(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071081
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/063 20060101AFI20240517BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240517BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240517BHJP
【FI】
B60K15/063 B
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181825
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 佑太
(72)【発明者】
【氏名】石川 悠喜
(72)【発明者】
【氏名】前田 良輔
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将史
(72)【発明者】
【氏名】上阪 周平
【テーマコード(参考)】
3D038
5H127
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CA24
3D038CB03
3D038CC18
3D038CD01
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127EE04
(57)【要約】
【課題】水素を安全に大気中に放出することができる。
【解決手段】作業車両は、水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、前記水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素タンクからの蒸発気体を放出する放出部を有する水素放出管と、を備え、前記放出部は、前記蒸発気体を前記作業車両の上方に放出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、
前記水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクからの蒸発気体を放出する放出部を有する水素放出管と、を備え、
前記放出部は、前記蒸発気体を前記作業車両の上方に放出する、
作業車両。
【請求項2】
前記作業車両は、ダンプトラックであり、
前記ダンプトラックは、
前記駆動源を搭載した車体フレームと、
前記車体フレームと回動部で回動自在に結合され且つ積載物を搭載するダンプボディと、を備え、
前記放出部は、前記ダンプトラックの前端部に配置される、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記放出部は、平面視で前記ダンプボディと重ならない位置に配置される、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記放出部は、側面視で前記ダンプボディの前端部より前方に配置される、
請求項2又は3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記放出部は、前面視で前記ダンプボディの上端部より上方に配置される、
請求項2又は3に記載の作業車両。
【請求項6】
電波の送信及び受信を行うためのアンテナポールを更に備え、
前記放出部は、前記アンテナポールに配置される、
請求項1から3の何れか一項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記車体フレームの前部上方に設けられ、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状のプラットフォームを更に備え、
前記水素放出管は、前記プラットフォームの下面を通る、
請求項2又は3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルに向けて、鉱山機械及び建設機械等のゼロエミッション化が急務である。ゼロエミッション化を図るための手段の一つとして、燃料電池システムがある。例えば、燃料電池システムは、燃料電池(FC: Fuel Cell)と、バッテリと、燃料である水素を貯蔵する水素タンクと、を備える。燃料である水素は、プロパン等の他の燃料と比べて、着火エネルギーが非常に小さく、燃焼濃度範囲が非常に広く、燃焼速度が非常に速い。そのため、水素の取り扱いには特に気を付ける必要がある。例えば、高圧ガスタンクを使用する場合は、規制により安全弁等の安全装置の装着が義務付けられる場合がある。例えば、安全装置としては、火災時等の熱(高温)を検知すると自動的にタンク内のガスを大気中に放出するTPRD(Thermal Pressure Relief Device)がある。例えば、高圧ガスタンクを使用する場合、TPRDはタンクに直接取り付けられるため、タンク付近での水素放出となる。