(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071035
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/25 20160101AFI20240517BHJP
【FI】
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181753
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中出 智之
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、固定子巻線の最大温度部位との温度差が小さい取付位置に温度センサを取り付けて、固定子巻線の温度を検出することができる回転電機を提供することにある。
【解決手段】
回転電機は、環状の固定子コア232に設けられた複数のスロット232aの各々に貫通して固定子巻線238を構成する導体2381と、導体238(2381)の温度を測定する温度センサ11を有する温度センサユニット1と、を備える。温度センサユニット1は、導体238(2381)がスロット232aから軸方向の外側に露出するコイルエンド部238Aに保持され、コイルエンド部238Aの最外周よりも最内周に近い導体238(2381)に接触するように温度センサ11を配置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子コアに設けられた複数のスロットの各々に貫通して固定子巻線を構成する導体と、
前記導体の温度を測定する温度センサを有する温度センサユニットと、
を備え、
前記温度センサユニットは、前記導体が前記スロットから軸方向の外側に露出するコイルエンド部に保持され、前記コイルエンド部の最外周よりも最内周に近い前記導体に接触するように前記温度センサを配置する回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記温度センサユニットは、前記温度センサを前記コイルエンド部に対して前記軸方向から押圧するように付勢する付勢部を有するセンサホルダを備える回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記固定子巻線は、前記コイルエンド部に、複数の前記導体が交差する交差領域を形成し、
前記センサホルダは、略矩形形状を成す枠体を備え、
前記枠体は、前記交差領域を前記軸方向に挟んで対向する一対の第1支持部材と、前記交差領域を径方向に挟んで対向する一対の第2支持部材と、を備え、
前記一対の第1支持部材のうち前記固定子コアの側とは反対側に位置する一方の第1支持部材は、前記温度センサを保持し、
前記一対の第1支持部材のうち前記固定子コアの側に位置する他方の第1支持部材は、前記付勢部を有し、
前記付勢部は、前記センサホルダを前記固定子コアの側に付勢することにより、前記温度センサを前記固定子コアの側とは反対側から前記コイルエンド部に向けて付勢する回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記温度センサユニットは、前記コイルエンド部の最内周に配置された前記導体に前記温度センサを配置する回転電機。
【請求項5】
環状の固定子コアに設けられた複数のスロットの各々に貫通する導体であって、前記固定子コアの軸方向の外側で周方向に傾斜して他の前記スロットに挿入された他の導体と交差する導体の温度を測定する温度センサを有する回転電機であって、
前記温度センサを有する温度センサユニットは、
前記軸方向に離間し、一方は前記導体の交差領域を隔てて前記固定子コアから前記軸方向に離間する側に位置し、他方は前記複数のスロットの間における前記導体の交差領域と前記固定子コアとの間に位置する、一対の第1支持部材と、
径方向に離間し、一方は前記導体の交差領域よりも前記径方向の内側に位置し、他方は前記導体の交差領域よりも前記径方向の外側に位置して、前記一対の第1支持部材を前記軸方向で接続する一対の第2支持部材と、を備え、
前記一方の第1支持部材は、前記径方向の内側に配置される前記導体であって前記固定子コアから最も離れた端部に接触する温度センサを保持し、
前記他方の第1支持部材は、基部と、前記導体の交差領域に係止する係止部と、前記基部から前記係止部を前記軸方向に付勢する弾性部と、を備える回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機において、
前記導体は、前記固定子コアから最も離れた端部に、前記温度センサが接触する平面部を有する回転電機。
【請求項7】
請求項5に記載の回転電機において、
前記一対の第1支持部材と前記一対の第2支持部材とは、略矩形形状を成す枠体を構成し、
