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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071049
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】遮音パネル及び遮音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20240517BHJP
   E01B 19/00 20060101ALI20240517BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240517BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E01F8/00
E01B19/00 C
G10K11/16 120
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181776
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋介
【テーマコード(参考)】
2D001
5D061
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001CA01
2D001CD01
5D061AA16
5D061BB17
(57)【要約】
【課題】パネル両面からの騒音に対し拡散効果を発揮できる、遮音パネル及び遮音壁を提供する。
【解決手段】遮音パネルは、第1方向及び第1方向の逆方向のそれぞれを向いた一対の反射部を備え、一対の反射部のそれぞれは、第1方向に沿った断面において、第1方向に直交する第2方向の一方の端部及び他方の端部よりも、第2方向の中央部が、他方の反射部側に凹んでいる凹面を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向の逆方向のそれぞれを向いた一対の反射部を備え、
前記一対の反射部のそれぞれは、
前記第1方向に沿った断面において、前記第1方向に直交する第2方向の一方の端部及び他方の端部よりも、前記第2方向の中央部が、他方の反射部側に凹んでいる凹面を有する、遮音パネル。
【請求項2】
前記一対の反射部は、
前記凹面の底部の位置が前記第2方向において同じ位置にある、請求項1に記載の遮音パネル。
【請求項3】
前記一対の反射部のそれぞれの前記凹面は、
前記第1方向に沿った断面において円弧状である、請求項1又は2に記載の遮音パネル。
【請求項4】
前記一対の反射部のうち一方の反射部を有する第1遮音部材と、
前記一対の反射部のうち他方の反射部を有する第2遮音部材と、を備え、
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材は、
金属板により構成され、
前記第1方向に沿った断面において、前記第2方向の両端部において互いに接合されている、請求項1又は2に記載の遮音パネル。
【請求項5】
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材の、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の両端に取り付けられる端面部材を備え、
前記端面部材は、
板面が前記第3方向に向いた端面板と、
前記端面板から前記第3方向に沿って前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材が配置されている側に対し反対方向に延びる固定片と、を備え、
前記固定片は、
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材のそれぞれの前記反射部の底部と接続される、請求項4に記載の遮音パネル。
【請求項6】
前記第2遮音部材は、
前記第2方向の両端のそれぞれに前記第1方向に向かって延びる端面部を備え、
前記第1遮音部材の前記第2方向の両端は、
前記端面部の先端に固定される、請求項5に記載の遮音パネル。
【請求項7】
前記第2遮音部材の前記端面部は、
前記第3方向の端部が前記反射部よりも前記第3方向に突出した部分を有し、
前記突出した部分は、
前記端面部材を前記第2方向から覆う様に形成されており、前記第2方向に貫通する切り欠きを有する、請求項6に記載の遮音パネル。