また、液化水素を使用する場合は、長時間放置することでタンク内に貯蔵した液化水素が蒸発(ボイルオフ)する可能性が高い。そのため、タンク内の圧力上昇による爆発を避けるために、水素を安全に大気中に放出する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、水素ガスを燃料として駆動力を発生する駆動力発生装置と、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、水素タンクの周囲を覆うタンク容器と、を備える燃料電池車両が開示されている。タンク容器は、水素タンクを収容した状態でフロアパネルの上部に積載されている。タンク容器の上部には、タンク容器の内部と燃料電池車両の外部とを連通する走行風排出口が設けられている。水素タンクから漏れた水素ガスの排出構造は、車体内に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、漏れた水素ガスが走行風によって車外に排出されず、車体内に水素ガスが溜まってしまう可能性がある。そのため、水素を安全に大気中に放出する上で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、水素を安全に大気中に放出することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業車両は、水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、前記水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素タンクからの蒸発気体を放出する放出部を有する水素放出管と、を備え、前記放出部は、前記蒸発気体を前記作業車両の上方に放出する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、水素を安全に大気中に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施形態に係る水素供給システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、水素供給システムを構成する作業車両として、鉱山などの作業現場を走行して積荷を運搬する運搬車両であるダンプトラックを挙げて説明する。
【0011】
<ダンプトラック>
図1は、実施形態に係るダンプトラック2の斜視図である。
図2は、実施形態に係るダンプトラック2の側面図である。
図3は、実施形態に係るダンプトラック2の前面図である。
図4は、実施形態に係る水素供給システム1のブロック図である。
図1から
図4を併せて参照し、ダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源36(FC/水素エンジンに相当)を搭載している。ダンプトラック2は、水素を貯蔵する水素タンク25と、水素タンク25からの水素ガス(蒸発気体)を放出する放出部58Aを有する水素放出管58と、を備える。
【0012】
ダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源36を搭載した車体フレーム10と、車体フレーム10と回動部11で回動自在に結合され且つ積載物を搭載するダンプボディ12(ベッセルに相当)と、車体フレーム10を支持する走行装置13と、を備える。例えば、ダンプトラック2は、運転者による運転操作によらずに無人で駆動する無人ダンプトラックでもよいし、運転者による運転操作に基づいて駆動する有人ダンプトラックでもよい。
【0013】
以下、ダンプトラック2の前進方向(車体前方)、後進方向(車体後方)及び車両幅方向(車体左右方向)を「車両前方(車両前後方向一方側)」、「車両後方(車両前後方向他方側)」及び「車両幅方向」と称する。車両幅方向は、「左側(車両幅方向一方側)」又は「右側(車両幅方向他方側)」と称する場合もある。ダンプトラック2が前進する方向に対して右手を右側、ダンプトラック2が前進する方向に対して左手を左側と称する。ダンプトラック2の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)を単に「上下方向」、「上方」及び「下方」と称する。図の例では、ダンプトラック2は、水平面(水平な地面)に配置されている。ダンプトラック2の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)は、ダンプトラック2が水平面に配置された状態の上下方向(鉛直方向)、鉛直上方及び鉛直下方とそれぞれ一致する。
【0014】
車体フレーム10は、車両前後方向に延びている。車体フレーム10は、回動部11を介して、ダンプボディ12を回動自在に支持する。回動部11は、車体フレーム10上において車両幅方向に延びる軸部(ダンプボディ12の回動中心軸に相当)を含む部分である。車体フレーム10は、走行装置13に支持されている。
