(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007106
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電気化学反応装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20240111BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20240111BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20240111BHJP
H01M 8/0208 20160101ALI20240111BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240111BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240111BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240111BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0215
H01M8/0228
H01M8/0208
C25B1/042
C25B9/00 A
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108327
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】中村 計介
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC03
5H126AA08
5H126AA12
5H126BB06
5H126CC02
5H126DD05
5H126EE11
5H126EE13
5H126FF07
5H126GG02
5H126GG12
5H126HH01
5H126HH04
5H126JJ05
5H126JJ08
(57)【要約】
【課題】単セルにガスを給排する流路を形成する部材とガラス部材との密着性を向上させる。
【解決手段】本製造方法は、電気化学反応単セルにガスを給排する流路を形成する第1部材および第2部材と、第1部材と第2部材とを接合するガラス部材と、を含む複合体を備える電気化学反応装置の製造方法であり、用意工程と第1成膜工程と接合工程とを備える。用意工程は、アルミニウムを含む金属部材である第1部材と、第2部材と、を用意する工程である。第1成膜工程は、第1部材を加熱することにより、第1部材の表面にアルミナ被膜を形成する工程である。第1成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された第1部材と、第2部材との間に、接合前のガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、第1部材、第2部材、および接合前ガラス部材を加熱することにより、第1部材と第2部材とを接合する工程である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応単セルにガスを給排する流路を形成する第1部材および第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接合するガラス部材と、を含む複合体を備える電気化学反応装置の製造方法であって、
アルミニウムを含む金属部材である前記第1部材と、前記第2部材と、を用意する用意工程と、
前記第1部材を加熱することにより、前記第1部材の表面にアルミナ被膜を形成する第1成膜工程と、
前記第1成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第1部材と、前記第2部材との間に、接合前の前記ガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、前記第1部材、前記第2部材、および前記接合前ガラス部材を加熱することにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を備える、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記用意工程で用意する前記第1部材は、アルミニウムを1質量%以上含む、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記第1成膜工程において、前記第1部材を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記用意工程で用意する前記第2部材は、アルミニウムを含む金属部材であり、
前記製造方法は、前記第2部材を加熱することにより、前記第2部材の表面にアルミナ被膜を形成する第2成膜工程を更に備え、
前記接合工程は、前記第1成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第1部材と、前記第2成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第2部材との間に、接合前の前記ガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、前記第1部材、前記第2部材、および前記接合前ガラス部材を加熱することにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する工程である、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記用意工程で用意する前記第2部材は、アルミニウムを1質量%以上含む、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記第2成膜工程において、前記第2部材を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記ガラス部材は、アルミナを含む、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学反応装置の製造方法であって、
前記ガラス部材は、アルミナを1質量%以上含む、
ことを特徴とする電気化学反応装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、複数の構成単位(以下、「燃料電池発電単位」または「発電単位」という。)が所定の方向に並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。各発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)を有する(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の燃料電池スタックは、複数の単セルが挿入される挿入口が形成された支持体と、当該挿入口を介して複数の単セルに反応ガスを供給するための開口部を有するガスタンクとを備える。支持体とガスタンクとは、ガラス部材を介して接合されている。支持体やガスタンクは、単セルにガス(反応ガス)を給排する流路の一部を形成している。すなわち、この燃料電池スタックは、単セルにガスを給排する流路を形成する支持体(以下、「第1部材」という。)およびガスタンク(以下、「第2部材」という。)と、第1部材と第2部材とを接合するガラス部材と、を含む複合体を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単セルにガスを給排する流路を形成する第1部材および第2部材と、第1部材と第2部材とを接合するガラス部材と、を含む複合体を備える構成において、第1部材とガラス部材との密着性を向上させる、という課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、単セルにガスを給排する流路を形成する第1部材や第2部材として、上記部材(支持体、ガスタンク)以外の部材を備える構成においても共通の課題である。このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルを含む電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの燃料電池や電解セルにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応装置の製造方法は、電気化学反応単セルにガスを給排する流路を形成する第1部材および第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接合するガラス部材と、を含む複合体を備える電気化学反応装置の製造方法であって、アルミニウムを含む金属部材である前記第1部材と、前記第2部材と、を用意する用意工程と、前記第1部材を加熱することにより、前記第1部材の表面にアルミナ被膜を形成する第1成膜工程と、前記第1成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第1部材と、前記第2部材との間に、接合前の前記ガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、前記第1部材、前記第2部材、および前記接合前ガラス部材を加熱することにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を備える。
【0010】