【請求項8】
前記端面部は、
前記第1方向に向かうにしたがい前記第2方向に傾斜している、請求項6に記載の遮音パネル。
【請求項9】
前記端面部は、
前記反射部と接続されている付け根部に孔が形成されている、請求項8に記載の遮音パネル。
【請求項10】
前記第1方向を向いた面の前記第2方向の逆方向の端に前記第2方向に沿って突出するタブを備える、請求項1又は2に記載の遮音パネル。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の遮音パネルを上下方向に複数積み重ねて構成される、遮音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や鉄道などに設置される遮音パネル及び遮音壁の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音の抑制のために道路や鉄道などに沿って遮音壁が設置されている。遮音壁は、例えば道路においては、路肩に沿って壁状に設けられており、道路を走行する車両の走行に伴う騒音を道路の外部に漏れるのを抑制するものである。
【0003】
遮音パネルとして、曲面を有する反射部に音源からの音波が反射することにより、騒音を拡散させ、遮音パネルの背面側に漏らすのを抑制するものが知られている。遮音パネルは、一方の面を構成する正面板の中央部が凹んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-070586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遮音パネルを使用した遮音壁は、例えば、横幅が広い道路の中央分離帯などに遮音壁を設置する場合、音源となる車両は、中央分離帯の両側を走行しているため、遮音壁を挟んで両側に音源が存在する。この場合、特許文献1に開示されている遮音壁を2列並べ、反射部を中央分離帯の両側の道路にそれぞれ向けて設置しなければ、遮音壁の両側に発生する騒音の拡散効果が得られない、という課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、パネル両面からの騒音に対し拡散効果を発揮できる、遮音パネル及び遮音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、本発明に係る遮音パネルは、第1方向及び前記第1方向の逆方向のそれぞれを向いた一対の反射部を備え、前記一対の反射部のそれぞれは、前記第1方向に沿った断面において、前記第1方向に直交する第2方向の一方の端部及び他方の端部よりも、前記第2方向の中央部が、他方の反射部側に凹んでいる凹面を有する。
【0008】
本発明に係る遮音壁は、上記の遮音パネルを上下方向に複数積み重ねて構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮音パネルの両面に設けられた反射部の凹面に反射することにより、騒音を拡散させることができる。従って、遮音壁は、両側に音源がある場合においても、1列設置すれば、遮音壁の両側からの騒音を拡散させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る遮音壁100の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る遮音壁100の断面構造の説明図である。
図3】実施の形態1に係る遮音壁100の遮音パネル10の断面構造の説明図である。
図4】実施の形態1に係る遮音パネル10の端面部材40の三面図である。
図5】実施の形態1に係る遮音壁100の端面周辺の構造の説明図である。
図6図5のA-A部の断面図である。
図7】実施の形態1に係る遮音パネル10の端部周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左及び右等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る遮音壁100の斜視図である。図1(a)は第1遮音部材20(図3参照)で構成されている面側から見た図であり、図1(b)は、第2遮音部材30(図3参照)で構成されている面側から見た図である。遮音壁100は、例えば高速道路や鉄道などの路側又は中央分離帯などに立設されるものである。遮音壁100は、道路や軌道を走行する車両から発生する騒音の音波を拡散させ、また、音波が外部に漏れるのを抑制するものである。
