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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071040
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】洗濯方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/152 20060101AFI20240517BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240517BHJP
   D06M 11/11 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
D06M13/152
C11D3/48
D06M11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181758
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 健太
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理文
【テーマコード(参考)】
4H003
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003DC02
4H003ED02
4H003FA21
4H003FA28
4H003FA34
4L031AB31
4L031BA12
4L031DA12
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA13
(57)【要約】
【課題】抗菌効果を有するフェノール系抗菌性化合物の繊維製品への残存量を向上できる洗濯方法を提供する。
【解決手段】繊維製品の洗浄と洗浄後の繊維製品のすすぎとを行う洗濯方法であって、
すすぎに供する繊維製品が(a)フェノール系抗菌性化合物〔以下、(a)成分という〕を含んでおり、
すすぎを、水を含むpH6.5以下のすすぎ液を前記繊維製品に接触させて行う、
洗濯方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の洗浄と洗浄後の繊維製品のすすぎとを行う洗濯方法であって、
すすぎに供する繊維製品が(a)フェノール系抗菌性化合物〔以下、(a)成分という〕を含んでおり、
すすぎを、水を含むpH6.5以下のすすぎ液を前記繊維製品に接触させて行う、
洗濯方法。
【請求項2】
繊維製品が、(a)成分を、洗浄前における乾燥状態の繊維製品1gあたり、3μg以上30μg以下含む、請求項1に記載の洗濯方法。
【請求項3】
繊維製品が、(a)成分を、洗浄前における乾燥状態の繊維製品1gあたり、5μg以上25μg以下含む、請求項1又は2に記載の洗濯方法。
【請求項4】
すすぎ液のpHが5.5以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の洗濯方法。
【請求項5】
(a)成分が、ダイクロサンである、請求項1~4の何れか1項に記載の洗濯方法。
【請求項6】
繊維製品が、化学繊維を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の洗濯方法。
【請求項7】
(a)成分を含む洗浄液で繊維製品を洗浄した後、(a)成分を含んだ状態の繊維製品をすすぎに供する、請求項1~5の何れか1項に記載の洗濯方法。
【請求項8】
フェノール系抗菌性化合物が付着した繊維製品に水を含む処理液を接触させて処理する際に、前記処理液のpHを6.5以下とする、繊維製品からのフェノール系抗菌性化合物の脱離抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の洗浄について、例えば、水媒体を用いた洗浄、すすぎを行う洗濯が知られている。近年、消費者の衛生意識の高まりから、身の周りの物を清潔に保つことに関心が高まっている。特に衣類やリネン類や布巾などのキッチン周りの繊維製品は菌が付着していると人体に影響を及ぼす可能性もあるため、繊維製品の殺菌、除菌、抗菌などを行うことが望まれている。また不快な悪臭と微生物の繁殖を関連づけた情報の流布に伴い、繊維製品の殺菌、除菌、抗菌などを行うことで悪臭を除くことにも関心が高くなっている。衣類等の繊維製品に付着している菌の増殖を抑制する手段として、第4級アンモニウム界面活性剤、フェノール系抗菌剤、ビグアニド化合物などを使用することが知られている。また、ダイクロサンなどの芳香族塩素系化合物も抗菌性や殺菌性を有する化合物として知られている。これらの化合物は、例えば、洗浄剤に配合して繊維製品の洗浄時に適用できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)成分:ヒドロキシカルボン酸、(B)成分:(b-1)特定の第4級アンモニウム塩、(b-2)フェノール系抗菌剤及び(b-3)ビグアニド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の抗菌剤、及び(C)成分:ノニオン界面活性剤、を含有し、前記(A)成分の含有量が、衣料用液体洗浄剤組成物の総質量に対し5質量%以上であり、25℃におけるpHが2~6である、衣料用液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、a)布地を、少なくとも1つの洗浄性界面活性剤を含有する水性洗浄液と接触させる工程であって、前記水性洗浄液が、7.0~9.0の範囲の第1のpHを特徴とする、工程と、b)前記水性洗浄液の前記pHを10.0~13.0の範囲の第2のpHまで上昇させ、その間、5分間~30分間の範囲の持続時間にわたって前記布地をこのような水性洗浄液と接触させ続ける、工程と、c)前記布地を、3.0~6.0の範囲の第3のpHを特徴とする水性すすぎ液と接触させる工程と、を含み、工程(b)の後かつ工程(c)の前に、前記水性洗浄液の前記pHを低下させて7.0~9.0の範囲の第4のpHに戻す工程(b1)を更に含み、前記工程(b1)において、1分間~60分間の範囲の持続時間にわたって前記布地を前記水性洗浄液と接触させる、布地を処理する方法が開示されており、更に、工程(c)中に5-クロロ-2-(4-クロロフェノキシ)フェノールを前記水性すすぎ液中に投入できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-188641号公報