【0015】
ダンプボディ12は、車体フレーム10と回動部11で回動自在に結合される。ダンプボディ12は、積荷が積載される部材(荷台に相当)である。ダンプボディ12の少なくとも一部は、車体フレーム10よりも上方に配置される。ダンプボディ12は、ダンプ動作及び下げ動作を行うことが可能である。
【0016】
ダンプ動作とは、ダンプボディ12を車体フレーム10から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作を意味する。ダンプ方向は、車体フレーム10の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ12の前端部を上昇させて、ダンプボディ12を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ12の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0017】
下げ動作とは、ダンプボディ12を車体フレーム10に接近させる動作を意味する。下げ動作は、ダンプ動作とは逆方向の動作である。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ12の前端部を下降させることを含む。
【0018】
ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ12は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ12が上昇している姿勢を意味する。積載姿勢とは、ダンプボディ12が下降している姿勢を意味する。
図2の例では、積載姿勢のダンプボディ12を実線で示し、ダンプ姿勢のダンプボディ12を二点鎖線で示している。
【0019】
例えば、排土作業を実施する場合、ダンプボディ12は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ12に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ12の後端部から後方に排出される。一方、積込作業が実施される場合、ダンプボディ12は、積載姿勢に調整される。
【0020】
ダンプボディ12は、運転室15を上方から保護するプロテクタ16を備える。プロテクタ16は、ダンプボディ12が積載姿勢にあるときは運転室15を上方から覆うように配置される。プロテクタ16は、ダンプボディ12の前端側に設けられている。プロテクタ16は、運転室15よりも上方に配置されている。プロテクタ16は、車両幅方向に延びている。例えば、運転室15は、車両幅方向中央よりも車両左側に配置されている。
【0021】
運転室15は、プラットフォーム17に支持されている。プラットフォーム17は、車体フレーム10の前部上方に設けられている。プラットフォーム17は、オペレータの運転室15への乗降時の足場確保のために設けられている。プラットフォーム17は、ダンプトラック2の搭載機器の整備時の足場確保のために設けられている。プラットフォーム17は、プロテクタ16よりも下方に配置されている。プラットフォーム17は、車輪21,22よりも上方に配置されている。プラットフォーム17は、車両幅方向に延びている。プラットフォーム17は、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状に形成されている。
【0022】
走行装置13は、車体フレーム10を支持する。走行装置13は、ダンプトラック2を走行させる。走行装置13は、ダンプトラック2を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体フレーム10よりも下方に配置される。走行装置13は、複数の車輪21,22を備える。複数の車輪21,22は、前輪21と、前輪21よりも後方に配置される後輪22と、を含む。
【0023】
前輪21は、ダンプトラック2の進行方向を変えるために操舵される操舵輪である。前輪21は、左右一対配置されている。左右一対の前輪21は、車体フレーム10の前部を介して車両幅方向に間隔をあけて配置されている。前輪21は、左右に1つずつ(計2つ)設けられている。
【0024】
後輪22は、駆動源36により駆動される駆動輪である。後輪22は、左右一対配置されている。左右一対の後輪22は、車体フレーム10の後部を介して車両幅方向に間隔をあけて配置されている。後輪22は、左右に2つずつ(計4つ)設けられている。
【0025】
ダンプトラック2は、電波の送信及び受信を行うためのアンテナポール18を更に備える。本実施形態では、アンテナポール18は、プラットフォーム17の右側前端部に設けられている。アンテナポール18は、車両幅方向において運転席15とは反対側の場所に配置されている。
【0026】
アンテナポール18は、車両上下方向に沿うように延びている。アンテナポール18は、プラットフォーム17の上面からダンプボディ12の上端部よりも上方に延びている。アンテナポール18の上端部は、ダンプボディ12の上端部よりも高い場所にある。
