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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071038
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240517BHJP
   A62C 3/07 20060101ALI20240517BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20240517BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
A62C3/07 Z
H01M50/204 401F
H01M50/35 201
H01M50/249
H01M50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181756
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 律夫
【テーマコード(参考)】
3D235
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB10
3D235BB22
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC15
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH08
3D235HH63
5H012AA07
5H012BB08
5H012CC08
5H012CC10
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY08
(57)【要約】
【課題】高電圧電池パックの発煙や発火に対してより効率良く対処することの可能な車両を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る車両は、排煙口が設けられた高電圧電池パックと、ボディに設けられた充電口と、排煙口と充電口とに連結された排煙ダクトとを備えている。排煙ダクトは、充電口側の端部を着脱可能に覆うキャップ部と、充電口側の端部がキャップ部で覆われている状態のときに高電圧電池パックの内圧の上昇に伴って断面積が拡大するフレキシブルダクト部とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙口が設けられた高電圧電池パックと、
ボディに設けられた充電口と、
前記排煙口と前記充電口とに連結された排煙ダクトと
を備え、
前記排煙ダクトは、
前記充電口側の端部を着脱可能に覆うキャップ部と、
前記充電口側の端部が前記キャップ部で覆われている状態のときに前記高電圧電池パックの内圧の上昇に伴って断面積が拡大するダクト部と
を有する
車両。
【請求項2】
前記ダクト部は、
筒状のフレキシブルダクト部と、
前記フレキシブルダクト部の内面の少なくとも一部に固定された固定部と
を有し、
前記固定部は、前記フレキシブルダクト部の内面に当該固定部が設けられていないときと比べて前記フレキシブルダクト部の断面積が小さくなるように前記フレキシブルダクト部の内面に固定されている
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記固定部は、前記フレキシブルダクト部内に、前記排煙口と前記充電口とを空間的に連通させる空隙が存在しないように前記フレキシブルダクト部の内面に固定されており、
前記固定部の固定力は、前記排煙ダクトの前記充電口側の端部が前記キャップ部で覆われている状態のときに前記高電圧電池パックの内圧の上昇に起因して前記固定部が前記フレキシブルダクト部の内面から剥離する程度の大きさとなっている
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記フレキシブルダクト部は、
前記充電口から前記排煙口に渡って延在し、前記高電圧電池パックに連結された1または複数の電源ケーブルを覆うステント状の被覆層と、
前記被覆層を覆うとともに、前記被覆層の拡張に伴って断面積が拡大する第3のフレキシブルダクト部と
を有する
請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記充電口は、前記高電圧電池パックに連結された1または複数の電源ケーブルと充電装置とを互いに連結するコンセントと、前記排煙ダクトの前記充電口側の端部を固定するソケットとを含んで構成されたインレットを有する
