(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071046
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】成形品質の評価方法、成形品の検査方法、成形品質の評価装置及び成形品の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20240517BHJP
G01N 27/24 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01N27/22 C
G01N27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181772
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】松山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA11
2G060AD05
2G060AE01
2G060AE24
2G060AF03
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG11
2G060EA07
2G060HA02
2G060HC15
2G060KA14
(57)【要約】
【課題】成形品の成形品質に影響を与えることなく、成形品質を好適に評価する。
【解決手段】樹脂を含む成形品の成形品質を評価する成形品質の評価方法において、前記成形品の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップと、前記成形品の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップと、前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップと、前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む成形品の成形品質を評価する成形品質の評価方法において、
前記成形品の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップと、
前記成形品の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップと、
前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップと、
前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップと、を備える成形品質の評価方法。
【請求項2】
前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップと、
前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップと、をさらに備え、
前記成形品質の評価を実行するステップでは、前記健全評価値及び前記不良評価値と前記計測評価値とに基づいて、前記成形品質の評価を実行する請求項1に記載の成形品質の評価方法。
【請求項3】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記基準状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋反応前の状態、または、前記熱硬化性樹脂の架橋開始時の状態であり、
前記成形状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋開始後に所定の時間が経過した状態である請求項1に記載の成形品質の評価方法。
【請求項4】
前記基準状態は、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の状態であり、
前記成形状態は、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度以上となる温度の状態である請求項3に記載の成形品質の評価方法。
【請求項5】
前記キャパシタンス値は、所定の測定周波数となる交流信号を印加することで取得しており、
前記測定周波数は、10Hz以上10kHzよりも小さい帯域となっている請求項3に記載の成形品質の評価方法。
【請求項6】
前記成形品は、第1の被接着体と第2の被接着体とを接着剤を介して接着した接着体であり、
前記成形品質は、前記接着剤の接着品質である請求項1に記載の成形品質の評価方法。
【請求項7】
前記成形品質の評価を実行するステップでは、
前記接着品質として、ウィークボンド、キッシングボンド、ポロシティボイドを含む接着不良の発生を評価する請求項6に記載の成形品質の評価方法。
【請求項8】
前記基準値を取得するステップ及び前記計測値を取得するステップでは、
前記成形品の複数の箇所においてキャパシタンス値を計測し、
前記計測評価値を導出するステップでは、
前記成形品の複数の箇所において前記計測評価値を導出し、
前記成形品質の評価を実行するステップでは、
複数の前記計測評価値に基づいて、前記成形品における前記成形品質の分布を評価する請求項1に記載の成形品質の評価方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の成形品質の評価方法の評価結果に基づいて、成形品の成形品質を検査する成形品の検査方法であって、
前記成形品の要求強度を満足する強度評価値が予め取得されており、
前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップと、
前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップと、
前記成形品質の評価方法において導出された前記計測評価値を取得するステップと、
取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップと、を備え、
前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される成形品の検査方法。
【請求項10】
樹脂を含む成形品の成形品質を評価する成形品質の評価装置において、
前記成形品にキャパシタを形成するために配置される一対の電極と、
前記一対の電極間におけるキャパシタンス値を計測すると共に、計測した前記キャパシタンス値に基づいて前記成形品の前記成形品質の評価を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記成形品の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップと、