【0027】
なお、アンテナポール18の形状及び配置は、上記に限らない。例えば、アンテナポール18は、プラットフォーム17の前端中央部に設けられていてもよい。例えば、アンテナポール18は、車両幅方向において運転席15と同じ側の場所に配置されていてもよい。例えば、アンテナポール18の形状及び配置は、設計仕様に応じて変形することができる。
【0028】
<水素タンク>
ダンプトラック2は、燃料である水素を貯蔵する水素タンク25を備える。水素タンク25は、車体フレーム10に設けられている。本実施形態では、水素タンク25は、ブラケット26を介して車体フレーム10に支持されている。例えば、水素タンク25は、ブラケット26に取り付けられた箱状のホルダに着脱自在に連結されている。
【0029】
例えば、水素タンク25は、円筒形状を有する。水素タンク25は、側面視で車両上下方向及び車両前後方向に並んで複数設けられている。
図2の例では、8個(複数の一例)の水素タンク25が上下に4つ並ぶとともに前後に2つ並んで配置されている。
【0030】
なお、水素タンク25の形状、個数及び配置は、上記に限らない。例えば、水素タンク25は、扁平形状であってもよい。例えば、水素タンク25の数は、7個以下又は9個以上であってもよい。例えば、水素タンク25は、車両幅方向に積み重ねて配置されていてもよい。例えば、水素タンク25の形状、個数及び配置は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0031】
<水素放出管>
ダンプトラック2は、水素タンク25からの水素ガス(蒸発気体)を放出する放出部58Aを有する水素放出管58を備える。放出部58Aは、水素放出管58において水素ガスを放出する部分(開口部)である。放出部58Aは、水素ガスをダンプトラック2の上方に放出する。
【0032】
本実施形態では、放出部58Aは、ダンプトラック2の前端部に配置されている。放出部58Aは、平面視で(車両上下方向から見て)、ダンプボディ12と重ならない位置に配置されている。放出部58Aは、平面視で、プラットフォーム17の右側前端部と重なる位置に配置されている。
【0033】
放出部58Aは、側面視でダンプボディ12の前端部より前方に配置されている。放出部58Aは、ダンプボディ12が積載姿勢にあるときのプロテクタ16の前端部よりも前方に配置されている。放出部58Aは、前面視でダンプボディ12の上端部より上方に配置されている。放出部58Aは、ダンプボディ12が積載姿勢にあるときのプロテクタ16の上端部よりも上方に配置されている。
【0034】
放出部58Aは、アンテナポール18に配置されている。例えば、放出部58Aは、アンテナポール18に対して電波が阻害されないように配置されていることが好ましい。放出部58Aは、アンテナポール18の上端部と同様、ダンプボディ12の上端部よりも高い場所にある。放出部58Aは、ダンプボディ12の上端部よりも高い場所で、水素ガスをダンプトラック2の上方に放出する。
【0035】
水素放出管58は、プラットフォーム17の下面を通る。
図2の例では、水素放出管58は、水素タンク25側の部分(水素供給用マニホールド56から分岐する部分)からプラットフォーム17の後端部に向かって延びた後、プラットフォーム17の右端部下面に沿ってプラットフォーム17の前端部まで延びている。
【0036】
水素放出管58は、プラットフォーム17の下面を通った後、アンテナポール18の上端部までアンテナポール18に沿って延びている。水素放出管58の上端部は、水素タンク25からの水素ガス(蒸発気体)を上方に放出する放出部58A(上端開口部に相当)として機能する。
【0037】
例えば、水素放出管58は、外径10mm以下の配管で構成されていてもよい。例えば、水素放出管58は、P字クランプ等の連結部材(不図示)で、プラットフォーム17の下面等に着脱可能に連結されている。例えば、連結部材は、水素放出管58に沿う方向に間隔をあけて複数設けられている。例えば、連結部材は、水素放出管58をプラットフォーム17及びアンテナポール18に連結するように複数設けられている。
【0038】
なお、連結部材の構成は、上記に限らない。例えば、連結部材は、水素放出管58をプラットフォーム17の下面とは別の場所で連結するように設けられていてもよい。例えば、連結部材の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0039】
<水素供給システム>
水素供給システム1(システムの一例)の構成要素は、車体フレーム10に搭載されている。
車体フレーム10には、コントローラ30と、減圧バルブ35と、駆動源36(FC/水素エンジンに相当)と、水素充填用コネクタ50と、水素タンク25と、水素充填用マニホールド52と、水素充填用圧力センサ54と、水素供給用マニホールド56と、電磁バルブ57と、水素放出管58(具体的には、水素放出管58において放出部58Aとは反対側の部分)と、水素供給用圧力センサ59と、が搭載されている。