前記一対の第2支持部材のうち前記径方向の内側に位置する一方の第2支持部材と前記一対の第1支持部材とは、一体で前記枠体の第1枠体部を構成し、
前記一対の第2支持部材のうち前記径方向の外側に位置する他方の第2支持部材は、前記枠体の第2枠体部を構成し、
前記第1枠体部と前記第2枠体部とは、スナップフィットにより一体に組み付けられる回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーミスタ素子をコイルエンドに押圧する弾性部と、弾性部をモータケースに固定する固定部と、を備える器具を用いて、コイルにサーミスタ素子を隣接させる回転電機が記載されている(段落0028-0029及び
図3参照)。さらに特許文献1の
図1には、サーミスタ素子はコイルエンドの最外周に隣接する様子が描かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、コイルの最大温度部位についての配慮がなく、コイルの最大温度部位とサーミスタ素子の取付位置との温度差を小さくすることについての配慮がない。本明細書では、温度センサをサーミスタ素子に限定することなく、温度センサとして説明する。また、コイルは固定子巻線として説明する。
【0005】
本発明の目的は、固定子巻線の最大温度部位との温度差が小さい取付位置に温度センサを取り付けて、固定子巻線の温度を検出することができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の回転電機は、
環状の固定子コアに設けられた複数のスロットの各々に貫通して固定子巻線を構成する導体と、
前記導体の温度を測定する温度センサを有する温度センサユニットと、
を備え、
前記温度センサユニットは、前記導体が前記スロットから軸方向の外側に露出するコイルエンド部に保持され、前記コイルエンド部の最外周よりも最内周に近づけて前記温度センサを配置する。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の回転電機は、
環状の固定子コアに設けられた複数のスロットの各々に貫通する導体であって、前記固定子コアの軸方向外側で周方向に傾斜して他の前記スロットに挿入された他の導体と交差する導体の温度を測定する温度センサを有する回転電機であって、
前記温度センサを保持する温度センサユニットは、
前記軸方向に離間し、一方は前記導体の交差領域を隔てて前記固定子コアから前記軸方向に離間する側に位置し、他方は前記複数のスロットの間における前記導体の交差領域と前記固定子コアとの間に位置する、一対の第1支持部材と、
径方向に離間し、一方は前記導体の交差領域よりも前記径方向内側に位置し、他方は前記導体の交差領域よりも前記径方向外側に位置して、前記一対の第1支持部材を前記軸方向で接続する一対の第2支持部材と、を備え、
前記一方の第1支持部材は、前記径方向内側の前記導体であって前記コアから最も離れた端部に接触する温度センサを保持し、
前記他方の第1支持部材は、基部と、前記導体の交差領域に係止する係止部と、前記基部から前記係止部を前記軸方向に付勢する弾性部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定子巻線の最大温度部位との温度差が小さい取付位置に温度センサを取り付けて、固定子巻線の温度を検出することができる回転電機を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る回転電機をシャフトの軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る回転電機の固定子をシャフトの軸方向に沿う方向から見た図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る回転電機のコイルエンド部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る温度センサユニットの外観を示す斜視図である。
【
図5】
図4の温度センサユニットの構成を示す平面図である。
【
図6】
図4の温度センサユニットを分解した図である。
【
図7】
図4の温度センサユニットの温度センサをコイルエンド部に押圧する付勢部の構造を示す図である。
【
図8】
図4の温度センサユニットをコイルエンド部に組み付ける手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。以下の説明において、回転子280のシャフト218の軸心に沿う方向を「軸方向」、固定子230または回転子280の径方向を「径方向」と呼んで説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る回転電機200をシャフト218の軸方向に沿って切断した断面図である。
【0012】