前記成形品の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップと、
前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップと、
前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップと、を実行する成形品質の評価装置。
【請求項11】
前記一対の電極は、金属薄膜である請求項10に記載の成形品質の評価装置。
【請求項12】
前記一対の電極は、前記成形品の複数の箇所に設けられる請求項10に記載の成形品質の評価装置。
【請求項13】
前記成形品を内部に収容するバギングフィルムと、
前記一対の電極間を絶縁状態に保つ絶縁スペーサと、をさらに備え、
前記一対の電極は、前記バギングフィルムの内側に形成された一対の電極層である請求項10に記載の成形品質の評価装置。
【請求項14】
前記成形品を内部に収容するバギングフィルムを、さらに備え、
前記一対の電極は、前記バギングフィルムの外側に設けられる請求項10に記載の成形品質の評価装置。
【請求項15】
前記一対の電極は、前記成形品の内部に設けられる金属メッシュと、前記成形品の成形時に用いられる金属治具との少なくとも一方を含む請求項10に記載の成形品質の評価装置。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか1項に記載の成形品質の評価装置の評価結果に基づいて、成形品の成形品質を検査する成形品の検査装置であって、
前記成形品の要求強度を満足する強度評価値を記憶する記憶部と、
前記強度評価値に基づいて、前記成形品が前記要求強度を満足するか否かを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップと、
前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップと、
前記成形品質の評価装置において導出された前記計測評価値を取得するステップと、
取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップと、を実行し、
前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される成形品の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形品質の評価方法、成形品の検査方法、成形品質の評価装置及び成形品の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウィークボンド(WeakBond)接着を非破壊的な手法で検査して接合部の接合状態を評価する接合部評価方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この接合部評価方法では、接合部に交流信号を印加し、交流信号の周波数を変化させて測定することにより得られた電流値及び電圧値から、所定の電気特性に関する評価値を導出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の接合部評価方法では、印加する交流信号の周波数が高周波であるため、接合部の形状の差異からくる誤差因子が大きく、例えば、形状誤差として、接合部の厚さが数十μm異なったり、形状寸法がmm単位で変化したりするだけで、信号対雑音比(S/N)の悪影響により適切な評価値を検出することが困難となる。また、他の評価方法として、成形後の接合部を加熱して成形品質を評価することも検討されているが、この場合、接合部の成形品質に影響を与える恐れがある。
【0005】
そこで、本開示は、成形品の成形品質に影響を与えることなく、成形品質を好適に評価することができる成形品質の評価方法、成形品の検査方法、成形品質の評価装置及び成形品の検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の成形品質の評価方法は、樹脂を含む成形品の成形品質を評価する成形品質の評価方法において、前記成形品の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップと、前記成形品の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップと、前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップと、前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップと、を備える。
【0007】
本開示の成形品の検査方法は、上記の成形品質の評価方法の評価結果に基づいて、成形品の成形品質を検査する成形品の検査方法であって、前記成形品の要求強度を満足する強度評価値が予め取得されており、前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップと、前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップと、前記成形品質の評価方法において導出された前記計測評価値を取得するステップと、取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップと、を備え、前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される。
【0008】
本開示の成形品質の評価装置は、樹脂を含む成形品の成形品質を評価する成形品質の評価装置において、前記成形品にキャパシタを形成するために配置される一対の電極と、前記一対の電極間におけるキャパシタンス値を計測すると共に、計測した前記キャパシタンス値に基づいて前記成形品の前記成形品質の評価を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記成形品の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップと、前記成形品の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップと、前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップと、前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップと、を実行する。
【0009】