本製造方法においては、上述のように、接合工程の前に、第1部材を加熱することにより、第1部材の表面にアルミナ被膜を形成する(成膜工程)。表面にアルミナ被膜が形成された第1部材と、第2部材との間に、接合前の上記ガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、第1部材、第2部材、および接合前ガラス部材を加熱することにより、第1部材と第2部材とを接合する(接合工程)。表面にアルミナ被膜が形成された第1部材と、接合前ガラス部材とを加熱したときの第1部材に対する接合前ガラス部材の濡れ性は、第1部材が上記アルミナ被膜を有さない構成と比べて向上する。そのため、本製造方法によれば、第1部材と上記ガラス部材との密着性(ひいては、第1部材と第2部材との接合性)が優れた上記複合体を得ることができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記用意工程で用意する前記第1部材は、アルミニウムを1質量%以上含む構成としてもよい。本製造方法によれば、成膜工程において、第1部材にアルミナ被膜をより確実に形成することができ、ひいては第1部材と上記ガラス部材との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記第1成膜工程において、前記第1部材を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する構成としてもよい。本製造方法によれば、成膜工程において、第1部材にアルミナ被膜をより確実に形成することができ、ひいては第1部材と上記ガラス部材との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記用意工程で用意する前記第2部材は、アルミニウムを含む金属部材であり、前記製造方法は、前記第2部材を加熱することにより、前記第2部材の表面にアルミナ被膜を形成する第2成膜工程を更に備え、前記接合工程は、前記第1成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第1部材と、前記第2成膜工程により表面にアルミナ被膜が形成された前記第2部材との間に、接合前の前記ガラス部材である接合前ガラス部材を配置した状態で、前記第1部材、前記第2部材、および前記接合前ガラス部材を加熱することにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する工程である構成としてもよい。本製造方法においては、第1部材、第2部材、および接合前ガラス部材を加熱したときの第2部材に対する接合前ガラス部材の濡れ性は、第2部材が上記アルミナ被膜を有さない構成と比べて向上する。そのため、本製造方法によれば、第2部材と上記ガラス部材との密着性(ひいては、第1部材と第2部材との接合性)が優れた上記複合体を得ることができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記用意工程で用意する前記第2部材は、アルミニウムを1質量%以上含む構成としてもよい。本製造方法によれば、成膜工程において、第2部材にアルミナ被膜をより確実に形成することができ、ひいては第2部材と上記ガラス部材との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記第2成膜工程において、前記第2部材を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する構成としてもよい。本製造方法によれば、成膜工程において、第2部材にアルミナ被膜をより確実に形成することができ、ひいては第2部材と上記ガラス部材との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0016】
(7)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記ガラス部材は、アルミナを含む構成としてもよい。上記ガラス部材と第1部材(および第2部材)との熱膨張率の差が大きいと、上記電気化学反応装置の稼働時における高温等、温度変化が生じたときに、これら部材の熱膨張差が大きいことにより、これら部材の剥離やクラック等の問題が発生し易い(ひいては、第1部材と第2部材との接合性が損なわれる)。本製造方法により製造される上記複合体においては、上述したように上記ガラス部材はアルミナを含むため、上記ガラス部材がアルミナを含まない構成等と比較して、上記ガラス部材と、第1部材(および第2部材)の表面に形成されたアルミナ被膜との間の熱膨張率の差が小さくなる。そのため、上記電気化学反応装置の稼働時における高温等、温度変化が生じたときにおいても、上記ガラス部材とアルミナ被膜との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を抑制することができ、ひいては、第1部材および第2部材と上記ガラス部材との密着性を更に向上させることができる。
【0017】
(8)上記電気化学反応装置の製造方法において、前記ガラス部材は、アルミナを1質量%以上含む構成としてもよい。本製造方法によれば、上述した上記ガラス部材と上記アルミナ被膜との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を特に効果的に抑制することができ、ひいては、第1部材および第2部材と上記ガラス部材との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単位、複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)等の電気化学反応装置、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図7】
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【
図8】燃料電池スタック100の一部(
図2および
図5のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図
【
図9】燃料電池スタック100の一部(
図3のX2部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図
【
図10】燃料電池スタック100の製造方法を示すフローチャート
【
図11】変形例としての燃料電池スタック2002の断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態:
A-1.燃料電池スタック100の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図5以降についても同様である。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、末端セパレータ210と、上端プレート220と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。
【0022】
図1および
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、末端セパレータ210、下端プレート189、一対のターミナルプレート410,420、および、絶縁部200)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。上側エンドプレート104のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔が貫通形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔が貫通形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0023】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
【0024】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。なお、以下、連通孔108のうち、下側エンドプレート106に形成された孔を、特にエンド貫通孔107という。
【0025】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガス供給マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162は、各発電単位102の空気極114(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0026】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、各発電単位102の燃料極116(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0027】
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28とフランジ部29とを有している。本体部28には、上下方向に貫通するガス貫通孔26が形成されている。本体部28の一端(上端)は、下側エンドプレート106に形成されたエンド貫通孔107に接続されている。具体的には、本体部28の上端は、エンド貫通孔107内に挿入され、例えば溶接により接合されている。なお、本体部28の上端の外径および内径は、本体部28の他端(下端)の外径および内径より小さくなっている。フランジ部29は、本体部28の下端側から上下方向(Z軸方向)に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に張り出すように設けられている。なお、フランジ部29の上下方向視での形状は、略矩形状であり、4つの角部のそれぞれにはボルト孔29A(
図1参照)が形成されている。各ボルト孔29Aには、燃料電池スタック100を外部装置に接続するためのボルト(図示しない)が挿入される。
【0028】
