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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071039
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】繊維製品用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/62 20060101AFI20240517BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20240517BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20240517BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20240517BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D1/75
C11D3/30
C11D3/28
C11D3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181757
(22)【出願日】2022-11-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 親一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理文
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC14
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB20
4H003ED02
4H003FA28
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来の汚れの脱色に優れる、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、25℃におけるpHが1以上5以下である、繊維製品用洗浄剤組成物。
(a)成分:下記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、及び(a4)成分から選ばれる1種以上の化合物
(a1)成分:第4級アンモニウム塩
(a2)成分:炭素数14以上のアルキルアミン
(a3)成分:炭素数14以上のアルキルアミンオキサイド
(a4)成分:ビスピリジニウム化合物
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-(EO)-H (b1)
〔式中、R1bは炭素数8以上24以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nは平均付加モル数であり、0以上10未満の数である。〕
(c)成分:酸剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、25℃におけるpHが1以上5以下である、繊維製品用洗浄剤組成物。
(a)成分:下記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、及び(a4)成分から選ばれる1種以上の化合物
(a1)成分:第4級アンモニウム塩
(a2)成分:炭素数14以上のアルキルアミン
(a3)成分:炭素数14以上のアルキルアミンオキサイド
(a4)成分:ビスピリジニウム化合物
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-(EO)-H (b1)
〔式中、R1bは炭素数8以上24以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nは平均付加モル数であり、0以上10未満の数である。〕
(c)成分:酸剤
【請求項2】
(c)成分の含有量が5質量%以上である、請求項1に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、一般式(b1)中、nが3以下の化合物である、請求項1又は2に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a1)成分が、下記一般式(a1)で表される化合物である、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【化1】

〔式中、R1aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R2aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、又はハロゲン化物イオンである。〕
【請求項5】
(a1)成分が、(a11)一般式(a1)中、R1aが炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R2aが炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基である化合物を含む、請求項4に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、0.05以上2以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項7】
(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(b)/(c)が、0.05以上2以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の繊維製品用洗浄剤組成物及び水を混合して得た洗浄液で繊維製品を洗浄する、繊維製品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の繊維製品の洗浄には、界面活性剤を配合した洗浄剤が用いられている。近年、生活者の衛生意識の高まりに伴い、繊維表面の菌やそれに由来する汚れに対する関心も高まってきており、洗浄と共に殺菌効果や除菌効果を付与する検討がなされている。殺菌効果や除菌効果を評価する際のクライテリア菌として大腸菌が採用されることが多く、大腸菌の菌数は環境の衛生度を表す指標であるといえる。したがって、繊維製品の洗浄において大腸菌を含む菌を殺菌することで生活者により衛生的な繊維製品を提供できると考えられる。さらに、菌由来の視認性汚れの除去も併せて行うことで生活者の衛生実感を向上させることが可能である。
【0003】