ハウジング212の内部には固定子230が保持されており、固定子230は固定子コア232と固定子巻線238とを備えている。固定子コア232の内周側には、回転子280が空隙222を介して回転可能に保持されている。回転子280は、シャフト218に固定された回転子コア282と、永久磁石284と、非磁性体のあて板226とを備えている。ハウジング212は軸受216が設けられた一対のエンドブラケット214を有しており、シャフト218はこれらの軸受216により回転自在に保持されている。
【0013】
シャフト218には、回転子280の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ224が設けられている。このレゾルバ224からの出力は、図示しない制御回路に取り込まれる。制御回路は、取り込まれた出力に基づいて制御信号を図示しない駆動回路に出力する。駆動回路は、その制御信号に基づく駆動信号を図示しないパワーモジュールに出力する。パワーモジュールは、制御信号に基づきスイッチング動作を行い、図示しないバッテリから供給される直流電力を3相交流電力に変換する。この3相交流電力は固定子巻線238に供給され、回転磁界が固定子230に発生する。3相交流電流の周波数はレゾルバ224の出力値に基づいて制御され、3相交流電流の回転子280に対する位相も同じくレゾルバ224の出力値に基づいて制御される。
【0014】
図2は、本発明の一実施例に係る回転電機200の固定子230をシャフト218の軸方向に沿う方向から見た図である。
図2では、固定子コア232の一方の端面と、固定子巻線238の一方のコイルエンド部238Aと、を図示している。固定子巻線238のコイルエンド部238Aには、温度センサユニット1が取り付けられている。温度センサユニット1は、温度センサ11と、温度センサ11をコイルエンド部238Aに保持するセンサホルダ12により構成される。
【0015】
図3は、本発明の一実施例に係る回転電機200のコイルエンド部238Aを示す斜視図である。
固定子230の固定子コア232は、複数のスロット232aが内周面から外周面側に向かって形成された円環形状を成す。固定子コア232は、複数のスロット232aを隔てるように形成されたティース232bを有し、ティース232bは固定子コア232の外周面側から内周面に向かって径方向に突出している。
【0016】
固定子230の固定子巻線238は、エナメル皮膜などの絶縁皮膜を有する複数のセグメント導体2381で構成される。固定子巻線238を形成する前のセグメント導体2381は、一対の直線部2381aと、一対の直線部2381aの間に形成され、一対の直線部2381aを接続する折り曲げ部2381bとを有する。折り曲げ部2381bはスロット232aの外側に配置され、コイルエンド部238Aを構成する。また、折り曲げ部2381bはアルファベットのV字状に折り曲げられ、固定子コア232から最も離間した位置で固定子コア232に向かって折り返す形状を成す。折り曲げ部2381bにおける固定子コア232から最も離間した位置を以下、頂部又は折り返し部2381cと呼ぶ。
【0017】
セグメント導体2381は固定子巻線238を構成する導体であり、「導体」または「巻線導体」と呼んで説明する場合もある。
【0018】
セグメント導体2381における一対の直線部2381aは別々のスロット232aに挿入される。固定子コア232の反対の端面側から露出した、直線部2381aの末端側は、反対の端面側でコイルエンド部を形成するように折り曲げられる。反対の端面側で折り曲げられた直線部2381aの末端は、他のセグメント導体2381における直線部2381aの末端とTig溶接やプラズマ溶接、又はレーザー溶接などで接合される。
【0019】
すなわち複数のセグメント導体2381は、環状の固定子コア232に設けられた複数のスロット232aの各々に貫通する導体、すなわち固定子巻線238を構成する。導体238は固定子コア232の軸方向外側で周方向に傾斜して他のスロット232aに挿入された他の導体238と交差する。温度センサユニット1は、複数の導体238が交差するコイルエンド部238Aにおいて、導体238の温度を測定する。
【0020】
図3において、符号238aは固定子巻線238の中で最内周に位置する固定子巻線(セグメント導体)を示し、符号238bは最外周に位置する固定子巻線(セグメント導体)を示し、符号238bは最内周に位置する固定子巻線238aと最外周に位置する固定子巻線238bとの間に位置する固定子巻線を示す。
【0021】
温度センサユニット1は、固定子コア232の一方の端面に露出するコイルエンド部(導体238の交差領域)238Aを、センサホルダ12で取り囲むようにして取り付けられる。温度センサ11は、最内周に位置する固定子巻線238aに当接するように、軸方向から頂部2381cに押し付けられる。すなわち温度センサ11は、径方向内側のセグメント導体2381であって固定子コア232から最も離れた端部2381cに接触する。