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記ソケットは、車両外部の消火剤供給部を直接連結することの可能な構造となっている
請求項5に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の冷却機構を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車には、エネルギー源として、Liイオン二次電池を含む高電圧電池パックが搭載される。この高電圧電池パックは、高エネルギーを蓄えているため、衝突や短絡等で発火する可能性がある。Liイオン二次電池において、電解液が沸点を超えた場合、発煙が生じる。発煙による高電圧電池パックの内圧上昇を抑えるためには、排煙用のダクトを電動車内に設けることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-135720号公報
【特許文献2】国際公開WO2013/187277
【特許文献3】特開2020-119649号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施の形態に係る車両は、排煙口が設けられた高電圧電池パックと、ボディに設けられた充電口と、排煙口と充電口とに連結された排煙ダクトとを備えている。排煙ダクトは、充電口側の端部を着脱可能に覆うキャップ部と、充電口側の端部がキャップ部で覆われている状態のときに高電圧電池パックの内圧の上昇に伴って断面積が拡大するフレキシブルダクト部とを有している。
【発明の効果】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る車両によれば、高電圧電池パックの発煙や発火に対してより効率良く対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付図面は、本開示をさらに理解するために設けられており、本明細書に組み込まれるとともに、本明細書の一部を構成するものである。図面は、一実施の形態を示し、明細書とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る車両の概略構成例を表す図である。
図2図1の排煙・給水機構の概略構成例を表す図である。
図3図1の排煙・給水機構の概略構成例を表す図である。
図4図3の排煙・給水機構の概略構成の一変形例を表す図である。
図5図2の排煙・給水機構の動作の一例を表す図である。
図6図2の排煙・給水機構の概略構成の一変形例を表す図である。
図7図6の排煙・給水機構におけるステント機能について説明する図である。
図8図6の排煙・給水機構の動作の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、電動車の火災事故を想定して、Liイオン二次電池の発火時に消火しやすい電池パック構造にすることが検討されている。しかし、現状では、高電圧電池パックの発煙、発火の際は、高電圧電池パックの筐体に水をかけたり、電動車ごと水没させたりすることでしか、冷却や消火の対応を行うことができないという問題があった。高電圧電池パックの発煙や発火に対してより効率良く対処することの可能な車両を提供することが望ましい。
【0009】
以下、本開示のいくつかの例示的な実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明は、本開示の一具体例を示すものであり、本開示を限定するものと解釈されてはならない。例えば、数値、形状、材料、部品、各部品の位置および各部品の接続方法等を含む各要素は、一例にすぎず、本開示を限定するものと解釈されてはならない。また、以下の例示的な実施の形態において、本開示の最上位概念に基づく独立項に記載されていない構成要素は、任意的なものであり、必要に応じて設けられ得る。図面は模式的なものであり、原寸通りの図示を意図してはいない。本明細書および図面の全般において、略同じ機能および略同じ構成を有する構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、本開示の一実施の形態に直接関係の無い構成要素は、図面に図示してはいない。説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(図1図5
・排煙・給水機構にシール構造を用いた例
2.変形例(図6図8
・排煙・給水機構にステント機能を用いた例