特許文献1には、(A)成分:ヒドロキシカルボン酸、(B)成分:(b-1)成分、(b-2)成分及び(b-3)成分からなる群から選択される少なくとも1種の抗菌剤、及び(C)成分:ノニオン界面活性剤、を含有し、前記(A)成分の含有量が、衣料用液体洗浄剤組成物の総質量に対し5質量%以上であり、25℃におけるpHが2~6である、衣料用液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、第4級アンモニウム塩としてアルカンビスピリジニウム、ノニオン界面活性剤として炭素数10のアルコールエトキシレート(エチレンオキシ基の付加モル数5)、及び酸剤としてクエンを含有し、pHが3程度の硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-188641号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第3771338号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維製品の洗浄用途で知られている従来のカチオン界面活性剤を用いるような殺菌技術では大腸菌の殺菌は困難であり、菌由来の視認性汚れの除去も不十分である。
本発明は、大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来の汚れの脱色に優れる、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、25℃におけるpHが1以上5以下である、繊維製品用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、及び(a4)成分から選ばれる1種以上の化合物
(a1)成分:第4級アンモニウム塩
(a2)成分:炭素数14以上のアルキルアミン
(a3)成分:炭素数14以上のアルキルアミンオキサイド
(a4)成分:ビスピリジニウム化合物
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物
1b-O-(EO)-H (b1)
〔式中、R1bは炭素数8以上24以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nは平均付加モル数であり、0以上10未満の数である。〕
(c)成分:酸剤
【0007】
また本発明は、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物及び水を混合して得た洗浄液で繊維製品を洗浄する、繊維製品の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来の汚れの脱色に優れる、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<繊維製品用洗浄剤組成物>
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物が、大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来の汚れの脱色に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。大腸菌の表層成分や、繊維に付着した菌由来の汚れはいずれも多糖成分が主成分と考えられる。本発明の繊維製品用洗浄剤組成物では、pHを酸性にすることで、希釈した場合の洗浄液のpHも酸性を維持し、その洗浄液で菌由来の汚れが付着した繊維を洗浄した場合、菌に含まれる色素成分を除去することが可能となる。さらに本発明の繊維製品用洗浄剤組成物では、酸性条件下において特定の(a)成分と特定の(b)成分を作用させることで、大腸菌の殺菌性能が向上したものと考えられる。
【0010】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、下記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、及び(a4)成分から選ばれる1種以上の化合物である。
(a1)成分:第4級アンモニウム塩
(a2)成分:炭素数14以上のアルキルアミン
(a3)成分:炭素数14以上のアルキルアミンオキサイド
(a4)成分:ビスピリジニウム化合物
【0011】
(a1)成分としては、殺菌・脱色効果の観点から、下記一般式(a1)で表される化合物が好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
〔式中、R1aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R2aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、Xは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、又はハロゲン化物イオンである。〕
【0014】
一般式(a1)中、R1aの鎖式炭化水素基の炭素数は、殺菌・脱色効果の観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
1aの鎖式炭化水素基は、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0015】
2aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R2aの鎖式炭化水素基の炭素数は、殺菌・脱色効果の観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
2aの鎖式炭化水素基は、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0016】
3a、R4aは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基である。
【0017】
1a、R2aの鎖式炭化水素基の具体例は、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、及びヘキサデシル基から選ばれる基であり、殺菌・脱色効果の観点から、ドデシル基、テトラデシル基、及びデシル基から選ばれる基が好ましく、デシル基がより好ましい。
【0018】
炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基の具体例は、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。XはCHSO 、CHCHSO 、又はハロゲン化物イオンである。またXは、本発明の(c)成分である酸剤由来であってよい。
【0019】
前記一般式(a1)で表される化合物のより具体的な化合物は、殺菌・脱色効果の観点から、N,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-エチル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジノニル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、及びN,N-ジノニル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられ、モノ長鎖型アンモニウム塩とジ長鎖型アンモニウム塩を併用することもできる。これらの塩となる対イオンは、CHSO 、CHCHSO 、又はクロルイオン等のハロゲン化物イオンである。