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0029】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。なお、エンドプレート104,106は、それぞれ、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)して形成されたものである。
【0030】
図2から
図4に示すように、上側エンドプレート104は、平面部310と、凸部320と、を含んでいる。平面部310は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部310のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部310におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部320は、平面部310から上側に突出したリブである。凸部320は、外側凸部322と、内側凸部324と、を有している。外側凸部322は、平面部310の外周部から上側に突出している。外側凸部322は、平面部310の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部324は、平面部310の内周部から上側に突出している。内側凸部324は、平面部310の内周部の全周にわたって形成されている。
【0031】
また、下側エンドプレート106は、平面部510と、凸部520と、を含んでいる。平面部510は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部510のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部510におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部520は、平面部510から下側に突出したリブである。凸部520は、外側凸部522と、内側凸部524と、を有している。外側凸部522は、平面部510の外周部から下側に突出している。外側凸部522は、平面部510の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部524は、平面部510の内周部から下側に突出している。内側凸部524は、平面部510の内周部の全周にわたって形成されている。
【0032】
図2および
図3に示すように、下側エンドプレート106には、補強部材600が固定されている。補強部材600は、平板部分610と、筒部分620と、を有する。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510に平行な平板状の部分である。平板部分610の上下方向視での形状は、略矩形である。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510から下方に離間した位置に配置されている。平板部分610の長手方向の一方側の辺は、外側凸部522の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されており、平板部分610の長手方向の他方側の辺は、内側凸部524の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610には、ガス通路部材27の本体部28を挿入可能な貫通孔612が形成されている。筒部分620は、平板部分610の貫通孔612に連通する貫通孔622を有する円筒状の部分である。筒部分620は、平板部分610における貫通孔612の周囲部分から下側に突出するように形成されている。平板部分610の貫通孔612および筒部分620の貫通孔622を構成する内壁面がガス通路部材27の本体部28の外周面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610と筒部分620とは、一体に形成されている。補強部材600は、耐熱性材料や、下側エンドプレート106やガス通路部材27等と同一材料または熱膨張率が同じ材料により形成されていることが好ましく、例えば金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。
【0033】
(ターミナルプレート410,420の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側(X軸正方向側)の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。本実施形態では、上側ターミナルプレート410の張り出し部分は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側ターミナルプレート420の張り出し部分は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0034】
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190(後述)に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。
【0035】
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
【0036】
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部218における下側(発電ブロック103側)の部分は凸部となっており、連結部218における上側(上側エンドプレート104側)の部分は凹部となっている。このため、連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
【0037】
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性とが確保されている。
【0038】
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性とが確保されている。
【0039】
(発電単位102の構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0040】
図5から
図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0041】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0042】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0043】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、Al(アルミニウム)を含む金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124(および、後述する第1ガラス部材125)により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0044】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0045】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、アルミナを含有するガラスを含む第1ガラス部材(ガラスシール部)125が配置されている。第1ガラス部材125は、アルミナを1質量%以上(例えば、2.0質量%以上かつ20質量%以下)含んでいる。第1ガラス部材125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。第1ガラス部材125により、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と単セル110の周縁部とが接合され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0046】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(
図2から
図4参照)。
【0047】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、Alを含む金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
【0048】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0049】
空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0050】
燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0051】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。燃料極側集電部材144は、例えば、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に複数の矩形の切り込みを入れ、該材料の上に複数の孔が形成されたシート状の燃料極側集電部材144を配置した状態で、複数の矩形部分を曲げ起こしてスペーサー149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴が開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。