【特許文献2】特表2022-511731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗菌効果を有するフェノール系抗菌性化合物の繊維製品への残存量を向上できる洗濯方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊維製品の洗浄と洗浄後の繊維製品のすすぎとを行う洗濯方法であって、
すすぎに供する繊維製品が(a)フェノール系抗菌性化合物〔以下、(a)成分という〕を含んでおり、
すすぎを、水を含むpH6.5以下のすすぎ液を前記繊維製品に接触させて行う、
洗濯方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗菌効果を有するフェノール系抗菌性化合物の繊維製品への残存量を向上できる洗濯方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の洗濯方法では、繊維製品の洗浄と洗浄後の繊維製品のすすぎとを所定条件で行う。
繊維製品の洗浄は、公知の洗濯方法に準ずることができる。
例えば、界面活性剤、ビルダーなどを含有する洗浄剤から調製した洗浄液を繊維製品に接触させて洗浄することができる。
より詳細には、例えば、界面活性剤、ビルダーなどを含有する洗浄剤と繊維製品と水とを混合し、好ましくは繊維製品に外力を加えて、洗浄する方法が挙げられる。また、洗浄剤を予め水に溶解した洗浄液に繊維製品を浸漬する、洗浄剤を繊維製品へ直接塗布する、などの方法で洗浄剤と繊維製品とを接触させて、好ましくは一定時間放置し、その後、通常の洗濯を行うこともできる。
洗浄、好ましくは外力を負荷した洗浄は、通常1回行う。
繊維製品に外力を加える方法は、例えば洗濯機により機械力を加える方法でもよく、もみ洗い、押し洗い、たたき洗い、つかみ洗い、つまみ洗い、又は振り洗い等の手洗いによる方法でもよい。
通常、洗濯処理は、洗浄処理を行った後にすすぎ処理を含む。一般に、すすぎ処理は、洗浄剤を含まない液体媒体、好ましくは水を供給し、好ましくは繊維製品に外力を加えて、繊維製品に残留している界面活性剤などの洗浄剤成分を取り除く。すすぎに用いる液体媒体には柔軟剤などが含まれても良い。本発明でもすすぎは、pH6.5以下のすすぎ液を用いる以外は、公知のすすぎ方法に準じて行うことができる。また、すすぎ処理は1回でもよく、2回以上行ってもよい。
本発明において、以下「繊維残留性」とは、特記しない限り、(a)成分のフェノール系抗菌性化合物の繊維への残留性の向上を意味する。
【0010】
洗浄に用いる洗浄剤及び洗浄液は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、繊維製品用の洗浄剤又は柔軟剤などの用途に使用することが知られている成分、例えば、下記の(1)~(16)の成分を含有することができる。洗浄剤や洗浄液に用いた成分は、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、すすぎ液中に混入してもよい。
【0011】
(1)界面活性剤
界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、特に限定されないが(1-1)陰イオン界面活性剤(以下、(1-1)成分ともいう)、(1-2)陽イオン界面活性剤(以下、(1-2)成分ともいう)、(1-3)非イオン界面活性剤(以下、(1-3)成分ともいう)、及び(1-4)両性界面活性剤(以下、(1-4)成分ともいう)から選ばれる1種以上が挙げられる。本発明では、界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0012】
(1-1)成分の陰イオン界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、アルキル硫酸エステル、アルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルケニルベンゼンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、内部オレフィンスルホン酸、アルキル又はジアルキルスルホコハク酸、アルケニル又はジアルケニルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はポリオキシアルキレンジアルキルスルホコハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
陰イオン界面活性剤の塩は、繊維残留性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0013】
(1-2)成分の陽イオン界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、例えば、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【0014】
【化1】
【0015】
〔式中、R1aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基であり、R2aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R3a及びR4aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、X-は炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、又はハロゲン化物イオンである。〕