【0020】
(a1)成分は、殺菌・脱色効果の観点から、(a11)一般式(a1)中、R1aが炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R2aが炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基である化合物(以下、(a11)成分という)を含むことを好ましい。
(a11)成分において、一般式(a1)中、R1a、及びR2aの鎖式炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、殺菌・脱色効果の観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
(a11)成分において、一般式(a1)中、R1a、及びR2aの鎖式炭化水素基は、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
(a11)成分において、一般式(a1)中、R3a、R4a、及びXの好ましい範囲は、殺菌・脱色効果の観点から、(a1)成分で上記した範囲と同じである。
【0021】
(a2)成分は、炭素数14以上のアルキルアミンである。
(a2)成分は、殺菌・脱色効果の観点から、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、及びトリアルキルアミンから選ばれる1種以上が挙げられ、モノアルキルアミンが好ましい。
(a2)成分のアルキル基の炭素数は、殺菌・脱色効果の観点から、14以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、好ましくは直鎖である。
【0022】
(a3)成分は、炭素数14以上のアルキルアミンオキサイドである。
(a3)成分は、殺菌・脱色効果の観点から、下記一般式(a3)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
〔式中、R4aは炭素数14以上のアルキル基を示し、R5a及びR6aは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0025】
上記一般式(a3)において、q=1かつp=1の場合には、R4aは、殺菌・脱色効果の観点から、炭素数14以上、そして、好ましくは20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基である。
またq=0かつp=0の場合には、R4aは、殺菌・脱色効果の観点から、炭素数14以上、そして、好ましくは20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基である。
4aのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、好ましくは直鎖である。
本発明ではq=0かつp=0が好ましい。R5a及びR6aは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0026】
(a4)成分は、ビスピリジニウム化合物である。
ビスピリジニウム化合物としては、例えば、英国特許第1533952号明細書、特開昭52-105228号公報、国際公開第2014/100807号に記載されているものなどが挙げられる。ビスピリジニウム化合物としては、具体的には、殺菌・脱色効果の観点から、下記一般式(a41)で表される化合物、下記一般式(a42)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
〔式中、Yは、4~18個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基であり、R7aは、それぞれ、6~18個の炭素原子を有するアルキル基または5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはハロゲン置換の有無にかかわらずフェニル基を表し、Aは、陰イオンである。qは1又は2、rは1又は2であり、q×r=2である。〕
【0029】
Aは、一価又は二価の陰イオンであり、例えば、塩化物、臭化物、リン酸塩、オルトケイ酸塩、有機酸、例えば式R8a-COO-を有する有機酸やアルキル(炭素数1以上40以下)スルホン酸、などの化合物からの陰イオンであり得る。ここで、R8aは、水素、ヒドロキシル、または炭素数1以上40以下のアルキル基である。Aは、本発明の(c)成分である酸剤由来であってよい。
【0030】
殺菌効果の観点から、Aの陰イオンに相当する有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、リン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、グリシルリジン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ホスホン酸、トリフルオロ酢酸、シアノ酢酸、4-シアノ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-ニトロ安息香酸、フェノキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
殺菌・脱色効果の観点から、好ましいビスピリジニウム化合物は、一般式(a42)の化合物、更にオクテニジン二塩酸塩(一般式(a42)中、R7aがそれぞれn-オクチル基、Yがn-デセニル基、AがCl、qが1、rが2の化合物、CAS番号70775-75-6)である。
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物では、(a4)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0032】
(a)成分は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは(a1)成分、(a2)成分、及び(a4)成分から選ばれる1種以上であり、より好ましくは(a1)成分及び(a2)成分から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは(a11)成分を含む(a1)成分である。
【0033】
<(b)成分>
(b)成分:下記一般式(b1)で表される化合物である。
1b-O-(EO)-H (b1)