【0013】
遮音壁100は、2本の支柱1の間に遮音パネル10を取り付けて構成される。支柱1は、例えばz方向に垂直な断面形状がH型の鋼材であり、フランジ部3の間にウェブ部2が渡されている形状になっている。遮音パネル10は、2つのフランジ部3の間に挿入されて支柱1に取り付けられる。遮音パネル10は、2つの支柱1の間に複数積み重ねられて1枚の遮音壁100を構成する。実施の形態1においては、遮音壁100が道路の中央分離帯に設置された場合を例にして説明する。
【0014】
遮音壁100が道路の中央分離帯に設置された場合、図1において遮音壁100のy方向及びy方向の逆方向にそれぞれ車両が走行する道路の車線92が存在する。それらの車線92は、x方向に沿って延びている。遮音壁100は、例えば中央分離帯の地盤の上に遮音パネル10をz方向に複数積み重ねて構成されている。ここで、y方向を第1方向、z方向を第2方向、x方向を第3方向と称する場合がある。図1に示される遮音壁100は、2つの支柱1の間に複数の遮音パネル10を取り付けて構成されたもののみを示しているが、実際には高速道路や鉄道の軌道に沿って立設された多数の支柱1の間に遮音パネル10が配置され、x方向に沿って連続して複数設置されるものである。実施の形態1においては、遮音壁100は地盤に対し垂直に立設されている状態について説明するが、例えば斜めに立設されてもよく、各遮音パネル10の反射部23及び33(図3参照)を向ける方向については限定されるものではない。
【0015】
(遮音パネル10)
図2は、実施の形態1に係る遮音壁100の断面構造の説明図である。図3は、実施の形態1に係る遮音壁100の遮音パネル10の断面構造の説明図である。遮音パネル10は、y方向及びy方向逆向きのそれぞれを向いた凹面を有する。つまり、中央分離帯において遮音パネル10を挟んで両側の車線92からの音波が凹面に当たり、当たった場所に応じて反射する。遮音壁100においては、遮音パネル10が3段に積み重ねられて、凹面がz方向に3つ並んでいる。そのそれぞれの凹面に音波が当たり、それぞれの場所で反射し拡散する。図2に示す様に、遮音パネル10は、支柱1のフランジ部3の間に挟まれて配置されている。遮音パネル10とフランジ部3との隙間には、固定部材4が配置され、フランジ部3の間において遮音パネル10が移動しないように構成されている。図2に示される固定部材4は、一例であり、その他バネなどの弾性部材など他の構造を採用することもできる。また、固定部材4は、位置及び数量を適宜変更できる。
【0016】
遮音パネル10は、y方向を向いた表面を形成する第1遮音部材20と、反対側を向いた表面を形成する第2遮音部材30とを組み合わせて形成される。第1遮音部材20は、y方向を向いた面が凹面となっている。第2遮音部材30は、y方向逆向きを向いた面が凹面となっている。第1遮音部材20の凹面と第2遮音部材30の凹面とは、z方向の中央部が凹形状の頂点となっており、頂点同士をy方向において突き合わせるように配置されている。図3において、第1遮音部材20の凹面と第2遮音部材30の凹面とは、曲率が多少異なっているが、同じであっても良い。
【0017】
遮音パネル10のz方向の端面10a及びz方向の逆向きを向いた端面10bは、y方向に向かうに従いz方向に傾斜している。例えば図2のように地盤に遮音壁100が立設されている場合、各遮音パネル10の上側の端面10a及び下側の端面10bは、y方向逆向きに向かうに従い下方に傾斜している。各遮音パネル10の上側の端面10a及び下側の端面10bは、同方向に同角度で傾斜しているため、積み重ねたときに端面同士の形状が合う。z方向に積み重ねられた遮音パネル10の端面10a及び10bは、組み合わされることにより隙間からの音漏れを抑制できる。また、例えば、図2の2つの遮音パネル10の隙間に雨水などが浸入した場合であっても、上側の端面10a及び下側の端面10bが傾斜しているため、雨水が流出し易い。また、各遮音パネル10は、第1遮音部材20側の下端にタブ11がz方向逆向きに向かって突出して形成されている。タブ11は、板状片である。各遮音パネル10同士の隙間は、タブ11により塞がれるため、隙間から音が漏れるのを抑制し、雨水の浸入が抑制できる。
【0018】
(第1遮音部材20)