【0040】
ハーネス5は、車体フレーム10に搭載されたコントローラ30からの制御信号をシステムの構成要素に伝送可能に構成される。例えば、ハーネス5は、複数の電線(例えば電線束)で構成されている。
【0041】
ハーネス5の一端は、コントローラ30に接続されている。例えば、コントローラ30は、CPU等のプロセッサである処理部と、RAM 、ROM及びこれらの組合せ等の記憶部と、入出力部とを有する。処理部は、システムの構成要素の動作を制御する。記憶部は、処理部の機能を実現するためのコンピュータプログラム及び処理部の処理に必要な情報を記憶している。入出力部は、コントローラ30と他の装置とのインターフェース回路である。
【0042】
水素供給システム1は、燃料である水素を水素タンク25に充填するための水素充填系3と、水素タンク25内の水素を駆動源36に供給するための水素供給系4と、を含む。本実施形態では、水素充填系3及び水素供給系4は、水素の流通経路が互いに別の系統となるように構成されている。
【0043】
<水素充填系>
水素充填系3は、水素充填配管51と、水素充填用マニホールド52と、を含む。水素充填配管51は、水素充填用マニホールド52の上流に設けられる第1充填部分51Aと、水素充填用マニホールド52の下流に設けられる第2充填部分51Bと、を含む。
【0044】
例えば、第1充填部分51A及び第2充填部分51Bは、金属配管で構成される。例えば、第1充填部分51A及び第2充填部分51Bは、高圧水素(例えば、約70MPa)に耐えうる高圧金属配管で構成される。
【0045】
第2充填部分51Bは、車体フレーム10に複数設けられている。例えば、水素充填用マニホールド52は、車体フレーム10の左側部(車両幅方向一方側部)に設けられている。水素充填用マニホールド52は、1本の管(第1充填部分51Aに相当)を複数本の管(複数の水素タンク25に対応する複数の第2充填部分51Bに相当)に分岐させる構造を持つ。
【0046】
水素充填用コネクタ50は、水素充填配管51を構成する第1充填部分51Aを介して、水素充填用マニホールド52に接続されている。水素充填用マニホールド52は、水素充填配管51を構成する第2充填部分51Bを介して、水素タンク25に接続されている。水素タンク25には、水素充填用コネクタ50、第1充填部分51A(金属配管に相当)、水素充填用マニホールド52及び第2充填部分51B(金属配管に相当)を通じて、水素が充填される。
【0047】
水素充填用圧力センサ54は、水素充填用マニホールド52に接続されている。水素充填用圧力センサ54は、水素充填用マニホールド52内の圧力を測定する。
【0048】
<水素供給系>
水素供給系4は、水素供給配管55と、水素供給用マニホールド56と、を含む。水素供給配管55は、水素供給用マニホールド56の上流に設けられる第1供給部分55Aと、水素供給用マニホールド56の下流に設けられる第2供給部分55Bと、を含む。
【0049】
例えば、第1供給部分55A及び第2供給部分55Bは、金属配管で構成される。例えば、第1供給部分55A及び第2供給部分55Bは、高圧水素(例えば、約70MPa)に耐えうる高圧金属配管で構成される。
【0050】
第1供給部分55Aは、車体フレーム10に複数設けられている。例えば、水素供給用マニホールド56は、車体フレーム10の右側部(車両幅方向他方側部)に設けられている。水素供給用マニホールド56は、複数本の管(複数の水素タンク25に対応する複数の第1供給部分55Aに相当)を1本の管(第2供給部分55Bに相当)に集合させる構造を持つ。
【0051】
水素タンク25は、水素供給配管55を構成する第1供給部分55Aを介して、水素供給用マニホールド56に接続されている。水素供給用マニホールド56は、水素供給配管55を構成する第2供給部分55B等を介して、駆動源36に接続されている。駆動源36には、水素タンク25、第1供給部分55A(金属配管に相当)、水素供給用マニホールド56及び第2供給部分55B(金属配管に相当)等を通じて、水素が供給される。
【0052】
水素放出管58は、水素供給用マニホールド56から分岐して設けられている。水素放出管58は、燃料である水素が気化した水素ガスを放出する。水素放出管58は、電磁バルブ57を介して水素供給用マニホールド56に接続されている。例えば、緊急時には、水素放出管58を通じて、水素供給用マニホールド56内の水素ガスが外部に放出されてもよい。
【0053】
水素供給用圧力センサ59は、水素供給用マニホールド56に接続されている。水素供給用圧力センサ59は、水素供給用マニホールド56内の圧力を測定する。
【0054】
ハーネス5の他端(コントローラ30に結合される端部とは反対側の部分から分岐した端部)は、水素充填用圧力センサ54、水素供給用圧力センサ59及び電磁バルブ57に電気的に接続されている。水素充填用圧力センサ54及び水素供給用圧力センサ59の検知結果(圧力の検知信号)は、ハーネス5を通じて、コントローラ30に入力される。