【0010】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両100の概略構成の一例を表したものである。車両100は、バッテリ10を電力源に走行を行う電動車両である。車両100は、バッテリ10と、バッテリ10のエネルギーで駆動輪を駆動する走行用の電動モータとを備えている。バッテリ10は、車両100とは別個に設けられた充電装置によって充電される。
【0011】
バッテリ10は、例えば、図2に示したように、二次バッテリ11と、煙を検知する検知器13と、二次バッテリ11および検知器13を収容する筐体12とを有する高電圧電池パックである。二次バッテリ11は、例えば、多数のLiイオン二次電池が積層された電池スタックである。二次バッテリ11には、二次バッテリ11へ充電電力を導く充電ケーブル40が接続されている。充電ケーブル40は、1または複数の電源ケーブルによって構成されている。検知器13は、煙を検知するセンサ部と、このセンサ部からの出力(検出信号)を後述のキャップ部53および蓋部30に出力する出力部とを有している。
【0012】
筐体12は、例えば、樹脂部材もしくは金属部材によって構成されており、二次バッテリ11および検知器13を外部の衝撃から保護する。筐体12内には、二次バッテリ11および検知器13以外に空隙が存在している。筐体12には、後述の排煙ダクト50が接続された排煙口12Aと、筐体12内に満たされた水を排出する排水口12Bとが設けられている。排煙口12Aは、例えば、筐体12の側面もしくは上面に設けられている。排水口12Bは、例えば、筐体12の側面もしくは上面に設けられている。排水口12Bには、排水口12Bを開閉可能に塞ぐ蓋部が設けられている。
【0013】
車両100は、さらに、ボディに設けられた充電口20と、充電口20を開閉可能に塞ぐ蓋部30と、充電ケーブル40と、排煙ダクト50とを備えている。充電口20は、ボディのうち、バッテリ10よりも高い位置に設けられている。充電ケーブル40は、二次バッテリ11と充電口20とに連結されている。充電ケーブル40は、排煙ダクト50の外側に(つまり、排煙ダクト50とは別体で)設けられている。排煙ダクト50は、排煙口12Aと充電口20とに連結されている。
【0014】
充電口20は、インレット21を有している。インレット21は、例えば、成型された樹脂によって構成されている。インレット21は、充電ケーブル40と充電装置とを互いに連結するコンセント22と、排煙ダクト50の充電口20側の端部を固定するソケット23とを含んで構成されている。コンセント22およびソケット23は、例えば、図2に示したように、インレット21内の互いに異なる位置に配置されている。ソケット23は、車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)を直接連結することの可能な構造となっている。
【0015】
蓋部30は、例えば、検知器13から所定の検出信号(例えば煙を検知したことを示す信号)が入力されると、所定のタイミングで充電口20を開放するようになっている。蓋部30は、例えば、検知器13から所定の検出信号(例えば煙を検知したことを示す信号)が入力されると、所定のタイミングで充電口20を開放するようになっている。これにより、例えば、二次バッテリ11から発煙が生じたときに、蓋部30が開くようになっている。
【0016】
排煙ダクト50は、例えば、図2に示したように、充電口20側の端部を着脱可能に覆うキャップ部53と、ダクト部50aとを有している。
【0017】
キャップ部53は、排煙ダクト50の、充電口20側の端部、または、ソケット23に対して開閉可能に固定されている。キャップ部53は、筐体12内の圧力が所定の閾値を超えたときに充電口20側の端部を開放する。
【0018】
キャップ部53は、例えば、検知器13から所定の検出信号(例えば煙を検知したことを示す信号)が入力されると、所定のタイミングで排煙ダクト50の、充電口20側の端部を開放するようになっている。これにより、例えば、筐体12内の圧力が通常使用時よりも大きな所定の値となったときに、キャップ部53が開くようになっている。「所定の値」とは、後述のフレキシブルダクト部51が所定の断面積になるまで膨らんだときの圧力に相当する。
【0019】
ダクト部50aは、充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に伴って断面積が拡大するようになっている。ダクト部50aは、例えば、図3(A)、図3(B)に示したように、フレキシブルダクト部51と、フレキシブルダクト部51の内面に接する固定部52とを有している。図3(A)は、フレキシブルダクト部51の長手方向の断面構成例を表したものである。図3(B)は、図3(A)のA-A線での断面構成例を表したものである。
【0020】