第1遮音部材20は、金属板を折り曲げて形成されている。第1遮音部材20は、断面におけるz方向の一方の端部である上端部21と他方の端部である下端部22との間に反射部23を備える。凹面は、反射部23の表面である。上端部21と下端部22とは、平面に形成されており、第2遮音部材30に設けられた上側の取付部31及び下側の取付部32に固定される。第1遮音部材20と第2遮音部材30との固定は、例えばブラインドリベットにより行われるが、その他にボルト締結などにより固定を行っても良い。なお、第2遮音部材30の上側の取付部31及び下側の取付部32は、単に取付部と称する場合がある。
【0019】
第1遮音部材20の上端部21は、上側の取付部31の上端でy方向逆向きに折り返され第2遮音部材30の上側の端面部36の上に載るように組み合わされている。また、第1遮音部材20の下端部22は、第2遮音部材30の下側の取付部32の下端でy方向逆向きに折り返され、さらに下側の取付部32の下端を抱き込むように組み合わされている。遮音パネル10の上端部21で、第1遮音部材20と第2遮音部材30とが組み合わされている部分を上部折り返し部15と称する。遮音パネル10の下端部で第1遮音部材20と第2遮音部材30とが組み合わされている部分を下部折り返し部16と称する。この構成により、遮音パネル10は、内部への雨水等の浸入が抑制され、空洞部13、14内で第1遮音部材20及び第2遮音部材30が腐蝕するリスクが減少する。また、第1遮音部材20は、反射部23に開口が形成されていないため、空洞部13、14への水の浸入が抑制されている。
【0020】
反射部23は、断面においてy方向を向いた表面が曲面となっており、実施の形態1においては円弧形状により形成されている。つまり、第1遮音部材20は、上端部21と下端部22との間に、中心軸が音源側に位置する円筒面として形成されている。第1遮音部材20の中央部24は、第2遮音部材30の中央部34と当接している。第1遮音部材20の中央部24と第2遮音部材30の中央部34は、例えばブラインドリベットなどの固定部材、又は溶接などの固定手段により互いに固定されていても良い。なお、反射部23は、断面形状において第1遮音部材20の表面が円弧形状となっている円筒面以外に、断面形状において第1遮音部材20の表面が楕円弧形状又はその他の曲線で形成された曲面であっても良い。また、反射部23の凹面は、断面形状において直線上の斜面で構成されてもよく、上端部21及び下端部22のそれぞれから中央部24に向かうに従いy方向逆向きに傾斜している斜面であってもよい。
【0021】
(第2遮音部材30)
第2遮音部材30は、金属板を折り曲げて形成されている。図3において、第2遮音部材30の上端部及び下端部は、第1遮音部材20側に折り曲げられて突出し、上側の端面部36と下側の端面部37とが形成されている。例えば図2のように設置されたときに、上側の端面部36と下側の端面部37とは、遮音パネル10の上端面および下端面を構成し、遮音パネル10が上下に積み重ねられた時に形状が組み合わさるように、第2遮音部材30側から第1遮音部材20側に向かうに従い上方向に傾斜している。下側の端面部37は、反射部33側の付け根部分に孔(図示なし)が設けられ、空洞部13及び14に侵入した水を排出する様に構成される。
【0022】
上側の端面部36及び下側の端面部37は、先端に第1遮音部材20側を向いた平坦な面が形成されており、取付部31及び32となっている。第1遮音部材20が第2遮音部材30の取付部に固定されることにより、第1遮音部材20は第2遮音部材30よりも板厚の薄い材料で構成することができ、また、遮音パネル10が簡単な構造により構成され製造も容易になる。
【0023】
第2遮音部材30は、遮音パネル10のy方向逆向き側の表面を構成している反射部33を備える。反射部33は、断面においてy方向逆向きを向いた表面が曲面となっており、実施の形態1においては円弧形状により形成されている。つまり、第2遮音部材30は、上側の端面部36と下側の端面部37との間に、中心軸が道路側に位置する円筒面として形成されている。第1遮音部材20の中央部24は、第2遮音部材30の中央部34と当接している。第2遮音部材30の中央部34と第1遮音部材20の中央部24は、互いに固定されていても良い。なお、反射部33は、断面形状において第2遮音部材30の表面が円弧形状となっている円筒面以外に、断面形状において第1遮音部材20の表面が楕円弧形状又はその他の曲線で形成された曲面であっても良い。また、反射部33の凹面は、断面形状において直線上の斜面で構成されてもよく、上側の端面部36と下側の端面部37のそれぞれから中央部34に向かうに従いy方向逆向きに傾斜している斜面であってもよい。また、第2遮音部材30は、反射部33に開口が形成されていないため、空洞部13、14への水の浸入が抑制されている。
