部材79Rと左側部材79Lにそれぞれ分岐した支持部材79を有する。車体78には、二つの電動モータ80R、80Lが、それぞれ右側部材79R及び左側部材79Lによって支持される形で取り付けられている。また、電動モータ80R、80Lにそれぞれ直結する車輪81R、81Lが装着されている。車輪81R、81Lとしては、図12の(a)~(c)の車輪76と同様に、旋回や全方向への移動が可能な全方向車輪を使用する。図12の(d)には、全方向車輪の例としてオムニホイール81を示している。車体78には、さらに、支持部材79の中央部79C、すなわち軸部材2の直下に位置する部分に球体ホイール82が取り付けられている。この球体ホイール82は、回転中の軸部材2を支えるとともに、軸部材2の回転に追随できるように、旋回や全方向への移動を自由かつ容易に行うことができる車輪として使用するものである。
【0085】
球体ホイール82を使用する場合、オムニホイール81の数は図12の(d)に示す81R、81Lの2つに限定されず、どちらか1つであってもよい。また、オムニホール81の数が2つである場合は、球体ホイール82を設置しなくてもよい。さらに、球体駆動式全方向移動機構について公知の制御方法を利用することにより、車輪をオムニホール81に代えて、すべて球体ホイール82としてもよい。
【0086】
図12の(a)~(c)に示す直動伸縮機構68による伸縮機構について説明する。軸部材2の回転駆動によって軸部材2が下方に伸張し、さらに伸長させる場合は軸部材12及び3の両者を順次、下方へ伸長することにより、結果的にベース部材69が上方に移動する(図10において(a)→(c)の移動)。他方、ベース部材69の位置を下方に移動させる場合は、図12において(c)→(a)の移動となるように、回転モータ30を伸長の場合とは逆向きに回転させる。軸部材3及び12は、ベース部材69の位置に応じて順次、縮小方向へ移動させることによって最終的に図12(a)に示す最初の位置にまで戻る。これらの操作によりベース部材69を上下に移動させるとともに、ベース部材69の昇降駆動とは独立して車輪76を駆動することによってベース部材69の水平面と並行な方向に沿って移動させる。このように、ベース部材の昇降駆動及び車輪の走行駆動を、階段段差の位置、高さ及び長さ(又は広さ)に応じてそれぞれ独立して行うことにより、階段昇降ロボットとしての機能と機動性を高めることができる。
【0087】
図12の(a)~(c)に示す階段昇降ロボット67においては、軸部材3とベース部材69との接続は、図12に示す位置に限定されず、軸部材3の上方側の部分で行ってもよい。階段昇降ロボット67の構成と構造を図10に示す階段昇降ロボット59と対比すると、前者においては、軸部材2、12及び3から構成される直動伸縮機構68をベース部材69の下面から下方向に設ける必要がない。そのため、例えば、大きな段差や起伏を有する地表面又は設備表面を最初に走行移動する場合は、直動伸縮機構68が段差や起伏と干渉する部分を相対的に少なくできるという利点を有する。特に、図12の(a)から(b)に伸張するときには、地表面又は設備表面の段差や起伏との干渉を気にしないで、直動伸縮機構68の移動走行を行うことができる。
【0088】
図12の(a)~(c)に示す階段昇降ロボット67は、直動伸縮機構68の最も内側に位置する軸部材2の下方先端部に車体70が装着されたものであるが、車体70に代えて、図10に示す階段昇降ロボット59の場合と同様の構成と構造を有する車体としてもよい。図12の(a)~(c)に示す階段昇降ロボット67において、直動伸縮機構68による伸縮移動及び車輪の回転による走行駆動をそれぞれ独立に制御して行う場合は、軸部材2の下方先端部にスラストベアリングを装着し、該スラストベアリングと直接的又は車輪支持部材を介して間接的に接続される車輪を有する車体の構造とする。同様に、図12(d)に示す階段昇降ロボット77においても、図10に示す階段昇降ロボット59の場合と同様の車体の構造を採用してもよい。
【0089】
次に、図12に示す直動伸縮機構68を3台で有する階段昇降ロボット67が階段を昇降するときの挙動を図13によって説明する。
【0090】
図13において(a)~(d)及び(e)~(h)は、階段66を上るとき及び下るときのそれぞれの挙動を示す断面図である、図13の(a)~(d)において、上段及び下段に示す図は、それぞれ上面図及び側面図である。各上面図において点線円形状で示すように、階段昇降ロボット67は3台の直動伸縮機構68が三角形のベース部材69の下面下方に具備されている。また、図13には階段の段数として3段が例示されているが、(a)~(e)において具体的に示すのは階段66の1段目を昇るときの挙動である。2段目以降を昇るときも、(a)~(e)に示すものと基本的に同じ操作を行う。また、図13の(f)~(h)には階段66の3段目から2段目に降りるときの挙動を示している。2段目以降の階段を降りるときも、(f)~(h)に示すものと基本的に同じ操作を行う。
【0091】
図13の(a)に示すように、階段昇降ロボット67を階段66の1段目に揚げる場合、ベース部材69において階段66の1段目に最も近い頂点の縁部分の高さを、階段66の1段目の高さに合うように直動伸縮機構68aの高さを調整する。ベース部材69において他の2頂点の縁部分についても、階段66の1段目の高さに合うように直動伸縮機構68b及び68cの高さを調整する。次に、直動伸縮機構68aを縮小方向に移動させ、その後、階段昇降ロボット67を階段66の2段目の方向に向けて走行駆動させることにより直動伸縮機構68aが階段66の1段目に乗り上げる(図13(b)を参照)。階段昇降ロボット67の走行駆動を続けるとき、その途中で直動伸縮機構68b、68cが階段66の1段目の縁と接触する前に、直動伸縮機構68b、68cを縮小方向に移動させる操作を行う(図13(c)を参照)。さらに階段昇降ロボット67の走行駆動を続けることにより、階段昇降ロボット67の全体が階段66の1段目に昇る操作が完了する(図13(d)を参照)。引き続き、階段2段目、又は2段目を経て3段目までに昇る場合は、それぞれ(a)~(d)に示す操作を繰り返す。
【0092】
他方、階段昇降ロボット67を階段66の3段目から2段目に降ろす場合は、図13の(e)~(h)に示す操作を行う。まず、階段昇降ロボット67を、階段66を上がるときとは反対方向に回転させて図13の(e)に示すような方向に変える。ここで、階段昇降ロボット67が有する直動伸縮機構68a、68b及び68cは、どの車輪もオムニホイール等の全方向車輪が装着されているため、容易に方向転換を行うことができる。引き続き、直動伸縮機構68の中で階段66の2段目に最も近い位置にある直動伸縮機構68aを伸長方向に移動させる操作を行ってベース部材69を傾ける。このとき、直動伸縮機構68aは、その車輪下端が階段66の2段目の上面に接触できる程度の位置まで、すなわち、階段66の2段目から3段目までの高さとほぼ同じか、又はその高さよりわずかに低くなる長さまで伸張させる。次に、階段昇降ロボット67を階段66の第2段目の方向(図の←の方向)に走行移動させる。ベース部材69は、その走行途中で底面の一部が階段66の3段目の上面角部と接触するようになる(図13(f)を参照)。階段昇降ロボット67は、直動伸縮機構68aが階段66の3段目から2段目の位置に降りるとき、直動伸縮機構68aの伸長により下方に伸びた車輪、前記階段66の3段目の上面角部との接触部、及び直動伸縮機構68b、68cの車輪、の3箇所又は4箇所で支持されるようになる。それにより階段昇降ロボット67の降下時に加わる衝撃が緩和されるため、直動伸縮機構68の転倒を回避することができる。引き続き、図13(g)に示すように、ベース部材69において直動伸縮機構68b及び68cを備える側の一片が階段66の第3段目の縁と接触するまで階段昇降ロボット67の走行駆動を続ける。さらに、直動伸縮機構68aの高さが直動伸縮機構68b及び68cのそれと同じになるように、直動伸縮機構68aの伸長方向への移動操作を行い、階段昇降ロボット67の走行駆動を続ける(図13(h)を参照)。以上の操作により階段昇降ロボット67の全体を階段66の2段目に降ろす操作が完了する。引き続き、階段66の2段目から所望の場所まで降ろす場合は、図13の(e)~(h)に示す操作を繰り返す。