【0055】
第2供給部分55Bの一端(水素供給用マニホールド56に結合される端部とは反対側の端部)は、燃料を減圧するための減圧バルブ35に接続されている。減圧バルブ35は、第2供給部分55Bと駆動源36との間に設けられている。減圧バルブ35は、駆動源36に接続されている。減圧バルブ35は、第2供給部分55B内(一次側)の高い圧力を逃がして駆動源36側(二次側)の圧力を所定圧力に保つ機能を持つ。
【0056】
駆動源36は、燃料ガスである水素と酸化ガスである酸素とを化学反応させて発電する燃料電池(FC)と、水素を燃料とする内燃機関である水素エンジンと、を含む。例えば、燃料電池は、複数の単位セルが積層されたスタック構造を有する。例えば、燃料電池は、外気に含まれる酸素を利用して発電する。なお、燃料電池は、酸化ガス供給装置(不図示)により酸素を含む空気が供給されてもよい。
【0057】
例えば、水素エンジンは、ダンプボディ12のダンプ動作又は下げ動作を行う動力を発生する。例えば、水素エンジンは、前輪21を操舵する動力を発生する。例えば、水素エンジンが発生した動力(回転力)は、走行装置13の後輪22に伝達される。
【0058】
なお、水素供給システム1は、バッテリ(例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池)を含んでいてもよい。例えば、バッテリは、燃料電池において発生した電力を蓄える。例えば、バッテリは、燃料電池と同様、ダンプトラック2の電源として機能してもよい。
【0059】
<システムの構成要素の配置>
例えば、駆動源36は、減圧バルブ35よりも車体前方に配置されている。駆動源36は、プラットフォーム17よりも下方に配置されている。
【0060】
駆動源36及び減圧バルブ35は、車体フレーム10の上に搭載されている。駆動源36及び減圧バルブ35は、車体フレーム10の車両幅方向の範囲内に配置されていることが好ましい。この構成によれば、駆動源36及び減圧バルブ35が車体下方から車体フレーム10によって覆われる。そのため、駆動源36及び減圧バルブ35に対して車体下方から外乱(例えば、飛び石等)が及ぶことを抑制することができる。
【0061】
例えば、車体フレーム10側において火災等の異常が発生した場合は、水素タンク25内の水素を緊急放出する必要が生じる可能性がある。この場合は、水素供給用マニホールド56から分岐する形でアンテナポール18の上端部まで水素放出管58を延ばすとよい。
図3の例では、水素放出管58は、アンテナポール18に沿って車両上下方向に延びている。これにより、水素放出管58の放出部58Aを通じて水素ガスをダンプボディ12の上方に放出することができる。
【0062】
なお、水素の放出は、なるべく高い位置で行うことが望ましい。そのため、既にダンプトラック2にアンテナポール18が搭載されている場合は、アンテナポール18に沿わせる形でアンテナポール18の上端部まで水素放出管58を延ばすだけで済む。したがって、水素の放出を高い位置で行う上での設置が容易であり、かつ、安全面に優れる。
【0063】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源36を搭載している。ダンプトラック2は、水素を貯蔵する水素タンク25と、水素タンク25からの水素ガスを放出する放出部58Aを有する水素放出管58と、を備える。放出部58Aは、水素ガスをダンプトラック2の上方に放出する。
この構成によれば、放出部58Aが水素ガスをダンプトラック2の上方に放出することで、車体内に水素ガスが溜まってしまう可能性は低い。したがって、水素を安全に大気中に放出することができる。
【0064】
本実施形態では、ダンプトラック2は、駆動源36を搭載した車体フレーム10と、車体フレーム10と回動部11で回動自在に結合され且つ積載物を搭載するダンプボディ12と、を備える。放出部58Aは、ダンプトラック2の前端部に配置される。
この構成によれば、放出部58Aがダンプトラック2の後部に配置される場合と比較して、放出部58Aから水素ガスをダンプトラック2の上方に放出しやすい。したがって、水素を安全に大気中に放出することが容易となる。
【0065】
本実施形態では、放出部58Aは、平面視でダンプボディ12と重ならない位置に配置される。
この構成によれば、放出部58Aが平面視でダンプボディ12と重なる場合と比較して、放出部58Aから放出された水素ガスがダンプボディ12に遮られる可能性は低い。したがって、より確実に水素を安全に大気中に放出することができる。
【0066】
本実施形態では、放出部58Aは、側面視でダンプボディ12の前端部より前方に配置される。
この構成によれば、放出部58Aが側面視でダンプボディ12の前端部より後方に配置される場合と比較して、放出部58Aから放出された水素ガスがダンプボディ12に遮られる可能性は低い。したがって、より確実に水素を安全に大気中に放出することができる。
【0067】
本実施形態では、放出部58Aは、前面視でダンプボディ12の上端部より上方に配置される。