固定部52は、例えば、接着層または粘着層によって構成されている。ここで、接着層は、例えば、固化した接着剤であり、フレキシブルダクト部51の内面に接着されている。粘着層は、例えば、両面テープであり、フレキシブルダクト部51の内面に粘着されている。固定部52は、例えば、図3(A)、図3(B)に示したように、フレキシブルダクト部51の内面全体に接着もしくは粘着していてもよい。このとき、フレキシブルダクト部51内に、排煙口12Aとソケット23とを空間的に連通させる空隙が存在していないことが好ましい。このとき、雨水等の液体がフレキシブルダクト部51を介してバッテリ10内に流れ込む流路(空隙)が存在しない。なお、雨水等の液体がフレキシブルダクト部51内に流入する可能性を考慮する必要がない場合には、フレキシブルダクト部51内に、排煙口12Aとソケット23とを空間的に連通させる空隙が存在していてもよい。
【0021】
また、固定部52は、例えば、図4(A)、図4(B)、図4(C)に示したように、フレキシブルダクト部51の内面の一部(1または複数個所)だけに接着もしくは粘着していてもよい。図4(A)は、フレキシブルダクト部51の長手方向の断面構成例を表したものである。図4(B)は、図4(A)のA-A線での断面構成例を表したものである。図4(C)は、図4(A)のB-B線での断面構成例を表したものである。固定部52は、フレキシブルダクト部51内の空隙51Aを、排煙口12A側の空隙とソケット23側の空隙とに空間的に分離するように設けられていてもよい。このとき、雨水等の液体がフレキシブルダクト部51を介してバッテリ10内に流れ込む流路(空隙)が存在しない。なお、雨水等の液体がフレキシブルダクト部51内に流入する可能性を考慮する必要がない場合には、フレキシブルダクト部51内に、排煙口12Aとソケット23とを空間的に連通させる空隙が存在していてもよい。
【0022】
フレキシブルダクト部51の、バッテリ10側の端部は、排煙ダクト50に接続されており、排煙口12Aを介して筐体12内の空隙と連通している。フレキシブルダクト部51の、充電口20側の端部は、ソケット23に接続されており、ソケット23を介して外部と連通している。フレキシブルダクト部51は、筒状のチューブであり、例えば、図3(A)、図3(B)に示したように、固定部52によって相対的に断面積の小さな扁平な形状となっている。つまり、固定部52は、フレキシブルダクト部51の内面に固定部52が設けられていないときと比べてフレキシブルダクト部51の断面積が小さくなるようにフレキシブルダクト部51の内面に固定されている。フレキシブルダクト部51および固定部52は、例えば、図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)に示したように、固定部52を挟んだ積層構造となっている。これにより、固定部52が設けられていないときのフレキシブルダクト部51と比べて、フレキシブルダクト部51の、車両100内での占有体積が小さくなっている。
【0023】
フレキシブルダクト部51および固定部52が、例えば、図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)に示したような積層構造となっているとする。このとき、固定部52の固定力(接着力または粘着力)は、排煙ダクト50の充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に起因して固定部52がフレキシブルダクト部51の内面から剥離する程度の大きさとなっている。フレキシブルダクト部51は、排煙ダクト50の充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に起因して破れない程度の耐圧性のシートで構成されている。このように、フレキシブルダクト部50aは、フレキシブルダクト部51および固定部52を互いに貼り合わせたシール構造となっている。
【0024】
バッテリ10の内圧が上昇し、固定部52がフレキシブルダクト部51の内面から剥離したとき、フレキシブルダクト部51がバッテリ10の内圧の上昇に伴って膨張し、フレキシブルダクト部51(空隙51A)の断面積が、上述の積層構造のときのフレキシブルダクト部51の断面積よりも大きくなる。これにより、バッテリ10が発火したときの、フレキシブルダクト部51を介した排煙や給水が効率良く行われ得る。フレキシブルダクト部51の膨張については、以下の[動作]において詳細に説明する。
【0025】
[動作]
図5(A)~図5(D)は、ダクト部50aの排煙・給水機構の動作の一例を表したものである。ダクト部50aの断面積は、例えば、図5(A)に示したように、通常使用時において最小限に抑えられている。
【0026】