【0093】
図10図13には、本発明の実施形態による階段昇降ロボットの構成及び該階段昇降ロボットが階段を昇降するときの挙動の例を示したが、上述の実施形態の限定されるものではない。本発明の実施形態による直動伸縮機構を有し、その伸縮機構を利用する階段昇降ロボットであれば、種々の形態で具体化することができる。また、本発明の実施形態による階段昇降ロボットは、荷物搬送用の階段昇降搬送車として使用してもよい。
【0094】
以下、一方の軸部材と他方の軸部材と組み合わせからなる2段の直動伸縮機構を示す図4を参考にして、本発明の直動伸縮機構において隣接する2軸部材の基本的な構成と構造に基づく実施形態を図14図20によって具体的に説明する。なお、以下に説明するように、2段の軸部材で組まれる直動伸縮機構の実施形態においては、伸張操作だけでなく、縮小操作も可能にする構成と構造を合わせて示している。本発明の直動伸縮機構は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で具体化することができる。例えば、3段以上で構成される直動伸縮機構は、以下に説明する2段の直動伸縮機構の具体的な実施形態を基本として、その拡張又は変形を行うことによって実施形態とすることができる。
【0095】
<第1の実施形態>
図14に、本発明の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材を抽出し、それらの構成と構造の一例を断面図で示す。図14に示す直動伸縮機構83において、(a)は伸張前又は縮小後の直動伸縮機構の断面図であり、(b)は伸張後又は縮小前の直動伸縮機構の断面図である。直動伸縮機構83は、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじ5、17(ピッチ幅X1及びX2)を軸方向の外周表面に2つの領域で形成した一方の軸部材2、及びピッチ幅がそれぞれ異なる雌ねじ13、18(ピッチ幅Y1及びY2)を軸方向の内周表面に2つの領域で形成した内周表面を有する他方の軸部材12から構成される。さらに、ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、nを2~4のいずれかの整数とするとき、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2をそれぞれ有する雄ねじ5、17及び雌ねじ13、18のねじ山角度(図1においてθで示す角度)がすべて同じになるように形成されている。ここで、X2=(X1/n)の関係は、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17の周期が、ピッチ幅X1を有する雄ねじ5に対して1/n周期で形成されることを意味する。図14に示す直動伸縮機構83は、2つの雄ねじ5、17のピッチ幅においてX2=(X1/2)の関係を有する例である。また、X2=Y1及びX1=Y2であるため、ピッチ幅Y1を有する雌ねじ13の周期も、ピッチ幅Y2を有する雌ねじ18に対して1/2周期となる。本実施形態においてはn=2には限定されず、雄ねじ形成の容易性の点からn=3又は4であってもよい。しかしながら、nが5以上であると、周期の異なる複数の雄ねじ部分の作製が難しくなるだけでなく、直動伸縮機そのものの構造が複雑となる。直動伸縮機としての機能性及び複数の雄ねじ形成の容易性の点から、n=2がより実用的である。さらに、直動伸縮機構83の各軸部材の外周及び内周の表面に形成される雄ねじ5、17及び雌ねじ13、18は、ねじ山角度(図1においてθで示す角度)がどれも同じである。そのため、ピッチ幅X2を有する雄ねじ13は、ピッチ幅X1を有する雄ねじ5より小さい呼び径(図1においてDcで示す径)で形成される。
【0096】
図14に示すように、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17は、ピッチ幅Y2を有する雌ねじ18が形成される領域を有する軸部材12の内部を移動するとき、前記雌ねじ18との間で干渉は起きず、移動が円滑に行われる。さらに、雄ねじ5、17及び雌ねじ13、18のねじ山角度(θ)が同じであるため、両者のねじが螺合するときに両者のねじ間に隙間が生じることがない螺合状態が形成される。
【0097】
図14に示す直動伸縮機構83は、軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、軸部材2の伸長方向側に位置する先端縁部から伸長方向に形成され、雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ24、25を備える。雄ねじ24、25のピッチ幅は、雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きければ、X1であってもよい。前記ストッパとして機能する雄ねじ24、25は、製造及び組立を容易にするという観点から、例えば、ピッチ幅X1を有する雄ねじを軸部材2、12の先端突起部と嵌合させた後、溶接やろう付けなどによる接合を行って形成される。この雄ねじ24、25によるストッパの形成は、接合方法には限定されず、接着剤などによる接続、又は嵌合した後にカシメ等による締結を行ってもよい。また、前記ストッパとしては、他方の軸部材12の内周表面に形成される雌ねじ13の呼び径を超える寸法の直径又は長さを有するフランジ部又はキャップ部材を、一方の軸部材2の伸長方向側先端部に接続又は接合してもよい。
【0098】
図14に示す直動伸縮機構83においては、雄ねじ5、17の各部分を有する外周表面と、雌めじ13、18の各部を有する内周表面とのねじ螺合が、軸部材の軸方向に広範囲にわたって行われる。そのため、直動伸縮機構の円滑な伸縮とともに、伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0099】
<第2の実施形態>
図15に、本発明による直動伸縮機構において隣接する2軸部材を抽出し、それらの構成と構造の変形例を断面図で示す。図15において、(a)は伸張前又は縮小後の直動伸縮機構の断面図であり、(b)は伸張後又は縮小前の直動伸縮機構の断面図である。図15に示す直動伸縮機構84は、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじ5、17(ピッチ幅X1及びX2)を軸方向の外周表面に2つの領域で形成した一方の軸部材12、及びピッチ幅がそれぞれ異なる雌ねじ13、18(ピッチ幅Y1及びY2)を軸方向の内周表面に2つの領域で形成した内周表面を有する他方の軸部材12から構成される。さらに、ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/2)の条件を満たす点では、上記第1の実施形態に示すものと同じである。異なるのは、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17の中から、ピッチ幅Y2(=X1)を有する雌ねじ13と螺合するねじ山17aを除き、雌ねじ13と干渉する部分に位置するねじ山17aがすべて削除される点である。削除する部分のねじ山17bは、図15において点線で示されている。さらに、雄ねじ5、17の呼び径(図1においてDcで示す径)及び雌ねじ13、18の呼び径(図1においてDdで示す径)はほほ同じに形成される点でも異なる。その場合、それぞれの呼び径の寸法は、雄ねじ5、17と雌ねじ13、18との螺合が円滑になるような設計許容範囲内に設定される。
