(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071057
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】λ/4板の欠点検査方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181788
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家原 恵太
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB06
2H149AB26
2H149BA02
2H149DA04
2H149DA16
2H149EA03
2H149EA06
2H149EA10
2H149EA19
2H149FB08
2H149FD05
(57)【要約】
【課題】λ/4板の欠点を感度よく検出し得る検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明のλ/4板の欠点検査方法は、透明ロール上で、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とをこの順に配置すること、および、第1の偏光子側の面から光を入射させ、第2の偏光子側の面の外観を観察することを含む。上記第1の偏光子の吸収軸と上記第2の偏光子の吸収軸とを直交させ、上記第1のλ/4板の遅相軸と上記第2のλ/4板の遅相軸とを直交させ、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とし、かつ、該第2の偏光子の吸収軸と該第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°としてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ロール上で、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とをこの順に配置すること、および、第1の偏光子側の面から光を入射させ、第2の偏光子側の面の外観を観察することを含む、
λ/4板の欠点検査方法。
【請求項2】
前記第1の偏光子の吸収軸と前記第2の偏光子の吸収軸とを直交させ、前記第1のλ/4板の遅相軸と前記第2のλ/4板の遅相軸とを直交させ、前記第1の偏光子の吸収軸と前記第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とし、かつ、該第2の偏光子の吸収軸と該第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とする、請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項3】
前記第1の偏光子の吸収軸と前記第2の偏光子の吸収軸とを平行とし、前記第1のλ/4板の遅相軸と前記第2のλ/4板の遅相軸とを平行とし、前記第1の偏光子の吸収軸と前記第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とし、かつ、前記第2の偏光子の吸収軸と第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とする、請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項4】
前記第1の偏光子と前記第1のλ/4板とが、光学積層体Aを構成し、
前記透明ロール上の該光学積層体Aの抱き角が、180°以下である、
請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項5】
中空の前記透明ロールの内部に設けられた光源により、前記光を入射させる、請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項6】
前記第1のλ/4板の波長分散特性と、前記第2のλ/4板の波長分散特性とを略同一とすることを含む、請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項7】
前記第1のλ/4板の面内位相差Re1前記と第2のλ/4板の面内位相差Re2との差の絶対値が、20nm以下である、請求項1に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【請求項8】
第1のλ/4板の面内位相差Re1と前記第2のλ/4板の面内位相差Re2とが、Re1<Re2とされる、請求項2に記載のλ/4板の欠点検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、λ/4板の欠点検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置において、表示特性の向上、反射防止等を目的として位相差フィルムが多用されている。位相差フィルムの製造工程においては、局所的な外観不良による欠点が発生することがあり、当該欠点を精度よく検査し得る方法が求められている。特に、位相差フィルムが、液晶材料から構成されるλ/4板は、従来方法では検出できないほど軽微な欠点が生じやすく、このような欠点をも精度よく検出し得る検査方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、λ/4板の欠点を精度よく検出し得る欠点検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明のλ/4板の欠点検査方法は、透明ロール上で、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とをこの順に配置すること、および、第1の偏光子側の面から光を入射させ、第2の偏光子側の面の外観を観察することを含む。