【0052】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0053】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下側ターミナルプレート420)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば600℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0054】
図2および
図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3および
図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0055】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100は、各発電単位102において、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0056】
A-3.単セル用セパレータ120および単セル110の周辺の詳細構成:
図8は、燃料電池スタック100の一部(
図2および
図5のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
図8には、単セル用セパレータ120および単セル110の周辺の構成が示されている。
【0057】
燃料電池スタック100(が備える発電単位102)は、上述した単セル用セパレータ120と単セル110と第1ガラス部材125とを備える。単セル用セパレータ120、単セル110、および第1ガラス部材125は、結合して一体となっている。すなわち、燃料電池スタック100は、単セル用セパレータ120と単セル110と第1ガラス部材125とを含む複合体(以下、「第1複合体」という。)700を備える。単セル用セパレータ120および単セル110は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路(空気室166、燃料室176)を形成する部材に該当する。「単セル110にガスを給排する流路」とは、単セル110にガスを供給する用途と、単セル110からガスを排出する用途との少なくとも一方の用途で利用されうる流路を意味する(以下同様)。なお、第1複合体700は、特許請求の範囲における複合体の一例であり、第1複合体700の一部としての単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、第1複合体700の一部としての単セル110は、特許請求の範囲における第2部材の一例である。
【0058】
上述したように、単セル用セパレータ120は、Alを含む金属により形成されている。単セル用セパレータ120の表面SF1には、アルミナ被膜AI1が形成されている。より具体的には、単セル用セパレータ120のうち、第1ガラス部材125と接触する部分において、アルミナ被膜AI1が形成されている。アルミナ被膜AI1の膜厚は、例えば0.1μm以上かつ3.0μm以下である。
【0059】
A-4.単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の周辺の詳細構成:
図9は、燃料電池スタック100の一部(
図3のX2部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
図9には、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の周辺の構成が示されている。
【0060】
燃料電池スタック100(が備える発電単位102)は、上述した単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とを備え、更に、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とを接合する第2ガラス部材129を備える。第2ガラス部材129は、空気極側フレーム130の孔131内に位置している。第2ガラス部材129は、アルミナを含有するガラスを含んでいる。第2ガラス部材129は、アルミナを1質量%以上(例えば、2.0質量%以上かつ20質量%)含んでいる。第2ガラス部材129は、連通孔108付近において、単セル用セパレータ120の表面とIC用セパレータ180の表面との両方に接触するように形成されている。単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、および第2ガラス部材129は、結合して一体となっている。すなわち、燃料電池スタック100は、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180と第2ガラス部材129とを含む複合体(以下、「第2複合体」という。)800を備える。単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路(空気室166、燃料室176)を形成する部材に該当する。なお、第2複合体800は、特許請求の範囲における複合体の一例であり、第2複合体800の一部としての単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、第2複合体800の一部としてのIC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第2部材の一例である。
【0061】
単セル用セパレータ120のうち、第2ガラス部材129と接触する部分において、アルミナ被膜AI1が形成されている。
【0062】
上述したように、IC用セパレータ180は、Alを含む金属により形成されている。IC用セパレータ180の表面SF3には、アルミナ被膜AI4が形成されている。より具体的には、IC用セパレータ180のうち、第2ガラス部材129と接触する部分において、アルミナ被膜AI4が形成されている。アルミナ被膜AI4の膜厚は、例えば0.1μm以上かつ3.0μm以下である。
【0063】
A-5.下側エンドプレート106および下側ターミナルプレート420の周辺の詳細構成:
図9には、下側エンドプレート106および下側ターミナルプレート420の周辺の構成が示されている。
【0064】
燃料電池スタック100は、上述した下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とを備え、更に、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とを接合する第3ガラス部材191を備える。第3ガラス部材191は、アルミナを含有するガラスを含んでいる。第3ガラス部材191は、アルミナを1質量%以上(例えば、2.0質量%以上かつ20質量%)含んでいる。第3ガラス部材191は、連通孔108付近において、下側エンドプレート106の表面と下側ターミナルプレート420の表面との両方に接触するように形成されている。下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420、および第3ガラス部材191は、結合して一体となっている。すなわち、燃料電池スタック100は、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420と第3ガラス部材191とを含む複合体(以下、「第3複合体」という。)900を備える。下側エンドプレート106および下側ターミナルプレート420は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路を形成する部材に該当する。なお、第3複合体900は、特許請求の範囲における複合体の一例であり、第3複合体900の一部としての下側エンドプレート106は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、第3複合体900の一部としての下側ターミナルプレート420は、特許請求の範囲における第2部材の一例である。
【0065】
下側エンドプレート106は、Alを含んでいる。下側エンドプレート106の表面SF4には、アルミナ被膜AI5が形成されている。より具体的には、下側エンドプレート106のうち、第3ガラス部材191と接触する部分において、アルミナ被膜AI5が形成されている。アルミナ被膜AI5の膜厚は、例えば0.1μm以上かつ3.0μm以下である。
【0066】
下側ターミナルプレート420は、Alを含んでいる。下側ターミナルプレート420の表面SF5には、アルミナ被膜AI6が形成されている。より具体的には、下側ターミナルプレート420のうち、第3ガラス部材191と接触する部分においても、アルミナ被膜AI6が形成されている。アルミナ被膜AI6の膜厚は、例えば0.1μm以上かつ3.0μm以下である。
【0067】
A-6.燃料電池スタック100の製造方法:
図10は、燃料電池スタック100の製造の流れを示すフローチャートである。なお、以下では、本実施形態の製造方法において特有な部分のみを説明し、その他の部分については、例えば特開2018-133224号公報に記載の方法を採用すればよいため、その説明を省略する。
【0068】
(用意工程)
まず、燃料電池スタック100を構成する部材として、単セル110等の主要部材に加え、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420等(以下、「特定部材」という。)を用意する(
図10のST1)。このときの特定部材120,180,106,420は、Alを含む部材である必要があるが、表面SF1,・・・,SF5に上記アルミナ被膜AI1,・・・,AI6が形成されていないものであってよい。各特定部材120,180,106,420は、Alを1質量%以上(例えば、1.5質量%以上かつ5.0質量%以下)含む。なお、ここで用意する単セル110は、上述した特開2018-133224号公報に記載の方法等により作製することができる。以下、ST1の工程を「用意工程ST1」という。