二次バッテリ11が衝突や短絡等で発火し、二次バッテリ11から発煙が生じたとする。このとき、煙ガスGが筐体12内に充満する。これにより、筐体12内の圧力が所定の大きさになると、例えば、図5(B)に示したように、固定部52がフレキシブルダクト部51の内面から剥離し、フレキシブルダクト部51内の空隙51Aに煙ガスGが流入する。その結果、フレキシブルダクト部51の断面積がバッテリ10の内圧の上昇に伴って拡大する。
【0027】
このとき、フレキシブルダクト部51の断面積の拡大が限界に達し、フレキシブルダクト部51内の圧力が所定の値を超えると、例えば、図5(C)に示したように、キャップ部53が開放される。本実施の形態では、例えば、検知器13から所定の検出信号(例えば煙を検知したことを示す信号)がキャップ部53に入力されると、例えば、図5(C)に示したように、所定のタイミングでキャップ部53が開放される。その結果、煙ガスGが充電口20から外部に放出される。
【0028】
その後、消防士等が車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)をソケット23に連結し、例えば、図5(D)に示したように、消火用水Wを、ソケット23を介してフレキシブルダクト部51に流入させる。これにより、消火用水Wがフレキシブルダクト部51を流れ、筐体12内に流入する。その結果、消火用水Wが二次バッテリ11に直接触れ、消火用水Wによって二次バッテリ11が冷却される。その後、筐体12内の空隙が消火用水Wによって満たされると、消火用水Wが排水口12Bから排出される。このようにして、ダクト部50aを用いた排煙・給水が行われる。
【0029】
[効果]
次に、車両100の効果について説明する。
【0030】
電動車には、エネルギー源として、Liイオン二次電池を含む高電圧電池パックが搭載される。この高電圧電池パックは、高エネルギーを蓄えているため、衝突や短絡等で発火する可能性がある。Liイオン二次電池において、電解液が沸点を超えた場合、発煙が生じる。発煙による高電圧電池パックの内圧上昇を抑えるためには、排煙用のダクトを電動車内に設けることが必要となる。
【0031】
ところで、近年、電動車の火災事故を想定して、Liイオン二次電池の発火時に消火しやすい電池パック構造にすることが検討されている。しかし、現状では、高電圧電池パックの発煙、発火の際は、高電圧電池パックの筐体に水をかけたり、電動車ごと水没させたりすることでしか、冷却や消火の対応を行うことができないという問題があった。
【0032】
一方、本実施の形態では、バッテリ10の排煙口12Aとボディに設けられた充電口20とに排煙ダクト50が連結されている。排煙ダクト50には、充電口20側の端部を着脱可能に覆うキャップ部53と、充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に伴って断面積が拡大するフレキシブルダクト部50aとが設けられている。これにより、バッテリ10で発生した煙ガスGを、排煙ダクト50を介して外部に放出させ、消火用水Wを、排煙ダクト50を介してバッテリ10内の二次バッテリ11に直接、供給することができる。このように、本実施の形態では、排煙と消火を1つの排煙ダクト50で行うことができるだけでなく、消火用水Wを、二次バッテリ11に直接、供給することもできる。従って、バッテリ10の発煙や発火に対してより効率良く対処することができる。
【0033】
本実施の形態では、固定部52が、フレキシブルダクト部51の内面に当該固定部52が設けられていないときと比べてフレキシブルダクト部51の断面積が小さくなるようにフレキシブルダクト部51の内面に固定されている。これにより、固定部52が設けられていないときのフレキシブルダクト部51と比べて、フレキシブルダクト部51の、車両100内での占有体積を小さくすることができる。
【0034】
本実施の形態では、固定部52が、フレキシブルダクト部51内に、排煙口12Aと充電口20とを空間的に連通させる空隙が存在しないようにフレキシブルダクト部51の内面に固定されている。このとき、固定部52の固定力が、排煙ダクト50の充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に起因して固定部52がフレキシブルダクト部51の内面から剥離する程度の大きさとなっている。これにより、例えば、図5(A)~図5(D)に示したように、排煙時にフレキシブルダクト部51を膨張させ、消火時に消火用水Wを、断面積の大きなフレキシブルダクト部51を介して二次バッテリ11に直接、供給することができる。従って、バッテリ10の発煙や発火に対してより効率良く対処することができる。