[2]上記[1]のλ/4板の欠点検査方法において、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第2の偏光子の吸収軸とを直交させ、上記第1のλ/4板の遅相軸と上記第2のλ/4板の遅相軸とを直交させ、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とし、かつ、該第2の偏光子の吸収軸と該第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°としてもよい。
[3]上記[1]のλ/4板の欠点検査方法において、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第2の偏光子の吸収軸とを平行とし、上記第1のλ/4板の遅相軸と上記第2のλ/4板の遅相軸とを平行とし、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とし、かつ、上記第2の偏光子の吸収軸と第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°としてもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかのλ/4板の欠点検査方法において、上記第1の偏光子と上記第1のλ/4板とが、光学積層体Aを構成し、上記透明ロール上の該光学積層体Aの抱き角が、180°以下であってもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかのλ/4板の欠点検査方法において、中空の透明ロールの内部に設けられた光源により、前記光を入射させてもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかのλ/4板の欠点検査方法において、上記第1のλ/4板の波長分散特性と、上記第2のλ/4板の波長分散特性とを略同一としてもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかのλ/4板の欠点検査方法において、第1のλ/4板の面内位相差Re1と第2のλ/4板の面内位相差Re2との差の絶対値が、20nm以下であってもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかのλ/4板の欠点検査方法において、第1のλ/4板の面内位相差Re1と第2のλ/4板の面内位相差Re2とが、Re1<Re2とされていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、λ/4板を含む光学積層体の欠点を精度よく検出し得る欠点検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による検査方法を説明する概略斜視図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による検査方法を説明する概略斜視図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による検査方法を説明する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.欠点検査方法
本発明の欠点検査方法は、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とをこの順に配置すること、および、第1の偏光子側の面から光を入射させ、第2の偏光子側の面の外観を観察することを含む。本発明の欠点検査方法は、第1のλ/4板を検査対象としてもよく、第2のλ/4板を検査対象としてもよく、第1のλ/4板と第2のλ/4板とを含む積層体を検査対象としてもよい。好ましくは、第1のλ/4板と第1の偏光子とを含む積層体体が検査対象となり、当該第1のλ/4板の欠点が検査される。
【0009】
代表的には、第1の偏光子および第2の偏光子は、保護フィルムとともに偏光板として適用される。
【0010】
第1のλ/4板および/または第2のλ/4板は、任意の適切なその他の層および/またはフィルムとともに積層体を構成していてもよい。その他の層およびその他のフィルムとしては、例えば、粘着剤層、接着剤層、基材等が挙げられる。その他の層およびその他のフィルムは、光学的に等方性であることが好ましい。
【0011】
1つの実施形態においては、第1のλ/4板または第2のλ/4板が、液晶材料で構成される。1つの実施形態においては、液晶材料で構成されたλ/4板(好ましくは第1のλ/4板)が、検査対象となる。本発明においては、液晶材料で構成されたλ/4板の軽微な欠点をも感度よく検査し得る点で有利である。
【0012】
本発明においては、λ/4板を透過した偏光について、λ/4板により正常に位相差が与えられることなく第2の偏光子に到達した光を観察して、当該λ/4板の欠点を検査する。
【0013】
本発明においては、透明ロール上で、上記のとおり、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とをこの順に配置する。好ましくは、第1の偏光子が透明ロールに接するようにして、欠点検査が行われる。上記各要素を、ロール上に構成することにより、検査対象のバタツキを抑制することができ、その結果、精度よく欠点検査を行うことができる。また、当該ロールを透明とすることにより、第1の偏光子側の面からの光入射を好ましく行うことができる。
【0014】
