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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071036
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】異物除去装置及び異物除去方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B08B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181754
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB14
3B116BB23
3B116BB72
(57)【要約】
【課題】ロール状製品に気体を吹き付けて周面に付着した異物を除去する際にテールシールの剥離を抑制した異物除去装置を提供する。
【解決手段】異物除去装置100は,長尺のシートが巻回されたロール状製品Rの異物除去装置であって,ロール状製品Rを軸方向に搬送するロープコンベア40と,ロープコンベア40によってロール状製品Rを支持した状態で,シートの巻回方向に沿って一又は複数の方向からロール状製品Rに対して気体を吹き付ける送風装置10を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシートが巻回されたロール状製品の異物除去設備であって,
前記ロール状製品を軸方向に搬送するロープコンベアと,
前記ロープコンベアによって前記ロール状製品を支持した状態で,前記シートの巻回方向に沿って一又は複数の方向から前記ロール状製品に対して気体を吹き付ける送風装置を備える
異物除去設備。
【請求項2】
前記送風装置は,その中に入った前記ロール状製品に対して前記シートの巻回方向に沿って複数の方向から気体を吹き付けることが可能な筒状に形成されている
請求項1に記載の異物除去設備。
【請求項3】
長尺のシートが巻回されたロール状製品の異物除去設備であって,
前記ロール状製品を軸方向に搬送する搬送装置と,
その中に入った前記ロール状製品に対して前記シートの巻回方向に沿って複数の方向から気体を吹き付け,前記ロール状製品を中空に浮かせることが可能な筒状に形成されている送風装置を備え,
前記搬送装置は,コンベアによって前記ロール状製品を搬送する第1駆動エリアと,コンベアを有しない非駆動エリアと,前記非駆動エリアの下流側に設けられコンベアによって前記ロール状製品を搬送する第2駆動エリアと,を有し,
前記送風装置は,前記非駆動エリアに設置され,
前記搬送装置は,前記第1駆動エリアのコンベアの搬送力を後続のロール状製品を介して伝達することによって,前記ロール状製品を前記第1駆動エリアの下流側の筒状の前記送風装置の中へ移動させ,さらに下流側の前記第2駆動エリアのコンベアへ導くように構成されている
異物除去設備。
【請求項4】
前記送風装置は,前記ロール状製品の搬送方向の下流側から上流側に向かって気体を吹き付ける
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異物除去設備。
【請求項5】
前記筒状の前記送風装置の内側周面には,前記ロール状製品に向かって気体を吹き付けることが可能な複数の孔部が,全周に亘って設けられている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異物除去設備。
【請求項6】
長尺のシートが巻回されたロール状製品の異物除去方法であって,
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異物除去設備を用いて,前記シートの巻回方向に沿って一又は複数の方向から前記ロール状製品に対して気体を吹き付ける
異物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ロール状製品の異物除去装置及び異物除去方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,ロール状製品に気体を吹き付けて,その周面に付着した異物を除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,トイレットロールやキッチンロールなどの長尺のシートを巻回してなるロール状製品については,その品質を保持するために,その製造過程で周面に付着した紙粉や埃などの異物を除去することが一般的である。