【0024】
第2遮音部材30は、上側の端面部36及び下側の端面部37がx方向の端部において端面部材40側に突出している(図7参照)。突出した端面部36及び37には、切り欠き35が形成されている。切り欠き35は、遮音パネル10の端部にワイヤー61(図5及び図6を参照)を通すために形成されている。ワイヤー61は、第2遮音部材の上側の端面部36及び下側の端面部37に設けられた切り欠き35及び端面部材40の内側に配置されたアイボルト60に挿通される(図5及び図6参照)。
【0025】
第2遮音部材30は、薄い鋼板により構成されているため、剛性が低く、風等の影響により振動する場合がある。第2遮音部材30の中央部34が第1遮音部材20の中央部24に固定されることにより、一体化されるため、第1遮音部材20の反射部23及び第2遮音部材30の反射部33の振動の発生を抑えることができる。なお、第1遮音部材20の板厚が厚く剛性が高い場合には、必ずしも第1遮音部材20の中央部24と第2遮音部材30の中央部34とを固定する必要はない。
【0026】
第1遮音部材20及び第2遮音部材30は、厚さを0.25mm~3.2mmの間に設定することができる。例えば、第1遮音部材20の板厚は0.6mmとし、第2遮音部材30の板厚は1.6mmとして構成することができる。第1遮音部材20及び第2遮音部材30の材質は、例えば黒ZAM(登録商標)等の表面の意匠性が高く、耐食性に優れためっき鋼板を適用するのが好ましい。第1遮音部材20及び第2遮音部材30は、ZAM鋼板以外にも耐食性に優れためっき鋼板を用いても良い。また、第1遮音部材20及び第2遮音部材30はアルミ板を用いても良い。
【0027】
また、従来の遮音壁として用いられている統一板(標準型)と呼ばれる標準的な遮音パネルは、開口が設けられた正面板と背面板とを組み合わせ、内部に吸音部材を備える。この従来の遮音パネルは、正面板の材質としてアルミが用いられ、背面板の材質としてめっき鋼板が用いられている。このような異種金属を組み合わせた場合、正面板と背面板との接触部で腐食が生じる場合がある。これに対し、実施の形態1に係る遮音パネル10においては、第1遮音部材20及び第2遮音部材30に同じ材質を用いていることにより、異種金属接触による腐食のリスクが減少する。ただし、遮音パネル10は、同種金属のみで構成されるものに限定されず、異種金属を材質とする部材を含んでいても良い。
【0028】
(端面部材40)
図4は、実施の形態1に係る遮音パネル10の端面部材40の三面図である。図4(a)は、遮音パネル10を第2遮音部材30が配置されている側から見たときの端面部材40の中央部周辺のみの図であり、図4(b)は、端面板41を平面視した図であり、図4(c)は、遮音パネル10を積み重ね方向(z方向)の視点から見た図である。端面部材40は、遮音パネル10のx方向の両端面を構成する部品であり、第1遮音部材20及び第2遮音部材30のx方向の両端に取り付けられている。端面部材40は、板面がx方向に向いた端面板41を備える。端面板41は、第1遮音部材20及び第2遮音部材30を接合してできた部材の端面に形成された開口を塞ぐように設置される。
【0029】
また、端面板41は、x方向から見たときの外周縁において板片が立ち上げられている。端面板41のy方向を向いた辺41aがz方向のほぼ全域に亘って直線状に延びている。辺41aは、x方向に延びる立ち上げ片44aが形成されている。また、端面板41のy方向逆向きを向いた辺は、中央部にy方向に向かって凹んだ凹部41dと、凹部41dを挟んでz方向に沿って並んだ辺41b及び辺41cとを有する。辺41b及び辺41cにも、x方向に向かって延びる立ち上げ片44b及び44cが形成されている。立ち上げ片44a、44b及び44cは、第1遮音部材20及び第2遮音部材30の端部からx方向外側に突出する様に構成されている。
【0030】