【0100】
また、図15に示す直動伸縮機構84は、軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、前記他方の軸部材12の伸長方向側先端部に前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじ13の呼び径を超える直径又は長さを有し、一方の軸部材2の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるキャップ部材26を備える。同様に、軸部材12の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、軸部材12の伸長方向側の先端部にフランジ部28を形成する。これらのストッパは、製造の容易さの観点から、例えば、キャップ部材26及びフランジ部28を、軸部材2又は12の先端突起部と嵌合させた後、溶接やろう付けなどによる接合を行って形成してもよい。これらストッパの形成は、接合方法には限定されず、接着剤などによる接続、又は嵌合した後にカシメ等による締結を行ってもよい。また、前記ストッパは、軸部材2又は12の伸長方向側に位置する先端縁部から軸方向中央部に形成され、雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじであってもよい。
【0101】
図15に示すように、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17において削除されないで残存する雄ねじ17aは、ピッチ幅Y2を有する雌ねじ18が形成される領域を移動するとき雌ねじ18との間で干渉は起きず、移動が円滑に行われる。さらに、雄ねじ5、17及び雌ねじ13、18は各呼び径がほぼ同じであるため、雄ねじ17aの先端部分が雌ねじ18の最底部と噛み合った状態で螺合する。それにより、雄ねじ5、17の部分を有する外周表面と、雌めじ13、18の部分を有する内周表面とのねじ螺合が、軸部材の軸方向において複数個所の広い範囲にわたって行われる。そのため、直動伸縮機構60は、円滑な伸縮とともに、伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0102】
<第3の実施形態>
図16に、本発明による2段の直動伸縮機構において隣接する2軸部材を抽出し、それらの構成と構造の別の変形例を断面図で示す。図16に示す直動伸縮機構85は、前記一方の軸部材2の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジ5の形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじ17の形成領域との間に、前記雄ねじが形成されない平滑部分86の領域を有する。直動伸縮機構85は、例えば、図16の(a)~(c)に示す方法で製造される。
【0103】
図16(a)に示すように、縮小方向側の先端縁部から軸方向中央部に向けてピッチ幅X1を有する雄ねじ5が形成された一方の軸部材2を、縮小方向側開口部から他方の軸部材12の内部に挿入した後、伸長方向(←方向)に移動させる。他方の軸部材12には、内周表面にピッチ幅Y1及びY2を有する雌ねじ13、18が形成され、また、外周表面の伸長方向側先端部に雄ねじ25があらかじめ形成されている。雄ねじ25は、他方の軸部材12の縮小方向への移動を停止するためのストッパとして設けるものであり、他方の軸部材12の外側に隣接して配置される軸部材3(不図示)の内周表面に形成する雌ねじよりも大きなピッチ幅を有する。その後、図16(b)に示すように、他方の軸部材12の内周表面に形成されるピッチ幅Y1の雌ねじ13に螺合させることができるピッチ幅X2の雄ねじ17と、雌ねじ13のピッチ幅Y1より大きなピッチ幅を有する雄ねじ24とを有するストッパ用治具87が、一方の軸部材2に接合又は接続される。その場合、例えば、該ストッパ用治具87の縮小側先端部に凹部を設け、該凹部を一方の軸部材2の伸長方向側先端部の突起部に設ける凹部に嵌合した後、両者を締結してもよい。ここで、雄ねじ24は、軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして設けるものである。ストッパねじ治具87と一方の軸部材2との締結は、溶接若しくはロウ付け等の接合、加締め又は接着剤による接着の方法で行う。最終的に、図16(c)に示すように、一方の軸部材2の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジ5の形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじ17の形成領域との間に前記雄ねじが形成されない平滑部分86の領域を有し、かつ、他方の軸部材12の内周表面が、ピッチ幅Y1及びY2でそれぞれ形成される雌ねじ13及び18の形成領域を有する直動伸縮機構85が得られる。
【0104】
本実施形態において、直動伸縮機構85の製造方法は図16に示すものに限定されない。例えば、アディティブマニュファクチュアリング(AM)の方法として活用される金属製又は樹脂製の3Dプリンタを用いて、直動伸縮機構85の全部又はその一部を製造し、それらの組み立てを行う方法を採用してもよい。また、3Dプリンタの使用は、直動伸縮機構の製造を容易にするという利点を有するため、本実施形態に限らず、他の実施形態による直動伸縮機構の製造に適用してもよい。
【0105】
図16に示す直動伸縮機構85においては、雄ねじ5、17の部分を有する外周表面と、雌めじ13、18の部分を有する内周表面とのねじ螺合が、軸部材の両端部2か所で広範囲にわたって行われる。そのため、直動伸縮機構85の円滑な伸縮とともに、伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0106】
<第4の実施形態>
図17に、本発明による2段の直動伸縮機構において隣接する2軸部材を抽出し、それらの構成と構造の別の変形例を断面図で示す。図17に示す直動伸縮機構88は、一方の軸部材2の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジ5の形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじ17の形成領域との間に、雄ねじ5が形成されない平滑部分の領域89を有し、さらに、他方の軸部材12の内周表面が、ピッチ幅Y1を有する雌ねじ13の形成領域とピッチ幅Y2を有する雌ねじ18の形成領域との間に、雌ねじが形成されない平滑部分90の領域を有する(図17の(a)、(b)及び(c)を参照)。この直動伸縮機構は、例えば、図17の(a)~(c)に示す方法で製造される。