〔式中、R1bは炭素数8以上24以下の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nは平均付加モル数であり、0以上10未満の数である。〕
【0034】
一般式(b1)中、R1bの炭素数は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
1bは、殺菌・脱色効果の観点から、炭化水素基であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、更に好ましくは直鎖のアルキル基である。
nは、殺菌・脱色効果の観点から、0以上、そして、10未満、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
【0035】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、(b)成分を、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0036】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、酸剤である。
(c)成分の酸剤としては、殺菌・脱色効果の観点から、有機酸、及び無機酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
有機酸としては、殺菌・脱色効果の観点から、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フタル酸、安息香酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、及びアコニット酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
無機酸としては、殺菌・脱色効果の観点から、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、及び炭酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0037】
(c)成分は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは有機酸であり、より好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、及びコハク酸から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはクエン酸、リンゴ酸、及び酢酸から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはクエン酸、及びリンゴ酸から選ばれる1種以上である。
【0038】
<組成等>
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明において、(a)成分として、(a1)成分を含む場合、(a1)成分の質量は、エチルサルフェート塩に換算した値を用いるものとする。また(a)成分として、(a4)成分を含む場合、(a4)成分の質量は、塩酸塩に換算した値を用いるものとする。
【0039】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物において、(a)成分が(a11)成分を含む(a1)成分である場合、(a1)成分中の(a11)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0040】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、(b)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
【0041】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0042】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、(c)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは7.5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。本発明の繊維製品用洗浄剤組成物において、(c)成分は、(a1)成分及び(a4)成分の塩の対イオンとして含有してもよいが、その量は、(c)成分の含有量に含まれる。
【0043】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(b)/(c)が、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下である。
【0044】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水、精製水などを用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。本発明の繊維製品用洗浄剤組成物中、水の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0045】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、任意成分として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、洗剤又は柔軟剤用途に使用することが知られている下記の(1)~(14)の成分を含有することができる。
【0046】
(1)界面活性剤
界面活性剤としては、殺菌・脱色効果の観点から、特に限定されないが(1-1)陰イオン界面活性剤(以下、(1-1)成分ともいう)、(1-2)(b)成分以外の非イオン界面活性剤(以下、(1-2)成分ともいう)、及び(1-3)(a3)成分以外の両性界面活性剤(以下、(1-3)成分ともいう)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0047】
(1-1)陰イオン界面活性剤としては、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル硫酸エステル、アルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルケニルベンゼンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、内部オレフィンスルホン酸、アルキル又はジアルキルスルホコハク酸、アルケニル又はジアルケニルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
陰イオン界面活性剤の塩は、殺菌・脱色効果の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0048】