本開示の成形品の検査装置は、上記の成形品質の評価装置の評価結果に基づいて、成形品の成形品質を検査する成形品の検査装置であって、前記成形品の要求強度を満足する強度評価値を記憶する記憶部と、前記強度評価値に基づいて、前記成形品が前記要求強度を満足するか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップと、前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップと、前記成形品質の評価装置において導出された前記計測評価値を取得するステップと、取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップと、を実行し、前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、成形品の成形品質に影響を与えることなく、成形品質を好適に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る成形品質の評価方法に関するフローチャートの一例である。
【
図3】
図3は、時間に応じて変化する評価値に関するグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る成形品質の評価方法に関するフローチャートの一例である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る成形品の検査方法に関するフローチャートの一例である。
【
図6】
図6は、測定周波数に応じて変化する、健全評価値に対する不良評価値のグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る成形品の検査装置の電極の配置に関する説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
【
図10】
図10は、実施形態5に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
【
図11】
図11は、実施形態7に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0013】
[実施形態1]
実施形態1に係る成形品質の評価方法、成形品1の検査方法及び成形品1の検査装置10は、成形品1の接着部8の接着状態を計測して評価する手法及び装置となっている。なお、実施形態1では、成形品1の検査装置10が、成形品質の評価を行う評価装置としても機能している。
【0014】
図1は、実施形態1に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。
図2及び
図4は、実施形態1に係る成形品質の評価方法に関するフローチャートの一例である。
図3は、時間に応じて変化する評価値に関するグラフである。
図5は、実施形態1に係る成形品の検査方法に関するフローチャートの一例である。先ず、成形品質の評価方法、成形品1の検査方法及び成形品1の検査装置10の説明に先立ち、成形品1について説明する。
【0015】
(成形品)
成形品1は、第1の被接着体3と第2の被接着体4とを接着剤5を介して接着した接着体であり、第1の被接着体3と第2の被接着体4との接着部分における部位が接着部8となっている。成形品1としては、例えば、接着によって成形される一般的な部品の他、接着によって補修される補修部位であってもよい。また、実施形態1では、接着部8を有する成形品1に適用して説明するが、接着部8を有さない、樹脂成形される樹脂成形品であってもよい。
【0016】
第1の被接着体3及び第2の被接着体4のそれぞれは、複合材となっており、炭素繊維と樹脂とを含む複合材層を積層した積層体となっている。積層体の積層方向は、第1の被接着体3と第2の被接着体4とが対向する対向方向となっている。なお、第1の被接着体3及び第2の被接着体4は、炭素繊維を用いた複合材としたが、特に限定されず、何れの強化繊維を用いてもよい。また、樹脂としては、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。さらに、実施形態1では、第1の被接着体3及び第2の被接着体4を複合材同士としたが、樹脂材同士でもよいし、複合材、金属材及び樹脂材の何れの組み合わせであってもよい。接着剤5は、熱硬化性樹脂であり、架橋反応により熱硬化することで、第1の被接着体3と第2の被接着体4とを接合する。
【0017】
ここで、接着部8には、接着品質が低下する、ウィークボンド(Weak Bond)、キッシングボンド(Kissing Bond)、ポロシティボイド(Porosity void)等が生じる可能性がある。このため、検査装置10を用いた成形品質の評価方法及び成形品の検査方法では、成形品1の接着部8が健全であるか否かを評価している。つまり、実施形態1では、成形品質として、接着品質を評価しており、接着品質の評価としては、接着不良の発生の有無を評価としている。また、実施形態1では、成形品の検査方法として、要求強度を満たす接着強度となっているか否かの判定を行っている。
【0018】
(成形品の検査装置)
検査装置10は、
図1に示すように、一対の電極11と、制御装置12と、を備えている。
【0019】
一対の電極11は、成形前の成形品1を、対向方向の両側から挟み込んで配置されることで、キャパシタを形成している。このため、一対の電極11の間には成形品1が誘電体として配置される。各電極11は、例えば、金属薄膜で形成されており、成形品1の接着部8の全面に亘って配置される。なお、一対の電極11が配置された成形前の成形品1は、バギングフィルム20の内部に収容される。そして、バギングフィルム20の内部が真空吸引されることで、成形品1に大気圧による圧力を付与しつつ、加熱することで、成形品1を熱硬化させる。
【0020】
制御装置12は、交流電源部14と、制御部15と、記憶部16とを備えている。交流電源部14は、一対の電極11間に交流信号を印加する。交流信号は、交流電流または交流電圧である。交流電源部14は、例えば、LCRメータである。交流電源部14は、交流信号の周波数を変化させて、一対の電極11間へ印加することが可能となっている。交流電源部14は、制御部15に接続されており、制御部15は、所定の周波数となるように、印加する交流信号を制御している。なお、交流電源部14は、交流信号に直流信号を重畳して、一対の電極11間に印加してもよい。交流電源部14は、直流信号を重畳することにより、信号対雑音比(S/N)の悪影響を軽減することができるため、一対の電極11により形成されるキャパシタのキャパシタンス値の計測を精度良く行うことができる。