【0069】
(成膜工程)
次に、特定部材120,180,106,420を加熱(熱処理)することにより、特定部材120,180,106,420の表面SF1,・・・,SF5にアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成する(
図10のST2)。具体的には、電気炉を用いて加熱することにより、特定部材120,180,106,420の表面SF1,・・・,SF5にアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成する。本実施形態では、各特定部材120,180,106,420を、酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。以下、ST2の工程を「成膜工程ST2」という。成膜工程ST2は、特許請求の範囲における第1成膜工程や第2成膜工程の一例である。
【0070】
(接合工程)
次に、単セル110、特定部材120,180,106,420を接合する部材として、接合前(固化前、以下同様)の第1ガラス部材125である接合前第1ガラス部材(125)、接合前の第2ガラス部材129である接合前第2ガラス部材(129)、および接合前の第3ガラス部材191である接合前第3ガラス部材(191)を配置した状態で、これらを加熱(熱処理)することにより、単セル110、特定部材120,180,106,420を互いに接合する(
図10のST3)。なお、本実施形態では、特定部材120,180,106,420に対する濡れ性を向上させるために、接合前第1ガラス部材(125)、接合前第2ガラス部材(129)、および接合前第3ガラス部材(191)がアルミナを含む構成としてある。以下、ST3の工程を「接合工程ST3」という。
【0071】
例えば、まず、単セル110と、特定部材の1つである単セル用セパレータ120と、接合前第1ガラス部材(125)とを有する1次積層体を作製する。このとき、単セル110と単セル用セパレータ120との間に、接合前第1ガラス部材(125)を配置する。当該1次積層体を加熱(熱処理)することにより、第1ガラス部材125が形成され、単セル110と単セル用セパレータ120とが接合される(本実施形態では燃料電池スタックに備えられる発電単位102の個数分として、7つの1次積層体を作製する。)。次に、当該1次積層体に、残りの特定部材180,106,420と、接合前第2ガラス部材(129)と、接合前第3ガラス部材(191)とを配置した2次積層体を作製する。このとき、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間に、接合前第2ガラス部材(129)を配置する。下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との間に、接合前第3ガラス部材(191)を配置する。当該2次積層体を加熱(熱処理)することにより、第2ガラス部材129が形成され、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とが接合されると共に、第3ガラス部材191が形成され、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とが接合される。なお、上記加熱前の接合前ガラス部材(接合前第1ガラス部材(125)、接合前第2ガラス部材(129)、接合前第3ガラス部材(191))の配置や形状は、上記加熱によりガラス部材(第1ガラス部材125、第2ガラス部材129、第3ガラス部材191)が形成されることにより各部材の接合がなされる限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0072】
次に、各特定部材120,180,106(下側ターミナルプレート420を除く)等に形成された連通孔108にボルト22を挿入し、ボルト22の両側にナット24を嵌めることにより、上記2次積層体を締結する。なお、当該接合工程ST3において、接合前の接合部124である接合前接合部(例えば、導電性材料を含有するペースト)を加熱(熱処理)することにより接合部124を形成する工程を兼ねるとしてよいが、そうでない場合は接合部124を形成する工程を別個に行う。
【0073】
(残りの組み立て等の工程)
次に、残りの組み立て等の工程を行うことにより(
図10のST4)、上述した構成の燃料電池スタック100の製造が完了する。
【0074】
A-7.本実施形態の効果:
(第1複合体700について)
上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、単セル用セパレータ120(第1部材)および単セル110(第2部材)と、第1ガラス部材125と、を含む第1複合体700を備える。単セル用セパレータ120は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路(空気室166、燃料室176)を形成する。第1ガラス部材125は、単セル用セパレータ120と単セル110とを接合する。
【0075】
本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、上述した用意工程ST1と成膜工程ST2と接合工程ST3とを備える。用意工程ST1は、Alを含む金属部材である単セル用セパレータ120(第1部材)と、単セル110(第2部材)と、を用意する工程である。成膜工程ST2は、単セル用セパレータ120を加熱することにより、単セル用セパレータ120の表面SF1にアルミナ被膜AI1を形成する工程である。接合工程ST3は、成膜工程ST2により表面SF1にアルミナ被膜AI1が形成された単セル用セパレータ120と、単セル110との間に、接合前の第1ガラス部材125である接合前第1ガラス部材(125)を配置した状態で、単セル用セパレータ120、単セル110、および接合前第1ガラス部材(125)を加熱することにより、単セル用セパレータ120と単セル110とを接合する工程である。
【0076】
本製造方法においては、上述のように、接合工程ST3の前に、単セル用セパレータ120(第1部材)を加熱することにより、単セル用セパレータ120の表面SF1にアルミナ被膜AI1を形成する(成膜工程ST2)。表面SF1にアルミナ被膜AI1が形成された単セル用セパレータ120と、単セル110(第2部材)との間に、接合前の第1ガラス部材125である接合前第1ガラス部材(125)を配置した状態で、単セル用セパレータ120、単セル110、および接合前第1ガラス部材(125)を加熱することにより、単セル用セパレータ120と単セル110とを接合する(接合工程ST3)。表面SF1にアルミナ被膜AI1が形成された単セル用セパレータ120と、接合前第1ガラス部材(125)とを加熱したときの単セル用セパレータ120に対する接合前第1ガラス部材(125)の濡れ性は、単セル用セパレータ120が上記アルミナ被膜AI1を有さない構成と比べて向上する。そのため、本製造方法によれば、単セル用セパレータ120と第1ガラス部材125との密着性(ひいては、単セル用セパレータ120と単セル110との接合性)が優れた第1複合体700を得ることができる。これにより、単セル用セパレータ120と単セル110との間のガスシール性を向上させることができる。
【0077】
また、本製造方法においては、用意工程ST1で用意する単セル用セパレータ120(第1部材)は、Alを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120にアルミナ被膜AI1をより確実に形成することができ、ひいては単セル用セパレータ120と第1ガラス部材125との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0078】
また、本製造方法においては、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120(第1部材)を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120にアルミナ被膜AI1をより確実に形成することができ、ひいては単セル用セパレータ120と第1ガラス部材125との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0079】
また、本製造方法においては、第1ガラス部材125は、アルミナを含む。第1ガラス部材125と単セル用セパレータ120(第1部材)との熱膨張率の差が大きいと、燃料電池スタック100の稼働時における高温等、温度変化が生じたときに、これら部材の熱膨張差が大きいことにより、これら部材の剥離やクラック等の問題が発生し易い(ひいては、単セル用セパレータ120と単セル110との接合性が損なわれる)。本製造方法により製造される第1複合体700においては、上述したように第1ガラス部材125はアルミナを含むため、第1ガラス部材125がアルミナを含まない(かつ、Alを含む)構成等と比較して、第1ガラス部材125と、単セル用セパレータ120の表面SF1に形成されたアルミナ被膜AI1との間の熱膨張率の差が小さくなる。そのため、燃料電池スタック100の稼働時における高温等、温度変化が生じたときにおいても、第1ガラス部材125とアルミナ被膜AI1との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を抑制することができ、ひいては、単セル用セパレータ120および単セル110と第1ガラス部材125との密着性を更に向上させることができる。
【0080】