【0107】
図17(a)に示すように、伸長方向側の先端縁部から軸方向中央部に向けてピッチ幅X2を有する雄ねじ17だけが形成された一方の軸部材2を、軸部材12の縮小方向側開口部からその内部に挿入する。一方の軸部材2の収縮方向側先端部は、他方の軸部材12の内径とほぼ同じ径の外径を有する未加工の円柱部分91を有する。また、他方の軸部材12は、縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、あらかじめ伸長方向側先端部に形成されたフランジ部28を有する。次に、図17(b)に示すように、未加工の円柱67にピッチ幅X1を有する雄ねじ5を形成するための加工が施される。このとき、ピッチ幅X1は、他方の軸部材12の内周に形成される雌ネジ18のピッチ幅Y2と螺合できるピッチ幅に形成される。加工後、一方の軸部材2を伸長方向(←方向)に移動させる。引き続き、図17(c)に示すように、一方の軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、他方の軸部材12の内周表面に形成される雌ねじ13の呼び径(図1に示すDdに相当)を超える直径又は長さを有するキャップ部材26が、一方の軸部材2の伸長方向側の先端部に接続又は締結される。以上のようにして、本実施形態による軸部材2及び12の2段で組まれる直動伸縮機構88の構成が得られる。
【0108】
図17に示す直動伸縮機構88においては、雄ねじ5、17の部分を有する外周表面と、雌めじ13、18の部分を有する内周表面とのねじ螺合が、軸部材の両端部2か所で行われる。そのため、直動伸縮機構88の円滑な伸縮とともに、伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0109】
なお、図17(a)~(c)は一方の軸部材2の収縮方向側端部の円柱部分91を加工することによって雄ねじ5を形成する方法を示しているが、本実施形態においては、一方の軸部材2の伸縮方向側先端部に雄ねじ17の形成を行う場合にも同様の加工方法が適用される。その場合は、縮小方向側の先端縁部から軸方向中央部に向けてピッチ幅X1を有する雄ねじ5だけが形成された一方の軸部材2を、他方の軸部材12の伸長方向側開口部からその内部に挿入した後、伸長方向側端部に存在する未加工の円柱部分に、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17を形成するための加工が施される。
【0110】
<第5の実施形態>
図18に、本発明による2段の直動伸縮機構において隣接する2つの軸部材を抽出し、それらの構成と構造の別の変形例を断面図で示す。図18において、(a)は伸張前又は縮小後の直動伸縮機構の断面図であり、(b)は伸張後又は縮小前の直動伸縮機構の断面図である。図18に示す直動伸縮機構92は、一方の軸部材2において、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじ5、17が軸方向に2つの領域で形成される外周表面を有し、かつ、他方の軸部材12において、雌ねじ13が形成される部分と複数の凹部が形成される平滑部分93とを軸方向に直列に備える内周表面を有する。また、一方の軸部材2の縮小方向側に位置する先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される雄ねじ5のピッチ幅をX1とし、他方の軸部材12の伸張方向側に位置する先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される雌ねじ13のピッチ幅Y1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成する。さらに、軸部材12の内周表面を構成する平滑部分93には、前記複数の凹部94が前記ピッチ幅X1の雄ねじの先端部と螺合する雌ねじとしての役割を担うように、雄ねじ17の先端部と同じ形状で、かつ、前記X1と同じピッチ幅で規則的に形成されている。
【0111】
図18に示すように、ピッチ幅X2を有する雄ねじ17は、複数の凹部94が形成される平滑部分93の領域を移動するとき前記平滑部93との間で干渉が起きず、移動が円滑に行われる。そして、一方の軸部材2が回転によって伸長方向へ移動するのに伴い、ピッチ幅X1の雄ねじ5がピッチ幅Y1の雌ねじ13と当接するとき、雄ねじ5の回転が雌ねじ13で拘束(又はクランプ)され、一方の軸部材2の回転に同期して他方の軸部材12が連動回転する。
【0112】
また、図18に示す直動伸縮機構92は、他方の軸部材12の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、あらかじめ他方の軸部材12の伸長方向側先端部に形成された雄ねじ25を有する。この雄ねじ25のピッチ幅は、軸部材12に外側に隣接して配置される軸部材(図3に示す軸部材3又は図5に示す軸部材23)において伸長方向側先端部の内周表面に形成される雌めじのピッチ幅に応じて、それよりも大きなピッチ幅で形成される。また、一方の軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじが、雄ねじ25として、軸部材2の伸長方向側に接続又は締結されている。雄ねじ24及び25のピッチ幅は、前記雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きければ、X1であってもよい。図18(b)に示す一方の軸部材2を伸長時とは逆方向に回転させれば、ストッパ構造を有する直動伸縮機構92が縮小方向側に移動し、図18(a)に示す形態に戻すことができる。
【0113】
図18に示す直動伸縮機構においては、雄ねじ5及び17が、雌ねじ13の部分だけでなく、平滑部分93の一部に形成される規則的なピッチ幅を有する複数の凹部94ともねじ螺合する。両者の螺合が、軸部材の両端部及び前記平坦分の凹部で広範囲に行われるため、直動伸縮機構92の円滑な伸縮とともに、伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0114】
<第6の実施形態>
図19及び図20に、本発明による2段の直動伸縮機構において隣接する2軸部材だけを抽出し、それらの構成と構造の別の変形例の2例をそれぞれ断面図で示す。図19及び図20において、(a)は伸張前又は縮小後の直動伸縮機構の断面図であり、(b)は伸張後又は縮小前の直動伸縮機構の断面図である。図19及び図20に示す直動伸縮機構95及び96は、一方の軸部材2において、所望のピッチ幅を有する雄ねじ15が形成される部分と雄ねじが形成されない平滑部分7とを軸方向に直列に備える外周表面を有し、かつ、他方の軸部材12において、所望のピッチ幅を有する雌ねじ13が形成される部分と雌ねじが形成されない平滑部分15とを軸方向に直列に備える内周表面を有する。さらに、雄ねじが形成されない平滑部分15を、前記他方の軸部材12の伸張方向側に位置する先端部から軸方向の中央部に向けて形成される雌ねじ13と干渉させるように、一方の軸部材2の縮小方向側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて、雄ねじ20の呼び径より大きく、かつ、他方の軸部材12の内径に対して日本工業規格(JIS B0401)に規定される嵌め合い寸法の公差域クラスh8の寸法許容差内に含まれる外径を有する円柱状の表面平滑面として形成されている。前記雄ねじが形成されない平滑部分7を断面とする円柱部分の外径を、前記のような寸法に規定する理由は上述で説明した通りである。ここで、一方の軸部材2の外周表面に形成される雄ねじ20の呼び径(図1においてDdに相当)は、前記雌ねじが形成されない平滑部分15との干渉を避けるため、該雌ねじが形成されない平滑部分15によって構成される他方の軸部材12の内周内に挿入できる程度の寸法範囲内で形成するか(図19を参照)、又は、それよりも小さい寸法で形成する(図20を参照)。