【0016】
前記一般式中、R1aの鎖状炭化水素基の炭素数は、繊維残留性の観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
【0017】
2aは、炭素数8以上24以下の鎖式炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、R2aの鎖状炭化水素基の炭素数は、繊維残留性の観点から、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
2aの鎖式炭化水素基は、繊維残留性の観点から、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0018】
3a、R4aは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基などの炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基である。
【0019】
1a、R2aの鎖状炭化水素基の具体例は、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基であり、繊維残留性の観点から、ノニル基、デシル基が好ましく、デシル基が好ましい。
【0020】
炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基の具体例は、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。XはCHSO 、CHCHSO 、又はハロゲン化物イオンである。
【0021】
前記一般式で表される化合物のより具体的な化合物は、繊維残留性の観点から、N-エチル-N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジノニル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム塩、N,N-ジオクチル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、N,N-ジノニル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩、及びN,N-ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられ、モノ長鎖型アンモニウム塩とジ長鎖型アンモニウム塩を併用することもできる。これらの塩となる対イオンは、CHSO 、CHCHSO 、又はクロルイオン等のハロゲン化物イオンである。
【0022】
(1-2)成分の陽イオン界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、ビスピリジニウム化合物も挙げられる。
ビスピリジニウム化合物としては、例えば、英国特許第1533952号明細書、特開昭52-105228号公報、国際公開第2014/100807号に記載されているものなどが挙げられる。ビスピリジニウム化合物としては、具体的には、繊維残留性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
〔式中、Yは、4~18個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレン基であり、R1bは、それぞれ、6~18個の炭素原子を有するアルキル基または5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、またはハロゲン置換の有無にかかわらずフェニル基を表し、Aは、陰イオンである。qは1又は2、rは1又は2であり、q×r=2である。〕
【0025】
Aは、一価又は二価の陰イオンであり、例えば、塩化物、臭化物、リン酸塩、オルトケイ酸塩、有機酸、例えば式R2b-COO-を有する有機酸やアルキル(炭素数1以上40以下)スルホン酸、などの化合物からの陰イオンであり得る。ここで、R2bは、水素、ヒドロキシル、または炭素数1以上40以下のアルキル基である。
【0026】
繊維残留性の観点から、Aの陰イオンに相当する有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、リン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、グリシルリジン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ホスホン酸、トリフルオロ酢酸、シアノ酢酸、4-シアノ安息香酸、2-クロロ安息香酸、2-ニトロ安息香酸、フェノキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0027】
繊維残留性の観点から、好ましいビスピリジニウム化合物は、一般式(2)の化合物、更にオクテニジン二塩酸塩(一般式(2)中、R1bがそれぞれn-オクチル基、Yがn-デセニル基、AがCl、qが1、rが2の化合物、CAS番号70775-75-6)である。
【0028】
(1-3)成分の非イオン界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0029】
(1-4)成分の両性界面活性剤としては、繊維残留性の観点から、ベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。(1-4)成分は、具体的には、繊維残留性の観点から、スルホベタイン、カルボベタイン及びアミンオキサイドから選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。
【0030】