【0021】
制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。制御部15は、接着部8の接着状態を評価する評価処理を実行する。制御部15は、評価処理において、交流電源部14を制御することで、交流信号の周波数を変化させる。
【0022】
記憶部16は、半導体記憶デバイス及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスである。記憶部16は、各種プログラム及び各種データを記憶している。記憶部16は、各種データとして、接着部8が健全であると予め評価された成形品の健全評価値と、接着部8が不良であると予め評価された成形品の評価値である不良評価値と、を記憶している。また、記憶部16は、各種データとして、成形品1の接着部8における要求接着強度を満足する予め取得された強度評価値を記憶している。
【0023】
(成形品質の評価方法)
次に、
図2から
図4を参照して、成形品1の検査装置10において実行される成形品質の評価方法の一例について説明する。
【0024】
成形品質の評価方法では、健全な接着部8を有する供試体の評価値である健全評価値と、不良な接着部8を有する供試体の評価値である不良評価値と、を事前に取得している。そして、評価対象となる成形品1の接着部8の評価値である計測評価値を取得し、健全評価値及び不良評価値と計測評価値とに基づいて接着部8の接着状態の評価を行っている。このとき、供試体の健全及び不良な接着部8の形状と、計測対象となる成形品1の接着部8の形状とは、同一形状となっている。ここで、健全な接着部8を有する供試体とは、ウィークボンド、キッシングボンド及びポロシティボイド等の接着不良が発生していないものである。また、不良な接着部8を有する供試体とは、接着不良を模擬した供試体であり、例えば供試体の接着面の全面に離型剤を設けたものである。
【0025】
先ず、
図2を参照して、健全評価値及び不良評価値の取得に関する処理について説明する。
図2に示すように、成形品質の評価方法では、先ず、制御部15が、供試体を成形品1の代わりに用いてキャパシタンス値を計測し、健全基準値と、不良基準値と、をそれぞれ取得するステップS11を実行する。ここで、基準値とは、成形品あるいは供試体の基準となる基準状態における接着部8のキャパシタンス値である。健全基準値とは、健全となる接着部8を有する供試体において基準状態における接着部8のキャパシタンス値である。不良基準値とは、不良となる接着部8を有する供試体において基準状態における接着部8のキャパシタンス値である。基準状態は、成形品あるいは供試体の成形前の状態、つまり、接着剤5の架橋反応が起こる前の状態または接着剤5の架橋反応の初期状態であり、接着剤5が未硬化の状態である。具体的に、基準状態は、接着部8における基準となる基準温度として管理され、基準温度は、接着部8の周りの環境温度であり、室内温度となっている。室内温度は、1℃から35℃となっており、基準温度としては、例えば、30℃である。
【0026】
また、キャパシタンス値の計測時において印加される交流信号の測定周波数は、10Hz以上10kHzよりも小さい帯域となっており、所定の周波数に固定した状態でキャパシタンス値が計測される。つまり、ステップS11では、成形前の供試体の周囲における環境温度が、室内温度となっており、この温度を基準温度として、制御部15は、所定の周波数となる交流信号を一対の電極11に印加して、供試体の接着部8のキャパシタンス値を、健全基準値あるいは不良基準値として取得する。
【0027】
続いて、成形品質の評価方法では、制御部15が、健全となる接着部8を有する供試体の計測値である健全計測値と、不良となる接着部8を有する供試体の計測値である不良計測値と、をそれぞれ取得するステップS12を実行する。ここで、計測値とは、基準状態から時間発展させた成形品あるいは供試体の成形状態における接着部8キャパシタンス値である。健全計測値とは、基準状態から時間発展させた成形状態における、健全となる接着部8を有する供試体の接着部8のキャパシタンス値である。不良計測値とは、基準状態から時間発展させた成形状態における、不良となる接着部8を有する供試体の接着部8のキャパシタンス値である。成形状態は、成形品1あるいは供試体の成形中の状態、つまり、接着剤5の架橋反応中の状態であり、接着剤5の硬化が進行する状態である。具体的に、成形状態は、接着部8における成形中の成形温度として管理され、成形温度は、例えば接着剤5のガラス転移温度となっている。つまり、成形温度は、基準温度よりも高い温度となっている。なお、実施形態1では、接着剤5として熱硬化性樹脂を適用したため、温度により成形品1の基準状態及び成形状態を管理したが、これに特に限定されない。接着剤5として常温硬化性樹脂を適用した場合、時間により成形品1あるいは供試体の基準状態及び成形状態を管理してもよい。この場合、成形品1あるいは供試体の成形状態は、成形品1あるいは供試体の基準状態よりも時間経過した状態となっている。
【0028】
ステップS12では、健全計測値及び不良計測値を所定の温度間隔で取得している。また、キャパシタンス値の計測時において印加される交流信号の測定周波数は、ステップS11と同じ周波数となっている。つまり、ステップS12では、成形前の供試体の周囲における環境温度が、成形温度となっており、制御部15は、所定の周波数となる交流信号を一対の電極11に印加して、接着部8のキャパシタンス値を、健全計測値及び不良計測値として取得する。
【0029】
続いて、成形品質の評価方法では、制御部15が、健全計測値を健全基準値でリファレンスした値を健全評価値として導出し、同様に、不良計測値を不良基準値でリファレンスした値を不良評価値として導出するステップS13を実行する。リファレンスとは、計測値を基準値で無次元化することである。ここで、キャパシタンス値Cは、誘電率εと形状因子f(r)との積となる、「C=ε×f(r)」の式として与えられる。形状因子f(r)は、例えば、一対の電極11が平行板コンデンサとなる場合、平行板面積Sを平行板間の距離dで除した、「f(r)=S/d」の式として与えられる。基準値をCrとし、基準値における誘電率をεrとし、計測値をCとし、計測値における誘電率をεとする。計測値Cを基準値Crでリファレンス(C/Cr)した値である評価値は、形状因子f(r)がキャンセルされることで、「C/Cr=ε/εr」となる。つまり、ステップS13では、評価値として、健全評価値と不良評価値とがそれぞれの供試体における「ε/εr(誘電率比)」として導出する。
【0030】
図3は、時間発展(温度及び時間を含む)に応じて変化する誘電率比のグラフとなっており、横軸が時間となっており、縦軸が計測値Cを基準値C