【0022】
固定子巻線238は、径方向内側に位置するものほど、温度が高くなる。このため、温度センサ11は、径方向内側寄りの固定子巻線238、すなわち径方向内側寄りのセグメント導体2381の温度を検知するように配置されることが好ましい。このため温度センサ11は、
図2に示すように、径方向において、コイルエンド部(導体238の交差領域)238Aの中央よりも内周側に配置することが好ましい。すなわち、コイルエンド部238Aの径方向における長さ寸法をWとした場合に、温度センサ11はコイルエンド部238Aの内周側端部から径方向外側のW/2までの範囲に配置されることが好ましい。さらに好ましくは、温度センサ11は最内周に位置する固定子巻線238a、最内周に位置するすなわちセグメント導体2381に当接するように、配置されることが好ましい。
【0023】
セグメント導体2381の頂部(折り返し部)2381cに平面部2381dを形成し、温度センサ11は平面部2381dに当接するように配置する。
【0024】
図4は、本発明の一実施例に係る温度センサユニット1の外観を示す斜視図である。
図5は、
図4の温度センサユニットの構成を示す平面図である。
センサホルダ12は、一対の第1支持部材121A,121Bと、一対の第2支持部材122A,122Bと、を備える。
【0025】
一対の第1支持部材121A,121Bは、軸方向に離間するようにコイルエンド部(導体238の交差領域)238Aに取り付けられ、コイルエンド部(導体238の交差領域)238Aを軸方向に挟んで対向する。第1支持部材121A,121Bの一方121Aは導体238の交差領域を隔てて固定子コア232から軸方向に離間する側に位置する。第1支持部材121A,121Bの他方121Bは複数のスロット232aの間における導体238の交差領域と固定子コア232との間に位置する。
【0026】
一対の第2支持部材122A,122Bは、径方向に離間するようにコイルエンド部(導体238の交差領域)238Aに取り付けられ、コイルエンド部(導体238の交差領域)238Aを径方向に挟んで対向する。第2支持部材122A,122Bの一方122Aは導体238の交差領域よりも径方向内側に位置し、第2支持部材122A,122Bの他方122Bは導体238の交差領域よりも径方向外側に位置する。一対の第2支持部材122A,122Bは、導体238の交差領域に対して径方向内側と径方向外側のそれぞれで、一対の第1支持部材121A,121Bを軸方向で接続する。
【0027】
一対の第1支持部材121A,121Bのうち一方の第1支持部材121Aは、温度センサ11を保持する。すなわち、一対の第1支持部材121A,121Bのうち固定子コア232の側とは反対側に位置する一方の第1支持部材121Aは、温度センサ11を保持する。この場合、温度センサ11は、径方向内側の導体238であって固定子コア232から最も離れた端部2381cに接触するように、第1支持部材121Aに取り付けられる。
【0028】
一対の第1支持部材121A,121Bのうち他方の第1支持部材121Bは、センサホルダ12を付勢する付勢部123を有する。すなわち、一対の第1支持部材121A,121Bのうち固定子コア232の側に位置する他方の第1支持部材121Bは、付勢部123を有する。
【0029】
図6は、
図4の温度センサユニットを分解した図である。
一対の第1支持部材121A,121Bと一対の第2支持部材122A,122Bとは略矩形状の枠体を構成し、枠体の内側をコイルエンド部238Aの導体238が挿通する。一対の第2支持部材122A,122Bのうち径方向内側に位置する一方の第2支持部材122Aと一対の第1支持部材121A,121Bとが一体の第1枠体部を成し、一対の第2支持部材122A,122Bのうち径方向外側に位置する他方の第2支持部材122Bが第2枠体部を成す。第2枠体部を成す第1支持部材121Bと第1枠体部121A,121B,122Aとは、スナップフィットにより着脱可能に構成される。
【0030】
スナップフィットのために、一方の第1支持部材121Aには貫通孔121A1が形成され、他方の第1支持部材121Bにはフック部121B1が形成され、第2支持部材122Bには、フック部122B2と貫通孔122B1とが形成される。第2支持部材122Bのフック部122B2が第1支持部材121Aの貫通孔121A1に係止され、第1支持部材121Bのフック部121B1が第2支持部材122Bの貫通孔122B1に係止されることにより、第2枠体部を成す第1支持部材121Bと第1枠体部121A,122A,122Bとがスナップフィットにより一体に組み付けられる。
【0031】
また、一方の第2支持部材122Aには軸方向に長手方向を有する貫通孔122A1が形成され、他方の第2支持部材122Bには、軸方向に長手方向を有する貫通孔122B3が形成されている。また一方の第1支持部材121Aには、付勢部123が設けられている。付勢部123は係合部123aと弾性部123bとを有する。