スルホベタインとしては、繊維残留性の観点から、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上18以下、のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが挙げられる。
【0031】
カルボベタインとしては、繊維残留性の観点から、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインや下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化3】
【0033】
〔式中、R1cは炭素数7以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2cはプロピレン基を示し、R3c及びR4cは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。〕
【0034】
アミンオキサイドとしては、繊維残留性の観点から、下記一般式の化合物が好適である。
【0035】
【化4】
【0036】
〔式中、R1dは炭素数7以上22以下の炭化水素基、繊維残留性の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R2d及びR3dは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。m及びpは、m=0かつp=0又はm=1かつp=1を示す。〕
【0037】
(2)pH調整剤
繊維残留性の観点から、pH調整剤として酸剤又はアルカリ剤を含有することができる。
酸剤は、有機酸、及び無機酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
有機酸としては、繊維残留性の観点から、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、サリチル酸、フタル酸、安息香酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、及びアコニット酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
無機酸としては、繊維残留性の観点から、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、及び炭酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
アルカリ剤は、繊維残留性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの無機アルカリ剤、窒素原子に結合する基のうち、1つ以上、3つ以下が炭素数2以上、4以下のアルカノール基であり、残りが炭素数1以上、4以下のアルキル基又は水素原子であるアルカノールアミンを挙げることができる。繊維残留性の観点から、このうちアルカノール基はヒドロキシアルキル基、更にヒドロキシエチル基であるものが好ましい。繊維残留性の観点から、アルカノール基以外は水素原子、又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。アルカノールアミンとしては、繊維残留性の観点から、2-アミノエタノール、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0038】
(3)キレート剤
繊維残留性の観点から、キレート剤の具体例として、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸又はこれらの塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩等が挙げられる。
【0039】
(4)再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤
繊維残留性の観点から、再汚染防止剤及び/又はポリマー系分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0040】
(5)漂白剤
繊維残留性の観点から、漂白剤としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
(6)漂白活性化剤
繊維残留性の観点から、漂白活性化剤としては、テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等が挙げられる。
【0042】
(7)酵素
繊維残留性の観点から、酵素としては、アミラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、プルラナーゼ、フラクトフラノシダーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0043】
(8)蛍光染料
繊維残留性の観点から、蛍光染料としては、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料が挙げられる。
【0044】
(9)酸化防止剤
繊維残留性の観点から、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(慣用名:BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(慣用名;BHA)、ジスチレン化クレゾール、アスコルビン酸(慣用名:ビタミンC)、トコフェノール(慣用名:ビタミンE)、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)等の公知の抗酸化化合物又は亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の公知の無機塩が挙げられる。
【0045】
(10)繊維残留性の観点から、色素、香料、(a)成分以外の抗菌防腐剤、紫外線防止剤、シリコーン等の消泡剤