例えば,特許文献1には,ロール状製品の搬送経路に気体噴射手段を設けておき,回転中のロール状製品の周面に気体を吹き付けて異物を除去する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-186193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,ロール状製品は,一般的に,長尺のシートの一端を円筒状の芯材の周面に接着した後,芯材の周方向にシートを多層に亘って巻き付けていき,最後にシートの他端を最外層に接着(テールシールとも言う)することによって構成されている。ロール状製品の製造過程においてこのテールシールに接着不良や剥離が生じていると,そのようなロール状製品は販売に不適なものであるとして不良品として扱われる。
【0005】
ここで,特許文献1の図1を見ると,気体噴射手段からロール状製品に対して気体を吹き付ける際に,このロール状製品のシートの巻回方向と逆らう方向に向かって気体を吹き付けていることが判る。すなわち,ロール状製品のテールシール側の先端が向く方向と気体が噴射する方向とが互いに逆向きとなっている。このような構成を採用すると,ロール状製品の異物を除去する工程において,気体噴射手段から噴射された気体によってロール状製品のテールシールが剥離されてしまう可能性があり,不良品の発生を招くという問題があった。特に,特許文献1では,ロール状製品を回転させながら気体を吹き付けることとしているが,ロール状製品の回転方向と気体の噴射方向とが反対向きとなっているため,噴射された気体によってテールシールが剥離されるという問題がより顕著になる。このため,特許文献1の構成では,テールシールの剥離を抑制するためにロール状製品に吹き付ける気体の風速を弱める必要があり,その結果異物除去能力が低下することとなっていた。
【0006】
そこで,本発明は,ロール状製品に気体を吹き付けて周面に付着した異物を除去する工程において,テールシールの剥離を抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記従来技術の問題の解決手段について鋭意検討した結果,ロール状製品の巻回方向に沿って気体を吹き付けることにより,ロール状製品のテールシールの剥離を抑制しつつ,ロール状製品の周面に付着した異物を効果的に除去することができるようになるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来技術の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は,ロール状製品の異物除去装置に関する。ロール状製品とは,長尺のシートが複数層に亘って一定方向に巻回されたものである。ロール状製品は,円筒状の芯材を有するものであってもよいし,芯材を有しないものであってもよい。本発明に係る異物除去装置は送風装置を備える。この送風装置は,ロール状製品を構成するシートの巻回方向に沿って,一又は複数の方向からロール状製品に対して気体を吹き付けるように構成されている。シートの巻回方向(あるいはロール状製品の巻回方向)とは,ロール状製品の最内層側のシートの先端を始端とし,最外層側のシートの先端を終端とした場合に,始端から終端に向かってシートを多層巻きしたときの巻き方向を意味する。このように,シートの巻回方向に沿って(すなわち順方向)に向かって送風装置から気体を吹き付けることにより,気体の風圧によってシートの終端の接着(テールシール)が剥離される事態の発生を抑制することができる。このため,送風装置から出力する気体の風速を最大まで強めることが可能になり,その結果,ロール状製品の周面に付着した異物を効果的に除去することができる。
【0009】
本発明の第1の側面に係る異物除去装置は,ロール状製品を軸方向に搬送するロープコンベアをさらに備え,送風装置は,ロープコンベアによってロール状製品を支持した状態で,シートの巻回方向に沿って一又は複数の方向からロール状製品に対して気体を吹き付ける。なお,ロール状製品の軸方向とは,ロール状製品の端面に垂直な方向であり,言い換えるとロール状製品の中心孔の延在方向である。この構成により,ロープコンベアで1つずつ離隔した状態でロール状製品を搬送しながら気体を吹き付けることができるので,ロール状製品の周面だけでなく端面に付着した異物を除去することが可能となる。また,本発明の第1の側面に係る異物除去装置では,ロープコンベアによって,ロール状製品の少なくとも最下点を搬送装置の搬送面から浮かせた状態で,このロール状製品に対して送風装置により気体を吹き付けることができる構成になっている。ロール状製品の最下点は通常の状態ではコンベア等の搬送面に接した状態となるが,この最下点を搬送面から浮かせた状態で気体を吹き付けることで,異物除去効果を高めることができる。