【0032】
付勢部123の係合部123aには長手方向(固定子コア232の径方向)の両端部に突起部123c,123dが設けられており、突起部123cは貫通孔122A1に嵌められ、突起部123dは貫通孔122B3に嵌められる。付勢部123の係合部123aは、突起部123cが貫通孔122A1に嵌められ、突起部123dが貫通孔122B3に嵌められることで、軸方向の動きを貫通孔122A1,122B3により案内される。
【0033】
なお
図6の符号111は、温度センサ11の電気端子である。
【0034】
図7は、
図4の温度センサユニット1の温度センサ11をコイルエンド部238Aに押圧する付勢部123の構造を示す図である。
導体238aと導体238cとは、
図7に破線で示すように交差する交差部(交差領域)を構成する。
【0035】
他方の第1支持部材121Bには、枠体の内側を成す面に、付勢部123が設けられている。付勢部123は係合部123aと弾性部123bとを有する。係合部123aは導体238の交差領域に係止される部位であり、導体238の交差形状に合わせて傾斜面が形成されている。弾性部123bは係合部123aを固定子コア232の側から導体238の交差部に押し付ける押し付け力(付勢力)を発生する部位である。
【0036】
付勢部123は、他方の第1支持部材121Bを基部として、弾性部123bが係合部123aを基部121Bの側から導体238の交差領域に向かって付勢する。このとき、係合部123aは導体238の交差領域に係合して、導体238の交差領域、すなわちコイルエンド部238Aを、固定子コア232の側から押圧する。そのときの反力により、センサホルダ12は固定子コア232の側に向かって付勢され、温度センサ11が径方向内側の導体238の、固定子コア232から最も離れた端部(頂部)2381cに、軸方向から接触するように押圧される。すなわち付勢部123は、センサホルダ12を固定子コア232の側に付勢することにより、温度センサ11を固定子コア232の側とは反対側からコイルエンド部238Aに向けて付勢する。
【0037】
図8は、
図4の温度センサユニット1をコイルエンド部238Aに組み付ける手順を示す図である。
温度センサユニット1は、下記(a)~(c)の手順により、コイルエンド部238Aに組み付けられる。
(a)第1枠体部121A,121B,122Aの第1支持部材121Bを、コイルエンド部238Aの内周側から、複数の導体238の交差領域と固定子コア232との空間(隙間)に挿入する。
(b)コイルエンド部238Aの外周側に突き出した第1支持部材121Bのフック部121B1を、第2支持部材122Bの貫通孔122B1に係止する。
(c)第1支持部材121Bのフック部121B1を支点にして、第2支持部材122Bを回転させる。
(d)第2支持部材122Bのフック部122B2を、第1支持部材121Aの貫通孔121A1に係止して、温度センサユニット1をコイルエンド部238Aに固定する。このとき、温度センサ11は、付勢部123によって、固定子コア232から最も離れた、導体238の端部(頂部)2381cに押圧される。
【0038】
このとき付勢部123の係合部123aは、付勢方向の動きを貫通孔122A1,122B3により案内されることにより、円滑に動作することができる。
【0039】
回転電機200の連続性能や短時間性能の高負荷化により、回転電機200の温度保護を開始する閾値を極力上げる必要がある。本実施例では、発熱しやすい導体(固定子巻線)238に温度センサ11を取り付けることができ、固定子巻線238の最大温度部位と温度センサ11の取付位置との温度差を小さくすることができる。回転電機200では、これにより、回転電機200の温度保護を開始する閾値を上げることができる。
【0040】
上記(a)~(c)の手順によりコイルエンド部238Aに組み付けられた温度センサユニット1は、コイルエンド部238Aに保持された状態となる。このため、温度センサ11の位置を確認しながら、温度センサユニット1のコイルエンド部238Aへの組み付けを完了することができる。これにより、固定子巻線238の温度を所望の位置で確実に検知することができる。
【0041】
温度センサ11は、導体(固定子巻線)238の頂部(折り返し部)2381c(
図3参照)に形成した平面部2381dに当接するように配置されることにより、温度センサ11と導体238との接触が面接触となり、固定子巻線238の検出精度が向上する。
【0042】
また温度センサユニット1は、スナップフィットのみでコイルエンド部238Aに固定されるため、温度センサユニット1の組み付けが容易になる。
【0043】
上述した実施例に係る回転電機200は、少なくとも下記特徴を有する。