【0115】
また、図19に示す直動伸縮機構95は、他方の軸部材12の縮小方向の移動を停止するのストッパとして、あらかじめ他方の軸部材12の伸長方向側先端部に形成されたフランジ部28を有する。また、一方の軸部材2の縮小方向の移動を停止するためのストッパとして、他方の軸部材12の内周表面に形成される雌ねじ13の呼び径(図1に示すDdに相当)を超える直径又は長さを有し、一方の軸部材2の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるキャップ部材26を備える。フランジ部28は、軸部材12の伸長方向側の先端突起部に接合、加締め又は接着することによって形成される。また、キャップ部材26は、軸部材2の伸長方向側の先端突起部と嵌合させた後、溶接やろう付けなどによる接合を行って形成される。キャップ部材26の形成は、接合方法には限定されず、接着剤などによる接続、又は嵌合した後にカシメ等による締結を行ってもよい。
【0116】
図20に示す直動伸縮機構96は、雌ねじのピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ20の呼び径を図15に示す直動伸縮機構95よりも小さくした例である。また、前記ストッパとして、図15に示すキャップ部材26に代えて、雌ねじ13のピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ24が軸部材2の伸長方向側に接続又は締結されている。
【0117】
図19及び図20に示す直動伸縮機構95及び96は、それぞれ伸縮時には(a)から(b)の状態に、逆に、縮小時には(b)から(a)の状態に変化する。図19及び図20に示すように、2つの軸部材2及び12は、所望のピッチ幅を有する雄ねじ20の部分と、ピッチ幅が雄ねじ20と同じである雌ねじ13との螺合、及び雄ねじが形成されない平滑部分7と、雌ねじが形成されない平滑部分15との嵌合によって互いに支持される。それにより、直動伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。
【0118】
以上のように、本発明の実施形態による直動伸縮機構は、コンパクトな構成と構造で軸部材間の相対移動による伸縮伸縮移動を円滑に行うことができるだけでなく、雄ねじ形成部を有する外周表面と、雌めじ形成部を有する内周表面と、のねじ螺合が複数箇所で広範囲にわたって行われるため、直動伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。それにより、地表又は装置水平面に対して垂直の縦方向だけでなく、平行方向及び斜め方向に対しても高精度の位置調整を行うことができるという利点を有する。したがって、本発明の実施形態による直動伸縮機構をアジャスタ及び階段昇降ロボットに適用する場合には高精度の位置合わせとともに伸縮方向が自在に選択できるため、様々な用途に適用を拡大することができる。
【符号の説明】
【0119】
1・・・軸部材が2段で組まれる直動伸縮機構
2,3,12,21,22,23・・・軸部材
4・・・回転伝達棒
5,14・・・ピッチ幅X1を有する雄ねじ
6,13・・・ピッチ幅Y1を有する雌ねじ
7,16,89・・・雄ねじが形成されない平滑部分
8,15,90・・・雌ねじが形成されない平滑部分
9・・・雄ねじが形成されない平滑部分とは別領域に形成される雄ねじ
11・・・軸部材が3段で組まれる直動伸縮機構
17,19,27,29,86・・・ピッチ幅X1を有する雄ねじとは別領域に形成される雄ねじ
18・・・ピッチ幅Y1を有する雌ねじとは別領域に形成される雌ねじ
20,60,68・・・軸部材が3段で組まれ、伸長及び縮小の両機能を有する直動伸縮機構
24,25・・・ストッパ用雄ねじ
26,45,50・・・ストッパ用キャップ部材
28,43・・・フランジ部
30・・・回転モータ
31,35・・・基部
32・・・駆動雄ねじボルト
33・・・駆動歯車
34・・・従動歯車
36・・・プーリ
37・・・ベルト
38・・・フレキブル回転具
39,46,51・・・アジャスタ
40,47,52・・・第1筒部材
41,48,53・・・第2筒部材
42,49,54・・・第3筒部材
44,56・・・基台
45・・・キャップ部材
55・・・第4筒部材
57・・・天板
58・・・固定台
59,67,77・・・階段昇降ロボット
61,69・・・ベース部材
62・・・スラストベアリング
63,76・・・車輪
64・・・車輪支持部材
65,74,80・・・車輪駆動用の電動モータ
66・・・階段
70,78・・・車体
71,79・・・支持部材
72・・・回転部材
73・・・プーリ
75・・・ベルト
81・・・オムニホイール
82・・・球体ホイール
83,84,85,88、92,95,96・・・2つの軸部材を抽出したときの直動伸縮機構
87・・・ストッパ用治具
91・・・未加工の円柱部分
93・・・軸部材の内周表面を構成する平滑部分
94・・・凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の実施形態による直動伸縮機構は、一方の軸部材の外周表面及び他方の軸部材の内周表面にそれぞれ形成される雄ねじ及び雌ねじにおいて、一方の軸部材の縮小方向側に位置する先端部及び前記他方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部の各部にそれぞれ形成されるねじのピッチ幅の関係又はそれぞれの部分の構造と形状を特定することにより、コンパクトな構成と構造で軸部材間の相対移動による伸縮伸縮移動を円滑に行うことができる。さらに、雄ねじ形成部を有する外周表面雌めじ形成部を有する内周表面のねじ螺合、並びに前記の外周表面及び内周表面にそれぞれ形成される平滑部分同士による嵌合、の少なくともいずれかが軸長手方向の複数箇所で広範囲にわたって行われるため、円滑な伸縮とともに、直動伸縮機構の堅牢性の向上を図ることができる。それにより、地表又は装置水平面に対して垂直の縦方向だけでなく、平行方向及び斜め方向に対しても高精度の位置調整を行うことができるという利点を有することから、伸縮方向を自在に選択できるアジャスタ及びロボットアームへ適用を拡大することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行うため、少なくとも前記軸部材が2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構であって、
前記一方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雄ねじが軸方向に2以上の領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雌ねじが軸方向に2以上の領域で形成される内周表面、又は雌ねじが形成される部分と、前記一方の軸部材の外周表面において軸方向の一つの領域に形成される雄ねじと螺合するように複数の凹部が形成される平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記一方の軸部材において一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記他方の軸部材において前記一方の軸部材の一方の端縁部とは反対側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅をY1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする直動伸縮機構。