rでリファレンスした値すなわち誘電率比となっている。
図3において、測定周波数は、100Hzとなっている。
図3に示す三角のマークは、温度に応じて変化する不良評価値であり、丸のマークは、温度に応じて変化する健全評価値である。
図3に示すように、温度が120℃から180℃まで上昇する昇温過程において、健全評価値となる誘電率比は、不良評価値となる誘電率比に比べて大きく変化する。特に、健全評価値となる誘電率比のピーク値は、不良評価値となる誘電率比のピーク値に比して大きな値となる。そして、制御部15は、ステップS13において、
図3のように変化する健全評価値及び不良評価値を取得する。
【0031】
なお、強度評価値は、接着部8の接着状態に応じた健全評価値及び不良評価値を含む種々の評価値と、評価値に対応付けられた接着強度とに基づいて設定される。強度評価値は、要求される要求接着強度に対応する評価値がしきい値として設定される。例えば、
図3において、強度評価値は、健全評価値と不良評価値との間に設定される。
【0032】
次に、
図4を参照して、計測評価値を取得して、計測対象となる成形品1の接着部8の接着状態を評価する処理について説明する。
図4に示すように、成形品質の評価方法では、先ず、制御部15が、計測対象となる接着部8の基準値を取得するステップS21を実行する。ステップS21における基準状態は、ステップS11と同様である。つまり、ステップS21では、接着部8の周りの環境温度が室内温度となっており、この温度を基準温度として、制御部15は、所定の周波数となる交流信号を一対の電極11に印加して、接着部8のキャパシタンス値を、基準値として取得する。
【0033】
続いて、成形品質の評価方法では、制御部15が、計測対象となる接着部8の計測値を取得するステップS22を実行する。ステップS22における成形状態は、ステップS12と同様である。つまり、ステップS22では、接着部8の周りの環境温度が成形温度となっており、制御部15は、所定の周波数となる交流信号を一対の電極11に印加して、接着部8のキャパシタンス値を、計測値として取得する。また、ステップS22では、計測値を所定の温度間隔で取得している。
【0034】
続いて、成形品質の評価方法では、制御部15が、計測値を基準値でリファレンスした値を計測評価値として導出するステップS23を実行する。つまり、ステップS23では、計測評価値として、「ε/ε
r(誘電率比)」が導出される。計測評価値は、例えば、
図3に示す健全評価値及び不良評価値のように、温度に応じて変化する誘電率比として取得される。
【0035】
この後、成形品質の評価方法において、制御部15は、予め取得した健全評価値及び不良評価値と計測評価値とに基づいて、接着部8を評価するステップS24~S27を実行する。具体的に、制御部15は、健全評価値及び不良評価値と計測評価値とを比較する(ステップS24)。制御部15は、比較結果が健全な範囲であるか否かを判定するステップS25を実行する。ステップS25では、例えば、制御部15が、健全評価値と不良評価値との間の範囲において、計測評価値及び健全評価値の差分の絶対値と、計測評価値及び不良評価値の差分の絶対値との割合を、接着部8の健全度として評価し、評価した健全度が、予め規定した規定健全度の範囲となっているか否かを判定してもよい。また、ステップS25では、例えば、上記の強度評価値を、接着部8の健全性を評価するしきい値として用いてもよい。さらに、ステップS25では、例えば、時間変化する計測評価値の軌跡と、時間変化する健全評価値及び不良評価値の軌跡と、を比較してもよい。つまり、接着部8の健全性の評価は、予め取得した健全評価値及び不良評価値と計測評価値とに基づく評価であれば、何れの評価手法であってもよい。
【0036】
制御部15は、ステップS25において、比較結果が健全な範囲であると判定する(ステップS25:Yes)と、接着部8が健全であると評価して(ステップS26)、接着部8の接着状態を評価する処理を終了する。一方で、制御部15は、ステップS25において、比較結果が健全な範囲でないと判定する(ステップS25:No)と、接着部8が不良、すなわち、ウィークボンド、キッシングボンドまたはポロシティボイド等の接着不良であると評価して(ステップS27)、接着部8の接着状態を評価する処理を終了する。なお、接着不良を精度よく評価する場合には、不良評価値を取得するために用いた供試体として、ウィークボンド、キッシングボンドまたはポロシティボイド等が発生した供試体を用いることが好ましい。
【0037】
なお、実施形態1では、予め取得した健全評価値及び不良評価値と計測評価値とに基づいて接着部8の健全性を評価したが、計測評価値に基づいて健全性評価を実行してもよい。例えば、健全性を判定するためのしきい値を設定し、計測評価値がしきい値を超えたか否かによって接着部8の健全性を評価してもよい。
【0038】
次に、
図6を参照し、測定周波数について説明する。
図6は、測定周波数に応じて変化する、健全評価値に対する不良評価値のグラフとなっており、横軸が測定周波数(Hz)となっており、縦軸が不良評価値のピーク値に対する健全評価値のピーク値となっている。具体的に、縦軸は、(健全評価値のピーク値/不良評価値のピーク値)となっている。
図6に示すように、測定周波数が100Hzとなる場合(
図3の場合)、健全評価値のピーク値/不良評価値のピーク値は、7程度となっており、健全評価値のピーク値と不良評価値のピーク値とが大きく異なる値となっている。測定周波数が1kHzとなる場合、健全評価値のピーク値/不良評価値のピーク値は、2~3程度となっており、健全評価値のピーク値と不良評価値のピーク値とが異なる値となっている。測定周波数が10kHz及び100kHzとなる場合、健全評価値のピーク値/不良評価値のピーク値は、1程度となっており、健全評価値のピーク値と不良評価値のピーク値とがほぼ同じ値となっている。このため、測定周波数が10kHzよりも小さければ、健全評価値のピーク値と不良評価値のピーク値との差分が大きくなるため、計測評価値に基づく健全性の評価を詳細に行うことが可能となる。
【0039】
(成形品の検査方法)
次に、
図5を参照して、成形品1の検査装置10において実行される成形品1の検査方法の一例について説明する。成形品1の検査方法は、接着部8の接着強度を検査する方法となっている。成形品1の検査方法では、事前に取得した強度評価値と、成形品質の評価方法において取得した計測評価値とに基づいて、要求される接着強度を満足するか否かを検査している。
【0040】
図5に示すように、成形品1の検査方法では、先ず、制御部15が、計測対象となる接着部8の強度評価値を取得するステップS31を実行する。ステップS31では、制御部15が、記憶部16に記憶されている強度評価値を取得している。