端面板41のy方向を向いた辺41aのz方向には、固定片47が立ち上げられている。固定片47は、立ち上げ片44aと平行であるが、立ち上げ片44aよりもy方向に逆方向にずれて位置している。固定片47は、図3に示すように、第2遮音部材30の上側取付部31が重なり、さらに第1遮音部材20の上端部21が重ねられる。固定片47、上側取付部31及び上端部21は、ブラインドリベット、ボルト又は溶接などの接合手段により接合される。
【0031】
端面板41のz方向の端41e及びz方向逆側の端41fにも、立ち上げ片45、46がそれぞれ形成されている。立ち上げ片45及び立ち上げ片46は、図3に示す第2遮音部材30の上側の端面部36及び下側の端面部37に沿った板面を有する。立ち上げ片45及び46は、第1遮音部材20及び第2遮音部材30の端部において、第1遮音部材20及び第2遮音部材30のそれぞれの端部の構造の内側に配置される。第1遮音部材20及び第2遮音部材30は、その端部において、上部及び下部の一部分が端面部材40の立ち上げ片45及び46に重なる様に突出している。
【0032】
端面板41のy方向逆向きを向いた辺のz方向の中央部に形成された凹部41dは、端面板41のy方向と逆向きを向いた端縁においてy方向に向かって台形状に切り欠かれた形状となっており、台形状の斜辺部分に立ち上げ片43が形成され、底部に固定片42が形成されている。固定片42は、x方向に向かって立ち上げられており、第1遮音部材20及び第2遮音部材30のそれぞれの凹面の底部である中央部24及び34に接合されていてもよい。固定片42、凹面の底部である中央部24及び34は、ブラインドリベット、ボルト又は溶接などにより接合されていても良いし、当接するのみでも良い。なお、固定片42は、x方向逆向きに立ち上げられていてもよく、第1遮音部材20と第2遮音部材30との間に配置されていても良いし、第1遮音部材20に対しy方向側から重ねられて配置されていても良いし、または第2遮音部材30に対しy方向逆側から重ねられて配置されていても良い。なお、端面板41は、台形状に切りかかれた部分を有していなくても良い。このとき、図4に示されている、台形状の切り欠きの上側に位置する辺41b及び下側に位置する辺41cとは、連続した形状になり、辺41bに設けられた立ち上げ片44bと辺41cに設けられた立ち上げ片44cとは、連続して一体の立ち上げ片として構成される。
【0033】
図3に示すように、端面板41は、第2遮音部材30のx方向の端部に設けられた接合片39と接合される。接合片39は、反射部33の中央部とz方向の両端との間にそれぞれ1箇所ずつ配置されている。接合片39は、凹面からy方向逆向きに端面板41の表面に沿って延びている。接合片39と端面板41とは、ブラインドリベット、ボルト又は溶接などにより接合されている。
【0034】
また、第2反射部材30の接合片39と端面板41とは接合されることにより一体となり、遮音パネル10の振動の発生を抑えることができる。また、第1反射部材20と第2反射部材30とは、ブラインドリベット、ボルト又は溶接などにより接合されて間接的に端面板41と接合されていても良いし、端面板41と第1反射部材20とを直接接合させる接合片が更に設けられていても良い。第1反射部材20と第2反射部材30とを接合するにあたっては、両者の凹面の中央部で接合されていても良く、第1反射部材20と第2反射部材30との間の内部に構造部材を挟んで互いに接合されていても良い。構造部材は、例えばゴムシートなどの弾性部材、金属板により構成された部材、及びそれらの両方を組み合わせた部材などを用いることができる。構造部材は、振動を吸収できる部材を用いても良い。
【0035】
第1反射部材20、第2反射部材30及び端面板41との接合は、上記の他に第1反射部材20及び第2反射部材30の少なくとも一方のx方向の端縁を溶接などの手段を用いて行っても良い。第1反射部材20、第2反射部材30及び端面板41の接合構造については、各部材の剛性に応じて適宜変更できる。
【0036】
図3及び図4に示す、部材51及びナット52は、遮音パネル10のx方向の端面に取り付けられるアイボルト60を固定するものである。
【0037】
図5は、実施の形態1に係る遮音壁100の端面周辺の構造の説明図である。図5は、第1遮音部材20側から見た支柱1のフランジ部3を省略して表示した図である。遮音パネル10は、2本の支柱1の間に配置されるが、2本の支柱1のそれぞれのウェブ部2との間に隙間が生じるような寸法関係になっている。その隙間に遮音パネル10の端面から突出したアイボルト60が設置されている。アイボルト60は、ボルトの頭の部分が環状に形成されているものである。アイボルト60の頭部分には、ワイヤー61が通されている。遮音パネル10は、ワイヤー61により支柱1の間から抜けることなく固定される。