【0046】
(11)水酸基を有する有機溶剤
繊維残留性の観点から、水酸基を有する有機溶剤としては、以下の(11-1)成分~(11-6)成分から選ばれる1種以上の化合物が用いられる。
【0047】
(11-1)成分:炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する1価のアルコール
(11-1)成分として、繊維残留性の観点から、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノールから選ばれる1価のアルコールが挙げられる。
【0048】
(11-2)成分:炭素数2以上6以下の2価以上6価以下のアルコール
(11-2)成分として、繊維残留性の観点から、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びグリセリンから選ばれる2価又は3価のアルコールが挙げられる。2-メチル-2,4-ペンタンジオールは、ヘキシレングリコールとも称される。
【0049】
(11-3)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位を含有するポリアルキレングリコール
(11-3)成分として、繊維残留性の観点から、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量400以上4000以下のポリエチレングリコール及び重量平均分子量400以上4000以下のポリプロピレングリコールから選ばれるポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0050】
(11-4)成分:炭素数2以上4以下のアルキレングリコール単位と、炭素数1以上4以下のアルキル基とを有する、(モノ又はポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテル
(11-4)成分として、繊維残留性の観点から、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール及び1-エトキシ-2-プロパノールから選ばれる化合物が挙げられる。
【0051】
(11-5)成分:炭素数1以上8以下のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル
(11-5)成分として、繊維残留性の観点から、例えば1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1,3-ジメチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、1,3-ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、1-ペンチルグリセリルエーテル、2-ペンチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル及び2-エチルヘキシルグリセリルエーテルから選ばれるアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0052】
(11-6)成分:炭素数2又は3のアルキレングリコール単位を有する(モノ又はポリ)アルキレングリコールの芳香族アルキルエーテル
(11-6)成分として、繊維残留性の観点から、例えば2-フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2-ベンジルオキシエタノール及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルから選ばれる化合物が挙げられる。
【0053】
前記(11-4)成分、(11-6)成分において「(モノ又はポリ)アルキレングリコール」なる用語は、モノアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールを意味する。また、「ポリアルキレングリコール」とは、アルキレングリコール単位を2個以上9個以下の量で含有することを意味する。
【0054】
(12)ハイドロトロープ剤
繊維残留性の観点から、ハイドロトロープ剤は、陰イオン性基を有する有機化合物であり、更にはメチル基、エチル基又はプロピル基から選ばれるアルキル基を1つ又は2つ含み、スルホン酸基又はカルボン酸基を1つ有するアルキルベンゼンカルボン酸又はアルキルベンゼンスルホン酸又はそれらの塩、並びに安息香酸又はその塩を挙げることができる。繊維残留性の観点から、より具体的にはパラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸であり、塩はアルカリ金属塩が好ましい。
【0055】
(13)香料
繊維残留性の観点から、香料は、マスキング効果を有し、場合によっては、それ自体が消臭性能を有する基材であることもある。
香料としては、繊維残留性の観点から、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料及び特表平10-507793号公報記載の香料を使用することができる。また、特開2014-213072号公報に記載の賦香剤の技術を用いることができ、ケイ酸エステル香料やマイクロカプセル香料も使用することができる。
【0056】
(14)消臭基材
繊維残留性の観点から、消臭基材としては、特開2018-29836号公報に記載のポリヒドロキシアミン化合物が挙げられる。
ポリヒドロキシアミン化合物としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、及びこれらと塩酸等の無機酸等が挙げられる。
【0057】
(15)柔軟基剤
繊維残留性の観点から、柔軟剤基剤は、下記一般式の4級アンモニウム塩化合物が好適である。
【0058】
【化5】
【0059】