検査の具体的な方法について、以下に例示する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態において、第1の偏光子と第2の偏光子とは、第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸とを直交させるようにして配置される。また、第1のλ/4板と第2のλ/4板とは、第1のλ/4板の遅相軸と第2のλ/4板の遅相軸とを直交させるようにして配置される。また、第1の偏光子と第1のλ/4板は、第1の偏光子の吸収軸と第1のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とするようにして配置される。また、第2の偏光子と第2のλ/4板は、第2の偏光子の吸収軸と第2のλ/4板の遅相軸とのなす角を、35°~55°とするようにして配置される。なお、本発明の効果が得られる限り、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とがこの順に配置されていれば、その間に他のフィルムが介在していてもよい。例えば、第1の偏光子と第1のλ/4板との間に他の位相差フィルム(例えばポジティブCプレート)が介在していても良い。
【0016】
本明細書において、「直交」は、実質的に直交している状態も含む。「実質的に直交」とは、2つの方向のなす角が90°±7°である場合を包含し、好ましくは90°±5°であり、さらに好ましくは90°±3°である。また、本明細書において角度に言及するときは、基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。また、上記のとおり、本発明における各要素は、透明ロール上で構成されるが、本明細書において、各要素の軸の関係性は、当該要素を平面に置いたと仮定した状態の関係性を意味する。また、「第2の偏光子側の面の外観を観察する」とは、第2の偏光子を透過した光の有無および量を観察することを意味する。また、本明細書において、位相差とは面内位相差を意味する。
【0017】
図1は、本発明の1つの実施形態による検査方法を説明する概略斜視図である。なお、
図1および後述の
図2においては、各要素の軸の関係性を説明するため、「各要素を平面に置いたと仮定した状態」を図示している。
図1においては、第1の偏光子11と、第1のλ/4板21と、第2のλ/4板22と、第2の偏光子12とをこの順に配置した構成と、各層を透過した光の偏光方向を示している。本実施形態の検査方法においては、第1の偏光子11を透過して生成された偏光aが、第1のλ/4板21および第2のλ/4板22を透過して、偏光aと同じ偏光方向を有する偏光bとなり、当該偏光bを正常な光として第2の偏光子12に到達させるように、第1の偏光子11と、第1のλ/4板21と、第2のλ/4板22と、第2の偏光子12とが配置されている。一方、正常な光とは偏光方向が相違する光は、相違の程度に応じて異常な光として検知され、当該異常な光はλ/4板の欠点に起因すると判断され得る。なお、便宜上、上から第2の偏光子の外観を観察する様子を図示しているが、実際には、上下を逆にして検査系を構成してもよい。
【0018】
上記のとおり、本発明は、入射光の偏光の方向をコントロールしつつ、λ/4板の欠点を検査する。このような検査を、上記透明ロール上で行うことにより、検査対象のバタツキを防止することで各材料の適正な軸関係を維持することが可能となり、軸ズレによる検査精度悪化を低減することができる。その結果、精度よくλ/4板の欠点検査を行うことができる。
【0019】
1つの実施形態においては、第1のλ/4板の波長分散特性と、第2のλ/4板の波長分散特性とが略同一となるように構成される。波長分散特性とは、位相差値の波長依存性をいう。「第1のλ/4板の波長分散特性と、第2のλ/4板の波長分散特性とが略同一」であるとは、第1のλ/4板と第2のλ/4板が、共に逆波長分散特性であるか、あるいは、共に正波長分散特性であることを意味し、例えば、(第1のλ/4板の波長分散特性値)/(第2のλ/4板の波長分散特性値)が0.8~1.2であることを意味する。波長分散特性値とは、Re[450]/Re[550]で表される値であり得る。なお、Re[λ]は、23℃における波長λの光で測定したフィルム面内の位相差値であり、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率をnxとし、面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率をnyとし、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx-ny)×dによって求められる。また、逆波長分散特性とは、短波長側の位相差が小さく、長波長側の位相差が大きい特性(すなわち、Re(450)<Re(550)<Re(650))をいう。正波長分散特性とは、長波長側の位相差が小さく、短波長側の位相差が大きい特性(すなわち、Re(650)<Re(550)<Re(450))をいう。上記波長分散値は、λ/4板に用いる樹脂の種類および/または含有量、該樹脂に導入する置換基の種類および/または含有量を調整することにより、増加または減少させることが可能である。例えば、WO00/26705号公報や日本液晶学会発行「液晶 第9巻 第4号」(2005年)p.214
図8に記載されているように、共重合体の組成によって、位相差フィルムの波長分散値は、制御可能である。
【0020】
第1のλ/4板の波長分散特性と、第2のλ/4板の波長分散特性とが略同一であることにより、広範囲な波長において、偏光に対する上記作用が生じるため、欠点と正常部とのコントラストが高くなり、高感度な欠点検出が可能となると考えられる。また、第2の偏光子側の面の外観を観察するする際のカメラは、一般的に青色の光に対する感度が低いところ、上記実施形態の欠点検査方法によれば、受光感度の低い青色成分の透過を抑制することができるため、高感度な欠点検出が可能となると考えられる。「第1のλ/4板の波長分散特性と、第2のλ/4板の波長分散特性とが略同一であること」のこのような効果は、欠点がムラ状の欠点である場合に顕著となる。
【0021】