(1-2)(b)成分以外の非イオン界面活性剤としては、殺菌・脱色効果の観点から、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル(但し、(b)成分は除く)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0049】
(1-3)(a3)成分以外の両性界面活性剤としては、殺菌・脱色効果の観点から、ベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。(1-3)成分は、具体的には、殺菌・脱色効果の観点から、スルホベタイン、カルボベタイン及びアミンオキサイド(ただし、(a3)成分は除く)から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0050】
スルホベタインとしては、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上18以下、のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが挙げられる。
【0051】
カルボベタインとしては、殺菌・脱色効果の観点から、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインや下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化4】
【0053】
〔式中、Rは炭素数7以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rはプロピレン基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。〕
【0054】
アミンオキサイド(ただし、(a3)成分は除く)としては、下記一般式(2)の化合物が挙げられる。
【0055】
【化5】
【0056】
〔式中、Rは炭素数7以上10以下の炭化水素基、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。m及びpは、m=0かつp=0又はm=1かつp=1を示す。〕
【0057】
(2)pH調整剤
殺菌・脱色効果の観点から、pH調整剤としてアルカリ剤を含有することができる。
アルカリ剤は、殺菌・脱色効果の観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの無機アルカリ剤、窒素原子に結合する基のうち、1つ以上、3つ以下が炭素数2以上、4以下のアルカノール基であり、残りが炭素数1以上、4以下のアルキル基又は水素原子であるアルカノールアミンを挙げることができる。殺菌・脱色効果の観点から、このうちアルカノール基はヒドロキシアルキル基、更にヒドロキシエチル基であるものが好ましい。殺菌・脱色効果の観点から、アルカノール基以外は水素原子、又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。アルカノールアミンとしては、殺菌・脱色効果の観点から、2-アミノエタノール、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0058】
(3)キレート剤
殺菌・脱色効果の観点から、キレート剤の具体例として、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩等が挙げられる。
【0059】
(4)再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤
殺菌・脱色効果の観点から、再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0060】
(5)漂白剤
殺菌・脱色効果の観点から、漂白剤としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
(6)漂白活性化剤
殺菌・脱色効果の観点から、漂白活性化剤としては、テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等が挙げられる。
【0062】
(7)酵素
殺菌・脱色効果の観点から、酵素としては、アミラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、プルラナーゼ、フラクトフラノシダーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0063】
(8)蛍光染料
殺菌・脱色効果の観点から、蛍光染料としては、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料が挙げられる。
【0064】
(9)酸化防止剤
殺菌・脱色効果の観点から、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(慣用名:BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(慣用名;BHA)、ジスチレン化クレゾール、アスコルビン酸(慣用名:ビタミンC)、トコフェノール(慣用名:ビタミンE)、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)等の公知の抗酸化化合物又は亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の公知の無機塩が挙げられる。
【0065】
(10)殺菌・脱色効果の観点から、色素、香料、ダイクロサン等の抗菌剤、紫外線防止剤、シリコーン等の消泡剤
【0066】
(11)水酸基を有する有機溶剤
殺菌・脱色効果の観点から、水酸基を有する有機溶剤としては、以下の(11-1)成分~(11-6)成分から選ばれる1種以上の化合物が用いられる。
【0067】
(11-1)成分:炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する1価のアルコール
(11-1)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノールから選ばれる1価のアルコールが挙げられる。
【0068】
(11-2)成分:炭素数2以上6以下の2価以上6価以下のアルコール
(11-2)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びグリセリンから選ばれる2価又は3価のアルコールが挙げられる。2-メチル-2,4-ペンタンジオールは、ヘキシレングリコールとも称される。
【0069】
(11-3)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位を含有するポリアルキレングリコール