【0035】
本実施の形態では、充電ケーブル40と充電装置とを互いに連結するコンセント22と、排煙ダクト50の充電口20側の端部を固定するソケット23とを含んで構成されたインレット21が充電口20に設けられている。これにより、従来の設計を大きく変更することなく、排煙や消火を効率良く行うことができる。
【0036】
本実施の形態では、ソケット23が車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)を直接連結することの可能な構造となっている。これにより、消火を効率良く行うことができる。
【0037】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0038】
[変形例A]
図6は、図2の排煙・給水機構の概略構成の一変形例を表したものである。上記実施の形態において、例えば、図6に示したように、フレキシブルダクト部50aの代わりに、ダクト部50bが設けられていてもよい。
【0039】
ダクト部50bは、充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に伴って断面積が拡大するようになっている。ダクト部50bは、例えば、図6に示したように、二次バッテリ11へ充電電力を導く充電ケーブル40と、充電ケーブル40を覆うステント状の被覆層54と、被覆層54を覆うフレキシブルダクト部55とを有している。
【0040】
被覆層54は、例えば、図7(A)に示したように、充電口20から排煙口12Aに渡って延在するステント状のワイヤによって構成されている。被覆層54は、例えば、図7(B)に示したように、圧力が印可されると、ステント状のワイヤが広がって、被覆層54の断面積が拡大するように構成されている。フレキシブルダクト部55は、被覆層54の拡張に伴って断面積が拡大する構成となっている。フレキシブルダクト部55は、排煙ダクト50の充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に起因して破れない程度の耐圧性のシートで構成されている。
【0041】
被覆層54は、フレキシブルダクト部55の内面に接しており、例えば、フレキシブルダクト部55の内面に貼り合わされている。このとき、被覆層54は、フレキシブルダクト部55と一体に形成されている。なお、被覆層54は、フレキシブルダクト部55の内面に接しているだけで、フレキシブルダクト部55とは別体で形成されていてもよい。
【0042】
インレット21は、充電ケーブル40と充電装置とを互いに連結するコンセント22と、排煙ダクト50の充電口20側の端部を固定するソケット23とを含んで構成されている。ソケット23は、例えば、図6に示したように、コンセント22の周囲を囲むように形成されている。コンセント22およびソケット23は、例えば、図6に示したように、同心円状に配置されている。ソケット23は、車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)を直接連結することの可能な構造となっている。
【0043】
図8(A)~図8(D)は、ダクト部50bの排煙・給水機構の動作の一例を表したものである。被覆層54およびフレキシブルダクト部55の断面積は、例えば、図8(A)に示したように、通常使用時において最小限に抑えられている。
【0044】
二次バッテリ11が衝突や短絡等で発火し、二次バッテリ11から発煙が生じたとする。このとき、煙ガスGが筐体12内に充満し、フレキシブルダクト部55に流れ込む。これにより、筐体12内の圧力やフレキシブルダクト部55内の圧力が所定の大きさになると、例えば、図8(B)に示したように、被覆層54およびフレキシブルダクト部55が、煙ガスGによって膨張する。
【0045】
このとき、被覆層54およびフレキシブルダクト部55の膨張が限界に達し、フレキシブルダクト部55内の圧力が所定の値を超えると、例えば、図8(C)に示したように、キャップ部53が開放される。本変形例では、例えば、検知器13から所定の検出信号(例えば煙を検知したことを示す信号)がキャップ部53に入力されると、例えば、図8(C)に示したように、所定のタイミングでキャップ部53が開放される。その結果、煙ガスGが充電口20から外部に放出される。
【0046】
その後、消防士等が車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)をソケット23に連結し、例えば、図8(D)に示したように、消火用水Wを、ソケット23を介してフレキシブルダクト部55に流入させる。これにより、消火用水Wがフレキシブルダクト部55を流れ、筐体12内に流入する。その結果、消火用水Wが二次バッテリ11に直接触れ、消火用水Wによって二次バッテリ11が冷却される。その後、筐体12内の空隙が消火用水Wによって満たされると、消火用水Wが排水口12Bから排出される。このようにして、ダクト部50bを用いた排煙・給水が行われる。