この構成によれば、放出部58Aが前面視でダンプボディ12の上端部より下方に配置される場合と比較して、放出部58Aから放出された水素ガスがダンプボディ12に遮られる可能性は低い。したがって、より確実に水素を安全に大気中に放出することができる。
【0068】
本実施形態では、ダンプトラック2は、電波の送信及び受信を行うためのアンテナポール18を更に備える。放出部58Aは、アンテナポール18に配置される。
この構成によれば、放出部58Aがアンテナポール18とは別の部材に配置される場合と比較して、放出部58Aから水素ガスをダンプトラック2の上方に放出しやすい。したがって、水素を安全に大気中に放出することが容易となる。例えば、既にダンプトラック2にアンテナポール18が搭載されている場合には、既存のアンテナポール18を活用して放出部58Aを高い場所に配置することができる。加えて、放出部58Aを高い場所に配置するための部材を新たに設けることを要しないため、部品点数の削減及びコスト削減に寄与する。
【0069】
本実施形態では、ダンプトラック2は、車体フレーム10の前部上方に設けられ、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状のプラットフォーム17を更に備える。水素放出管58は、プラットフォーム17の下面を通る。
この構成によれば、水素放出管58がプラットフォーム17の上面を通る場合と比較して、水素放出管58に対して車両上方から外乱(例えば、落石等)が及ぶことを抑制することができる。加えて、オペレータの運転室への乗降時又は搭載機器の整備時等でオペレータがプラットフォーム17上を移動する場合も、水素放出管58が邪魔になることを抑制することができる。
【0070】
<変形例>
上述した実施形態では、放出部は、ダンプトラックの前端部に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、放出部は、ダンプトラックの後部に配置されていてもよい。例えば、ダンプトラックの前後方向における放出部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0071】
上述した実施形態では、放出部は、平面視でダンプボディと重ならない位置に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、放出部は、平面視でダンプボディと重なる位置に配置されていてもよい。例えば、平面視においてダンプボディに対する放出部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0072】
上述した実施形態では、放出部は、側面視でダンプボディの前端部より前方に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、放出部は、側面視でダンプボディの前端部より後方に配置されていてもよい。例えば、側面視においてダンプボディに対する放出部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
上述した実施形態では、放出部は、前面視でダンプボディの上端部より上方に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、放出部は、前面視でダンプボディの上端部より下方に配置されていてもよい。例えば、前面視においてダンプボディに対する放出部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0074】
上述した実施形態では、ダンプトラックは、電波の送信及び受信を行うためのアンテナポールを更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ダンプトラックは、アンテナポールを備えていなくてもよい。例えば、アンテナポールの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0075】
上述した実施形態では、放出部は、アンテナポールに配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、放出部は、アンテナポールとは別の部材に配置されていてもよい。例えば、放出部は、ダンプボディに配置されていてもよい。例えば、放出部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0076】
上述した実施形態では、ダンプトラックは、車体フレームの前部上方に設けられ、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状のプラットフォームを更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ダンプトラックは、プラットフォームを備えていなくてもよい。例えば、プラットフォームの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0077】