また、本製造方法においては、第1ガラス部材125は、アルミナを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、上述した第1ガラス部材125と上記アルミナ被膜AI1との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を特に効果的に抑制することができ、ひいては、単セル用セパレータ120(第1部材)および単セル110(第2部材)と第1ガラス部材125との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0081】
(第2複合体800について)
上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、単セル用セパレータ120(第1部材)およびIC用セパレータ180(第2部材)と、第2ガラス部材129と、を含む第2複合体800を備える。単セル用セパレータ120は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路(空気室166、燃料室176)を形成する。第2ガラス部材129は、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とを接合する。
【0082】
本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、上述した用意工程ST1と成膜工程ST2と接合工程ST3とを備える。用意工程ST1は、Alを含む金属部材である単セル用セパレータ120(第1部材)と、IC用セパレータ180(第2部材)と、を用意する工程である。成膜工程ST2は、単セル用セパレータ120を加熱することにより、単セル用セパレータ120の表面SF1にアルミナ被膜AI1を形成する工程である。接合工程ST3は、成膜工程ST2により表面SF1にアルミナ被膜AI1が形成された単セル用セパレータ120と、IC用セパレータ180との間に、接合前の第2ガラス部材129である接合前第2ガラス部材(129)を配置した状態で、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、および接合前第2ガラス部材(129)を加熱することにより、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とを接合する工程である。
【0083】
本製造方法においては、上記の第1複合体700における理由と同様の理由から、単セル用セパレータ120(第1部材)と第2ガラス部材129との密着性(ひいては、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との接合性)が優れた第2複合体800を得ることができる。これにより、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180(第2部材)との間のガスシール性を向上させることができる。
【0084】
また、本製造方法においては、用意工程ST1で用意する単セル用セパレータ120(第1部材)は、Alを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120にアルミナ被膜AI1をより確実に形成することができ、ひいては単セル用セパレータ120と第2ガラス部材129との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0085】
また、本製造方法においては、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120(第1部材)を、酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、単セル用セパレータ120にアルミナ被膜AI1をより確実に形成することができ、ひいては単セル用セパレータ120と第2ガラス部材129との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0086】
また、本製造方法においては、上述したように、用意工程ST1で用意するIC用セパレータ180(第2部材)は、Alを含む金属部材である。接合工程ST3の前に、IC用セパレータ180を加熱することにより、IC用セパレータ180の表面SF3にアルミナ被膜AI4を形成する(成膜工程ST2)。上述したように、表面SF1にアルミナ被膜AI1が形成された単セル用セパレータ120(第1部材)と、表面SF3にアルミナ被膜AI4が形成されたIC用セパレータ180との間に接合前第2ガラス部材(129)を配置した状態で、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、および接合前第2ガラス部材(129)を加熱することにより、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とを接合する(接合工程ST3)。単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、および接合前第2ガラス部材(129)を加熱したときのIC用セパレータ180に対する接合前第2ガラス部材(129)の濡れ性は、IC用セパレータ180が上記アルミナ被膜AI4を有さない構成と比べて向上する。そのため、本製造方法によれば、IC用セパレータ180と第2ガラス部材129との密着性(ひいては、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との接合性)が優れた第2複合体800を得ることができる。これにより、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間のガスシール性を更に向上させることができる。
【0087】
また、本製造方法においては、用意工程ST1で用意するIC用セパレータ180(第2部材)は、Alを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、IC用セパレータ180にアルミナ被膜AI4をより確実に形成することができ、ひいてはIC用セパレータ180と第2ガラス部材129との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0088】
また、本製造方法においては、成膜工程ST2において、IC用セパレータ180(第2部材)を、酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、IC用セパレータ180にアルミナ被膜AI4をより確実に形成することができ、ひいてはIC用セパレータ180と第2ガラス部材129との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0089】
また、本製造方法においては、第2ガラス部材129は、アルミナを含む。そのため、上記の第1複合体700における理由と同様の理由から、燃料電池スタック100の稼働時における高温等、温度変化が生じたときにおいても、第2ガラス部材129とアルミナ被膜AI1,AI4との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を抑制することができ、ひいては、単セル用セパレータ120(第1部材)およびIC用セパレータ180(第2部材)と第2ガラス部材129との密着性を更に向上させることができる。
【0090】
また、本製造方法においては、第2ガラス部材129は、アルミナを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、上述した第2ガラス部材129と上記アルミナ被膜AI1,AI4との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を特に効果的に抑制することができ、ひいては、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180と第2ガラス部材129との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0091】
(第3複合体900について)
上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、下側エンドプレート106(第1部材)および下側ターミナルプレート420(第2部材)と、第3ガラス部材191と、を含む第3複合体900を備える。下側エンドプレート106は、単セル110にガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)を給排する流路(空気室166、燃料室176)を形成する。第3ガラス部材191は、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とを接合する。
【0092】
本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、上述した用意工程ST1と成膜工程ST2と接合工程ST3とを備える。用意工程ST1は、Alを含む金属部材である下側エンドプレート106(第1部材)と、下側ターミナルプレート420(第2部材)と、を用意する工程である。成膜工程ST2は、下側エンドプレート106を加熱することにより、下側エンドプレート106の表面SF4にアルミナ被膜AI5を形成する工程である。接合工程ST3は、成膜工程ST2により表面SF4にアルミナ被膜AI5が形成された下側エンドプレート106と、下側ターミナルプレート420との間に、接合前の第3ガラス部材191である接合前第3ガラス部材(191)を配置した状態で、下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420、および接合前第3ガラス部材(191)を加熱することにより、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とを接合する工程である。
【0093】