【0041】
続いて、成形品1の検査方法では、制御部15が、接着部8の計測評価値を取得するステップS32を実行する。ステップS32では、
図4の処理におけるステップS21からステップS23までを実行している。このため、ステップS32についての説明は省略する。
【0042】
この後、成形品1の検査方法では、取得した計測評価値と強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップS33を実行する。ステップS33では、例えば、強度評価値に対して、計測評価値が、健全側の値となっているか、または、不良側の値となっているかに基づいて、検査合格の可否を判定している。制御部15は、ステップS33において、計測評価値が強度評価値に対して健全側の値になっていると判定する(ステップS33:Yes)と、接着部8が要求接着強度を満足しているとして、検査合格であると判定し(ステップS34)、成形品1の検査方法に関する処理を終了する。一方で、制御部15は、ステップS33において、計測評価値が強度評価値に対して健全側の値になっていないと判定する(ステップS33:No)と、接着部8が要求接着強度を満足していないとして、検査不合格であると判定し(ステップS35)、成形品1の検査方法に関する処理を終了する。
【0043】
なお、実施形態1では、第1の被接着体3及び第2の被接着体4を複合材同士としたが、金属材同士としてもよい。この場合、第1の被接着体3及び第2の被接着体4が電極として機能し、第1の被接着体3と第2の被接着体4との間の接着剤層が誘電体として機能する。
【0044】
[実施形態2]
次に、
図7を参照して、実施形態2について説明する。
図7は、実施形態2に係る成形品の検査装置の電極の配置に関する説明図である。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0045】
実施形態2の検査装置10では、一対の電極11のそれぞれが、接着部8において複数配置されている。具体的に、一対の電極11は、実施形態1に比して小さいものとなっており、接着部8の一部の面に配置されると共に、一対の電極11が、接着部8において分布するように複数配置される。なお、複数の一対の電極11は、例えば、格子状に配置されている。
【0046】
上記のような検査装置10を用いて、成形品質の評価方法を行う場合、接着部8における計測評価値の分布として取得することができる。このため、接着部8における接着状態を詳細に取得することが可能となる。
【0047】
なお、検査装置10によって評価した成形品質の評価結果は、成形品1の成形プロセスにおいて用いてもよい。具体的に、成形品1の成形プロセスでは、評価結果に基づいて、成形品1の成形条件を調整することにより、成形品1の成形品質の向上を図ってもよい。
【0048】
[実施形態3]
次に、
図8を参照して、実施形態3について説明する。
図8は、実施形態3に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。なお、実施形態3でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0049】
実施形態3の検査装置10では、一対の電極11が、バギングフィルム20の内側に形成された一対の電極層31として形成されている。また、検査装置10は、一対の電極層31間を絶縁状態に保つ絶縁スペーサ32を、さらに備えている。
【0050】
一対の電極層31は、バギングフィルム20の内部に収容される成形前の成形品1を挟んで、対向する位置に形成されている。電極層31は、蒸着により形成されていてもよい。絶縁スペーサ32は、一対の電極層31の間に設けられ、バギングフィルム20の内部に収容される成形品1の両側に配置されている。なお、一対の電極層31は、実施形態2と同様に、複数設けられていてもよい。
【0051】
[実施形態4]
次に、
図9を参照して、実施形態4について説明する。
図9は、実施形態4に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。なお、実施形態4でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0052】
実施形態4の検査装置10は、実施形態1における一対の電極11の位置と、異なる位置となっている。実施形態1において、一対の電極11は、バギングフィルム20の内側において、成形品1の接着部8に配置されていた。実施形態4において、一対の電極11は、バギングフィルム20の外側において、成形品1の接着部8に配置されている。つまり、実施形態4において、一対の電極11は、バギングフィルム20の内部に成形品1を収容し、真空吸引した後、バギングフィルム20の外側において、成形品1の接着部8に対向する位置に設けられる。なお、一対の電極11は、実施形態2と同様に、複数設けられていてもよい。
【0053】
[実施形態5]
次に、
図10を参照して、実施形態5について説明する。
図10は、実施形態5に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。なお、実施形態5でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0054】
実施形態5では、計測対象となる成形品1が、実施形態1から4の接着体ではなく、接着部8を有さない樹脂成形される樹脂成形品となっている。つまり、実施形態5では、成形品質の評価方法として、樹脂成形品の成形品質を評価している。なお、計測対象が樹脂成形品となることから、記憶部16に記憶される成形品の健全評価値、不良評価値、強度評価値は、樹脂成形品を模した供試体を用いて、事前に取得される。また、健全評価値、不良評価値、及び強度評価値は、実施形態1と同様の方法によって取得される。また、樹脂成形品に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂の他、熱可塑性樹脂を適用してもよい。
【0055】
[実施形態6]
次に、実施形態6について説明する。なお、実施形態6でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から5と異なる部分について説明し、実施形態1から5と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0056】
実施形態6では、計測対象となる成形品1が、実施形態1と同様の接着体であり、用いる樹脂として、熱硬化性樹脂に代えて、常温硬化性樹脂を適用している。常温硬化性樹脂を適用する場合、基準状態及び成形状態は、時間によって管理される。なお、検査装置10、成形品質の評価方法及び成形品1の検査方法においては、基準状態及び成形状態を時間で管理すること以外は、実施形態1と同様となっている。