【0047】
本変形例では、バッテリ10の排煙口12Aとボディに設けられた充電口20とに排煙ダクト50が連結されている。排煙ダクト50には、充電口20側の端部を着脱可能に覆うキャップ部53と、充電口20側の端部がキャップ部53で覆われている状態のときにバッテリ10の内圧の上昇に伴って断面積が拡大するダクト部50bとが設けられている。これにより、バッテリ10で発生した煙ガスGを、排煙ダクト50を介して外部に放出させ、消火用水Wを、排煙ダクト50を介してバッテリ10内の二次バッテリ11に直接、供給することができる。このように、本変形例では、排煙と消火を1つの排煙ダクト50で行うことができるだけでなく、消火用水Wを、二次バッテリ11に直接、供給することもできる。従って、バッテリ10の発煙や発火に対してより効率良く対処することができる。
【0048】
本変形例では、充電口20から排煙口12Aに渡って延在するステント状のワイヤによって構成された被覆層54と、被覆層54を覆うとともに、被覆層54の拡張に伴って断面積が拡大するフレキシブルダクト部55とが設けられている。これにより、例えば、図8(A)~図8(D)に示したように、排煙時に被覆層54およびフレキシブルダクト部55を膨張させ、消火時に消火用水Wを、断面積の大きなフレキシブルダクト部55を介して二次バッテリ11に直接、供給することができる。また、本変形例では、煙ガスGの圧力が弱くなった場合であっても、フレキシブルダクト部55は被覆層54によって保持されるので、フレキシブルダクト部55の断面積を維持することができる。従って、バッテリ10の発煙や発火に対してより効率良く対処することができる。また、本変形例では、被覆層54およびフレキシブルダクト部55が充電ケーブル40の外装材を兼ねている。これにより、排煙・消火のためだけに被覆層54およびフレキシブルダクト部55を設けた場合と比べて、外装材のコストや重量を削減することができる。
【0049】
本変形例では、充電ケーブル40がダクト部50b内に設けられている。これにより、充電ケーブル40をダクト部50bとは別個に設けた場合と比べて、省スペースで排煙ダクト50を設けることができる。
【0050】
本変形例では、充電ケーブル40と充電装置とを互いに連結するコンセント22と、排煙ダクト50の充電口20側の端部を固定するソケット23とを含んで構成されたインレット21が充電口20に設けられている。これにより、従来の設計を大きく変更することなく、排煙や消火を効率良く行うことができる。
【0051】
本変形例では、ソケット23が車両外部の消火剤供給部(例えば、消火用放水ホース)を直接連結することの可能な構造となっている。これにより、消火を効率良く行うことができる。
【0052】
[変形例B]
上記実施の形態およびその変形例において、煙を検知する検知器13の代わりに、筐体12内の圧力を検知する検知器が設けられていてもよい。このようにした場合には、筐体12内の圧力を検知する検知器から所定の検出信号(例えば所定の圧力を検知したことを示す信号)がキャップ部53に入力されると、所定のタイミングでキャップ部53が開放される。その結果、煙ガスGを充電口20から外部に放出することができる。
【0053】
[変形例C]
上記実施の形態およびその変形例において、検知器13が省略されていてもよい。このとき、キャップ部53がソケット23に対して摩擦力によって固定されていてもよい。キャップ部53がソケット23に対して摩擦力によって固定されている場合、筐体12内の圧力によってキャップ部53に加えられる力が上記の摩擦力を越えたときに、キャップ部53が排煙ダクト50の、充電口20側の端部を開放するようになっていてもよい。また、キャップ部53が排煙ダクト50の、充電口20側の端部に対して摩擦力によって固定されていてもよい。キャップ部53が排煙ダクト50の、充電口20側の端部に対して摩擦力によって固定されている場合、筐体12内の圧力によってキャップ部53に加えられる力が上記の摩擦力を越えたときに、キャップ部53が排煙ダクト50の、充電口20側の端部を開放するようになっていてもよい。このように、キャップ部53が機械的に開くようになっていてもよい。このようにした場合には、キャップ部53を電気的に制御する必要がないので、キャップ部53やバッテリ10の構成を簡素化することができる。
【0054】
[変形例D]