【0010】
本発明の第1の側面に係る異物除去装置に含まれる送風装置は,その中に入ったロール状製品に対してシートの巻回方向に沿って複数の方向から気体を吹き付けることが可能な筒状に形成されていることが好ましい。このような構成を採用することで,送風装置の構成をコンパクト化することができ,また気体が吹き出る孔部の数を増やすことでロール状製品の周面全体に気体を吹き付けることが容易になる。
【0011】
本発明の第2の側面に係る異物除去装置は,長尺のシートが巻回されたロール状製品の異物除去設備であって,ロール状製品を軸方向に搬送する搬送装置と,その中に入ったロール状製品に対してシートの巻回方向に沿って複数の方向から気体を吹き付け,ロール状製品を中空に浮かせることが可能な筒状に形成されている送風装置を備え,搬送装置は,コンベアによってロール状製品を搬送する第1駆動エリアと,コンベアを有しない非駆動エリアと,非駆動エリアの下流側に設けられコンベアによって前記ロール状製品を搬送する第2駆動エリアと,を有し,送風装置は,前記非駆動エリアに設置され,搬送装置は,第1駆動エリアのコンベアの搬送力を後続のロール状製品を介して伝達することによって,ロール状製品を第1駆動エリアの下流側の筒状の送風装置の中へ移動させ,さらに下流側の第2駆動エリアのコンベアへ導くように構成されている。ここで,駆動エリアとは,コンベアによってロール状製品を搬送するエリアであり,非駆動エリアとは,この駆動エリアの下流側に設けられコンベアの搬送力がロール状製品に「直接的に」伝達されない(つまり「間接的に」伝達されることは否定しない)エリアである。本発明の第2の側面に係る異物除去装置に含まれる送風装置は,非駆動エリアに在るロール状製品に対して気体を吹き付ける。この構成により,送風装置において駆動手段を別途設ける必要がないので,ロール状製品の周面に付着した異物の除去が低コストで実現可能となる。
【0012】
本発明の第1又は第2の側面に係る異物除去装置では,送風装置は,ロール状製品の搬送方向の下流側から上流側に向かって気体を吹き付けることが好ましい。このように,ロール状製品の搬送方向と反対の方向に向かって気体を吹き付けることで,異物除去効果を高めることができる。また,搬送経路の下流側から上流側に向かって気体を吹き付けることで,ロール状製品から離脱した異物の再付着を防止できる。本発明では,異物除去装置内の上流側もしくは異物除去装置の上流側に別体の吸引設備を設けることも可能である。吹き飛ばした異物を吸引することでロール状製品への再付着を防止できるためなお良い。
【0013】
本発明の第1又は第2の側面に係る異物除去装置では,筒状の送風装置の内側周面には,ロール状製品に向かって気体を吹き付けることが可能な複数の孔部が,全周に亘って設けられていることが好ましい。この構成により,ロール状製品の周面全体(または周面や端面を含む全体)に一度に気体を当てることができるようになる。また,筒状の送風装置の内部において,ロール状製品をより安定して中空に浮かせることができるので,ロール状製品に対し筒状の送風装置の内部における搬送および異物除去をより確実に行うことが可能となる。
【0014】
本発明の第3の側面は,長尺のシートが巻回されたロール状製品の異物除去方法に関する。本発明の第3の側面に係る異物除去方法では,本発明の第1又は第2の側面に係る異物除去設備に含まれる送風装置を用いて,シートの巻回方向に沿って一又は複数の方向からロール状製品に対して気体を吹き付ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,ロール状製品に気体を吹き付けて周面に付着した異物を除去する工程において,テールシールの剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は,ロール状製品の製造から箱詰めまでの全体フローを示している。
図2図2は,異物除去装置の第1の実施形態を模式的に示した側面図である。
図3図3は,第1の実施形態に係る異物除去装置に含まれる送風装置の模式的断面図である。
図4図4は,異物除去装置の第2の実施形態を模式的に示した側面図である。
図5図5は,第2の実施形態に係る異物除去装置に含まれる送風装置の模式的断面図である。
図6図6は,異物除去装置に含まれる送風装置の一例を示している。
図7図7は,送風装置に含まれる整流部材の一例を示している。
図8図8は,図6に示した送風装置の断面構造を模式的に示している。
図9図9は,送風装置の変形例の断面構造を模式的に示している。