【0057】
[実施形態7]
次に、
図11を参照して、実施形態7について説明する。
図11は、実施形態7に係る成形品の検査装置を示す概略構成図である。なお、実施形態7でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から6と異なる部分について説明し、実施形態1から6と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0058】
実施形態7の検査装置10は、一対の電極11が、成形品1の内部に設けられる金属メッシュ41と、成形品1の成形時に用いられる金属治具42との少なくとも一方を含むものとなっている。具体的に、実施形態7では、一対の電極11のうち、一方の電極11が金属メッシュ41となっており、他方の電極11が金属治具42となっている。なお、一対の電極11の両方が、金属メッシュ41であってもよいし、金属治具42であってもよく、特に限定されない。金属メッシュ41は、例えば、着雷時の雷電流による成型品損傷保護のために成形品1と一体に設けられる耐雷部材となっている。金属治具42は、例えば、成形品1を成形するための成形型である。つまり、実施形態7では、一対の電極11の別途用意することなく、成形品の一部あるいは成形工程において使用する部材を一対の電極11として活用している。
【0059】
なお、実施形態1から7では、成形品1の検査装置10が、成形品質の評価を行う評価装置としても機能していたが、成形品質の評価を行う評価装置と、成形品1の検査を行う検査装置とを別体とした装置構成であってもよい。
【0060】
以上のように、実施形態1から7に記載の複合材の成形品質の評価方法、成形品1の検査方法、成形品質の評価装置及び成形品1の検査装置10は、例えば、以下のように把握される。
【0061】
第1の態様に係る成形品質の評価方法は、樹脂を含む成形品1の成形品質を評価する成形品質の評価方法において、前記成形品1の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品1のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップS21と、前記成形品1の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品1の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品1のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップS22と、前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップS23と、前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップS24~S27と、を備える。
【0062】
この構成によれば、成形品1の成形時において、成形品質を評価することができるため、成形後に加熱等を行うことなく、成形品1の成形品質に影響を与えることを抑制することができる。また、計測値を基準値でリファレンスすることで、形状による影響をキャンセルした計測評価値を得ることができる。このため、計測評価値を用いることで、成形品1の成形品質の評価を好適に行うことができる。
【0063】
第2の態様として、第1の態様に係る成形品質の評価方法において、前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップS13と、前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップS13と、をさらに備え、前記成形品質の評価を実行するステップS24~S27では、前記健全評価値及び前記不良評価値と前記計測評価値とに基づいて、前記成形品質の評価を実行する。
【0064】
この構成によれば、健全評価値及び不良評価値を指標として、計測評価値に基づく成形品質の評価を精度よく実行することができる。
【0065】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る成形品質の評価方法において、前記樹脂は、熱硬化性樹脂であり、前記基準状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋反応前の状態、または、前記熱硬化性樹脂の架橋開始時の状態であり、前記成形状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋開始後に所定の時間が経過した状態である。
【0066】
この構成によれば、樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、架橋反応に起因する成形品質の評価を実行することができる。
【0067】
第4の態様として、第3の態様に係る成形品質の評価方法において、前記基準状態は、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の状態であり、前記成形状態は、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度以上となる温度の状態である。
【0068】
この構成によれば、基準状態及び成形状態を、ガラス転移温度を含む温度により管理することができる。
【0069】
第5の態様として、第3または第4の態様に係る成形品質の評価方法において、前記キャパシタンス値は、所定の測定周波数となる交流信号を印加することで取得しており、前記測定周波数は、10Hz以上10kHzよりも小さい帯域となっている。
【0070】
この構成によれば、熱硬化性樹脂を用いた場合の成形品質の評価に適した測定周波数とすることができるため、成形品質の評価を精度よく実行することができる。
【0071】
第6の態様として、第1から第5のいずれか1つの態様に係る成形品質の評価方法において、前記成形品は、第1の被接着体3と第2の被接着体4とを接着剤5を介して接着した接着体であり、前記成形品質は、前記接着剤5の接着品質である。
【0072】
この構成によれば、接着体の接着品質を好適に評価することができる。
【0073】
第7の態様として、第6の態様に係る成形品質の評価方法において、前記成形品質の評価を実行するステップでは、前記接着品質として、ウィークボンド、キッシングボンド、ポロシティボイドを含む接着不良の発生を評価する。
【0074】