【請求項2】
前記一方の軸部材において前記ピッチ幅X1より狭いピッチ幅X2を有する雄ねじが、前記一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される外周表面と
前記他方の軸部材面において前記ピッチ幅Y1より広いピッチ幅Y2を有する雌ねじが、前記一方の軸部材の一方の先端部とは同じ側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される内周表面と、を有しており、
前記ピッチ幅X1、X2及びY1及びY2が、X2≦Y1<X1≦Y2の条件を満たすように形成されることにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ネジの回転が前記雌ネジに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して、前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項3】
前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、2~4のいずれかの整数とするnにおいて、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2をそれぞれ有する雄ねじ及び雌ねじのねじ山角度がすべて同じになるように形成されることにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項4】
前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、2~4のいずれかの整数とするnにおいて、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじにおいて前記ピッチ幅Y2を有する雌ねじと干渉する部分に位置する雄ねじのねじ山を削除することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項5】
前記一方の軸部材の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジの形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじの形成領域との間に、前記雄ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする請求項2に記載の直動伸縮機構。
【請求項6】
前記他方の軸部材の内周表面が、ピッチ幅Y1を有する雌ねじの形成領域とピッチ幅Y2を有する雌ねじの形成領域との間に、前記雌ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする請求項5に記載の直動伸縮機構。
【請求項7】
前記一方の軸部材は、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじが軸方向に2つの領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、雌ねじが形成される部分と、前記一方の軸部材の外周表面において軸方向の一つの領域に形成される雄ねじと螺合するように複数の凹部が形成される平滑部分とを軸方向の直列に備える内周表面を有し、
前記一方の軸部材の一方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記一方の軸方向の一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅Y1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するとともに、
前記他方の軸部材の内周表面において前記平滑部分には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじの先端部と螺合する雌ねじとしての役割を担うように、前記雄ねじの先端部と同じ形状を有する複数の凹部を前記X1と同じピッチ幅で規則的に形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項8】
前記複数の直動伸縮機構が、
最前段又は最上段の位置に配置され、外周表面に雄ねじが形成される前記軸部材Lと、
最前段及び最後段の間、又は最上段及び最下段の間の段に配置され、外周及び内周にそれぞれ雄ねじと雌ねじとが形成される軸部材Mの1または2以上と、
最後段又は最下段の位置に配置され、内周表面に雌ねじが形成される前記軸部材Nと、
の3段以上の軸部材を有し、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記一方の軸部材に相当する軸部材L及びMの外周表面には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじが、前記軸部材L及びMの一方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されるとともに、
前記他方の軸部材に相当する軸部材M及びNの内周表面には、前記ピッチ幅Y1を有する雌ねじが、前記軸部材M及びNにおいて前記軸部材L及びMの一方の先端部とは反対側に位置する先端縁部から各軸部材の軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されており、
前記X1及びY1を、前記一方の軸部材及び前記他方の軸部材との位置関係においてX1>Y1の条件を満たすようにそれぞれ独立に形成することにより、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記軸部材Lが前記軸部材Mの内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記軸部材Lの外周雄ねじが前記軸部材Mの内周雌ねじと当接し、引き続き、前記軸部材Mの外周雄ねじが前記軸部材Nの内周雌ねじと当接するとき、前記雄ねじの回転が順次、雌ねじに拘束され、該拘束によって、
前記軸部材Mが1つである場合は、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な回転から前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ転換され、また、
前記軸部材Mが2以上である場合は、前記軸部材Mの設置段数に応じて、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な連動回転、前記軸部材Mから隣接する他の軸部材Mとの同期的な連動回転の繰り返し、及び前記別の軸部材Mに隣接する前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ、それぞれ順に転換されることを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構。