図10図10は,異物除去装置の第3の実施形態を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は,ロール状製品Rを製造して箱詰めするまでのフローを示している。ロール状製品の例は,トイレットロールやキッチンロールであるが特に限定されない。図1に示されるように,巻き替え工程(ステップS1)では,原反ロールから長尺広幅の原紙を繰り出し,繰り出した原紙を紙管に巻き付けることで円筒状のログを形成する。ログは,最終的に製造されるロール状製品Rが軸心方向に複数個連結した形状となっている。このため,この段階においてログの直径とロール状製品Rの直径は一致している。得られたログは,調整工程(ステップS2)を経て,切断工程(ステップS3)へと送られる。切断工程(ステップS3)において,ログはログソーによって所定長さに切断される。これにより,一本のログから複数個のロール状製品Rが得られる。得られた複数個のロール状製品Rは,コンベアによる搬送工程(ステップS4)によって包装装置まで搬送される。この搬送工程(ステップS4)では,後述するようにロール状製品Rの異物除去処理が行われる。すなわち,複数のロール状製品Rを搬送しながら気体を吹き付けることで,その周面に付着した異物(紙粉や埃など)を除去する。その後,包装工程(ステップS5)において,ロール状製品Rは,複数個を一組として包装装置によりビニールフィルム等に袋詰めされる。包装装置によって得られたロール状製品Rの包装体は,箱詰め工程(ステップS6)へと送られ,箱詰装置により複数個をひとまとめにして包装箱に箱詰めされる。その後,この包装箱は,製品倉庫へと搬送され,出荷まで貯蔵される。
【0019】
<第1の実施形態>
図2は,異物除去装置100の第1の実施形態を示している。異物除去装置100は,前述したようにロール状製品Rの搬送工程(ステップS4)に配置することが好ましい。本実施形態において,異物除去装置100は,複数の送風装置10と,複数の搬送用のコンベア20と,2つのコンベア20の間に設けられた搬送用のロープコンベア40とを含む。なお,コンベア20とロープコンベア40によってロール状製品Rの搬送装置が構成されている。また,4本のロープコンベア40によって搬送しており,ロール状製品Rの最下点が浮いた状態となっている(図2の左下枠中が指し示す下流側から視た断面図を参照,後述の第2の実施形態では,図4の左下枠中における同断面図を参照。図2中,符号Fはロープコンベア40のうち下流へ移動する(向かう)ロープ部分の断面を示し,符号Bはロープコンベア40のうち上流へ移動する(戻る)ロープ部分の断面を示す。後述の図4も同様。)。この構成によって,ロール状製品Rの最下点は通常の状態ではコンベア20等の搬送面に接した状態となるが,この最下点を搬送面から浮かせた状態で気体を吹き付けることで,異物除去効果を高めることができる。しかしながら本発明では,ロープコンベア40による搬送によって,ロール状製品Rの最下点が浮いた状態にならない構成も許容され得る。
【0020】
図2に示されるように,ロール状製品Rのそれぞれは,長尺のシートが多層巻きされた円筒状をなすものであり,複数のロール状製品Rが搬送装置によってそれらの軸方向に沿って断続的に1つずつ離れて搬送されている。各ロール状製品Rに対しては,その搬送中に複数の送風装置10によって気体(主に空気)が吹き付けられことで,その周面だけでなく端面に付着した異物の除去が行われる。本実施形態では,ロール状製品Rが断続的に搬送されているが,本発明では複数のロール状製品Rが互いに当接するように(隙間がないように)連続的に搬送され,ロール状製品Rの周面に気体を吹き付ける構成も許容され得る。
【0021】
図3は,ロール状製品Rの断面形状と各送風装置10からの気体の噴射方向を模式的に示している。なお,各図において送風装置10からの気体の噴射方向は白抜きの矢印で示している。図3に示されるように,ロール状製品Rは,例えば円筒状の芯材Cの周面に長尺の紙製シートSが多層に亘って巻き付けられてなるものであり,シートSの終端に塗布された接着剤(テールシールTS)によってシートSの巻き状態が保持されている。なお,ロール状製品Rにとって芯材Cは必須ではなく,芯材Cなしの製品であってもよい。また,図3において,ロール状製品RのシートSの巻回方向は矢印で示されており,図示した例では右回りとなっている。
【0022】