(1)環状の固定子コア232に設けられた複数のスロット232aの各々に貫通して固定子巻線238を構成する導体2381と、
導体238(2381)の温度を測定する温度センサ11を有する温度センサユニット1と、
を備え、
温度センサユニット1は、導体238(2381)がスロット232aから軸方向の外側に露出するコイルエンド部238Aに保持され、コイルエンド部238Aの最外周よりも最内周に近い導体238(2381)に接触するように温度センサ11を配置する。
【0044】
(2)温度センサユニット1は、温度センサ11をコイルエンド部238Aに対して軸方向から押圧するように付勢する付勢部123を有するセンサホルダ12を備える。
【0045】
(3)固定子巻線238は、コイルエンド部238Aに、複数の導体232(2381)が交差する交差領域を形成し、
センサホルダ12は、略矩形形状を成す枠体121A,121B,122A,122Bを備え、
枠体121A,121B,122A,122Bは、交差領域を軸方向に挟んで対向する一対の第1支持部材121A,121Bと、交差領域を径方向に挟んで対向する一対の第2支持部材122A,122Bと、を備え、
一対の第1支持部材121A,121Bのうち固定子コア232の側とは反対側に位置する一方の第1支持部材121Aは、温度センサ11を保持し、
一対の第1支持部材121A,121Bのうち固定子コアの側に位置する他方の第1支持部材121Bは、付勢部123を有し、
付勢部123は、センサホルダ12を固定子コア232の側に付勢することにより、温度センサ11を固定子コア232の側とは反対側からコイルエンド部238Aに向けて付勢する。
【0046】
(4)温度センサユニット1は、コイルエンド部238Aの最内周に配置された導体に温度センサ11を配置する。
【0047】
(5)環状の固定子コア232に設けられた複数のスロット232aの各々に貫通する導体238(2381)であって、固定子コア232の軸方向外側で周方向に傾斜して他のスロット232aに挿入された他の導体238(2381)と交差する導体238(2381)の温度を測定する温度センサ11を有する回転電機200であって、
温度センサ11を有する温度センサユニット1は、
軸方向に離間し、一方は導体238(2381)の交差領域を隔てて固定子コア232から軸方向に離間する側に位置し、他方は複数のスロット232aの間における導体238(2381)の交差領域と固定子コア232との間に位置する、一対の第1支持部材121A,121Bと、
径方向に離間し、一方は導体238(2381)の交差領域よりも径方向の内側に位置し、他方は導体238(2381)の交差領域よりも径方向の外側に位置して、一対の第1支持部材121A,121Bを軸方向で接続する一対の第2支持部材122A,122Bと、を備え、
一方の第1支持部材121Aは、径方向の内側に配置される導体238aであって固定子コア232から最も離れた端部2381cに接触する温度センサ11を保持し、
他方の第1支持部材121Bは、基部121Bと、導体238(2381)の交差領域に係止する係止部123aと、基部121Bから係止部123aを軸方向に付勢する弾性部123bと、を備える。
【0048】
(6)導体238(2381)は、固定子コア232から最も離れた端部2381cに、温度センサ11が接触する平面部2381dを有する。
【0049】
(7)一対の第1支持部材121A,121Bと一対の第2支持部材122A,122Bとは、略矩形形状を成す枠体を構成し、
一対の第2支持部材122A,122Bのうち径方向内側に位置する一方の第2支持部材122Aと一対の第1支持部材121A,121Bとは、一体で枠体121A,121B,122A,122Bの第1枠体部を構成し、
前記一対の第2支持部材122A,122Bのうち径方向外側に位置する他方の第2支持部材122Bは、枠体121A,121B,122A,122Bの第2枠体部を構成し、
第1枠体部121A,121B,122Aと第2枠体部122Bとは、スナップフィットにより一体に組み付けられる。
【0050】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…温度センサユニット、11…温度センサ、12…センサホルダ、121A,121B…第1支持部材、121B…第1支持部材(基部)、122A,122B…第2支持部材、122B…第2枠体部、(121A,121B,122A,122B)…枠体、(121A,121B,122A)…第1枠体部、123…付勢部、123a…係止部、123b…弾性部、200…回転電機、232…固定子コア、232a…スロット、238…固定子巻線(導体)、238A…コイルエンド部、238a…径方向内側の導体、2381…導体(セグメント導体)、2381c…固定子コア232から最も離れた導体238(2381)の端部(頂部)、2381d…平面部。