(11-3)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量400以上4000以下のポリエチレングリコール及び重量平均分子量400以上4000以下のポリプロピレングリコールから選ばれるポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0070】
(11-4)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位と、炭素数1以上4以下のアルキル基とを有する、(モノ又はポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテル
(11-4)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、及び1-エトキシ-2-プロパノールから選ばれる化合物が挙げられる。
【0071】
(11-5)成分:炭素数1以上8以下のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル
(11-5)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えば1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル、及び2-エチルヘキシルグリセリルエーテルから選ばれるアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0072】
(11-6)成分:炭素数2又は3のアルキレングリコール単位を有する(モノ又はポリ)アルキレングリコールの芳香族アルキルエーテル
(11-6)成分として、殺菌・脱色効果の観点から、例えば2-フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる化合物が挙げられる。
【0073】
前記(11-4)成分、(11-6)成分において「(モノ又はポリ)アルキレングリコール」なる用語は、モノアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールを意味する。また、「ポリアルキレングリコール」とは、アルキレングリコール単位を2個以上9個以下の量で含有することを意味する。
【0074】
(12)ハイドロトロープ剤
殺菌・脱色効果の観点から、ハイドロトロープ剤は、陰イオン性基を有する有機化合物であり、更にはメチル基、エチル基又はプロピル基から選ばれるアルキル基を1つ又は2つ含み、スルホン酸基又はカルボン酸基を1つ有するアルキルベンゼンカルボン酸又はアルキルベンゼンスルホン酸又はそれらの塩、並びに安息香酸又はその塩を挙げることができる。殺菌・脱色効果の観点から、より具体的にはパラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸であり、塩はアルカリ金属塩が好ましい。
【0075】
(13)香料
殺菌・脱色効果の観点から、香料は、マスキング効果を有し、場合によっては、それ自体が消臭性能を有する基材であることもある。
香料としては、殺菌・脱色効果の観点から、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料及び特表平10-507793号公報記載の香料を使用することができる。また、特開2014-213072号公報に記載の賦香剤の技術を用いることができ、ケイ酸エステル香料やマイクロカプセル香料も使用することができる。
【0076】
(14)消臭基材
殺菌・脱色効果の観点から、消臭基材としては、特開2018-29836号公報に記載のポリヒドロキシアミン化合物が挙げられる。
ポリヒドロキシアミン化合物としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、及びこれらと塩酸等の無機酸等が挙げられる。
【0077】
本発明の繊維品用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、殺菌・脱色効果の観点から、1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、そして、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。該pHは、ガラス電極を用いて25℃で測定した値である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<pHの測定方法>
堀場製作所製pHメーター D-52にpH電極(型式6367)をあらかじめフタル酸緩衝液(pH4.01)、リン酸標準液(pH6.84)、ホウ酸塩標準液(pH9.18)で校正し、イオン交換水で十分すすいでおく。温度を25℃に調整した繊維製品用洗浄剤組成物に、上記の通り校正、洗浄したpH電極を入れ、pHメーターのAUTO HOLDモードを用いて、測定値が一定になるまで測定する。
【0078】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、20℃の粘度が、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、更に好ましくは30mPa・s以上、そして、好ましくは1,000mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<粘度の測定方法>
粘度は、B型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を繊維製品用洗浄剤組成物の粘度とする。
【0079】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、衣類、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)、マスクなどの繊維製品の洗浄に用いられる。これら以外の洗濯が可能な繊維製品も対象とすることができる。繊維製品の材質は、特に限定されず、例えば、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、ポリエステル、アクリル等の合成繊維、及びこれらの混紡繊維等が挙げられ、中でも、綿繊維、あるいは綿繊維と他の繊維との混紡繊維が好ましい。