ここで,ロール状製品Rの周囲には合計4台の送風装置10が等間隔(90度間隔)で設けられており,ロープコンベア40によってロール状製品Rを支持した状態で,各送風装置10からロール状製品Rの周面に向かって気体が噴射されている。なお,送風装置10は,1台のみであってもよいが複数台であることが好ましく,例えば2台又は3台であってもよいし,4台以上であってもよい。送風装置10を複数台配置する場合には,360度/N台(送風装置の数)の間隔でロール状製品Rの周囲に配置するとよい。このとき,すべての送風装置10からはロール状製品Rの巻回方向に沿う方向(順方向)に気体が噴射される。つまり,ロール状製品Rの巻回方向が右回りである場合には,各送風装置10からの気体の噴射方向も右回りとなる。より具体的に説明すると,図3のような断面視において,送風装置10からの気体の噴射方向を示す直線は,ロール状製品Rの半径方向にロール状製品Rの中心と送風装置10の気体の噴射口とを結ぶ直線に対して,ロール状製品Rの巻回方向に向かって所定角度θ1で傾いている。気体の噴射方向の傾きを表す角度θ1は,例えば5~60度とすることが好ましく,15~50度又は30~45度とすることが特に好ましい。また,本発明では,送風装置10からの気体によってロール状製品Rに付着した異物が上手く除去できるように,送風装置10およびロープコンベア40の相対的な配置が設計されうる(例えば,ロープコンベア40を避けるように送風装置10の吹出口を配置したり,送風装置10の吹出口を避けるようにロープコンベア40を配置したりするように設計されうる。)。
【0023】
このように,各送風装置10からロール状製品Rの巻回方向に沿って気体を吹き付けることで,気体の風圧によってロール状製品RのテールシールTSが剥離することを抑制できる。このため,送風装置10から出力する風圧(風速)を強くすることができ,異物除去効果を効率的に発揮することが可能となる。
【0024】
また,図2に示されるように,ロール状製品Rの搬送装置は,コンベア20が配置された2つの第1駆動エリアと,当該2つの第1駆動エリアの間に位置し,ロープコンベア40が配置された第2駆動エリアに分かれている。2つの第1駆動エリアのコンベア20およびロープコンベア40は,ロール状製品Rに対して搬送力を伝達し,ロール状製品Rを装置下流側に向かって搬送する。本発明の明細書の記載において,単に「コンベア」という場合,当該「コンベア」は,通常のコンベアを表し,例えばベルトコンベアを指すものとして参照されるが,ロープコンベア等のコンベアを排除するものではない。つまり,本発明では,2つの第1駆動エリアおよび第2駆動エリアを1組のロープコンベアで繋げてもよい。本実施形態では,軸方向に搬送されるロール状製品Rの周面の四方を囲むように4台(4本)のロープコンベア40が設置されている。本発明では,4台(4本)以上のロープコンベア40を設置してもよい。2~3台(2~3本)のロープコンベア40でも可能であるが,搬送の安定性から4台(4本)以上が好ましい。
【0025】
また,図2に示すように異物除去装置100を側面視した場合に,各送風装置10は,ロール状製品Rの搬送方向の下流側から上流側に向かって気体を噴射する(吹き付ける)ように構成することが好ましい。つまり,送風装置10の噴射方向はロール状製品Rの搬送方向と逆向きとなる。このように送風装置10を構成することで,一度ロール状製品Rから除去した異物が同じロール状製品Rに再付着する事態を回避できる。
【0026】
本発明に係る異物除去装置100において,送風装置10は,複数方向からシートの巻回方向に沿ってロール状製品に対して気体を吹き付けることが好ましい。ロール状製品Rに対して複数の方向から気体を吹き付けることで,例えばロール状製品Rの周面や端面全体に一度に気体を当てることができるようになる。
【0027】
<第2の実施形態>
図4は,異物除去装置100の第2の実施形態を示している。第2の実施形態以降の実施形態については,上説した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,これと異なる構成について主に説明する。第2の実施形態では,複数台の送風装置10をロール状製品Rの周囲に配置する構成に代えて,ロール状製品Rが通過可能な筒状の送風装置10を一台配置する構成を採用している。このような構成を採用することで,送風装置の構成をコンパクト化することができ,また気体が吹き出す孔部の数を増やすことでロール状製品Rの周面や端面を含めた全体に気体を吹き付ける,つまりロール状製品Rを筒の中を通してエアシャワーすることが容易になる。
【0028】