上記実施の形態およびその変形例では、車両100は電動車両であった。しかし、上記実施の形態およびその変形例において、車両100は、ガソリンもしくは軽油等で動作するエンジンと、走行用の電動モータとを有するハイブリッド車両であってもよい。このようにした場合であっても、上記実施の形態およびその変形例と同様の効果を得ることができる。
【0055】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0056】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
【0057】
(1)
排煙口が設けられた高電圧電池パックと、
ボディに設けられた充電口と、
前記排煙口と前記充電口とに連結された排煙ダクトと
を備え、
前記排煙ダクトは、
前記充電口側の端部を着脱可能に覆うキャップ部と、
前記充電口側の端部が前記キャップ部で覆われている状態のときに前記高電圧電池パックの内圧の上昇に伴って断面積が拡大するダクト部と
を有する
車両。
(2)
前記ダクト部は、
筒状のフレキシブルダクト部と、
前記フレキシブルダクト部の内面の少なくとも一部に固定された固定部と
を有し、
前記固定部は、前記フレキシブルダクト部の内面に当該固定部が設けられていないときと比べて前記フレキシブルダクト部の断面積が小さくなるように前記フレキシブルダクト部の内面に固定されている
前記(1)に記載の車両。
(3)
前記固定部は、前記フレキシブルダクト部内に、前記排煙口と前記充電口とを空間的に連通させる空隙が存在しないように前記フレキシブルダクト部の内面に固定されており、
前記固定部の固定力は、前記排煙ダクトの前記充電口側の端部が前記キャップ部で覆われている状態のときに前記高電圧電池パックの内圧の上昇に起因して前記固定部が前記フレキシブルダクト部の内面から剥離する程度の大きさとなっている
前記(2)に記載の車両。
(4)
前記フレキシブルダクト部は、
前記充電口から前記排煙口に渡って延在し、前記高電圧電池パックに連結された1または複数の電源ケーブルを覆うステント状の被覆層と、
前記被覆層を覆うとともに、前記被覆層の拡張に伴って断面積が拡大する第3のフレキシブルダクト部と
を有する
前記(1)に記載の車両。
(5)
前記充電口は、前記高電圧電池パックに連結された1または複数の電源ケーブルと充電装置とを互いに連結するコンセントと、前記排煙ダクトの前記充電口側の端部を固定するソケットとを含んで構成されたインレットを有する
前記(1)ないし前記(4)のいずれかに記載の車両。
(6)
前記ソケットは、車両外部の消火剤供給部を直接連結することの可能な構造となっている
前記(5)に記載の車両。
【0058】
図2に示す検知器13は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)および/または少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の、少なくとも1つの半導体集積回路を含む回路によって実施可能である。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つの非一時的かつ有形のコンピュータ可読媒体から指示を読み込むことによって、図2に示す検知器13における各種機能のうちの全部または一部を実行するように構成可能である。そのような媒体は、ハードディスク等の各種磁気媒体、CDまたはDVD等の各種光媒体、揮発性メモリまたは不揮発性メモリ等の各種半導体メモリ(すなわち、半導体回路)を含む様々な形態をとり得るが、これらには限定されない。揮発性メモリは、DRAMおよびSRAMを含み得る。不揮発性メモリは、ROMおよびNVRAMを含み得る。ASICは、図2に示す検知器13における各種機能のうちの全部または一部を実行するように特化された集積回路(IC)である。FPGAは、図2に示す検知器13における各種機能のうちの全部または一部を実行するように、製造後に構成可能に設計された集積回路である。
【符号の説明】
【0059】
10…バッテリ、11…二次バッテリ、12…筐体、12A…排煙口、12B…排水口、13…検知器、20…充電口、21…インレット、22…コンセント、23…ソケット、30…蓋部、40…充電ケーブル、50…排煙ダクト、50a,50b…ダクト部、51…フレキシブルダクト部、52…固定部、53…キャップ部、54…被覆層、55…フレキシブルダクト部、100…車両。
図1
図2
図3
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図5
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図8