【0080】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来のカロテノイド色素の脱色に優れることから、一般家庭のみならず医療や介護などに用いる繊維製品の殺菌に利用できる。本発明の繊維製品用洗浄剤組成物が対象とする大腸菌以外の細菌としては、例えばモラクセラ(Moraxella)属細菌、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シェードモナス(Pseudomonas)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、キュープリアビダス(Cupriavidus)属細菌、サイクロバクター(Psychorobacter)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エシェリキア(Escherichia)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、及びブルクホルデリア(Burkholderia)属細菌等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0081】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を配合してなる繊維製品用洗浄剤組成物であってよい。この繊維製品用洗浄剤組成物には、前記の各成分の含有量、及び各質量比を、各成分の配合量に置き換えて適用することができる。
【0082】
<繊維製品の洗浄方法>
本発明は、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物及び水を混合して得た洗浄液で繊維製品を洗浄し、その後該繊維製品を水ですすぐ、繊維製品の洗浄方法を提供する。
本発明の繊維製品の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
【0083】
本発明の洗浄液において、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物と水とを混合する際の水の量は、水1Lに対して、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物の総量が、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.4g以上、更に好ましくは0.8g以上、そして、好ましくは5g以下、より好ましくは4g以下、更に好ましくは3g以下の濃度となるように調製する。
【0084】
本発明の洗浄液において、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物と混合する水の硬度は、殺菌・脱色効果の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは0.5°dH以上、より好ましくは1°dH以上、更に好ましくは1.5°dH以上、そして、好ましくは10°dH以下、より好ましくは8°dH以下、更に好ましくは6°dH以下である。
また、前記洗浄液は、硬度が前記範囲であってよい。
【0085】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0086】
また、洗浄方法に用いる水、例えば洗浄液の調製に用いる水、すすぎに用いる水などの水の硬度も、本発明の繊維製品の洗浄方法で説明した硬度成分を含む水の硬度の好ましい範囲から選択できる。水の硬度の測定法も前記水の硬度と同様に測定できる。
【0087】
本発明の洗浄液中、(a)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、そして、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは20ppm以下である。
【0088】
本発明の洗浄液中、(b)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0089】
本発明の洗浄液中、(c)成分の含有量は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは10ppm以上、より好ましくは25ppm以上、更に好ましくは50ppm以上、そして、好ましくは200ppm以下、より好ましくは180ppm以下、更に好ましくは150ppm以下である。本発明の洗浄液において、(c)成分は、(a1)成分及び(a4)成分の塩の対イオンとして含有してもよいが、その量は、(c)成分の含有量に含まれる。
【0090】
本発明の洗浄液中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(b)/(c)、は、それぞれ、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物で記載した同様の範囲であることが好ましい。
【0091】
本発明の洗浄液の25℃におけるpHは、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは3.1以上、更に好ましくは3.2以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3.5以下である。
洗浄液のpHの測定法は本発明の洗浄剤組成物で記載のpHの測定法と同様に測定できる。
【0092】
近年、洗濯機が大型化し、繊維製品の質量(kg)と洗浄液の水量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち洗浄液の水量(リットル)/繊維製品の質量(kg)(以下、この比を浴比とする場合もある)の値が小さくなる傾向にある。浴比は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0093】
本発明の繊維製品の洗浄方法において、洗浄時間は、殺菌・脱色効果の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは1時間以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは10分以下である。
【0094】
本発明の繊維製品の洗浄方法は、ローラー等で繊維を送りながら、精錬に使用する液に浸漬する方法、回転式洗浄方法に適している。回転式洗浄方法とは、回転機器に固定されていない繊維製品が洗浄液と共に、回転軸の周りに回転する洗浄方法を意味する。回転式洗浄方法は回転式洗濯機により実施できる。従って、本発明では、殺菌・脱色効果の観点から、繊維製品の洗浄を、回転式洗濯機を用いて行うことが好ましい。回転式の洗濯機としては、具体的には、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用として市販されているものを使用することができる。
【0095】
本発明の繊維製品の洗浄方法は、繊維製品に付着した大腸菌を含む菌の殺菌効果に優れ、且つ繊維製品に付着した菌由来のカロテノイド色素の脱色に優れる。
すなわち、本発明は、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物及び水を混合して得た洗浄液で、繊維製品に付着した大腸菌を含む菌を殺菌する、繊維製品の殺菌方法を提供する。
本発明の繊維製品の洗浄方法において、対象とする細菌や繊維製品は、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物で記載した態様と同じである。