第2駆動エリアには筒状の送風装置10が配置され,当該筒状内に4台のロープコンベア40のそれぞれ一方側が通るように構成されている(図5等を参照)。筒状とは,ロール状製品Rが通過可能な通路が設けられていることを意味し,円筒状や四角筒状あるいはその他多角筒状であることを問わない。図5は,送風装置10及びロール状製品Rの断面構造を模式的に示している。図5に示されるように,本実施形態の送風装置10は,気体噴出手段11,導管12,及び整流部材13を備える。気体噴出手段11は,導管12内に気体を供給する。導管12は,気体噴出手段11に接続された流入口12aと,この流入口12aから流入した気体の流路12bを有する。整流部材13は,筒状(具体的には円筒状)の部材であり,導管12内に配置される。整流部材13には,複数の孔部13aが形成されており,導管12の流路12bを流通する気体はこの整流部材13の孔部13aから排出される。各孔部13aは,シートSの巻回方向に沿ってロール状製品Rの周面に気体を吹き付けるように,気体の噴射方向が設定されている。すなわち,整流部材13の孔部13aからの気体の噴射方向を示す直線は,ロール状製品Rの半径方向にロール状製品Rの中心と送風装置10の気体の噴射口とを結ぶ直線に対して,ロール状製品Rの巻回方向に向かって所定角度θ1で傾いている。気体の噴射方向の傾きを表す角度θ1は,例えば5~60度とすることが好ましく,15~50度又は30~45度とすることが特に好ましい。
【0029】
図6から図8は,図5を参照して概説した送風装置10の具体例を示している。図6(a)は,送風装置10(気体噴出手段11および送風装置10外側に位置するロープコンベア40の他方側の図示は省略)と,その内部を通過するロール状製品Rと,ロール状製品Rを支持するロープコンベア40を示した斜視図である。また,図6(b)は,送風装置10等を正面方向から見た状態を示している。これらの図に示されるように,ロール状製品Rは,4本のロープコンベア40によって支持された状態で,そのロープコンベア40にて搬送されながら,略円筒状に形成された送風装置10の導管12及び整流部材13の内部を通過する。その際に,整流部材13の孔部13aから噴出する気体によってロール状製品Rに付着した異物が除去される。
【0030】
図7(a)は,整流部材13を示した斜視図であり,図7(b)は,整流部材13の孔部13aが形成された部分の断面図である。これらの図に示されるように,整流部材13は,複数の孔部13aが形成されたリング状部分13bと,このリング状部分13bの縁部に設けられたフランジ部分13cを含む。リング状部分13bは一定の厚み(例えば5mm~100mm)を有しており,そこに形成された孔部13aは,その入口と出口を結ぶ直線(図7(b)の破線)が,リング状部分13bの直径方向に延びる直線(図7(b)の一点鎖線)に対して角度θ1で傾いている。このように,孔部13aの延在方向に傾斜を形成することで,孔部13aからの気体の噴射方向を制御している。例えば,孔部13aの傾斜角度θ1は,5~60度とすることが好ましく,15~50度又は30~45度とすることが特に好ましい。
【0031】
また,図7(b)では,ある孔部13aの入口と出口を結ぶ直線と周方向に隣接する別の孔部13aの入口と出口を結ぶ直線とのなす角を符号θ2示している。角度θ2は,リング状部分13bの周方向に設ける孔部13aの数をNとした場合に,360度/Nの±10度とすることが良い。例えば,図7に示した例ではN=20であるため,360度/Nは18度であり,許容範囲は8度~28度となる。このように,リング状部分13bの周方向の全体に孔部13a等間隔で配置することで,その内部を通過するロール状製品Rの周面全体に対して均一に気体を吹き付けることができる。本発明では,第1の実施形態において述べたように,送風装置10の孔部13aからの気体によってロール状製品Rに付着した異物が上手く除去できるように,送風装置10の孔部13aおよびロープコンベア40の相対的な配置が設計されうる。
【0032】
以上のことから,本実施形態では,図7(a)および図7(b)に示すように,筒状の送風装置10の内側周面(整流部材13の内側周面,後述の変形例では図9に示すように導管12の内側周面)には,ロール状製品に向かって気体を吹き付けることが可能な複数の孔部13a(後述の変形例では複数の吹出口12c)が,全周に亘って設けられている。この構成により,筒状の送風装置10の内部において,ロール状製品Rをより安定して中空に浮かせることができるので,ロール状製品Rに対し筒状の送風装置10の内部における搬送および異物除去をより確実に行うことが可能となる。
【0033】
図8は,ロール状製品R,送風装置10,及びロープコンベア40の搬送方向の断面図を模式的に示している。図8に示されるように,整流部材13のフランジ部分13cを導管12の先端側に嵌め込むことで,整流部材13と導管12が嵌合するようになっている。整流部材13と導管12が嵌合した状態では,導管12の流入口12aに供給された気体は,流路12bを通過して整流部材13の孔部13aのみから排出されることとなる。