〔式中、R1e、R2e、R3eは、それぞれ独立して、炭素数16以上22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基)、又は水素原子である。但し、R1e、R2e、R3eの少なくとも1つはアシル基である。R4eは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Zは陰イオンである。〕
【0060】
柔軟基剤は、前記一般式の4級アンモニウム塩化合物の混合物であってよい。そのような混合物としては、例えば、前記一般式中のR4eが炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、Zが有機又は無機の陰イオンである4級アンモニウム塩の混合物であって、R1eが炭素数16以上22以下の脂肪酸からOHを除いた脂肪酸残基(x)であり、R2e及びR3eが水素原子である化合物(e1)と、R1e及びR2eが前記脂肪酸残基(x)であり、R3eが水素原子である化合物(e2)と、R1e、R2e及びR3eが前記脂肪酸残基(x)である化合物(e3)の混合物が挙げられる。
【0061】
1e、R2e、R3e、更に前記脂肪酸残基(x)としては、繊維残留性の観点から、炭素数16以上、22以下、好ましくは炭素数16以上、18以下の脂肪酸からOH(水酸基)を除いた残基が好ましい。脂肪酸の具体例としては、繊維残留性の観点から、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、パーム油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
繊維残留性の観点から、一般式中、R4eはメチル基又はエチル基が好ましい。
繊維残留性の観点から、一般式中、Zは、有機又は無機の陰イオンであり、クロロイオン等のハロゲンイオン、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上、18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましい。繊維残留性の観点から、本発明においては、より好ましくは炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオンであり、更に好ましくはメチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンである。
一般式の4級アンモニウム塩化合物は、脂肪酸とトリエタノールアミンとを脱水エステル化反応させる方法、又は脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とトリエタノールアミンとをエステル交換反応させる方法により得られたエステル化反応物を、アルキル化剤で4級化反応させることにより得ることができる。
【0062】
(16)柔軟補助剤
繊維残留性の観点から、柔軟補助剤としては、グリセリン、ソルビトール及びペンタエリスルトール等の多価アルコール脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0063】
本発明の洗濯方法では、すすぎに供する繊維製品は(a)成分を含んでいる。
本発明は、(a)成分を含む繊維製品をすすぐ場合に、すすぎを行うすすぎ液がpH6.5以下の水であれば、繊維製品に付着した(a)成分が繊維製品から流失しにくくなり、繊維製品での(a)成分の残存量を増やせることを見いだしたものである。本発明では、例えば(a)成分を含有する洗浄液で繊維製品を洗浄した後、(a)成分を含んだ状態の繊維製品をすすぎに供することができる。通常、洗浄後の繊維製品は、脱水して洗浄液を分離するが、脱水後、すすぎを行う前の繊維製品には(a)成分を含む洗浄液が保持されており、本発明では、そのような状態の繊維製品をすすぎに供することができる。従って、本発明では、(a)成分を含有する洗浄液で繊維製品を洗浄することが好ましい。
【0064】
(a)成分としては、繊維残留性の観点から、フェノール系抗菌性化合物が用いられる。フェノール系抗菌性化合物は、フェノール構造を有する抗菌性化合物である。
(a)成分としては、具体的には、繊維残留性の観点から、フェノール、クレゾール、チモール、カルバクロール、オイゲノール、パラベン、イソプロピルメチルフェノール(慣用名:IPMP)、クロロキシレノール(慣用名:PCMX)o-ベンジル-p-クロロフェノール(慣用名:クロロフェン)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、ベンジルクロロフェノールなどが挙げられる。
【0065】
(a)成分は、繊維残留性の観点から、ハロゲン原子を有する化合物が好ましく、ダイクロサン、トリクロサン等のクロロジフェニルエーテル系抗菌性化合物がより好ましく、ダイクロサンが更に好ましい。
【0066】
(a)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明では、すすぎは、水を含むpH6.5以下のすすぎ液を、(a)成分を含む繊維製品に接触させて行う。すすぎ液の原料には、イオン交換水を用いても良く、水道水等の硬度成分を含む水を用いても良い。硬度成分を含む水を用いる場合の水の硬度は、繊維残留性の観点から、例えば0.5°dH以上、より好ましくは1°dH以上、更に好ましくは2°dH以上、より更に好ましくは3°dH以上、そして、好ましくは20°dH以下、より好ましくは10°dH以下、更に好ましくは8°dH以下、より更に好ましくは6°dH以下である。すすぎ液がこの範囲の硬度を有することも好ましい。ドイツ硬度の測定は、以下の方法で行う。
【0068】
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/L EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/L水溶液(滴定用溶液、0.01MEDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定方法〕