(第1のλ/4板の波長分散特性値)/(第2のλ/4板の波長分散特性値)は、好ましくは0.9~1.1であり、より好ましくは0.95~1.05である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0022】
第1のλ/4板の面内位相差Re1と第2のλ/4板の面内位相差Re2との差の絶対値は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。このような範囲であれば、λ/4板(好ましくは、第1のλ/4板)の欠点をコントラストに優れた状態で検出することが可能となる。
【0023】
1つの実施形態においては、第1のλ/4板の面内位相差Re1と第2のλ/4板の面内位相差Re2とは、Re1<Re2とされる。このようにすれば、λ/4板(好ましくは、第1のλ/4板)の欠点を暗点としてコントラストに優れた状態で検出することが可能となる。Re2-Re1は、好ましくは、2nm以上であり、より好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上である。Re2-Re1の上限は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
【0024】
(第2の実施形態)
本実施形態において、第1の偏光子と第2の偏光子とは、第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸とが平行となるようにして配置される。また、第1のλ/4板と第2のλ/4板とは、第1のλ/4板の遅相軸と第2のλ/4板の遅相軸とが平行となるようにして配置される。また、第1の偏光子と第1のλ/4板とは、第1の偏光子の吸収軸と第1のλ/4板の遅相軸とのなす角が35°~55°となるようにして配置される。また、第2の偏光子と第2のλ/4板とは、第2の偏光子の吸収軸と第2のλ/4板の遅相軸とのなす角が35°~55°となるようにして配置される。なお、第1の偏光子と、第1のλ/4板と、第2のλ/4板と、第2の偏光子とがこの順に配置されていれば、その間に他のフィルムが介在していても良い。例えば、第1の偏光子と第1のλ/4板との間に他の位相差フィルム(例えばポジティブCプレート)が介在していてもよい。
【0025】
本明細書において、「平行」は、実質的に平行な状態も含む。「実質的に平行」とは、2つの方向のなす角度が0°±7°である場合を包含し、好ましくは0°±5°であり、さらに好ましくは0°±3°である。
【0026】
図2は、本発明の1つの実施形態による検査方法を説明する概略断面図である。
図2においては、第1の偏光子11と、第1のλ/4板21と、第2のλ/4板22と、第2の偏光子12とをこの順に配置した構成と、各層を透過した光の偏光方向を示している。本実施形態においては、第1の偏光子11を透過して生成された偏光aに、2枚のλ/4板(第1のλ/4板21、第2のλ/4板22)による位相差が与えられる。本実施形態においては、偏光aに位相差を与えて偏光方向を略90°回転させ、かつ、このようにして生じた偏光bを、正常な光として第2の偏光子12に到達させるように、第1の偏光子11と、第1のλ/4板21と、第2のλ/4板22と、第2の偏光子12とが配置されている。一方、正常な光とは偏光方向が相違する光は、相違の程度に応じて異常な光として検知され、当該異常な光はλ/4板の欠点に起因すると判断され得る。本実施形態においては、上記のような構成とすることにより、多様な欠点を有するλ/4板を感度よく検査することができる。なお、便宜上、上から第2の偏光子の外観を観察する様子を図示しているが、実際には、上下を逆にして検査系を構成してもよい。
【0027】
また、本実施形態の検査方法によれば、λ/4板を配置する際に、当該λ/4板の遅相軸の方向が所望の位置から多少ずれた場合にも、安定して検査をすることができる。より詳細には、第1のλ/4板および第2のλ/4板は、その遅相軸が、第1の偏光子の吸収軸に対して45°の角度を有するように配置することが原理上最適であるが、本実施形態の検査方法によれば、最適配置に対して±10°程度のズレがあっても、十分な感度で検査を行うことができる。したがって、上記のとおり、第1の偏光子の吸収軸と第1のλ/4板の遅相軸とのなす角が35°~55°となり、かつ、第2の偏光子の吸収軸と第2のλ/4板の遅相軸とのなす角が35°~55°となるようにして、偏光子とλ/4板とが配置される。第1の偏光子の吸収軸と第1のλ/4板の遅相軸とのなす角は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは43.5°~46.5°である。このような範囲であれば、検査感度が顕著に向上する。
【0028】
本実施形態においても、第1のλ/4板の波長分散特性と、第2のλ/4板の波長分散特性とが略同一となるように構成されていてもよい。(第1のλ/4板の波長分散特性値)/(第2のλ/4板の波長分散特性値)は、好ましくは0.8~1.2であり、より好ましくは0.9~1.1であり、さらに好ましくは0.95~1.05である。
【0029】
第1のλ/4板の面内位相差Re1と第2のλ/4板の面内位相差Re2との差の絶対値は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。このような範囲であれば、λ/4板(好ましくは、第1のλ/4板)の欠点をコントラストに優れた状態で検出することが可能となる。
【0030】
(検査対象の例示)
1つの実施形態においては、第1のλ/4板21が液晶材料で構成され、
図3に模式的に示すように、第1の偏光子11(好ましくは、第1の偏光子を含む偏光板)と第1のλ/4板21とを含む光学積層体Aが検査対象となる。本実施形態において、第2のλ/4板22および第2の偏光子12(好ましくは、第2の偏光子を含む偏光板)は、検査ツールとして用いられる。また、検査対象(