【0038】
図6は、図5のA-A部の断面図である。実施の形態1に係る遮音パネル10は、端面部材40からx方向に立ち上げられている立ち上げ片43、44a、44b、44c、45、46の内側にアイボルト60が配置されており、環状に形成された頭部分の内側にワイヤー61が挿通されている。遮音パネル10の端部の上面及び下面は、切り欠き35が形成されており、ワイヤー61が挿通できるように構成されている。また、遮音パネル10の端部のy方向を向いた面は、端面部材40の立ち上げ片44a、44b、44cの板面により構成されている。これらの板面と支柱1のフランジ部3とに固定部材4を当接させ反力を生じさせるなどの手段により、遮音パネル10は、y方向の移動が抑制され、支柱1に固定される。図6においては、固定部材4を模式的に表しているが、例えば板バネ、ゴムなどの弾性部材、ジャッキなどの手段を利用しても良い。また、遮音パネル10の固定部材4が当接する面とは反対側の面には、フランジ部3との間に例えばゴムシートなどの部材5が挟みこまれて配置されている。部材5は、フランジ部3と遮音パネル10との隙間を埋めることにより、隙間からの音漏れを抑制するものである。部材5は、省略することもできるし、ゴムシート以外の材質で構成されたものであっても良い。
【0039】
ワイヤー61は、遮音パネル10の端部においてアイボルト60に挿通されることにより、遮音壁100に車両が衝突するなどの衝撃が加わり遮音パネル10が支柱1から外れた場合においても、ワイヤー61の余長以上に遮音パネル10が遮音壁100から逸脱しないようにするものである。
【0040】
図7は、実施の形態1に係る遮音パネル10の端部周辺の拡大図である。図7においては、固定部材4の一例として板バネを示している。固定部材4は、例えば支柱1の一方のフランジ部3と端面板41の立ち上げ片44bとの間に挿し込まれ、V字状に折り曲げられた板片4aの反力により、遮音パネル10を他方のフランジ部3に向かって押し付ける。図7に示す固定部材4は、遮音パネル10の端部の上面に固定片4bを載置する様に配置され、固定片4bに設けられた孔4cにワイヤー61を通し、遮音パネル10から脱落しないように構成されている。図1(b)及び図2に示す様に、固定部材4は、積み重ねられた遮音パネル10のそれぞれに設置されることが望ましい。
【0041】
(遮音壁100の作用)
以上のように、実施の形態1に係る遮音壁100を構成する遮音パネル10は、y方向を向いた面及びその反対側の面の両面に凹面を有しているため、例えば道路中央分離帯などにおいて道路に沿って配置した場合に、両側の道路からの騒音を拡散できる。また、遮音パネル10は、第1遮音部材20、第2遮音部材30及び端面部材40を接合するのみで形成され、それぞれ比較的薄い金属板により構成することにより、簡易な構造で比較的軽量である。
【0042】
また、従来の遮音パネルの場合、少なくとも一方の面を構成する背面板、即ち統一板(標準型)が平面を有しており、その平面に太陽光が当たると鏡像反射によりドライバーの視野を阻害する場合がある。しかし、実施の形態1に係る遮音壁100を構成する遮音パネル10は、両面が曲面で形成されており、音波だけでなく遮音パネル10の凹面に入射した光も拡散する効果があるため、従来の遮音パネルと比較して、ドライバーの視野への影響を抑えることができる。
【0043】
従来の遮音パネルを路側に設置した場合、背面板の平面による太陽の反射光が道路脇の民家や側道を通行する車両に対し照射され、その反射光による眩しさや熱による問題が少なからずあった。しかし、実施の形態1に係る遮音パネル10によれば、両面の反射部が太陽光を拡散できる形状になっているため、路側に設置しても道路周辺への影響を抑えることができる。
【0044】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。例えば、反射部23、33の凹面は、断面が円弧形状だけでなく、楕円弧、放物線、又は双曲線、若しくはそれらに近似した形状であっても良い。また、遮音パネル10は、第1遮音部材20と第2遮音部材30との2部品の組み合わせにより構成されているが、一体に構成されていても良いし、更に多くの部材を組み合わせて構成されていても良い。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【0045】