本製造方法においては、上記の第1複合体700における理由と同様の理由から、下側エンドプレート106(第1部材)と第3ガラス部材191との密着性(ひいては、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合性)が優れた第3複合体900を得ることができる。これにより、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420(第2部材)との間のガスシール性を向上させることができる。
【0094】
また、本製造方法においては、用意工程ST1で用意する下側エンドプレート106(第1部材)は、Alを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、下側エンドプレート106にアルミナ被膜AI5をより確実に形成することができ、ひいては下側エンドプレート106と第3ガラス部材191との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0095】
また、本製造方法においては、成膜工程ST2において、下側エンドプレート106(第1部材)を、酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、下側エンドプレート106にアルミナ被膜AI5をより確実に形成することができ、ひいては下側エンドプレート106と第3ガラス部材191との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0096】
また、本製造方法においては、上述したように、用意工程ST1で用意する下側ターミナルプレート420(第2部材)は、Alを含む金属部材である。接合工程ST3の前に、下側ターミナルプレート420を加熱することにより、下側ターミナルプレート420の表面SF5にアルミナ被膜AI6を形成する(成膜工程ST2)。上述したように、表面SF4にアルミナ被膜AI5が形成された下側エンドプレート106(第1部材)と、表面SF5にアルミナ被膜AI6が形成された下側ターミナルプレート420との間に接合前第3ガラス部材(191)を配置した状態で、下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420、および接合前第3ガラス部材(191)を加熱することにより、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420とを接合する(接合工程ST3)。下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420、および接合前第3ガラス部材(191)を加熱したときの下側ターミナルプレート420に対する接合前第3ガラス部材(191)の濡れ性は、下側ターミナルプレート420が上記アルミナ被膜AI6を有さない構成と比べて向上する。そのため、本製造方法によれば、下側ターミナルプレート420と第3ガラス部材191との密着性(ひいては、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合性)が優れた第3複合体900を得ることができる。これにより、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との間のガスシール性を更に向上させることができる。
【0097】
また、本製造方法においては、用意工程ST1で用意する下側ターミナルプレート420(第2部材)は、Alを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、下側ターミナルプレート420にアルミナ被膜AI6をより確実に形成することができ、ひいては下側ターミナルプレート420と第3ガラス部材191との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0098】
また、本製造方法においては、成膜工程ST2において、下側ターミナルプレート420(第2部材)を、酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱する。そのため、本実施形態によれば、成膜工程ST2において、下側ターミナルプレート420にアルミナ被膜AI6をより確実に形成することができ、ひいては下側ターミナルプレート420と第3ガラス部材191との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0099】
また、本製造方法においては、第3ガラス部材191は、アルミナを含む。そのため、上記の第1複合体700における理由と同様の理由から、燃料電池スタック100の稼働時における高温等、温度変化が生じたときにおいても、第3ガラス部材191とアルミナ被膜AI5,AI6との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を抑制することができ、ひいては、下側エンドプレート106(第1部材)および下側ターミナルプレート420(第2部材)と第3ガラス部材191との密着性を更に向上させることができる。
【0100】
また、本製造方法においては、第3ガラス部材191は、アルミナを1質量%以上含む。そのため、本実施形態によれば、上述した第3ガラス部材191と上記アルミナ被膜AI5,AI6との熱膨張差に起因するこれら部材の剥離やクラック等の問題の発生を特に効果的に抑制することができ、ひいては、下側エンドプレート106(第1部材)および下側ターミナルプレート420(第2部材)と第3ガラス部材191との密着性を特に効果的に向上させることができる。
【0101】
なお、上述したガラス部材(第1ガラス部材125、第2ガラス部材129、第3ガラス部材191)との密着性を考慮すると、用意工程ST1で用意する特定部材(単セル用セパレータ120等)が含むAlの量は、1.5質量%以上かつ5.0質量%以下であることが特に好ましい。また、当該密着性を考慮すると、ガラス部材(第1ガラス部材125、第2ガラス部材129、第3ガラス部材191)が含むアルミナの量は、2.0質量%以上かつ20質量%以下であることが特に好ましい。
【0102】
B.変形例:
【0103】
本明細書に開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0104】
上記実施形態における燃料電池スタック100や発電単位102の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0105】
上記実施形態では全ての複合体(第1複合体700、第2複合体800、第3複合体900)の同種工程(用意工程ST1,成膜工程ST2,接合工程ST3のいずれか)をまとめて行うとしているが、これら複合体700,・・・,900の一部または全てについての同種工程を別個に行ってもよい。
【0106】
上記実施形態では全ての特定部材120,180,106,420の表面SF1,・・・,SF5にアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成する工程(成膜工程ST2)をまとめて行うとしているが、これら複合体700,・・・,900の一部または全てについての同工程、またはこれらアルミナ被膜AI1,・・・,AI6の一部または全てについての同工程を別個に行ってもよい。また、そのときの各工程の時系列は特に限定されるものではない。
【0107】
上記実施形態では全ての特定部材120,180,106,420はAlを1質量%以上含むが、これら特定部材120,180,106,420の一部または全てが含むAlの量が1質量%未満であってもよい。
【0108】
上記実施形態では各特定部材120,180,106,420を酸化雰囲気において650℃以上1100℃以下の温度に加熱するとしているが、これら特定部材120,180,106,420の一部または全てについて、この加熱条件と異なる条件で加熱してもよい。
【0109】
上記実施形態では全ての特定部材120,180,106,420にアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成するとしているが、これら特定部材120,180,106,420の一部のみにアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成するとしてもよい。
【0110】
上記実施形態では全てのガラス部材(第1ガラス部材125、第2ガラス部材129、第3ガラス部材191)はアルミナを含んでいるが、これら125,129,191の一部または全てがアルミナを含んでいなくてもよい。
【0111】
上記実施形態では、各発電単位102が共通の構成であるが、一部の発電単位102が異なる構成であってもよい。例えば、上記実施形態では、全ての発電単位102において本発明特有の構成(上述した製造方法により製造される構成)を備えるが、一部の発電単位102において本発明特有の構成を備えていなくてもよい。
【0112】
上記実施形態では、単セル用セパレータ120(第1部材)と単セル110(第2部材)とを備える第1複合体700と、単セル用セパレータ120(第1部材)とIC用セパレータ180(第2部材)とを備える第2複合体800と、下側エンドプレート106(第1部材)と下側ターミナルプレート420(第2部材)とを備える第3複合体900とを含む構成に本発明(上述のようにアルミナ被膜AI1,・・・,AI6を形成する点等)を適用した例を示したが、これら複合体(第1複合体700、第2複合体800、第3複合体900)の一部のみについて本発明を適用するとしてもよい。また、単セル110にガスを給排する流路を形成する第1部材および第2部材と、当該第1部材と当該第2部材とを接合するガラス部材と、を含む別の複合体を備える構成において本発明を適用してもよい。この場合においても、上記実施形態における理由と同様の理由から、当該第1部材と当該第2部材との密着性(ひいては、当該第1部材と当該第2部材との接合性)が優れた当該複合体を得ることができる。これにより、当該第1部材と当該第2部材との間のガスシール性を向上させることができる。