図3においては、光学積層体A)は長尺状であることが好ましい。長尺状の検査対象(
図3においては、光学積層体A)は、回転する透明ロール40により搬送され得る。代表的には、光学積層体Aは、円偏光板であり得る。本実施形態の検査方法は、製品としての光学積層体A(円偏光板)の検査に採用され得る。
【0031】
なお、本明細書において、「検査ツール」とは検査用に用いられる部材であって、検査の対象とならない要素を意味する。検査ツールには、透明ロール、光源、カメラも含む。例えば、検査対象は長尺状であり得、連続的に上記検査方法による検査に供され得るが、検査ツールは、検査方法による検査が実施される所定の場所で用いられ得る。
【0032】
第1の偏光子側の面に入射させる光は、任意の適切な光源により生成される。1つの実施形態においては、光源として白色LEDが用いられる。
【0033】
第2の偏光子側の面の外観観察は、任意の適切な方法により行われ得る。代表的には、任意の適切なカメラにより検査領域の画像を得、当該画像を2値化処理等の画像処理を行い、正常箇所/不良箇所の判断を行う。
【0034】
上記透明ロールとしては、光源からの光を、第1の偏光子と第1のλ/4板と第2のλ/4板と第2の偏光子とを含む上記構成に到達させ得るよう構成され、かつ、検査対象のバタツキを抑え得るロールである限り、任意の適切なロールが用いられ得る。透明ロールは、長尺状の検査対象を搬送に寄与する、いわゆる搬送ロールであり得る。透明ロールは、回転自在に構成されていてもよく、任意の適切な駆動装置により駆動可能な構成であってもよい。なお、本明細書において、「透明」とは全光線透過率が50%以上であることを意味する。
【0035】
例えば、上記透明ロールは、中空であり、外殻が透明材料から形成された構成であり得る。透明ロールの外殻を構成する材料としては、任意の適切な材料が用いられ得る。例えば、ガラス;アクリル系樹脂等の樹脂;等が、用いられ得る。透明ロールの外殻の全光線透過率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。透明ロールの外殻の全光線透過率の上限は、例えば、95%である。
【0036】
上記光源は、第1の偏光子と第1のλ/4板と第2のλ/4板と第2の偏光子とを含む上記構成に光を到達させ得る限り、任意の適切な位置に配置されうる。例えば、上記光源は、上記透明ロールを介して、第1の偏光子と第1のλ/4板と第2のλ/4板と第2の偏光子とを含む上記構成に対向する位置に設けられていてもよく、中空の透明ロールの内部に設けられていてもよい。
【0037】
1つの実施形態においては、上記のように、上記第1の偏光子と上記第1のλ/4板とが、光学積層体Aを構成し、上記透明ロール上の該光学積層体Aの抱き角aが、180°以下である。このようにすれば、透明ロールの外側に光源を配置する際に、検査対象としての光学積層体Aに、不用な光が到達することを防止することができる。抱き角aは、好ましくは30°~180°であり、より好ましくは45°~180°であり、さらに好ましくは60°~180°である。
【0038】
B.第1の偏光子、第2の偏光子
上記偏光子としては、任意の適切な偏光子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く、特に好ましい。偏光子の厚みは、好ましくは、0.5μm~80μmである。
【0039】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、代表的には、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製される。延伸は染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、延伸してから染色してもよい。延伸、染色以外にも、例えば、膨潤、架橋、調整、水洗、乾燥等の処理が施されて作製される。
【0040】
上記のとおり、1つの実施形態においては、第1の偏光子および第2の偏光子(これらを偏光子と総称することもある)は、保護フィルムとともに偏光板として適用される。
【0041】
上記保護フィルムとしては、任意の適切なフィルムが用いられる。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、(メタ)アクリル系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。上記ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0042】
1つの実施形態においては、第2の偏光子として、光透過率が42%以上の偏光子が用いられる。このような第2の偏光子を用いれば、検出感度を向上させることができる。第2の偏光子の光透過率は、より好ましくは43%以上であり、さらに好ましくは44%以上である。また、第2の偏光子を含む偏光板が用いられる場合、当該偏光板の光透過率は、好ましくは42%以上であり、より好ましくは43%以上であり、さらに好ましくは44%以上である。
【0043】
C.第1のλ/4板、第2のλ/4板
第1のλ/4板および第2のλ/4板(これらをλ/4板と総称することもある)は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換し得る。
【0044】
上記λ/4板は、その面内位相差Re[590]が、好ましくは95nm~180nmであり、より好ましくは110nm~160nmである。λ/4板は、好ましくは、nx>ny≧nzの屈折率楕円体を有する。本明細書において、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。
【0045】