この構成によれば、接着体の接着品質として、ウィークボンド、キッシングボンド、ポロシティボイドの接着不良を評価することができる。
【0075】
第8の態様として、第1から第7のいずれか1つの態様に係る成形品質の評価方法において、前記基準値を取得するステップS21及び前記計測値を取得するステップS22では、前記成形品1の複数の箇所においてキャパシタンス値を計測し、前記計測評価値を導出するステップS23では、前記成形品1の複数の箇所において前記計測評価値を導出し、前記成形品質の評価を実行するステップS24~S27では、複数の前記計測評価値に基づいて、前記成形品1における前記成形品質の分布を評価する。
【0076】
この構成によれば、評価結果として、成形品質の分布を取得することができるため、成形品質を詳細に評価することができる。
【0077】
第9の態様に係る成形品の検査方法は、上記の成形品質の評価方法の評価結果に基づいて、成形品1の成形品質を検査する成形品1の検査方法であって、前記成形品1の要求強度を満足する強度評価値が予め取得されており、前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップS13と、前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップS13と、前記成形品質の評価方法において導出された前記計測評価値を取得するステップS32と、取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップS33と、を備え、前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される。
【0078】
この構成によれば、要求強度を満足する成形品質であるか否かを検査することができる。
【0079】
第10の態様に係る成形品質の評価装置は、樹脂を含む成形品1の成形品質を評価する成形品質の評価装置(検査装置10)において、前記成形品1にキャパシタを形成するために配置される一対の電極11と、前記一対の電極11間におけるキャパシタンス値を計測すると共に、計測した前記キャパシタンス値に基づいて前記成形品1の前記成形品質の評価を実行する制御部15と、を備え、前記制御部15は、前記成形品1の成形前の状態を基準状態とし、前記基準状態における前記成形品1のキャパシタンス値を、基準値として取得するステップS21と、前記成形品1の状態を、前記基準状態から時間発展させた、前記成形品1の成形中の状態である成形状態とし、前記成形状態における前記成形品1のキャパシタンス値を、計測値として取得するステップS22と、前記計測値を前記基準値で無次元化した値を計測評価値として導出するステップS23と、前記計測評価値に基づいて、前記成形品質の評価を実行するステップS24~S27と、を実行する。
【0080】
この構成によれば、成形品1の成形時において、成形品質を評価することができるため、成形後に加熱等を行うことなく、成形品1の成形品質に影響を与えることを抑制することができる。また、計測値を基準値でリファレンスすることで、形状による影響をキャンセルした計測評価値を得ることができる。このため、計測評価値を用いることで、成形品1の成形品質の評価を好適に行うことができる。
【0081】
第11の態様として、第10の態様に係る成形品質の評価装置において、前記一対の電極11は、金属薄膜である。
【0082】
この構成によれば、金属薄膜となる電極11を成形品1に容易に設置することができる。
【0083】
第12の態様として、第10または第11の態様に係る成形品質の評価装置において、前記一対の電極11は、前記成形品1の複数の箇所に設けられる。
【0084】
この構成によれば、評価結果として、成形品質の分布を取得することができるため、成形品質を詳細に評価することができる。
【0085】
第13の態様として、第10の態様に係る成形品質の評価装置において、前記成形品1を内部に収容するバギングフィルム20と、前記一対の電極11間を絶縁状態に保つ絶縁スペーサ32と、をさらに備え、前記一対の電極11は、前記バギングフィルム20の内側に形成された一対の電極層31である。
【0086】
この構成によれば、バギングフィルム20の内部に、成形前の成形品1を収容することで、一対の電極11が配置されるため、施工性の向上を図ることができる。
【0087】
第14の態様として、第10の態様に係る成形品質の評価装置において、前記成形品1を内部に収容するバギングフィルム20を、さらに備え、前記一対の電極11は、前記バギングフィルム20の外側に設けられる。
【0088】
この構成によれば、バギングフィルム20の内部に、成形前の成形品1を収容した後、一対の電極11を配置すればよいため、施工性の向上を図ることができる。
【0089】
第15の態様として、第10の態様に係る成形品質の評価装置において、前記一対の電極11は、前記成形品1の内部に設けられる金属メッシュ41と、前記成形品1の成形時に用いられる金属治具42との少なくとも一方を含む。
【0090】
この構成によれば、既存の部材を一対の電極11として活用することができるため、一対の電極11を配置する作業を行うことがないことから、施工性の向上を図ることができる。
【0091】
第16の態様に係る成形品質の評価装置は、上記の成形品質の評価装置の評価結果に基づいて、成形品1の成形品質を検査する成形品1の検査装置10であって、前記成形品1の要求強度を満足する強度評価値を記憶する記憶部16と、前記強度評価値に基づいて、前記成形品1が前記要求強度を満足するか否かを判定する制御部15と、を備え、前記制御部15は、前記成形品質が健全であると予め評価された前記成形品の健全評価値を取得するステップS13と、前記成形品質が不良であると予め評価された前記成形品の不良評価値を取得するステップS13と、前記成形品質の評価装置において導出された前記計測評価値を取得するステップS32と、取得した前記計測評価値と前記強度評価値とに基づいて、検査合格の可否を判定するステップS33と、前記計測評価値が前記強度評価値以下となる場合、検査合格であるとするステップS34と、を実行し、前記強度評価値は、前記健全評価値と前記不良評価値との間に設定される。
【0092】
この構成によれば、要求強度を満足する成形品質であるか否かを検査することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 成形品
3 第1の被接着体
4 第2の被接着体
5 接着剤
8 接着部
10 検査装置
11 電極
12 制御装置
14 交流電源部
15 制御部
16 記憶部
20 バギングフィルム
31 電極層
32 絶縁スペーサ
41 金属メッシュ
42 金属治具