まず、試料(原料の水又はすすぎ液)20mLをホールピペットでコニカルビーカーに採取し、硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。更に、UniversalBT指示薬を0.5mL添加し、添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/L EDTA・2Na溶液を滴下し、試料が青色に変色した時点を滴定の終点とする。EDTA・2Na溶液の滴定量T(mL)より、試料中の全硬度を下記の算出式で求める。
硬度(°DH)=(T×0.01×F×56.0774×100)/A
T:0.01mol/L EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料の容量)
F:0.01mol/L EDTA・2Na溶液のファクター
【0069】
本発明では、すすぎ液のpHは、繊維残留性の観点から、6.5以下であり、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下、そして、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上である。すすぎ液は、繊維残留性の観点から、繊維製品との接触時、例えばすすぎの開始時にpHが6.5以下であればよく、すすぎ中にpHが変動してもよい。なお、このpHは、すすぎを行う際の温度におけるpHである。pHの測定は、以下の方法で行う。
【0070】
〔pHの測定方法〕
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーターF-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプル(すすぎ液)はすすぎを行う際の温度に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0071】
すすぎ液のpHは、水に前述のpH調整剤を配合して調整してもよい。
【0072】
本発明では、(a)成分の繊維製品への残存量を向上させる観点から、繊維製品が、(a)成分を、洗浄前における乾燥状態の繊維製品1gあたり、好ましくは3μg以上、より好ましくは5μg以上、そして、好ましくは30μg以下、より好ましくは25μg以下、更に好ましくは20μg以下、より更に好ましくは15μg以下含む。
ここで、(a)成分の量は、洗浄前における乾燥状態の繊維製品1gあたりに接触する(a)成分の量として計算してもよい。例えば、(a)成分を含む洗浄液で繊維製品を洗浄する場合、繊維製品1gあたりに使用される前記洗浄液の量から、(a)成分の量を計算してもよい。
本発明では、洗浄前における乾燥状態の繊維製品1gあたり、3μg以上30μg以下の割合で(a)成分を含有する洗浄液で繊維製品を洗浄することができる。
【0073】
繊維製品としては、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた、織物(布帛)、編物、不織布等の布地及び前布地を用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット衣服、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品が挙げられる。
繊維製品を構成する繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。また、繊維は、天然繊維、化学繊維、これらの混合のいずれでもよい。本発明による(a)成分の残存効果がより発現しやすいことから、繊維製品は、化学繊維を含むことが好ましい。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイト繊維、岩石繊維(ロックファイバー)、鉱滓繊維(スラッグファイバー)、金属繊維(金糸、銀糸、スチール繊維)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
【0074】
すすぎ液の温度は、繊維残留性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは3℃以上、更に好ましくは5℃以上、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下、より更に好ましくは40℃以下である。
【0075】
すすぎの時間は、繊維残留性の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、より更に好ましくは15分以下、より更に好ましくは10分以下である。
【0076】
すすぎは、ためすすぎ、流水すすぎ、これらの組み合わせなどにより行うことができる。
すすぎ液と(a)成分を含む繊維製品との接触は、例えば、予め調製した、pH6.5以下のすすぎ液を前記繊維製品に供給して行うことができる。
また、(a)成分及びpH調整剤を洗浄剤に配合して、洗浄後の繊維製品中に(a)成分及びpH調整剤が残留するように処理し、洗浄後の繊維製品に水(pHは6.5以下でもよいし、6.5より大きくてもよい)を供給してそのpHを6.5以下にして、pHが6.5以下のすすぎ液が繊維製品と接触するようにして、本発明のすすぎを行ってもよい。一般に、すすぎに水道水などの生活用水を用いる場合は、pHは中性近傍であるので、繊維製品がpH調整剤として酸剤を含有すると、酸剤がpH低下剤として機能するので、pH6.5以下のすすぎ液を簡易に得ることができる。すなわち、洗浄液が酸性で、(a)成分を含んだ状態の繊維製品にpH6.5を超える水を供給してpHが6.5以下になるのであれば、事前にpH6.5以下のすすぎ水を調製する手順を省いて本発明のすすぎを行うことができる。
【0077】