【実施例0096】
<配合成分>
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
<(a)成分>
・a1-1:N,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウムエチルサルフェート、(a11)成分
・a1-2:N-テトラデシル-N-エチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチルサルフェート、(a1)成分
・a2-1:テトラデシルアミン、(a2)成分
・a3-1:テトラデシルジメチルアミンオキシド、(a3)成分
・a4-1:オクテニジン塩酸塩
【0097】
<(a’)成分((a)成分の比較成分)>
・a’-1:ドデシルアミン
・a’-2:ドデシルジメチルアミンオキシド
【0098】
<(b)成分>
・b-1:1-ドデカノール、一般式(b1)中、R1bが炭素数12の直鎖アルキル基、nが0の化合物
・b-2:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、一般式(b1)中、R1bが炭素数12の直鎖アルキル基、nが3の化合物
・b-3:ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、一般式(b1)中、R1bが炭素数12の直鎖アルキル基、nが4の化合物
・b-4:ソフタノール33((株)日本触媒製)、一般式(b1)中、R1bが炭素数12~14の分岐鎖アルキル基、nが3の化合物
【0099】
<(b’)成分((b)成分の比較成分)>
・b’-1:ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル、一般式(b1)中、R1bが炭素数12の直鎖アルキル基、nが10の化合物
【0100】
<(c)成分>
・c-1:クエン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
・c-2:DL-りんご酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
・c-3:酢酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0101】
表1、2に示す繊維製品用洗浄剤組成物の調整方法は下記の通りである。200mL容量のガラス製ビーカーに長さ5cmのテフロン製スターラーピースを投入し重量を測定した。次に表1、2に示す配合でイオン交換水、(a)成分又は(a’)成分、(b)成分又は(b’)成分、及び(c)成分を投入し、ウォーターバスで50℃に加熱しながら、100r/minで10分攪拌し、各繊維製品用洗浄剤組成物を調製した。調製した各繊維製品用洗浄剤組成物の25℃におけるpHを表1、2に示す。
【0102】
[殺菌性試験]
使用試薬、使用菌株、及び使用器具は以下のものを用いた。
<使用試薬>
・SCD寒天培地「ニッスイ」(日本製薬(株)製)
・ニュートリエント寒天培地
・LP希釈液「ダイゴ」(塩谷エムエス(株)製)
・塩化カルシウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
・塩化マグネシウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
<使用菌株>
・Escherichia coli (NBRC3972)
<使用器具>
・1mLマイクロチューブ
・分光光度計(株式会社アペレ製PD-303S)
【0103】
菌液の調製
-80℃で保管した上記菌株の10%グリセロール懸濁液0.1mLをニュートリエント寒天培地に塗抹し、コンラージ棒で塗り広げ、37℃で18時間培養した。培養後の菌を白金耳で回収し、オートクレーブ滅菌蒸留水に懸濁させ、波長600nmにおける吸光度が0.004になるように調製した。
【0104】
100倍希釈された洗浄液の調製
表1、2に示す各繊維製品用洗浄剤組成物1gにオートクレーブ滅菌蒸留水を加え、全量を10gとし、10倍希釈された洗浄液を調製した。調製した10倍希釈された洗浄液10gにオートクレーブ滅菌蒸留水を加えて全量を100gとし、100倍希釈された洗浄液を調製した。100倍希釈された各洗浄液の25℃におけるpHを測定した。結果を表1、2に示す。
【0105】
硬度水の調製
オートクレーブ滅菌蒸留水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムを質量比で8:2の割合で投入し、硬度を30°dHに調製した硬度水を得た。
【0106】
(4)殺菌操作
1mLマイクロチューブにオートクレーブ滅菌蒸留水0.7mL、(3)で作成した30°dH硬度水を0.1mL、(2)で作成した100倍希釈された洗浄液を0.1mL、(1)で作成した菌液を0.1mL加え、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌後、10分間静置した。静置後、混合液を0.1mL取り出して、LP希釈液0.9mLに混合して、ボルテックスミキサーで10秒間攪拌し洗浄液を不活化した。SCD寒天培地を用いて、菌数を測定し、上記殺菌操作で洗浄液を混合しなかった場合の菌数を基準に、下記の式より殺菌活性値を見積もった。結果を表1、2に示す。殺菌活性値が大きい程、殺菌効果に優れていることがいえる。表1、2中、殺菌活性値が「>4」と表記しているのは、菌数の検出限界値を超えていることを意味する。
殺菌活性値=LogA-LogB
A:洗浄液なしの場合の菌数
B:洗浄液ありの場合の菌数
【0107】
[脱色試験]
実家庭より回収した、菌由来の色素でピンク色に染まった衣類(木綿タオル、染色試材、(株)谷頭商店製)を0.15gに裁断し、モデル布とした。5mLチューブに、オートクレーブ滅菌蒸留水2.4mL、殺菌試験と同様にして(3)で作成した30°dH硬度水0.3mL、(2)で作成した100倍希釈された洗浄液0.3mLを加え、前記したモデル布を投入し、チューブを水平に倒した状態で固定し、振盪培養器中で25℃・150rpmで10分間振盪し、洗い操作を行った。振盪後、モデル布を取り出し、オートクレーブ滅菌蒸留水2.7mL、30°dH硬度水0.3mLを加えた5mLチューブに移し替え、洗い操作と同様にして3分間濯ぎ操作を行った。洗い操作と濯ぎ操作をそれぞれ4回繰り返した後、モデル布を取り出して自然乾燥させた。木綿2003(谷頭商店製)を標準布として下記の評価基準をもとに、評価者4名で目視評価を行い、脱色スコアの平均値をとった。値が低いほど脱色に優れる。結果を表1、2に示す。
1点 標準布と同等の白さ
2点 脱色前よりもピンク色素が減少している
3点 脱色前と同程度のピンク色素が残存している
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】