【請求項9】
前記一方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部には、前記一方の軸部材を縮小させるとき、前記一方の軸部材の縮小方向への移動を前記他方の軸部材の伸長方向側の先端縁部で停止させるためのストッパが形成されており、
前記ストッパが、前記一方の軸部材の外周表面において伸張方向側に位置する先端縁部から伸長側に向けて所定の長さで形成され、前記雌ねじのピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ、及び、前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじの呼び径を超える直径又は長さを有し、前記一方の軸部材の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるフランジ部又はキャップ部材、の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の直動伸縮機構。
【請求項10】
請求項に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、を有することを特徴とするアジャスタ。
【請求項11】
請求項に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、
前記直動伸縮機構と入れ子式又は直列式に組み合わされる円筒状又は角筒状の筒部材の2以上を備える多段筒部材で組まれる直動伸縮機構と、を有し、
前記筒部材のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面、及び前記筒部材の直動をそれぞれ独立に止めるためのフランジ部又は留め具が形成される両端部を備えており、前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構において最近接の筒部材を基台に固定することにより、
前記回転モータの駆動による前記直動伸縮機構の伸縮に伴って前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構の伸縮を行うことを特徴とするアジャスタ。
【請求項12】
請求項に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材に装着されるスラストベアリングと、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平面と並行な方向に沿って移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が前記スラストベアリングと直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボット。
【請求項13】
請求項に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平方向と並行に移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が、全方向車輪から構成され、かつ、前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材の先端と直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、一方の軸部材を他方の軸部材の内部で軸線方向に移動可能となるように互いに隣接させた形で螺着し、これら軸部材間の相対移動による伸縮を自在に行うため、少なくとも前記軸部材が2段以上で組まれる複数の直動伸縮機構であって、
前記一方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雄ねじが軸方向に2以上の領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、ピッチ幅が異なる雌ねじが軸方向に2以上の領域で形成される内周表面、又は雌ねじが形成される部分と、前記一方の軸部材の外周表面において軸方向の一つの領域に形成される雄ねじと螺合するように複数の凹部が形成される平滑部分とを軸方向に直列に備える内周表面を有しており、
前記一方の軸部材において一方の先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記他方の軸部材において前記一方の軸部材の一方の端縁部とは反対側に位置する先端縁部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅をY1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする直動伸縮機構を提供する。
[2]本発明は、前記一方の軸部材において、前記ピッチ幅X1より狭いピッチ幅X2を有する雄ねじが、前記一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される外周表面と、
前記他方の軸部材面において、前記ピッチ幅Y1より広いピッチ幅Y2を有する雌ねじが、前記一方の軸部材の一方の先端部とは同じ側に位置する先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成される内周表面と、を有しており、
前記ピッチ幅X1、X2及びY1及びY2が、X2≦Y1<X1≦Y2の条件を満たすように形成されることにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ネジの回転が前記雌ネジに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して、前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする請求項1に記載の直動伸縮機構を提供する。
[3]本発明は、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、2~4のいずれかの整数とするnにおいて、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2をそれぞれ有する雄ねじ及び雌ねじのねじ山角度がすべて同じになるように形成されることにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[4]本発明は、前記ピッチ幅X1、X2及びY1、Y2が、2~4のいずれかの整数とするnにおいて、X2=Y1<X1=Y2及びX2=(X1/n)の条件を満たし、かつ、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじが前記ピッチ幅Y2を有する雌ねじと干渉する部分に位置する前記雄ねじのねじ山を削除することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじに拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[5]本発明は、前記一方の軸部材の外周表面が、ピッチ幅X1を有する雄ネジの形成領域とピッチ幅X2を有する雄ねじの形成領域との間に、前記雄ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする前記[2]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[6]本発明は、前記他方の軸部材の内周表面が、ピッチ幅Y1を有するの雌ねじの形成領域とピッチ幅Y2を有する雌ねじの形成領域との間に、前記雌ねじが形成されない平滑部分の領域を有することを特徴とする前記[5]に記載の直動伸縮機構を提供する。