上記に説明した遮音パネル10及び遮音壁100は、以下の付記1~11に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
【0046】
[付記1]
第1方向及び前記第1方向の逆方向のそれぞれを向いた一対の反射部を備え、
前記一対の反射部のそれぞれは、
前記第1方向に沿った断面において、前記第1方向に直交する第2方向の一方の端部及び他方の端部よりも、前記第2方向の中央部が、他方の反射部側に凹んでいる凹面を有する、遮音パネル。
[付記2]
前記一対の反射部は、
前記凹面の底部の位置が前記第2方向において同じ位置にある、付記1に記載の遮音パネル。
[付記3]
前記一対の反射部のそれぞれの前記凹面は、
前記第1方向に沿った断面において円弧状である、付記1又は2に記載の遮音パネル。
[付記4]
前記一対の反射部のうち一方の反射部を有する第1遮音部材と、
前記一対の反射部のうち他方の反射部を有する第2遮音部材と、を備え、
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材は、
金属板により構成され、
前記第1方向に沿った断面において、前記第2方向の両端部において互いに接合されている、付記1~3の何れか1つに記載の遮音パネル。
[付記5]
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材の、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の両端に取り付けられる端面部材を備え、
前記端面部材は、
板面が前記第3方向に向いた端面板と、
前記端面板から前記第3方向に沿って前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材が配置されている側に対し反対方向に延びる固定片と、を備え、
前記固定片は、
前記第1遮音部材及び前記第2遮音部材のそれぞれの前記反射部の底部と接続される、付記4に記載の遮音パネル。
[付記6]
前記第2遮音部材は、
前記第2方向の両端のそれぞれに前記第1方向に向かって延びる端面部を備え、
前記第1遮音部材の前記第2方向の両端は、
前記端面部の先端に固定される、付記4又は5に記載の遮音パネル。
[付記7]
前記第2遮音部材の前記端面部は、
前記第3方向の端部が前記反射部よりも前記第3方向に突出した部分を有し、
前記突出した部分は、
前記端面部材を前記第2方向から覆う様に形成されており、前記第2方向に貫通する切り欠きを有する、請求項6に記載の遮音パネル。
[付記8]
前記端面部は、
前記第1方向に向かうにしたがい前記第2方向に傾斜している、付記6に記載の遮音パネル。
[付記9]
前記端面部は、
前記反射部と接続されている付け根部に孔が形成されている、付記8に記載の遮音パネル。
[付記10]
前記第1方向を向いた面の前記第2方向の逆方向の端に前記第2方向に沿って突出するタブを備える、付記1~9の何れか1つに記載の遮音パネル。
[付記11]
付記1~10の何れか1つに記載の遮音パネルを上下方向に複数積み重ねて構成される、遮音壁。
【符号の説明】
【0047】
1 支柱、2 ウェブ部、3 フランジ部、4 固定部材、4a 板片、4b 固定片、4c 孔、5 部材、10 遮音パネル、10a 端面、10b 端面、11 タブ、13 空洞部、14 空洞部、15 上部折り返し部、16 下部折り返し部、20 第1遮音部材、21 上端部、22 下端部、23 反射部、24 中央部、30 第2遮音部材、31 上側取付部、32 下側取付部、33 反射部、34 中央部、35 切り欠き、36 端面部、37 端面部、39 接合片、40 端面部材、41 端面板、41a 辺、41b 辺、41c 辺、41d 凹部、41e 端、41f 端、42 固定片、43 立ち上げ片、44a 立ち上げ片、44b 立ち上げ片、44c 立ち上げ片、45 立ち上げ片、46 立ち上げ片、47 固定片、51 部材、52 ナット、60 アイボルト、61 ワイヤー、92 車線、100 遮音壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7