上述した実施形態では、水素放出管は、プラットフォームの下面を通る例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、水素放出管は、プラットフォームの上面又は側面を通っていてもよい。例えば、水素放出管の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0078】
上述した実施形態では、水素タンクは、車体フレームに設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、水素タンクは、ダンプボディに設けられていてもよい。例えば、水素タンクは、ダンプボディにおいてプロテクタの下部に設けられていてもよい。例えば、ダンプトラックにおける水素タンクの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0079】
上述した実施形態では、減圧バルブは、第2供給部分と駆動源との間に設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、減圧バルブは、第2供給部分と駆動源との間以外の場所に設けられていてもよい。例えば、減圧バルブは、第1供給部分に設けられていてもよい。例えば、減圧バルブの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0080】
上述した実施形態では、第1供給部分及び第2供給部分は、金属配管で構成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1供給部分及び第2供給部分は、金属配管以外の配管で構成されてもよい。例えば、第1供給部分及び第2供給部分は、高圧水素(例えば、約70MPa)に耐えうる高圧配管で構成されてもよい。例えば、第1供給部分及び第2供給部分の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
上述した実施形態では、水素充填系及び水素供給系は、水素の流通経路が互いに別の系統となるように構成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、水素充填系及び水素供給系の少なくとも一部は、水素の流通経路が互いに同じ系統となるように構成されていてもよい。例えば、水素充填系及び水素供給系の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
上述した実施形態では、作業車両は、ダンプトラックである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、ショベルやブルドーザ、ホイールローダ等の他の作業車両であってもよい。例えば、作業車両の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0084】
(付記1)
水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、
前記水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクからの蒸発気体を放出する放出部を有する水素放出管と、を備え、
前記放出部は、前記蒸発気体を前記作業車両の上方に放出する、
作業車両。
【0085】
(付記2)
前記作業車両は、ダンプトラックであり、
前記ダンプトラックは、
前記駆動源を搭載した車体フレームと、
前記車体フレームと回動部で回動自在に結合され且つ積載物を搭載するダンプボディと、を備え、
前記放出部は、前記ダンプトラックの前端部に配置される、
付記1に記載の作業車両。
【0086】
(付記3)
前記放出部は、平面視で前記ダンプボディと重ならない位置に配置される、
付記2に記載の作業車両。
【0087】
(付記4)
前記放出部は、側面視で前記ダンプボディの前端部より前方に配置される、
付記2又は3に記載の作業車両。
【0088】
(付記5)
前記放出部は、前面視で前記ダンプボディの上端部より上方に配置される、
付記2から4の何れか一つに記載の作業車両。
【0089】
(付記6)
電波の送信及び受信を行うためのアンテナポールを更に備え、
前記放出部は、前記アンテナポールに配置される、
付記1から5の何れか一つに記載の作業車両。
【0090】
(付記7)
前記車体フレームの前部上方に設けられ、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状のプラットフォームを更に備え、
前記水素放出管は、前記プラットフォームの下面を通る、
付記2から5の何れか一つに記載の作業車両。
【符号の説明】
【0091】
2…ダンプトラック、10…車体フレーム、11…回動部、12…ダンプボディ、17…プラットフォーム、18…アンテナポール、25…水素タンク、36…駆動源、58…水素放出管、58A…放出部