[7]本発明は、前記一方の軸部材において、ピッチ幅がそれぞれ異なる雄ねじが軸方向に2つの領域で形成される外周表面を有し、かつ、
前記他方の軸部材は、雌ねじが形成される部分と、前記一方の軸部材の外周表面において軸方向の一つの領域に形成される雄ねじと螺合するように複数の凹部が形成される平滑部分とを軸方向の直列に備える内周表面を有し、
前記一方の軸部材の一方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雄ねじのピッチ幅をX1とし、前記一方の軸方向の一方の先端部とは反対側に位置する他方の先端部から軸方向の中央部に向けて所望の長さで形成される前記雌ねじのピッチ幅Y1とするとき、それぞれのピッチ幅をX1>Y1の条件を満たすように形成するとともに、
前記他方の軸部材の内周表面において前記平滑部分には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじの先端部と螺合する雌ねじとしての役割を担うように、前記雄ねじの先端部と同じ形状を有する複数の凹部を前記X1と同じピッチ幅で規則的に形成することにより、
前記一方の軸部材が前記他方の軸部材の内部で螺着回転しながら移動するのに伴い、前記一方の軸部材の外周表面に形成される前記ピッチ幅X1の雄ねじが、前記他方の軸部材の内周表面に形成される前記ピッチ幅Y1の雌ねじに当接するとき、
前記雄ねじの回転が前記雌ねじで拘束され、前記一方の軸部材の回転に同期して前記他方の軸部材が連動回転することを特徴とする前記[1]に記載の直動伸縮機構を提供する。
]本発明は、前記複数の直動伸縮機構が、
最前段又は最上段の位置に配置され、外周表面に雄ねじが形成される前記軸部材Lと、
最前段及び最後段の間、又は最上段及び最下段の間の段に配置され、外周及び内周にそれぞれ雄ねじと雌ねじとが形成される軸部材Mの1または2以上と、
最後段又は最下段の位置に配置され、内周表面に雌ねじが形成される前記軸部材Nと、
の3段以上の軸部材を有し、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記一方の軸部材に相当する軸部材L及びMの外周表面には、前記ピッチ幅X1を有する雄ねじが、前記軸部材L及びMの一方の先端縁部から軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されるとともに、
前記他方の軸部材に相当する軸部材M及びNの内周表面には、前記ピッチ幅Y1を有する雌ねじが、前記軸部材M及びNにおいて前記軸部材L及びMの一方の先端部とは反対側に位置する先端縁部から各軸部材の軸方向中央部に向けて所望の長さで形成されており、
前記X1及びY1を、前記一方の軸部材及び前記他方の軸部材との位置関係においてX1>Y1の条件を満たすようにそれぞれ独立に形成することにより、
前記軸部材L、M及びNにおいて、前記軸部材Lが前記軸部材Mの内部で螺着回転しながら伸張するのに伴い、前記軸部材Lの外周雄ねじが前記軸部材Mの内周雌ねじと当接し、引き続き、前記軸部材Mの外周雄ねじが前記軸部材Nの内周雌ねじと当接するとき、前記雄ねじの回転が順次、雌ねじに拘束され、該拘束によって、
前記軸部材Mが1つである場合は、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な回転から前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ転換され、また、
前記軸部材Mが2以上である場合は、前記軸部材Mの設置段数に応じて、前記軸部材Lの回転が、前記軸部材Mとの同期的な連動回転、前記軸部材Mから隣接する他の軸部材Mとの同期的な連動回転の繰り返し、及び前記別の軸部材Mに隣接する前記軸部材Nとの同期的な連動回転へ、それぞれ順に転換されることを特徴とする前記[1]に記載の直動伸縮機構を提供する。
]本発明は、前記一方の軸部材の伸張方向側に位置する先端部には、前記一方の軸部材を縮小させるとき、前記一方の軸部材の縮小方向への移動を前記他方の軸部材の伸長方向側の先端縁部で停止させるためのストッパが形成されており、
前記ストッパが、前記一方の軸部材の外周表面において伸張方向側に位置する先端縁部から伸長側に向けて所定の長さで形成され、前記雌ねじのピッチ幅Y1よりも大きなピッチ幅を有する雄ねじ、及び、前記ピッチ幅Y1で形成される雌ねじの呼び径を超える直径又は長さを有し、前記一方の軸部材の伸長方向側の先端部に接続又は接合されるフランジ部又はキャップ部材、の少なくともいずれかであることを特徴とする前記[1]~[]のいずれか一項に記載の直動伸縮機構を提供する。
10]本発明は、前記[9]に記載の直動伸縮機構と、前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、を有することを特徴とするアジャスタを提供する。
11]本発明は、前記[]に記載の直動伸縮機構と、
前記直動伸縮機構において組み込まれる複数の軸部材の中で、最も内側に配置される軸部材を回転駆動させるための回転モータと、
前記直動伸縮機構と入れ子式又は直列式に組み合わされる円筒状又は角筒状の筒部材の2以上を備える多段筒部材で組まれる直動伸縮機構と、を有し、
前記筒部材のそれぞれは、ねじ溝が形成されていない内外周表面、及び前記筒部材の直動をそれぞれ独立に止めるためのフランジ部又は留め具が形成される両端部を備えており、前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構において最近接の筒部材を基台に固定することにより、
前記回転モータの駆動による前記直動伸縮機構の伸縮に伴って前記多段筒部材で組まれる直動伸縮機構の伸縮を行うことを特徴とするアジャスタを提供する。
12]本発明は、前記[]に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材に装着されるスラストベアリングと、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平面と並行な方向に沿って移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が前記スラストベアリングと直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットを提供する。
13]本発明は、前記[]に記載の直動伸縮機構の3以上と、
前記直動伸縮機構の3以上を独立して駆動するように前記直動伸縮機構のそれぞれに装着される回転モータと、
前記直動伸縮機構の3以上をそれぞれ異なる位置に装着するベース部材と、
前記直動伸縮機構を駆動するための回転モータとは別の回転モータによって駆動し、前記直動伸縮機構及び前記ベース部材の荷重を支えながら前記ベース部材の水平方向と並行に移動するように前記直動伸縮機構の下方の位置に装着される車輪とを有し、
前記車輪が、全方向車輪から構成され、かつ、前記直動伸縮機構のそれぞれにおいて最も内側に位置する軸部材の先端と直接的又は間接的に接続された形で装着されることを特徴とする階段昇降ロボットを提供する。
[発明の効果]