【0113】
上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100が一対のターミナルプレート410,420を備えているが、他の部材(例えば、一対のエンドプレート104,106)をターミナルプレートとしても機能させ、専用部材としてのターミナルプレート410,420を省略してもよい。
【0114】
上記実施形態では、単セル用セパレータ120が、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状の連結部128を有しているが、連結部128の形状は他の形状であってもよい。また、単セル用セパレータ120が連結部128を有さなくてもよい。IC用セパレータ180における連結部188についても同様である。
【0115】
上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、単セル110は燃料極支持形の単セルであるが、電解質支持形や金属支持形等の他のタイプの単セルであってもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100がカウンターフロータイプの燃料電池であるが、燃料電池スタック100がコフロータイプやクロスフロータイプといった他のタイプの燃料電池であってもよい。
【0117】
上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。また、本明細書に開示される技術は、第1の燃料電池スタックから排出されたオフガスを第2の燃料電池スタックに供給する形態における少なくとも一方の燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
【0118】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セル単位および電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における発電単位102および燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用すると、第1部材と第2部材との密着性(ひいては、第1部材と第2部材との接合性)が優れた複合体を得ることができる。
【0119】
上記実施形態では、いわゆる平板型の燃料電池スタックを例に用いて説明したが、本明細書に開示される技術は、以下に説明するように、平板型に限らず、他のタイプ(いわゆる円筒平板型や円筒形)の燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
【0120】
図11は、変形例としての燃料電池スタック2002の断面構成を示す説明図である。
図11に示す変形例の燃料電池スタック2002は、複数の単セル2003からなる単セル群2010を備える。
【0121】
単セル2003は、上下方向に伸びる柱状の支持体を有する。支持体は、断面が扁平状であり、一対の対向する平坦面を有する。支持体の内部には、上下方向に伸びるガス流路が形成されている。支持体の一方の平坦面上には、燃料極と、固体電解質層と、空気極とが順次積層されており、他方の平坦面のうち空気極が形成されていない部位には、インターコネクタが積層されている。隣接する単セル2003間に導電部材2004を配置することにより、単セル2003同士が電気的に直列に接続されている。
【0122】
各単セル2003の下端は、ガラスを含むガラス部材(ガラスシール部)2016により、マニホールド2007に接合されている。各単セル2003の支持体に形成されたガス流路は、マニホールド2007の内部空間に連通している。マニホールド2007の側面には、燃料ガスをマニホールド2007内に供給するための燃料ガス供給管2008が接続されている。燃料ガス供給管2008を介してマニホールド2007に供給された燃料ガスは、マニホールド2007から各単セル2003の支持体に形成されたガス流路を介して、燃料極に供給される。
【0123】
図11に示す燃料電池スタック2002において、マニホールド2007および燃料ガス供給管2008等のガス流路は、各単セル2003の燃料極との間でガスのやり取りをマニホールドであり、各単セル2003の支持体に形成されたガス流路のうち支持体のマニホールド2007側の端部から燃料極に到達するまでの部分は、マニホールドと燃料極とを連通する連通流路である。
【0124】
図11に示す燃料電池スタック2002は、上述したように、単セル2003にガス(燃料ガス)を給排する流路を形成する単セル群2010(第2部材)およびマニホールド2007(第1部材)と、単セル群2010とマニホールド2007とを接合するガラス部材2016と、を含む複合体2020を備える。マニホールド2007の表面SF7にもアルミナ被膜AI8が形成されている。単セル群2010は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、マニホールド2007は、特許請求の範囲における第1部材の一例である。
【0125】
図11に示す燃料電池スタック2002の製造方法においても、後述する用意工程と成膜工程と接合工程とを備える。用意工程は、単セル群2010(第2部材)と、Alを含む金属部材であるマニホールド2007(第1部材)と、を用意する工程である。成膜工程は、マニホールド2007を加熱することにより、マニホールド2007の表面SF7にアルミナ被膜AI8を形成する工程である。接合工程は、成膜工程により表面SF7にアルミナ被膜AI8が形成されたマニホールド2007と、単セル群2010との間に、接合前のガラス部材2016である接合前ガラス部材(2016)を配置した状態で、単セル群2010、マニホールド2007、および接合前ガラス部材(2016)を加熱することにより、単セル群2010とマニホールド2007とを接合する工程である。この製造方法においても、上記実施形態における理由と同様の理由から、単セル群2010とガラス部材2016との密着性(ひいては、単セル群2010とマニホールド2007との接合性)が優れた複合体2020を得ることができる。これにより、単セル群2010とマニホールド2007との間のガスシール性を向上させることができる。
【0126】
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0127】
22:ボルト 24:ナット 26:ガス貫通孔 27:ガス通路部材 28:(ガス通路部材の)本体部 29:(ガス通路部材の)フランジ部 29A:ボルト孔 32,34:孔 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 107:エンド貫通孔 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:(単セル用セパレータの)貫通孔 124:接合部 125:第1ガラス部材 126:(単セル用セパレータの)内側部 127:(単セル用セパレータの)外側部 128:(単セル用セパレータの)連結部 129:第2ガラス部材 130:空気極側フレーム 131:(空気極側フレームの)孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 141:(燃料極側フレームの)孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電部材 145:(燃料極側集電部材の)電極対向部 146:(燃料極側集電部材の)インターコネクタ対向部 147:(燃料極側集電部材の)連接部 149:(燃料極側集電部材の)スペーサー 150:(インターコネクタの)平板部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 181:(IC用セパレータの)貫通孔 186:(IC用セパレータの)内側部 187:(IC用セパレータの)外側部 188:(IC用セパレータの)連結部 189:下端プレート 190:インターコネクタ 191:第3ガラス部材 194:被覆層 196:導電性接合材 200:絶縁部 210:末端セパレータ 211:(末端セパレータの)貫通孔 216:(末端セパレータの)内側部 217:(末端セパレータの)外側部 218:(末端セパレータの)連結部 220:上端プレート 310:(上側エンドプレートの)平面部 320:(上側エンドプレートの)凸部 322:(上側エンドプレートの)外側凸部 324:(上側エンドプレートの)内側凸部 410:上側ターミナルプレート 412:(上側ターミナルプレートの)孔 420:下側ターミナルプレート 510:(下側エンドプレートの)平面部 520:(下側エンドプレートの)凸部 522:(下側エンドプレートの)外側凸部 524:(下側エンドプレートの)内側凸部 600:補強部材 610:(補強部材の)平板部分 612:(補強部材の平板部分の)貫通孔 620:(補強部材の)筒部分 622:(補強部材の筒部分の)貫通孔 700:第1複合体 800:第2複合体 900:第3複合体 2002:燃料電池スタック 2003:単セル 2004:導電部材 2007:マニホールド 2008:燃料ガス供給管 2010:単セル群 2016:ガラス部材 2020:複合体 AI1,・・・,AI6:アルミナ被膜 AI8:アルミナ被膜 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス SF1,・・・,SF5:表面 SF7:表面 ST1:用意工程 ST2:成膜工程 ST3:接合工程 ST4:残りの組み立て等の工程