本発明の洗濯方法は、例えば、家庭用、業務用などの洗濯機で行うことができる。洗濯機での洗浄では、洗浄剤で繊維製品を洗浄した後、必要により脱水を行った後、すすぎが行われる。その際にpH6.5以下のすすぎ液を、(a)成分を含む繊維製品と接触させてすすぎを行うことで本発明の洗濯方法を行うことができる。(a)成分は、(a)成分を洗浄剤又は洗浄液に配合する、すすぎ前の繊維製品に(a)成分を供給する、などの方法で、すすぎに供する繊維製品中に含有させることができる。
なお、本発明では、すすぎ液が、洗浄剤及び洗浄液で述べた成分を含有していてもよい。
【0078】
本発明の洗濯方法は、繊維残留性の観点から、すすぎの際に、回転式洗濯機を用いることも可能である。回転式の洗濯機としては、繊維残留性の観点から、具体的には、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用として市販されているものを使用することができる。本発明では、1回の洗濯に使用する水の量がより低減できる点で、ドラム式洗濯機を用いることが好ましい。
【0079】
本発明により、フェノール系抗菌性化合物〔(a)成分〕が付着した繊維製品に水を含む処理液を接触させて処理する際に、前記処理液のpHを6.5以下とする、繊維製品からのフェノール系抗菌性化合物の脱離抑制方法が提供される。この脱離抑制方法には、本発明の洗濯方法で述べた事項を適宜適用することができる。この脱離抑制方法は、本発明の洗濯方法に取り込むことができるほか、例えば、抗菌性を有する繊維製品を製造する方法などに取り込むことができる。
【実施例0080】
(1)pHの異なるすすぎ液の調製
和歌山市水道水(pH7.5)に0.1M塩酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、pHを25℃で6.5、6.0、5.5、5.0に調整し、すすぎ液とした。
pH測定にはpHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター D-71)を、あらかじめpH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)で校正し使用した。
【0081】
(2)試験布の調製
木綿布1.7kg(木綿2003(谷頭商店製))を、全自動洗濯機(National製 NA-F702P)の標準コースで2回累積洗濯(洗浄時にエマルゲン108(花王(株)製)4.7g、水量47L、洗い9分・すすぎ2回・脱水3分)後、水のみで3回累積洗濯(水量47L、洗い9分・すすぎ2回・脱水3分)を行い、25℃で24時間乾燥させた。その後、6cm×6cmの大きさに裁断し、木綿の試験布とした。
ポリエステル布(ポリエステルファイユ(谷頭商店製))を、上記と同様に処理し、化繊の試験布とした。
【0082】
(3)ダイクロサンの残留試験
(a)成分であるダイクロサンを含有する抗菌剤(Tinosan HP100、BASF社製)を、ダイクロサン濃度が3、15、30μg/mLとなるように、エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)で希釈し、試験布1枚(0.4g)に対し0.4mL塗布し、1時間乾燥した。乾燥後の試験布5枚(2g)とすすぎ液40gをスクリュー管No.8(株式会社マルエム製)に投入し、往復振とう機(TAITEC社製、STORONGSHAKER SA-2DW)を用いて、25℃で300rpm10分間すすぎ処理を行った。試験布に塗布したダイクロサン量は、すすぎに供する試験布が含むダイクロサンの量に相当する。すすぎ処理の終了後、シリンジ50mL(テルモ株式会社製)を使用し脱水処理し24時間乾燥させた。
任意に選択した乾燥後の試験布2枚を、スクリュー管No.8に封入して試験布の質量を測定した。そこに50mLのメタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加え、超音波洗浄機で30分間、超音波処理した。その後、上清をPTFEフィルター(Pall社製、孔径:0.45μm)によりフィルター処理することで測定用溶液を得た。次に、TinosanHP100をメタノールで希釈しダイクロサン濃度が0.015μg/mL、0.03μg/mL、0.15μg/mL、0.3μg/mL、1.5μg/mLの検量線用溶液を調製した。測定用溶液中のダイクロサン量を液体クロマトグラフ質量分析装置(以下、LCMS装置と省略)で定量し、検量線用溶液から試験布へのダイクロサン残留量を求めた。
・LCMS装置:(株)島津製作所製 LCMS2020
・溶離液A:10mmol/L 酢酸アンモニウムの蒸留水を用いた水溶液
溶離液B:10mmol/L 酢酸アンモニウムのメタノール溶液
・グラジエント条件: 溶離液A/B=1:1(0分)→溶離液B(2-5分)→溶離液A/溶離液B=1/1(5.1分-8分)、流量:0.6mL/min、サンプル注入量5μL、カラム温度40℃
試験布へのダイクロサンの残留率を下記の式より求めた。結果を表1に示す。
ダイクロサンの残留率(%)=100×(2枚の試験布に残留したダイクロサンの量(μg/試験布1g))/(2枚の試験布へ塗布したダイクロサンの量(μg/試験布1g))
【0083】
【表1】
【0084】
表1の結果から、実施例のように、(a)成分(ダイクロサン)が付着した繊維製品にpH6.5以下のすすぎ液を繊維製品に接触させてすすぎを行うことで、(a)成分の残留率が向上することがわかる。また、実施例において、(a)成分の残留率は化繊でより高くなっており、本発明の方法が、化繊でより効果的であることがわかる。なお、(a)成分を洗浄剤に配合して洗浄した後にすすぐ場合も、(a)成分が付着した繊維製品にpH6.5以下のすすぎ液が接触すれば、表1の実施例と同様の傾向となると考えられる。そのため、(a)成分を洗浄剤に配合して行う洗濯方法でも、pH6.5以下のすすぎ液を(a)成分を含む繊維製品に接触させてすすぎを行うことで、同様に本発明の効果が得られる。(a)成分の残留率が向上することは、抗菌効果の向上につながるものと考えられる。