1つの実施形態において、λ/4板のRe[450]/Re[550]は、好ましくは0.80~0.99であり、より好ましくは0.82~0.93である。また、λ/4板のRe[550]/Re[650]は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0046】
別の実施形態において、λ/4板のRe[450]/Re[550]は、好ましくは1.01~1.25であり、より好ましくは1.05~1.2である。また、λ/4板のRe[550]/Re[650]は、好ましくは1より大きく1.25以下であり、より好ましくは1.03~1.25である。
【0047】
(液晶材料で構成されたλ/4板)
上記のとおり、1つの実施形態においては、第1のλ/4板または第2のλ/4板が、液晶材料で構成される。液晶材料としては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。1つの実施形態においては、液晶材料で構成されたλ/4板は、逆波長分散特性を有する。
【0048】
液晶材料から構成されるλ/4板は、例えば、液晶材料を配向させ、当該配向状態を固定したまま固化または硬化させることにより得られ得る。具体的には、長尺状の配向基材上に、液晶材料を含む液晶性組成物を塗布して、液晶材料を配向させること、および、配向した液晶材料に重合処理および/または架橋処理を施して、液晶硬化層を形成することにより形成され得る。ここで、液晶材料は、基板の配向処理方向に応じて配向し得るので、基板の配向処理方向と実質的に同一な方向に位相差層の遅相軸を発現させ得る。位相差層の形成方法の具体例としては、特開2006-178389号公報に記載の形成方法が挙げられる。液晶材料の硬化層または固化層から構成される透明フィルムの厚みは、好ましくは0.5μm~1.8μmであり、より好ましくは1μm~1.6μmである。
【0049】
1つの実施形態においては、液晶材料として、加熱により液晶性を発現するサーモトロピック液晶が用いられ得る。サーモトロピック液晶は、温度変化により、結晶相、液晶相、等方相の相転移を生じる。
【0050】
(延伸フィルムで構成されたλ/4板)
延伸フィルムで構成されたλ/4板は、例えば、高分子フィルムを所定の方向に延伸して得られる。
【0051】
上記高分子フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられる。具体例としては、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂等の正の複屈折フィルムを構成する樹脂が挙げられる。中でも、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。また、1つの実施形態において、逆波長分散特性を有するλ/4板を用いる場合、ポリカーボネート系樹脂が用いられ得る。
【0052】
上記ポリノルボルネンとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。当該ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5-メチル-2-ノルボルネン、5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3-ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-クロロ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-シアノ-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-ピリジル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-メトキシカルボニル-1,4:5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3~4量体、例えば、4,9:5,8-ジメタノ-3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9-トリメタノ-3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0053】
上記ポリノルボルネンとしては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0054】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2
,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
【0055】
延伸方法としては、例えば、横一軸延伸、固定端二軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられる。固定端二軸延伸の具体例としては、高分子フィルムを長手方向に走行させながら、短手方向(横方向)に延伸させる方法が挙げられる。この方法は、見かけ上は横一軸延伸であり得る。また、斜め延伸も採用することができる。斜め延伸を採用することにより、幅方向に対して所定の角度の配向軸(遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムを得ることができる。斜め延伸によりλ/4板を製造する方法は、例えば、特開2013-54338号公報、特開2014-194482号公報、特開2014-238524号公報、特開2014-194484号公報等に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0056】
上記延伸フィルムの厚みは、代表的には5μm~80μm、好ましくは15μm~60μm、さらに好ましくは25μm~45μmである。
【符号の説明】
【0057】
11 第1の偏光子
12 第2の偏光子
21 第1のλ/4板
22 第2のλ/4板
40 透明ロール