【0034】
図9は,図8に示した送風装置10の変形例を示している。送風装置10は,導管12を含み,整流部材13を有しないものであってもよい。図8の例では,送風装置10は導管12と整流部材13とを組み合わせて気体の流路を形成していたが,図9の例では,整流部材13を省略して,その代わりに導管12に気体の吹出口12cを設けている。つまり,導管12は,ロール状製品Rをその軸方向に沿って通過させることが可能な筒状に形成されており,気体の流路と,当該流路に流入した気体がロール状製品Rに向かって吹き付けられる方向を制御するための吹出口12cを含むように構成される。すなわち,図9の例では,導管12の流入口12aに供給された気体は,流路12bを通過して吹出口12cから排出される。なお,吹出口12cは,ロール状製品RのシートSの巻回方向に沿って気体を吹き付けるように調整されている。また,吹出口12cは,ロール状製品Rの搬送方向と反対方向に向かって気体を噴出するように調整されている。このような構成によれば,図8に示した送風装置10と同様に,送風装置10の構成をコンパクト化することができ,また吹出口12cの数を増やすことでロール状製品Rの周面全体に気体を吹き付けることが容易になる。
【0035】
<第3の実施形態>
図10は,異物除去装置100の第3の実施形態を示している。第3の実施形態以降の実施形態については,上説した第2の実施形態と同じ構成については説明を省略し,これと異なる構成について主に説明する。第3の実施形態では,コンベア20においてロール状製品Rを連続的に搬送させ,後続のロール状製品Rにコンベア20の搬送力が作用して,先のロール状製品Rを下流側へ押し出す力を利用して,下流の筒状の送風装置10へ通過させて異物を除去させ,さらに下流のコンベア20へ導く構成となっている。具体的には,第2の実施形態に係る異物除去装置100からロープコンベア40を取り外したような構成になっている。
【0036】
本実施形態に係る異物除去設備100は,より具体的には,その中に入ったロール状製品Rに対してシートの巻回方向に沿って複数の方向から気体を吹き付け,ロール状製品Rを中空に浮かせることが可能な筒状に形成されている送風装置10を備え,搬送装置は,コンベア20によってロール状製品Rを搬送する第1駆動エリアと,コンベアを有しない非駆動エリアと,非駆動エリアの下流側に設けられコンベア20によってロール状製品Rを搬送する第2駆動エリアと,を有し,送風装置10は,非駆動エリアに設置され,搬送装置は,第1駆動エリアのコンベア20の搬送力を後続のロール状製品を介して伝達すること等によって(例えば,自身に慣性力が作用することによって),ロール状製品Rを第1駆動エリアの下流側の筒状の送風装置10の中へ移動させ,さらに下流側の第2駆動エリアのコンベア20へ導くように構成されている。本願明細書では,コンベア20による搬送力がロール状製品Rに伝達されるエリアを駆動エリアと称し,コンベア20による搬送力がロール状製品Rに「直接的に」伝達されないエリアを非駆動エリアと称している。
【0037】
本実施形態によれば,第2の実施形態と同様に,ロール状製品Rに気体を吹き付けて周面に付着した異物を除去する工程において,テールシールの剥離を抑制することができる,という効果のほか,送風装置10において駆動手段を別途設ける必要がないので,ロール状製品Rに付着した異物の除去が低コストで実現可能となる。また,送風装置10の構成をコンパクト化することができ,また気体が吹き出す孔部の数を増やすことでロール状製品Rの周面全体に気体を吹き付ける,つまりエアーの圧だけでロール状製品Rを中空に浮かせながら筒の中で全周エアシャワーすることが容易になる。
【0038】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は,ロール状製品の異物除去装置及び異物除去方法に関する。従って,本発明は,トイレットロールやキッチンロールといったロール状製品の製造業において好適に利用し得る。勿論ロール状製品のプライ数に関係なく利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 送風装置 11 気体噴出手段
12 導管 12a 流入口
12b 流路 12c 吹出口
13 整流部材 13a 孔部
13b リング状部分 13c フランジ部分
20 コンベア 40 ロープコンベア
50 ガイド板 51 平行部
52 傾斜部 100 異物除去装置
R ロール状製品 C 芯材
S シート TS テールシール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10